(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】寝具
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2017145610
(22)【出願日】2017-07-27
【審査請求日】2020-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】仁科 翠
(72)【発明者】
【氏名】西川 康行
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0231056(US,A1)
【文献】特開2007-209710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0129776(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0030872(US,A1)
【文献】実開昭63-046159(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202455(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0480765(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A47C 21/00
A47C 27/00
A47C 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具本体と、前記寝具本体の少なくとも一部を覆う寝具用カバーとを備えた寝具であって、
前記寝具本体の表面に固定された薄板状のベースと、
前記ベースの前記寝具本体との反対側に露出しており、赤色の可視光を照射する複数のLEDと、
を備え、
前記ベースは、前記表面に固定された薄板状の第1ベースと、前記第1ベース上で直線状に延びると共に複数の前記LEDが埋め込まれた複数の第2ベースと、保護部とを含み、
前記第2ベースが弾性材料によって構成されており、
前記第2ベース
には複数のコネクタのそれぞれ
が接続され、
前記保護部は、各前記第2ベースと各前記コネクタと
が接続されている境目を覆う、
寝具。
【請求項2】
複数の前記LEDは、前記第2ベースの長手方向に沿って並ぶように配置されており、
複数の前記LEDが並ぶ方向と前記第1ベースが延びる方向とが一致する、
請求項1に記載の寝具。
【請求項3】
前記可視光の波長は、620nm以上且つ650nm以下である、
請求項1又は2に記載の寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色の可視光を照射するLEDを備えた寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の身体が当てられる寝具においては、寝心地を良好にすることが従来から求められており、特に近年、寝具において、更なる付加価値を求めるため様々な工夫がなされている。実用新案登録第3203499号公報には、血流を促進し、健康効果及び美容効果の向上を求めることを目的としたマットが記載されている。
【0003】
このマットは、複数の層から成る積層構造を備える。積層構造は、クッション、電気ヒーター、電磁波シールドシート、消臭シート、遮熱シート、マイナスイオンシート及び物品保持シートを備え、クッション、電気ヒーター、電磁波シールドシート、消臭シート、遮熱シート、マイナスイオンシート及び物品保持シートが、この順で下から順に積層されている。
【0004】
上記の物品保持シートには、LED、トルマリン及び翡翠が整列状態で保持されている。物品保持シートは長方形状を成しており、物品保持シートの幅方向に沿って複数のLEDが並ぶように配置されている。物品保持シートの幅方向に並ぶ複数のLEDは、物品保持シートの長手方向に沿った複数個所に設けられている。複数のLEDは、物品保持シートの長手方向に沿って一定間隔ごとに配置されている。複数のLEDのそれぞれからは赤色光線が照射される。赤色光線は、マットの上に横たわった使用者に照射される。使用者の皮膚への赤色光線の照射により、シワ及び乾燥肌の改善、並びに、アンチエイジング効果の向上を狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、血流の促進等を目的としたマットにおいて、積層構造は、クッション、電気ヒーター、電磁波シールドシート、消臭シート、遮熱シート、マイナスイオンシート及び物品保持シートから成る。このように、積層構造は、種々の機能を備えた複数の層を含んでいるため、構造が複雑である。また、クッションの上に複数の層が設けられるため、重量が大きくなることが懸念される。
【0007】
本発明は、血流を促進することができると共に、構造が簡易であり、重量の増大を抑制することができる寝具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る寝具は、寝具本体と、寝具本体の少なくとも一部を覆う寝具用カバーとを備えた寝具であって、寝具本体の表面に固定された薄板状のベースと、ベースの寝具本体との反対側に露出しており、赤色の可視光を照射する複数のLEDと、を備え、ベースは、表面に固定された薄板状の第1ベースと、第1ベース上で直線状に延びると共に複数のLEDが埋め込まれた複数の第2ベースと、保護部とを含み、第2ベースが弾性材料によって構成されており、第2ベースには複数のコネクタのそれぞれが接続され、保護部は、各第2ベースと各コネクタとが接続されている境目を覆う。
【0009】
本発明に係る寝具は、寝具本体と、この寝具本体の少なくとも一部を覆う寝具用カバーとを備えており、寝具本体の表面に固定された薄板状のベースと、ベースの寝具本体との反対側に露出する複数のLEDとを更に備える。薄板状のベース及び複数のLEDが寝具本体の表面に固定されるので、寝具の構造を簡易に維持することができ、寝具の重量の増大を抑制することができる。また、赤色の可視光を照射する複数のLEDのそれぞれは、ベースの寝具本体との反対側に露出している。従って、複数のLEDが寝具本体の反対側に露出していることによって、LEDからの赤色の可視光を使用者に直接照射することができる。よって、赤色の可視光が照射された使用者の血流を促進することができる。
【0010】
また、複数のLEDは、第2ベースの長手方向に沿って並ぶように配置されており、複数のLEDが並ぶ方向と第1ベースが延びる方向とが一致してもよい。この場合、複数のLEDが並ぶ方向とベースが延びる方向とが一致するので、複数のLEDは直線状に配置される。よって、使用者の身体に直線的に赤色の可視光を照射することができる。
【0011】
また、ベースが薄板状の第1ベースと直線状の第2ベースとを含んで構成されるので、ベースの厚さの増大を抑制することができる。
【0012】
また、可視光の波長は、620nm以上且つ650nm以下であってもよい。この場合、赤色の可視光線の波長帯域から更に波長が620nm以上且つ650nm以下に絞られることにより、赤色の光の相対強度を高めることができる。すなわち、LEDが照射する光における赤色の光の相対強度を高めることができる。従って、LEDが照射する光の強度に対する血流の促進効果を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、血流を促進することができると共に、構造が簡易であり、重量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る寝具を示す平面図である。
【
図3】
図1の寝具の光照射ユニットを拡大した平面図である。
【
図4】光の波長と赤色光の相対強度との関係を示すグラフである。
【
図5】第2実施形態に係る寝具を示す平面図である。
【
図6】(a),(b)及び(c)は、実施例に係る寝具と比較例に係る寝具との実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る寝具の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。本明細書において「寝具」とは、寝具の使用者が身体を休めたり睡眠をとったりするときに使用者の身体に当てられるものであり、典型的には、敷き寝具、掛け寝具、布団、枕、座布団又はクッションである。「寝具本体」は、寝具の形状を維持する寝具の本体部分を示しており、典型的には、寝具用カバー以外の部分である。「寝具用カバー」は、寝具本体を収容するもの、及び寝具本体を収容する部分を含み、典型的には、寝具本体の少なくとも一部を覆うカバー、及び寝具本体の少なくとも一部を覆うシーツを含む。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態では、寝具が敷き寝具10である例について説明する。
図1及び
図2に示されるように、敷き寝具10は、例えば、ベッド1に載せられたマットレス、又は敷き布団である。一例として、ベッド1は、敷き寝具10が載せられる床板2と、床板2の幅方向である方向D1の両端それぞれに設けられる一対のサイドレール3と、床板2の長手方向である方向D2の一端に設けられるヘッドボード4と、床板2の方向D2の他端に設けられるフットボード5とを備える。
【0017】
敷き寝具10は、方向D1及び方向D2に延びる直方体状を成しており、高さ方向である方向D3に厚さを有する。敷き寝具10は、寝具本体11と、寝具本体11を収容する寝具用カバー12とを備える。寝具本体11は、寝具本体11の中身を構成する内容物11aと、内容物11aを収容する袋状の側地11bとを備える。寝具本体11は、平面視において、角部が丸みを帯びた長方形状を成している。
【0018】
内容物11aは、側地11bによって形成された内部空間Sに充填されている。側地11bは例えば布製である。敷き寝具10が敷き布団である場合、内容物11aは、中芯、及び中芯の外側に位置する中わたである。また、敷き寝具10がマットレス(ポケットコイルマットレス等)である場合、内容物11aは、例えば、複数のコイルスプリングが互いに連結されて形成されたコイルスプリング集合体である。寝具用カバー12は、例えば、薄い布状とされており、平面視において長方形状を成している。本実施形態において、寝具用カバー12は寝具本体11の全体を覆っている。
【0019】
敷き寝具10の方向D2の中央には、赤色の可視光(以下では赤色光Lと称することがある)を複数のLED21のそれぞれから照射する光照射ユニット20が設けられる。光照射ユニット20は、敷き寝具10の使用者M1の腰部が載せられる位置に設けられる。赤色光Lの波長は、例えば、620nm以上且つ650nm以下であり、好ましくは625nm以上且つ640nm以下であり、より好ましくは625nm以上且つ635nm以下である。赤色光Lからは、赤色の光と共に温熱効果が得られる。
【0020】
光照射ユニット20は、敷き寝具10の寝具本体11の表面11c(上面)に固定されており、具体的には、表面11cに形成された開口11dを塞ぐように固定されている。これにより、表面11cからの光照射ユニット20の突出量を抑えることが可能となる。光照射ユニット20は、寝具用カバー12の内側(下側)に設けられるが、
図1では、図示を分かりやすくするため光照射ユニット20を実線で示している。寝具用カバー12は光照射ユニット20からの赤色光Lを透過する薄い布である。
【0021】
光照射ユニット20は、敷き寝具10の幅方向である方向D1(一定方向)に延びる形状を成しており、例えば、長方形状を呈する。一例として、光照射ユニット20の長手方向(方向D1)の長さA1は60cm以上且つ80cm以下であり、光照射ユニット20の幅方向(方向D2)の幅A2は10cm以上且つ50cm以下である。光照射ユニット20の長手方向の一端20aと敷き寝具10の方向D2に延びる端辺10aとの距離A3は、5cm以上且つ20cm以下である。光照射ユニット20の厚さ(方向D3の長さ)は、例えば、1mm以上且つ10mm以下である。
【0022】
上記のように、長さA1が60cm以上であって且つ幅A2が10cm以上であることにより、使用者M1の腰に十分な赤色光Lを照射できると共に温熱効果を使用者M1に与えることが可能となる。赤色光Lが使用者M1の皮膚に照射されると、皮膚の血行が促進し、線維芽細胞が賦活化されると共に、コラーゲン産生促進作用が高められる。また、長さA1が80cm以下であって且つ幅A2が30cm以下であることにより、赤色光Lが強すぎて使用者M1の身体が熱くなりすぎる事態を抑制できる。
【0023】
更に、距離A3が20cm以下であることにより、後述するコネクタ34が方向D1の端部寄りに位置するので、コネクタ34が使用者M1の身体に接触する可能性を低減させることができる。また、光照射ユニット20の厚さが10mm以下であることにより、使用者M1の身体に光照射ユニット20が当たることによる違和感を抑えることができる。
【0024】
光照射ユニット20は、電力供給手段30から電力を受けて赤色光Lを照射する。電力供給手段30が供給する電力の電圧は、例えば、5V以上且つ12V以下であり、1つのLED21あたりの出力は0.8mW以上且つ15mW以下である。電力供給手段30は、ヘッドボード4の使用者M1側を向く表面4aに固定された操作部31と、操作部31と電気的に接続される制御部32と、制御部32から延びる配線33と、コネクタ34とを備える。操作部31からコネクタ34までの間にはACアダプタが設けられており、このACアダプタによって赤色光Lの強度を調整可能とされている。また、実際は複数の配線33が設けられているが、
図1では簡略化のため1本の配線33のみを示している。
【0025】
操作部31は、例えば、光照射ユニット20の動作を設定可能な操作パネルである。一例として、操作部31では、赤色光Lの強度、赤色光Lの照射開始時刻、赤色光Lの照射終了時刻、又は赤色光Lの照射時間が設定される。操作部31は、電源に接続されている。操作部31に設定された時間及び強度に応じて制御部32が電源からの電力の各LED21への供給制御を行うことにより、LED21の点灯及び消灯が行われる。
【0026】
制御部32は、各LED21からの配線33、及び操作部31からの配線が集中する部位である。制御部32は、例えば、敷き寝具10の隅部に埋め込まれた基板を含んでいる。配線33は、制御部32から方向D2に沿って延び出している。配線33は、方向D2の中央において曲げられて、コネクタ34を介して光照射ユニット20の各LED21に電気的に接続される。
【0027】
図3は、敷き寝具10の光照射ユニット20を拡大した平面図である。
図2及び
図3に示されるように、各配線33の制御部32との反対側の端部にはコネクタ34が設けられる。光照射ユニット20は、寝具本体11の表面11cに固定された薄板状のベース25を備える。ベース25は、寝具本体11の表面11cに固定された薄板状の第1ベース26と、第1ベース26上で直線状に延びる複数の第2ベース27と、各第2ベース27の長手方向の一端において方向D2に延びる保護部28とを備える。
【0028】
第2ベース27には複数のLED21が埋め込まれている。複数のコネクタ34のそれぞれから第2ベース27が延び出しており、各第2ベース27は方向D1に延びるように配置される。複数の第2ベース27は、例えば、互いに平行に延びている。第2ベース27は、例えば、シリコーン樹脂によって構成されている。
【0029】
第2ベース27は、絶縁性材料によって構成されており、防水加工が施されている。各第2ベース27の内部には、各LED21に電気的に接続される導線が埋め込まれている。第2ベース27は、弾性材料によって構成されていてもよい。この場合、第2ベース27に使用者M1の身体が当たっても、使用者M1に対する寝心地が損なわれないようにすることが可能となる。
【0030】
第1ベース26は、寝具本体11の側地11bに固定されている。側地11bへの第1ベース26の固定は、例えば、縫製、接着又は溶着によって行われる。一例として、第1ベース26は、樹脂製である。第1ベース26は、可撓性材料によって構成されていてもよい。第1ベース26は、例えば、透明とされている。なお、「透明」には、無色透明だけでなく、着色透明、及び、すりガラス状等、濁りがある透明も含まれる。このように第1ベース26が透明である場合、寝具本体11の内容物11aを視認可能となる。
【0031】
第1ベース26は、シート状とされたプラスチック素材で構成されていてもよい。例えば、第1ベース26の材料は、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)又は生分解性フィルムである。第1ベース26の厚さは、例えば、0.1mm以上且つ0.5mm以下である。
【0032】
一例として、平面視におけるLED21の形状は正方形状であり、平面視におけるLED21の1辺の長さは、2mm以上且つ10mm以下である。このようにLED21は小型化されているので、多くのLED21を配置可能であると共に、LED21によって血流促進効果及び温熱効果が確実に得られる。
【0033】
例えば、各第2ベース27には4個以上のLEDが方向D1に沿って配置されており、これにより、使用者M1の身体に対する血流促進効果及び温熱効果を十分に発揮させることが可能となる。更に、本実施形態では、32個以上のLED21が配置されているため、血流促進効果及び温熱効果が更に高められる。具体例として、各第2ベース27には13個のLED21が配置されており、LED21の総数は52である。
【0034】
上記のように、複数のLED21は、第2ベース27の長手方向(方向D1)に沿って並ぶように配置されており、各LED21は、その発光部分が外方(上方)に露出している。互いに隣り合う2個のLED21の間隔Pは、例えば、1cm以上且つ5cm以下である。本実施形態において、複数のLED21の間隔Pは互いに同一とされている。
【0035】
方向D2に互いに隣り合う2本の第2ベース27におけるLED21の方向D1の位置は、互いに同一であってもよい。複数のLED21は、格子状に配置されていてもよいし、千鳥状に配置されていてもよい。更に、複数のLED21は略均等に分散して配置されていてもよい。
【0036】
すなわち、複数のLED21が所定の点若しくは線に対して互いに対称となるように配置されていてもよいし、複数のLED21が同心円状に分散して配置されていてもよい。LED21が略均等に分散して配置されていることにより、赤色光Lの照射を均一に行える。また、LED21は、ベース25において全体的に満遍なく配置されていてもよいし、ベース25における特定の部位に局所的に配置されていてもよい。このようにLED21の配置態様は適宜変更可能である。
【0037】
保護部28は、第1ベース26の幅方向(方向D2)に沿って直線状に延びるように配置される。保護部28は、各第2ベース27及び第1ベース26から光照射ユニット20の外方に延びる複数のコネクタ34のそれぞれを保護する。保護部28は、各第2ベース27と各コネクタ34との境目を覆うことにより、各第2ベース27及び各コネクタ34の接続部分を保護する。
【0038】
保護部28は、絶縁性材料によって構成されており、例えば、樹脂製である。保護部28は、第1ベース26に接着されるテープ部材であって、第1ベース26への接着面(下面)にゴム系粘着剤が設けられていてもよい。一例として、保護部28はビニルテープである。このように絶縁性材料から成る保護部28が設けられることにより、第2ベース27及びコネクタ34を物理的及び電気的に保護することが可能である。
【0039】
次に、光照射ユニット20の使用方法の例について説明する。
図1に示されるように、操作部31を操作して光照射ユニット20の電源をオンにすると共に、例えば、LED21による照射時間が1時間となるように照射時間を設定する。そして、使用者M1の腰部に光照射ユニット20が位置するように、身体を敷き寝具10の上に横たわらせる。このとき、LED21からの赤色光Lが寝具用カバー12を介して使用者M1の腰部に照射される。照射開始から1時間後にLED21が自動的に消灯する。
【0040】
以上のように構成される敷き寝具10から得られる作用効果について詳細に説明する。
【0041】
図2に示されるように、敷き寝具10は、寝具本体11と、寝具本体11の少なくとも一部を覆う寝具用カバー12とを備えており、寝具本体11の表面11cに固定された薄板状のベース25と、ベース25の寝具本体11との反対側に露出する複数のLED21とを更に備える。薄板状のベース25、及び小型化されたLED21が敷き寝具10に設けられるので、敷き寝具10の構造を簡易に維持することができ、敷き寝具10の重量の増大を抑えることができる。
【0042】
また、赤色光Lを発光するLED21のそれぞれは、ベース25の寝具本体11との反対側(上側)に露出している。従って、複数のLED21が寝具本体11の反対側に露出していることによって、LED21からの赤色光Lを使用者M1に直接照射することができる。よって、赤色光Lが照射された使用者M1の皮膚の血流を促進することができる。
【0043】
また、ベース25は、表面11cにおいて方向D1に延びるように配置されており、複数のLED21は、ベース25において方向D1に並んで配置されている。従って、複数のLED21が並ぶ方向とベース25が延びる方向とが一致するので、複数のLED21は直線状に配置される。よって、使用者M1の身体に直線的に赤色光Lを照射することができる。本実施形態では、使用者M1の腰部に沿って横断的に赤色光Lを照射することができる。
【0044】
また、ベース25は、表面11cに固定された薄板状の第1ベース26と、第1ベース26上で直線状に延びると共に複数のLED21が埋め込まれた複数の第2ベース27とを含んでいる。よって、ベース25が薄板状の第1ベース26と直線状の第2ベース27とを含んで構成されるので、ベース25の厚さの増大を抑制することができる。
【0045】
また、赤色光Lの波長は、620nm以上且つ650nm以下であってもよい。
図4に示されるように、光の波長と赤色光Lの相対強度との関係について、波長が603nm以上になると徐々に赤色光Lの相対強度が増加し、波長が620nm以上且つ650nm以下であるときに赤色光Lの相対強度が急激に高くなる。そして、波長が650nmより長いと急激に赤色光Lの相対強度が低くなる。
【0046】
よって、赤色光Lの波長が620nm以上且つ650nm以下であって、赤色の可視光線の波長帯域から更に赤色光Lの波長が620nm以上且つ650nm以下に絞られることにより、赤色の光の相対強度を高めることができる。すなわち、LED21が照射する光における赤色の光の相対強度を高めることができる。従って、LED21が照射する赤色光Lの強度に対する血流の促進効果を一層高めることができる。
【0047】
また、
図1に示されるように、光照射ユニット20は、敷き寝具10における使用者M1の腰部が載せられる位置に設けられる。ところで、仮に光照射ユニット20が敷き寝具10の全体に設けられる場合、血流の促進効果は高まるものの、熱が強すぎることにより使用者M1に暑さを感じさせる懸念がある。
【0048】
これに対し、本実施形態のように、使用者M1の腰部の位置に光照射ユニット20が設けられる場合、腰部の血流が促進されるのは勿論、使用者M1の身体全体の血流を促進させることができる。具体的には、使用者M1の腰部から末端部(例えば足背部)に至るまでにおいて皮膚血流量を高めることができ、皮膚の温度を高めることができる。従って、必要最低限のLED21によって身体全体の血流を促進できる。また、LED21による過度なエネルギー消費を抑えつつ、シワを抑制して健康美容効果を高めると共に、皮膚のアンチエイジング効果を発揮することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る寝具について
図5を参照しながら説明する。
図5に示されるように、第2実施形態に係る寝具は枕40である。枕40は、枕本体41(寝具本体)と、枕本体41を収容する枕カバー42(寝具用カバー)と、光照射ユニット50とを備える。枕本体41、枕カバー42及び光照射ユニット50の構成は、大きさ及び形状以外の点において、前述した寝具本体11、寝具用カバー12及び光照射ユニット20それぞれの構成と同様である。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0050】
光照射ユニット50は、枕40の幅方向D4の一方側に寄った位置に設けられる。光照射ユニット50は、枕40の使用者M2の首部から後頭部までの部分が載せられる位置に設けられる。光照射ユニット50は、枕40の枕本体41の表面41c(上面)に固定されている。光照射ユニット50は、枕カバー42の内側(下側)に設けられるが、
図5では、図示を分かりやすくするため光照射ユニット50を実線で示している。枕カバー42は光照射ユニット50からの赤色光Lを透過する薄い布とされている。
【0051】
光照射ユニット50は、枕40の長手方向D5に延びる形状を成しており、例えば、長方形状を呈する。一例として、枕40の長手方向D5の長さB1は45cm以上且つ65cm以下であり、枕40の幅方向D4の幅B2は30cm以上且つ50cm以下である。光照射ユニット50から枕40の幅方向D4に延びる端辺40aまでの距離B3は1cm以上且つ5cm以下である。
【0052】
光照射ユニット50と、枕40の長手方向D5に延びる光照射ユニット50側の端辺40bとの間の距離B4は1cm以上且つ5cm以下である。光照射ユニット50と、枕40の長手方向D5に延びる光照射ユニット50の反対側の端辺40cとの間の距離B5は20cm以上且つ40cm以下である。
【0053】
光照射ユニット50の幅方向D4の長さB6は、例えば、5cm以上且つ20cm以下であり、光照射ユニット50の長手方向D5の長さB7は30cm以上且つ60cm以下である。以上のように光照射ユニット50が配置されることにより、赤色光Lによる前述した効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0054】
以上、第2実施形態に係る枕40は、枕本体41と、枕本体41の少なくとも一部を覆う枕カバー42とを備えており、枕本体41の表面41cに固定された光照射ユニット50のベース25と、ベース25の枕本体41との反対側に露出する複数のLED21とを備える。従って、枕40の構成を簡易に維持しつつ、枕40の重量の増大を抑制することができる。また、LED21からの赤色光Lを枕カバー42を介して使用者M2に照射することができるので第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
また、光照射ユニット50は、枕40の使用者M2の首部から後頭部までの部分が載せられる位置に設けられる。この位置に光照射ユニット50が設けられることにより、首部及び後頭部の血流を促進することができるので、首部及び後頭部の血行不良を改善して首こり及び肩こりを緩和することができる。更に、後頭部の血流が促進されて血行が改善されることにより育毛効果を発揮させることができる。
【0056】
以上、本発明に係る寝具の実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明に係る寝具の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0057】
例えば、前述の実施形態では、ベッド1の上に載せられる敷き寝具10について説明したが、ベッド1の構成は適宜変更可能である。また、本発明に係る寝具は、ベッドに載せられないものであってもよい。更に、本発明に係る寝具は、敷き寝具10又は枕40以外の寝具であってもよく、例えば、掛け寝具、座布団、クッション、背もたれ又は介護用の椅子であってもよい。
【0058】
また、前述の実施形態では、寝具本体11及び寝具用カバー12を備えた敷き寝具10について説明したが、敷き寝具10の構成は適宜変更可能である。例えば、寝具本体11の内部にマチ部が設けられており、マチ部が内部空間を複数に仕切っている寝具であってもよい。内容物11aは羽毛又はパイプ材であってもよく、内容物11aの種類は特に限定されない。側地11bの材料も適宜変更可能である。
【0059】
また、前述の実施形態では、表面11cに形成された開口11dを塞ぐように光照射ユニット20が固定される例について説明したが、寝具本体11に対する光照射ユニット20の固定態様については特に限定されない。例えば、表面11cに開口11dを形成せずに、表面11cに直接光照射ユニット20が固定されてもよい。この場合、開口11dの形成が不要となるので、寝具本体11に対する特殊な加工を不要とすることができる。第2実施形態の枕本体41及び光照射ユニット50についても同様である。
【0060】
また、光照射ユニット20,50の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した各実施形態に限定されず適宜変更可能である。例えば、幅を10cm、長さを30cmとした矩形状の複数の光照射ユニット20を敷き寝具10に固定してもよい。更に、LED21の形状、大きさ、数及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0061】
また、前述の実施形態では、第1ベース26及び第2ベース27を有するベース25を備えた光照射ユニット20について説明した。しかしながら、ベースの数は1又は3以上であってもよい。更に、第1ベース26及び第2ベース27の形状、大きさ、数、材料及び配置態様については適宜変更可能である。保護部28及び電力供給手段30についても同様である。
【0062】
また、前述の実施形態では、寝具本体11の表面11cに固定された薄板状のベース25を備えた敷き寝具10について説明したが、ベースは寝具本体の表面に着脱可能に固定されてもよい。また、光照射ユニット及び電力供給手段は寝具から着脱可能であってもよい。この場合、不要なときにはベース及びLEDを寝具から取り外すことができる。
【0063】
(実施例)
前述した各実施形態では、寝具本体の表面に光照射ユニット20,50が固定され、光照射ユニット20,50の各LED21が赤色光Lを使用者M1,M2の身体に照射することによって血流を促進させた。以下では、第1実施形態の敷き寝具10の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0064】
図1に示されるように、この実施例の実験では、使用者M1の腰部が載せられる位置に光照射ユニット20を固定した。実施例において、光照射ユニット20の方向D1の長さを30cmとし、光照射ユニット20の方向D2の長さを10cmとし、光照射ユニット20の厚さは2mm以上且つ3mm以下とした。各LED21から照射する赤色光Lの波長は、628nm以上且つ638nm以下とし、電力供給手段30からの電力については、電流はDC、電圧値は5V以上且つ12V以下とした。また、LED21の個数は144個とした。
【0065】
実験を行った実験室について、気温は22℃以上且つ24℃以下とし、相対湿度は45%以上且つ55%以下とした。被検者は20代~40代の冷え性を自覚する女性5名であり、被検者の腰部の温度変化と足背部の温度変化、及び腰部の血流量の変化と足背部の血流量の変化、を測定した。
【0066】
実施例では、最初に光照射ユニット20の電源を5分間オフにした後に、電源をオンとし各LED21から腰部への赤色光Lの照射を60分間行ってから光照射ユニット20の電源をオフにし、オフにした状態を60分間継続した。この間の被検者の皮膚の温度(皮膚温)と血流量(皮膚血流量)を時系列で測定した。
【0067】
これに対し、比較例では、LED21を黒いテープで塞ぎLED21による熱を被検者に付与した。すなわち、比較例では、LED21から腰部への赤色光Lの照射を行わずにLED21の熱のみを被検者に付与した。具体的には、最初に光照射ユニット20の電源を5分間オフにした後に、電源をオンとしLED21から腰部への熱の付与を60分間行ってから光照射ユニット20の電源をオフにし、オフにした状態を60分間継続した。この間の被検者の皮膚温と皮膚血流量を時系列で測定した。
【0068】
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)は、前述した実験の結果を示すグラフである。
図6(a)は被検者の腰部における皮膚温の時系列データを示しており、
図6(b)は被検者の足背部における皮膚温の時系列データを示しており、
図6(c)は被検者の足背部における皮膚血流量の時系列データを示している。
【0069】
図6(a)に示されるように、赤色光Lを照射する実施例と熱を付与する比較例とにおいて、腰部の皮膚温には有意な差がないことが分かった。一方、
図6(b)に示されるように、足背部の皮膚温については、赤色光Lを照射する実施例の方が比較例よりも全体的に高く、実施例の温度と比較例の温度との差は最大1.0℃程度であった、また、
図6(c)に示されるように、足背部の皮膚血流量については、特に光照射ユニット20の電源をオンにしている間及びオフにした後20分間において、実施例の方が比較例よりも多く、実施例と比較例の差は最大で0.5(mL/min/100g)程度であった。
【0070】
以上の実験より、波長が628nm以上且つ638nm以下である赤色光Lを腰部に照射する実施例では、熱を付与する比較例よりも、足背部において皮膚温及び皮膚血流量が高められることが分かった。このように、実施例では、赤色光Lを腰部に照射することによって、腰部から離れた足背部の温度及び血流量を高められた。従って、熱ではなく赤色の可視光そのものが皮膚温の上昇及び皮膚血流量の増加に有効であることが分かった。
【符号の説明】
【0071】
1…ベッド、2…床板、3…サイドレール、4…ヘッドボード、4a…表面、5…フットボード、10…敷き寝具(寝具)、10a…端部、11…寝具本体、11a…内容物、11b…側地、11c…表面、11d…開口、12…寝具用カバー、20,50…光照射ユニット、20a…一端、21…LED、25…ベース、26…第1ベース、27…第2ベース、28…保護部、30…電力供給手段、31…操作部、32…制御部、33…配線、34…コネクタ、40…枕(寝具)、40a,40b,40c…端辺、41…枕本体(寝具本体)、41c…表面、42…枕カバー(寝具用カバー)、A1,B1…長さ、A2,B2…幅、A3,B3,B4,B5…距離、D1,D2,D3…方向、D4…幅方向、D5…長手方向、M1,M2…使用者、P…間隔、S…内部空間。