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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】スラブ巾決定方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220119BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B22D11/16 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016165027
(22)【出願日】2016-08-25
(65)【公開番号】P2018032270
(43)【公開日】2018-03-01
【審査請求日】2019-05-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000191076
【氏名又は名称】日鉄ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】松田 恵理菜
(72)【発明者】
【氏名】莇 益和
(72)【発明者】
【氏名】静 清志
(72)【発明者】
【氏名】柳 大吉
(72)【発明者】
【氏名】春山 稔
(72)【発明者】
【氏名】興梠 貴久
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】松原 陽介
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301308(JP,A)
【文献】特開2004-334831(JP,A)
【文献】特開2015-37806(JP,A)
【文献】特開2009-285699(JP,A)
【文献】特開昭60-82252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418 B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造において鋳造するスラブのスラブ巾を決定するスラブ巾決定方法であって、
各前記スラブに設定された、鋳造可能な鋳造可能巾の最大値である鋳造可能最大巾、または、前記鋳造可能巾の最小値である鋳造可能最小巾に基づいて、複数の前記スラブを降順または昇順に並べ替える並び替えステップと、
前記並び替えステップを実施した後、並べ替えた複数の前記スラブを、降順または昇順に、前記鋳造可能巾が重複する前記スラブを同一の巾グループとしてグループ化するグループ化ステップと、
前記グループ化ステップを実施した後、前記巾グループ毎に、前記鋳造可能巾が重複する重複範囲内で前記スラブ巾を決定するスラブ巾決定ステップと、
を含み、
前記スラブ巾決定ステップにおいて、前記同一の巾グループのスラブ巾は同一のスラブ巾に決定される、スラブ巾決定方法。
【請求項2】
前記巾グループの数が2以上の場合、前記スラブ巾決定ステップでは、
前記鋳造可能巾の重複範囲の最小値が最大である最大巾グループの前記スラブ巾を、前記重複範囲における最小巾に決定し、
前記鋳造可能巾の重複範囲の最大値が最小である最小巾グループの前記スラブ巾を、前記重複範囲における最大巾に決定する、請求項1に記載のスラブ巾決定方法。
【請求項3】
前記巾グループの数が3以上の場合、前記スラブ巾決定ステップでは、
前記鋳造可能巾の重複範囲の最小値が最大である最大巾グループ、および、前記鋳造可能巾の重複範囲の最大値が最小である最小巾グループ以外の前記巾グループの前記スラブ巾を、前記最大巾グループまたは前記最小巾グループのいずれかの前記スラブ巾を基準として、1スラブあたりの巾変更量の上限の整数倍を加減した値であり、かつ、前記巾グループの前記重複範囲内の値に決定する、請求項1または2に記載のスラブ巾決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造において鋳造するスラブのスラブ巾を決定するスラブ巾決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚板や薄板等の製品を製造する際に圧延素材として用いられるスラブは、連続鋳造設備により溶鋼を連続鋳造して生成される直方体の鋼片である。転炉から連続鋳造設備に鍋単位で供給された溶鋼は、連続鋳造設備により連続する1つの鋳片として鋳造された後、所定の長さに切断され、スラブとなる。ここで、鍋から連続鋳造設備へ溶鋼を供給する1単位を1チャージという。また、生産管理上、同条件で一度に製造する重量を大きくするために複数チャージの溶鋼を連続鋳造設備へ供給して鋳造することがあり、この複数チャージの溶鋼を連続して鋳造する1単位を1キャストという。各スラブやチャージ、キャストの製造条件を決定するキャスト編成は、操業制約や生産管理上の制約、下工程への材料供給バランス、歩留等の指標を総合的に加味して、最適な計画を策定することが大きな役割となる。
【0003】
従来のキャスト編成では、例えば材質が同一等、製造条件が共通する設計スラブを集計し、その巾が同一または近似しているものを集めて、設計スラブのスラブ巾の広い方から狭い方に並べた後、チャージ重量の制約範囲内で鋳造可能な設計スラブをグループ化して行われていた。しかし、実際の操業においては、チャージ間(継目)ではタンディッシュでの湯面変動が発生し易く、介在物が溶鋼内に混入する可能性が高い。このため、かかる従来のキャスト編成では、1キャストで製造された鋳片のうち、溶鋼のチャージ間に当たる継目部位で品質的な部位特性が生じ、当該継目部位の品質は他の部位に比べて低下する。したがって、継目部位が採取されたスラブは目標品質を満たさず、注文に対して材料が不足すること(いわゆる、注文の紐切れ)があった。
【0004】
例えば特許文献1、2には、条件が共通する対象材をグループ化し、そのグループ化した対象材を幅の大小に応じて整列させ、これに対しチャージの繋目を境界にして複数の領域に区分し、その各々に対して行った品質のランク付けに応じて対象材を複数の区分領域に割当ててキャスト編成を行う、鉄鋼業の生産管理方法が開示されている。このキャスト編成によれば、チャージの繋目(継目、継目前、継目後等)の低品質の部位を区分して各々を品質でランク付けし、品質の要求が高い注文に対してはランクの高い部位の材料が使用されるように、品質の要求が低い注文に対してはランクの低い部位の材料が使用されるように生産管理を行うことができる。これにより、操業変動によって要求された品質の材料が不足もしくは余剰になることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-285501号公報
【文献】特開平6-247516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2では、品質が悪い部位としてチャージ繋目のみを対象としており、当該部位以外での注文の紐切れの抑制効果が十分ではなかった。例えば、同一キャスト内で複数種類のスラブ巾を鋳込む際に異巾を繋ぐのに必要となる巾変更部のような、1つの鋳片において巾が均一ではないスラブでは品質降格やサイズ偏差が発生しやすく、注文の紐切れとなりやすい。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、注文に対し、品質降格やサイズ外れによる材料の不足を防止することが可能な、新規かつ改良されたスラブ巾決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、連続鋳造において鋳造するスラブのスラブ巾を決定するスラブ巾決定方法であって、各スラブに設定された、鋳造可能な鋳造可能巾の最大値である鋳造可能最大巾、または、鋳造可能巾の最小値である鋳造可能最小巾に基づいて、複数のスラブを降順または昇順に並べ替える並び替えステップと、並び替えステップを実施した後、並べ替えた複数のスラブを、降順または昇順に、鋳造可能巾が重複するスラブを同一の巾グループとしてグループ化するグループ化ステップと、グループ化ステップを実施した後、巾グループ毎に、鋳造可能巾が重複する重複範囲内でスラブ巾を決定するスラブ巾決定ステップと、を含み、スラブ巾決定ステップにおいて、同一の巾グループのスラブ巾は同一のスラブ巾に決定される、スラブ巾決定方法が提供される。
【0009】
巾グループの数が2以上の場合、スラブ巾決定ステップでは、鋳造可能巾の重複範囲の最小値が最大である最大巾グループのスラブ巾を、重複範囲における最小巾に決定し、鋳造可能巾の重複範囲の最大値が最小である最小巾グループのスラブ巾を、重複範囲における最大巾に決定してもよい。
【0010】
また、巾グループの数が3以上の場合、スラブ巾決定ステップでは、鋳造可能巾の重複範囲の最小値が最大である最大巾グループ、および、鋳造可能巾の重複範囲の最大値が最小である最小巾グループ以外の巾グループのスラブ巾を、最大巾グループまたは最小巾グループのいずれかのスラブ巾を基準として、1スラブあたりの巾変更量の上限の整数倍を加減した値であり、かつ、巾グループの重複範囲内の値に決定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、注文に対し、品質降格やサイズ外れによる材料の不足を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスラブ巾決定方法の概要を説明するための説明図である。
図2】同実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図3】同実施形態に係るスラブ巾決定方法を示すフローチャートである。
図4】同実施形態に係るスラブ巾決定方法を説明するための説明図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るスラブ巾決定方法の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施形態に係るスラブ巾決定方法の一例を示すフローチャートである。
図7図6に示すステップS340の処理を説明する説明図である。
図8】比較例のキャスト編成結果を示す説明図である。
図9】実施例1のキャスト編成結果を示す説明図である。
図10】実施例2のキャスト編成結果を示す説明図である。
図11】実施例3のキャスト編成結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<1.第1の実施形態>
[1-1.概要]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るスラブ巾決定方法の概要について説明する。図1は、本実施形態に係るスラブ巾決定方法の概要を説明するための説明図である。
【0015】
スラブの設計においては、注文仕様である製品巾に対して各工程の歩留を考慮して熱延巾を算出し、算出された熱延巾でスラブを製造するために必要なスラブの鋳造可能巾の範囲を設定している。スラブの設計前に実施される品質設計では、過去操業実績等に基づく鋳造可能巾の範囲内で任意の巾を狙いのスラブ巾(すなわち、品質設計スラブ巾)として一次決定している。
【0016】
材質やサイズ等の製造条件に応じて、要求されるスラブ巾は様々であるため、鋳造される鋳片の巾は変更する必要があるが、当該鋳片の巾が変更される巾変更部では品質降格、サイズ偏差が起こりやすい。このため、鋳片の巾の変更はなるべく少なくすることが望ましい。また、1回の処理で変更可能な巾変更量の上限は設備に応じて決まっている。鋳片の巾差が大きくなると、巾変更前のスラブ巾から設定するスラブ巾となるまでに生じる巾切替のためのスラブの枚数が多くなり、歩留まりが低下する。
【0017】
例えば、図1左側に示すように、スラブ巾は異なるが、製造条件が共通し、1キャストで製造する複数のスラブがある。図1左側のスラブ1~10の順に鋳片からスラブを採取しようとすると、鋳片の巾をその都度変更する必要があるため、歩留まりが低下し、鋳片の巾変更部では品質降格やサイズ偏差が起こりやすい。
【0018】
ここで、各スラブには、要求されるスラブ巾(以下、「品質設計スラブ巾」ともいう。)に対して許容されている鋳造可能巾がそれぞれ設定されている。そこで、本実施形態に係るスラブ巾決定方法では、注文に対し、品質降格やサイズ外れによる材料の不足を防止するため、図1右側に示すように、各スラブを鋳造可能巾に基づき並び替えるとともに、各スラブの鋳造可能巾を考慮してスラブを巾グループ(図1右側の巾グループA、B、C)にグループ化し、巾グループ毎に鋳片の巾を変更する。これにより、鋳片の巾変更部を低減することができ、品質降格を防止することができる。以下、本実施形態に係るスラブ巾決定方法について詳細に説明していく。
【0019】
[1-2.情報処理装置]
まず、図2に基づいて、本実施形態に係るスラブ巾決定方法を実行する情報処理装置100について説明する。図2は、本実施形態に係る情報処理装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。情報処理装置100は、例えば、演算処理を実行可能なCPUを備えるコンピュータ等である。本実施形態に係る情報処理装置100は、例えば、図2に示すように、注文スラブ情報取得部110と、スラブ並び替え処理部120と、グルーピング部130と、スラブ巾決定部140と、出力部150とからなる。
【0020】
注文スラブ情報取得部110は、各注文に対応するスラブの製造条件等を管理する注文スラブ情報記憶部10から、キャスト編成の対象となるスラブの注文スラブ情報を取得する。注文スラブ情報取得部110は、例えば、納期等に応じて1日、1週間、あるいは1か月といった単位で、注文スラブ情報記憶部10から注文スラブ情報を取得する。なお、取得された注文スラブ情報は、同一キャストで製造可能な、製造条件が共通するスラブを表す共通グループ情報が付与されていてもよく、共通グループ情報のない、各注文の製造条件等の情報のみであってもよい。注文スラブ情報取得部110により取得された注文スラブ情報は、スラブ並び替え処理部120へ出力される。
【0021】
スラブ並び替え処理部120は、注文スラブ情報取得部110から入力された注文スラブ情報に基づいて、各スラブを鋳造順に並び替える処理を行う。まず、スラブ並び替え処理部120は、取得された注文スラブ情報に共通グループ情報が付与されていない場合には、注文スラブ情報に基づき、材質等の製造条件が共通するスラブを同一キャストで製造可能なスラブとしてまとめる。この際、まとめられたスラブに、同一キャストで製造可能であることを示す共通グループ情報を付与してもよい。そして、スラブ並び替え処理部120は、共通グループ情報が同一のスラブを、各スラブの品質設計スラブ巾を基準に設定された鋳造可能最大巾および鋳造可能最小巾に基づき並び替える。
【0022】
本実施形態に係るスラブ並び替え処理部120では、スラブの鋳造可能最大巾及び鋳造可能最小巾に基づいてスラブの採取順に並び替えることで、後述の鋳片の巾の切り替える回数を低減することが可能となる。なお、スラブ並び替え処理部120によるスラブ並び替え処理の詳細については後述する。
【0023】
グルーピング部130は、スラブ並び替え処理部120により並び替えられたスラブについて、鋳造可能巾範囲が重複するスラブを同一の巾グループとしてグループ化する。グルーピング部130は、並び替えられたスラブを降順または昇順に、鋳造可能巾範囲が重複する重複範囲内に含まれるスラブ同士を区切り、グループ化する。
【0024】
スラブ巾決定部140は、グルーピング部130によりグループ化された巾グループ毎に、各巾グループの重複範囲内でスラブ巾を決定する。各巾グループのスラブ巾決定処理の詳細については後述する。スラブ巾決定部140は、決定した各巾グループのスラブ巾を、スラブ並び替え処理部120により決定されたスラブの採取順序、グルーピング部130により決定された巾グループとともに、出力部150へ出力する。
【0025】
出力部150は、スラブ並び替え処理部120、グルーピング部130およびスラブ巾決定部140により決定された各種情報を、外部端末へ出力する。出力部150から出力される情報は、すなわち、スラブのキャスト編成を表すキャスト編成情報であり、出力部150から外部端末を介してオペレータ等に提示される。
【0026】
以上、本実施形態に係る情報処理装置100について説明した。
【0027】
[1-3.スラブ巾決定方法]
次に、図3及び図4に基づいて、本実施形態に係るスラブ巾決定方法について説明する。なお、図3は、本実施形態に係るスラブ巾決定方法を示すフローチャートである。図4は、本実施形態に係るスラブ巾決定方法を説明するための説明図である。以下に説明する本実施形態に係るスラブ巾決定方法は、同一キャストにて製造可能なスラブについて、鋳造するスラブ巾を決定するための方法であり、すでに同一キャストにて製造可能なスラブがキャスト編成対象として特定されているものとする。
【0028】
(ステップS100:スラブ並べ替え処理)
まず、スラブ並び替え処理部120により、注文スラブ情報取得部110から入力された注文スラブ情報に基づいて、各スラブを鋳造順に並び替える(S100)。ここで、スラブ並び替え処理部120に入力される注文スラブ情報は、注文スラブ情報取得部110によって注文スラブ情報記憶部10から取得された情報であり、キャスト編成対象とする注文に関する情報がスラブ並び替え処理部120に入力される。注文スラブ情報には、納期や製造条件等の情報が含まれており、以下説明するスラブ巾決定方法を実行するにあたっては、少なくとも、品質設計スラブ巾、鋳造可能最小巾及び鋳造可能最大巾が含まれていればよい。品質設計スラブ巾は、要求されるスラブ巾であり、鋳造可能最小巾及び鋳造可能最大巾は、品質設計スラブ巾に対して許容されるスラブ巾の最小値及び最大値である。
【0029】
スラブ並び替え処理部120は、入力された各注文の注文スラブ情報の鋳造可能最小巾及び鋳造可能最大巾に基づき、各スラブを鋳造順に並び替える。スラブの並び替えは、鋳造可能最小巾の昇順または鋳造可能最大巾の降順のいずれかとする。鋳造可能最小巾または鋳造可能最大巾が同一である場合は、スラブの並び替えが鋳造可能最小巾に基づくときには鋳造可能最大巾が小さい順に並べ、スラブの並び替えが鋳造可能最大巾に基づくときには鋳造可能最小巾が大きい順に並べる。
【0030】
例えば、図4に示すように、各スラブの品質設計スラブ巾をWn、鋳造可能最小巾をWnmin、鋳造可能最大巾をWnmaxとする(nは、各スラブを特定する固有の番号であり、1~Nの整数値である。Nは、キャスト編成対象のスラブの最大値である。)。図4に示す例では、各注文を鋳造可能最小巾の昇順で並び替えている。すなわち、キャスト編成対象のスラブ1~10を、鋳造可能最小巾Wnminが最小のスラブ1から順に並べている。スラブ10は、キャスト編成対象のスラブ1~10のうち鋳造可能最小巾Wnminが最大のスラブである。図4において鋳造可能最小巾Wnminが同一のスラブがあった場合には、鋳造可能最大巾をWnmaxが小さいスラブが先に並べられる。
【0031】
このように、鋳造可能巾に基づいてスラブを並び替えることで、巾切替量を最小にすることができ、鋳片の巾切替回数を低減することができる。例えば、最小スラブ巾のスラブと最大スラブ巾のスラブとが並んでいる場合、1回の処理で変更可能な巾変更量の上限を超える可能性が高く、その分鋳片の巾切替回数が多くなり、巾切替のためのスラブの枚数が多くなる。そこで、本実施形態のように鋳造可能巾に基づいてスラブを並び替えることで、巾切替量を大きく変更するのを抑制でき、鋳片の巾切替回数を低減することができる。
【0032】
(ステップS110:巾グループ化処理)
次いで、グルーピング部130により、ステップS100にて並び替えられたスラブを、鋳造可能巾範囲が重複するスラブを同一の巾グループとしてグループ化する(S110)。ステップS110では、同一の鋳造巾で連続鋳造設備により鋳造するスラブをグループ化する。グルーピング部130は、ステップS100にてスラブの並び替えを行った順に基づき、キャスト編成対象のスラブを、鋳造可能巾範囲が重複しなくなるまで同一の巾グループにグループ化し、鋳造可能巾範囲が重複しなくなったときに新たな巾グループにグループ化する。このように、各スラブを1または複数の巾グループにまとめていく。
【0033】
例えば、図4に示す例では、鋳造可能最小巾の昇順にスラブの並び替えを行っている。これより、グルーピング部130は、鋳造可能最小巾Wnminが最小のスラブ1から順に、鋳造可能巾範囲が重複するものをグループ化していく。図4に示す例では、スラブ1とスラブ2とは、鋳造可能巾(鋳造可能最小巾から鋳造可能最大巾までの間の巾)の重複範囲が重複する重複範囲が存在する。しかし、スラブ3の鋳造可能巾は、スラブ1とスラブ2との重複範囲には含まれない。したがって、グルーピング部130は、スラブ1及びスラブ2を同一の巾グループ(巾グループA)とし、スラブ3を新たな巾グループ(巾グループB)としてグループ化していく。
【0034】
この処理を繰り返し、図4に示す例では、3つの巾グループ(巾グループA~C)が生成される。各巾グループのスラブは、後述のステップS120で決定される同一スラブ巾で製造される。このように、鋳造可能巾が重複するスラブをグループ化し、同一巾グループのスラブを同一スラブ巾で製造することで、スラブ巾の種類を集約することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0035】
(S120:スラブ巾決定処理)
その後、スラブ巾決定部140により、ステップS110にて生成された各巾グループのスラブ巾を決定する(S120)。具体的には、スラブ巾決定部140は、各巾グループに含まれる各スラブの鋳造可能巾の重複範囲から任意のスラブ巾を決定する。例えば、スラブ巾決定部140は、重複範囲の中央の値をスラブ巾として決定してもよく、重複範囲の最小値をスラブ巾として決定してもよく、重複範囲の最大値をスラブ巾として決定してもよい。スラブ巾決定部140は、決定した各巾グループのスラブ巾を、スラブ並び替え処理部120により決定されたスラブの採取順序、グルーピング部130により決定された巾グループとともに、キャスト編成情報として出力部150へ出力する。
【0036】
キャスト編成情報には、少なくとも当該キャストでのスラブの採取順序と、各スラブの決定されたスラブ巾とが含まれていればよく、さらに各スラブの属する巾グループも含まれていてもよい。出力部150は、このキャスト編成情報を外部端末へ出力可能であり、これにより、外部端末を介してキャスト編成情報をオペレータ等に提示することができる。
【0037】
[1-4.まとめ]
以上、本発明の第1の実施形態に係るスラブ巾決定方法について説明した。本実施形態によれば、まず、キャスト編成対象のスラブを鋳造可能巾に基づき順番に並べ替える。これにより、巾切替量を最小にすることができ、鋳片の巾切替回数を低減することができる。そして、並び替えたスラブを、鋳造可能巾が重複するスラブをグループ化し、同一巾グループのスラブを同一スラブ巾で製造することで、スラブ巾の種類を集約することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0038】
<2.第2の実施形態>
次に、図5に基づいて、本発明の第2の実施形態に係るスラブ巾決定方法を説明する。図5は、本実施形態に係るスラブ巾決定方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係るスラブ巾決定方法は、第1の実施形態と比較して、スラブ巾決定処理が相違する。以下では、本実施形態に係るスラブ巾決定方法について、第1の実施形態との相違点を主として説明し、第1の実施形態と同様の処理については詳細な説明を省略する。
【0039】
なお、本実施形態に係るスラブ巾決定方法も、第1の実施形態と同様、図2に示した情報処理装置100により実行可能である。したがって、情報処理装置100の機能構成についての説明は省略する。また、本実施形態に係るスラブ巾決定方法も、同一キャストにて製造可能なスラブについて、鋳造するスラブ巾を決定するための方法であり、すでに同一キャストにて製造可能なスラブがキャスト編成対象として特定されているものとする。
【0040】
(ステップS200:スラブ並べ替え処理)
まず、スラブ並び替え処理部120により、注文スラブ情報取得部110から入力された注文スラブ情報に基づいて、各スラブを鋳造順に並び替える(S200)。ステップS200のスラブ並べ替え処理は、図3に示したステップS100と同様に行われる。すなわち、スラブ並び替え処理部120は、入力された各注文の注文スラブ情報の鋳造可能最小巾及び鋳造可能最大巾に基づき、鋳造可能最小巾の昇順または鋳造可能最大巾の降順のいずれかで、各スラブを鋳造順に並び替える。鋳造可能最小巾または鋳造可能最大巾が同一である場合は、スラブの並び替えが鋳造可能最小巾に基づくときには鋳造可能最大巾が小さい順に並べ、スラブの並び替えが鋳造可能最大巾に基づくときには鋳造可能最小巾が大きい順に並べる。
【0041】
このように、鋳造可能巾に基づいてスラブを並び替えることで、巾切替量を最小にすることができ、鋳片の巾切替回数を低減することができる。
【0042】
(ステップS210:巾グループ化処理)
次いで、グルーピング部130により、ステップS200にて並び替えられたスラブを、鋳造可能巾範囲が重複するスラブを同一の巾グループとしてグループ化する(S210)。ステップS210の巾グループ化処理は、図3に示したステップS110と同様に行われる。グルーピング部130は、ステップS200にてスラブの並び替えを行った順に基づき、キャスト編成対象のスラブを、鋳造可能巾範囲が重複しなくなるまで同一の巾グループにグループ化し、鋳造可能巾範囲が重複しなくなったときに新たな巾グループにグループ化する。このように、各スラブを1または複数の巾グループにまとめていく。
【0043】
この処理を繰り返して、鋳造可能巾が重複するスラブをグループ化し、同一巾グループのスラブを同一スラブ巾で製造することで、スラブ巾の種類を集約することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0044】
(S220~S240:スラブ巾決定処理)
その後、スラブ巾決定部140により、ステップS210にて生成された各巾グループのスラブ巾を決定する。具体的には、まず、スラブ巾決定部140は、ステップS210にて生成された巾グループ数が2以上であるか否かを判定する(S220)。ステップS220にて巾グループ数が2より少ない場合、すなわち、巾グループ数が1つの場合には、図3に示したステップS120と同様、スラブ巾決定部140は、各巾グループに含まれる各スラブの鋳造可能巾の重複範囲から任意のスラブ巾を決定する(S240)。
【0045】
一方、ステップS220にて巾グループ数が2以上と判定した場合、スラブ巾決定部140は、まず、鋳造可能巾の重複範囲の最大値が最小である最小巾グループと、鋳造可能巾の重複範囲の最小値が最大である最大巾グループとについて、スラブ巾を決定する(S230)。具体的には、スラブ巾決定部140は、最小巾グループのスラブ巾を、最小巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最大値に決定し、最大巾グループのスラブ巾を、最大巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最小値に決定する。これにより、キャスト全体における全巾変更量を最小化することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0046】
ステップS230にて最小巾グループ及び最大巾グループのスラブ巾が決定されると、ステップS240に進み、スラブ巾決定部140は、スラブ巾が未決定の巾グループがある場合には、当該巾グループのスラブ巾を決定する(S240)。すなわち、ステップS210にて生成された巾グループ数が3以上であるとき、ステップS230及びステップS240の処理が実行され、巾グループ数が2であるときには、ステップS230のみ実行され、ステップS240は実行されない。本実施形態では、最小巾グループ及び最大巾グループ以外の巾グループについては、スラブ巾の決定方法は特に限定されず、上述したように、各巾グループに含まれる各スラブの鋳造可能巾の重複範囲から任意に設定可能である。
【0047】
ステップS220~S240により各巾グループのスラブ巾が決定されると、スラブ巾決定部140は、決定した各巾グループのスラブ巾を、スラブ並び替え処理部120により決定されたスラブの採取順序、グルーピング部130により決定された巾グループとともに、キャスト編成情報として出力部150へ出力する。
【0048】
[2-2.まとめ]
以上、本発明の第2の実施形態に係るスラブ巾決定方法について説明した。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、まず、キャスト編成対象のスラブを鋳造可能巾に基づき順番に並べ替える。これにより、巾切替量を最小にすることができ、鋳片の巾切替回数を低減することができる。そして、並び替えたスラブを、鋳造可能巾が重複するスラブをグループ化し、同一巾グループのスラブを同一スラブ巾で製造することで、スラブ巾の種類を集約することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、スラブ巾決定処理において、最小巾グループのスラブ巾を、最小巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最大値に決定し、最大巾グループのスラブ巾を、最大巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最小値に決定する。これにより、キャスト全体における全巾変更量を最小化することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0050】
<3.第3の実施形態>
次に、図6及び図7に基づいて、本発明の第3の実施形態に係るスラブ巾決定方法を説明する。図6は、本実施形態に係るスラブ巾決定方法の他の一例を示すフローチャートである。図7は、図6に示すステップS340の処理を説明する説明図である。本実施形態に係るスラブ巾決定方法は、上記実施形態と比較して、スラブ巾決定処理がさらに相違する。以下では、本実施形態に係るスラブ巾決定方法について、第2の実施形態との相違点を主として説明し、第2の実施形態と同様の処理については詳細な説明を省略する。
【0051】
なお、本実施形態に係るスラブ巾決定方法も、上記実施形態と同様、図2に示した情報処理装置100により実行可能である。したがって、情報処理装置100の機能構成についての説明は省略する。また、本実施形態に係るスラブ巾決定方法も、同一キャストにて製造可能なスラブについて、鋳造するスラブ巾を決定するための方法であり、すでに同一キャストにて製造可能なスラブがキャスト編成対象として特定されているものとする。
【0052】
(ステップS300:スラブ並べ替え処理)
まず、スラブ並び替え処理部120により、注文スラブ情報取得部110から入力された注文スラブ情報に基づいて、各スラブを鋳造順に並び替える(S300)。ステップS300のスラブ並べ替え処理は、図5に示したステップS200と同様に行われる。すなわち、スラブ並び替え処理部120は、入力された各注文の注文スラブ情報の鋳造可能最小巾及び鋳造可能最大巾に基づき、鋳造可能最小巾の昇順または鋳造可能最大巾の降順のいずれかで、各スラブを鋳造順に並び替える。鋳造可能最小巾または鋳造可能最大巾が同一である場合は、スラブの並び替えが鋳造可能最小巾に基づくときには鋳造可能最大巾が小さい順に並べ、スラブの並び替えが鋳造可能最大巾に基づくときには鋳造可能最小巾が大きい順に並べる。
【0053】
このように、鋳造可能巾に基づいてスラブを並び替えることで、巾切替量を最小にすることができ、鋳片の巾切替回数を低減することができる。
【0054】
(ステップS310:巾グループ化処理)
次いで、グルーピング部130により、ステップS300にて並び替えられたスラブを、鋳造可能巾範囲が重複するスラブを同一の巾グループとしてグループ化する(S310)。ステップS310の巾グループ化処理は、図5に示したステップS210と同様に行われる。グルーピング部130は、ステップS300にてスラブの並び替えを行った順に基づき、キャスト編成対象のスラブを、鋳造可能巾範囲が重複しなくなるまで同一の巾グループにグループ化し、鋳造可能巾範囲が重複しなくなったときに新たな巾グループにグループ化する。このように、各スラブを1または複数の巾グループにまとめていく。
【0055】
この処理を繰り返して、鋳造可能巾が重複するスラブをグループ化し、同一巾グループのスラブを同一スラブ巾で製造することで、スラブ巾の種類を集約することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0056】
(S320~S360:スラブ巾決定処理)
その後、スラブ巾決定部140により、ステップS310にて生成された各巾グループのスラブ巾を決定する。具体的には、まず、スラブ巾決定部140は、ステップS210にて生成された巾グループ数が2以上であるか否かを判定する(S320)。ステップS320の処理は、図5に示したステップS220と同様に行われる。ステップS320にて巾グループ数が2より少ない場合、すなわち、巾グループ数が1つの場合には、スラブ巾決定部140は、各巾グループに含まれる各スラブの鋳造可能巾の重複範囲から任意のスラブ巾を決定する(S360)。
【0057】
一方、ステップS320にて巾グループ数が2以上と判定した場合、スラブ巾決定部140は、まず、鋳造可能巾の重複範囲の最大値が最小である最小巾グループと、鋳造可能巾の重複範囲の最小値が最大である最大巾グループとについて、スラブ巾を決定する(S330)。ステップS330の処理は、図5に示したステップS230と同様に行うことができ、スラブ巾決定部140は、最小巾グループのスラブ巾を、最小巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最大値に決定し、最大巾グループのスラブ巾を、最大巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最小値に決定する。これにより、キャスト全体における全巾変更量を最小化することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0058】
ステップS330にて最小巾グループ及び最大巾グループのスラブ巾が決定されると、スラブ巾決定部140は、スラブ巾が未決定の巾グループがあるか否かを判定する(S340)。スラブ巾が未決定の巾グループがある場合には、スラブ巾決定部140は、当該巾グループのスラブ巾を、1回の処理で変更可能な巾変更量の上限に基づき決定する(S350)。
【0059】
ステップS350の処理の具体例として、最小巾グループを基準として各巾グループのスラブ巾を決定する手順を、図7に基づき説明する。図7は、3つの巾グループがある場合の例であり、各巾グループの鋳造可能巾の重複範囲を示している。便宜上、図7では、スラブの幅方向の一端側のみ示しているが、他方側も同様に処理される。また、巾グループA、B、Cの順に、各グループに含まれるスラブの巾が大きくなるものとする。
【0060】
STEP0の状態は、ステップS330までの処理が終了した状態である。STEP0では、最小巾グループである巾グループAのスラブ巾が、巾グループAの鋳造可能巾の重複範囲の最大値に決定されており、最大巾グループである巾グループCのスラブ巾が、巾グループCの鋳造可能巾の重複範囲の最小値に決定されている。
【0061】
次いで、スラブ巾が未決定の巾グループBのスラブ巾を決定する。まず、最小巾グループまたは最大巾グループのいずれか一方を基準とし、基準とした巾グループから順(昇順または降順)に、巾変更量の上限に基づき、各巾グループのスラブ巾を決定していく。図7に示す例では、最小巾グループである巾グループAを基準とする。そして、巾グループAのスラブ巾に、巾変更量の上限を加算し、下記式(1)を満たすように次の巾グループのスラブ巾を決定する。
【0062】
S≦W+α×N(=W)≦H ・・・(1)
ここで、W:次の巾グループのスラブ巾
S:次の巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最小値
H:次の巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最大値
:基準とする巾グループのスラブ巾
α:1回の処理で変更可能な巾変更量の上限
N:上記式(1)を満たす最大整数
【0063】
すなわち、上記式(1)は、巾グループの鋳造可能巾の重複範囲で、かつ、基準とする巾グループのスラブ巾Wに、巾変更量の上限の整数倍を加算した値を、次の巾グループのスラブ巾として決定するものである。このように、鋳造可能巾の重複範囲から、スラブ巾Wに巾変更量の上限の整数倍を加算した値をスラブ巾Wに決定することで、さらに巾切替回数を低減することができる。
【0064】
ここで、巾グループの鋳造可能巾の重複範囲に、上記式(1)を満たすスラブ巾が2つ存在する場合には、いずれか1つを当該巾グループのスラブ巾に決定すればよい。このとき、例えば、図7のSTEP1に示すように、スラブ巾の候補のうち最大巾のものを、当該巾グループのスラブ巾として決定してもよい。これにより、生産量を高めることができる。最終的に、図7のSTEP2に示すように、すべての巾グループA、B、Cのスラブ巾がそれぞれ決定される。
【0065】
また、上記式(1)を満たすスラブ巾が、巾グループの鋳造可能巾の重複範囲に存在しない場合には、当該巾グループのスラブ巾は、ステップS360と同様、鋳造可能巾の重複範囲から任意に設定すればよい。例えば、鋳造可能巾の重複範囲の最大値を当該巾グループのスラブ巾としてもよい。
【0066】
なお、図7に示す例では、ステップS350の処理によりスラブ巾を決定する巾グループは1つのみであったが、さらにスラブ巾が未決定の巾グループが存在する場合には、上記STEP0~2を繰り返し行って、スラブ巾を決定すればよい。すなわち、図7においてスラブ巾が決定された巾グループBを基準として、次の巾グループについて、当該巾グループの鋳造可能巾の重複範囲内であり、かつ、上記式(1)を満たすように、スラブ巾を決定すればよい。
【0067】
こうしてステップS320~S360により各巾グループのスラブ巾が決定されると、スラブ巾決定部140は、決定した各巾グループのスラブ巾を、スラブ並び替え処理部120により決定されたスラブの採取順序、グルーピング部130により決定された巾グループとともに、キャスト編成情報として出力部150へ出力する。
【0068】
以上、本実施形態に係るスラブ巾決定方法について説明した。なお、上記説明では、第2の実施形態に係るスラブ巾決定方法をもとに、さらに、最小巾グループ及び最大巾グループ以外の巾グループのスラブ巾を決定する処理の一例を示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1の実施形態に係るスラブ巾決定方法をもとに、各巾グループのスラブ巾をステップS350の処理により決定してもよい。すなわち、最小巾グループ及び最大巾グループのいずれかを基準として、基準とする巾グループのスラブ巾を任意に決定する。そして、次の巾グループのスラブ巾を、巾グループの鋳造可能巾の重複範囲で、かつ、上記式(1)を満たすように決定する。当該処理を繰り返すことで、すべての巾グループのスラブ巾を決定することができる。
【0069】
また、上記ステップS330では、最小巾グループ及び最大巾グループのスラブ巾を決定したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ステップS330では、基準とする最小巾グループまたは最大巾グループのうちいずれか一方の巾グループについてのみ、スラブ巾を決定してもよい。この場合には、残りの巾グループのスラブ巾は、すべてステップS350の処理により決定してもよい。
【0070】
[3-2.まとめ]
以上、本発明の第3の実施形態に係るスラブ巾決定方法について説明した。本実施形態によれば、上述の実施形態と同様、まず、キャスト編成対象のスラブを鋳造可能巾に基づき順番に並べ替える。これにより、巾切替量を最小にすることができ、鋳片の巾切替回数を低減することができる。そして、並び替えたスラブを、鋳造可能巾が重複するスラブをグループ化し、同一巾グループのスラブを同一スラブ巾で製造することで、スラブ巾の種類を集約することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、第2の実施形態と同様、スラブ巾決定処理において、最小巾グループのスラブ巾を、最小巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最大値に決定し、最大巾グループのスラブ巾を、最大巾グループの鋳造可能巾の重複範囲の最小値に決定することもできる。これにより、キャスト全体における全巾変更量を最小化することができ、巾切替回数をより低減することができる。
【0072】
さらに、本実施形態によれば、最小巾グループ及び最大巾グループ以外の巾グループのスラブ巾を、1回の処理で変更可能な巾変更量の上限に基づき決定する。これにより、さらに巾切替回数を低減することが可能となる。
【実施例
【0073】
上述の実施形態に係るスラブ巾決定方法の効果を検証すべく、1キャストにおける巾切替に必要なスラブの枚数を算出した。本検証では、1キャストのスラブ数を10本とし、初期のスラブの並びを品質設計スラブ巾の昇順として、キャスト編成を行った。各スラブの品質設計スラブ巾、鋳造可能巾の最小値及び最大値は同一である。なお、鋳造可能最小巾は、品質設計スラブ巾より10mm小さく、鋳造可能最大巾は品質設計スラブ巾より60mm大きいものと設定とした。また、鋳造の巾を変更する1スラブあたりの巾変更量αは50mmとした。
【0074】
本実施例では、第1の実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用した場合を実施例1とし、第2の実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用した場合を実施例2とし、第3の実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用した場合を実施例3として、それぞれ1キャストにおける巾切替に必要なスラブの枚数を算出した。また、比較例として、初期のスラブの並びを変更せず、各スラブの鋳造可能最大巾をスラブ巾として決定する場合の1キャストにおける巾切替に必要なスラブの枚数を算出した。図8図11に本検証の結果を示す。図8は比較例の結果であり、図9図11は実施例1~3の結果である。
【0075】
まず、比較例については、図8に示すように、各スラブの鋳造可能最大巾をスラブ巾として決定し、キャスト編成を行った。このため、各スラブを鋳造する度にスラブ巾を変更する結果となった。また、例えば、スラブ3からスラブ5へのスラブ巾の切り替えにおいては、巾変更量が1スラブ当たりの巾変更量を超えているため、巾切替に2枚のスラブが必要となった。結果として、比較例のキャスト編成では、1キャストにおいて15枚のスラブが巾切替に必要となる。
【0076】
次に、第1の実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用した実施例1については、図9に示す結果となった。すなわち、鋳造可能最小巾の昇順にスラブを並べ、品質設計スラブ巾が最小のスラブ1から順に、鋳造可能巾に基づきスラブをグループ化した。その結果、図9に示すように、巾グループA、B、Cの3つの巾グループが形成された。そして、各巾グループA、B、Cについて、鋳造可能巾の重複範囲の中間値をスラブ巾として決定した。
【0077】
実施例1のキャスト編成では、1キャストで3種のスラブ巾のスラブが製造される。巾グループAから巾グループBへは、スラブ巾が110mm変更されるため、巾切替に3枚のスラブが必要となる。また、巾グループBから巾グループCへは、スラブ巾が120mm変更されるため、巾切替に3枚のスラブが必要となる。結果として、実施例1のキャスト編成では、1キャストにおいて巾切替に必要なスラブ数は6枚であり、比較例の半分以下の枚数となった。
【0078】
また、第2の実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用した実施例2については、図10に示す結果となった。すなわち、鋳造可能最小巾の昇順にスラブを並べ、品質設計スラブ巾が最小のスラブ1から順に、鋳造可能巾に基づきスラブをグループ化した。その結果、図10に示すように、巾グループA、B、Cの3つの巾グループが形成された。そして、最小巾グループAのスラブ巾を鋳造可能巾の重複範囲の最大値とし、最大巾グループCのスラブ巾を鋳造可能巾の重複範囲の最小値とした。巾グループBのスラブ巾は、鋳造可能巾の重複範囲の中間値とした。
【0079】
実施例2のキャスト編成においても、実施例1と同様、1キャストで3種のスラブ巾のスラブが製造される。ここで、巾グループAから巾グループBへは、スラブ巾が105mm変更されるため、巾切替に3枚のスラブが必要となる。また、巾グループBから巾グループCへは、スラブ巾が95mm変更されるため、巾切替に2枚のスラブが必要となる。結果として、実施例2のキャスト編成では、1キャストにおいて巾切替に必要なスラブ数は5枚であり、実施例1よりもさらに1枚巾切替に必要なスラブ数が減少した。
【0080】
第3の実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用した実施例3については、図11に示す結果となった。すなわち、鋳造可能最小巾の昇順にスラブを並べ、品質設計スラブ巾が最小のスラブ1から順に、鋳造可能巾に基づきスラブをグループ化した。その結果、図11に示すように、巾グループA、B、Cの3つの巾グループが形成された。そして、最小巾グループAのスラブ巾を鋳造可能巾の重複範囲の最大値とし、最大巾グループCのスラブ巾を鋳造可能巾の重複範囲の最小値とした。巾グループBのスラブ巾は、巾グループAを基準として、巾グループBの鋳造可能巾の重複範囲内であって、かつ、巾グループAのスラブ巾に巾変更量αの整数倍を加算した値とした。実施例3では、巾グループBのスラブ巾は、1160mmとなった。
【0081】
実施例3のキャスト編成においても、実施例1、2と同様、1キャストで3種のスラブ巾のスラブが製造される。ここで、巾グループAから巾グループBへのスラブ巾の変更は100mmとなったことで、巾切替に必要なスラブ数は2枚となった。また、巾グループBから巾グループCへのスラブ巾の変更も100mmであり、巾切替に2枚のスラブが必要となる。結果として、実施例3のキャスト編成では、1キャストにおいて巾切替に必要なスラブ数は4枚であり、実施例2よりもさらに1枚巾切替に必要なスラブ数が減少した。
【0082】
以上より、上記実施形態に係るスラブ巾決定方法を適用することにより、従来と比較して巾切替に必要なスラブ数を大幅に低減できることが分かった。これより、品質降格やサイズ外れによる材料の不足を抑制できることが期待できる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0084】
10 注文スラブ情報記憶部
100 情報処理装置
110 注文スラブ情報取得部
120 スラブ並び替え処理部
130 グルーピング部
140 スラブ巾決定部
150 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11