(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】エアベルト
(51)【国際特許分類】
B60R 21/237 20060101AFI20220119BHJP
B60R 21/18 20060101ALI20220119BHJP
B60R 22/14 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/18
B60R22/14
(21)【出願番号】P 2017132165
(22)【出願日】2017-07-05
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】市田 敦
(72)【発明者】
【氏名】関 尚史
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206223(JP,A)
【文献】特開2012-041042(JP,A)
【文献】特開2001-001857(JP,A)
【文献】特開2007-038796(JP,A)
【文献】特開2009-035176(JP,A)
【文献】特開2011-218990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0280171(US,A1)
【文献】米国特許第05385368(US,A)
【文献】実開昭59-182352(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/18
B60R 21/237
B60R 22/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時にウェビングと乗員との間で挟まれるよう配置され膨張可能なエアバッグと、
前記エアバッグを折り畳んだ状態で覆うバッグカバーと、を備え、
前記エアバッグは、前記ウェビングの挿通方向の一方側に配置される膨張部と、前記挿通方向の他方側に配置され前記膨張部を膨張させるためのガスを送り込む流路と、収納時に前記膨張部を前記挿通方向に直交する方向に沿った複数の折り返し線で蛇腹状に折り畳んだ折り畳み部と、を有し、
前記折り畳み部は
、
前記ウェビング側から見た状態で前記エアバッグ
に形成した山折り部を前記挿通方向の他方側へ倒すことにより形成された少なくとも1つのウェビング側折り部と、
前記ウェビング側から見た状態で前記エアバッグ
に形成した谷折り部を前記挿通方向の他方側へ倒すことにより形成された少なくとも1つの乗員側折り部と、を有
する、
エアベルト。
【請求項2】
前記折り畳み部は、前記流路側の端部に前記ウェビング側折り部を有する、
請求項1に記載のエアベルト。
【請求項3】
前記折り畳み部は、同数の前記ウェビング側折り部と前記乗員側折り部とを有する、
請求項1または2に記載のエアベルト。
【請求項4】
前記折り畳み部は、前記流路側から順番に2つのウェビング側折り部と、2つの前記乗員側折り部とが配置される、
請求項3に記載のエアベルト。
【請求項5】
前記折り畳み部は、前記ウェビング側折り部と前記乗員側折り部とが交互に配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のエアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
シートベルト装置のウェビングに膨張展開するエアバッグを取りつけたエアベルトが知られている。エアベルトは、車両搭載性の観点から、膨張部の全長を短縮したいというニーズがある。例えば特許文献1には、膨張部のうちガス流路側の半分を他方側に織り込んで膨張部の全長を短縮して作動時にはガスの充填によって折り畳みを解いていく構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構造では、展開方向の規制が十分になされていないため、延び出し展開方向が不安定になる可能性がある。また、テザー、縫製等、バッグ形状を規制する内部構造がある場合は折り込みができない可能性がある。
【0005】
本開示は、収納時に全長を短縮でき、かつ、展開時の展開方向を安定化できるエアベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係るエアベルトは、使用時にウェビングと乗員との間で挟まれるよう配置され膨張可能なエアバッグと、前記エアバッグを折り畳んだ状態で覆うバッグカバーと、を備える。前記エアバッグは、前記ウェビングの挿通方向の一方側に配置される膨張部と、前記挿通方向の他方側に配置され前記膨張部を膨張させるためのガスを送り込む流路と、収納時に前記膨張部を前記挿通方向に直交する方向に沿った複数の折り返し線で蛇腹状に折り畳んだ折り畳み部と、を有する。前記折り畳み部は、前記ウェビング側から見た状態で前記エアバッグに形成した山折り部を前記挿通方向の他方側へ倒すことにより形成された少なくとも1つのウェビング側折り部と、前記ウェビング側から見た状態で前記エアバッグに形成した谷折り部を前記挿通方向の他方側へ倒すことにより形成された少なくとも1つの乗員側折り部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、収納時に全長を短縮でき、かつ、展開時の展開方向を安定化できるエアベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】シートベルト装置の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すシートベルト装置のタング及びエアベルト付近の断面図である。
【
図3】本実施形態に係るエアバッグの初期状態を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るエアバッグの折り畳み手順の第1段階を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るエアバッグの折り畳み手順の第2段階を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るエアバッグの折り畳み手順の第3段階を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るエアバッグの折り畳み手順の第4段階を示す図である。
【
図8】本実施形態に係るエアバッグの折り畳み手順の第5段階を示す図である。
【
図9】本実施形態に係るエアバッグが折り畳まれた状態を示す図である。
【
図10】
図7に示す折り畳み部を拡大視した模式図である。
【
図11】本実施形態の折り畳み部の構造による効果を説明するための模式図である。
【
図12】第1変形例に係るエアバッグの折り畳み部の構造を示す模式図である。
【
図13】第2変形例に係るエアバッグの折り畳み部の構造を示す模式図である。
【
図14】第3変形例に係るエアバッグの折り畳み部の構造を示す模式図である。
【
図15】第4変形例に係るエアバッグの折り畳み部の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[実施形態]
まず
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るエアベルトが適用されるシートベルト装置100の全体構成について説明する。
図1は、シートベルト装置100の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すシートベルト装置100のタング4及びエアベルト10付近の断面図である。
【0011】
なお、
図2以降において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。Z方向は、エアベルト10のウェビングガイド30内を通過するウェビング11の摺動方向である。以下の説明では、Z正方向側を「ウェビングガイド30の上側」や「タング4の後端側」などと表現し、Z負方向側を「ウェビングガイド30の下側」や「タング4の先端側」などとも表現する場合がある。X方向はウェビング11の主面に対して垂直な方向である。Y方向はウェビング11の幅方向である。
【0012】
図1に示されるシートベルト装置100は、車両の座席1に装備されている。シートベルト装置100は、リトラクタ2、ウェビング11、エアベルト10、ショルダアンカ7、タング4及びバックル9を備える。
【0013】
リトラクタ2から引き出されたウェビング11は、ショルダアンカ7を通って引き回され、タング4で折り返される。ウェビング11の端部は、アンカープレート6に定着されている。アンカープレート6は、固定ボルト5を介してシート又は車体の不図示の固定部に固定される。
【0014】
座席1は、例えば、運転席又は助手席などの前方座席である。座席1は、後方座席でもよい。
【0015】
リトラクタ2は、この実施の形態ではBピラーに設置されている。しかしながら、リトラクタ2は、座席1の位置に対応して、例えばBピラー、Cピラー、後方座席の後方のトレイなどの車体側部位に設置されてもよい。また、リトラクタ2は、座席1の内部(例えば、シートバック1Bの内部)に設置されてもよい。
【0016】
ウェビング11に摺動可能に取り付けられたタング4よりもショルダアンカ7側には、エアベルト10が装着されている。タング4は、ガス供給パイプ4aとタングプレート4b等を備えている。ガス供給パイプ4aは、金属製筒状体であり、ガス供給パイプ4aに連通するタング4内のガス供給経路を介して、後述の
図3などに示されるエアバッグ20の下端部のガス導入口21に連通している。
【0017】
図2に示すように、タング4のタングプレート4bの先端側には、タングプレート4bがバックル9内に差し込まれたときにバックル9内のラッチ部材が係合するラッチ孔4cが設けられている。タングプレート4bの後端側は、樹脂モールド4d内に埋設されている。樹脂モールド4dに、ウェビング11の挿通口4eが設けられている。
【0018】
図1に示すように、タング4が着脱されるバックル9は、ブラケット9aを介してシート又は車体の固定部(図示せず)にボルト等の固定部材を介して固定される。バックル9には、タングプレート支持穴9bとガス供給パイプ連結穴9cとが形成されており、タング4の装着時にタングプレート4bとガス供給パイプ4aとはバックル9の各穴9b,9cに挿入される。ガス供給パイプ4aが挿入されるガス供給パイプ連結穴9cには、バックル9に設置されたインフレータ16のガス噴出口(図示せず)が連通されている。衝突時等に、インフレータ16内の点火剤の反応によりインフレータ16のガス噴出口からガスが噴出し、エアベルト10が
図1の二点鎖線10'で示すようにウェビング11に沿って膨張する。
【0019】
図2に示すように、エアベルト10は、ウェビング11が挿通されたウェビングガイド30と、ウェビングガイド30に沿って延在する膨張可能なエアバッグ20と、エアバッグ20の折り畳み体を覆うバッグカバー40と備える。また、エアベルト10は、ウェビングガイド30及びバッグカバー40の下端側をタング4に連結する下側連結構造部50と、エアバッグ20、ウェビングガイド30及びバッグカバー40の上端側同士を連結する上側連結構造部51とを備える。
【0020】
ウェビングガイド30は、ウェビング11が摺動方向に移動自在に挿通する平坦で細長い筒状部材であり、ポリウレタン樹脂やシリコーンエラストマー等の樹脂材料により形成されている。エアバッグ20は、ウェビング11の挿通方向に細長く折り畳まれた状態でウェビングガイド30の外側に配置されている。
【0021】
図3~
図10を参照して本実施形態に係るエアバッグ20の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るエアバッグ20の初期状態を示す図である。
図4は、エアバッグ20の折り畳み手順の第1段階を示す図である。
図5は、エアバッグ20の折り畳み手順の第2段階を示す図である。
図6は、エアバッグ20の折り畳み手順の第3段階を示す図である。
図7は、エアバッグ20の折り畳み手順の第4段階を示す図である。
図8は、エアバッグ20の折り畳み手順の第5段階を示す図である。
図9は、エアバッグ20が折り畳まれた状態を示す図である。
図10は、
図7に示す折り畳み部33を拡大視した模式図である。
図3~
図9において、(a)は各状態の平面図であり、(b)は各図(a)中に切断線に沿った断面を模式的に示す図である。
【0022】
図3に示すように、エアバッグ20は、下端側(タング4側)にガス導入口21を備えている。エアバッグ20は、ウェビング11に沿うように細長く延在する。エアバッグ20の上端側(ショルダアンカ7側)には、突片部22が設けられている。突片部22に小孔22aが設けられている。
【0023】
エアバッグ20は、細長い2枚の基布20a,20bを重ね合わせ、それらの周縁部を縫合糸23によって縫合することにより、細長い袋状に製作される。
【0024】
エアバッグ20の長手方向の中間よりも下端側(タング4側)には、ウェビングガイド30をエアバッグ20の基布20a側から反対側の基布20b側に引き通すためのスリット24が設けられている。このスリット24を取り巻いて基布20a,20b同士を縫合するように縫合糸25による縫合が施されている。
【0025】
エアバッグ20の長手方向の中間付近から上端側(突片部22側)にかけて、ウェビングガイド30を通すための複数個のループ部26A,26B,26C,26Dが間隔をあけて設けられている。ループ部26A,26B,26C,26Dは、布片によって形成されている。各々のループ部26A,26B,26C,26Dの両側辺部は、縫合糸によりエアバッグ20の基布20aに縫着されている。なお、本実施形態では、4個のループ部26A,26B,26C,26Dを備える構成が例示されているが、ループ部の数はこれに限られない。
【0026】
エアバッグ20には、この複数のループ部のうち最も下側のループ部26Aとスリット24とを含む領域の周囲に、基布20a,20b同士を縫合する縫合糸27による縫合が施されている。この縫合糸27による縫合を施すことにより、エアバッグ20の膨張時の厚みが規制される。
【0027】
エアバッグ20の長手方向において、最も下側のループ部26Aより上端側(ウェビング挿通方向の一方側)の部分は、エアバッグ20の作動時にX方向に膨張する膨張部31である。エアバッグ20のループ部26Aより下端側(ウェビング挿通方向の他方側)の部分は、エアバッグ20の作動時にもX方向に膨張しない非膨張部32である。非膨張部32は、縫合糸27により包囲される領域の幅方向の両脇には、膨張部31を膨張させるためのガスをガス導入口21から送り込む一対の流路28が設けられている。
【0028】
また、
図7、
図10に示すように、エアバッグ20は、収納時に膨張部31を挿通方向に直交する方向に沿った複数の折り返し線で蛇腹状に折り畳んだ折り畳み部33を備える。折り畳み部33の作成手順は例えば
図4~
図7のとおりである。
【0029】
まず
図3に示すように、下端側から2番目のループ部26Bの下端側端部に沿い、かつ、エアバッグ20の幅方向(Y方向)に沿った山折り線M1と、ループ部26Aの上端側端部と山折り線M1との中間位置で幅方向に沿った谷折り線V1とに沿ってエアバッグ20を折る。これにより、
図4に示すように、ウェビング11側(X負方向側)に突出したウェビング側折り部F1が形成され、ループ部26Bがループ部26A側に接近した状態となる。
【0030】
次に
図4に示すように、下端側から3番目のループ部26Cの下端側端部に沿い、かつ、エアバッグ20の幅方向に沿った山折り線M2と、ループ部26Bの上端側端部と山折り線M2との中間位置で幅方向に沿った谷折り線V2とに沿ってエアバッグ20を折る。これにより、
図5に示すように、ウェビング11側に突出したウェビング側折り部F12が形成され、ループ部26Cがループ部26B側に接近した状態となる。
【0031】
次に
図5に示すように、ループ部26Cの上端側端部に沿い、かつ、エアバッグ20の幅方向に沿った山折り線M3と、下端側から4番目のループ部26Dの下端側端部と山折り線M3との中間位置で幅方向に沿った谷折り線V3とに沿ってエアバッグ20を折る。これにより、
図6に示すように、ウェビング11側とは反対側、すなわちシートベルト装着時の乗員H側(X正方向側)に突出した乗員側折り部F21が形成され、ループ部26Dがループ部26C側に接近した状態となる。
【0032】
次に
図6に示すように、ループ部26Dの上端側端部に沿い、かつ、エアバッグ20の幅方向に沿った山折り線M4と、さらに上端側で幅方向に沿った谷折り線V4とに沿ってエアバッグ20を折る。これにより、
図7に示すように乗員H側(
図10参照)に突出した乗員側折り部F22が形成され、突片部22がループ部26D側に接近した状態となる。
【0033】
これにより、
図7、
図10に示すように、下端側(X負方向側)から順番に2つのウェビング側折り部F11,F12と、2つの乗員側折り部F21,F22とが配置される折り畳み部33が形成される。ウェビング側折り部F11,F12は、エアバッグ20からウェビング11側に突出して形成される。乗員側折り部F21,F22は、エアバッグ20からウェビング11側とは反対側の乗員H側に突出して形成される。
【0034】
図7に示すように、折り畳み部33が形成されたエアバッグ20は、突片部22側を複数回折り返されることにより、その全長を小さくした中間折り畳み体になる。このときの折り返し線(山折り線M1~M4、谷折り線V1~V4)の延在方向は、エアバッグ20の長手方向と直交する幅方向である。
【0035】
次に、
図8に示すように、この中間折り畳み体のうち幅方向(Y方向)両側の一部を、エアバッグ20の長手方向(Z方向)の折り返し線に沿ってウェビングと反対側(X正方向側)に折り返して、全体として略等幅の細長い折り畳み体とする。折り畳み体のY方向の幅は、ウェビング11やウェビングガイド30を挿通可能な幅である。
【0036】
次に、
図9に示すように、折り畳み体の各々のループ部26A~26Dと基布20aとの間に、スリット24と突片部22とを結ぶ方向にウェビングガイド30が挿通される。
図9では図示が省略されているが、ウェビングガイド30には、ウェビング11が挿通されている。
図9に示されるように、基布20aに沿ってループ部26A~26Dを挿通するウェビングガイド30は、スリット24を通って基布20a側から基布20b側へ引き通され、ガス導入口21近傍まで延在する。ウェビングガイド30は、バッグカバー40の下端から他端まで連続して延在している。
【0037】
ウェビングガイド30とエアバッグ20の折り畳み体とが、
図2の通り、バッグカバー40内に挿入される。バッグカバー40は、平坦で細長い筒状のカバーの一例である。バッグカバー40は、エアバッグ20の膨張圧によって切断する縫合糸で縫製されるか、又はエアバッグ20の膨張に合わせて膨張する伸縮可能なメッシュにより形成されている。本実施形態では、ウェビングガイド30とバッグカバー40の全長は略等しく、ウェビングガイド30とバッグカバー40の下端及び上端の位置は略一致している。
【0038】
図11は、本実施形態の折り畳み部33の構造による効果を説明するための模式図である。
図11では、
図10以前とは異なり折り畳み部33の構造を簡略化して図示しており、折り畳み部33は単一のウェビング側折り部F1と乗員側折り部F2とを有する。
図10(a)に示すように、エアバッグ20の収容時には、折り畳み部33は、下端側から順番にウェビング側折り部F1と、単一の乗員側折り部F2とが形成されている。
【0039】
この状態でエアバッグ20にガスが供給されると、
図10(b)に示すように、まずは下端側(Z負方向側)のウェビング側折り部F1が膨張する。ウェビング側折り部F1は、エアバッグ20からウェビング11側に突出して形成されるので、乗員Hとは反対側のウェビング11側(X負方向側)に膨張する。これにより、ウェビング11が乗員Hから離れる方向に移動して、ウェビング11と乗員Hとの間の空間が広がる。
【0040】
その後、
図10(c)に示すように、上端側(Z正方向側)の乗員側折り部F2が膨張する。乗員側折り部F2は、エアバッグ20からウェビング11側とは反対側に突出して形成されるので、乗員H側(X正方向側)に膨張する。このとき、事前にウェビング側折り部F1の膨張によってウェビング11と乗員Hとの間の空間が広げられているので、乗員側折り部F2はスムーズに膨張できる。
【0041】
したがって、本実施形態に係るエアベルト10は、折り畳み部33が、
図7、
図10などに示すように、エアバッグ20からウェビング11側に突出して形成されるウェビング側折り部F11,F12と、エアバッグ20からウェビング11側とは反対側の乗員H側に突出して形成される乗員側折り部F21,F22との両方を有することにより、エアバッグ20の膨張する方向をウェビング11側(X負方向側)及び乗員H側(X正方向側)の二方向に限定できるので、展開時のエアバッグ20の展開方向を安定化できる。また、エアバッグ20に折り畳み部33を設けることにより、収納時に全長を短縮できる。このように、本実施形態に係るエアベルト10によれば、収納時に全長を短縮でき、かつ、展開時の展開方向を安定化できる。
【0042】
また、本実施形態に係るエアベルト10において、折り畳み部33は、流路28側の端部にウェビング側折り部F11を有するので、
図10(b)を参照して説明したように、ウェビング11と乗員Hとの間にエアバッグ20の膨張に十分な空間をつくることができ、エアバッグ20の展開方向をより安定化できる。
【0043】
また、本実施形態に係るエアベルト10において、折り畳み部33は、同数(本実施形態では2つずつ)のウェビング側折り部F11,F12と乗員側折り部F21,F22とを有するので、エアバッグの展開をバランス良く行うことができる。
【0044】
[変形例]
図12~
図15を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。
図12~
図15は、第1~第4変形例に係るエアバッグ20の折り畳み部33A~33Dの構造を示す模式図である。上記実施形態では、
図7、
図10などに示すように、エアバッグ20の折り畳み部33において、流路28側から順番に2つのウェビング側折り部F11,F12と、2つの乗員側折り部F21,F22とが配置される構成を例示したが、折り畳み部33の構成はこれに限られない。折り畳み部33は、ウェビング側折り部と、乗員側折り部とを少なくとも1つずつ有する構成であればよい。
【0045】
例えば
図12に示すように、折り畳み部33Aにおいて、ウェビング側折り部F11,F12と乗員側折り部F21,F22とが交互に配置される構成でもよい。
図12に示す折り畳み部33Aでは、ガス流入側(Z負方向側)から順番に1番目のウェビング側折り部F11と、1番目の乗員側折り部F21と、2番目のウェビング側折り部F12と、2番目の乗員側折り部F22が配置されている。なお、ウェビング側折り部と、乗員側折り部とが3個以上でもよいし、
図11に例示したように1個ずつでもよい。
【0046】
また、
図13~
図15に示すように、ウェビング側折り部と、乗員側折り部の数が異なってもよい。例えば
図13に示す折り畳み部33Bでは、ガス流入側から順番に1番目のウェビング側折り部F11と、2番目のウェビング側折り部F12と、3番目のウェビング側折り部F13と、単一の乗員側折り部F21とが配置されている。
図14に示す折り畳み部33Cでは、ガス流入側から順番に1番目のウェビング側折り部F11と、2番目のウェビング側折り部F12と、単一の乗員側折り部F21とが配置されている。
図15に示す折り畳み部33Dでは、ガス流入側から順番に1番目のウェビング側折り部F11と、1番目の乗員側折り部F21と、2番目のウェビング側折り部F12とが配置されている。
【0047】
また、上記実施形態及とは異なり、折り畳み部33がガス流入側(流路28側)の端部に乗員側折り部F21を有する構成でもよい。
【0048】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 エアベルト
11 ウェビング
20 エアバッグ
31 膨張部
32 非膨張部
33,33A,33B,33C,33D 折り畳み部
F1,F11,F12 ウェビング側折り部
F2,F21,F22 乗員側折り部