(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】バケットコンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
B65G 17/42 20060101AFI20220203BHJP
B65G 17/12 20060101ALI20220203BHJP
B65G 17/36 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B65G17/42 A
B65G17/12 A
B65G17/36 A
(21)【出願番号】P 2017214613
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591157534
【氏名又は名称】株式会社大日ハンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】平見 剛
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-096021(JP,U)
【文献】特開2010-254287(JP,A)
【文献】実開平06-053814(JP,U)
【文献】登録実用新案第3118562(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/42
B65G 17/12
B65G 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に周回する無端帯と、前記無端帯にボルトとナットで取付けられたバケットとを備
え、
前記バケットの内部に、角形の前記ナット又は前記ボルトの角形頭
と、前記角形のナットの外周又は前記ボルトにおける角形頭の外周を囲うカバー部材が配置されており、前記カバー部材は、前記バケットで扱う物品が安定的に載り得る平坦面を外周に持たない形状になっている
構成であって、
前記カバー部材は、座金又は前記角形のナット若しくは前記ボルトにおける角形の頭に予め固定されていて、前記角形のナット又はボルトにおける角形頭へのレンチの嵌め込みに伴って弾性変形可能になっている、
バケットコンベヤ装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、平坦な状態に押し曲げ可能な円錐ばねであって座金に固定されており、前記円錐ばねの小径部の内径は、前記角形のナットの外接円又はボルトにおける角形頭の外接円よりも大径に設定されている、
請求項1に記載したバケットコンベヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、バケットコンベヤ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒状や粉状のバラ物品を持ち上げる搬送装置として、上下方向に周回する無端帯に多数のバケットを取付けて成るバケットコンベヤ装置が使用されている。無端帯としてはベルト(平ベルト)又はチェーンが使用されており、ベルトを使用した例が例えば特許文献1~3に開示されて、チェーンを使用した例が例えば特許文献4に開示されている。
【0003】
特許文献1~3では、バケットの背板をボルト及びナットでベルトに締結している。特許文献1では、ナットはベルトの裏面部に配置されていて、六角ボルトをバケットの内部からナットにねじ込んでいる。従って、特許文献1では、ボルトの六角頭がバケットの内部に配置されている。
【0004】
特許文献2,3では、ボルトのねじ軸は、ベルト及びバケットにベルトの裏側から挿通されていてバケットの内部に突出しており、ねじ軸に六角ナットがねじ込まれている。従って、特許文献2,3では、六角ナットがバケットの内部に配置されている。
【0005】
他方、特許文献4では、バケットの側板がチェーンに連結されている。すなわち、チェーンを構成する板材にバケットの側板をボルト及びナットで固定しており、ボルトの軸は外側からバケットの側板に挿通されていて、バケットの内部に配置したナットがボルトにねじ込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平08-0310631号公報
【文献】実開昭63-157019号のマイクロフィルム
【文献】実開平04-029517号のマイクロフィルム
【文献】特開2000-211721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のバケットコンベヤ装置では、バケットは上昇行程では上向きに開口した姿勢になっていて、下降行程では下向きに開口した姿勢になっており、下降から上昇に転じる下死点の行程で、ホッパー等に溜められている物品をバケットに掬い取り、上昇から下降に転じる上死点の行程で、物品を他のコンベヤやシュートに投入している。
【0008】
バケットから他のコンベヤやシュートへの投入について工夫が成されており、バケットに溜まっていた物品の全量を他のコンベヤやシュートに投入できる筈なのであるが、実際には、バケットに残ったままになる物品が存在して、この物品が下方に落下する現象が見られた。
【0009】
この場合、落下した物品はホッパー等に回収されるようになっており、物品が無駄になることは防止するように対応しているが、コンベヤ装置の高さが非常に高い場合や、物品が衝撃に弱い場合などには、落下して硬い部材に衝突した衝撃で物品が破損・変形することがあり、破損したり変形したりすると、商品価値が無くなったり著しく低下したりしてしまうことがある。
【0010】
例えば、物品が農作物の種子である場合は、外観上は異常はなくても内部が破損していると発芽することができず、従って、1つのパッケージ中の発芽率が低下してしまうことになり、農家と種子会社との両方にとってデメリットになる。
【0011】
粒状菓子や落花生のように外観に商品価値がある物品の場合は、破損すると商品価値がなくなってしまう。従って、この場合は、製品の歩留りが低下するのみでなく、破損した物品の除去に多大の手間を要することも有り得る。
【0012】
本願発明はかかる現状に鑑み成されたものであり、物品の落下を防止できるバケットコンベヤ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
さて、問題は、上死点から下降行程に至る過程でなぜ物品がバケットに残ったままになるのかであるが、本願発明者が観察したところ、特許文献2,3のようにナットがバケットに配置されているタイプの場合、ナットの外周の平坦面が水平姿勢になっていると、その平坦面に物品が載ったままで残ってしまい、これが、バケットの姿勢変化や振動等によって下方に落下してしまうという現象が見つかった。本願発明は、この知見を基礎として成されたものである。
【0014】
本願発明のバケットコンベヤ装置は、 「上下方向に周回する無端帯と、前記無端帯にボルトとナットで取付けられたバケットとを備え、
前記バケットの内部に、角形の前記ナット又は前記ボルトの角形頭と、前記角形のナットの外周又は前記ボルトにおける角形頭の外周を囲うカバー部材が配置されており、前記カバー部材は、前記バケットで扱う物品が安定的に載り得る平坦面を外周に持たない形状になっている」
という基本構成である。
【0015】
そして、請求項1の発明では、上記基本構成において、 「前記カバー部材は、座金又は前記角形のナット若しくは前記ボルトにおける角形の頭に予め固定されていて、前記角形のナット又はボルトにおける角形頭へのレンチの嵌め込みに伴って弾性変形可能になっている」
という特徴を有している。
【0016】
「物品が安定的に載り得る平坦面を外周に持たない形状」について説明すると、まず、ナット又はボルトの軸心方向から見てカバー部材が円形や楕円形のような非角形である場合は、カバー部材の外周面に物品が載ることはない。他方、カバー部材の外周に平面が存在しても、角錐状のように傾斜していると、この場合も、カバー部材の外周に物品が載ることはない。更に、カバー部材が角筒状であっても、角数が多くて平坦面の面積が物品の大きさに比べて非常に小さい場合は、物品が平坦面に安定的に載ることはできない。
【0018】
請求項1の発明の展開例として、請求項2では、
「前記カバー部材は、平坦な状態に押し曲げ可能な円錐ばねであって座金に固定されており、前記円錐ばねの小径部の内径は、前記角形のナットの外接円又はボルトにおける角形頭の外接円よりも大径に設定されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0019】
本願発明を採用すると、汎用されている六角ナットや六角ボルトなどを使用してバケットを無端帯にしっかりと取付けることを許容しつ、物品がナットの外周面やボルトの頭の外周面に載ったままとなって下方に落下してしまうことを防止できる。従って、ナット又はボルトの回転操作の容易性(延いてはバケットの取付け・取り外しの容易性)を損なうことなく、物品がバケットに残留して下方に落下することを防止できる。
【0020】
カバー部材は、ナット又はボルトでバケットを締結してから後付けすることも可能であるが、本願発明の構成を採用すると、カバー部材は座金等に予め取付けられているため、締結作業の手間の増大を防止できる。
【0021】
請求項2の構成を採用すると、市販されている円錐ばねを利用できるため、コストダウンに貢献できる。また、円錐ばねは高い強度を有していて長期間使用しても破損することはないため、安全性・信頼性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態を示す図で、(A)はコンベヤ装置の概略側面図、(B)は要部の分離斜視図である。
【
図2】(A)は第1実施形態の要部縦断側面図、(B)は(A)のB-B視図、(C)はナットの回転操作状態を示す縦断側面図、(D)は作用を示す要部縦断側面図である。
【
図3】(A)は第2実施形態の要部縦断側面図、(B)は第3実施形態の要部縦断側面図、(C)は第4実施形態の要部縦断側面図、(D)は(C)のD-D視図である。
【
図4】(A)は第5実施形態の示す一部破断側面図、(B)は(A)のB-B視図、(C)は
参考例の要部縦断側面図、(D)は(C)に使用しているカバー部材のD-D視図、(E)は
第6実施形態の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1).第1実施形態の基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1,2に示す第1実施形態を説明する。図面の説明で側面図の文言を使用しており、また、以下では前後・左右の文言を使用するが、プーリの回転軸心方向から見た状態を側面視、プーリの回転軸心と直交した水平方向から見た状態を正面視としている。前後方向は正面視方向(背面視方向)と同じである。左右方向は、プーリの回転軸心方向と平行な方向である。
【0024】
図1(A)では、バケットコンベヤ装置(以下、単に「コンベヤ装置」いう)の概略を示している。コンベヤ装置は、枠材に回転自在に保持された上下のプーリ1,2を有している。上下のプーリ1,2にはベルト(平ベルト)3が巻き掛けられており、ベルト3の外面に多数のバケット4が所定間隔で取り付けられている。なお、上下プーリ1,2の間隔(従ってコンベヤ装置の高さ)はまちまちであるが、20mほどの高さになる場合もある。
【0025】
下部のプーリ2の下方には、粒状の物品Wが投入されたホッパー5が配置されており、ベルト3の周回に伴って、バケット4が下死点から上昇に移行する過程で物品Wがバケット4に掬い取られる。バケット4に掬い取られた物品Wは、バケット4が上死点から下降行程に移行する途次に、コンテナやシート等の受け部材6に投入される。
【0026】
バケット4は合成樹脂製であり、従来と同様の形態である。すなわち、ベルト3に重なる背板7とこれに連続した左右の側板8、左右の側板8に繋がった前板9とを有しており、背板7と側板8と前板9とは、縦断側面視で湾曲した形状の底部10を介して一体に繋がっている。
【0027】
バケット4の背板7は、上端寄りの左右2箇所の部位がボルト12及び六角のナット13によってベルト3に固定されている。ボルト12はベルト3の裏面に重なるフランジ14に固定されており、フランジ14には、回り止めのため、ベルト3に食い込む係合爪15が複数個形成されている。
【0028】
バケット4の背板7には、フランジ14よりも大径でフランジ14の厚さ寸法と同じかやや大きい寸法で内向きに突出した膨出部16が形成されている。従って、ベルト3の周回に際してフランジ14がプーリ1,2に当たることはない。
【0029】
(2).カバー手段
ナット13は、膨出部16に重なった平座金17を介してバケット4に固定されているが、平座金17に、ナット13を囲うカバー部材の一例として、金属線材製の円錐ばね18が溶接で固定されている。円錐ばね18における先端部(小径部)の内径は、ナット13の外接円よりもやや大径になっている(外接円の直径と同じ寸法でもよいが、円錐ばね18の変形を確実化させるのには、やや大径とするのが好ましい。)。
【0030】
図2(C)に示すように、円錐ばね18は平坦なリング状に押し曲げることができる。従って、軸心方向から見て、放射方向に隣り合った線材は互いに重なり合っていない。円錐ばね18において、隣り合った線材の間に間隔が空いていることは構わないが、その間隔は、物品Wの大きさよりも十分に小さくなるように設定している。
【0031】
ナット13は六角であるので外周に6つの平坦面13aを有しているが、ナット13を締め込みきった状態で平坦面13aがどのような姿勢になっているかは一定しておらず、
図2(D)のように、平坦面13aが上下に位置して水平状になっている場合も有り得る。このように平坦面13aが水平姿勢になっていると、従来は、上死点から下降動に移行するときに、
図2(D)に一点鎖線で示すように、平坦面13aに物品Wが載ったままになって受け部材6に投入されず、その後に振動等によって物品Wが下方に落下してしまう現象が見られた。
【0032】
しかし、本実施形態では、ナット13の平坦面13aが水平姿勢であっても、ナット13は円錐ばね18で囲われているため、物品Wが平坦面13aに載ることはなくて、
図2(D)に示すように、物品Wは全て受け部材6に投入される。すなわち、物品Wが円錐ばね18に安定的に載ったままになることはないため、物品Wは、その全量が受け部材6に投入されていく。従って、落下して破損したり変形したりした物品Wが製品の中に紛れ込んで品質の低下を招くようなことはなく、また、不良品は発生しないため歩留りの低下も防止できる。
【0033】
さて、ベルト3へのバケット4の取付け又は取り外しは、例えば、片手の指先をフランジ14に当てることによってボルト12の回転を阻止した状態で、レンチ(ソケットレンチ)19でナット13を回転操作させることによって行われる(ボルト12の回転防止は、ドライバ等の部材を使用して行ってもよい。)。
【0034】
この場合、レンチ19をナット13に嵌め込むべく円錐ばね18を押すと、円錐ばね18は、弾性変形して
図2(C)に示すように円板状になる。従って、ナット13の回転操作を支障なく行える。従って、市販されているレンチ19及びナット13を使用しつつ、バケット4の取付け・取り外しを支障なく行える。図示の実施形態では、バケット4は左右2箇所がボルト12及びナット13でベルト3に固定されているが、1か所のみ又は3か所以上をベルト3に固定することも可能である。
【0035】
(3).他の実施形態
次に、
図3,4に示す他の実施形態を説明する。
図3(A)に示す第2実施形態では、カバー部材21は、圧縮変形する弾性体で形成されており、外周面及び内周面をテーパ状に形成した台形筒状(頭を切った円錐状、台錘状)になっている。また、カバー部材21は、座金22に接着している。
【0036】
カバー部材21は、スポンジのように体積の変化率が大きい材料を使用しており、レンチ19の押圧によって円板状に潰れ変形する。座金22を、ナット13が重なる部分の外側が段落ちした凸形に形成することにより、カバー部材21の圧縮変形を容易にしている。
図3(B)に示す第3実施形態は第2実施形態の変形例であり、内周をストレートに形成している。
【0037】
図3(C)(D)に示す第4実施形態では、カバー部材21は、金属弾性板であってドーム状部を有しており、ドーム状部の外周部にリング23が繋がっていて、リング23が溶接等によって平座金17に固定されている。カバー部材21のドーム状部は、多数のスリット24によって多数の帯片21bに分離しており、このため、一点鎖線で示すように、レンチ19の押圧によって容易に変形する。なお、スリット24に代えて切り込みを形成してもよい。
【0038】
図4(A)に示す第5実施形態でも、カバー部材21は金属弾性板で製造されており、ナット13のフランジ13bに固定されている。すなわち、カバー部材21は、ナット13のフランジ13bを抱持する断面円弧状のリング25と、リング25に一体に繋がった円筒状部とを有しており、円筒状部を多数の切り込みによって多数の帯片26に分断し、各帯片26の先端に、内向きの蓋片26aを折り曲げ形成している。
【0039】
この実施形態でも、レンチ19の押圧によって各帯片26は外側に倒れ変形する。この場合、蓋片26aが軸心側に傾斜しているため、レンチ19が誘い込まれて、帯片26が容易に変形する。なお、リング25は、ナット13のフランジ13bに強制嵌合で固定してもよいし、溶接で固定してもよい。
【0040】
図4(C)(D)に示す
参考例では、カバー部材21は樹脂製であり、外周を円形に形成して内周面を六角に形成した筒状部27と、その先端に一体に設けた蓋部28とからなっている。蓋部28には、ボルト12のねじ山に係合する突条(或いは凹凸)29を形成している。蓋部28は、複数のスリット30によって複数に分断されている。
【0041】
この参考例では、カバー部材21は、ナット13をねじ込んでから後付けされる。そして、蓋部28は複数に分断されているため、ボルト12への嵌め込みが許容されている。また、筒状部27はナット13に対して回転不能に嵌まっているため、カバー部材21が回転することはない。従って、カバー部材21は、人がペンチ等の工具を使用して引っ張らない限り、外れることはない。この第6実施形態のカバー部材21は、既存のコンベヤ装置に対してもそのまま適用できる。
【0042】
図4(E)に示す第
6実施形態では、カバー部材として円錐ばね18を使用して、これをナット13のフランジ13bに溶接によって固定している。
【0043】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、特許文献4のように側板を無端帯に締結しているタイプにも適用できるし、特許文献1のように、バケットの内部からボルトをねじ込むタイプにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明は、実際に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0045】
W 物品
R レンチ
1,2 プーリ
3 ベルト
4 バケット
5 ホッパー
6 受け部材
7 背板
12 ボルト
13 六角ナット
14 フランジ
17 平座金
18 カバー部材として機能する円錐ばね
19 レンチ
21 カバー部材