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  • 特許-切削破砕機及び既設管破砕システム 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】切削破砕機及び既設管破砕システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220119BHJP
   F16L 1/028 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E21D9/06 311G
F16L1/028 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020184928
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2021177057
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】594082604
【氏名又は名称】真柄建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514196341
【氏名又は名称】牧野 省治
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 宏
(72)【発明者】
【氏名】牧野 省治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-139364(JP,A)
【文献】特開2019-002166(JP,A)
【文献】特開2001-241290(JP,A)
【文献】米国特許第4915543(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に敷設されている既設管を切削破砕する切削破砕機であって、
前記切削破砕機の後端側から先端側に向かう第1の方向に摺動可能に支持され、先端側に、前記第1の方向に対して傾斜を有する支持面が設けられた支持部材と、
前記支持部材よりも前記先端側に設けられ、刃部と、前記刃部の反対側に設けられた被支持面とを有し、一端部が第1の回転軸の周りに回転可能に支持されることによって、開状態と閉状態とに切り替え可能な破砕刃と、
を備え、
前記支持部材が、第1の位置にある場合、前記支持面と、前記被支持面とが接触することによって前記破砕刃が前記開状態に固定され、
前記支持部材が、前記第1の位置よりも前記切削破砕機の後端側の第2の位置にある場合、前記破砕刃が前記閉状態となる
切削破砕機。
【請求項2】
前記破砕刃よりも前記後端側に設けられ、前記破砕刃によって破砕された前記既設管を所定の位置へ誘導するための既設管誘導ローラー
を更に備えた請求項1に記載の切削破砕機。
【請求項3】
前記破砕刃は、複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切削破砕機。
【請求項4】
前記既設管誘導ローラーは、複数設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の切削破砕機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の切削破砕機と、
前記切削破砕機の後端部を前記第1の方向に押圧することによって、前記切削破砕機を推進させる元押し装置と、
を備えた切削破砕システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削破砕機及び既設管破砕システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在都市部に敷設されている上下水道管等の既設管は、敷設から長期間が経過したことによる老朽化や機能不全の問題が発生しつつあり、改築の要望が高まっている。
【0003】
例えば特許文献1には、地中に敷設されている既設管を切削破砕する既設管破砕システムであって、前記既設管を切削破砕し、破砕物を回収する掘進機と、前記既設管内を移動可能に設けられ、その後端側が前記掘進機の先端側と当接した状態で前記掘進機の進行方向をガイドするための既設管ガイド装置と、を有する既設管破砕システムが開示されている。
【0004】
この既設管破砕システムの既設管ガイド装置において、一端が既設管ガイド装置に回転可能に接続され、他端が既設管ガイド装置に対して開閉可能な破砕刃を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-002166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された既設管破砕システムでは、破砕刃が開状態のときに、刃部の裏側の面が他の部材と一点で接触することによって支持される。
【0007】
しかしながら、このような構成によれば、既設管が、硬質ポリ塩化ビニル管やコンクリート管の場合には破砕することができるが、これらよりも硬度が高い既設管(たとえばダクタイル鋳鉄管)の場合には、破砕刃に作用する圧力が、破砕刃が耐え得る圧力を上回るため、破砕することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、破砕刃が耐え得る圧力が向上した切削破砕機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一の発明は、地中に敷設されている既設管を切削破砕する切削破砕機であって、切削破砕機の後端側から先端側に向かう第1の方向に摺動可能に支持され、先端側に、第1の方向に対して傾斜を有する支持面が設けられた支持部材と、支持部材よりも先端側に設けられ、刃部と、刃部の反対側に設けられた被支持面とを有し、一端部が第1の回転軸の周りに回転可能に支持されることによって、開状態と閉状態とに切り替え可能な破砕刃と、を備え、支持部材が、第1の位置にある場合、支持面と、被支持面とが接触することによって破砕刃が開状態に固定され、支持部材が、第1の位置よりも切削破砕機の後端側の第2の位置にある場合、破砕刃が閉状態となる切削破砕機である。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、破砕刃が耐え得る圧力が向上した切削破砕機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】既設管破砕システムの一例を示す図である。
図2】切削破砕機の構成を説明する断面図である。
図3】切削破砕機の構成を説明する断面図である。
図4A】閉状態の破砕刃を説明する断面図である。
図4B】閉状態の破砕刃を説明する正面図である。
図5A】開状態の破砕刃を説明する断面図である。
図5B】開状態の破砕刃を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
==実施形態==
<既設管破砕システム>
図1は、本実施形態の既設管破砕システム1の全体概略を示す図である。既設管破砕システム1は、発進立坑LSを出発点として、既設管EPを切削破砕するためのシステムである。本実施形態の既設管破砕システム1は、更に、既設管EPが敷設されていた箇所に、新設管NPを敷設することが可能である。
【0013】
本実施形態の既設管破砕システム1は、切削破砕機2と、元押し装置3と、を備える。本明細書において、切削破砕機2の後端側から先端側に向かう方向を、「第1の方向D」と称する。また、「先端側」と称する場合、「切削破砕機2の先端側」を意味する。同様に、「後端側」と称する場合、「切削破砕機2の後端側」を意味する。
【0014】
切削破砕機2は、地中に敷設されている既設管EPを切削破砕するための装置である。本実施形態では、既設管EPとして、ダクタイル鋳鉄管等の、硬質ポリ塩化ビニル管やコンクリート管よりも硬度が高い管を想定している。
【0015】
元押し装置3は、切削破砕機2の後端部を第1の方向Dに押圧することによって、切削破砕機2を推進させるための装置である。元押し装置3は、発進立坑LSに配置されている。
【0016】
<切削破砕機の構成>
図2図5Bを用いて、切削破砕機2の構成について説明する。図2は、切削破砕機2の構成を説明する断面図であって、破砕刃21が閉状態(後述)の断面図である。図3は、切削破砕機2の構成を説明する断面図であって、破砕刃21が開状態(後述)の断面図である。図4Aは、閉状態の破砕刃21を説明する断面図である。図4Bは、閉状態の破砕刃21を説明する図であり、切削破砕機2の先端側から見た正面図である。図5Aは、開状態の破砕刃21を説明する断面図である。図5Bは、開状態の破砕刃21を説明する図であり、切削破砕機2の先端側から見た正面図である。尚、図4A及び図5Aでは、切削破砕機2のうち、破砕刃21、支持部材22、及び油圧シリンダー241のみが示されている。
【0017】
図2に示すように、切削破砕機2は、筐体20と、破砕刃21と、支持部材22と、モーター23と、油圧システム24と、既設管誘導ローラー25と、を備える。
【0018】
筐体20は、切削破砕機2の外装を構成する部材である。本実施形態の筐体20は、図2図5Bに示す第1の軸Xに対して略軸対称の部材である。第1の軸Xは、第1の方向Dに平行な軸である。筐体20の内部には、破砕刃21を支持するための回転軸Rx1(後述)と、支持部材22と、モーター23と、油圧システム24と、が設けられている。また、筐体20の外側には、既設管誘導ローラー25が設けられている。
【0019】
破砕刃21は、一端部から他端部に延びる部材である。破砕刃21は、切削破砕機2の先端部近傍の位置であって、後述する支持部材22よりも先端側に設けられている(図2及び図3)。破砕刃21は、複数設けられる。本実施形態では、破砕刃21は、4枚設けられている。4枚の破砕刃21の各々は、平板部21aと、被支持部21bとを有している。
【0020】
平板部21aは、略平板上の部材であり、一端部から他端部に延びる部材である。平板部21aは、刃部21cを有している。刃部21cは平板部21aの周縁の一部であって、一端部から他端部に亘って設けられている。刃部21cの厚みは、周縁に近いほど薄くなる。
【0021】
被支持部21bは、後述する被支持面21dが設けられる部材である。被支持部21bは、第3の回転軸Rx3の周りに自由に回転可能である。第3の回転軸Rx3は、平板部21aに固定された回転軸である。第3の回転軸Rx3の軸方向は、平板部21aに垂直である。
【0022】
被支持部21bの形状は、側面と底面とを有する柱体である。被支持部21bの高さ方向は、第3の回転軸Rx3と平行である。被支持部21bの底面の外周の形状は、円弧と弦とから構成される。ここでの円弧とは、第3の回転軸Rx3を中心とする円の円弧である。当該円弧の中心角は、180度より大きい。また、ここでの弦とは、当該円弧の両端を結ぶ直線である。これによって、被支持部21bは、その側面に、当該弦に隣り合う平面である被支持面21dが設けられる。
【0023】
ここで、破砕刃21を第3の回転軸Rx3の方向から見た場合(図4A図5A)において、被支持面21dは、破砕刃21全体の外周の一部となる。これによって、被支持面21dは、後述する支持部材22の支持面220aに接触することが可能である。
【0024】
4枚の破砕刃21の各々は、その一端部が第1の回転軸Rx1の周りに回転可能に支持されている。第1の回転軸Rx1は、筐体20の内部に固定された回転軸である。第1の回転軸Rx1は、切削破砕機2の先端部近傍の位置であって、後述する支持部材22よりも先端側に設けられている(図2及び図3)。第1の回転軸Rx1の軸方向は、第1の方向Dに垂直である。
【0025】
破砕刃21を第1の回転軸Rx1の周りに回転させると、これに伴って破砕刃21の他端部と、第1の軸Xとの距離が変化する。これによって、4枚の破砕刃21の各々は、開状態と閉状態とに切り替え可能である。以下、開状態と閉状態について説明する。
【0026】
開状態とは、破砕刃21の他端部と、第1の軸Xとの距離が、破砕される前の既設管EPの半径よりも大きい状態である(図3)。
【0027】
既設管EPを破砕する際、切削破砕機2は、先ず、破砕刃21を閉状態として停止する。次いで、切削破砕機2は、停止した状態で、破砕刃21を閉状態から開状態に遷移させる。この、閉状態から開状態への遷移によって、破砕刃21の刃部21cが既設管EPに接触し、更に既設管EPの一部を破砕する。次いで、切削破砕機2は、破砕刃21を開状態から閉状態に遷移させながら、既設管EPに沿って推進する。これを繰り返すことにより、切削破砕機2は、既設管EPを破砕していく。
【0028】
4枚の破砕刃21は、図4B及び図5Bからわかるように、第1の軸Xに対して4回回転対称となるように設けられている。尚、破砕刃21の数がn(n≧2)の場合には、第1の軸Xに対してn回回転対称となるように破砕刃21が設けられることが好ましい。
【0029】
支持部材22は、破砕刃21を開状態又は閉状態に切り替えるための部材である。支持部材22は、後述する油圧シリンダー241に対し、第1の方向D、又は第1の方向Dの逆方向に摺動可能に支持されている。
【0030】
図4A及び図5Aを用いて、支持部材22について詳細に説明する。支持部材22は、支持部220と、摺動部221と、接続部222と、を有している。
【0031】
支持部220は、支持部材22の先端側に設けられている。支持部220には、支持面210aが設けられている。支持面220aは、第1の方向Dに対して傾斜を有する平面である。支持部220は、このような支持面220aが設けられることによって、楔状の形状を有する。
【0032】
支持面220aの傾斜については、第1の方向Dと、支持面220aとのなす角のうち、切削破砕機2の後端側の角度θが鋭角(90度よりも小さい角)であればよい。本実施形態では、角度θは略20度である。
【0033】
尚、角度θが0度に近すぎると、支持部材22が第1の位置(後述)にある場合でも、破砕刃21の他端部と、第1の軸Xとの距離が、破砕される前の既設管EPの半径よりも大きくならず(つまり、開状態とならず)、刃部21cが既設管EPに接触できなくなる場合がある。一方、角度θが90度に近すぎると、支持面220aに作用する圧力のうち、第1の方向Dの逆方向の成分が支配的となるため、油圧システム24(後述)を介して開状態を維持するために必要なモーター23(後述)の負荷が増大する。
【0034】
支持面220aは、破砕刃21に対向する位置に設けられている。つまり、本実施形態では、支持部材22において、4枚の破砕刃21の各々に対向する位置に支持面220aが設けられている。支持部220は、4枚の破砕刃21と同様に、第1の軸Xに対して4回回転対称となる(不図示)。
【0035】
摺動部221は、支持部材22の後端部に設けられている。摺動部221は、円筒状の形状を有している。摺動部221の径は、後述する油圧シリンダー241の中空部241aの径に等しい。
【0036】
接続部222は、支持部220と、摺動部221とを接続する長尺の部材である。接続部222の一端側には支持部220が接続され、他端側には摺動部221が接続される。これによって、支持部材22は、第1の方向D、又は第1の方向Dの逆方向に摺動する。
【0037】
図4A及び図5Aを用いて、支持部材22と破砕刃21の関係について説明する。支持部材22は、第1の位置と、第2の位置との間を摺動可能である。図5Aは、支持部材22が第1の位置にある状態を示している。第1の位置とは、支持部材22が摺動可能な範囲のうち、最も先端側の位置である。図4Aは、支持部材22が第2の位置にある状態を示している。第2の位置とは、支持部材22が摺動可能な範囲のうち、最も後端側の位置である。
【0038】
支持部材22が、第1の位置と、第2の位置との間を摺動するとき、支持面220aと、破砕刃21の被支持面21dとは常に接触した状態である。これは、破砕刃21の被支持部21bが第3の回転軸Rx3に対して自由に回転可能であることによる。つまり、第1の方向Dに対する被支持面21d角度を、第1の方向Dに対する支持面220aの角度(θ)に維持することが可能であることによる。
【0039】
支持部材22が、第1の位置にある場合、支持面220aと、破砕刃21の被支持面21dとが接触した状態で、破砕刃21が開状態に固定される(図5A)。これによって、破砕刃21の閉状態へ向かう方向の回転が阻止される。このとき、支持面220aと、破砕刃21の被支持面21dとは、有限の面積を有する面で接触している。つまり、開状態において、支持面220aによって被支持面21dに作用する抗力の総計は、接触する面に亘って均一又はほぼ均一に分散される。
【0040】
支持部材22が、第2の位置にある場合、支持面220aと、被支持面21dとが接触した状態で、破砕刃21が閉状態となる(図4A)。このとき、支持面220aと、被支持面21dとが接触する位置は、開状態(図5A)に比べて、支持部材22の先端側である。従って、このとき、支持面220aと、被支持面21dとが接触する位置は、開状態に比べて、第1の軸Xに近い位置である。
【0041】
モーター23は、後述する油圧ポンプ242を駆動するための動力を生成するために設けられている。
【0042】
油圧システム24は、モーター23から得られる動力を、支持部材22を第1の方向D、又は第1の方向Dの逆方向に摺動させるための動力に変換するために設けられている。油圧システム24は、油圧タンク240と、油圧シリンダー241と、油圧ポンプ242と、油圧配管243と、切替バルブ244と、油圧調節バルブ245とを有している。
【0043】
油圧タンク240は、油圧システム24が用いる油を貯蔵するために設けられている。本実施形態では、油圧タンク240は、モーター23よりも後端部に設けられている。
【0044】
油圧シリンダー241は、支持部材22の第1の方向D、又は第1の方向Dの逆方向の摺動をガイドするために設けられている。
【0045】
油圧シリンダー241は、第1の方向Dに延びる円筒状の部材であり、中空部241aを有する(図4A及び図5A)。また、油圧シリンダー241は、先端側に、中空部241aに連通する開口部241bを有する(図4A及び図5A)。
【0046】
図4A及び図5Aを用いて、油圧シリンダー241と支持部材22との関係について説明する。支持部材22の摺動部221は、油圧シリンダー241の中空部241aに配置されている。摺動部221は、中空部241aの側面に接触し、中空部241aの側面を摺動する。支持部材22の支持部220は、中空部241aの外側であって、中空部241aよりも先端側に配置される。支持部材22の接続部222は、油圧シリンダー241の開口部241bの側面に接触し、開口部241bの側面を摺動する。
【0047】
中空部241aには、支持部材22の摺動部221によって、切削破砕機2の後端側の第1の油圧室241c(図5A)と、切削破砕機2の先端側の第2の油圧室241d(図4A)とが形成される。
【0048】
油圧ポンプ242は、油圧タンク240から油を汲み出し、油圧配管243を介して第1の油圧室241c又は第2の油圧室241dに油を供給するために設けられている。油圧ポンプ242は、モーター23から得られる動力によって駆動する。
【0049】
油圧配管243は、第1の油圧室241c又は第2の油圧室241dに油を供給する、又は第1の油圧室241c又は第2の油圧室241dの油を排出するために設けられている。
【0050】
切替バルブ244は、油圧配管243を流れる油の向きを切り替えるために設けられている。切替バルブ244は、第1の接続状態と、第2の接続状態とを切り替える。図2及び3には、油圧配管243を流れる油の向きが矢印で示されている。ここで、双方向の矢印は、油圧配管243を流れる油の向きを、切替バルブ244によって切替可能であることを示している。
【0051】
第1の接続状態は、第1の油圧室241cに油を供給し、第2の油圧室241dから油を排出するための状態である。切替バルブ244を第1の接続状態に切り替えると、第1の油圧室241cに油が供給され、第2の油圧室241dの油が排出される。そして、第1の油圧室241c内の圧力が、第2の油圧室241d内の圧力を上回る。これによって、支持部材22が先端側に摺動し、第1の位置に到達する。支持部材22が第1の位置に到達すると、破砕刃21は開状態となる(図5A及び図5B)。
【0052】
第2の接続状態は、第1の油圧室241cから油を排出し、第2の油圧室241dに油を供給するための状態である。切替バルブ244を第2の接続状態に切り替えると、第1の油圧室241cの油が排出され、第2の油圧室241dに油が供給される。そして、第1の油圧室241c内の圧力が、第2の油圧室241d内の圧力を下回る。これによって、支持部材22が後端側に摺動し、第2の位置に到達する。支持部材22が第2の位置に到達すると、破砕刃21は閉状態となる(図4A及び図4B)。
【0053】
油圧調節バルブ245は、油圧配管243を流れる油の流量を調節するために設けられている。
【0054】
既設管誘導ローラー25は、第2の回転軸Rx2の周りに自由に回転可能な車輪である。第2の回転軸Rx2は、筐体20の表面に固定され、破砕刃21よりも後端側に設けられている。第2の回転軸Rx2の軸方向は、第1の方向Dに垂直である。第2の回転軸Rx2と、第1の軸Xとの距離は、新設管NPの半径よりも大きい。
【0055】
破砕刃21によって破砕された既設管EPは、切削破砕機2の推進に伴い、その内周面が既設管誘導ローラー25に接触する。そして、破砕された既設管EPの内周面が既設管誘導ローラー25に接触した状態で切削破砕機2が推進すると、破砕された既設管EPは、破砕される前の既設管EPの径よりも大きくなる方向へ誘導される。このとき、第2の回転軸Rx2と、第1の軸Xとの距離との関係より、破砕された既設管EPと、第1の軸Xとの距離は、新設管NPの半径よりも大きくなる。
【0056】
既設管誘導ローラー25は、複数設けられている。本実施形態では、既設管誘導ローラー25は、4個設けられている。既設管誘導ローラー25は、第1の軸Xに対して4回回転対称となるように設けられている(不図示)。尚、既設管誘導ローラー25の数がn(n≧2)の場合には、第1の軸Xに対してn回回転対称となるように既設管誘導ローラー25が設けられることが好ましい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の切削破砕機2は、地中に敷設されている既設管EPを切削破砕する切削破砕機2であって、切削破砕機2の後端側から先端側に向かう第1の方向Dに摺動可能に支持され、先端側に、第1の方向Dに対して傾斜を有する支持面220aが設けられた支持部材22と、支持部材22よりも先端側に設けられ、刃部21cと、刃部21cの反対側に設けられた被支持面21dとを有し、一端部が第1の回転軸Rx1の周りに回転可能に支持されることによって、開状態と閉状態とに切り替え可能な破砕刃21と、を備え、支持部材22が、第1の位置にある場合、支持面220aと、被支持面21dとが接触することによって破砕刃21が開状態に固定され、支持部材22が、第1の位置よりも切削破砕機2の後端側の第2の位置にある場合、支持面220aと、被支持面21dとが離間することによって破砕刃21が閉状態となる。
【0058】
切削破砕機2が既設管EPを破砕するとき、破砕刃21の21cは、既設管EPから圧力を受ける。このとき、破砕刃21の被支持面21dは、支持部材22の支持面220aから抗力を受ける。刃部21cが既設管EPから受ける圧力と、被支持面21dが支持面220aから受ける抗力とが釣り合うことにより、破砕刃21は開状態を維持する。このとき、被支持面21dと支持面220aとが有限の面積を有する面で接触しているため、当該抗力の総計は、接触する面に亘って均一又はほぼ均一に分散される。これによって、破砕刃21の被支持面21d内の一点又は複数の点に、破砕刃21を破壊し得る大きさの抗力が局所的に作用することを防止することができる。従って、破砕刃21が耐え得る圧力が向上した切削破砕機2を提供することができる。
【0059】
また、切削破砕機2は、破砕刃21よりも後端側に設けられ、破砕刃21によって破砕された既設管EPを所定の位置へ誘導するための既設管誘導ローラー25を更に備える。これによって、破砕された既設管EPが所定の位置に誘導されため、破砕された既設管EPによる影響を受けずに、新設管NPを敷設することができる。
【0060】
また、切削破砕機2において、破砕刃21は、複数設けられている。つまり、既設管EPは、破砕刃21の数と同じ数の破砕片に分解されて破砕される。これによって、新設管NPを敷設する際に、破砕された既設管EPによる妨害を低減することができる。
【0061】
また、切削破砕機2において、既設管誘導ローラー25は、複数設けられている。これによって、新設管NPを敷設する際の、破砕された既設管EPによる影響が更に低減する。
【0062】
本実施形態の既設管破砕システム1は、上記切削破砕機2と、切削破砕機2の後端部を第1の方向Dに押圧することによって、切削破砕機2を推進させる元押し装置3と、を備える。このような既設管破砕システム1によれば、切削破砕機の先端側からけん引することによって切削破砕機を推進させる方式の従来の既設管破砕システムに比べ、更に大きな力を第1の方向Dに作用させて推進させることができる。これによって、破砕刃21は、既設管EPに対して更に大きな圧力を加えることができる。更に、上述の理由から、破砕刃21が耐え得る圧力は向上する。従って、破砕可能な既設管EPの硬度の範囲が向上する。
【0063】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1:既設管破砕システム
2:切削破砕機
20:筐体
21:破砕刃
21a:平板部
21b:被支持部
21c:刃部
21d:被支持面
22:支持部材
220:支持部
220a:支持面
221:摺動部
222:接続部
23:モーター
24:油圧システム
240:油圧タンク
241:油圧シリンダー
241a:中空部
241b:開口部
241c:第1の油圧室
241d:第2の油圧室
242:油圧ポンプ
243:油圧配管
244:切替バルブ
245:油圧調節バルブ
25:既設管誘導ローラー
3:元押し装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B