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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】医療用パッチを製造するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20220119BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220119BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20220119BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61F13/00 T
A61F13/00 P
A61K9/70
A61K47/30
A61M35/00 Z
B26D7/18 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016575938
(86)(22)【出願日】2015-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2015064996
(87)【国際公開番号】W WO2016001312
(87)【国際公開日】2016-01-07
【審査請求日】2018-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】14175754.2
(32)【優先日】2014-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510002350
【氏名又は名称】リュイェ ファーマ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Luye Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Am Windfeld 35 83714 Miesbach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】グラダー,ルドヴィグ
(72)【発明者】
【氏名】ピオトロヴスキー,ホルガー
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】佐々木 正章
【審判官】井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2789640(US,A)
【文献】特表平11-505498(JP,A)
【文献】特開2013-166799(JP,A)
【文献】特開2011-177453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61K 9/70 47/30
A61M 35/00
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用パッチを製造するための装置であって、
a)別個の連続的な支持シート上にパッチ材料のシートを提供するための手段と、
b)支持シートを打ち抜かずにパッチ材料のシートのみを打ち抜いて、所定の形状およびサイズを有するパッチと抜き桟とを形成するための手段と、
c)抜き桟の引き取りのためのローラーと
を含み、該ローラーが、抜き桟の引き取りによってパッチが抜き桟から分離される際に支持シート上にパッチを押さえるためのパッチの所定の形状に合致する突起からなる1以上の押さえ装置を備える装置において、
ローラーの周方向に並ぶ押さえ装置の数は、ローラーが1回転する間に係合するパッチの数と等しく、各押さえ装置は打ち抜かれるパッチに対応する位置に配置されており、1つのパッチに接触する押さえ装置の接触面積はパッチの表面積を超えず、パッチと接触する押さえ装置の表面はパッチの領域のみに接触し、抜き桟の領域には接触しないことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記押さえ装置が、弾性、可撓性、および/もしくは変形可能性を有すること、ならびに前記押さえ装置がばねで取り付けられていることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ローラーが回転ローラーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記押さえ装置がパッチに対し、最大1,000kN/mの圧力を加えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
医療用パッチを製造するための方法であって、
a)支持シートを打ち抜かずにパッチ材料のシートのみを打ち抜いて、別個の連続的な支持シート上に所定の形状およびサイズを有するパッチと抜き桟とを形成する工程と、
b)ローラーにおいて抜き桟を引き取ることによってパッチを抜き桟から分離する工程とを含み、抜き桟が引き取られる際に、抜き桟から分離されるパッチが、ローラー上のパッチの所定の形状に合致する突起からなる1以上の押さえ装置によって支持シート上に押さえられる方法において、
ローラーの周方向に並ぶ押さえ装置の数は、ローラーが1回転する間に係合するパッチの数と等しく、各押さえ装置は打ち抜かれるパッチに対応する位置に配置されており、1つのパッチに接触する押さえ装置の接触面積はパッチの表面積を超えず、パッチと接触する押さえ装置の表面はパッチの領域のみに接触し、抜き桟の領域には接触しない
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用パッチを製造するための装置、医療用パッチを製造するための方法、および該方法により得ることのできる医療用パッチを含むパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚を通じて薬物を送達することには多くの利点がある。何よりも、このような送達は、苦痛のない簡便かつ非侵襲的な薬物投与方法である。また、途切れることのない連続的な治療が可能となり、薬物の血中濃度を高度に制御することができる。
【0003】
種々の医薬品有効成分(API)の経皮送達およびそのようなAPIを経皮送達するための感圧粘着性マトリックスパッチは、薬物送達の分野ではよく知られている。このようなマトリックスパッチは感圧粘着層を有し、この粘着層はパッチを皮膚に貼付するため、また粘着層に直接包含されるAPIおよび任意の賦形剤を保持するためのものである。また、このような粘着性マトリックスパッチは通常、不活性の裏打ち層、および粘着剤を被覆および保護する剥離ライナーをさらに含む。剥離ライナーは、パッチを皮膚に貼付する前に剥離され、廃棄される。
【0004】
医療用パッチの製造において、たとえば感圧粘着性マトリックスの材料として使用してもよい多数の組成物が、当技術分野で記載されている(たとえば、WO 96/40087、US 6,555,130、およびWO 2011/034323を参照のこと)。
【0005】
このようなマトリックス材料に関連する共通の問題として、いわゆる「低温流れ(コールドフロー)」がある。粘着剤の低温流れとは、ポリマーに固有の物理化学的特性による継続的な寸法変化を言う。パッチの外周から粘着性材料が流れ出すと、パッチを保管袋から取り出すことが困難になるが、これは、パッチが袋の材料に付着することによる(US 2011/0020426)。
【0006】
粘着剤の低温流れに関連する問題を克服するために、WO 96/40087では、アクリル樹脂粘着剤を架橋させることによってその結合力を高め、低温流れに対する抵抗を増すことが提案されている。
【0007】
CA 2,373,276では、剥離を容易にするために剥離ライナーに切れ目を入れたパッチが提案されている。低温流れによるパッチからの感圧粘着剤の漏出を回避することで保管安定性を高めるために、剥離ライナーは、2つの部分が接する領域で互いに重なり合うよう構成されている(添付の図1を参照のこと)。
【0008】
医療用パッチを製造するための方法もまた、当技術分野においてよく知られており、たとえばUS 6,365,178、US 6,555,130、およびUS 2011/0020426などに記載されている。これらの方法は概して、パッチの所望の層をラミネートする工程を含む。連続的プロセスにおいて、このラミネートを、たとえば連続的なシートとして形成し、次いで打ち抜きによって複数のパッチとパッチの周りの抜き桟とを形成することができる。この抜き桟は、パッチにさらなる加工を行う前に、除去する必要がある。抜き桟の除去は、たとえば、支持シート上にパッチのみが残るようにして抜き桟を引き取ることにより達成することができる。
【0009】
医療用パッチの生産における1つの問題は、パッチが抜き桟に粘着することがあり、抜き桟の引き取り時に共に除去されてしまうことである。抜き桟に粘着したパッチは、抜き桟と共に排出されることになり、製品、特に高価なAPIの損失が生じる。
【0010】
抜き桟へのパッチの粘着は、上述の低温流れ、たとえばパッチの複数の層のうちの1層に含まれる粘着性マトリックス材料の低温流れによって助長される。これらの材料の低温流れは打ち抜きの直後に始まり、打ち抜かれたパッチが抜き桟に付着する可能性につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、医療用パッチ中に存在する粘着性材料の低温流れに関連する問題に対処する。本発明は特に、パッチの製造時にパッチが抜き桟に粘着するという問題、および抜き桟の引き取りの際に抜き桟と共にパッチが排出されてしまうという望ましからざる排出に関連するコストの問題に対処する。さらなる1実施形態において、本発明はさらに、保管中の低温流れによって医療用パッチに漏出が起こりうるという問題、およびパッチのパッケージへの望ましからざる付着の問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の、製造中に打ち抜かれたパッチが抜き桟に粘着するという第1の問題を克服するために、本発明者らは、抜き桟が引き取られる間にパッチを押さえるための押さえ装置を備えた新規なローラーを含む、医療用パッチを製造するための装置を開発した。
【0013】
したがって、本発明は、医療用パッチを製造するための装置に関し、該装置は、
a)パッチ材料のシートを、連続的に供給するなどして提供するための手段と、
b)パッチ材料のシートを打ち抜いてパッチと抜き桟とを形成するための手段と、
c)抜き桟の引き取りのためのローラーと
を含み、該ローラーが、抜き桟の引き取りによってパッチが抜き桟から分離される際にパッチを押さえるための1以上の押さえ装置を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】剥離ライナーの2つの部分が接する領域で互いに重なり合う様子を示す。
図2】さらなる層を含む医療用パッチを示す。
図3】ローラーを使用して抜き桟を引き取る工程の概略を示す。
図4】押さえ装置を備えた本発明のローラーの1実施形態を示す。
図5】適切なローラーの別の1実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の装置を用いて製造することのできる医療用パッチは、1以上の層を含む。図1に示すように、医療用パッチ10は通常、少なくとも3つの層、すなわちAPIを保持するための保持層12と、保持層を被覆し、API不透過性であってもよい裏打ち層11と、剥離ライナー13とを含む。剥離ライナーは、貼付時までパッチを保護するためにのみ設けられた使い捨ての要素である。剥離ライナーは通常、薬剤、溶媒、および粘着剤を透過させない材料で形成され、接触している粘着剤から容易に剥離できる。図1に示すように、剥離ライナーは切れ目によって2つの部分13aおよび13bに分割されていてもよく、該2つの部分は、接する領域で互いに重なり合っていてもよい。これによって、パッチの使用前に剥離ライナーを取り除くことが容易になり、保管中の、切れ目を通じた上層材料の低温流れを低減させることができる。
【0016】
保持層12は、APIを含む感圧粘着性マトリックス層のようなマトリックス層の形態であってもよい。そのような場合、APIの放出は、保持層の組成によって制御することができる。適切な材料は当業者に知られており、たとえばUS 6,555,130およびUS 2011/0020426に開示されている。
【0017】
本発明の医療用パッチは、保持層12の下方に位置する膜層14、膜層14と剥離ライナー13との間に位置する皮膚接触層15などのさらなる層を含んでいてもよい(図2を参照のこと)。このように、膜層14が含まれる場合には、膜層14は通常、皮膚接触層15と保持層12との間に配置される(皮膚接触層は剥離ライナー13に隣接し、保持層は裏打ち層11に隣接する)。
【0018】
膜層14は、APIの溶解を制御し、制御放出を提供するなどの様々な目的を果たしてもよい。放出速度を制御できるように、すなわちパッチ内の膜層の存在によって、該膜を有さない類似のパッチと比較してパッチの皮膚浸透プロファイルが変化するように、膜層を選択することができる。
【0019】
適切な膜としては、連続薄膜および微多孔膜が挙げられる。該膜は、当業者に慣例的に使用される高分子材料から作製されていることが好ましい。膜層の作製に使用されてもよい高分子薄膜としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンまたは他の適切なポリマーを含む高分子薄膜が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0020】
膜層14に隣接している皮膚接触層15は、粘着剤を含む。該粘着剤は、シリコーン、天然ゴムおよび合成ゴム、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリシロキサン、架橋型および非架橋型のアクリル共重合体を含むアクリル系粘着剤、酢酸ビニル粘着剤、ポリアクリレート、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンイソプレン共重合体、ポリウレタン、可塑化ポリエーテルブロックアミド共重合体、可塑化スチレンゴムブロック共重合体、ならびにこれらの混合物から選択されてもよい。
【0021】
パッチ材料の前記した様々な層は、任意の適切な厚さを有していてよい。
【0022】
当業者に知られ、また、たとえばUS 6,555,130およびUS 2011/0020426に記載されているように、たとえば剥離ライナー、皮膚接触層、膜層、保持層および裏打ち層などの所望の層は、たとえば剥離ライナーの連続的なシート上に保持層の成分の混合物を含む液体を流し、乾燥工程において溶媒を蒸発させ、得られたシートと裏打ち層とをラミネートすることによって製造されてもよい。必要に応じて、ラミネート内に他の層が含まれていてもよい。
【0023】
ラミネートは別個の連続的な支持シート上に形成されてもよいが、たとえばパッチの剥離ライナーまたは裏打ち層が支持シートの役割を果たしてもよい。
【0024】
本発明において「パッチ材料のシート」という語は、上述した層の1以上として定義される。したがって、パッチ材料のシートは、剥離ライナー、保持層、および裏打ち層のラミネートなどの、いくつかの層のラミネートであってもよい。該ラミネートは、上述し、図2に例示するようなさらなる層を含んでいてもよい。これらの場合において、「パッチ材料のシート」は、最終的なパッチの全層を含んでいてもよい。しかしながら、「パッチ材料のシート」という語は、該シートが単一の層からなるか、または2層以上からなるが最終的なパッチの全層からなるわけではない実施形態をも包含する。この場合、該パッチ材料のシートは、必要に応じてさらなる層を付加することによって最終パッチへと加工することができる中間製品の形成に適したものである。
【0025】
パッチ材料のシートから、所定の形状およびサイズを有するパッチが、当業者によく知られた通常の打ち抜き装置を使用して打ち抜かれる。この装置は、シートを形成しているパッチ材料の層を打ち抜くことで、製造されるパッチの形状およびサイズを有する領域と、パッチとパッチの間の領域を規定する。パッチとパッチの間の領域は、通常、連続的な抜き桟を形成し、この抜き桟は、偏向装置で引き取られ、それによってパッチが抜き桟から分離される。このようにして得られたパッチは、最終製品であるか、またはさらなる加工によって最終製品となる中間製品である。
【0026】
上述したように、通常、パッチのうちのいくつかは抜き桟に粘着し、よって抜き桟と共に除去されるため、パッチの損失、特に高価である可能性のあるAPIの損失につながる。
【0027】
抜き桟に粘着することによるパッチの損失を回避するために、本発明による装置は偏向装置としてのローラーを含み、該ローラーには、抜き桟の引き取りによってパッチが抜き桟から分離されるようにパッチを押さえるための、1以上の押さえ装置が備えられている。
【0028】
1実施形態において、前記ローラーは非回転ローラーである。すなわち、このローラーは静止した偏向装置であり、好ましくはシリンダー形状である。しかしながら、好ましい1実施形態では、前記ローラーは回転ローラーである。すなわち、パッチが抜き桟から分離される際には回転している。
【0029】
ローラーを使用して抜き桟を引き取る工程の概略を、図3に示す。押さえ装置を備えた本発明のローラーの1実施形態を、図4に示す。適切なローラーの別の1実施形態を、図5に示す。
【0030】
図3および図4に示すように、本発明による装置のローラーは、抜き桟が引き取られる際にパッチを押さえるように、ローラーの表面に配置された押さえ装置を備える。ローラー上の押さえ装置の数は特に限定されないが、1実施形態において、図4に概略的に示すように、ローラーは多数の押さえ装置を備えている。ここで、それぞれの押さえ装置はそれぞれ1つのパッチに作用し、抜き桟は押さえ装置と押さえ装置の間で制約なく引き取られる。したがって、たとえば、パッチ材料のシートが、その供給方向とは垂直な方向に互いに平行に並ぶ4つのパッチが形成されるよう打ち抜かれる場合、ローラーにも、ローラーの軸方向に4つの押さえ装置が横並びに配置される必要がある。ローラーの周方向に並ぶ押さえ装置の数は、ローラーが1回転する間に係合するパッチの数と一致する必要がある。
【0031】
別の1実施形態において、前記ローラーは、図5に概略的に示すように、弾性、可撓性、および/または変形可能性を備えた剛毛を有するブラシローラーである。ブラシローラーの表面は、剛毛で完全に覆われていてもよく、1列または複数列の剛毛を有していてもよく、選択された領域のみが剛毛で覆われていてもよい。
【0032】
1実施形態において、前記ローラーは、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも4つ、6つ、8つ、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38または40の押さえ装置を備える。好ましくは、1つのローラー上の押さえ装置はすべて同一のものである。さらに、ローラーは好ましくは少なくとも2つの対称面を有し、より好ましくは少なくとも4つの対称面を有する。
【0033】
押さえ装置のサイズおよび立体形状は、特に限定されない。さらに、1つのローラー上の押さえ装置はすべて同じサイズおよび立体形状を有することが好ましいが、2種以上の異なる押さえ装置を備えていてもよい。
【0034】
1つの際立った特徴は、前記押さえ装置の、抜き桟の引き取りの間パッチを押さえる際にパッチと接触する領域の大きさであると言える。この大きさは、抜き桟の引き取りの間、押さえ装置がパッチを押さえる際に1つのパッチと接触する領域の大きさとして定義される。さらに、この領域は、抜き桟の引き取りの間、押さえ装置がパッチを押さえる際に、1つのパッチに対して同時に作用するすべての押さえ装置の接触領域の合計として定義される。この領域の大きさは特に限定されないが、接触するパッチの面積を越えてはならない。もし、押さえ装置の該領域が、接触するパッチの面積より大きければ、1つの押さえ装置が抜き桟にも接触することで抜き桟の引き取りを妨げたり、抜き桟を損傷して破れを生じさせたりすることによって製造プロセスが中断されるというリスクがある。一方、この領域が小さければ、押さえ装置によってパッチにかけられる圧力は高くなりうる。したがって、1つのパッチに接触する単一または複数の押さえ装置の接触面の面積と、このパッチの面積との比率は、たとえば1:10以上であってもよく、好ましくは1:4以上、最も好ましくは1:2以上である。
【0035】
一般に、医療用パッチのサイズは、2~60cm、好ましくは2~50cm、より好ましくは2~40cm、さらに好ましくは3~30cmである。したがって、押さえ装置の、パッチと接触する面の面積は、これらの範囲内であってもよく、これらの範囲より小さくてもよい。しかしながら、医療用パッチは、より小さい場合も大きい場合もあるため、押さえ装置の、パッチと接触する面の面積は特に限定されず、要件に応じて、特に製造する医療用パッチのサイズに応じて、当業者により選択されてもよい。
【0036】
1つのパッチに接触する単一または複数の押さえ装置の接触面積がパッチの面積を超えてはならないことのみならず、押さえ装置のパッチと接触するための面がパッチの領域のみに接触し、抜き桟の領域には接触しないように押さえ装置のローラーへの取り付け位置を調整すべきであることは、当業者には自明である。
【0037】
押さえ装置の立体形状および材質は、抜き桟が引き取られる際にパッチを押さえるという押さえ装置の機能に応じて、当業者によって選択されうる。たとえば、該押さえ装置は、単一の突出部の形態または複数個の小さな突出部もしくは突起の形態とすることができる。該押さえ装置が単一の突出部ではなく複数個の小さな突出部または突起である場合、1つのパッチに対する押さえ装置の接触面積は、該1つのパッチに接触する小さな突出部または突起すべての接触面積の和として計算される。
【0038】
このように、本発明において、「押さえ装置」という語は、抜き桟が引き取られることによって抜き桟から分離されるパッチを押さえることに適した任意の手段と理解されるべきである。ローラーの表面から突出するいかなる要素も、この目的に適したものとなりうる。上述したように、そのような要素は単一の突出部であってもよく、複数個の突出部もしくは突起のようないくつかの要素に分割することもできる。「突起」という語は、ピン、ガジオン(gudgeon)または(ブラシの剛毛のような)剛毛などの要素として定義される。
【0039】
そのような突起の複数個が1つの押さえ装置を形成していてもよい。前記ローラーが、部分的にまたは完全に剛毛で覆われたブラシローラーである場合、1以上の剛毛が抜き桟に接触することが見込まれ、そのような接触は不可避でもある。しかしながら、本発明者らは、剛毛が十分な可撓性および/または変形可能性を有する場合、抜き桟が引き取られる際に抜き桟が剛毛に及ぼす力が剛毛を変形させるに足る大きさであることにより、たとえば剛毛がローラーに押し付けられるなどして、抜き桟の引き取りが可能であることを見出した。剛毛がパッチと相互に作用する領域において剛毛にかかる力は、剛毛が抜き桟と相互に作用する領域において剛毛にかかる力と比べると弱い。したがって、押さえ装置として作用する剛毛は、抜き桟との相互作用においてより大きな力を受けるため、抜き桟をパッチから引き取るプロセスに悪影響を及ぼすことのないように変形し、その間、効果的にパッチを押さえることができる。抜き桟がローラーから離れると、抜き桟による剛毛への圧力が解除され、剛毛は自体の弾性によって元の形状に戻る。したがって、剛毛は、抜き桟が引き取られる際に変形することで抜き桟の引き取りを可能にするよう、十分な可撓性および/または変形可能性を有するべきであるが、同時に、抜き桟が引き取られる際にパッチを効果的に押さえるよう、十分な剛性をも有するべきである。同時に、剛毛は、抜き桟によってかけられていた圧力がなくなると元の形状に戻るよう、十分な弾性を有するべきである。該剛毛や他の突起を、たとえば、ばねによって取り付けることによっても、同じ結果が得られる。
【0040】
押さえ装置の材質は特に限定されず、たとえばローラーの表面と同じ材質であってもよい。
【0041】
好ましい1実施形態において、押さえ装置は、弾性、可撓性、および/または変形可能性を有する。この場合、押さえ装置自体が、たとえば弾性、可撓性、および/または変形可能性を有する材料から形成された単一もしくは複数の突出部もしくは突起を備えることなどによって弾性、可撓性、および/または変形可能性を有していてもよく、あるいは、ばねで取り付けるなどの、弾性、可撓性および/または変形可能性が得られる方法によって、押さえ装置がローラーに取り付けられていてもよい。さらに、弾性、可撓性、および/または変形可能性を有する材料から形成された突出部または突起と、弾性、可撓性および/または変形可能性が得られるように押さえ装置をローラーに取り付ける方法との組み合わせも可能である。本明細書中、「ばねで取り付けられた」という語は、たとえば油圧ばねおよび空気ばねを含むあらゆる種類のばねを包含するものと理解される。
【0042】
抜き桟が引き取られる間にパッチを押さえるため、押さえ装置はパッチに対して一定の圧力をかけなければならない。破損を避けるためには、押さえ装置がパッチに対して加える圧力は、最大1,000kN/mであり、好ましくは最大750kN/m、500kN/m、250kN/m、100kN/m、75kN/m、50kN/m、25kN/m、10kN/m、5kN/mまたは1kN/mである。
【0043】
好ましい1実施形態において、押さえ装置がパッチに加える圧力は、パッチを変形させることのないよう十分に低い。パッチを変形させることなくパッチに加えることのできる最大圧力は、パッチ材料のシートの組成に依存し、当業者が特定の要件に従って決定できる。
【0044】
一方、本発明者らは、押さえ装置によって一定の圧力をパッチに加えた場合、パッチを変形させること、詳細には永続的に変形させることが可能であるという驚くべき発見に至った。押さえ装置によってパッチに加えられる圧力が十分に高ければ、パッチの表面に陥凹部が形成されることが見出された。この陥凹部の形状は、パッチに接触する押さえ装置の表面の形状と実質的に同一である。また、該陥凹部の深さは、押さえ装置が接触している間にパッチに加えられた圧力に依存する。
【0045】
パッチの片面に陥凹部を得るには、該パッチの反対側の面を平面で支持しながら、押さえ装置によってパッチの該片面に圧力を加えればよい。あるいは、パッチは、押さえ装置がパッチと接触する領域の概ね反対側に凸部を含む面で支持してもよい。この場合、パッチの両側に陥凹部を得ることができる。
【0046】
したがって、さらなる1実施形態において、本発明は医療用パッチを製造するための上記装置であって、押さえ装置が、パッチを変形させるに足る圧力、詳細にはパッチの片面または両面を永続的に変形させるに足る圧力をパッチに加える装置に関する。
【0047】
パッチの片面または両面に陥凹部があることにより、パッチのパッケージからの取り出しが、特にパッケージが袋である場合に容易になることがわかった。陥凹部があることにより、パッチと袋の壁との間の空間が広くなり、パッチをつかむことがより容易になる。これによって、患者のコンプライアンスは高まる。
【0048】
また、パッチの剥離ライナーが、剥離を容易にするための切れ目で分割されているにもかかわらず互いに重なり合っていなければ、たとえば、2つに分割された剥離ライナーの間にある切れ目から低温流れによって感圧粘着剤が漏出するリスクがある。この場合、パッチがパッケージに付着する傾向があり、パッチのパッケージからの取り出しが困難になることがある。この場合、2つに分割された剥離ライナーの間にある切れ目の領域において、剥離ライナー側に陥凹部を設けることができる。保管中に感圧粘着剤が切れ目を通って漏出したとしても、漏出した粘着剤は前記陥凹部へと流れ込むため、パッチのパッケージ壁への付着は抑えられる。
【0049】
さらなる1実施形態において、本発明は、医療用パッチの製造における、上述のローラーの使用に関する。この実施形態には、ローラーおよびその押さえ装置についての上述した好ましい実施形態もまた適用可能である。
【0050】
さらに、本発明は、医療用パッチを製造するための方法に関し、該方法は、a)パッチ材料のシートを打ち抜いてパッチと抜き桟とを形成する工程と、b)ローラーにおいて抜き桟を引き取ることによってパッチを抜き桟から分離する工程とを含み、抜き桟が引き取られる際に、抜き桟から分離されるパッチが、ローラー上の1以上の押さえ装置によって押さえられることを特徴とする。
【0051】
この方法の好ましい1実施形態において、抜き桟が引き取られる際に押さえ装置によってパッチに加えられる圧力は、パッチを変形させることのないよう十分に低い。
【0052】
この方法の別の1実施形態において、抜き桟が引き取られる際に押さえ装置によってパッチに加えられる圧力は、パッチを変形させるに足る大きさである。変形によって、特にパッチを永続的に変形させることによって、パッチの片面に陥凹部を得ることができる。本発明の装置に関して上述したように、この方法はさらに、パッチの反対側に別の陥凹部が得られるよう、変更することができる。
【0053】
さらに、パッチ材料のシート中の感圧粘着剤が、切れ目を有する剥離ライナーによって被覆される場合、押さえ装置がもたらす陥凹部によって剥離ライナーの切れ目とパッケージ材料との接触が防止できれば有利であるということがわかった。これは、切れ目を通じた感圧粘着剤の漏出が最小限に抑えられる点において有利である。
【0054】
上記の方法によって得ることのできる、片面または両面に変形が加えられたパッチもまた、本発明の一部である。
【0055】
さらに、本発明は、片面または両面に変形が加えられた医療用パッチを含むパッケージに関する。
図1
図2
図3
図4
図5