(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
F28D15/02 106Z
F28D15/02 E
F28D15/02 101L
(21)【出願番号】P 2020139101
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】201910770505.9
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515352847
【氏名又は名称】大連海事大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】紀 玉龍
(72)【発明者】
【氏名】▲チュ▼ 李林
(72)【発明者】
【氏名】李 延涛
(72)【発明者】
【氏名】肖 秀
(72)【発明者】
【氏名】▲ユー▼ 春栄
(72)【発明者】
【氏名】馬 鴻斌
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055698(JP,A)
【文献】特開2013-160420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02-15/06
Science Direct
CiNii
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する方法であって、
脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第1モデルを作成するステップであって、前記第1モデルは熱量を加えてない条件下での脈動ヒートパイプの事前設定バラメータにより得られ、前記事前設定バラメータは脈動ヒートパイプの有効長、通路断面積、操作温度下での液体状態作動媒体の密度と充填率とを含むステップ1と、
脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第2モデルを作成するステップであって、前記第2モデルは脈動ヒートパイプ内の気体状態作動媒体の質量のモデルと脈動ヒートパイプ内の液体状態作動媒体の質量のモデルとを含み、前記脈動ヒートパイプ内の気体状態作動媒体の質量のモデルは熱量を加えた条件下での気体状態作動媒体のバラメータにより得られ、前記気体状態作動媒体のバラメータは熱量を加えた条件下での気体状態作動媒体の平均密度、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率、脈動ヒートパイプの有効長及び通路断面積を含み、前記脈動ヒートパイプ内の液体状態作動媒体の質量のモデルは熱量を加えた条件下での液体状態作動媒体のバラメータにより得られ、前記液体状態作動媒体のバラメータは熱量を加えた条件下での液体状態作動媒体の平均密度、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率、脈動ヒートパイプの有効長及び通路断面積を含むステップ2と、
熱量を加える前後の質量保存則に基づいて、前記第1モデルと前記第2モデルとを組合わせて、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率を確定するステップ3と、
ステップ3で得られた熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率及び脈動ヒートパイプにおける作動媒体の物理的属性、吸熱端と放熱端との温度、加熱電力及び充填率に基づいて、脈動ヒートパイプの起動臨界管径を確定するステップ4と、を含む、
ことを特徴とする垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【請求項2】
前記第1モデルは次式に適合し、
【数1】
式中、Mは熱量を加えてない条件下での脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量(kg)であり、Lは脈動ヒートパイプの有効長(m)であり、Aは通路断面積(m
2)であり、ρ
L,0は熱量を加える前の操作温度下での液体状態作動媒体の密度(kg/m
3)であり、Φは充填率(%)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【請求項3】
前記第2モデルは次式に適合し、
【数2】
式中、M
L,1は熱量を加えた後の単一のパイプ内の液体状態作動媒体の質量(kg)であり、M
G,1は熱量を加えた後の単一のパイプ内の気体状態作動媒体の質量(kg)であり、ρ
L,avは熱量を加えた後の液体状態作動媒体の平均密度(kg/m
3)であり、ρ
G,avは熱量を加えた後の気体状態作動媒体の平均密度(kg/m
3)であり、φは熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率(%)である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【請求項4】
前記熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率は次式に適合し、
【数3】
式中、φは熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率(%)である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【請求項5】
前記脈動ヒートパイプの起動臨界管径は次式に適合し、
【数4】
式中、Dは脈動ヒートパイプの起動臨界管径であり、uは液体に対する蒸気泡の上昇速度(m/s)であって、蒸気泡の速度が蒸気泡の終端速度で、且つ液体に対する蒸気泡の速度が一定となってuであり、σ
avは作動媒体の表面張力(N/m)であり、gは重力加速度(N/kg)であり、tは単一の蒸気泡の液面レベルへの影響を無視して、蒸気泡が吸熱端から放熱端に至るまで要する時間であり、Qはt時間内での入熱量(J)であり、qは入力電力(J/s)であり、
【数5】
は気体状態作動媒体の質量流量(kg/s)であり、h
cは低温端の温度下での作動媒体の気化潜熱(J/kg)であり、P
gは潜熱占有率(%)である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ電子又は半導体構成素子の効率的な放熱冷却技術分野に関し、具体的には垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法に関し、該設計方法は垂直状態での脈動ヒートパイプに基づく起動臨界管径を設計するためのものである。
【背景技術】
【0002】
脈動ヒートパイプ(Pulsating Heat Pipe)は、新型で効率的の、微小な空間に用いることができる高熱流束密度の伝熱素子である。脈動ヒートパイプは、普通、多数の湾曲した毛細管からなり、真空状態で作動流体が充填され、表面張力及び流動抵抗の作用により蒸気と液体との離間状態を形成する。脈動ヒートパイプにおいて、輸入された熱は、蒸発段で作動流体に伝達され、作動流体は常圧以下の蒸発温度下で吸熱端において吸熱して蒸気泡を発生し、蒸気泡は急速に膨張されて昇圧するが、これにより脈動ヒートパイプ内の作動流体の運動が維持される。作動流体による相変化伝熱以外にも、脈動ヒートパイプの作動流体の蒸発段と凝縮段とでの振動によりパイプ内部において、強制対流が引き起こされるので、脈動ヒートパイプの伝熱性能が大幅に向上する。蒸発段の入力電力の増加に伴って、脈動ヒートパイプ内部での作動流体の運動も更に激しくなり、内部の対流熱交換の能力がより一層向上し、脈動ヒートパイプの伝熱能力も著しく向上する。そのため、脈動ヒートパイプは高熱流束密度伝熱の課題を解決するための最も有効な技術の一つとして認められている。
【0003】
従来技術において、操作温度下で液体プラグが蒸気プラグに浮遊できることを保証できる脈動ヒートパイプの最大管径を臨界管径と定義しており、脈動ヒートパイプの管径が該臨界管径を超えると、脈動ヒートパイプが作動できないようになるため、従来の臨界管径の設計方法は脈動ヒートパイプの大管径への発展を制限している。Rittidechら(Applied Thermal Engineering,2003,23,497-510)らは、脈動ヒートパイプの管径が上記の脈動ヒートパイプの臨界管径をわずかに超えても脈動ヒートパイプが依然として作動していることを発見したが、彼らは、その結果は臨界管径の計算誤差であると報告している。Yangら(Applied Thermal Engineering,2008,28,49-59)は、脈動ヒートパイプにおける伝熱の限界に対する研究において、対比実験結果から、管径が大きい脈動ヒートパイプがより良い伝熱性能を有するとともに、より高い伝熱の限界があると報告しており、脈動ヒートパイプの管径は脈動ヒートパイプの伝熱性能に影響を与えるだけでなく、脈動ヒートパイプの伝熱の限界にも影響を与えるとのことは明らかである。しかしながら、Yangらは、管径が上記の脈動ヒートパイプの臨界管径を超えた後の状況及び臨界管径を超える管径の設計方法等については報告してない。
【0004】
したがって、従来技術の制限性を克服し、脈動ヒートパイプが適合な管径の範囲内でよりよく作動するようになることが実現でき、より優れた伝熱性能を実現できる、管径が臨界管径を超える脈動ヒートパイプ及びその管径の設計方法の提供が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術において脈動ヒートパイプの管径が臨界管径の制限により、作動ができないとの技術的課題に鑑みてなされたもので、垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法を提供する。
【0006】
出願人は、脈動ヒートパイプの可視化研究から、加熱後、蒸気プラグが形成できれば、脈動ヒートパイプが作動できることを初めて発見及び確認でき、本案の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法を提供する。脈動ヒートパイプの管径が臨界管径を超えても、脈動ヒートパイプが依然として作動する、この場合の脈動ヒートパイプを超臨界管径の脈動ヒートパイプと定義する。超臨界管径の脈動ヒートパイプが作動する最大の管径を起動臨界管径と定義する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、主に、脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第1モデルと第2モデルとを作成し、熱量を加える前後の質量保存則に基づいて、第1モデルと第2モデルとを組み合わせ、且つ作動媒体の物理的属性、吸熱端と放熱端との温度、加熱電力及び充填率を利用して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径を確定する。
【0008】
本発明の技術的手段は、以下の通りである。
【0009】
垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法は、
脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第1モデルを作成するステップであって、前記第1モデルは熱量を加えてない条件下の脈動ヒートパイプの事前設定バラメータにより得られ、前記事前設定バラメータは脈動ヒートパイプの有効長、通路断面積、操作温度下の液体状態作動媒体の密度及び充填率を含むステップ1と、
脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第2モデルを作成するステップであって、前記第2モデルは脈動ヒートパイプ内の気体状態作動媒体の質量のモデルと脈動ヒートパイプ内の液体状態作動媒体の質量のモデルとを含み、前記脈動ヒートパイプ内の気体状態作動媒体の質量のモデルは熱量を加えた条件下での気体状態作動媒体のバラメータにより得られ、前記気体状態作動媒体のバラメータは熱量を加えた条件下での気体状態作動媒体の平均密度、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率、脈動ヒートパイプの有効長及び通路断面積を含み、前記脈動ヒートパイプ内の液体状態作動媒体の質量のモデルは熱量を加えた条件下での液体状態作動媒体のバラメータにより得られ、前記液体状態作動媒体のバラメータは熱量を加えた条件下での液体状態作動媒体の平均密度、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率、脈動ヒートパイプの有効長及び通路断面積を含むステップ2と、
熱量を加える前後の質量保存則に基づいて、前記第1モデルと前記第2モデルとを組合わせて、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率を確定するステップ3と、
ステップ3で得られた熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率及び脈動ヒートパイプにおける作動媒体の物理的属性、吸熱端と放熱端との温度、加熱電力及び充填率に基づいて、脈動ヒートパイプの起動臨界管径を確定するステップ4と、を含む。
【0010】
さらに、前記第1モデルは次式に適合し、
【数1】
式中、Mは熱量を加えてない条件下での脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量(kg)であり、Lは脈動ヒートパイプの有効長(m)であり、Aは通路断面積(m
2)であり、ρ
L,0は熱量を加える前の操作温度下での液体状態作動媒体の密度(kg/m
3)であり、Φは充填率(%)である。
【0011】
さらに、前記第2モデルは次式に適合し、
【数2】
式中、M
L,1は熱量を加えた後の単一のパイプ内の液体状態作動媒体の質量(kg)であり、M
G,1は熱量を加えた後の単一のパイプ内の気体状態作動媒体の質量(kg)であり、ρ
L,avは熱量を加えた後の液体状態作動媒体の平均密度(kg/m
3)であり、ρ
G,avは熱量を加えた後の気体状態作動媒体の平均密度(kg/m
3)であり、φは熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率(%)である。
【0012】
さらに、前記熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率は次式に適合し、
【数3】
式中、φは熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率(%)である。
【0013】
さらに、前記脈動ヒートパイプの起動臨界管径は次式に適合し、
【数4】
式中、Dは脈動ヒートパイプの起動臨界管径であり、uは液体に対する蒸気泡の上昇速度(m/s)であって、蒸気泡の速度が蒸気泡の終端速度で、且つ液体に対する蒸気泡の速度が一定となってuであり、σ
avは作動媒体の表面張力(N/m)であり、gは重力加速度(N/kg)であり、tは単一の蒸気泡の液面レベルへの影響を無視して、蒸気泡が吸熱端から放熱端に至るまで要する時間であり、Qはt時間内での入熱量(J)であり、qは入力電力(J/s)であり、
【数5】
は気体状態作動媒体の質量流量(kg/s)であり、h
cは低温端の温度下での作動媒体の気化潜熱(J/kg)であり、P
gは潜熱占有率(%)である。具体的に、σ
avは熱量を加えた後の作動媒体の平均表面張力(N/m)である。
【0014】
さらに、前記脈動ヒートパイプの各パイプにおいて、作動媒体が均一に分配され、作動媒体の液面レベルが同じであり、エルボーが液面レベルに与える影響は無視する。熱量を加えた後の作動媒体は、前記脈動ヒートパイプ内で蒸気液体混合状態であり、該作動状況で蒸気液体混合の作動媒体の液面レベルが有効長Lになると、脈動ヒートパイプは正常作動状態となる。
【0015】
さらに、ステップ1において、作動媒体が脈動ヒートパイプ内に充填される時、環境要因により作動媒体が蒸発され、作動媒体の質量の変化が発生するが、その時、熱量を加えてないため、気体の質量は液体の質量に比べてかなり少なく、無視してもよいので、環境要因による誤差は無視できる。
【0016】
本発明は、さらに、超臨界管径の脈動ヒートパイプを提供し、前記超臨界管径の脈動ヒートパイプは上述した垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法により得られる。
【0017】
さらに、前記脈動ヒートパイプ内の作動媒体の体積の充填率範囲は10%≦Φ≦90%である。
【0018】
さらに、前記作動媒体の脈動ヒートパイプに充填された後の状態は気液二相状態であり、前記作動媒体は単一の作動媒体又は混合作動媒体である。
【0019】
さらに、前記単一の作動媒体は液体金属又は液体非金属である。
【0020】
さらに、前記混合作動媒体は液体金属と液体非金属の混合液又は、液体金属と液体金属の混合液である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は従来技術と比べて以下の利点を有する。
【0022】
1.本発明の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法によって得られた脈動ヒートパイプの管径は従来技術の臨界管径の設計方法によって得られた管径を超え、且つ脈動ヒートパイプの管径が臨界管径と起動臨界管径との間にあるので、効率的に作動でき、より優れた伝熱性能とより高い伝熱の限界を有する。
【0023】
2.本発明の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法は、作動媒体の充填率、熱量を加えた後の液体状態作動媒体が総管体積に占める百分率、熱量を加える前の操作温度下での液体状態作動媒体密度、熱量を加えた後の液体状態作動媒体の平均密度、液体に対する蒸気泡の上昇速度、低温端温度下での作動媒体の気化潜熱、入力電力及び潜熱比等の要素を十分に考慮しており、脈動ヒートパイプについての研究範囲をさらに拡大した。
【0024】
3.本発明の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法は、脈動ヒートパイプの産業における運用のための設計基準を提供し、特に、高熱流束密度の作動状況下で、より安い作動媒体とよい太い管径が用いられるのでコストを下げることができる。
【0025】
よって、本発明の技術案によれば、従来技術における脈動ヒートパイプの管径が臨界管径を超えると、脈動ヒートパイプが作動できないとの技術的課題が解決できる。
【0026】
上述した理由により、本発明は、脈動ヒートパイプの伝熱が応用される航空、軍事などの分野で広く普及することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の実施例または従来技術の技術的手段をより一層明らかに説明するため、以下、実施例または従来技術に対する説明における図面について、簡単に説明する。以下の図面は本発明の実施例に関したものであり、当業者にとって、創造的な労働を行うことなく、これらの図面に基づいて、他の図面が得られることは明らかである。
【0028】
【
図1】本発明に係る可視化実験において脈動ヒートパイプ内の蒸気プラグの形成過程を示す模式図である。
【
図2】本発明におけるAで表示する部分の模式図で、その中、(a)及び(b)は小蒸気泡の発生過程であり、(c)、(d)、(e)及び(f)は小蒸気泡が集まれて大蒸気泡に成長する過程であり、(g)及び(h)は大蒸気泡が引き続き集まれて長柱状の蒸気泡に成長する過程である。
【
図3】本発明に係る脈動ヒートパイプの異なる状況での模式図で、その中、(a)は熱量を輸入する前の作動状況であり、(b)は熱量を輸入した後の作動状況であり、(c)は作動状態になった時の作動状況である。
【
図4】本発明に係る作動媒体が無水アルコールである場合、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果を示す模式図で、その中、(a)及び(b)はそれぞれ充填率が30%で、操作温度が20℃及び60℃の場合の計算結果であり、(c)及び(d)はそれぞれ充填率が50%で、操作温度が20℃及び60℃の場合の計算結果であり、(e)及び(f)はそれぞれ充填率が70%で、操作温度が20℃及び60℃の場合の計算結果である。
【
図5】本発明に係る作動媒体は脱イオン水である場合、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果を示す模式図で、その中、(a)及び(b)はそれぞれ充填率が30%で、操作温度が20℃及び60℃の場合の計算結果であり、(c)及び(d)はそれぞれ充填率が50%で、操作温度が20℃及び60℃の場合の計算結果であり、(e)及び(f)はそれぞれ充填率が70%で、操作温度が20℃及び60℃の場合の計算結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、当業者が本発明の技術手段をよりよく理解できるように、本発明の実施例における図面を組合わせて、本発明の実施例における技術手段を明らかで完全に説明する。説明となった実施例は全部の実施例ではなく、本発明の実施例に係る一部の実施例だけであることは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わず得られた他の実施例はいずれも本発明の範囲内に属する。
【0030】
以下の実施例においての技術的用語について説明する。
【0031】
起動臨界管径の計算式:本発明の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法はにより得られた脈動ヒートパイプ起動臨界管径の計算式であり、以下の計算式で示す。
【数6】
当該起動臨界管径の計算式の取得過程及び式中における各パラメータの定義は発明の内容中の説明と同じである。
【0032】
臨界管径の計算式:臨界管径は、脈動ヒートパイプが外部からに入力電力等の作用がない条件下で、脈動ヒートパイプ内の作動媒体が自身の表面張力により脈動ヒートパイプ内で自動的に液体プラグを形成できる最大管径を指し、以下の計算式により計算できる。
【数7】
計算式中、D
clは臨界管径であり、BoはBond数であって、普通0.85であり、gは重力加速度であり、ρ
l,0及びρ
v,0はそれぞれ操作温度下での液相及び気相の密度であり、σ
0は操作温度下での表面表面張力である。
【0033】
当業者は、以下の実施例において提供する作動状況のパラメータ及び上記起動臨界管径の計算式及び臨界管径の計算式により、起動臨界管径及び臨界管径を計算により得ることができる。
【0034】
(実施例1)
図1及び
図2は、超臨界管径の脈動ヒートパイプの可視化実験において蒸気プラグの形成過程を示す模式図である。超臨界管径の脈動ヒートパイプの作動の原因は蒸気プラグが形成されることにある。実験結果により、脈動ヒートパイプの管径が臨界管径を超えるとき、作動過程で蒸気プラグが形成され、蒸気プラグの形成過程は主に以下の過程を含む:(1)
図2(a)及び(b)に示すように、小蒸気泡が発生し、(2)
図2(c)、(d)、(e)及び(f)に示すように、小蒸気泡が集まれて大蒸気泡(蒸気泡の直径が管径より小さい)に成長し、(3)
図2(g)及び(h)に示すように、大蒸気泡が引き続き集まれて長柱状の蒸気泡(蒸気プラグを形成)に成長する。
【0035】
図3は脈動ヒートパイプの異なる状態での模式図である。
図3(a)に示すように、熱量を輸入する前、作動媒体を充填した後、蒸気化により発生した気体の質量を無視すると、脈動ヒートパイプの各パイプに充填される作動媒体はいずれも均一で、作動媒体の液面レベルが同じであり、作動媒体の液面レベルがΦLであり、エルボーが液面レベルへの影響は無視する。
図3(b)に示すように、熱量を加えた後、作動媒体は前記脈動ヒートパイプ内において蒸気液体混合状態となって存在し、該作動状況下で、蒸気液体混合の作動媒体の液面レベルはφLであり、且つ徐々に増加する。
図3(c)に示すように、熱量を加えた後、蒸気液体混合の作動媒体の液面レベルが有効長Lになると、脈動ヒートパイプは正常作動状態となる。
【0036】
(実施例2)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が20℃であり、作動媒体が無水アルコールであり、充填率が30%であり、吸熱端の温度がそれぞれ30℃、50℃、70℃及び90℃である。
【0037】
図4(a)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図4(a)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表1に示す。
【0038】
【0039】
(実施例3)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が20℃であり、作動媒体が無水アルコールであり、充填率が50%であり、吸熱端の温度がそれぞれ30℃、50℃、70℃及び90℃である。
【0040】
図4(c)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図4(c)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表2に示す。
【0041】
【0042】
(実施例4)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が20℃であり、作動媒体が無水アルコールであり、充填率が70%であり、吸熱端の温度がそれぞれ30℃、50℃、70℃及び90℃である。
【0043】
図4(e)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図4(e)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表3に示す。
【0044】
【0045】
(実施例5)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が60℃であり、作動媒体が無水アルコールであり、充填率が30%であり、吸熱端の温度がそれぞれ70℃、90℃、110℃及び130℃である。
【0046】
図4(b)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図4(b)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表4に示す。
【0047】
【0048】
(実施例6)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が60℃であり、作動媒体が無水アルコールであり、充填率が50%であり、吸熱端の温度がそれぞれ70℃、90℃、110℃及び130℃である。
【0049】
図4(d)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図4(d)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表5に示す。
【0050】
【0051】
(実施例7)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が60℃であり、作動媒体が無水アルコールであり、充填率が70%であり、吸熱端の温度がそれぞれ70℃、90℃、110℃及び130℃である。
【0052】
図4(f)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図4(f)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表6に示す。
【0053】
【0054】
(実施例8)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が20℃であり、作動媒体が脱イオン水であり、充填率が30%であり、吸熱端の温度がそれぞれ30℃、50℃、70℃及び90℃である。
【0055】
図5(a)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図5(a)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表7に示す。
【0056】
【0057】
(実施例9)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が20℃であり、作動媒体が脱イオン水であり、充填率が50%であり、吸熱端の温度がそれぞれ30℃、50℃、70℃及び90℃である。
【0058】
図5(c)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図5(c)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表8に示す。
【0059】
【0060】
(実施例10)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が20℃であり、作動媒体が脱イオン水であり、充填率が70%であり、吸熱端の温度がそれぞれ30℃、50℃、70℃及び90℃である。
【0061】
図5(e)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図5(e)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表9に示す。
【0062】
【0063】
(実施例11)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が60℃であり、作動媒体が脱イオン水であり、充填率が30%であり、吸熱端の温度がそれぞれ70℃、90℃、110℃及び130℃である。
【0064】
図5(b)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図5(b)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて、得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表10に示す。
【0065】
【0066】
(実施例12)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が60℃であり、作動媒体が脱イオン水であり、充填率が50%であり、吸熱端の温度がそれぞれ70℃、90℃、110℃及び130℃である。
【0067】
図5(d)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図5(d)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表11に示す。
【0068】
【0069】
(実施例13)
本実施例の作動状況は、単一のパイプの入力電力が30Wであり、操作温度が60℃であり、作動媒体が脱イオン水であり、充填率が70%であり、吸熱端の温度がそれぞれ70℃、90℃、110℃及び130℃である。
【0070】
図5(f)に示すように、MATLABソフトを用い、該作動状況下における作動媒体の性質、操作温度、加熱電力及び充填率のバラメータを起動臨界管径の計算式に代入して、脈動ヒートパイプの起動臨界管径の理論計算結果及びその模式図を得る。
図5(f)において、ETは吸熱端の温度を示し、CTは操作温度を示し、図中の横方向の直線は臨界管径の計算式に基づいて得られた臨界管径の計算結果であり、操作温度のみに関係する。該作動状況下での対応する臨界管径と起動臨界管径とを表12に示す。
【0071】
【0072】
(実施例14)
図4に示すように、
図4(a)-(f)、すなわち実施例2~実施例7における計算結果から、同一の作動状況下において、本発明が提供した脈動ヒートパイプの起動臨界管径の計算式により得られた管径計算値が、臨界管径の計算式により得られた管径の計算値より高いことがわかる。
図4(a)及び(b)すなわち実施例2及び実施例5、又は
図4(c)及び(d)すなわち実施例3及び実施例6、又は
図4(e)及び(f)すなわち実施例4及び実施例7の計算結果を比較すると、作動媒体、充填率及び吸熱端の温度が同じの作動状況下で、操作温度が低いほど、脈動ヒートパイプはより大きい管径を有することがわかる。
図4(a)-(f)すなわち実施例2~実施例7のいずれか一つの実施例の計算結果にから、加熱電力、作動媒体、充填率及び操作温度が同じの作動状況下で、熱端の温度が低いほど、冷・熱端の温度差が低くなり、脈動ヒートパイプはより大きい管径を有することがわかる。
図4(a)、(c)、(e)すなわち実施例2、実施例3、実施例4、又は図(b)、(d)、(f)すなわち実施例5、実施例6、実施例7の計算結果を比較すると、加熱電力、作動媒体、熱端の温度及び操作温度が同じの作動状況下で、充填率が高いほど、脈動ヒートパイプはより大きい管径を有することがわかる。
【0073】
図5に示すように、
図5(a)-(f)すなわち実施例8~実施例13の計算結果から、脈動ヒートパイプの作動媒体が脱イオン水である場合の冷熱端の温度、充填率、操作温度及び加熱電力の変化規律は
図4における作動媒体が無水アルコールである場合の冷熱端の温度、充填率、操作温度及び加熱電力の変化規律と同様であることがわかる。
図5の計算結果と
図4の計算結果とを比較すると、低温端の温度、充填率、操作温度及び加熱電力が同じである作動状況下で、作動媒体が脱イオン水の場合に算出した起動臨界管径は、作動媒体が無水アルコールの場合に算出した起動臨界管径より大きいのが要されることがわかる。よって、作動媒体の性質は脈動ヒートパイプの起動臨界管径を影響する重要な要素の一つである。
【0074】
以上により、脈動ヒートパイプの管径が臨界管径を超えても作動でき、かつ伝熱性能が優れている。
【0075】
最後に以下の通り、説明すべきである。上記の各実施例は、本発明の技術手段に対する説明にすぎなく、その保護範囲がこの範囲内に限定されるものではない。上述した各実施例を参照して本発明について詳しく説明したが、上述した各実施例に記載の技術手段を修正し、またはその部分又は全部の技術的特徴を同等切替してもよく、これら修正又は切替を行っても、対応する技術手段の本質は本発明の実施例における技術手段の範囲から逸脱することはないとのことは、当業者に理解されよう。
【0076】
(付記)
(付記1)
脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第1モデルを作成するステップであって、前記第1モデルは熱量を加えてない条件下での脈動ヒートパイプの事前設定バラメータにより得られ、前記事前設定バラメータは脈動ヒートパイプの有効長、通路断面積、操作温度下での液体状態作動媒体の密度と充填率とを含むステップ1と、
脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量の第2モデルを作成するステップであって、前記第2モデルは脈動ヒートパイプ内の気体状態作動媒体の質量のモデルと脈動ヒートパイプ内の液体状態作動媒体の質量のモデルとを含み、前記脈動ヒートパイプ内の気体状態作動媒体の質量のモデルは熱量を加えた条件下での気体状態作動媒体のバラメータにより得られ、前記気体状態作動媒体のバラメータは熱量を加えた条件下での気体状態作動媒体の平均密度、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率、脈動ヒートパイプの有効長及び通路断面積を含み、前記脈動ヒートパイプ内の液体状態作動媒体の質量のモデルは熱量を加えた条件下での液体状態作動媒体のバラメータにより得られ、前記液体状態作動媒体のバラメータは熱量を加えた条件下での液体状態作動媒体の平均密度、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率、脈動ヒートパイプの有効長及び通路断面積を含むステップ2と、
熱量を加える前後の質量保存則に基づいて、前記第1モデルと前記第2モデルとを組合わせて、熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率を確定するステップ3と、
ステップ3で得られた熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率及び脈動ヒートパイプにおける作動媒体の物理的属性、吸熱端と放熱端との温度、加熱電力及び充填率に基づいて、脈動ヒートパイプの起動臨界管径を確定するステップ4と、を含む、
ことを特徴とする垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【0077】
(付記2)
前記第1モデルは次式に適合し、
【数8】
式中、Mは熱量を加えてない条件下での脈動ヒートパイプ内の作動媒体の質量(kg)であり、Lは脈動ヒートパイプの有効長(m)であり、Aは通路断面積(m
2)であり、ρ
L,0は熱量を加える前の操作温度下での液体状態作動媒体の密度(kg/m
3)であり、Φは充填率(%)である、
ことを特徴とする付記1に記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【0078】
(付記3)
前記第2モデルは次式に適合し、
【数9】
式中、M
L,1は熱量を加えた後の単一のパイプ内の液体状態作動媒体の質量(kg)であり、M
G,1は熱量を加えた後の単一のパイプ内の気体状態作動媒体の質量(kg)であり、ρ
L,avは熱量を加えた後の液体状態作動媒体の平均密度(kg/m
3)であり、ρ
G,avは熱量を加えた後の気体状態作動媒体の平均密度(kg/m
3)であり、φは熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率(%)である、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【0079】
(付記4)
前記熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率は次式に適合し、
【数10】
式中、φは熱量を加えた条件下での脈動ヒートパイプの総管における液体状態作動媒体の占有体積の百分率(%)である、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【0080】
(付記5)
前記脈動ヒートパイプの起動臨界管径は次式に適合し、
【数11】
式中、Dは脈動ヒートパイプの起動臨界管径であり、uは液体に対する蒸気泡の上昇速度(m/s)であって、蒸気泡の速度が蒸気泡の終端速度で、且つ液体に対する蒸気泡の速度が一定となってuであり、σ
avは作動媒体の表面張力(N/m)であり、gは重力加速度(N/kg)であり、tは単一の蒸気泡の液面レベルへの影響を無視して、蒸気泡が吸熱端から放熱端に至るまで要する時間であり、Qはt時間内での入熱量(J)であり、qは入力電力(J/s)であり、
【数12】
は気体状態作動媒体の質量流量(kg/s)であり、h
cは低温端の温度下での作動媒体の気化潜熱(J/kg)であり、P
gは潜熱占有率(%)である、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか一つに記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法。
【0081】
(付記6)
付記1から5のいずれか一つに記載の垂直状態での脈動ヒートパイプの起動臨界管径の設計方法により得られる、
ことを特徴とする超臨界管径の脈動ヒートパイプ。
【0082】
(付記7)
前記脈動ヒートパイプ内の作動媒体の体積充填率の範囲は10%≦Φ≦90%である、
ことを特徴とする付記6に記載の超臨界管径の脈動ヒートパイプ。
【0083】
(付記8)
前記作動媒体の脈動ヒートパイプに充填された後の状態は気液二相状態であり、前記作動媒体は単一の作動媒体又は混合作動媒体である、
ことを特徴とする付記7に記載の超臨界管径の脈動ヒートパイプ。
【0084】
(付記9)
前記単一の作動媒体は液体金属又は液体非金属である、
ことを特徴とする付記8に記載の超臨界管径の脈動ヒートパイプ。
【0085】
(付記10)
前記混合作動媒体は液体金属と液体非金属との混合液又は液体金属と液体金属との混合液である、
ことを特徴とする付記8に記載の超臨界管径の脈動ヒートパイプ。