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特許7011347ベータグルカンを有効成分とする二日酔い解消用組成物またはアルコール性肝疾患の予防、改善または治療用組成物
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  • 特許-ベータグルカンを有効成分とする二日酔い解消用組成物またはアルコール性肝疾患の予防、改善または治療用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ベータグルカンを有効成分とする二日酔い解消用組成物またはアルコール性肝疾患の予防、改善または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20220119BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220119BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220119BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
A61K36/07
A61K31/716
A61P1/08
A61P1/16
A23L33/105
A23L33/125
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020515651
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2018009974
(87)【国際公開番号】W WO2019059549
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0120339
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0101390
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520085800
【氏名又は名称】キュエゲン バイオテック カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョン デ
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ キュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヨン マン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ユン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チュル ス
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0707917(KR,B1)
【文献】特開2004-075692(JP,A)
【文献】Biosci. Biotechnol. Biochem.,2011年,Vol.75 No.10,pp.1990-1993
【文献】Agric. Biol. Chem.,1986年,Vol.50 No.1,pp.231-232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/716
A61K 36/07
A61P 1/08
A61P 1/16
A23L 33/105
A23L 33/125
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二日酔いを解消するための、およびアルコール摂取による副作用を抑制するための、医薬組成物であって、β-(1,6)-分岐した(1,3)-グルカンという構造を有するベータグルカンを有効成分として含み、
前記ベータグルカンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)またはその培養物から分離されたものであり、
前記副作用は、体重の増加または血中コレステロール含量の増加によるものである
医薬組成物。
【請求項2】
前記ベータグルカンは、前記組成物の総重量に対して0.001重量%~50重量%である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
アルコール性肝疾患の予防または治療のための、およびアルコール摂取による副作用を抑制するための、医薬組成物であって、β-(1,6)-分岐した(1,3)-グルカンという構造を有するベータグルカンを有効成分として含み、
前記ベータグルカンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)またはその培養物から分離されたものであり、
前記副作用は、体重の増加または血中コレステロール含量の増加によるものである
医薬組成物。
【請求項4】
二日酔いを解消するための、およびアルコール摂取による副作用を抑制するための、健康機能食品であって、β-(1,6)-分岐した(1,3)-グルカンという構造を有するベータグルカンを有効成分として含み、
前記ベータグルカンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)またはその培養物から分離されたものであり、
前記副作用は、体重の増加または血中コレステロール含量の増加によるものである、
健康機能食品。
【請求項5】
アルコール性肝疾患の予防または改善のための、およびアルコール摂取による副作用を抑制するための、健康機能食品であって、β-(1,6)-分岐した(1,3)-グルカンという構造を有するベータグルカンを有効成分として含み、
前記ベータグルカンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)またはその培養物から分離されたものであり、
前記副作用は、体重の増加または血中コレステロール含量の増加によるものである、
健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベータグルカン(特に、スエヒロタケ由来のベータグルカン)を有効成分とする二日酔い解消用組成物またはアルコール性肝疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒は、全世界的に蔓延した生活習慣であって、適切なアルコール摂取は、社交および健康増進を助けて人生を潤沢にすることができるが、飲みすぎは、二日酔いによる悪心、嘔吐、のどの渇き、頭痛および筋肉痛を誘発して日常生活に障害を招く。また、慢性的なアルコール摂取は、体内栄養素吸収や代謝過程を阻害して栄養欠乏を起こし、アルコール性脂肪肝、肝炎、肝硬変などの肝疾患と癌、糖尿、心血管系疾患、神経精神障害などをもたらして莫大な社会経済的損失を発生させる。それだけでなく、慢性的なアルコール代謝は、低血糖と低体重を誘導してエネルギー代謝に不均衡を招く。
【0003】
ヒトは、飲酒をして酒を飲むことになると、人体は、アルコールを吸収し分解する過程を経る。この過程をアルコール代謝過程と言い、入ってきた多くのアルコールは、肝で処理されて、アセトアルデヒドに酸化し、さらに酢酸に酸化する。そして、酢酸は、酸素と会って二酸化炭素と水に分解される。アルコール代謝過程に関与する酵素は、アルコール脱水素酵素(Alcohol dehydrogenase;ADH)とアルデヒド脱水素酵素(Aldehyde dehydrogenase;ALDH)がある。体内にアルコールが入ってくると、二日酔いおよび副作用が起こることになる。二日酔い現象とは、飲酒後に疲労感、睡眠障害、心悸亢進、震え、嘔吐など各種副作用が生じる現象であり、このような現象の主原因は、体内の蓄積されたアセトアルデヒドのためである。体内に入ってきた肝で分解されたアルコールからアセトアルデヒドが生成され、この物質は、生体内に毒性を有している。アセトアルデヒドは、肝細胞に直接的な損傷を加えることがあり、体内の血管に乗って回りながら各種副作用を起こすことになる。飲酒をしてからだが赤くなる現象を示すヒトは、アセトアルデヒドを分解する酵素がないか、不足しているためであり、蓄積されたアセトアルデヒドにより血管を拡張させて、顔を赤くし、息が切れるようにさせるためである。また、肝で分解できる一定量以上のアルコールは、血液に乗って脳まで伝達されて、脳の機能に影響を及ぼして、中枢神経系を刺激して判断能力を低下させる。また、アルコール代謝結果により生成された酢酸が二酸化炭素と水に分解されなければ、脂肪酸の過多生成により肝組織に脂肪が過多蓄積されて、アルコール性脂肪肝が誘導される。したがって、アルコールの摂取による二日酔いを除去し、肝損傷を抑制できる物質に対する関心は持続的に増加しており、これに対する研究が活発に進行されている。アルコール肝疾患の研究分野において、最近の進歩は、主に病態生理学的な側面と治療分野において行われた。実験室と動物実験水準で肝疾患の研究が着実に行われて来ており、この結果に基づいて臨床実験が試みられている。治療面では、1971年にひどいアルコール肝炎にステロイド治療が導入されて以来、最近2000年までは唯一の治療剤であった。その他にも、多くの新しい治療剤が臨床研究中にあり、2014年最近研究では、ケンポナシの実の抽出液発酵物を利用した肝の損傷と体重減量緩和効果を動物実験を通じて立証した。
【0004】
ベータグルカンは、ブドウ糖がβ-1,3化学結合を中心に重合された多糖類であって、キノコ、酵母などの微生物の細胞壁または細胞の多糖類から分離して生産される微生物由来のベータグルカン(β-1,3-グルカンまたはβ-1,3-1,6-グルカン)と、麦、燕麦のような穀物の食物繊維から抽出生産される植物性ベータグルカン(β-1,3-1,4-グルカン)がある。これらは、より具体的なブドウ糖結合構造によって多様な生理活性を示すことができ、また、高付加価値の生物素材として化粧品の添加剤、健康補助食品、食品添加剤、コンクリート混和剤、飼料添加剤など多様に用いられている。
【0005】
特に、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)のシゾフィラン(Schizophyllan)などに存在すると知られたβ-(1,6)-分岐された(1,3)-グルカンの形態のベータグルカン(β-Glucan)は、免疫力を増強させると同時に、耐性がない天然免疫調節剤と抗癌および抗酸化に対する生理活性などについて報告されている。ベータグルカンは、人体の免疫システムに作用して人体の免疫力を増強させるいわゆるBRM(biological response modifiers)とよく知られており、特にベータグルカンが免疫系内の大食細胞(macrophage)の機能を活性化することによって、この大食細胞が他のリンパ球や白血球の増殖因子であるインターフェロンまたはインターロイキンなどのサイトカインを分泌させて、免疫系の全般的な機能を強化させると報告されたことがある。また、ひよこ飼料に添加すると、免疫調節剤としてサルモネラ菌(salmonella)を予防することができる。特に酵母由来のベータグルカンの効能を向上させるための一環として、酵母に人為的突然変異を誘発して細胞壁に変移を誘導する研究が行われ、変移から得られたベータグルカンの免疫および抗癌に関する活性の優秀さが明らかになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む二日酔い解消用薬学組成物などを提供しようとする。
【0007】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されてない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む二日酔い解消用薬学組成物を提供する。
【0009】
前記組成物は、二日酔いによる副作用を抑制するためのものであり得る。
【0010】
前記副作用は、体重増加、肝毒性または血中コレステロールの含量増加による副作用であり得る。
【0011】
前記ベータグルカンは、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)またはその培養物から分離したものであり得る。
【0012】
前記ベータグルカンは、β-(1,6)-分岐された(1,3)-グルカンの構造を有することができる。
【0013】
前記ベータグルカンは、前記組成物の総重量に対して0.001重量%~50重量%であり得る。
【0014】
本発明の一具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含むアルコール性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む二日酔い解消用健康機能食品を提供する。
【0016】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含むアルコール性肝疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を、二日酔い解消用薬学組成物に使用するための用途を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を、アルコール性肝疾患の予防または治療用薬学組成物に使用するための用途を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を、二日酔い解消用健康機能食品に使用するための用途を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を、アルコール性肝疾患の予防または改善用健康機能食品に使用するための用途を提供する。
【0021】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を個体に投与する段階を含む二日酔いの解消方法を提供する。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、ベータグルカン(β-glucan)を個体に投与する段階を含むアルコール性肝疾患の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む二日酔い解消用組成物またはアルコール性肝疾患の予防、改善または治療用組成物に関し、前記組成物は、アルコールまたはアセトアルデヒドを分解して二日酔いを解消することができると共に、二日酔いによる副作用、すなわち体重増加、肝毒性および血中コレステロール含量の増加を抑制できる利点を有する。したがって、前記組成物によれば、生体に安全に、二日酔いによる副作用なしに、二日酔いを解消できるものと期待される。
【0024】
それだけでなく、本発明による組成物は、アルコール性肝疾患の予防、改善または治療効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた後、1時間、2時間および4時間ごとに血を採取して血清を分離することによって、アルコール分解酵素およびアセトアルデヒド分解酵素活性、血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度を測定した結果を比較したグラフである。
図2図2は、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた後、5時間後から1時間の間隔で6回血を採取して血清を分離することによって、血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度を測定した結果を比較したグラフである。
図3図3は、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた6週後にマウスを犠牲にした後、体重および肝の組織重さを測定した結果を比較した表である。
図4図4は、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた6週後にマウスを犠牲にした後、血清分析を行った結果を比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、生体に安全に、二日酔いによる副作用なしに、二日酔いを解消するために努力した結果、ベータグルカンを投与する場合、アルコールまたはアセトアルデヒドを効果的に分解できると共に、体重増加、肝毒性および血中コレステロール含量の増加を全部抑制することができることを確認し、本発明を完成した。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
二日酔い解消用/アルコール性肝疾患の予防または治療用薬学組成物
本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む、二日酔い解消用薬学組成物を提供する。
【0029】
本発明による二日酔い解消用薬学組成物は、ベータグルカンを有効成分として含むことを特徴とする。
【0030】
前記二日酔い解消用薬学組成物は、二日酔いの解消のためのものであって、このような二日酔いの解消効果は、アルコール分解酵素およびアセトアルデヒド分解酵素の活性測定を通じて確認されるか、血中アルコールおよびアセトアルデヒドの濃度測定を通じて確認され得る。
【0031】
また、前記二日酔い解消用薬学組成物は、二日酔いによる副作用あるいはアルコール摂取に伴う副作用を抑制するためのものであり得、具体的に、前記副作用は、体重増加、肝毒性または血中コレステロール含量の増加による副作用であり得る。より具体的に、このような体重増加の有無は、前記体重の測定および血中トリグリセリド含量の測定を通じて確認され得、このような肝毒性の有無は、肝の重さの測定を通じて確認されるか、またはGOT/AST数値およびγ-GPT/ALT数値の分析を通じて確認され得る。
【0032】
また、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む、アルコール性肝疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0033】
前記アルコール性肝疾患の予防または治療用薬学組成物は、アルコール性肝疾患の予防または治療のためのものであって、この際、アルコール性肝疾患というのは、アルコールにより誘導された肝の損傷によるものであって、肝炎、肝硬変症および脂肪肝を含む一つ以上の疾患であることが好ましいが、これに限定されない。このようなアルコール性肝疾患の予防または治療効果は、アルコールにより誘導された肝の重さの測定を通じて確認されるか、またはGOT/AST数値およびγ-GPT/ALT数値の分析を通じて確認され得る。
【0034】
前記ベータグルカンは、一次的にアルコールまたはアセトアルデヒドを分解しつつ、2次的に二日酔いによる副作用、すなわち体重増加、肝毒性および血中コレステロール含量の増加を抑制したり、アルコール性肝疾患を予防、改善または治療するために投与されるものであって、β-(1,6)-分岐された(1,3)-グルカンの構造を有することが好ましいが、これに限定されない。前記ベータグルカンは、微生物菌体、酵母菌体またはキノコ菌糸体由来であり得、より具体的にスエヒロタケ(Schizophyllum commune)またはその培養物から分離したものであり得るが、これに限定されない。
【0035】
前記ベータグルカンをスエヒロタケから分離するために、スエヒロタケ菌糸体を液状培養した培養物から収得することができる。より具体的には、韓国特許登録第10-0892355号または韓国特許登録第10-0909857号に公知となったものによってスエヒロタケを培養し、その培養物からベータグルカンを分離および収得することがより好ましいが、これに限定されない。
【0036】
前記ベータグルカンは、前記薬学組成物の総重量に対して0.001重量%~50重量%であることが好ましく、0.005重量%~20重量%であることがより好ましいが、これに限定されない。
【0037】
本発明による薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口剤の剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化されて使用することができ、剤形化のために薬学組成物の製造に通常的に使用される適切な担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。
【0038】
前記担体または、賦形剤または希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリゲート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油などを含む多様な化合物あるいは混合物が挙げられる。
【0039】
製剤化する場合には、普通使用する充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造することができる。
【0040】
経口投与のための固形製剤は、前記ベータグルカンに少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムボラート、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて製造することができる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用することができる。
【0041】
経口のための液状製剤としては、懸濁液、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用する単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。
【0042】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤 、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロールゼラチンなどを使用することができる。
【0043】
本発明による薬学組成物の好ましい投与量は、患者の状態、体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者により適切に選択され得る。しかしながら、好ましい効果のためには、1日0.0001μg/kg~400mg/kgで、より好ましくは0.001mg/kg~200mg/kgで投与することができる。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。ただし、前記投与量によって本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
本発明による薬学組成物は、マウス、ラット、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与することができる。投与のすべての方式は、例えば、経口、非経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与することができる。
【0045】
二日酔い解消用健康機能食品
本発明は、ベータグルカンを有効成分として含有する二日酔い解消用健康機能食品を提供する。
【0046】
本発明による二日酔い解消用健康機能食品は、ベータグルカンを有効成分として含有するものであって、前記ベータグルカンについては、前述した通りである。
【0047】
また、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む、アルコール性肝疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0048】
本発明によるアルコール性肝疾患の予防または改善用健康機能食品は、ベータグルカンを有効成分として含有するものであって、前記ベータグルカンについては、前述した通りである。
【0049】
本発明による健康機能食品において、前記ベータグルカンを健康機能食品の添加物として使用する場合、これをそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、予防、健康または治療などの各使用目的に応じて適合に決定することができる。
【0050】
健康機能食品の剤形は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤の形態だけでなく、一般食品または飲料の形態のいずれも可能である。
【0051】
前記食品の種類には、特に制限はなく、前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレット、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などがあり、通常の意味での食品を全部含むことができる。
【0052】
一般的に、食品または飲料の製造時に前記ベータグルカンは、原料100重量部に対して15重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で添加することができる。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよく、また、本発明は、天然物を利用する点から安全性の面において問題がないので、前記範囲以上の量でも使用することができる。
【0053】
本発明による健康機能食品のうち飲料は、通常の飲料のように、様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライドおよびデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであり得る。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルタムのような合成甘味剤などを使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明による飲料100mL当たり約0.01~0.04g、好ましくは約0.02~0.03gであり得る。
【0054】
前記の他に本発明による健康機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤を含有することができる。このような成分は、独立して、または混合して使用することができる。このような添加剤の比率は制限されないが、本発明の健康機能食品100重量部に対して0.01~0.1重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0055】
さらに、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を、二日酔い解消用薬学組成物に使用するための用途を提供する。
【0056】
また、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を、アルコール性肝疾患の予防または治療用薬学組成物に使用するための用途を提供する。
【0057】
さらに、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を、二日酔い解消用健康機能食品に使用するための用途を提供する。
【0058】
また、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を、アルコール性肝疾患の予防または改善用健康機能食品に使用するための用途を提供する。
【0059】
また、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を個体に投与する段階を含む二日酔いの解消方法を提供する。
【0060】
また、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を個体に投与する段階を含むアルコール性肝疾患の治療方法を提供する。
【0061】
本発明において「個体」とは、病気の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非-ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬、および牛などの哺乳類を意味する。
【0062】
上記したように、本発明は、ベータグルカン(β-glucan)を有効成分として含む二日酔い解消用組成物またはアルコール性肝疾患の予防または治療用組成物に関し、前記組成物は、アルコールまたはアセトアルデヒドを分解して二日酔いを解消することができると共に、二日酔いによる副作用、すなわち体重増加、肝毒性および血中コレステロール含量の増加を抑制できる利点を有する。したがって、前記組成物によれば、生体に安全に、二日酔いによる副作用なしに、二日酔いを解消できるものと期待される。
【0063】
それだけでなく、本発明による組成物は、アルコール性肝疾患の予防、改善または治療効果を有する。
【0064】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0065】
実施例1:短時間アルコールの摂取時に、ベータグルカンの投与によるアルコール分解効果の確認(動物実験)
6週齢の野生型C57BL/6マウスを購入して3日間飼育して、環境に適応させた後に飼育した。具体的に、マウス5匹ずつ総4群に分けて表1に示されたように、実験群1と比較実験群1は、20%アルコール(EtOH)0.2mlを経口投与し、30分経過後、実験群1は、スエヒロタケ由来のベータグルカン(β-(1,6)-分岐された(1,3)-グルカンの構造を有するSPG)(製造社:キュジェンバイオテク)(濃度=1.6mg/ml)0.2mLを経口投与し、比較実験群1は、SPGの代わりにPBS(Phosphate buffer solution)を経口投与した。一方、比較実験群2、3は、アルコール投与なしにSPGおよびPBSをそれぞれ経口投与した。
【0066】
【表1】
【0067】
短時間アルコールを摂取させた動物モデルでベータグルカンを経口投与するに伴って、アルコール分解酵素(Alcohol Dehydrogenase;ADH)およびアセトアルデヒド分解酵素(NAD-dependent Aldehyde Dehydrogenase;ALDH)の活性増加、血中アルコールおよびアセトアルデヒド濃度の減少効果を示すか否かを確認した。
【0068】
具体的に、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた後、1時間、2時間および4時間ごとに血を採取して血清を分離することによって、アルコール分解酵素およびアセトアルデヒド分解酵素の活性、血中アルコールおよび血中アセトアルデヒドの濃度を測定し、その結果は、図1に示した。
【0069】
図1に示されたように、短時間アルコールを摂取させた後、ベータグルカンを経口投与ある実験群1の場合、比較実験群1に比べてアルコールおよびアセトアルデヒド分解酵素の活性がいずれも大きく増加したことが確認される。ただし、短時間アルコールを摂取せず、ベータグルカンを経口投与した比較実験群2の場合には、このような酵素活性の増加が確認されなかった。
【0070】
また、実験群1の場合、比較実験群1に比べて血中アルコールおよび血中アセトアルデヒドの濃度がいずれも大きく減少することが確認された。
【0071】
実施例2:長時間アルコールの摂取時に、ベータグルカンの投与によるアルコール分解効果の確認(動物実験)
6週齢の野生型C57BL/6マウスを購入して3日間飼育して、環境に適応させた後に飼育した。具体的に、マウス5匹ずつ総4群に分けて表2に示されたように、実験群1と比較実験群1は、20%アルコール(EtOH)0.2mLを経口投与し、30分経過後、実験群1は、スエヒロタケ由来のベータグルカン(β-(1,6)-分岐された(1,3)-グルカンの構造を有するSPG)(製造社:キュジェンバイオテク)(濃度=1.6mg/ml)0.2mLを経口投与し、比較実験群1は、SPGの代わりにPBS(Phosphate buffer solution)を経口投与した。このような過程を1時間の間隔で連続して総4回実施した。一方、比較実験群3,4は、アルコール投与なしに同じ時間間隔で総4回SPGとPBSをそれぞれ経口投与した。
【0072】
【表2】
【0073】
長時間アルコールを摂取させた動物モデルでベータグルカンを経口投与するに伴って、血中アルコールおよび血中アセトアルデヒド濃度の減少効果を示すか否かを確認した。
【0074】
具体的に、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた後、5時間後から1時間の間隔で6回血を採取して血清を分離することによって、血中アルコールおよびアセトアルデヒドの濃度を測定し、その結果は、図2に示した。
【0075】
図2に示されたように、長時間アルコールを摂取させた後、ベータグルカンを経口投与ある実験群1の場合、比較実験群1に比べて血中アルコールおよび血中アセトアルデヒド濃度がいずれも大きく減少することが確認された。
【0076】
実施例3:長時間アルコールの摂取時に、ベータグルカンの投与による二日酔いによる副作用の抑制効果またはアルコール性肝疾患の治療効果の確認(動物実験)
6週齢の野生型C57BL/6マウスを購入して3日間飼育して、環境に適応させた後に飼育した。具体的に、マウス5匹ずつ総4群に分けて表3に示されたように、実験群1と比較実験群1は、20%アルコール(EtOH)0.2mLを経口投与し、30分経過後、実験群1は、スエヒロタケ由来のベータグルカン(β-(1,6)-分岐された(1,3)-グルカンの構造を有するSPG)(製造社:キュジェンバイオテク)(濃度=1.6mg/ml)0.2mLを経口投与し、比較実験群1は、SPGの代わりにPBS(Phosphate buffer solution)を経口投与した。このような過程を1時間の間隔で連続して総4回実施した。一方、比較実験群3、4は、アルコール投与なしに同じ時間間隔で総4回SPGとPBSを経口投与した。これらを週当たり5回ずつ総6週間繰り返した。
【0077】
【表3】
【0078】
長時間アルコールを摂取させた動物モデルでベータグルカンを経口投与するに伴い、二日酔いによる副作用の抑制効果およびアルコール性肝疾患の治療効果を示すか否かを確認した。
【0079】
具体的に、実験群1および比較実験群1~3でベータグルカンまたはPBSを投与し始めた6週後にマウスを犠牲にした後、体重および肝の組織の重さを測定し、その結果を図3に示した。また、血清分析を行い、その結果を図4に示した。
【0080】
図3に示されたように、長時間アルコールを摂取させた後、ベータグルカンを経口投与ある実験群1の場合、比較実験群1に比べて体重および肝の組織の重さが大きく減少したことが確認される。また、図4に示されたように、実験群1の場合、比較実験群1に比べて血中トリグリセリドの含量が減少し、血中コレステロールの含量が大きく減少すると共に、血中GOT/AST数値およびγ-GPT/ALT数値もやはり大きく減少することが確認される。
【0081】
以下、本発明の化合物を含有する組成物の製剤例を説明するが、本発明は、これを限定しようとするものではなく、ただ具体的に説明しようとする。
【0082】
製剤例1:散剤の製造
ベータグルカン 20mg
乳糖水和物 100mg
タルク 10mg
【0083】
前記の成分を混合し、気密袋に充填して散剤を製造した。
【0084】
製剤例2:錠剤の製造
ベータグルカン 10mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖水和物 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
【0085】
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造した。
【0086】
製剤例3:カプセル剤の製造
ベータグルカン 10mg
微結晶セルロース 3mg
乳糖水和物 14.8mg
ステアリン酸マグネシウム 0.2mg
【0087】
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法によってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0088】
製剤例4:注射剤の製造
ベータグルカン 10mg
マンニトール 180mg
注射用滅菌蒸留水 2974mg
リン酸一水素ナトリウム 26mg
【0089】
前記の成分を混合した後、通常の注射剤の製造方法によって1アンプル当たり(2mL)前記の成分含量で製造した。
【0090】
製剤例5:液剤の製造
ベータグルカン 10mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
レモン香 適量
【0091】
前記の成分を通常の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加えた後、精製水を加えて、全体100mLに調節した後に滅菌させて、褐色瓶に充填して液剤を製造する。
【0092】
製剤例6:健康機能食品の製造
ベータグルカン 10mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB 0.13mg
ビタミンB 0.15mg
ビタミンB 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
無機質混合物 適量
硫酸第1鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第1リン酸カリウム 15mg
第2リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
【0093】
前記のビタミンおよびミネラル混合物の組成比は、比較的健康機能食品に適合した成分を好ましい実施例で混合組成したが、その配合比を任意に変形実施してもよく、通常の健康機能食品の製造方法によって前記の成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法によって健康機能食品の製造に使用することができる。
【0094】
製剤例7:健康飲料の製造
ベータグルカン 10mg
ビタミンC 15g
ビタミンE(粉末) 100g
乳酸鉄 19.75g
酸化亜鉛 3.5g
ニコチン酸アミド 3.5g
ビタミンA 0.2g
ビタミンB 0.25g
ビタミンB 0.3g
精製水 適量
【0095】
通常の健康飲料の製造方法によって前記の成分を混合した後、約1時間の間85℃で撹拌加熱した後、作られた溶液を濾過して滅菌された2L容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管した後、本発明の健康飲料組成物の製造に使用する。
【0096】
前記組成比は、比較的嗜好飲料に適合した成分を好ましい実施例で混合組成したが、需要階層や、需要国家、使用用途など地域的、民族的嗜好度に応じてその配合比を任意に変形実施してもよい。
【0097】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4