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  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図1
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図2
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図3A
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】脈動吸収機能付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20220119BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20220119BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220119BHJP
   F16L 55/045 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
F02M55/02 310A
F02M55/02 310C
F02M55/00 E
F02M37/00 321A
F16L55/045
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018041084
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019157649
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一斉
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-77973(JP,A)
【文献】特開2011-163154(JP,A)
【文献】特開昭64-65389(JP,A)
【文献】特公昭46-15985(JP,B1)
【文献】実開平2-18902(JP,U)
【文献】特開平9-151830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-55/02
F16L 55/00-55/48
F15B 1/00-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプが挿入される雌継手部としてのコネクタ本体部と、
前記コネクタ本体部の側面に設けられ、前記コネクタ本体部の内部と連通する流路を有する継手部と、
前記コネクタ本体部の内部に配置され、流体の脈動を吸収する脈動吸収体と、
を備えるL字形状の脈動吸収機能付きコネクタであって、
前記パイプが挿入される開口から前記コネクタ本体部の内部に挿入されて、当該内部における前記脈動吸収体の位置を決める吸収体保持部材を備え、
前記吸収体保持部材は、前記パイプが挿入される筒状のパイプ保持部、前記継手部の流路と対向する位置に配置される、側面に開口が形成された流体流通部、および、前記脈動吸収体を保持する吸収体保持部を、この順で有する、脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記コネクタ本体部は、一体成形品であり、
前記脈動吸収体の外径が、前記パイプの外径よりも大きい、
脈動吸収機能付きコネクタ
【請求項3】
請求項1または2に記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記流体流通部は、前記パイプ保持部から前記吸収体保持部へ向かって先細りの形状とされている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記コネクタ本体部の、前記脈動吸収体が配置される軸方向端部内面に、凸部が形成されているとともに、前記脈動吸収体に、前記凸部が嵌まり込む凹部が形成されている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記脈動吸収体に、前記吸収体保持部が嵌まり込む凹部が形成されている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記吸収体保持部に、前記脈動吸収体に連通する孔が形成されている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈動吸収機能を有するL字形状のコネクタに関し、特に、燃料用配管などの接続に用いるのに好適な脈動吸収機能を有するL字形状のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1、2に記載のコネクタがある。特許文献1に記載のコネクタ(流体継手)は、継手本体の内部に配置された、樹脂またはゴムからなるベローズ(脈動吸収体)を備え、このベローズは、板形状の支持体を介して継手本体の内部に配置されている。ここで、特許文献1の図2に記載のL字形状のコネクタでは、継手本体の軸方向端部の壁が、ベローズが固定される支持体とされている。すなわち、継手本体は、一体成形品でない。なお、ベローズの外径は、パイプの外径とほぼ等しい。
【0003】
一方、特許文献2に記載のL字形状のコネクタ(燃料配管用コネクタ)は、ハウジング(継手本体)とは別に、当該ハウジングと一体的に成形されたシリンダを備え、このシリンダの中にピストンが配置されている。このピストンが、脈動吸収の役割を担う。ここで、上記シリンダは、シリンダ蓋で閉止されている。すなわち、シリンダとシリンダ蓋とは、一体成形品でない。なお、ピストンの外径は、パイプ(燃料配管)の外径に関係なく決定できるので、ピストンの外径を、パイプの外径よりも大きくして、ピストンの脈動吸収機能を高めることは容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-77973号公報
【文献】特開2011-163154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図2に記載のL字形状のコネクタ、および、特許文献2に記載のL字形状のコネクタには、次のような問題がある。特許文献1に記載のL字形状のコネクタでは、前記のとおり、その継手本体が一体成形品でない。また、特許文献2に記載のL字形状のコネクタでも同様に、前記のとおり、シリンダとシリンダ蓋とが、一体成形品でない。すなわち、いずれのL字形状のコネクタにおいても、一体成形品に比べて気密の信頼性が低いという問題がある。
【0006】
一方、パイプ外径と同径以上の脈動吸収体を内部に有するL字形状のコネクタにおいて、コネクタ本体部が一体成形品であるコネクタは見当たらない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、コネクタ本体部を一体的に成形しても、コネクタ本体部の内部に、コネクタ本体部に挿入されるパイプ外径と同径以上の脈動吸収体を配置することができる構成のL字形状の脈動吸収機能付きコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パイプが挿入される雌継手部としてのコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の側面に設けられ、前記コネクタ本体部の内部と連通する流路を有する継手部と、前記コネクタ本体部の内部に配置され、流体の脈動を吸収する脈動吸収体とを備えるL字形状の脈動吸収機能付きコネクタである。この脈動吸収機能付きコネクタは、前記パイプが挿入される開口から前記コネクタ本体部の内部に挿入されて、当該内部における前記脈動吸収体の位置を決める吸収体保持部材を備え、前記吸収体保持部材は、前記パイプが挿入される筒状のパイプ保持部、前記継手部の流路と対向する位置に配置される、側面に開口が形成された流体流通部、および、前記脈動吸収体を保持する吸収体保持部を、この順で有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パイプが挿入される開口からコネクタ本体部の内部に吸収体保持部材を挿入することで、コネクタ本体部の内部における脈動吸収体の位置決めを行うことができるので、吸収体保持部材を挿入するための専用の、後から塞がなければならない開口をコネクタ本体部に設けなくても、すなわち、コネクタ本体部を一体的に成形しても、コネクタ本体部の内部に、コネクタ本体部に挿入されるパイプ外径と同径以上の脈動吸収体を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る脈動吸収機能付きコネクタにパイプが接続された状態の脈動吸収機能付きコネクタの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る脈動吸収機能付きコネクタにパイプが接続された状態の脈動吸収機能付きコネクタの断面図である。
図3A図2に示すカラーの斜視図である。
図3B図2に示す脈動吸収体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(コネクタの構成)
図1、2に示すコネクタ100(脈動吸収機能付きコネクタ)は、例えば、インジェクタ(燃料噴射装置、不図示)に、燃料(ガソリンなどの燃料油)を供給するための燃料配管系統において、配管接続に用いられるコネクタである。
【0013】
このコネクタ100は、パイプ50が挿入される雌継手部としてのコネクタ本体部1と、コネクタ本体部1の側面に設けられた雄継手部2(継手部)とを備えるL字形状のコネクタである。コネクタ本体部1は、一体成形品であり、例えば、射出成形により一体成形される。また、コネクタ本体部1および雄継手部2についても同様であり、コネクタ本体部1と雄継手部2とは、例えば、射出成形により一体成形される。なお、本実施形態では、コネクタ本体部1と雄継手部2とは直交しているが、コネクタ本体部1と雄継手部2とが直交している必要はなく、例えば、コネクタ本体部1と雄継手部2とのなす角度が45度であってもよい。すなわち、上記の「L字形状」とは、コネクタ本体部1と雄継手部2とのなす角度が、90度のものだけを含むのではなく、30度や45度や60度など、様々な角度をなすものも含まれる。
【0014】
雄継手部2には、例えば、燃料ホース(不図示)が接続される。なお、図1、2中に符号8を付して示す部品は、コネクタ本体部1にパイプ50を固定するためのリテーナと呼ばれる部品である。パイプ50のスプール部50a(環状凸部)とリテーナ8とが係合させられることで、パイプ50はコネクタ本体部1に固定(ロック)される。なお、リテーナ8のより具体的な例については、例えば、特開2015-48898号公報に記載のリテーナを参照されたい。
【0015】
ここで、燃料が流れる雄継手部2の流路2a、コネクタ本体部1の内部、および、パイプ50の流路50bは、燃料ポンプ(不図示)により、常時、高い圧力(燃料圧力)がかかった状態となる。そして、インジェクタから燃料が噴射されると、圧力は下がり、インジェクタの弁が閉じると、圧力は上昇する。この繰り返しにより圧力が変動し、この圧力変動が、燃料(流体)の脈動の原因となる。
【0016】
そこで、燃料(流体)の脈動を吸収するバルーン3(脈動吸収体)が、コネクタ本体部1の内部に配置される。本実施形態のバルーン3は、蛇腹形状の中空の弾性体であって、その材料は、樹脂、ゴムなどである。燃料の圧力変動が、バルーン3により緩和されることで、燃料の脈動が抑えられる。なお、本実施形態では、弾性変形するバルーン3の軸方向両端部に、それぞれ、凹部3a、3bが設けられている。また、バルーン3の外径Dm(図3B参照)は、パイプ50の外径Dpよりも大きい。
【0017】
このバルーン3は、コネクタ本体部1の内部において、カラー4(吸収体保持部材)により、位置決めされるとともに保持される。
【0018】
カラー4は、パイプ50の先端部が挿入される筒状のパイプ保持部11、雄継手部2の流路2aと対向する位置に配置される流体流通部12、および、バルーン3を保持する吸収体保持部13(図3A参照)を、この順で有する。流体流通部12の側面には、開口12aが形成されている。また、本実施形態のカラー4の流体流通部12は、パイプ保持部11から吸収体保持部13へ向かって先細りの形状とされている。また、図3Aに示すように、吸収体保持部13の先端の中央には、孔13aが形成されている。
【0019】
コネクタ100の組立方法について説明する。
まず、パイプ50が挿入される開口1aから、バルーン3をコネクタ本体部1の内部に挿入する。本実施形態では、コネクタ本体部1の、バルーン3が配置される軸方向端部内面に、凸部1bが形成されており、バルーン3がコネクタ本体部1の奥まで挿入されると、この凸部1bに、バルーン3の凹部3bが嵌まり込む。ここで、コネクタ本体部1の内部へのバルーン3の挿入は、例えば、開口1aからバルーン3を落下させるようにして行うことができ、バルーン3をチャック(掴む)してコネクタ本体部1の内部へ挿入するようなことは必要ない。なお、カラー4でバルーン3をコネクタ本体部1の内部へ押し込むようにして、バルーン3をコネクタ本体部1に挿入してもよい。
【0020】
次いで、上記開口1aから、カラー4をコネクタ本体部1の内部へ挿入する。すると、カラー4の吸収体保持部13は、バルーン3に設けられた凹部3aに嵌まり込む。その後、Oリング5、環状のスペーサ6、Oリング5、環状のスペーサ7を、この順でコネクタ本体部1の内部へ挿入する。なお、本実施形態では、コネクタ本体部1の内部に、Oリング5が2つ挿入されているが、Oリング5の個数は、これに限定されることはない。
【0021】
(作用・効果)
コネクタ100によると、パイプ50が挿入される開口1aからコネクタ本体部1の内部に吸収体保持部材(カラー4)を挿入することで、コネクタ本体部1の内部におけるバルーン3の位置決めを行うことができるので、カラー4を挿入するための専用の、後から塞がなければならない開口をコネクタ本体部1に設けなくても、すなわち、コネクタ本体部1を一体的に成形しても、コネクタ本体部1の内部に、パイプ50の外径と同径以上のバルーン3を配置することができる。コネクタ本体部1(コネクタ本体部1および雄継手部2)が一体成形品であることで、コネクタ100の気密の信頼性が維持される。
【0022】
また、脈動吸収体(バルーン3)の外径Dm(図3B参照)が、パイプ50の外径Dpよりも大きいことで(コネクタ本体部1の内径と同等であることで)、脈動吸収体(バルーン3)の脈動吸収機能が高まる。さらには、脈動吸収体(バルーン3)の設置に、溶着等の工程が不要なため、その分、コネクタ100の組立も簡単に行える。
【0023】
また、コネクタ100にパイプ50が接続されたとき、パイプ50の先端部が、カラー4のパイプ保持部11で支えられるので、流体の脈動などによるパイプ50の動き(ガタツキ)が抑えられ、Oリング5のシール性も低下しにくい。なお、カラー4のパイプ保持部11は、コネクタ本体部1の内部における脈動吸収体(バルーン3)の保持にも寄与する。
【0024】
さらには、本実施形態では、カラー4の流体流通部12が、パイプ保持部11から吸収体保持部13へ向かって先細りの形状とされている。これによると、コネクタ本体部1へのカラー4の挿入時に、カラー4が軸方向まわりに回転しても、雄継手部2の流路2aが塞がれることはない。すなわち、コネクタ100の組立に際し、作業者は、カラー4の軸方向まわりの回転や角度に注意を払う必要がない。
【0025】
また、本実施形態では、コネクタ本体部1の、バルーン3が配置される軸方向端部内面に、凸部1bが形成されているとともに、当該凸部1bが嵌まり込む凹部3bが、バルーン3に形成されている。これによると、バルーン3の位置決めを行いやすく(組立性向上)、且つ、バルーン3の位置ズレを防止することができる。
【0026】
また、本実施形態では、カラー4の先端部(吸収体保持部13)が嵌まり込む凹部3aが、バルーン3に形成されている。これによると、バルーン3の位置決めを行いやすく(組立性向上)、且つ、バルーン3の位置ズレを防止することができる。
【0027】
また、本実施形態では、カラー4の先端部(吸収体保持部13)に、バルーン3に連通する孔13aが形成されている。これによると、流体の脈動がバルーン3に伝わりやすいので、流体の脈動をより抑えることができる。
【0028】
(変形例)
上記の実施形態は、次のように変更可能である。
バルーン3のような蛇腹形状の中空の弾性体に代えて、例えば、ゴムスポンジのような弾性を有する独立気孔の多孔質体を、脈動吸収体として用いてもよい。
【0029】
流体流通部12は、先細りの形状ではなく、ストレートな筒状であってもよい。また、バルーン3(脈動吸収体)の軸方向両端部に凹部3a、3bが形成されていなくてもよい。同様に、コネクタ本体部1の、バルーン3(脈動吸収体)が配置される軸方向端部内面に、凸部1bが形成されていなくてもよい。
【0030】
流体とバルーン3(脈動吸収体)とが接触していれば、流体の脈動をバルーン3(脈動吸収体)で吸収することができるので、カラー4の先端部(吸収体保持部13)に、バルーン3に連通する孔13aが形成されていなくてもよい。
【0031】
コネクタ100の雄継手部2の部分については、この部分が、フランジ継手などにされていてもよい。
【0032】
なお、コネクタ100の用途は、燃料用配管などの接続に限られるものではない。例えば、内部に水が流れる配管の接続にコネクタ100を用いてもよい。バルーン3(脈動吸収体)で、水の脈動を抑えることができるとともに、水が凍ったときに、コネクタ100や、これに接続されているパイプの割れを防止することができる。さらには、圧縮空気が流れる配管の接続用に、コネクタ100を用いてもよく、この用途では、圧縮空気の脈動が抑えられる。
【0033】
その他に、当業者が想定できる範囲で、種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1:コネクタ本体部
1a:開口
1b:凸部
2:雄継手部(継手部)
2a:流路
3:バルーン(脈動吸収体)
3a、3b:凹部
4:カラー(吸収体保持部材)
11:パイプ保持部
12:流体流通部
12a:開口
13:吸収体保持部
13a:孔
50:パイプ
100:コネクタ(脈動吸収機能付きコネクタ)
図1
図2
図3A
図3B