(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】栽培設備
(51)【国際特許分類】
A01G 31/04 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A01G31/04 A
(21)【出願番号】P 2017137942
(22)【出願日】2017-07-14
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小寺 恵介
(72)【発明者】
【氏名】北田 幸靖
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔吾
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211658(JP,A)
【文献】特開2012-024076(JP,A)
【文献】特開昭61-192613(JP,A)
【文献】実開平04-009552(JP,U)
【文献】特開2017-085933(JP,A)
【文献】特開2014-207869(JP,A)
【文献】米国特許第04337986(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
始端を栽培開始部とし終端を栽培終了部とするプレート経路を設定し、
各々が栽培植物を保持する複数の栽培プレートを、前記プレート経路の伸長方向に一列に並べた状態で前記プレート経路に設置するとともに、
それら栽培プレートの夫々が保持する栽培植物が成長するほど、それら一列に並べた複数の栽培プレートを、前記プレート経路に沿って前記栽培終了部の側へ移動させる栽培設備であって、
前記栽培プレートは、隣り合う栽培プレートどうしが接する状態で前記プレート経路の伸長方向に一列に並べて設置し、
前記プレート経路には、前記プレート経路の横幅方向をレール間隔方向として前記プレート経路の伸長方向に延びる一対のレールを設け、
前記栽培プレートの夫々には、前記一対のレールに対して各別に係合した状態で前記一対のレールにより前記プレート経路の伸長方向への移動が案内される一対の被案内部を、前記栽培プレートの長尺方向における一端側と他端側とに振り分け配置した状態で設け、
前記一対のレールは、前記プレート経路の横幅方向における前記レール間隔が前記栽培終了部の側ほど縮小する状態に配置し
、
前記栽培プレートが前記栽培終了部の側へ移動するほど、前記一端側の被案内部と前記他端側の被案内部との前記プレート経路の伸長方向における位相差の拡大により前記レール間隔の縮小が吸収されることで、前記栽培プレートの長尺方向が前記プレート経路の伸長方向に沿う側に前記栽培プレートの姿勢が変化し、それに伴い、互いに接する隣り合う前記栽培プレートの前記プレート経路の伸長方向における中心間距離が拡大する構成にしてある栽培設備。
【請求項2】
前記栽培プレートのうち、隣りの栽培プレートが接するプレート縁部分は、平面視において前記長尺方向に延びる直線形状にしてある請求項1記載の栽培設備。
【請求項3】
前記プレート経路は養液槽内の養液面上に配置し、
前記栽培プレートは、栽培植物の根が前記養液槽内の養液に浸かる状態で栽培植物を保持し、
前記プレート経路と前記養液槽内の養液面との間には、前記養液槽内の養液が光に晒されるのを防止する遮光板を配置し、
この遮光板には、前記プレート経路に設置した前記栽培プレートが保持する栽培植物の根を貫通させるスリットを、前記栽培開始部から前記栽培終了部まで前記プレート経路に沿って延びる状態に形成してある請求項1又は2記載の栽培設備。
【請求項4】
前記栽培プレートの平面視形状は、両隣りの栽培プレートが各別に接する長尺側の平行な対向2辺と、それら長尺側の平行な対向2辺の端部どうしを結ぶ短尺側の平行な対向2辺とからなる平行四辺形であって、かつ、
前記栽培プレートが前記レール間隔の縮小により傾くのに伴い平面視で前記スリットに近付く側の対角部どうしを結ぶ対角線が長尺側の対角線となる平行四辺形にしてある請求項3記載の栽培設備。
【請求項5】
複数の前記プレート経路を、前記プレート経路の横幅方向に並べて配置し、
それらプレート経路の夫々において、複数の前記栽培プレートを、隣り合う栽培プレートどうしが接する状態で前記プレート経路の伸長方向に一列に並べて設置し、
それら複数のプレート経路の夫々について、前記栽培終了部の側ほど前記レール間隔が縮小する前記一対のレールを設けるとともに、
それら複数のプレート経路の夫々に配置する前記栽培プレートの夫々について、前記一対の被案内部を設けてある請求項1~4のいずれか1項に記載の栽培設備。
【請求項6】
前記プレート経路の横幅方向で互いに隣り合う一方側の前記プレート経路と他方側の前記プレート経路とについて、
前記一方側のプレート経路に設置する前記栽培プレートにおける前記他方側のプレート経路に近接する部分と、前記他方側のプレート経路に設置する前記栽培プレートにおける前記一方側のプレート経路に近接する部分とは、
それら近接部分夫々の動作位置が上下方向にずれていて、それら栽培プレートが前記レール間隔の縮小により傾くときの相互干渉が、前記動作位置の上下方向におけるずれにより回避される構造にしてある請求項5記載の栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は栽培設備に関し、詳しくは、始端を栽培開始部とし終端を栽培終了部とするプレート経路を設定し、各々が栽培植物を保持する複数の栽培プレートを、前記プレート経路の伸長方向に一列に並べた状態で前記プレート経路に設置するとともに、それら栽培プレートの夫々が保持する栽培植物が成長するほど、それら一列に並べた複数の栽培プレートを、前記プレート経路に沿って前記栽培終了部の側へ移動させる栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の栽培設備では、プレート経路の伸長方向において隣り合う栽培プレートの夫々に保持された栽培植物(特に葉菜類)どうしが成長により相互干渉する状態になるのを回避するため、栽培植物の成長を予め見越して、複数の栽培プレートを一列に並べる際のプレートピッチを栽培開始当初から大きくすると、栽培植物が未だ幼い栽培開始部の側ほど、隣り合う栽培プレートの夫々に保持された栽培植物どうしの間の空きスペースが大きくなり、その分、プレート経路の面積利用率が低くなって、栽培植物の生産性が低く制限される問題が生じる。
【0003】
これに対し、下記の特許文献1では、栽培植物が未だ幼い栽培開始部の側では隣り合う栽培プレートどうし間に幅の小さいスペーサを介装し、その後、栽培植物が成長して栽培終了部の側に移動するほど、隣り合う栽培プレートどうしの間に介装するスペーサを幅の大きなスペーサに交換するようにし、これにより、一列に並ぶ栽培プレートのプレートピッチを、栽培植物の成長に応じて栽培終了部の側ほど大きくする栽培設備が提案されている。
【0004】
また、下記の特許文献2では、栽培終了部の側ほどネジピッチが大きくなる回転ネジ棒を、一列に並ぶ栽培プレートの並び方向に沿わせて配置するとともに、複数の栽培プレートを各々の位置で回転ネジ棒のネジに係合させ、これにより、回転ネジ棒を駆動回転させることで、栽培プレートの夫々を栽培終了部の側へ自動的に移動させるとともに、その移動に伴い、一列に並ぶ栽培プレートのプレートピッチを栽培終了部の側ほど自動的に大きくする栽培設備が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-308410号公報
【文献】特開平3-127919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1が提案する栽培設備では、栽培植物の成長に伴い複数の栽培プレートの夫々を栽培終了部の側へ移動させる度に、隣り合う栽培プレートどうしの間に介装するスペーサを幅の大きなスペーサに交換する必要があって、そのスペーサ交換に多大な手間と労力を要し、この為、作業者の負担が大きくなる問題がある。
【0007】
また、特許文献2が提案する栽培設備では、栽培プレートの移動が自動化されるものの、特殊な回転ネジ棒を用いる大掛かりな駆動機構を要するため、設備コストが大きくなる問題がある。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業者負担の増大や設備コストの増大を回避しながら、プレート経路の面積利用率を高めて栽培植物の生産性を向上する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は栽培設備に係り、その特徴は、
始端を栽培開始部とし終端を栽培終了部とするプレート経路を設定し、
各々が栽培植物を保持する複数の栽培プレートを、前記プレート経路の伸長方向に一列に並べた状態で前記プレート経路に設置するとともに、
それら栽培プレートの夫々が保持する栽培植物が成長するほど、それら一列に並べた複数の栽培プレートを、前記プレート経路に沿って前記栽培終了部の側へ移動させる栽培設備であって、
前記栽培プレートは、隣り合う栽培プレートどうしが接する状態で前記プレート経路の伸長方向に一列に並べて設置し、
前記プレート経路には、前記プレート経路の横幅方向をレール間隔方向として前記プレート経路の伸長方向に延びる一対のレールを設け、
前記栽培プレートの夫々には、前記一対のレールに対して各別に係合した状態で前記一対のレールにより前記プレート経路の伸長方向への移動が案内される一対の被案内部を、前記栽培プレートの長尺方向における一端側と他端側とに振り分け配置した状態で設け、
前記一対のレールは、前記プレート経路の横幅方向における前記レール間隔が前記栽培終了部の側ほど縮小する状態に配置し、
前記栽培プレートが前記栽培終了部の側へ移動するほど、前記一端側の被案内部と前記他端側の被案内部との前記プレート経路の伸長方向における位相差の拡大により前記レール間隔の縮小が吸収されることで、前記栽培プレートの長尺方向が前記プレート経路の伸長方向に沿う側に前記栽培プレートの姿勢が変化し、それに伴い、互いに接する隣り合う前記栽培プレートの前記プレート経路の伸長方向における中心間距離が拡大する構成にしてある点にある。
【0010】
この第1特徴構成では(
図3,
図4参照)、栽培プレート6の長尺方向cにおける一端側と他端側とに振り分けて各々の栽培プレート6に設けた一対の被案内部10a,10bを一対のレール9a,9bに対し各別に係合させた状態で、それら一対の被案内部10a,10bのプレート経路伸長方向bへの移動(即ち、栽培プレート6の移動)を一対のレール9a,9bに案内させながら、一列に並ぶ複数の栽培プレート6を、それら栽培プレート6が保持する栽培植物Wの成長に伴い、プレート経路3に沿って栽培終了部5の側に移動させる。
【0011】
このとき、一対のレール9a,9bのレール間隔dが栽培終了部5の側ほど縮小していることで、一対の被案内部10a,10bを構成する一端側の被案内部10aと他端側の被案内部10bとは、それら被案内部10a,10bのプレート経路伸長方向bにおける位相差eの拡大でレール間隔dの縮小を吸収する状態になり、これに伴い、一対の被案内部10a,10bの並び方向である栽培プレート長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側へ傾く形態で、平面視において栽培プレート6の姿勢が変化する。
【0012】
そして、隣り合う栽培プレート6はプレート経路伸長方向bにおいて接しているから、栽培プレート長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側へ傾く形態で、それら隣り合う栽培プレート6夫々の姿勢が変化すると、それら隣り合う栽培プレート6のプレート経路伸長方向bにおける中心間距離(即ち、隣り合う栽培プレート6のプレートピッチp)が拡大し、これにより、栽培プレート6の栽培終了部5の側への移動が進んで、栽培プレート長尺方向cの傾き角度θが大きくなるほど、隣り合う栽培プレート6のプレートピッチpが大きくなる。
【0013】
即ち、この第1特徴構成によれば、プレート経路3上では、隣り合うものどうしが接して同じ側に傾く複数(多数)の栽培プレート6が、栽培終了部5の側に位置する栽培プレート6ほどプレート経路伸長方向bに沿う側への傾き角度θが漸次的に大きくなった状態で、プレート経路伸長方向bに一列に並ぶことになり、この栽培プレート列において、栽培開始部4の側では、各栽培プレート6の傾き角度θが未だ小さくて、隣り合う栽培プレート6のプレートピッチpも未だ小さいのに対し、栽培終了部5の側では、各栽培プレート6の傾き角度θが大きくなって、それに伴い、隣り合う栽培プレート6のプレートピッチpも大きくなる。
【0014】
したがって、この第1特徴構成によれば、栽培植物Wの成長が進んだ栽培終了部5の側において隣り合う栽培プレート6の夫々に保持された栽培植物Wどうしが相互干渉する状態になることを回避しながらも、栽培植物Wが未だ幼い栽培開始部4の側において隣り合う栽培プレート6の夫々に保持された栽培植物Wどうしの間に無駄な空きスペースが生じることを回避することができ、これにより、プレート経路3の面積利用率を高めて、栽培植物Wの生産性を高めることができる。
【0015】
また、栽培プレート6どうしの間にスペーサを介装する作業や、介装されているスペーサを幅の大きなスペーサに交換する作業も不要であるから、作業者負担の増大を招くこともなく、さらに、特殊で大掛かりな駆動機構を装備せずとも栽培プレート6のプレートピッチpを的確に変化させることができるから、設備コストの増大を招くこともない。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記栽培プレートのうち、隣り栽培プレートが接するプレート縁部分は、平面視において前記長尺方向に延びる直線形状にしてある点にある。
【0017】
つまり(
図4参照)、栽培プレート6は栽培終了部5の側に移動するほど漸次的に傾き角度θが大きくなることから、隣り合う栽培プレート6にしても傾き角度θには差があり、このため、隣り合う栽培プレート6どうしの接触は平面視において点接触となる。
【0018】
これに対し、上記のように、栽培プレート6のうち隣りの栽培プレート6が接するプレート縁部分14,15の平面視形状を、栽培プレート6の長尺方向cに延びる直線形状にしておけば、それら栽培プレート6の長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側に傾く状態に栽培プレート6が姿勢変化する際、隣りの栽培プレート6との接点xを、直線形状のプレート縁部分14,15により案内する状態で、その直線形状のプレート縁部分14,15に沿って円滑に移動させることができる。
【0019】
したがって、上記第2特徴構成によれば、一列に並ぶ栽培プレート6の各々が両隣りの栽培プレート6と接する構造でありながらも、栽培終了部5の側への移動に伴う各栽培プレート6の傾動が円滑となり、また、そのことで、一列に並ぶ複数の栽培プレート6の栽培終了部5の側への移動も円滑になる。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記プレート経路は養液槽内の養液面上に配置し、
前記栽培プレートは、栽培植物の根が前記養液槽内の養液に浸かる状態で栽培植物を保持し、
前記プレート経路と前記養液槽内の養液面との間には、前記養液槽内の養液が光に晒されるのを防止する遮光板を配置し、
この遮光板には、前記プレート経路に設置した前記栽培プレートが保持する栽培植物の根を貫通させるスリットを、前記栽培開始部から前記栽培終了部まで前記プレート経路に沿って延びる状態に形成してある点にある。
【0021】
この第3特徴構成によれば(
図2,
図3参照)、養液槽1内の養液Lが植物の栽培に要する自然光や電灯光に晒されることを遮光板2により防止することができ、また、栽培終了部5の側ほど栽培プレート6のプレートピッチpが大きくなって、スリット8のうち隣り合う栽培プレート6どうしの間に栽培植物Wの貫通が無いスリット部分が生じるにしても、栽培終了部5の側では栽培プレート6が前述の如く平面視においてプレート経路伸長方向bに沿う側に傾いて、栽培植物Wの貫通が無いスリット部分を部分的にせよ覆う状態になることで、養液槽1内の養液Lが光に晒されることに原因する養液L中での藻類の発生を一層効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記栽培プレートの平面視形状は、両隣りの栽培プレートが各別に接する長尺側の平行な対向2辺と、それら長尺側の平行な対向2辺の端部どうしを結ぶ短尺側の平行な対向2辺とからなる平行四辺形であって、かつ、
前記栽培プレートが前記レール間隔の縮小により傾くのに伴い平面視で前記スリットに近付く側の対角部どうしを結ぶ対角線が長尺側の対角線となる平行四辺形にしてある点にある。
【0023】
この第4特徴構成によれば(
図3、
図4、
図5参照)、栽培プレート6の平面視形状を、栽培プレート6がレール間隔dの縮小により傾くのに伴い平面視でスリット8に近付く側の対角部どうしを結ぶ対角線が長尺側の対角線18となる平行四辺形にしてあることで、栽培終了部5の側ほど栽培プレート6のプレートピッチpが大きくなって、スリット8のうち隣り合う栽培プレート6どうしの間に栽培植物Wの貫通が無いスリット部分が生じることに対し、栽培植物Wの貫通が無いスリット部分を、平行四辺形の栽培プレート6における長尺側の対角線部分18をもって一層効果的に覆うことができ、これにより、養液槽1内の養液Lが光に晒されることに原因する養液L中での藻類の発生を一層効果的に防止することができる。
【0024】
本発明の第5特徴構成は、第1~第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記プレート経路を、前記プレート経路の横幅方向に並べて配置し、
それらプレート経路の夫々において、複数の前記栽培プレートを、隣り合う栽培プレートどうしが接する状態で前記プレート経路の伸長方向に一列に並べて設置し、
それら複数のプレート経路の夫々について、前記栽培終了部の側ほど前記レール間隔が縮小する前記一対のレールを設けるとともに、
それら複数のプレート経路の夫々に配置する前記栽培プレートの夫々について、前記一対の被案内部を設けてある点にある。
【0025】
この第5特徴構成によれば、基本的には、プレート経路の横幅方向に並ぶ複数のプレート経路3の各々について前記した第1特徴構成による作用効果を得ることができる。
【0026】
また、複数のプレート経路を横幅方向に並べて設けるのに代え、横幅が大きな1つのプレート経路を設けて、その1つのプレート経路に、プレート経路横幅方向における寸法が大きな大型の栽培プレートを一列に並べて設置するのでは、その大型の栽培プレートがプレート経路伸長方向に沿う側に傾いた状態でプレート経路における栽培終了部に至った際、栽培終了部において大型な栽培プレートの周りに大きな無駄スペースが生じる。
【0027】
これに対し、上記第5特徴構成によれば(
図1参照)、複数のプレート経路3を並置したプレート経路並置群における栽培終了部5側の端部においても、栽培プレート6がプレート経路3の伸長方向b及び横幅方向aの夫々において密に存在する状態を保つことができて、上記の如き大きな無駄スペースの発生を回避することができ、その分、面積利用率を一層高めて栽培植物Wの生産性を一層高めることができる。
【0028】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成に実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記プレート経路の横幅方向で互いに隣り合う一方側の前記プレート経路と他方側の前記プレート経路とについて、
前記一方側のプレート経路に設置する前記栽培プレートにおける前記他方側のプレート経路に近接する部分と、前記他方側のプレート経路に設置する前記栽培プレートにおける前記一方側のプレート経路に近接する部分とは、
それら近接部分夫々の動作位置が上下方向にずれていて、それら栽培プレートが前記レール間隔の縮小により傾くときの相互干渉が、前記動作位置の上下方向におけるずれにより回避される構造にしてある点にある。
【0029】
この第6特徴構成によれば(
図2,
図5,
図6参照)、一方側のプレート経路3に設置する栽培プレート6の他方側プレート経路3に近接する部分6bと、他方側のプレート経路3に設置する栽培プレート6の一方側プレート経路3に近接する部分6aとの相互干渉が、それら近接部分6a,6b夫々の動作位置の上下方向のズレにより回避されることで、隣り合うプレート経路3を横幅方向aにおいて一層近接させた状態、あるいは、隣り合うプレート経路3を横幅方向aにおいて平面視で一部重複させた状態に配置することができ、その分、面積利用率をさらに高めて栽培植物Wの生産性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図4】プレートピッチの変化形態を説明する概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1,
図2は水耕式の栽培設備を示し、1は養液Lを貯留する養液槽であり、この養液槽1の上向き開口部には、養液槽1内の養液Lが植物Wの栽培に必要な自然光や電灯光に晒されることを防止する蓋状の遮光板2を設けてあり、これにより、養液槽1内における養液L中での藻類の発生を防止する。
【0032】
遮光板2の上面側には、その板上域を養液槽1の短辺方向aにおいて等分に分割する形態で、平面視において養液槽短辺方向aに並ぶ複数のプレート経路3を設定してあり、各プレート経路3において養液槽長辺方向bにおける一端部(即ち、経路始端部)は栽培開始部4とし、また、養液槽長辺方向bにおける他端部(即ち、経路終端部)は栽培終了部5としてある。
【0033】
各プレート経路3には、栽培植物Wを保持する
図5、
図6に示す如き複数の栽培プレート6を、プレート経路3の伸長方向である養液槽長辺方向bに一列に並べて設置してあり、これら栽培プレート6は、プレート経路伸長方向bにおいて隣り合う栽培プレート6どうしが接する状態にして一列に並べてある。
【0034】
各プレート経路3における栽培プレート6の列は、それら栽培プレート6の夫々が保持する栽培植物Wが成長するのに伴い栽培終了部5の側に段階的に移動させ、この移動で栽培終了部5に至った栽培プレート6は、それが保持する成長済み栽培植物Wの収穫のためにプレート経路3から取り外し、この取り外しにより栽培終了部5に空いたスペース分だけ、後続する栽培プレート6の列を栽培終了部5の側に移動させる。
【0035】
また、この移動で栽培開始部4に生じた空きスペースに、未だ幼い栽培植物Wを保持する新たな栽培プレート6を設置し、これら栽培プレート6の取り外し、移動、設置を繰り返す形態で、各プレート経路3において植物W(特に葉菜類)の栽培生産を繰り返す。
【0036】
栽培プレート6には、その長尺方向cにおける中央部に挿込孔7を形成してあり、この挿込孔7に栽培植物Wを根wrの側から挿し込むことで、栽培植物Wは栽培プレート6に保持される。
【0037】
各プレート経路3の底壁となる遮光板2には、栽培プレート6が保持する栽培植物Wの根wrを貫通させるスリット8を形成してあり、このスリット8は、プレート経路3ごとに、栽培開始部4から栽培終了部5までプレート経路3に沿って延びる状態に形成してある。
【0038】
即ち、栽培プレート6の挿込孔7に挿し込まれた栽培植物Wの根wrはスリット8を貫通して養液槽1内に挿入され、また、栽培終了部5の側への栽培プレート6の移動に伴う根wrの移動は、プレート経路3に沿って延びるスリット8により許容され、これにより、栽培プレート6に保持された栽培植物Wの根wrは、栽培開始部4から栽培終了部5への栽培プレート6の移動期間(即ち、栽培期間)を通じて養液槽1内の養液L中に浸けられた状態に保たれる。
【0039】
また、遮光板2には、各プレート経路3の横幅方向である養液槽短辺方向aをレール間隔方向としてプレート経路伸長方向b(即ち、養液槽長辺方向)に延びる一対のレール9a,9bをプレート経路3ごとに設けてある。
【0040】
これに対し、各プレート経路3に設置する栽培プレート6の夫々には、一対のレール9a,9bに対して各別に係合した状態で、それら一対のレール9a,9bによりプレート経路伸長方向bへの移動が案内される一対の被案内部10a,10bを設けてあり、これら一対の被案内部10a,10bは、栽培プレート6の長尺方向cにおける一端側と他端側とに振り分け配置して各栽培プレート6に設けてある。
【0041】
そして、プレート経路3ごとに装備する一対のレール9a,9bは、プレート経路横幅方向a(即ち、養液槽短辺方向)におけるレール間隔dが栽培終了部5の側ほど漸次的に縮小する状態に配置してある。
【0042】
即ち、各プレート経路3において、栽培植物Wの成長に伴い栽培プレート6の列を一対のレール9a,9bによる案内下で栽培終了部5の側に移動させるとき、一対のレール9a,9bのレール間隔dが栽培終了部5の側ほど縮小していることで、一対の被案内部10a,10bを構成する一端側の被案内部10aと他端側の被案内部10bとは、
図4に示すように、それら被案内部10a,10bのプレート経路伸長方向bにおける位相差eの拡大でレール間隔dの縮小を吸収する状態になり、これに伴い、一対の被案内部10a,10bの並び方向である栽培プレート長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側へ傾く形態で、平面視において栽培プレート6の姿勢が変化する。
【0043】
そして、隣り合う栽培プレート6はプレート経路伸長方向bにおいて接しているから、栽培プレート長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側へ傾く形態で、それら隣り合う栽培プレート6夫々の姿勢が変化すると、それら隣り合う栽培プレート6のプレート経路伸長方向bにおける中心間距離(即ち、隣り合う栽培プレート6のプレートピッチp)が拡大し、これにより、栽培プレート6の栽培終了部5の側への移動が進んで、栽培プレート長尺方向cの傾き角度θが大きくなるほど、隣り合う栽培プレート6のプレートピッチpが大きくなる。
【0044】
したがって、各プレート経路3について、
図3に示すように、栽培植物Wが未だ幼い栽培開始部4の側では、隣り合う栽培プレート6の夫々に保持された栽培植物Wどうしの間に無駄な空きスペースが生じるのを回避して、プレート経路3における面積利用率を高めながら、栽培植物Wの成長が進んだ栽培終了部5の側では、隣り合う栽培プレート6の夫々に保持された栽培植物Wどうしが相互干渉する状態になることをプレートピッチpの拡大により防止することができる。
【0045】
また、
図1に示すように、遮光板2の板上域を養液槽短辺方向aにおいて複数に分割する形態で、養液槽短辺方向a(即ち、プレート経路3の横幅方向)に並ぶ複数のプレート経路3を設定することで、遮光板2上に横幅寸法の大きな1つのプレート経路のみを設定して、その横幅寸法の大きなプレート経路に大型な栽培プレートを並べて配置するのに比べ、栽培プレート6の長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側に傾く栽培終了部5の側においても、養液槽短辺方向a及び養液槽長辺方向bの夫々において栽培プレート6が密に存在する状態を保つことができ、このことからも、養液槽1上の面積利用率を一層高く確保することができる。
【0046】
栽培プレート6に設ける被案内部10a,10bは、脚部11の先端に拡径部12を設けた構造し、これに対し、各レール9a,9bは、被案内部10a,10bにおける拡径部12を下方側から抱え込むC字状の断面形状にしてある。
【0047】
つまり、
図2に示すように、栽培プレート6における被案内部10a,10bの拡径部12を各レール9a,9bのC字状断面形状により下方側から抱え込むことで、被案内部10a,10bが各レール9a,9bから上方に外れることを防止してある。
【0048】
また、
図3に示すように、各レール9a,9bの栽培開始部4の側における端部、及び、栽培終了部5の側の端部には、各レール9a,9bのC字状断面形状に対する拡径部12の出し入れを許容する大径の着脱孔13を形成してあり、栽培開始部4では、被案内部10a,10bにおける拡径部12を着脱孔13を通じて各レール9a,9bにおけるC字状断面形状の内部に挿入しながら、栽培プレート6をプレート経路3における栽培開始部4に設置する。
【0049】
また、栽培終了部5では、被案内部10a,10bにおける拡径部12を着脱孔13を通じて各レール9a,9bにおけるC字状断面形状の内部から抜き出しながら、栽培プレート6をプレート経路3における栽培終了部5から取り外す。
【0050】
栽培プレート6の平面視形状は、両隣りの栽培プレート6が各別に接する長尺側の平行な対向2辺14,15と、それら長尺側の平行な対向2辺14,15の端部どうしを結ぶ短尺側の平行な対向2辺16,17とからなる平行四辺形であって、かつ、栽培プレート6がレール間隔dの縮小により傾くのに伴い平面視でスリット8に近付く側の対角部どうしを結ぶ対角線が長尺側の対角線18となる平行四辺形にしてある。
【0051】
つまり、栽培プレート6の平面視形状をこのような平行四辺形にすることで、前述したレール間隔dの縮小により栽培プレート6の長尺方向cがプレート経路伸長方向bに沿う側に傾く状態に栽培プレート6が姿勢変化する際、隣りの栽培プレート6との接点xを、直線形状のプレート縁部分である長尺側辺14,15により案内する状態で、その直線形状のプレート縁部分14,15に沿って円滑に移動させることができ、これにより、一列に並ぶ栽培プレート6の各々が両隣りの栽培プレート6と接する構造でありながらも、栽培終了部5の側への移動に伴う各栽培プレート6の傾動が円滑になり、また、そのことで、一列に並ぶ複数の栽培プレート6の栽培終了部5の側への移動も円滑になる。
【0052】
また、栽培終了部5の側ほど栽培プレート6のプレートピッチpが大きくなって、スリット8のうち隣り合う栽培プレート6どうしの間に栽培植物Wの貫通が無いスリット部分が生じることに対し、栽培植物Wの貫通が無いスリット部分を、平行四辺形の栽培プレート6における長尺側の対角線18部分をもって効果的に覆うことができ、これにより、養液槽1内の養液L中での藻類の発生を一層効果的に防止することができる。
【0053】
各栽培プレート6は、その長尺方向cにおける一端側部分6aと他端側部分6bとが上下方向において離間した側面視クランク状の構造にしてあり、これにより、養液槽短辺方向aにおいて隣り合う一方側と他方側とのプレート経路3について、一方側のプレート経路3に設置する栽培プレート6における他方側のプレート経路3に近接する部分6b(即ち、上記の他端側部分)の動作位置と、他方側のプレート経路3に設置する栽培プレート6における一方側のプレート経路3に近接する部分6a(即ち、上記の一端側部分)の動作位置とが上下方向においてズレるようにしてある。
【0054】
即ち、一方側のプレート経路3に配置した栽培プレート6と、他方側のプレート経路3に配置した栽培プレート6とが、それら栽培プレート6の傾きに伴い相互干渉することを、上記近接部分6a,6b夫々の動作位置の上下方向におけるズレにより確実に回避するようにしてあり、これにより、一方側のプレート経路3と他方側のプレート経路3との養液槽短辺方向a(即ち、プレート経路横幅方向)における並びピッチを小さくして、養液槽1上の面積利用率を一層高く確保できるようにしてある。
【0055】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
【0056】
上述した実施形態では、養液槽1の槽上において栽培プレート6を並べる形態の栽培設備を例示したが、本発明は、各々の栽培プレート6において、栽培プレート6上で栽培植物Wに養液ないし水を与える形態の栽培設備にも適用できる。
【0057】
本発明の実施において、栽培プレート6の具体的な形状や構造は前述の実施形態で示した形状、構造に限らず種々の変更が可能であり、例えば、栽培プレート6の平面視形状を長方形や楕円形にしたり、1つの栽培プレート6に複数に栽培植物Wを保持させるなどしてもよい。
【0058】
本発明の実施において、栽培終了部5の側ほどレール間隔dが小さくなる状態に配置する一対のレール9a,9bにおける個々のレールの具体的な形状や構造、並びに、栽培プレート6に設ける一対の被案内部10a10bにおける個々の被案内部の具体的な形状や構造も、前述の実施形態で示した形状、構造に限らず、種々の変更が可能である。
【0059】
プレート経路3は、直線状の経路に限らず、例えば、蛇行状の経路であってもよく、また、隣り合うプレート経路3では栽培開始部4と栽培終了部5とが反転する状態にして複数のプレート経路3をプレート経路横幅方向aに並べて配置し、これにより、1つのプレート経路3において栽培終了部5に至った栽培プレート6を隣りのプレート経路3における栽培開始部4に設置換えして栽培植物Wの栽培を継続させる作業形態を採用するようにしてもよい。
【0060】
さらに、本発明の実施においては、プレート経路3に並ぶ複数の栽培プレート6を、レール間隔dの縮小による栽培プレート6の姿勢変化を許容する状態で、駆動力により栽培終了部5の側に移動させる栽培プレート搬送装置を付加的に装備してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、収穫を目的として野菜を栽培する栽培設備に限らず、研究などを目的として植物を栽培する栽培設備にも利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
4 栽培開始部
5 栽培終了部
3 プレート経路
W 栽培植物
6 栽培プレート
b プレート経路伸長方向
a プレート経路横幅方向
9a,9b 一対のレール
10a,10b 一対の被案内部
c 栽培プレート長尺方向
d レール間隔
e
位相差
p
プレートピッチ(中心間距離)
1 養液槽
L 養液
wr 栽培植物の根
2 遮光板
8 スリット
14,15 プレート縁部分(長尺側の対向2辺)
16,17 短尺側の対向2辺
18 長尺側の対角線
6a,6b 近接部分(一端側部分,他端側部分)