(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】コネクタ端子、及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20220119BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01R13/42 H
H01R13/11 301D
(21)【出願番号】P 2018011876
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2019-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509295631
【氏名又は名称】株式会社岩沼精工
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中園 正司
(72)【発明者】
【氏名】浦下 清貴
(72)【発明者】
【氏名】千葉 厚治
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩吉
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-195714(JP,A)
【文献】実開平03-008892(JP,U)
【文献】実開平04-102167(JP,U)
【文献】特開2012-109200(JP,A)
【文献】実開昭50-061384(JP,U)
【文献】登録実用新案第3009905(JP,U)
【文献】特開2007-134301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
H01R 13/11
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁の一部が切り起こされることによって構成されるランスを有する筒部を備え、
前記周壁における少なくとも前記ランスが切り起こされている部位は、前記筒部の開口方向から見て外側に膨出するように湾曲しており、
前記ランスの少なくとも基部では、該ランスの延びる方向と直交する幅方向に対向する一対の端縁のうちの少なくとも一方の端縁は、該ランスの先端側に進むにつれて他方の端縁に近づく形状を有し、
前記筒部において、切り起される前の前記ランスがあった間隙における該ランスの先端側の端部は、開放され、
前記筒部は、前記ランスの基部と
該筒部の中心軸方向で隣接する部位の曲率が周方向の他の部位の曲率より大きくなるように変形しており、該筒部における前記ランスが切り起された残りの部位の筒部側端縁であって、前記ランスの幅方向に対向する一対の端縁と対応する筒部側端縁が前記変形によって前記間隙側に入り込んでいる、コネクタ端子。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ端子と、
前記コネクタ端子の前記筒部を周方向に囲う内周面を含み且つ該コネクタ端子を収容する端子収容部を有するコネクタハウジングと、を備え、
前記筒部は、周方向の対向する位置に前記ランスを一対有し、
前記一対のランスのそれぞれは、該ランスの先端を前記内周面に当接させている、コネクタ。
【請求項3】
前記コネクタ端子は、前記開口方向における前記筒部の一方側に配置され且つ相手側端子が取り外し可能に前記開口方向から接続される導通部を有し、
前記コネクタ端子は、前記導通部が位置決めされた状態で前記端子収容部に収容されている、請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランスを備えるコネクタ端子、前記コネクタ端子を備えるコネクタ、及び、サイズ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ランスを備えたコネクタ端子が知られている。このコネクタ端子では、
図25に示すように、金属製の板状の部材で構成される基部501の略中央部が切り起こされることによってランス502が形成されている。このランス502は、コネクタ端子500がコネクタハウジングに収容される際に、コネクタハウジング内に設けられた係止突起に係止されることで、コネクタハウジングからのコネクタ端子500の脱離を防ぐ。
図25に示すランス502では、幅方向(ランス502の延びる方向と直交する方向)に対向する一対の端縁502aは、互いに平行で且つ真っ直ぐ延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタ端子500において、ランス502の開き具合を調整しなければならない場合、ランス502が弾性を有しているため、開き具合の調整(例えば、僅かに開き具合を大きくする等)が困難な場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、ランスの開き具合の調整が容易なコネクタ端子、前記コネクタ端子を備えたコネクタ、及び、サイズ調整装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコネクタ端子は、周壁の一部が切り起こされることによって構成されるランスを有する筒部を備え、前記周壁における少なくとも前記ランスの基部周辺は、前記筒部の開口方向から見て外側に膨出するように湾曲しており、前記ランスの少なくとも基部では、該ランスの延びる方向と直交する幅方向に対向する一対の端縁のうちの少なくとも一方の端縁は、該ランスの先端側に進むにつれて他方の端縁に近づく形状を有する。
【0007】
このように、ランスの基部の幅方向の端縁のうちの少なくとも一方の端縁が、ランスの先端側に進むにつれて他方の端縁に近づく形状を有することで、筒部におけるランスの基部周辺(開口方向から見て外側に膨出するように湾曲している部位)の曲率が大きくなるように押圧等によって筒部を変形させる(詳しくは、例えば
図8に示すように、切り起こされた残りの部位の端縁が前記変形によって間隙側(切り起こされる前のランスのあった位置側)に入り込む)ことで、ランスの開き具合を大きくすることができる。しかも、ランスの開き具合は、前記基部周辺の変形量(前記残りの部位の端縁の前記間隙側への入り込み量)によって調整できるため、筒部を押圧するだけの簡単な動作によってランスの開き具合が容易に調整できる。
【0008】
また、本発明に係るコネクタは、上記のコネクタ端子と、前記コネクタ端子の前記筒部を周方向に囲う内周面を含み且つ該コネクタ端子を収容する端子収容部を有するコネクタハウジングと、を備え、前記筒部は、周方向の対向する位置に前記ランスを一対有し、前記一対のランスのそれぞれは、該ランスの先端を前記内周面に当接させている。
【0009】
このように周方向に対向する位置の一対のランスがそれぞれ端子収容部の内周面に当接しているため、端子収容部における筒部の位置(筒部の径方向におけるコネクタハウジング内での位置)が位置決めされる。
【0010】
この場合、前記コネクタ端子は、前記開口方向における前記筒部の一方側に配置され且つ相手側端子が取り外し可能に前記開口方向から接続される導通部を有し、前記コネクタ端子は、前記導通部が位置決めされた状態で前記端子収容部に収容されていることが好ましい。
【0011】
このように、筒部が位置決めされているのに加え、導通部も端子収容部における位置(筒部の径方向におけるコネクタハウジング内での位置)が位置決めされている、即ち、間隔をあけた複数の部位が端子収容部における前記径方向の位置が位置決めされているため、端子収容部(コネクタハウジング)内におけるコネクタ端子の姿勢(コネクタ端子の中心軸の方向)が規定される。これにより、端子収容部(コネクタハウジング)内でコネクタ端子が斜めを向く等によって相手側端子が接続し難くなることを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係るサイズ調整装置は、筒部を備えた部材の該筒部の周方向の一部である被押圧部位を該筒部の内側に向けて押圧可能な押圧部と、前記筒部の周方向における前記被押圧部位を除いた残余部位に対して外側から当接することによって該残余部位を支持可能な支持部と、を備える。
【0013】
かかる構成によれば、筒部の残余部位が外側から支持された状態で被押圧部位が押圧されるため、筒部における残余部位の変形を抑えつつサイズを小さくする(調整する)ことができる。
【0014】
このため、周壁の一部が切り起こされることによって構成されるランスを有する筒部を備えたコネクタ端子が配置され、押圧部によって、筒部におけるランスの基部周辺の曲率が大きくなる方向に筒部を押圧させて変形させることで、例えば、
図17に示すような筒部の大きな変形を抑えつつランスの開き具合を調整することができる。
【0015】
前記サイズ調整装置では、前記押圧部の押圧方向に往復動可能な一対の第一伝達部材を備え、前記押圧部は、前記押圧方向に加圧可能な加圧部と、前記押圧方向に延びると共に前記加圧部によって加えられた圧力を前記被押圧部位に伝達する第二伝達部材と、を有し、前記支持部は、前記押圧方向における前記筒部の配置位置よりも前記加圧部の側に回転支点をそれぞれ有し、且つ、各回転支点を回転中心にしてそれぞれ回動することによって前記配置位置に配置される前記筒部を前記押圧方向と略直交する方向から挟み込み可能な一対の挟み込み部材を有し、前記一対の挟み込み部材のそれぞれは、挟み込み方向の外側端部に、前記押圧方向に対する傾斜面であって前記加圧部から遠ざかるにつれて相手側の挟み込み部材から遠ざかるように傾斜する傾斜面を有し、前記一対の第一伝達部材のそれぞれは、前記押圧方向において前記一対の挟み込み部材のうちの対応する挟み込み部材における前記傾斜面と前記加圧部との間に配置され、前記加圧部の加圧によって前記押圧方向に移動するのに伴い前記傾斜面を前記押圧方向に押圧しつつ該傾斜面に対して摺動することで、該傾斜面を有する挟み込み部材を相手側の挟み込み部材に向けて回動させてもよい。
【0016】
このように、加圧部の加圧によって移動した第一伝達部材が摺接する傾斜面を、回転支点周りに回動可能な一対の挟み込み部材のそれぞれに設けることで、被押圧部位を押圧するための動力(加圧部による押圧方向への圧力)を利用して、一対の挟み込み部材によって残余部位を支持させることができる。即ち、上記構成によれば、加圧部による一方向(押圧方向)への加圧のみで、被押圧部位への押圧方向への押圧と、残余部位への挟み込み方向(押圧方向と略直交する方向)からの挟み込みによる支持とを、行うことができる。
【0017】
また、前記サイズ調整装置では、前記支持部は、前記筒部における前記被押圧部位と対向する対向部位を支持可能な対向部位支持部材を有し、前記一対の挟み込み部材は、前記残余部位のうちの前記対向部位を除いた部位を挟み込んでもよい。
【0018】
かかる構成によれば、押圧部による押圧によって筒部の配置位置からの押圧方向へのズレが確実に防がれ、これにより、筒部における該ズレに起因する変形(前記ズレによって筒部の一部が一対の挟み込み部材における残余部位の挟み込みが予定されていた部位(残余部位を挟み込んで支持する部位)と異なる部位によって挟み込まれることで生じる変形:例えば、
図18参照)が筒部に生じることを防ぐことができる。
【0019】
また、前記サイズ調整装置では、前記押圧部による前記筒部の押圧の完了と、前記一対の挟み込み部材による前記筒部の挟み込みの完了とは、同時であることが好ましい。
【0020】
筒部が周方向における複数の位置から複数の部材によって押圧や支持等される場合、各部材による押圧や支持等のタイミングによって配置位置から筒部の全体又は一部がズレて該ズレた部位が前記押圧する部材間に挟み込まれて変形することがあるが、上記の構成のように、各部材(押圧部、挟み込み部材、対向部位支持部材等)の押圧や支持等が完了するタイミングが同じになるように各部材によって複数の方向から筒部を押圧や支持等することで、前記ズレに起因する変形(押圧する部材間の挟み込みによる変形)を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本発明によれば、ランスの開き具合の調整が容易なコネクタ端子、前記コネクタ端子を備えたコネクタ、及び、サイズ調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図5】
図5は、前記コネクタ端子を中心軸方向の先端側から見た図である。
【
図7】
図7は、前記コネクタと相手側端子ピンとが嵌合した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、ランスの開き具合が変化する原理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、前記コネクタに用いられるコネクタハウジングの断面図である。
【
図10】
図10は、サイズ調整装置の構成及び動作を説明するための図であって、各構成が初期位置にある状態を示す図である。
【
図11】
図11は、前記サイズ調整装置の構成及び動作を説明するための図であって、一対の挟み込み部材が挟み込み位置まで降下した状態を示す図である。
【
図12】
図12は、前記サイズ調整装置の構成及び動作を説明するための図であって、一対の挟み込み部材が回動すると共に第二伝達部材が降下する状態を示す図である。
【
図13】
図13は、前記サイズ調整装置の構成及び動作を説明するための図であって、一対の意挟み込み部材による筒部の挟み込みと第二伝達部材による筒部の押圧とが完了した状態を示す図である。
【
図14】
図14は、前記サイズ調整装置のコネクタ端子の配置位置周辺の構成を説明するための図であって、一対の挟み込み部材が開いた状態の図である。
【
図15】
図15は、前記サイズ調整装置のコネクタ端子の配置位置周辺の構成を説明するための図であって、コネクタ端子の筒部が支持部に支持されると共に押圧部に押圧された状態の図である。
【
図16】
図16は、前記コネクタ端子の被押圧部を説明するための図である。
【
図17】
図17は、前記コネクタ端子がプレスによって変形した状態を説明するための図である。
【
図18】
図18は、前記コネクタ端子の筒部が前記一対の挟み込み部材の狭持面以外の部位で挟み込まれた場合を説明するための図である。
【
図19】
図19は、他実施形態に係るコネクタ端子のランスを説明するための図である。
【
図20】
図20は、他実施形態に係るコネクタ端子のランスを説明するための図である。
【
図21】
図21は、他実施形態に係るコネクタ端子のランスを説明するための図である。
【
図22】
図22は、他実施形態に係るコネクタ端子の筒部の形状を説明するための断面図である。
【
図23】
図23は、他実施形態に係るコネクタ端子の筒部におけるランスの位置を説明するための図である。
【
図24】
図24は、第二伝達部材の下死点の位置変更機構を説明するための模式図である。
【
図25】
図25は、従来のランスを備えたコネクタ端子の電線が接続された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図9を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態に係るコネクタは、
図1及び
図2に示すように、電線が接続されるコネクタ端子2と、コネクタ端子2を収容するコネクタハウジング(以下、単に「ハウジング」と称する。)5と、を備える。本実施形態のコネクタ1は、雌型のコネクタであり、雄型のコネクタ等の相手側端子と接続される。
【0025】
コネクタ端子2は、
図3~
図5にも示すように、周壁の一部が切り起こされることによって構成されるランス412を有する筒部41を備える。このコネクタ端子2は、筒部41を含み且つ相手側端子(本実施形態の例では、相手側端子ピンP:
図7参照)が取り外し可能に筒部41の開口方向(
図4における左右方向)から接続される接続部4を備える。
【0026】
具体的に、コネクタ端子2は、いわゆるコンタクトであり、電線が接続可能な端子基部3と、端子基部3と接続され且つ相手側端子ピンPが取り外し可能に接続される接続部4と、を有する。本実施形態のコネクタ端子2は、導電性を有する金属製の平板を所定の形状に打ち抜いたもの(
図6参照)を、中心線C1と平行な軸を中心軸Cとして筒状に曲げ加工等することによって形成されている。本実施形態のコネクタ端子2は、リン青銅によって形成されているが、真鍮、洋白、メッキ処理されたSUS等によって形成されていてもよい。以下では、中心軸C方向において、接続部4側(
図2における左側)を先端側とし、端子基部3側(
図2における右側)を基端側とする。
【0027】
端子基部3は、中心軸C方向に延びる板状の基部本体31と、基部本体31から延びる複数の導体カシメ片32と、基部本体31における導体カシメ片32より基端側の部位から延びる一対の被覆部カシメ片33と、を有する。
【0028】
導体カシメ片32は、電線の先端において露出する芯線(導体)を抱き込むようにかしめられることで、該芯線を基部本体31に圧着させる部位である。
【0029】
被覆部カシメ片33は、電線の前記露出した芯線近傍の絶縁被覆されている部位を基部本体31との間に挟み込むようにかしめられることで、電線に対してコネクタ端子2を固定する部位である。
【0030】
複数の導体カシメ片32のそれぞれは、前記曲げ加工等が行われる前の状態のコネクタ端子2(
図6に示す状態:以下「平板状のコネクタ端子2」と称する。)において、基部本体31の幅方向(中心線C1と直交する方向:
図6における上下方向)の両側から該幅方向の外側に向けて延びている。本実施形態のコネクタ端子2では、幅方向の一方側(
図6の上側)の導体カシメ片32と他方側(
図6の下側)の導体カシメ片32とが、中心線C1方向にずれた位置から交互に延びている(即ち、互い違いに配置されている)。
【0031】
一対の被覆部カシメ片33のそれぞれは、平板状のコネクタ端子2の基部本体31において、導体カシメ片32と中心線C1方向の基端側に隣接する位置から前記幅方向の外側に向けて延びている。前記幅方向の一方側の被覆部カシメ片33と他方側の被覆部カシメ片33とは、中心線C1方向において同じ位置から延びている。
【0032】
これら基部本体31、導体カシメ片32、及び被覆部カシメ片33が形成されている平板状のコネクタ端子2の一部を、基部本体31が湾曲するように曲げ加工することによって、端子基部3が形成されている。
【0033】
接続部4は、基部本体31と連接する筒部41と、中心軸C周りに間隔をあけて並ぶ複数の弾性接触片(導通部)42と、を有する。接続部4は、複数の弾性接触片42に囲まれた領域A(
図5参照)に相手側端子ピンPが挿入されることで(
図7参照)、該相手側端子ピンPと導通可能に接続される(嵌合する)。本実施形態の弾性接触片42は、三つである。
【0034】
筒部41は、中心軸Cを囲む筒部本体(周壁)411と、筒部本体411から外側に延びてハウジング5と係合するランス412と、を有する。本実施形態の筒部41は、周方向の対向する位置に一対のランス412を有する。また、この筒部41は、筒部本体411の基端から中心軸Cに向けて延びる規制片413も有する。
【0035】
筒部本体411は、相手側端子ピンPとコネクタ1とが嵌合したときに相手側端子ピンPの先端部が内側(該筒部本体411に囲まれた領域)に位置する部位である(
図7参照)。この筒部本体411は、周壁における少なくともランス412の基部周辺は、筒部本体411の開口方向(
図2における左右方向)から見て外側に膨出するように湾曲している(
図5参照)。本実施形態の筒部本体411は、平板状のコネクタ端子2において中心線C1と直交する方向に長い矩形板状の部位であり、この部位を、中心軸Cを中心にして且つ長手方向の端部同士を対向させるように全体を湾曲させて筒状とすることにより形成されている。本実施形態の筒部本体411は、円筒状である。
【0036】
一対のランス412のそれぞれは、基端側開口5B(
図2参照)からハウジング5の内部にコネクタ端子2を挿入して所定位置まで移動させたときに、ハウジング5の内部に設けられた係合部(後述するランス係合部55:
図2参照)と係合する。これにより、コネクタ端子2がハウジング5内に係止される。その結果、ハウジング5の内部におけるコネクタ端子2の基端側への移動が阻止される。
【0037】
具体的に、一対のランス412のそれぞれは、筒部本体411から突出し、基端側に向かうに連れて中心軸Cから離れるように中心軸Cに対して傾斜している。これら一対のランス412のそれぞれは、先端をハウジング5の内周面50に当接させている。このランス412の少なくとも基部では、該ランス412の延びる方向と直交する幅方向に対向する一対の端縁412a、412bのうちの少なくとも一方の端縁412a(又は412b)は、該ランス412の先端側に進むにつれて他方の端縁412b(又は412a)に近づく形状を有する。本実施形態のランス412では、一対の端縁412a、412bの間隔は、ランス412の基端から先端に向かうにつれて接近している(狭くなっている)。即ち、本実施形態のランス412は、先細り形状である。
【0038】
以上のランス412は、平板状のコネクタ端子2の筒部本体411において、基端側の端縁から先端側に向けて延び、且つ中心線C1と直交する方向に間隔をあけた一対の切り込み411A間の部位(
図6参照)を外側に起こすことによって形成されている。この一対の切り込み411Aは、基端側に進むにつれて互いに接近している。即ち、一対の切り込み411Aの間隔は、基端側(ランス412の先端側)ほど狭くなっている。
【0039】
規制片413は、相手側端子ピンPとコネクタ1とを嵌合させるときに、相手側端子ピンPの先端のそれ以上奥への(コネクタ1の基端側への)侵入を防ぐ。即ち、規制片413は、中心軸Cに沿って移動する相手側端子ピンPが筒部本体411内に侵入してきたときに、この相手側端子ピンPの先端が当該規制片413に当接することで、該先端のそれ以上の奥への移動を防ぐ。また、この規制片413は、ハウジング5にコネクタ端子2を挿入する際に用いられる。即ち、本実施形態のコネクタ端子2は、規制片413が押圧されることによってハウジング5に挿入(圧入)される。
【0040】
この規制片413は、
図6に示す平板状のコネクタ端子2の筒部本体411において基端側の端縁から中心線C1方向に延びる部位413を筒部本体411が筒状になった状態で中心軸Cに向けて折り曲げることによって形成されている。本実施形態の接続部4では、複数(本実施形態に示す例では二つ)の規制片413が、筒部本体411の周方向に間隔をあけて配置されている。
【0041】
三つの弾性接触片(導通部)42のそれぞれは、中心軸Cに沿って延び、これら三つの弾性接触片42に囲まれた領域Aに相手側端子ピンPが中心軸Cに沿って挿入されることで該相手側端子ピンPに押圧され、これにより、弾性変形する。三つの弾性接触片42は、中心軸Cを中心とする円周上において間隔をあけて並んでいる。各弾性接触片42の具体的な構成は、以下の通りである。
【0042】
各弾性接触片42は、筒部41から先端(前方)側に延びる弾性変形可能な板状の部位であり、主面(厚さ方向と直交する面)42Aを中心軸Cに向けた状態で中心軸C周りに等間隔で並んでいる(
図4及び
図5参照)。この弾性接触片42は、中心軸C方向に間隔をあけた二つの屈曲部(第一屈曲部421、第二屈曲部422)を有する。以下では、弾性接触片42における第一屈曲部421より基端側の部位を基部423と称し、第一屈曲部421と第二屈曲部422との間の部位を接触部424と称し、第二屈曲部422より先端側の部位を先端部425と称する。
【0043】
基部423は、接触部424から基端側に向かうに連れて中心軸Cから離れるように、中心軸Cに対して傾斜している(
図4参照)。
【0044】
接触部424は、相手側端子ピンPが中心軸Cに沿って三つの弾性接触片42に囲まれた領域Aに挿入されたときに、該相手側端子ピンPと接触(導通)する部位である(
図7参照)。接触部424は、中心軸Cに沿って延びると共に中心軸Cに向けて膨らむように湾曲する。この湾曲によって、中心軸Cを中心とし且つ各接触部424における最も中心軸Cに近づいている部位と接する内接円γ(
図5参照)は、相手側端子ピンPの外周よりも小さくなっている。このため、相手側端子ピンPが弾性接触片42に囲まれた領域Aに挿入されると、各接触部424は中心軸Cから離れる方向に押し広げられる。
【0045】
先端部425は、接触部424の先端(基部423と反対側の端部)から延びると共に、中心軸Cと直交する方向において接触部424より外側に位置する。この先端部425は、接触部424から前方側に向かうにつれて中心軸Cから離れるように、中心軸Cに対して傾斜し、ハウジング5の内周面50(詳しくは、内周面50の第一部位51)と当接している(
図2及び
図4参照)。この先端部425のハウジング5の内周面50(第一部位51)との当接により、複数の弾性接触片42(導通部)の先端部がハウジング5の端子収容部6内において位置決めされた状態(詳しくは、中心軸Cと直交する方向において位置決めされた状態)となる。
【0046】
以上のように構成されるコネクタ端子2は、接続部4の先端(各弾性接触片42の先端)を端子挿入口5Aに向けた状態でハウジング5に収容されている(
図2参照)。
【0047】
以上のコネクタ端子2では、ランス412の基部の幅方向の端縁412a、412bのうちの少なくとも一方の端縁412a(又は412b)が、ランス412の先端側に進むにつれて他方の端縁412b(又は412a)に近づく形状を有する。これにより、筒部41におけるランス412の基部周辺(開口方向から見て外側に膨出するように湾曲している部位)の曲率が大きくなるように押圧等によって筒部41を変形させることで、例えば
図8に示すように、切り起こされた残りの部位(筒部本体411)の端縁(平板状のコネクタ端子2の切り込み411Aにおいてランス412の端縁412a、412bと対向する端縁)411Bが前記変形によって間隙側(一対の端縁411B間:切起こされる前のランス412があった位置)に入り込む(
図8の二点鎖線参照)。このように端縁411Bが前記間隙に入り込むことで、該端縁411Bによってランス412の基部が外側に押され、これにより、ランス412の開き具合が大きくなる。このとき、ランス412の基部の端縁412a、412bの間隔(即ち、一対の端縁411Bの間隔)が、ランス412の先端側(コネクタ端子2の基端側)に進むにつれて小さくなっていることで、端縁411Bが前記間隙側に入り込んだときの該端縁411Bによるランス412の基部の外側への押し量が一対の端縁411Bが平行なランスの場合に比べてより大きくなるため、ランス412の開き(ランス412の先端の外側への移動)が顕著になる。また、この端縁411Bの前記間隙側への入り込み量が大きくなるのに伴って、ランス412の開き具合が大きくなる。このため、端縁411Bの前記間隙側への入り込み量を大きくする(調整する)ことで、ランス412の開き具合を大きくする(調整する)ことができる。
【0048】
尚、端縁411Bの前記間隙側への入り込みが大きくなり過ぎると、ランス412の基部の変形が弾性変形領域を超えてランス412としての機能を果たさなくなる。このため、本実施形態のコネクタ端子2では、前記変形(ランス412の開き具合)が弾性変形領域内となるような範囲内で、端縁411Bを前記間隙側に入り込ませる。
【0049】
ハウジング5は、
図1、
図2、
図7、及び
図9に示すように、コネクタ端子2の筒部41を周方向に囲う内周面50(詳しくは、第二部位52)を含み且つコネクタ端子2を収容する端子収容部6を有する。具体的に、ハウジング5は、端子収容部6と、相手側端子ピンPが挿入される端子挿入口5Aと、を有する。また、ハウジング5は、コネクタ端子2が挿入される基端側開口5Bを有する。具体的には、以下の通りである。
【0050】
ハウジング5は、中心軸cを有する筒状であり、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。ハウジング5は、内周面50を有し、内周面50は、コネクタ端子2が収容される空間(収容空間)Sを画定する。本実施形態の端子収容部6は、これら内周面50と収容空間Sとを含む。また、端子挿入口5Aは、ハウジング5の先端において、中心軸c方向に外部と収容空間Sとを連通させる開口であり、基端側開口5Bは、ハウジング5の基端において、中心軸c方向に外部と収容空間Sとを連通させる開口である。
【0051】
本実施形態の内周面50では、中心軸c方向の各位置における断面(中心軸cと直交する面方向の断面)が円形又は略円形である。この内周面50は、径の異なる複数の部位を有する。具体的には、先端側から基端側に向かって順に、径の最も小さな第一部位51と、第一部位51より径の大きな第二部位52と、第二部位52より径の大きな(最も径の大きな)第三部位53と、を有する。
【0052】
第一部位51は、内周面50において複数の弾性接触片42の周囲を囲う部位であり、第二部位52は、内周面50において筒部41の周囲を囲う部位であり、第三部位53は、内周面50において端子基部3の周囲を囲う部位である。第一部位51と第二部位52とは、先端側に向かうに連れて縮径する縮径部54によって接続されている。また、第二部位52と第三部位53とは、ランス係合部55によって接続されている。これら内周面50を構成する各部位51~55の中心軸は、一致している。
【0053】
ランス係合部55は、接続部4(詳しくは、筒部41)のランス412と対応する位置に配置されている。このランス係合部55は、中心軸c方向において部分的に設けられた径の小さな部位(中心軸c側に盛り上がった部位)である。具体的に、ランス係合部55は、第三部位53の端部から先端側に向かうに連れて縮径し、第二部位52より径が小さくなった後、先端側に向かうにつれて拡径している部位である。
【0054】
第三部位53の基端部は、ハウジング5の基端部に形成されている基端側開口5Bを画定する。上述のように、基端側開口5Bを通じてハウジング5の収容空間Sと外部空間とは連通している。
【0055】
また、ハウジング5は、先端において端子挿入口5Aを画定する壁部(先端壁部)60を有する。上述のように、この端子挿入口5Aを通じても、ハウジング5の収容空間Sと外部空間とは連通している。
【0056】
以上のように構成されるコネクタ1では、筒部41において周方向に対向する位置の一対のランス412が、それぞれ端子収容部6の内周面50(詳しくは、第二部位52)に当接している。このため、端子収容部6における筒部41の位置(筒部41の径方向におけるハウジング5内での位置)が位置決めされる。
【0057】
また、本実施形態のコネクタ1では、上述のように筒部41が位置決めされているのに加え、複数の弾性接触片42も内周面50(詳しくは、第一部位51)にその先端をそれぞれ当接させる、即ち、中心軸C方向に間隔をあけた複数の部位を内周面50に当接させることで、ハウジング5内におけるコネクタ端子2の姿勢(ハウジング5の中心軸cに対するコネクタ端子2の中心軸Cの方向)が規定される。これにより、コネクタ端子2がハウジング5内で中心軸Cを、端子挿入口5Aへの相手側端子ピンPの挿抜方向(ハウジング5の中心軸c方向)に一致するように固定される(即ち、ハウジング5の中心軸cに対してコネクタ端子2の中心軸Cが傾斜した状態になることが防がれる)。その結果、本実施形態のコネクタ1では、ハウジング5内でコネクタ端子2が斜めを向くことで相手側端子ピンPが接続し難くなることが効果的に防がれる。
【0058】
次に、コネクタ端子2の筒部41を押圧することによってランス412の開き具合を調整可能なサイズ調整装置について
図10~
図18を参照しつつ説明する。
【0059】
サイズ調整装置7は、
図10~
図15に示すように、筒部41の周方向の一部である被押圧部位A
1(
図15参照)を筒部41の内側(中心軸C)に向けて押圧可能な押圧部71と、筒部41の周方向における被押圧部位A
1を除いた残余部位A
2に対して外側から当接することによって該残余部位A
2(対向部位A
21及び狭持部位A
22を含む:
図15参照)を支持可能な支持部72と、を備える。また、サイズ調整装置7は、押圧部71の押圧方向(
図10に示す例では、上下方向)に往復動可能な一対の第一伝達部材73も備える。
【0060】
このサイズ調整装置7では、サイズ調整の対象となるコネクタ端子2(即ち、ランス412の開き具合の調整されるコネクタ端子2)は、一対のランス412の対向する方向が水平方向と一致するように、配置(載置)される(
図10参照)。尚、本実施形態における筒部41の被押圧部位A
1は、筒部41の開口方向(コネクタ端子2の中心軸C方向)から見て、一対のランス412の対向する方向と直交する方向の一方側(
図15における上側)の部位である。本実施形態の筒部41では、平板状のコネクタ端子2(
図6参照)において中心線C1と直交する方向に長い矩形板状の部位における長手方向の端部同士が対向する部位である。また、被押圧部位A
1は、
図16にも示すように、一対のランス412が対向する方向から見て、ランス412と筒部本体411との境界位置を含む部位A
3である。また、本実施形態のサイズ調整装置7は、被押圧部位A
1をコネクタ端子2の中心軸C側に向けて板厚の1/2~2倍程度、押圧する。
【0061】
押圧部71は、上下方向(詳しくは、上下方向の下向き)に加圧可能な加圧部711と、上下方向に延びると共に加圧部711によって加えられた圧力を被押圧部位A1に伝達する第二伝達部材712と、を有する。
【0062】
第二伝達部材712では、一方の端部(上端部)が加圧部711に接続され、他方の端部(下端部)が所定の位置(配置位置)に配置されたコネクタ端子2の被押圧部位A1を押圧する押圧面712aを有する。この押圧面712aは、被押圧部位A1と対応する形状である。具体的に、押圧面712aは、コネクタ端子2の中心軸C方向から見て上方に膨出する円弧状の湾曲面であり、且つ、上下方向から見てコネクタ端子2の中心軸C方向に長尺な矩形状である。
【0063】
支持部72は、上下方向と略直交する方向(
図10における左右方向)から筒部41を挟み込み可能な一対の挟み込み部材721を有する。また、支持部72は、一対の挟み込み部材721の間に、弾性部材722を有する。また、支持部72は、筒部41における被押圧部位A
1と対向する対向部位A
21を支持可能な対向部位支持部材723も有する。本実施形態の一対の挟み込み部材721は、加圧部711と対向部位支持部材723との間に配置され且つ加圧部711と連動して上下方向に往復動する昇降部材74に取り付けられている。また、本実施形態の対向部位支持部材723は、コネクタ端子2が搬送される搬送台75に配置されている(組み込まれている)。
【0064】
一対の挟み込み部材721のそれぞれは、上下方向における筒部41の配置位置より加圧部711の側(
図10では上側)に回転支点7211を有する。各挟み込み部材721が回転支点7211を回転中心にして(即ち、回転支点7211周りに)回動することによって、一対の挟み込み部材721が筒部41を挟み込む(
図11~
図13を参照)。これら一対の挟み込み部材721の間を通るように、第二伝達部材712が配置されている。本実施形態の一対の挟み込み部材721のそれぞれは、互いに対向する部位(面)に上下方向に延びる溝721gを有する(
図14及び
図15参照)。第二伝達部材712がこの溝721g内を上下動(往復動)することによって筒部41の被押圧部位A
1を押圧する。
【0065】
具体的に、一対の挟み込み部材721のそれぞれは、先端部の挟み込み方向の内側の端部、即ち、一方の挟み込み部材721aにおける他方の挟み込み部材721b側の端部、及び、他方の挟み込み部材721bにおける一方の挟み込み部材721a側の端部に配置される狭持面7212を有する(
図14参照)。また、一対の挟み込み部材721のそれぞれは、挟み込み方向の外側の端部(即ち、一方の挟み込み部材721aにおける他方の挟み込み部材721b側と反対の側の端部、及び、他方の挟み込み部材721bにおける一方の挟み込み部材721a側と反対の側の端部)に配置される傾斜面7215を有する(
図14参照)。
【0066】
狭持面7212は、該狭持面7212に挟み込まれる筒部41の残余部位A
2(詳しくは、残余部位A
2のうちの対向部位A
21を除いた狭持部位A
22)と当接する面である(
図14及び
図15参照)。この狭持面7212は、配置位置に配置されたコネクタ端子2の中心軸C方向から見て、円弧となるように湾曲する曲面であり、筒部41に対応した曲率である。この狭持面7212は、ランス412と対応する位置に凹部7213を有する。
【0067】
凹部7213は、狭持面7212が筒部41に当接したとき(即ち、一対位の挟み込み部材721が筒部41を挟み込んだとき)にランス412が挟み込み部材721と接触しないように設けられた凹みである(
図13及び
図15参照)。
【0068】
傾斜面7215は、第一伝達部材73の移動方向(押圧部71の押圧方向(本実施形態では上下方向))に対する傾斜面であり、加圧部711から遠ざかるにつれて相手側の挟み込み部材721(当該傾斜面7215を有する挟み込み部材721a(又は721b)と異なる挟み込み部材721b(又は721a))から遠ざかるように傾斜する。この傾斜面7215は、第一伝達部材73の下方に位置する。
【0069】
弾性部材722は、一対の挟み込み部材721の間で且つ上下方向における回転支点7211と狭持面7212との間に配置されている。具体的に、弾性部材722は、各挟み込み部材721における相手側との対向面に設けられた弾性部材用凹部7214間に配置される。この弾性部材722は、弾発力(弾性復帰力)によって、狭持面7212同士の間隔が広がる方向に一対挟み込み部材721を押圧している。本実施形態の弾性部材722は、例えば、圧縮コイルばねである。
【0070】
対向部位支持部材723は、サイズ調整装置7の配置位置に配置されたコネクタ端子2の筒部41(対向部位A
21)を下側から支持する支持面723aを有する(
図10及び
図14参照)。支持面723aは、配置位置に配置されたコネクタ端子2の中心軸C方向から見て、円弧となるように湾曲する曲面であり、筒部41(対向部位A
21)に対応した曲率である。この支持面723aは、搬送台75より押圧部71側(
図10における上方)に突出している。
【0071】
一対の第一伝達部材73のそれぞれは、上下方向において一対の挟み込み部材721のうちの対応する挟み込み部材721a、721bにおける傾斜面7215と、加圧部711との間に配置される。本実施形態の第一伝達部材73は、上下位方向に延びる長尺な部材であり、一方(
図10の上方)の端部がカム713を介して加圧部711と接続されている。また、第一伝達部材73は、昇降部材74によって上下方向に往復動可能に案内されている。これら一対の第一伝達部材73のそれぞれは、加圧部711によって加圧されたときに昇降部材74によって案内されることで下方に移動する。この移動により、各第一伝達部材73は、先端(加圧部711側と反対の側の端部)によって傾斜面7215を下向きに押圧する。各挟み込み部材721a(又は721b)は、回転支点7211周りに回動可能であるため、第一伝達部材73が傾斜面7215を下向きに押圧しつつ該傾斜面7215に対して摺動することで、先端部が相手側の挟み込み部材721b(又は721a)の先端部に接近する方向に回動する(
図11~
図13参照)。これにより、一対の挟み込み部材721のそれぞれは、弾性部材722の弾発力に逆らって、狭持面7212によって筒部41を挟み込む方向に回動する。
【0072】
本実施形態のサイズ調整装置7は、金属製の板状部材から所定の形状(平板状のコネクタ端子2)に切り抜かれた後、切り抜かれたもの(平板状のコネクタ端子2)の各部位が曲げ加工等されることによってコネクタ端子2が形成されるプレス装置に組み込まれている。
【0073】
以上のように構成されるサイズ調整装置7では、以下のようにしてコネクタ端子2の筒部41のサイズが調整されることによって、筒部本体411に対するランス412の開き具合が調整される。
【0074】
搬送台75において搬送されるコネクタ端子2は、対向部位支持部材723の位置まで搬送される。このときのコネクタ端子2は、一対のランス412が水平方向に並ぶ姿勢、即ち、一対のランス412の対向する方向が水平方向と一致する姿勢である。また、本実施形態のサイズ調整装置7では、コネクタ端子2は、矩形板状の部位を湾曲させて形成された筒部41における繋ぎ目(前記矩形板状の短辺同士が対向する部位)を上に向けた姿勢である。
【0075】
続いて、コネクタ端子2が対向部位支持部材723の支持面723a上に配置(載置)されると(
図10参照)、加圧部711と昇降部材74とが降下し始める。このとき、一対の挟み込み部材721の先端部同士は、弾性部材722の弾発力によって間隔をあけた状態である(
図10及び
図11参照)。
【0076】
昇降部材74は、所定の高さ位置(一対の挟み込み部材721が回動することで筒部41を挟み込むことができる高さ位置)まで降下すると該降下を停止する一方、加圧部711は、降下を続ける(
図11及び
図12参照)。この昇降部材74が停止した状態で加圧部711のみが降下し続けることによって、第一伝達部材73と第二伝達部材712とが一対の挟み込み部材721に対して下方に移動する。
【0077】
第一伝達部材73の一対の挟み込み部材721に対する降下によって、第一伝達部材73が挟み込み部材721の傾斜面7215を下方に押圧する。この状態で第一伝達部材73が降下し続けることにより、第一伝達部材73が傾斜面7215に対して摺動し、これにより、各挟み込み部材721が回動して筒部41(詳しくは、筒部41の狭持部位A
22)を挟み込む(
図12及び
図13参照)。
【0078】
また、この一対の挟み込み部材721による筒部41の挟み込みの際に、加圧部711の降下によって第二伝達部材712も所定の位置(目的とするランス412の開き具合に応じて予め設定されている位置)まで降下し、この降下によって筒部41(詳しくは、筒部41の被押圧部位A
1)を押圧する(
図13参照)。
【0079】
サイズ調整装置7では、一対の挟み込み部材721による筒部41の挟み込みと、第二伝達部材712(押圧部71)による筒部41の押圧とが、同時に完了する。即ち、本実施形態のサイズ調整装置7では、一対の挟み込み部材721の先端部(狭持面7212)が閉じ終わるタイミングと、第二伝達部材712が下死点に到達するタイミングとが、同じである。
【0080】
これにより、筒部41の残余部位A2が支持部72(一対の挟み込み部材721及び対向部位支持部材723)によって外側から支持された(拘束された)状態で、筒部41の被押圧部位A1が押圧される。この押圧によって筒部41が変形(具体的には、筒部41におけるランス412の基部周辺の曲率が大きくなるように筒部41が変形)してサイズ(本実施形態の例では径)が変化することで、ランス412の開き具合が調整される。
【0081】
続いて、加圧部711が上昇することで、第一伝達部材73が傾斜面7215に対して上昇し、これにより、一対の挟み込み部材721の先端部(狭持面7212)間が弾性部材722の弾発力によって開く。また、加圧部711が上昇することで、第二伝達部材712も上昇する。これにより、サイズ調整装置7の各構成部材71、721、73等は、初期位置(
図10参照)に戻る。以上により、コネクタ端子2のランス412の開き具合の調整が完了する。
【0082】
以上のサイズ調整装置7によれば、筒部41の残余部位A2が支持部72によって外側から支持(拘束)された状態で被押圧部位A1が押圧部71によって押圧される。このため、本実施形態のサイズ調整装置7によれば、筒部41における残余部位A2の変形を抑えつつ筒部41のサイズ(本実施形態では、一対のランス412の対向する方向と直交する方向(上下方向)の径)を小さくする(調整する)ことができる。
【0083】
このため、本実施形態のようなランス412を有する筒部41を備えたコネクタ端子2が配置位置に配置され、押圧部71が、筒部41におけるランス412の基部周辺の曲率が大きくなる方向に筒部41を押圧して変形させることで、例えば、
図17に示すような、筒部41を上下方向からダイD1とパンチP1によってプレスすることで生じる筒部41の大きな変形(周壁の一部が屈曲するような変形)を抑えつつ、ランス412の開き具合を調整することができる。
【0084】
また、本実施形態のサイズ調整装置7のように、加圧部711の加圧によって移動した第一伝達部材73が摺接する傾斜面7215が、回転支点7211周りに回動可能な一対の挟み込み部材721のそれぞれに設けられることで、筒部41の被押圧部位A1を押圧するための動力(加圧部711による押圧方向への圧力)を利用して、一対の挟み込み部材721によって残余部位A2を支持させる(挟み込ませる)ことができる。即ち、本実施形態のサイズ調整装置7の構成によれば、加圧部711による一方向への(下向きの)加圧のみで、被押圧部位A1への下向きへの押圧と、残余部位A2への挟み込み方向(押圧方向と略直交する方向)からの挟み込みによる支持とを、行うことができる。
【0085】
また、本実施形態のサイズ調整装置7では、対向部位支持部材723が配置位置に配置された筒部41の対向部位A
21を押圧部71によって押圧する方向(本実施形態の例では下方向き)と反対向きに支持する。これにより、押圧部71(第二伝達部材712)での押圧による筒部41の配置位置からの下方へのズレが確実に防がれる。このため、筒部41における前記ズレに起因する変形(例えば、
図18に示すように、前記ズレによって筒部41の一部が一対の挟み込み部材721における残余部位A
2の挟み込みが予定されていた部位(残余部位A
2を挟み込んで支持する部位:本実施形態における狭持面7212)と異なる部位によって挟み込まれることで生じる変形が筒部41に生じることを防ぐことができる。
【0086】
また、本実施形態のサイズ調整装置7では、押圧部71による筒部41の押圧の完了と、一対の挟み込み部材721による筒部41の挟み込みの完了とが、同時である。
【0087】
本実施形態のサイズ調整装置7のように、筒部41が周方向における複数の位置から複数の部材によって押圧や支持(拘束)される場合、押圧や支持する部材71、721、723による押圧のタイミングによって配置位置から筒部41がズレ、該ズレた部位が前記押圧や支持する部材間(例えば、挟み込み部材721と対向部位支持部材723との間や、第二伝達部材712(押圧部71)と挟み込み部材721との間等)に挟み込まれて変形することがある。しかし、本実施形態のサイズ調整装置7のように、各部材(第二伝達部材712(押圧部71)、挟み込み部材721、対向部位支持部材723等)の押圧や支持等が完了するタイミングが同じになるように各部材712、721、723によって複数の方向から筒部41を押圧や支持等することで、前記ズレに起因する変形(押圧する部材間の挟み込みによる変形)が好適に防がれる。
【0088】
尚、本発明のコネクタ端子、コネクタ、及びサイズ調整装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0089】
上記実施形態のコネクタ端子2における筒部41の周壁の一部が切り起こされることによって構成されたランス412は、先細り形状(一対の端縁412a、412bの間隔がランス412の基端から先端に向かうにつれて接近している形状)であるが、この構成に限定されない。
【0090】
例えば、
図19及び
図20に示すランス412のように、ランス412の基部における一対の端縁412a、412bのみが基端(ランス412と筒部本体411との境界)から先端側に離れるにつれて互いの間隔が狭くなる先細り形状であってもよい。
【0091】
また、
図21に示すランス412のように、一対の端縁412a、412bのうちの一方の端縁(
図21に示す例では端縁412a)のみが、先端側に向かうにつれて相手側の端縁(
図21に示す例では端縁412b)に近づく形状であってもよい。この場合、ランス412の開き具合を調整する際には、相手側の端縁412bに近づく形状の端縁412a側(
図21の場合は上側)から筒部41が押圧される(
図21の矢印参照)ことが好ましい。これは、ランス412が切り起こされた残りの部位の端縁411Bが、筒部本体411の間隙(切起こされる前のランス412があった位置)側に入り込む量が反対側から筒部41を押圧したときより多くなり、その結果、前記反対側から押圧したときよりランス412の広がりが大きくなるからである。
【0092】
また、上記実施形態のランス412の端縁412a、412bは、真っ直ぐ(直線状)であるがこの構成に限定されない。ランス412の端縁412a、412bは、湾曲等していてもよい。即ち、ランス412の基部の端縁412a、412bのうちの少なくとも一方の端縁412a(又は412b)が、ランス412の先端側に進むにつれて他方の端縁412b(又は412a)に近づく形状であれば、具体的な形状は限定されない。
【0093】
上記実施形態の筒部41は、円筒状であるが、この構成に限定されない。例えば
図22に示すように、筒部41において、中心軸C方向から見て筒部本体411とランス412との境界を含む部位が湾曲していれば、他の部位が平坦等であってもよい。即ち、筒部41の前記他の部位の具体的な形状は限定されない。
【0094】
上記実施形態の筒部41では、ランス412は、筒部本体411の基端側の端縁を含むように切り起こされているが、この構成に限定されない。例えば
図23に示すように、ランス412は、中心軸C方向における筒部本体411の中央部が切り起こされる、即ち、筒部本体411の基端側の端縁を含まない位置で切り起こされていてもよい。
【0095】
上記実施形態の筒部41は、一対のランス412を有しているが、この構成に限定されない。筒部41は、ランス412を一つ有していてもよく、三つ以上有していてもよい。
【0096】
上記実施形態のコネクタ端子2は、いわゆる雌型であるが、この構成に限定されない。コネクタ端子2は、いわゆる雄型であってもよい。即ち、コネクタ端子2は、ランス412を有する筒部41を備えていれば、雄型でも雌型でもよい。
【0097】
上記実施形態のサイズ調整装置7は、コネクタ端子2の筒部41のサイズを調整するが、この構成に限定されない。サイズ調整装置7がサイズを調整する対象は、例えば、相手側端子ピンPが挿抜される筒状の導電部を有するコネクタ端子の該導電部であってもよい。また、サイズ調整装置7がサイズを調整する対象は、コネクタ端子の一部に限定されない。前記対象は、金属等によって形成される筒部(例えば、圧着スリーブ、光コネクタの割スリーブ等)のような塑性変形可能な筒部を有する部材の該筒部であればよい。サイズ調整装置7によるサイズ調整の対象がこのような部材であっても、筒部の残余部位が外側から支持された状態で被押圧部位が押圧されるため、筒部における残余部位の変形を抑えつつサイズを小さくする(調整する)ことができる。
【0098】
上記実施形態のサイズ調整装置7では、第二伝達部材712による筒部41の押圧と、一対の挟み込み部材721による筒部41の挟み込みとが、一つの駆動源(加圧部711)によって駆動されているが、この構成に限定されない。例えば、第二伝達部材712が筒部41を押圧するための駆動源と、一対の挟み込み部材721が筒部41を挟み込むための駆動源とが、異なっていてもよい。この場合、一対の挟み込み部材721のそれぞれは、傾斜面7215を有していなくてもよい。
【0099】
上記実施形態のサイズ調整装置7では、第二伝達部材712が、上下方向(押圧方向)の寸法の異なる第二伝達部材712に交換されることで、ランス412の開き具合(即ち、押圧後の筒部41の上下方向の寸法)を変更することができるが、この構成に限定されない。サイズ調整装置7は、
図24に示すような第二伝達部材712の下死点(第二伝達部材712が最も降下した位置)の位置変更機構8を備えてもよい。この位置変更機構8の具体的な構成は、以下の通りである。
【0100】
位置変更機構8は、加圧部711の加圧方向(
図24の例では上下方向)における該加圧部711と第二伝達部材712との間に介在する介在部材81と、介在部材81を加圧方向と略直交する進退方向(
図24の例では左右方向:矢印α参照)に進退させる駆動部82と、を備える。
【0101】
介在部材81は、進退方向に進退することで、加圧部711と第二伝達部材712との加圧方向における間隔を変更できる。具体的に、介在部材81は、加圧方向に対して傾斜する傾斜面811を有する。この傾斜面811は、介在部材81の進退方向の先端から基端(駆動部82側)に進むにつれて、進退方向に真っ直ぐ延びる反対側の面812から離れるように傾斜している。また、傾斜面811は、第二伝達部材712の対応する傾斜面(加圧部711側の端面)7121と対向している。
【0102】
かかる構成によれば、駆動部82が介在部材81を進退させることで加圧方向における加圧部711と第二伝達部材712との間隔が変わるため、第二伝達部材712を交換しなくても第二伝達部材712の加圧方向の下死点の位置が変更される。
【0103】
尚、サイズ調整装置7において、第二伝達部材712の往復動(筒部41の押圧時における往復動)の方向を加圧方向(
図24に示す例では上下方向)に保ちつつ、第二伝達部材712を進退方向へ移動(矢印β参照)可能な構成とすることで、第二伝達部材712による筒部41の被押圧位置(第二伝達部材712によって押圧される位置)を進退方向に変更可能となる。この場合、進退方向における第二伝達部材712の移動と共に、駆動部82が介在部材81を進退させることで、加圧方向における第二伝達部材712の下死点の位置を変えずに、進退方向における筒部41の被押圧位置を変更できる。
【0104】
上記実施形態のサイズ調整装置7は、平板状のコネクタ端子2を曲げ加工してコネクタ端子2を形成するプレス装置に組み込まれているが、この構成に限定されない。サイズ調整装置7は、単独の装置であってもよい。
【0105】
上記実施形態のサイズ調整装置7がサイズを調整する筒部41は、円筒状であるが、この構成に限定されない。サイズ調整装置7がサイズを調整可能な筒部は、角筒形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…コネクタ、2…コネクタ端子、3…端子基部、31…基部本体、32…導体カシメ片、33…被覆部カシメ片、4…接続部、41…筒部、411…筒部本体、411B…筒部本体の間隙側の端縁、412…ランス、412a、412b…ランスの幅方向の端縁、413…規制片、42…弾性接触片(導通部)、421…第一屈曲部、422…第二屈曲部、423…弾性接触片の基部、424…弾性接触片の接触部、425…弾性接触片の先端部、5…コネクタハウジング、5A…端子挿入口、5B…基端側開口、50…内周面、51…内周面の第一部位、52…内周面の第二部位、53…内周面の第三部位、54…縮径部、55…ランス係合部、6…端子収容部、60…先端壁部、7…サイズ調整装置、71…押圧部、711…加圧部、712…第二伝達部材、712a…押圧面、713…カム、72…支持部、721、721a、721b…挟み込み部材、721g…溝、7211…回転支点、7212…狭持面、7213…凹部、7214…弾性部材用凹部、7215…傾斜面、722…弾性部材、723…対向部位支持部材、723a…支持面、73…第一伝達部材、74…昇降部材、75…搬送台、8…位置変更機構、81…介在部材、811…傾斜面、812…反対側の面、82…駆動部、500…コネクタ端子、501…基部、502…ランス、502a…ランスの端縁、A…弾性接触片によって囲まれた領域、A1…被押圧部位、A2…残余部位、A21…対向部位、A22…狭持部位、A3…ランスと筒部本体との境界位置を含む部位、C…コネクタ端子の中心軸、c…コネクタハウジングの中心軸、C1…中心線、D1…ダイ、P…相手側端子ピン、P1…パンチ、S…収容空間、γ…内接円