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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】LED照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220119BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20220119BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/64
F21S2/00 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017130069
(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公開番号】P2019012804
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】飯野 高史
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058614(JP,A)
【文献】特開2013-232477(JP,A)
【文献】特開2012-044048(JP,A)
【文献】特開2009-094351(JP,A)
【文献】特開2016-219604(JP,A)
【文献】特開2017-112295(JP,A)
【文献】特開2012-114416(JP,A)
【文献】特開2012-182276(JP,A)
【文献】特開2016-162825(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038691(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0285087(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103178188(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域を上面に備える放熱基板と、
前記発光領域に実装された複数の青色発光素子であって、隣接する素子同士の間隔が30μm~2mmである前記複数の青色発光素子と、
透光性を備え、個々の青色発光素子の側面や上面に沿うようにして前記発光領域となる放熱基板上に被覆されるコート層と、
下部に蛍光体層を備え、前記コート層の上面を覆う封止樹脂と、を有し、
前記封止樹脂内で蛍光体が沈降して生じる前記蛍光体層が前記コート層の上面を覆うようにして前記個々の青色発光素子の間に形成されるLED照明装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記コート層は、シリコーンによって形成されているLED照明装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記蛍光体層は、黄色蛍光体によって形成されているLED照明装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数の青色発光素子及び前記放熱基板上を覆う前記コート層の厚さが1~10μmであり、前記コート層の上面を覆う前記蛍光体層の厚さが30~50μmであるLED照明装置。
【請求項5】
請求項1、2、のいずれかにおいて、
前記コート層が下層と上層とを備え、
前記上層の屈折率が、前記下層の屈折率より低いLED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種照明器具に搭載されるLED照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電球や蛍光灯に代わる照明用の光源として、発光素子(LED)を用いた照明装置が採用されている。基板と、基板上に実装されたLEDチップと、LEDチップと基板を接合するダイボンド接合剤と、沈降した蛍光体層を下部に含有する封止樹脂を備える白色発光のLEDパッケージが知られている(特許文献1、図7)。このLEDパッケージでは、LEDチップの外周の隅肉部がLEDチップの上面に達するように、ダイボンド接合剤が傾斜して設けられている。
【0003】
ダイボンド接合剤がLEDチップの外周に傾斜して設けられているので、LEDチップの周辺の蛍光体の堆積量が均一になる。このため、このLEDパッケージは、どの方向から見ても白色発光であることが特許文献1に記載されている。しかしながら、LEDチップが青色LEDで、蛍光体が黄色蛍光体である場合、特許文献1の図7に記載されたLEDパッケージ構造では、LEDチップからの横方向の青色光は、蛍光体層を伝播した後に、LEDチップ同士の間から発光される。このため、LEDチップ間からの発光は、LEDチップ上からの発光と比べてより黄色に励起される。これがLEDパッケージの発光の色ムラの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-44048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発光の色ムラを抑えたLED照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のLED照明装置は、発光領域を上面に備える放熱基板と、前記発光領域に実装された複数の青色発光素子であって、隣接する素子同士の間隔が30μm~2mmである前記複数の青色発光素子と、透光性を備え、個々の青色発光素子の側面や上面に沿うようにして前記発光領域となる放熱基板上に被覆されるコート層と、下部に蛍光体層を備え、前記コート層の上面を覆う封止樹脂と、を有し、前記封止樹脂内で蛍光体が沈降して生じる前記蛍光体層が前記コート層の上面を覆うようにして前記個々の青色発光素子の間に形成される
【発明の効果】
【0007】
本発明のLED照明装置では、発光素子および放熱基板と、蛍光体層との間に、透光性を備えるコート層が設けられている。このため、発光素子からの横方向の光は、コート層を伝播した後に蛍光体層を通過して、発光素子同士の間から発光される。したがって、発光素子同士の間からの発光が蛍光体で励起され過ぎない。その結果、LED照明装置の発光の色ムラが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るLED照明装置の上面図。
図2】本発明の実施形態に係るLED照明装置の断面図(a)と部分拡大断面図(b)。
図3】本発明の実施形態に係るLED照明装置を製造する被覆材形成工程を示す上面図(a)と断面図(b)。
図4】本発明の実施形態に係るLED照明装置を製造する実装工程を示す上面図(a)と断面図(b)。
図5】本発明の実施形態に係るLED照明装置を製造する配線工程を示す上面図(a)と断面図(b)。
図6】本発明の実施形態に係るLED照明装置を製造する枠体形成工程を示す上面図(a)と断面図(b)。
図7】本発明の実施形態に係るLED照明装置を製造するコート層形成工程を示す上面図(a)と断面図(b)。
図8】本発明の変形例に係るLED照明装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のLED照明装置について、図面を参照しながら実施形態に基づいて説明する。なお、図面は、LED照明装置、LED照明装置の構成部材、およびLED照明装置の周辺部材を模式的に表したものであり、これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、特にことわらない限り、本明細書では便宜上、図2(a)に示すLED照明装置の向きを基準に「上」、「下」、および「横」などの方向を表す。重複説明は適宜省略し、同一部材には同一符号を付与することがある。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るLED照明装置10の上面を示している。図2(a)は、LED照明装置10の中央部付近の鉛直断面を示している。図2(b)は、図2(a)の左側の一部を拡大して示している。LED照明装置10は、放熱基板12と、複数の発光素子14と、配線基板16と、枠体18と、コート層20と、封止樹脂22とを備えている。
【0011】
放熱基板12は、熱伝導性が高いアルミニウムまたはアルミニウム合金等から作製され、ほぼ正方形の板状部材である。発光素子14の発光に伴う熱は、放熱基板12を介して外部に放出される。放熱基板12の上面の中央には、円形の発光領域12aが設けられている。本実施形態では、発光領域12aは枠体18の内側の領域である。放熱基板12の発光領域12aには、40個の発光素子14が実装されている。この40個の発光素子14の配置については後述する。なお、発光素子14の個数40個は例示であり、複数の発光素子14の個数は特に制限がない。
【0012】
一般照明用として白色系の発光を得るため、各発光素子14は、窒化ガリウム系化合物半導体を備える同一種類かつ同一サイズの青色発光素子である。この青色発光素子は、サファイアガラスからなる基材と、n型半導体およびp型半導体を基材上に拡散成長させた拡散層と、n型半導体およびp型半導体の上面にそれぞれ設けられたn型電極およびp型電極を備えている。
【0013】
放熱基板12の上面には、配線基板16が設けられている。配線基板16は、ガラスエポキシ樹脂製のほぼ正方形の板状部材である。配線基板16の中央には、円形の孔である開口部16aが設けられている。すなわち、開口部16aは発光領域12aを開口している。配線基板16は、第一電極24と第二電極26をその上面に備えている。第一電極24と第二電極26は、開口部16aを挟むように対向して設けられている。
【0014】
第一電極24と第二電極26には、外部から電力を供給する一対の電線が電気的に接続される。また、第一電極24と第二電極26には、ワイヤ28を介して発光素子14が電気的に接続されている。すなわち、ある発光素子14のn型電極とp型電極の一方と、これに隣接する発光素子14のn型電極とp型電極の他方とが、ワイヤ28を介して順次電気的に接続されている。そして、発光領域12aの端部に配置されたワイヤ28が、第一電極24または第二電極26に電気的に接続されている。こうして、図1に示すように、第一電極24と第二電極26との間に、8個の発光素子14が直列接続された発光グループが、並列に5列設けられている。
【0015】
隣接する発光素子14,14の間隔は30μm~2mmであることが好ましい。発光素子14,14の間隔が30μm以上であれば、蛍光体が封止樹脂22内で沈降して生じる蛍光体層22aは、発光素子14,14の間に十分形成されるからである。発光素子14,14の間に蛍光体層22aが形成されることによって、発光素子14からの発光に伴う熱を、放熱基板12を介して外部に放出できる。また、発光素子14,14の間隔が2mm以下であれば、発光素子14からの横方向の光は、コート層20内を伝播して発光素子14,14の中間地点付近まで到達できるからである。発光素子14,14の中間地点付近までコート層20内を伝播した光は、蛍光体層22aの下面から上面に導かれ、白色光として外部に放出される。
【0016】
第一電極24と第二電極26は、例えば金メッキ等によって、配線基板16の上面に形成されている。第一電極24と第二電極26は、開口部16aの外側に沿った円環の一部と、長方形(正方形を含む)の一つの角が、開口部16aの一部からなる扇形状に切り欠かれたような形状を合わせた形状を備えている(後述する図3の破線部参照)。
【0017】
図2(b)に示すように、コート層20は、複数の発光素子14および発光素子14の周囲のダイボンドペースト29の上から発光領域12aを覆っている。コート層20は透光性を備えている。コート層20は、例えばシリコーン樹脂から構成されている。本実施形態のようにコート層20は単層でもよし、下層と上層とを備える積層構造であってもよい。コート層が積層構造の場合、上層の屈折率は、下層の屈折率より低いことが好ましい。発光素子14からの横方向の光がコート層20内を伝播するとき、屈折率が低い上層によって、コート層20内を伝播する光が蛍光体層22aに放出されるのを抑えられるからである。
【0018】
封止樹脂22はコート層20を覆っている。例えば、エポキシ樹脂母材またはシリコーン樹脂母材に、蛍光粒子の原料となるイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、または色素粒子の原料である染料等からなる蛍光剤を混入することによって、封止樹脂20が作製される。封止樹脂22の下部には、蛍光粒子や蛍光剤等の蛍光体が沈降して生じた蛍光体層22aが形成されている。蛍光体層22aの厚さは、例えば30~50μmである。
【0019】
このように、放熱基板12の発光領域12aおよび発光素子14と、蛍光体層22aとの間に、透光性を備えるコート層20が設けられているため、発光素子14からの横方向の光は、コート層20を伝播した後、蛍光体層22aの下面から上面に向かって進み、白色光として発光素子14,14の間から外部に放出される。したがって、発光素子14からの光が蛍光体層22aで励起され過ぎることがなく、LED照明装置10の発光の色ムラが抑えられる。特に発光素子14が7個以上あるLED照明装置では、コート層20を設けることによる発光の色ムラの抑制効果が顕著である。本実施形態では、蛍光体が黄色蛍光体である。なお、蛍光体は、黄色蛍光体、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を組み合わせたものであってもよい。
【0020】
コート層20は透明であることが好ましい。発光素子14からの横方向の光の波長がほとんど変化することなく、発光素子14,14の間の蛍光体層22aの下面に伝播するからである。コート層20の厚さは1~10μmであることが好ましい。コート層20の厚さが1μm以上であれば、発光素子14からの横方向の光がコート層20内を十分に伝播するからである。また、コート層20の厚さが10μm以下であれば、発光に伴って生じる発光素子14の熱を、放熱基板12を介して外部に十分放出できるからである。コート層20の上面20aは、粘着性(タック性)を備えていることが好ましい。蛍光体が封止樹脂22内で沈降して生じる封止樹脂22の下部の蛍光体層22aが、発光素子14の側方に斜めで存在するコート層20上にも形成されるからである。
【0021】
図3から図7は、LED照明装置10を製造するときの各工程を示している。LED照明装置10の製造方法は、被覆材形成工程と、実装工程と、配線工程と、枠体形成工程と、コート層形成工程と、封止工程とを備えている。図3(a)は、LED照明装置10を製造するときの被覆材形成工程を説明するための上面を示している。図3(b)は、図3(a)の中央部付近の鉛直断面を示している。被覆材形成工程では、接着剤等を介して放熱基板12上に固定された配線基板16が、被覆材30で被覆される。
【0022】
このとき、第一電極24の一部および第二電極26の一部が露出される。本実施形態では、被覆材30がフォトレジスト性樹脂から構成されている。このため、第一電極24および第二電極26の上面の露出部が簡易で正確に形成できる。第一電極24および第二電極26の上面の外側の露出部には、外部から電力を供給するための一対の電線がそれぞれにはんだ付けされる。また、第一電極24および第二電極26の上面の内側の露出部には、発光素子14に接続されているワイヤ28が接続される(後述する図5参照)。
【0023】
図4(a)は、LED照明装置10を製造するときの実装工程を説明するための上面を示している。図4(b)は、図4(a)の中央部付近の鉛直断面を示している。実装工程では、ダイボンドペースト(不図示)によって、放熱基板12の発光領域12a上に複数の発光素子14が実装される。図5(a)は、LED照明装置10を製造するときの配線工程を説明するための上面を示している。図5(b)は、図5(a)の中央部付近の鉛直断面を示している。配線工程では、複数の発光素子14が、ワイヤ28を介して相互に接続される。また、複数の発光素子14を接続したときの端部のワイヤ28は、第一電極24または第二電極26に接続される。
【0024】
図6(a)は、LED照明装置10を製造するときの枠体形成工程を説明するための上面を示している。図6(b)は、図6(a)の中央部付近の鉛直断面を示している。枠体形成工程では、第一電極24の内側および第二電極26の内側の露出部を覆うように、配線基板16の内周に沿って、枠体18が円形状に形成される。このとき、発光素子14とワイヤ28より高くなるように枠体18が形成される。枠体18は、例えば白色系の遮光性を有する樹脂から構成されている。
【0025】
図7(a)は、LED照明装置10を製造するときのコート層形成工程を説明するための上面を示している。図7(b)は、図7(a)の中央部付近の鉛直断面を示している。コート層形成工程では、シリコーン樹脂等の前駆体溶液が発光領域12aに塗布および硬化される。封止工程では、コート層20を覆うように、枠体18の内側に封止樹脂20が充填される。封止樹脂20は、透明な樹脂母材に所定量の蛍光体を含有させたものである。封止樹脂20の充填によりワイヤ28も封止される。そして、封止樹脂20に含まれる蛍光体が沈降して、封止樹脂20の下部に蛍光体層20aが形成される。こうして、図1および図2に示すLED照明装置10が得られる。
【0026】
図8は、本発明の変形例に係るLED照明装置40の中央部付近の鉛直断面を示している。LED照明装置40は絶縁性の放熱基板42を備えている。放熱基板42は、熱伝導性が高いセラミックス、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または窒化ケイ素等から作製されている。放熱基板42の上面の中央には、円形の発光領域42aが設けられている。第一電極24と第二電極26は、発光領域42aの外側で、放熱基板42の上面に直接形成されている。他の構成部品については、実施形態のLED照明装置10と同様である。このように、本変形例では絶縁性の放熱基板42を用いるので、発光素子14への給電電極を放熱基板42上に直接設けることができる。このため、LED照明装置40の薄型化が可能となる。
【符号の説明】
【0027】
10 LED照明装置
12 放熱基板
12a 発光領域
14 発光素子
16 配線基板
16a 開口部
18 枠体
20 コート層
20a コート層の上面
22 封止樹脂
22a 蛍光体層
24 第一電極
26 第二電極
28 ワイヤ
29 ダイボンドペースト
30 被覆材
40 LED照明装置
42 放熱基板
42a 発光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8