(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】異物検査装置及び異物検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20220119BHJP
G01N 21/94 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01N21/956 Z
G01N21/94
(21)【出願番号】P 2020524995
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2018022471
(87)【国際公開番号】W WO2019239502
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-09-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597027280
【氏名又は名称】株式会社 エフケー光学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【氏名又は名称】南 義明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 栄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞樹
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-040862(JP,A)
【文献】特開2014-038045(JP,A)
【文献】特開2000-162137(JP,A)
【文献】特開平10-048144(JP,A)
【文献】特開2015-219085(JP,A)
【文献】特開2016-090271(JP,A)
【文献】特開2013-057680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の表面に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
インコヒーレント光の照明光を前記検査対象に照射する光源部と、
前記検査対象を撮影する撮像部と、
前記撮像部で撮影された画像に基づいて異物を検出する検出部と、を備え、
前記検出部において、異物の検出対象とする画像は、前記撮像部で撮影された画像を
、前記検査対象が前記光源部に近い側と前記光源部から離れた側で2分割した2つの領域中、
前記光源部に近い側に位置している領域である
異物検査装置。
【請求項2】
前記撮像部における光学系の光軸は、前記検査対象の表面に対して傾斜している
請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記検査対象で反射した正反射光を受光しない位置であって、前記検査対象の表面に付着した異物の散乱光を受光する位置に配置されている
請求項
1に記載の異物検査装置。
【請求項4】
検査対象の表面に付着した異物を検査する異物検査方法であって、
インコヒーレント光の照明光を前記検査対象に照射し、
前記検査対象で反射した照明光を撮像部で撮影し、
異物の検出対象とする画像は、前記撮像部で撮影された画像を
、前記検査対象が前記光源部に近い側と前記光源部から離れた側で2分割した2つの領域中、
前記光源部に近い側に位置している領域である
異物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶カラーフィルタ等、各種基板に付着した異物を検査する異物検査装置、及び、異物検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程、あるいは、液晶表示装置等のフラットディスプレイの製造工程等では、製品の精度向上等を図ることを目的として、製造工程において、ガラス基板に付着する異物を検出することが行われている。
【0003】
特許文献1には、被検査物体の表面に撮像手段の焦点を合わせて撮像し、撮像された画像から被検査物体の表面の異物を検出し、被検査物体の裏面に撮像手段の焦点を合わせて撮像し、撮像された画像から被検査物体の裏面の異物を検出する異物検出装置が開示されている。特許文献2には、ガラス基板の表面および裏面に付着した異物を高精度で検査しうる異物検査装置が開示されている。そのため、この異物検査装置は、投光位置と受光位置の相対位置を変化させることで、ガラス基板の表面に付着した異物の検出と、ガラス基板の裏面に付着した異物の検出を切り替えることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-74849号公報
【文献】特開2016-133357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示装置に実装されるカラーフィルタの製造工程では、レジストが塗布された状態で、塗布されたレジストに異物が付着していないか検査を行う必要がある。レジストに異物が付着している場合、その後の工程となる露光において、レジスト面に近接配置されるフォトマスクを破損させる、あるいは、カラーフィルタ自体の品質を損なうことになる。特に、フォトマスクは高価であるため、異物により破損が生じた場合、金銭的な被害は大きいものとなる。
【0006】
このような事情からカラーフィルタの製造工程では、精度の高い異物検出を行うことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明に係る異物検査装置は、以下に記載する第1の構成を採用するものである。
検査対象の表面に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
インコヒーレント光の照明光を前記検査対象に照射する光源部と、
前記検査対象を撮影する撮像部と、
前記撮像部で撮影された画像に基づいて異物を検出する検出部と、を備え、
前記検出部において、異物の検出対象とする画像は、前記撮像部で撮影された画像を、前記検査対象が前記光源部に近い側と前記光源部から離れた側で2分割した2つの領域中、前記光源部に近い側に位置している領域である。
【0008】
さらに本発明に係る異物検査装置(第2の構成)は、第1の構成において、
前記撮像部における光学系の光軸は、前記検査対象の表面に対して傾斜している。
【0009】
また本発明に係る異物検査装置(第3の構成)は、
検査対象の表面に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
照明光を前記検査対象に照射する光源部と、
前記検査対象を撮影する撮像部と、
前記撮像部で撮影された画像に基づいて異物を検出する検出部と、を備え、
前記撮像部における光学系の光軸は、前記撮像部の撮像面の鉛直方向に対して傾斜している。
【0010】
さらに本発明に係る異物検査装置(第4の構成)は、第3の構成において、
前記撮像面の延長面は、前記光学系の光軸の垂直面と、前記検査対象の略表面位置で交わる。
【0011】
さらに本発明に係る異物検査装置(第5の構成)は、第1から第3の何れか1つの構成において、
前記撮像部は、前記検査対象で反射した正反射光を受光しない位置であって、前記検査対象の表面に付着した異物の散乱光を受光する位置に配置されている。
【0012】
また本発明に係る異物検査方法(第6の構成)は、
検査対象の表面に付着した異物を検査する異物検査方法であって、
照明光を前記検査対象に照射し、
前記検査対象で反射した照明光を撮像部で撮影し、
異物の検出対象とする画像は、前記撮像部で撮影された画像中、照明光が入射する側の一部領域である。
【0013】
また本発明に係る異物検査方法(第7の構成)は、
検査対象の表面に付着した異物を検査する異物検査方法であって、
インコヒーレント光の照明光を前記検査対象に照射し、
前記検査対象で反射した照明光を撮像部で撮影し、
異物の検出対象とする画像は、前記撮像部で撮影された画像を、前記検査対象が前記光源部に近い側と前記光源部から離れた側で2分割した2つの領域中、前記光源部に近い側に位置している領域である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る異物検査装置、異物検査方法によれば、異物の検出対象とする画像を、前記撮像部で撮影された画像中、照明光が入射する側の一部領域とする(第1、第6の構成)、あるいは、撮像部における光学系の光軸を、撮像部の撮像面の鉛直方向に対して傾斜させる(第2、第7の構成)とすることで、異物による散乱光を有効に受光できる有効検査領域の拡大を図り、検査精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における異物検査装置の構成を示す斜視図
【
図2】本実施形態における異物検査装置の構成を示す側面図
【
図3】本実施形態の検査対象となるカラーフィルタの製造工程を示す図
【
図4】本実施形態で使用する照明光の色とカラーレジスト色(検査対象の表面色)の関係を説明するための色相環
【
図7】比較例の異物検査装置の撮影構成を説明するための側面図
【
図8】本実施形態の異物検査装置の撮影構成を説明するための側面図
【
図9】撮像画像中、検査対象領域を説明するための模式図
【
図10】本実施形態の画像処理で使用するマスクを説明するための模式図
【
図12】他の実施形態の異物検査装置の撮影構成を説明するための側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態における異物検査装置1の構成を示す斜視図である。本実施形態の異物検査装置は、台座5の上に設置された検査対象4を照明するLED(Light Emitting Diode)線光源3a、3b(本発明の「光源部」に相当する)、照明された検査対象4を撮影する撮像部2a~2r、そして、撮像部2a~2rで撮影された画像に対して画像処理を施し、検査対象4の表面に付着した異物を検出する情報処理装置(図示せず、本発明の「検出部」に相当する)を備えて構成されている。
【0017】
本実施形態の検査対象4は、例えば、カラーフィルタの製造工程途中において、表面カラーレジストが塗布された透明基板(ガラス基板等)である。カラーフィルタの製造工程については、後で詳細に説明を行う。なお、異物検査装置1は、検査対象4を製造工程途中のカラーフィルタに限られるものではなく、透明基板を使用する各種分野において使用することが可能である。
【0018】
撮像部2a~2rは、検査対象4の上方にマトリクス状に配置されている。
図1には、撮像部2kについて、その撮像範囲Pが斜線で示されている。本実施形態では、撮像範囲Pの一部を有効検査領域として使用し、残る撮像範囲は異物の検出に使用しない(無効検査領域とする)こととしている。マトリクス状に配置された撮像部2a~2rは、各有効検査領域の一部が重なるように配置されることで、検査対象4の全面を検査対象とすることが可能となっている。このように、撮像部2a~2rで撮影することで、検査対象4の全面を検査することが可能となっている。なお、検査対象4の一部領域を撮影し、検査対象4を移動させる、あるいは、撮像部2a~2rを移動させることで、検査対象4の全面を検査する形態とすることも可能である。また、撮像部2a~2rの数、配置は、
図1に示す形態に限られるものでは無く、検査対象4の大きさ、形状等の各種条件に応じて適宜に決定することが可能である。
【0019】
光源部としてのLED線光源3a、3bは、検査対象4の横方向から検査対象4の表面に照明光Lを照射する。本実施形態の撮像部2a~2rは、検査対象4の表面に付着した異物を検出するため、異物による散乱光を受光する角度であって、検査対象4による照明光Lの正反射光を受光しない角度を向くように配置されている。このような配置により、異物の散乱光を、正反射光に阻害されることなく受光し、異物検出の精度向上を図ることを可能としている。
【0020】
光源部には、レーザー光のようなコヒーレント光ではなく、本実施形態のLED線光源3a、3b、あるいは、蛍光灯等のインコヒーレント光を使用することが好ましい。コヒーレント光を使用した場合、検査対象の裏面に位置する電極等の構造物、あるいは、検査対象に設けられた孔等が実寸で撮影されることになる。一方、照明光にインコヒーレント光を使用するとともに、照明光の色を選択することで、検査対象の裏面に位置する電極等構造物、あるいは、検査対象に設けられた孔等が実寸よりも小さく認識(観察)され、検査対象領域の拡大を図ることが可能となる。
【0021】
図2は、本実施形態における異物検査装置1の構成を示す側面図である。
図2は、
図1中、撮像部2a~2fの列における側面図である。LED線光源3a、3bは、横方向から検査対象4の表面に照明光Lを照射する。照明光Lは、理想的には、検査対象4の表面と略平行に入射させる、すなわち、検査対象4の表面4に位置する異物にのみ光があたるように入射させることが好ましい。しかしながら、検査対象4、あるいは、台座5の歪みによって、検査対象4の表面が全くの平面とならないことを考慮し、僅かに傾けておく必要が生じる。照明光Lの検査対象4の表面に対する傾斜角は、XY平面と平行状態を0度とした場合、0度~5度の範囲内で検査対象4に向けて傾斜させることが好ましい。さらに好ましくは0度~3度以内とすることが好ましい。なお、
図2では、照明光Lの傾斜角は、実際よりも大きく誇張して示されている。前述したように、本実施形態の撮像部2a~2fは、検査対象4の表面に付着した異物による散乱光を受光する角度であって、検査対象4による照明光Lの正反射光を受光しない角度を向くように配置されている。
【0022】
撮像部2a~2cは、LED線光源3aの照明光Lによる異物での散乱光を受光するべく、XZ平面上、検査対象4の鉛直方向(Z軸方向)と角度E(1度<E<20度)だけ傾けて配置されている。一方、撮像部2d~2fは、LED線光源3bの照明光Lによる異物での散乱光を受光するべく、XZ平面上、撮像部2a~2cとは異なる方向に、角度Eだけ傾けて配置されている。このように配置することで、撮像部2a~2cは、LED線光源3aによる照明光Lにより異物で散乱された散乱光を主として受光し、LED線光源3a、3bの正反射光の影響を受け難くしている。また、撮像部2d~2fは、LED線光源3bによる照明光Lにより異物で散乱された散乱光を主として受光し、LED線光源3a、3bの正反射光の影響を受け難くしている。なお、図示していないが、撮像部2a~2fは、YZ平面内においては鉛直方向を向いた状態となっている。
【0023】
本実施形態では、検査対象4として液晶表示装置に使用されるカラーフィルタとしている。特に、製造工程途中のカラーフィルタについて、表面に付着した異物の検出を行うこととしている。
図3は、カラーフィルタの製造工程を示す図である。
図3(A)に示すように、ガラス基板等の透明基板41上にブラックマトリックス42が形成される。ブラックマトリックス42の形成については、後で説明するカラーレジスト43Rと同様、露光、現像により行われることになるが、ここではその説明は省略する。
図3(B)に示すように、ブラックマトリックス42が形成された透明基板41上に赤色のカラーレジスト43Rが塗布される。本実施形態の異物検査装置1は、このカラーレジスト43Rが塗布された状態を検査対象4としている。
【0024】
図3(C)に示すように、カラーレジスト43Rが塗布された後、フォトマスク44を上方に配置して露光を行うことになるが、カラーレジスト43R上に異物が付着した場合、異物がフォトマスク44を破損させてしまうことがある。フォトマスク44は極めて高価であるため、破損による金銭的な被害は大きい。また、異物によるフォトマスク44の破損に気付かず、カラーフィルタの製造を続けた場合、カラーフィルタ自体に欠損を生じることになる。カラーフィルタの欠損は、例えば、液晶表示装置における表示画像の劣化を生じさせることになる。
【0025】
フォトマスク44に設けられた開口44aを介して紫外線を照射し、開口44aの位置におけるカラーレジスト43Rを不活性化させる。その後、現像液でカラーレジスト43Rの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト43Rをベークして硬化させる。
図3(D)は、硬化されたカラーレジスト43Rを示す図である。緑のカラーレジスト43Gについて、
図3(B)、
図3(C)の行程を行うことで、
図3(E)のように、硬化されたカラーレジスト43Gが追加される。そして、青のカラーレジスト43Bについて、
図3(B)、
図3(C)の行程を行うことで、
図3(E)のように、硬化されたカラーレジスト43Bが追加される。本実施形態の異物検査装置1は、緑のカラーレジスト43G、青のカラーレジスト43Bが塗布された状態についても検査対象4とし、その表面に付着した異物の検査を実行する。
【0026】
図4は、本実施形態の異物検査装置1で使用する照明光Lの色と、検査対象4の表面色となるカラーレジスト色の関係を説明するための色相環である。本実施形態では、24ブロックに等分割された色相環を使用している。
図4(A)は、カラーレジスト43Gの場合であって、矢印で示すようにレジスト色が赤の場合である。色相環では、対向する位置の色が補色となる。ここで、補色とは、ある色光とその補色光を加法混色した場合、白色光を生じる色である。
【0027】
本実施形態では、検査対象4の表面色に応じて、照明光Lの色が所定条件を満たすように選択することで、検査対象4の裏面に位置する電極等の構造物、あるいは、検査対象4に設けられた孔、あるいは、台座5の表面の傷、穴等を実寸よりも小さく認識(観察)することを可能としている。従来、照明光Lとして白色光等を用いた場合、上述する検査対象4の構造物、孔、台座5の傷、穴については、撮像画像上、実寸で観察されることになる。したがって、これらの構造物、孔、傷については、実寸に応じた不感帯領域を有するマスクを設ける必要がある。不感帯領域では、検査対象4の表面を検査することができなくなる。したがって、不感帯領域に異物が付着した場合には、検査漏れとなることがある。一方、本実施形態では、所定条件を満たす照明光Lの色を使用することで、不感帯領域を縮小し、異物を検査する領域の拡大を図ることが可能となっている。
【0028】
照明光Lの色の条件としては、検査対象4の表面色(本実施形態では、レジスト色)と補色関係にあることとが必要である。ここで、補色関係とは、色相環において、検査対象4の表面色の補色から所定範囲内に中心周波数を有する色としている。例えば、
図4(A)に示す、カラーレジスト43Gの場合、レジスト色(赤)に対向して位置する補色の位置から、24分割された色相環において、所定範囲内、すなわち、その前後、4ブロックの範囲内の色に中心周波数を有する照明光Lを使用している。本実施形態では、矢印で示す位置の色に中心周波数を有する照明光Lを使用している。また、
図4(B)に示す、カラーレジスト43Gの場合(レジスト色は緑)、
図4(C)に示す、カラーレジスト43Bの場合(レジスト色は青)も同様であって、カラーレジスト色の補色から所定範囲内の色に中心周波数を有する照明光Lを使用している。
【0029】
図2で説明したように、本実施形態では、撮像部2a~2rにおいて、異物による散乱光を受光することで、異物を効果的に検出することが可能である。ここで、異物による光の散乱について説明しておく。異物となる微小粒子に光が入射した場合、微少粒子の大きさに応じて散乱の形態は異なることが知られている。微小粒子による散乱は、微少粒子の大きさと光の波長との関係によって大別され、微小粒子の大きさが光の波長の1/10の場合、レーリー散乱を生じることが、また、微小粒子の大きさがそれ以上の場合、ミー散乱を生じることが知られている。本実施形態で検出対象となる異物は、ガラス基板の破片等であって、ミー散乱を生じる大きさの異物である。
【0030】
図5は、ミー散乱を説明するための模式図であって、球形微小粒子Sに照明光Lが入射したときの散乱の様子を示す模式図である。
図5(A)は、散乱光の様子を示す上面図であり、
図5(B)は、その側面図である。ここでは、検査対象4の表面をXY平面、検査対象の表面に直交する軸をZ軸、照明光Lの進行方向をX軸正の方向としている。散乱光は、X軸の正負方向それぞれに弧を描くように現れる。また、散乱光は、球形微小粒子Sの大きさよりも大きく観察されることになるため、散乱光を観察することで、検査対象に付着した異物を効率よく検出することが可能となる。
【0031】
図6は、本実施形態の異物検査装置1を使用して撮像された撮像画像23(2値化済み)である。ここでは、透明な2つの球形微小粒子S1、S2(微少なビーズ球)を検査対象4の表面に付着させて撮像している。破線で示す円は、球形微小粒子S1、S2の実際の位置を示しており、実際には撮像画像23には写っていない。撮像画像23は、球形微小粒子S1、S2に対し、
図5と同様、X軸正の方向に照明光Lを入射させて撮影し、画像の2値化された画像である。球形微小粒子S1、S2のX軸正負の方向には、黒色で示す散乱光が写されている。このように、球形微小粒子S1、S2による散乱光は、実際の球形微小粒子S1、S2の大きさよりも大きく写されるため、検査対象4の表面に付着した異物の検査には有効である。なお、
図5、
図6では、異物として球形微小粒子Sを使用しているが、これは散乱光の観察が球形形状で最も困難であることを理由としている。実際の異物は、ガラス破片等、球形とは異なる形状が一般的であり、そのような形状において散乱光は顕著に現れることになり、その観察は容易である。
【0032】
図7は、比較例としての異物検査装置1の撮影構成を説明するための図である。
図1、
図2で説明した構成中、1つの撮像部2aを例に取ってその撮影構成を説明する。比較例では、検査対象4の表面を、Y軸方向に延在するLED線光源3aで照明し、検査対象4に付着する異物で散乱した散乱光を撮像部2aで撮像することとしている。比較例では、撮像部2aにおける光学系22の光軸は、検査対象4の表面と略直交するように配置されている。また、異物のサンプルとして、X軸方向に等間隔で4個の球形微小粒子S1~S4を並べている。これら球形微小粒子S1~S4は、撮像部2aの撮像範囲Tに入るように配置されている。
図7中、照明光Lは、検査対象4の表面と略平行に入射させているが、
図2で説明したように、僅かに検査対象4側に向けて傾斜させてもよい。後述する
図8、
図12も同様である。
【0033】
比較例においても、異物で生じた散乱光を鮮鋭に撮影することが、異物の発見において好ましい。光学系22の光軸を検査対象4の表面と略直交させた比較例では、4個並べた球形微小粒子S1~S4の内、照明光Lが入射する側に位置する球形微小粒子S1のみが、精度よく観察することができた。一方、照明光Lとは反対側に位置する3つの球形微小粒子S2~S4は、散乱光の受光量が不足するため、その観察精度は、照明光Lの入射する側から遠ざかるにつれて悪くなることが分かった。そのため、比較例では、撮像範囲Tを全て使用するのではなく、LED線光源3a側に位置する有効検査領域R1を異物の検出対象として使用する。そして、LED線光源3aから離れて位置する無効検査領域R2は異物の検出対象として使用しないことが、散乱光を有効に受光する点においては好ましい。
【0034】
図9(A)は、比較例の撮像画像23中、有効検査領域R1を説明するための模式図である。
図7で説明したように、比較例では、撮像範囲T中、LED線光源3aから照明光Lが入射する側に位置する領域を、異物の検査に使用する有効検査領域R1としている。また、残る領域を異物の検査に使用しない無効検査領域R2としている。
図9(A)を見て分かるように、光学系22の光軸が撮像面21に直交する撮像部2aを使用した場合、撮像画像23における光軸C2の位置は、撮像画像23の中心に位置する。一方、有効検査領域R1の画像中心C1は、撮像画像23から無効検査領域R2が切り取られるため、照明光Lが入射する側に偏移している。
【0035】
本発明は、比較例のように撮像画像23中、照明光Lの入射側に位置する一部領域(有効検査領域R1)を異物の検出対象として使用することで、異物による散乱光を有効に受光し、異物の検出精度向上を図ることが可能である。しかしながら、
図9(A)を見て分かるように、比較例のように、光学系22の光軸を検査対象4の表面と略直交させた場合、撮像範囲T中の有効検査領域R1は、狭くなることになる。その結果として、撮像部2a~2rを増やすなどの対応が必要となる。本実施形態では、このような事情を考慮し、
図2で説明したように、撮像部2a~2rを、検査対象4の直交方向から角度Eだけ設けた配置とすることで、有効検査領域R1の拡大を図っている。
【0036】
図8は、本実施形態の異物検査装置1の撮影構成を説明するための側面図である。ここでは、
図7の比較例と同様、1つの撮像部2aを例に取ってその撮像構成を説明する。本実施形態では、検査対象4の表面を、Y軸方向に延在するLED線光源3aで照明し、検査対象4に付着する異物で散乱した散乱光を撮像部2aで撮像することとしている。ここでは、異物のサンプルとして、X軸方向に等間隔で6個の球形微小粒子S1~S6を並べている。これら球形微小粒子S1~S6は、撮像部2aの撮像範囲Tに入るように配置されている。
【0037】
本実施形態では、異物で生じた散乱光を鮮鋭に撮影することが、異物の発見において好ましい。球形微小粒子S1~S6の散乱光をできるだけ多く受光するには、球形微小粒子S1~S6において、照明光Lの入射側とは反対側に生じる散乱光について、その受光量を多くするべく、撮像部2aの角度Eを大きくとることが好ましい。しかしながら、角度Eを大きくした場合、散乱光のみならず、照明光Lの正反射光が入射することになり、正反射光で散乱光が阻害されてしまうことになる。そのため、本実施形態では、撮像部2aの角度EをLED線光源3aからの照明光Lによる正反射光が入射しない程度の角度(1度~20度の範囲)としている。
【0038】
また、このような角度Eを設けることで、光学系22の光軸を検査対象4の表面と略直交させた比較例(
図7、
図9(A))と比較して、有効検査領域R1の拡大を図ることが可能となっている。本実施形態においても、撮像範囲Tを全て使用するのではなく、LED線光源3a側に位置する有効検査領域R1を異物の検出対象として使用する。そして、LED線光源3aから離れて位置する無効検査領域R2は異物の検出対象として使用しないこととしている。したがって、
図1、
図2で説明したように複数の撮像部2a~2rを使用して検査対象4の全面を検査する場合、撮像部2a~2は、有効検査領域R1の一部が重なるように配置される。
【0039】
図9(B)は、本実施形態の撮像画像23中、有効検査領域R1を説明するための模式図である。
図8で説明したように、本実施形態では、撮像範囲T中、LED線光源3aから照明光Lが入射する側に位置する領域を、異物の検査に使用する有効検査領域R1としている。また、残る領域を異物の検査に使用しない無効検査領域R2としている。
図8を見て分かるように、光学系22の光軸が撮像面21に直交する撮像部2aを使用した場合、撮像画像23における光軸C2の位置は、撮像画像23の中心に位置する。一方、有効検査領域R1の画像中心C1は、撮像画像23から無効検査領域R2が切り取られるため、照明光Lが入射する側に偏移している。
【0040】
図10は、本実施形態の画像処理で使用するマスクを説明するための模式図である。マスクとは、撮像画像23中、異物の検査に使用しない不感帯領域を指定するために使用される。不感帯領域は、検査対象4中、予め分かっている構造物、孔、傷等の位置に割り当てられ、これらを異物として誤検出しないことを目的としている。本実施形態では、照明光Lにインコヒーレント光を使用し、その色を選定することで、特に、検査対象4の裏面に位置する電極等の構造物、検査対象4に設けられた孔、台座5の表面にある傷等を、実寸よりも小さく認識(観察)されることを可能としている。したがって、マスク中の不感帯領域を縮小する、あるいは、不感帯領域を設けなくてもよいこととし、不感帯領域以外の領域、すなわち、異物の検査対象となる領域の拡大を図ることが可能となる。
【0041】
図10(A)は、検査対象4の裏面に設けた電極45b、検査対象4を貫通する孔45a、台座に設けられた台座孔5aを模式的に示した上面図、及び、孔45aの位置における断面図である。
図10で示す座標系は、
図1、
図2と同様であって、照明光Lは、Z軸正の方向から検査対象4の表面に照射される。電極45bは、照明光Lが照射される側とは反対の裏面に位置している。
【0042】
照明光Lに白色光を使用して撮影した場合、孔45a、電極45bは、実寸で観察されることになる。そのため、白色光を使用した場合のマスク6aにおける不感帯領域61a、61bは、
図10(B)に示すように、
図10(A)の孔45a、電極45bと同じ大きさ、あるいは、余裕をみて僅かに大きく設けられる。
図10(B)のマスク6a中、不感帯領域61a、61b以外の領域が異物の検査対象として使用される。したがって、これら不感帯領域61a、61bに異物が付着していた場合、当該異物は検出できないことになる。
【0043】
一方、本実施形態の異物検査装置1では、
図4でも説明したように、照明光Lの色を検査対象4の表面色に応じて選択することで、検査対象への照明光Lの透過量を減少させ、検査対象4の裏面に位置する電極45b、検査対象4に設けられた孔45a、台座5に設けられた台座孔5aにおける反射量(輝度)を略0とする、あるいは、反射量を低下させることが可能となる。本実施形態では、撮像画像の各画素に対して閾値を設け、閾値以上の輝度で2値化を行っているが、2値化を行うことで、検査対象4の裏面に位置する電極45b、検査対象4に設けられた孔45a、台座5に設けられた台座孔5aは、その全領域、あるいは、一部領域の輝度が閾値以下となり、全領域、あるいは、一部領域が認識(観察)対象から外れることになる。例えば、
図9(A)では、X軸正の方向から照明光Lが入射することになるが、入射する照明光Lが電極45bの端部(Xの値が大きい側)で反射を起こし、電極45bの他の部分よりも輝度が強くなることが考えられる。そのため、電極45bの照明光が入射する側の端部では、2値化後においても、認識(観察)可能な画像として残ってしまう。本実施形態では、認識(観察)可能な画像として残った部分にのみマスクを行うこととしている。
【0044】
本実施形態の異物検査装置1で使用するマスク6bは、
図10(C)に示す2値化された撮像画像23に基づいて作成されることになり、
図10(D)に示す形態となる。マスク6bでは、
図10(C)に示されるように、撮像画像23において孔45a、台座孔5aが消去されているため、孔45a、台座孔5aに対する不感帯領域61aを必要としない。また、電極45bについては、電極45bの実寸よりも小さい不感帯領域61b’で済むことになる。よって、
図10(B)の白色光におけるマスク6aと、
図10(D)の本実施形態のマスク6bを比較して分かるように、不感帯領域を小さく抑え、残る領域、すなわち、異物の検査対象となる領域拡大を図ることが可能となっている。なお、異物の検出を行う際の画像処理として、撮像画像23に対する2値化は必ずしも行う必要はなく、2値化に代えてn値化(n≧3)とすることとしてもよい。
【0045】
異物検査装置1の画像処理で使用するマスク6bは、異物が付着していないことを十分に確認した検査対象4を撮影し、その撮像画像を使用して作成される。また、同じ構成の検査対象4であっても、レジスト色等の表面色、及び、照明光Lの色が異なる場合には、電極像23b等の大きさも変化するため、検査対象4の表面色毎に作成されることが好ましい。
【0046】
図11は、本実施形態の異物検査装置1における異物検査工程を示すフロー図である。本実施形態では、
図3で説明した製造工程途中のカラーフィルタを検査対象4としている。異物検査工程では、まず、台座5に検査対象4が設置される(S11)。そして、検査対象4の表面色であるカラーレジスト色が、LED線光源3a、3bに設定されている照明光Lの色と適合しているか否かが判定される。製造ラインの変更などに伴い、対象となるカラーレジスト色が変更された場合等、照明光Lの色が検査対象4の表面色、すなわち、塗布されているカラーレジストの色に適合しない場合(S12:No)には、検査対象4の表面色に適合するように、照明光Lの色を変更する(S13)。LED線光源3aには、R(赤)、G(緑)、B(青)のLEDが設けられており、各色LEDの明るさを変化させることで、照明光Lの色を変更する(調光する)ことが可能である。
【0047】
そして、検査対象4の表面に照明光を照射し(S14)、撮像部2a~2rで撮像を行う。なお、本実施形態では、撮像画像23の一部領域である有効検査領域R1を、異物の検査に使用する。撮像画像23は、2値化された(S16)後、表面色に対応したマスクが施される(S19)。なお、前述したようにマスクは表面色に対応しているため、マスクが表面色に適合していない場合(S17:No)、マスクは表面色に適合するものに変更される(S18)。
【0048】
異物の有無の検査は、2値化された撮像画像23に対し、マスクによる不感帯領域以外の領域に対して行われる(S20)。
図6で説明したように、異物の検出は、異物で生じる散乱光を観察することで行われるが、この散乱光の範囲(
図6の黒色で示す部分)が閾値を超える場合、異物ありとして判断される。検査が行われた後、検査対象4は、台座5から移動され(S21)、異物無しの場合(S22:No)は、検査対象4は次の工程に入る。一方、異物有りの場合(S22:Yes)には、検査対象4は、塗布されたカラーレジストを取り除く等の再処理工程が行われる、あるいは、廃棄処理の対象となる(S23)。なお、異物の有無の検査は、上述する形態以外に、各種形態で行うことが可能である。
【0049】
図7~
図9では、異物による散乱光の検出精度向上を図るため、撮像画像23中、撮像範囲T内において、照明光側に位置する一部を有効検査領域R1とすることを説明した。これは、撮像面21が光学系22の光軸と直交する一般的な撮像部2aを使用した場合である。撮像部2aの光学系22に工夫を施すことで、有効検査領域R1の拡大を図ることが実現できる。
【0050】
図12は、他の実施形態の異物検査装置1の撮影構成であり、撮像部2aに工夫を施すことで、有効検査領域R1の拡大を図る実施形態を説明するための側面図である。
図7の比較例、
図8の実施形態と同様、1つの撮像部2aを例に取ってその撮像構成を説明する。他の実施形態では、検査対象4の表面を、Y軸方向に延在するLED線光源3aで照明し、検査対象4に付着する異物で散乱した散乱光を撮像部2aで撮像することとしている。ここでは、異物のサンプルとして、X軸方向に等間隔で5個の球形微小粒子S1~S5を並べている。
【0051】
他の実施形態では、一般的な撮像部2aと異なり、撮像部2aにおける光学系22の光軸が、撮像部2aの撮像面の鉛直方向に対して傾斜させている。更に具体的には、撮像面21の延長面P1は、光学系22の光軸の垂直面P2と、検査対象の略表面位置で交わるように、撮像部2aを配置している。なお、
図12において延長面P1と、垂直面P2は、記載範囲内に収めるため、途中の経路を折り曲げて記載している。このような構成を採用することで、照明光Lから離れた位置(例えば、球形微小粒子S5の位置)においても、十分な散乱光を受光することが可能となっている。
図12の場合、撮像範囲Tと有効検査領域R1は領域を同一としている。すなわち、撮像範囲Tの全領域を、異物の検査に使用することが可能となっている。なお、このように撮像部2aに工夫を施す実施形態においても、前述した実施形態と同様、有効検査領域R1を、撮像部2aで撮影された画像中、照明光が入射する側の一部領域とすることとしてもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明に係る異物検査装置(あるいは異物検査方法)によれば、異物の検出対象とする画像を、撮像部で撮影された画像中、照明光が入射する側の一部領域とする、あるいは、撮像部における光学系の光軸を、撮像部の撮像面の鉛直方向に対して傾斜させることで、異物の検査を行う領域の拡大を図り、検査精度の向上を図ることが可能となる。
【0053】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0054】
1:異物検査装置
2a~2r:撮像部
3a、3b:LED線光源
4:検査対象
5:台座
6a、6b:マスク
21:撮像面
22:光学系
23:撮像画像
23b:電極像
41:透明基板
42:ブラックマトリックス
43R、43G、43B:カラーレジスト
44:フォトマスク
44a:開口
45a:孔
45b:電極
61a、61b、61b’:不感帯領域
C1:画像中心
C2:光軸
E:角度
L:照明光
P:撮像範囲
P1:延長面
P2:垂直面
R1:有効検査領域
R2:無効検査領域
S(S1~S6):球形微小粒子
T:撮像範囲