IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丸茂電機株式会社の特許一覧

特許7011302LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト
<>
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図1
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図2
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図3
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図4
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図5
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図6
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図7
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図8
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図9
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図10
  • 特許-LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライト
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220119BHJP
【FI】
H01L33/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017247246
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019114666
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390032573
【氏名又は名称】丸茂電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】榎本 實
(72)【発明者】
【氏名】麻奥 正城
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-183042(JP,A)
【文献】特開2011-040307(JP,A)
【文献】特開2007-052957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0147498(US,A1)
【文献】特開2015-185760(JP,A)
【文献】特開2015-084374(JP,A)
【文献】特表2017-523600(JP,A)
【文献】特開2010-027612(JP,A)
【文献】特開2015-012143(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103392093(CN,A)
【文献】特開2012-169189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板上に二次元状に表面実装された複数のLEDチップを備えたLED光源装置において、
前記複数のLEDチップは同一の波長の光を照射するLEDチップであり、
前記複数のLEDチップのうち一部のLEDチップの上方には、蛍光体を含む蛍光体層が形成され、
前記複数のLEDチップのうち、上方に前記蛍光体層が形成されているLEDチップはダム材で囲われておらず、上方に前記蛍光体層が形成されていないLEDチップのみがダム材で囲われており、
前記複数のLEDチップは、前記蛍光体層の有無および/または前記蛍光体層に含まれる前記蛍光体の種類に応じて、異なる複数の波長の光を外部にそれぞれ照射する、LED光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLED光源装置であって、
前記複数のLEDチップのうち、上方に前記蛍光体層が形成されていないLEDチップのみを発光させることが可能なLED光源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のLED光源装置であって、
前記複数のLEDチップは、青色の波長の光を照射する複数の青色LEDチップ、またはUVAを照射するLEDチップである、LED光源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のLED光源装置であって、
前記複数のLEDチップは、前記蛍光体層の有無および/または前記蛍光体層に含まれる前記蛍光体の種類に応じて、少なくとも青色、赤色、および緑色の波長の光を照射する、または、少なくとも青色、赤色、および緑色の波長の光と、蛍光体によりアンバー色および/若しくは白色の波長の光とを外部に照射する、LED光源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のLED光源装置の製造方法であって、
前記複数のLEDチップを搭載した後に、前記ダム材を形成する、LED光源装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載のLED光源装置と、
前記LED光源装置を収納する光源筐体と、
前記光源筐体からの光を集光して外部に出射する集光レンズと、
前記光源筐体と前記集光レンズとの相対距離を可変とする位置調整機構とを備えたことを特徴とするスポットライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLEDチップを基板上に配置し、当該複数のLEDチップを蛍光体層で覆ったLED光源装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-81234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、たとえば、基板上に配置した複数の青色LEDチップのうち、一部の青色LEDチップをそのまま青色で発光させ、他の青色LEDチップに蛍光体層を載せて白色で発光させる場合に、青色を発光させるためのLEDチップの照射光により、隣接するLEDチップの蛍光体層が励起されてしまい、白色を発光させるためのLEDチップを発光させていない場合でも、白色の発光が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、同一の波長の光を放射する複数のLEDチップを用いて、異なる複数の色の光を適切に照射可能なLED光源装置、LED光源装置の製造方法およびスポットライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るLED光源装置は、実装基板上に二次元状に表面実装された複数のLEDチップを備えたLED光源装置において、前記複数のLEDチップは同一の波長の光を照射するLEDチップであり、前記複数のLEDチップのうち一部のLEDチップの上方には、蛍光体を含む蛍光体層が形成され、前記複数のLEDチップのうち、上方に前記蛍光体層が形成されているLEDチップはダム材で囲われておらず、上方に前記蛍光体層が形成されていないLEDチップのみがダム材で囲われており、前記複数のLEDチップは、前記蛍光体層の有無および/または前記蛍光体層に含まれる前記蛍光体の種類に応じて、異なる複数の波長の光を外部にそれぞれ照射する。
【0007】
上記LED光源装置において、前記複数のLEDチップのうち、上方に前記蛍光体層が形成されていないLEDチップのみを発光させることが可能なように構成することができる。
【0008】
上記LED光源装置において、前記複数のLEDチップは、青色の波長の光を照射する複数の青色LEDチップ、またはUVAを照射するLEDチップであるように構成することができる。
【0009】
上記LED光源装置において、前記複数のLEDチップは、前記蛍光体層の有無または前記蛍光体層に含まれる前記蛍光体の種類に応じて、少なくとも青色、赤色、および緑色の波長の光を外部に照射する、または、少なくとも青色、赤色、および緑色の波長の光と、蛍光体によりアンバー色および/若しくは白色の波長の光とを外部に照射するように構成することができる。
【0010】
本発明に係るLED光源装置の製造方法は、上記LED光源装置の製造方法であって、前記複数のLEDチップを搭載した後に、前記ダム材を形成する。
【0011】
本発明に係るスポットライトは、上記LED光源装置と、前記LED光源装置を収納する光源筐体と、前記光源筐体からの光を集光して外部に出射する集光レンズと、前記光源筐体と前記集光レンズとの相対距離を可変とする位置調整機構とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同一の波長の光を放射する複数のLEDチップを用いて、異なる複数の色の光を適切に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るLED光源装置の平面図である。
図2図1に示すLED光源装置のII-II線に沿う断面図である。
図3図1に示すLED光源装置のIII-III線に沿う断面図である。
図4図1に示すIV部分の拡大図である。
図5】太陽光の周波数スペクトルの一例を示す図である。
図6】LED光源装置の比較例を示す図である。
図7】従来のLED光源装置(比較例)の周波数スペクトルを示す図である。
図8】本実施形態に係るLED光源装置(実施例)の周波数スペクトルを示す図である。
図9】LEDチップの他の配置例を示す図である。
図10】LEDチップの他の配置例を示す図である。
図11】本実施形態に係るスポットライト照明装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
≪LED光源装置≫
図1は、本実施形態に係るLED光源装置1の平面図である。また、図2は、図1に示すLED光源装置1のII-II線に沿う断面図であり、図3は、図1に示すLED光源装置1のIII-III線に沿う断面図である。本実施形態に係るLED光源装置1は、図1~3に示すように、実装基板41と、実装基板41の上面に形成された絶縁層42と、絶縁層42の上面に形成された配線層43と、白色保護層44と、複数のLEDチップ46と、蛍光体層47と、透光性樹脂層48と、ダム材51とを備えている。
【0016】
実装基板41は、熱伝導性および電気特性に優れる表面が金属からなる板材であり、例えば表面が銅やアルミニウムからなる水冷構造のヒートスプレッダ(上板、中板、下板の3種類の銅板からなる積層構造体)や銅やアルミニウムから構成される金属板(例えば、0.5~2.00mm厚)により構成される。ガラスエポキシ樹脂のような熱伝導性が低い材料は、特に放熱性の悪くなる発光中心部の光量が特に低下するドーナツ化現象が生じることとなるので好ましくない。
【0017】
実装基板41の上には、絶縁層42および配線層43が形成されている。絶縁層42は、実装基板41と配線層43とを電気絶縁するための層であり、ガラスエポキシ樹脂やポリイミド樹脂を主要な成分として構成することができる。なお、ガラスエポキシ樹脂は熱伝導性が低い(たとえば1W/mK程度)ため、フィラーを加えることで、熱伝導性を高める(たとえば10~20W/mK程度)とすることができる。また、絶縁層42を、シリコーン樹脂などの有機樹脂を主成分として構成することもできる。また、絶縁層42上の必要位置に配線層43が形成される。配線層43は、銅箔などの金属膜である。なお、配線層43は、図示しない電源および制御装置と電気的に接続されている。
【0018】
本実施形態では、公知の銅箔付き絶縁樹脂シート(たとえば、絶縁層42となるガラスエポキシ樹脂と、配線層43となる銅箔とが予め積層されたシート)を、実装基板41の上にラミネートすることで、実装基板41上に絶縁層42および配線層43を積層することができる。また、配線層43は、積層された銅箔付き絶縁樹脂シートの銅箔を、フォトエッチングすることにより不要な部分を取り除くことで、配線層43として形成される。なお、図1においては、配線層43の図示は省略している。
【0019】
白色保護層44は、配線層43を保護するとともに、反射材としての役割も奏する。白色保護層44として、シリコーン樹脂を主成分とした白色有機樹脂を用いることができる。また、白色保護層44として、ガラスエポキシ樹脂やポリアミド樹脂を主要な成分とし、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛、アルミナなどの白色無機顔料を含む構成とすることもできる。
【0020】
LEDチップ46は、同一の波長の光を照射する表面実装型ベアLEDチップである。たとえば、本実施形態では、同一の波長の青色光を照射する、同一仕様の窒化ガリウム系(GaN、AlGaN、InGaN)のLEDチップを用いている。ただし、LEDチップ46は、同一の波長の光を照射するものであり、かつ、後述する蛍光体層47に含まれる蛍光体を励起できるものであれば特に限定されず、たとえば、紫外線、特にUVAを照射するLEDチップを用いることもできる。また、本実施形態では、多数個のLEDチップ46がn行×m列(例えば、6直列×7並列、5直列×4並列)に二次元状に配置され、所謂COB(Chip On Board)実装されている。高輝度を実現するために、LEDチップ46は、例えば最大定格電流300mA以上、好ましくは最大定格電流400mA以上、さらに好ましくは最大定格電流500mA以上のLEDチップを使用する。LEDチップ46の大きさは、3~5mm四方以下(好ましくは1.5mm四方以下)であり、全て同一の仕様である。なお、たとえ同一仕様であり同一の製品番号(型式)のLEDチップであっても、製品ごとに照射する光の周波数には微差が生じる。そのため、本発明における「同一の波長の光」とは、全く同一の波長の光という意味ではなく、略同一の色の光とみなせる一定の波長帯域内の光を照射するものとして製造されたLEDチップであればよく、たとえば、このような同一の波長の光を照射する青色LEDチップの例として、440~465nmの周波数帯域内の光を照射するLEDチップが挙げられる。
【0021】
図2および図3に示すように、複数のLEDチップ46のうち一部のLEDチップの上面には、蛍光体が含まれる蛍光体層47が積層される。本実施形態では、LEDチップ46の上に蛍光体層47のシートを貼付することで、LEDチップ46の上に蛍光体層47を積層することができる。蛍光体層47は、たとえばエポキシ系やシリコーン系樹脂からなる透明の樹脂層に、蛍光体を混入したものである。蛍光体層47に含まれる蛍光体には複数種類あり、本実施形態では、青色LEDチップ46から照射される光で励起して緑色の周波数帯域の光を発光する蛍光体を含む蛍光体層47と、青色LEDチップ46から照射される光で励起して赤色の周波数帯域の光を発光する蛍光体を含む蛍光体層47と、青色LEDチップ46から照射される光で励起して白色の周波数帯域の光を発光する蛍光体を含む蛍光体層47とを有する。また、本実施形態では、蛍光体層47をLEDチップ46の上面に積層することで、蛍光体で生じた熱を、LEDチップ46を介して外部に放出することができる。
【0022】
図4は、図1のIV部分の拡大図である。本実施形態では、図4に示すように、各LEDチップ46の周囲を囲うようにダム材51が設けられている。ダム材51は、たとえば白色フィラー含有樹脂により構成することができる。本実施形態では、LEDチップ46のボンディング処理を施した後に、ダム材51が白色保護層44の上に形成される。なお、本実施形態では、LEDチップ46をフリップチップ実装によりボンディングしているが、この構成に限定されず、たとえばワイヤーボンディングによりLEDチップ46をボンディングすることもできる。
【0023】
ダム材51の幅は、特に限定されないが、LED光源装置1の光量を高めるために、たとえば図4に示す幅W1~W4を0.3~1.2mm、より好ましくは0.3~0.8mmとなるように形成することができる。また、ダム材51で囲まれる開口部の大きさも、特に限定されないが、たとえば図4に示すW5およびW6を、1.0~2.0mm、より好ましくは1.2~1.6mmとなるように形成することができる。さらに、ダム材51の高さも、特に限定されないが、たとえば0.2~1.0mmとすることができ、より好ましくは0.3~0.5mmとなるように形成することができる。
【0024】
本実施形態では、図2および図3に示すように、ダム材51を形成した後に、ダム材51内に、透光性樹脂が充填され、透光性樹脂層48が形成される。透光性樹脂層48は、たとえばエポキシ系やシリコーン系の透明樹脂により構成されており、蛍光体は含まれていない。
【0025】
なお、以下においては、図1~3に示すように、ダム材51で囲われた個別の領域のうち、緑色を発光する蛍光体層47が積層されたLEDチップ46を含む領域を、緑色発光領域45と称す。同様に、ダム材51で囲われた個別の領域のうち、赤色を発光する蛍光体層47が積層されたLEDチップ46を含む領域を赤色発光領域45と称し、白色を発光する蛍光体層47が積層されたLEDチップ46を含む領域を白色発光領域45と称す。また、ダム材51で囲われた個別の領域であり、蛍光体層47が積層されていないLEDチップ46を含む領域を青色発光領域45と称す。LED光源装置1は、これら4種の発光領域45~45において緑、赤、白および青の4色の光を発光することで、所望する色の光を適切に発色させることができる。
【0026】
すなわち、本実施形態では、発光領域45のLEDチップ46のみを発光させて青色を発色させる場合でも、ダム材51により、発光領域45に隣接する蛍光体層47の蛍光体が励起することを有効に防止することができ、青色の光に他の色の光が混ざることを防止することができる。このように、緑、赤、白および青のそれぞれの色の光を、隣接する蛍光体層47の蛍光体を励起させることなく独自に発光させることができるため、所望する光の配色を容易とすることができる。
【0027】
また、同様の理由から、照射光の演色性も高めることができる。すなわち、図5に示すように、太陽光の可視領域における周波数スペクトルは波長の起伏が少なく比較的緩やかな波形となることが知られているが、赤色の光を発光する赤色LEDチップおよび緑色の光を発光する緑色LEDチップを有する従来のLED光源装置では、赤色周波数帯域および緑色周波数帯域において周波数スペクトルの強度が急峻なピークを有するため、演色性が低下してしまうという問題があった。これに対して、本実施形態では、蛍光体層47を用いて赤色および緑色を発光させることで、可視領域における周波数スペクトルを全体的に緩やかにすることができる。その結果、LED光源装置1の周波数スペクトルを太陽光の周波数スペクトルに近づけることができ、演色性を向上させることができる。
【0028】
≪実施例≫
本発明の効果を説明するために、発明者は、図6(A)に示すように、青色LEDチップ46の隣に赤色蛍光体層47を設けたLED光源装置(比較例)を試作した。また、図示していないが、発明者は、青色LEDチップ46の隣に赤色蛍光体層47を設け、さらに、本実施形態のように、青色LEDチップ46をダム材51で囲ったLED光源装置(実施例)を試作した。なお、当該比較例および実施例においては、同一の周波数の光を放射する青色LEDチップ46のみを配置し、かつ、赤色蛍光体層47の下にはLEDチップは配置していない。
【0029】
図6(B)に示すように、比較例においては、青色LEDチップ46を発光させた場合に、赤色蛍光体層47が隣接する青色LEDチップ46の光により励起し、赤色蛍光体層47からも赤色の光が放射されてしまう。そのため、比較例のLED光源装置から照射される光は、図7に示すように、赤色の周波数帯域(600nm付近)において強度が高くなり、赤みを含んだ青色の光となってしまう。なお、図7は、従来のLED光源装置(比較例)の周波数スペクトルを示す図である。
【0030】
これに対して、本実施形態に係るLED光源装置(実施例)では、青色LEDチップ46をダム材51で囲っているため、図8に示すように、比較例と比べて赤色の周波数帯域(600nm付近)における強度を抑えることができ、適切な青色の光を放射することができた。なお、図8は、本実施形態に係るLED光源装置(実施例)の周波数スペクトルを示す図である。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るLED光源装置1は、実装基板41上に二次元状に表面実装された複数のLEDチップ46を備えたLED光源装置1において、複数のLEDチップ46は同一の波長の光を照射するLEDチップであり、複数のLEDチップ46はそれぞれダム材51で囲まれており、各LEDチップ46がダム材51で囲まれた各領域を発光領域45とした場合に、複数の発光領域45のうち少なくとも一部は、蛍光体を含む蛍光体層47を有し、複数の発光領域45は、蛍光体層47の有無や蛍光体層47に含まれる蛍光体の種類に応じて、異なる複数の波長の光をそれぞれ照射する。このように、本実施形態では、隣接するLEDチップ46の光がダム材51により遮断されるため、LEDチップ46の光により、隣接するLEDチップ46に積層された蛍光体層47の蛍光体が励起してしまうことを有効に防止することができ、同一の波長の光を照射する同一仕様のLEDチップを複数用いた場合でも、それぞれの発光領域45~45から適切な色の光を発光させることができる。これにより、本実施形態に係るLED光源装置1では、制御装置(不図示)により様々な色の光を配色する場合でも、隣接する蛍光体層47を励起させることなく、発光領域45~45から一定の波長の光を所望する強度で照射させることができるため、色の比較的容易に配色を行うことができる。
【0032】
また、本実施形態に係るLED光源装置1では、同一の波長の光を照射する同一仕様のLEDチップ46のみを用いることで、LED光源装置1の組み立てが容易となり、製造工程の簡易化、製造コストの低減という効果を奏することもできる。特に、赤色の光および緑色の光を発色させるために、赤色の光を発光する赤色LEDチップおよび緑色の光を発光する緑色LEDチップを用いる場合には、青色の光を発光する青色LEDチップに赤色または緑色を発色するための蛍光体層を積層する場合と比べて価格が高くなるため、製造コストが高くなるという問題がある。これに対して、本実施形態では、赤色LEDチップおよび緑色LEDチップを用いずに、LED光源装置1を製造することができるため、LED光源装置1の製造コストを低くすることができる。また、赤色LEDチップおよび緑色LEDチップを用いる場合には、可視領域のうち赤色周波数帯域および緑色周波数帯域におけるスペクトル強度が急峻となる傾向があり演色性が低下するという問題が生じるが、本実施形態では、赤色LEDチップおよび緑色LEDチップを用いずに、蛍光体層47を用いて赤色および緑色を発光させることで、可視領域における周波数スペクトルが緩やかとなり、その結果、LED光源装置1の演色性を向上させることができる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、全てのLEDチップ46がダム材51で囲まれている構成を例示して説明したが、この構成に限定されず、たとえば、蛍光体層47が積層されていないLEDチップ46のみをダム材51で囲う構成とすることもできる。蛍光体層47の蛍光体が隣接するLEDチップ46の照射光で励起される場合に特に問題となるのは、隣接するLEDチップ46が蛍光体層47が積層されていないLEDチップ46である場合である。そのため、蛍光体層47が積層されていないLEDチップ46のみをダム材51で囲う構成とすることで、蛍光体層47の蛍光体が隣接するLEDチップ46の照射光で励起されることに起因する上記問題を大部分解決することができるとともに、LED光源装置の製造コストを低減することもできる。
【0034】
また、上述した実施形態では、複数のLEDチップ46が格子状に配置されている構成を例示したが、LEDチップ46は二次元状に配置されていれば特に限定されず、たとえば、図9に示すように、緑色発光領域45、赤色発光領域45、白色発光領域45、青色発光領域45、およびアンバー色を発光する蛍光体層が積層されたLEDチップ46を含むアンバー色発光領域45が配置された六角形領域60を稠密配置する構成とすることができる。また、図10に示すように、緑色発光領域45、赤色発光領域45、および青色発光領域45を同心円上に配置する構成とすることもできる。なお、図9および図10では、上述したように、蛍光体層47が積層されていないLEDチップ46のみをダム材51で囲う構成としている。すなわち、緑色発光領域45、赤色発光領域45、白色発光領域45、アンバー色発光領域45がダム材51で囲われていない構成としている。
【0035】
≪スポットライト照明装置≫
次に、本実施形態に係るスポットライト照明装置30について説明する。図11は、本実施形態に係るスポットライト照明装置30の構成図である。光源となるLED光源装置1は、ヒートシンク31の中心部に配置されている。光源筐体34の側面に設けられた開口にはLED光源装置1からの照射光を絞る集光レンズ32が配設されている。集光レンズ32は、例えば光源側がフロスト加工された集光レンズであり、集光レンズ32の手前にある仮想焦点Fよりも集光レンズに近い位置に配置されたLED光源装置1からの照射光を拡大して被照射物に向けて照射する。ヒートシンク31は、位置調整機構35に搭載されており、集光レンズ32との距離を調整することが可能になっている。例えば位置調整機構35により集光レンズ32との距離を短くすれば広角配光が可能となり、位置調整機構35により集光レンズ32との距離を長くすれば狭角配光が可能となる。LED光源装置1の照射光の色や強度等は、光源筐体34の下方に配置された制御装置33により制御される。
【0036】
本実施形態に係るスポットライト照明装置30では、LED光源装置1の発光面が拡大されて被照射物に照射される。そのため、発光面におけるLEDチップの配置パターンを工夫しないと、被照射物への照射光がまばらな多色光になるという問題が生じる。この点、本実施形態では、発光面におけるLEDチップを数十mm以下、より好ましくは数mm以下の高密度実装とし、上述の配置パターンを採用することにより均一な多色光を照射できるように工夫している。
【0037】
以上にように、本実施形態に係るスポットライト照明装置30によれば、白熱電球を光源とする従来のスポットライト照明装置と同様の照射光を得ることができるので、舞台、スタジオ、展示会場、宴会場などの演出空間において有効に用いることができる。
【0038】
以上、本開示にて幾つかの実施形態を単に例示として詳細に説明したが、本発明の新規な教示及び有利な効果から実質的に逸脱せずに、その実施の形態には多くの改変例が可能である。
【0039】
たとえば、上述した実施形態では、LEDチップ46の上に蛍光体層47のシートを貼付することで、LEDチップ46の上に蛍光体層47を積層する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、透光性樹脂層48に蛍光体を混ぜることで、実質的に、LEDチップ46の上に蛍光体の層を積層することができる。また、この場合、透光性樹脂層48のうちLEDチップ46の近傍に蛍光体を偏在させる構成とすることが好ましい。蛍光体で発生した熱をLEDチップ46を介して外部に放出することが容易となるためである。
【0040】
また、上述した実施形態では、赤、オレンジ、黄、青、緑、紫など様々な色を配色することができるLED光源装置1を例示して説明したが、この構成に限定されず、たとえば、全ての発光領域45~45を発光させて白色の光のみを発光させるLED光源装置とすることもできる。この場合、発光領域45~45の発光強度をそれぞれ調整することで、色温度の異なる白色の光を発光する構成とすることもできる。
【0041】
さらに、上述した実施形態では、LED光源装置1が、白色を発光する蛍光体層47が積層されたLEDチップ46を含む白色発光領域45を有する構成を例示したが、白色発光領域45に代えて、または、白色発光領域45に加えて、アンバー色を発光する蛍光体層47が積層されたLEDチップ46を含むアンバー色発光領域45を有する構成としてもよい。この場合も、光の演色性を高くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1:LED光源装置
41:実装基板
42:絶縁層
43:配線層
44:白色保護層
45:発光領域
46:LEDチップ
47:蛍光体層
48:透光性樹脂層
51:ダム材
30:スポットライト照明装置
31:ヒートシンク
32:集光レンズ
33:制御装置
34:光源筐体
35:位置調整機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11