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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】浚渫用取込口構造体
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20220119BHJP
   E02F 3/92 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E02F3/88 J
E02F3/92 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017148852
(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公開番号】P2019027189
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-03-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517270570
【氏名又は名称】松原 岩夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勝利
(72)【発明者】
【氏名】松原 岩夫
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118088(JP,A)
【文献】特開2018-071104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0299972(US,A1)
【文献】登録実用新案第3196857(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/88
E02F 3/92
E02F 3/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と
上面の進行方向後端に配置される平らな面である背面と、
側面と、
背面下端近傍に設けられる浚渫対象となる泥や砂などを吸い上げるための取込口と、
進行方向に向けた開口であって、上面略前端から平らな面である背面下端まで形成される開口と、
上面略前端から平らな面である背面下端まで形成されて取込口が詰まるサイズの物を取込口に入れないための柵と、
自身を水底上で移動させるための移動用シャフトと、
平らな面である背面下端にて前記側面間に渡される浚渫対象をすくい上げるための前方に張り出した板状の爪部と、を有する浚渫用取込口構造体。
【請求項2】
前記爪部は角度調整可能である請求項1に記載の浚渫用取込口構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池、湖、沼など(以下「池等」という。)の水底に堆積している汚泥を浚い取る浚渫機において泥土を取り込むための浚渫用取込口構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により拡散した放射性セシウムによる土壌汚染の対策が急がれている。特に放射性セシウムを吸着した土壌が降雨などにより水域に流入し池等の閉鎖した水域の水底に集積し、放射性セシウムの高濃度化が生じている。そして、このような閉鎖性水域が農業用のため池である場合には耕作地を再汚染し、漁場である場合には水産物の汚染を招くこととなり早急な対策が求められている。
【0003】
水底での泥土汚染は表層において汚染度が高く、深いところでの汚染度は低くなることがわかっている。したがって、水底表層の深さ数センチメートルから十数センチメートル程度の泥土を浚渫機により浚い取ることで、相当量の汚染泥土を除去することができる。特許文献1には、従来の組み立て作業用台船が、特許文献2には、従来型の浚渫機が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されるような従来の組立式作業台船は、単に浮体の集合体であって、浚渫用装置を備えたものではないことから、浚渫する場合には、別途浚渫機を用意する必要がある。また、特許文献2に開示されるような従来の浚渫機を用いる場合、水底が固い場合や石などを多く含む場合であっても効率よく泥土の吸引ができるようにするため、例えば、先端に刀を備える撹拌羽を回転軸に設け、この撹拌羽を回転させて水底をかき回して泥土の吸引を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-37181号公報
【文献】特開2008-31745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水底の汚泥を回収する場合において最も注意を払うべきは、汚泥をしっかりとすくい上げること、並びに汚泥を巻き上げて水中に拡散させてしまわないようにすることである。すなわち、水底において鎮静化している汚泥を水中に拡散させてしまうことのないよう行わなければならない。しかしながら、上記特許文献1、特許文献2の発明はどちらも用途が限定されていない作業用の台船であり、仮にこれを用いて除染するとなると、台船上に別途浚渫装置を設置することになり、従来型の浚渫機によっては除染すべき池等の水底の表面のみを静かにすくい取ることが困難であり、移動の際に取り込まれた汚泥が巻き上がってしまうことがあるという問題があった。そのため,浚渫構造体の移動において浚渫対象を効率よく浚う技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は,そのような課題を解決するため,進行方向後端部にて側面間にわたされる浚渫対象をすくい上げるための爪部を有する浚渫用取込口構造体を提供する。具体的には,上面と、上面の進行方向後端に配置される背面と、側面と、背面下端近傍に設けられる浚渫対象となる泥や砂などを吸い上げるための取込口と、進行方向に向けた開口と、上面略前端から背面下端に向けて取込口が詰まるサイズの物を取込口に入れないための柵と、自身を水底上で移動させるための移動用シャフトと、進行方向後端部にて前記側面間に渡される浚渫対象をしっかりとすくい上げるための前方に張り出した爪部と、を有する浚渫用取込口構造体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により,浚渫用取込口構造体の移動において、進行方向後端部にて前記側面間に渡される浚渫対象をしっかりとすくい上げる機能を備えた浚渫用取込口構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】浚渫用取込口構造体の基本的な構造を示す斜視図(前方より見たもの)
図2】浚渫用取込口構造体における爪部位置の構造図(斜め上から見たもの)
図3】浚渫用取込口構造体における爪部位置の構造図(斜め下からみたもの)
図4】浚渫用取込口構造体における爪部位置の側面図
図5】浚渫用取込口構造体における爪部角度調整機能を説明する側面図
図6】浚渫用取込口構造体の構造図(上から見たもの)
図7】爪部の役割に関する説明図
図8】爪部の役割を汚泥の量との関係で示す説明図
図9】爪部の形状のバリエーションの説明図
図10】浚渫用取込口構造体とフロート集合の全体図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本件発明の実施形態を説明する。以下実施形態1は請求項1に、実施形態2は請求項2、実施形態3は請求項3にそれぞれ対応している。
<実施形態1>
【0011】
<実施形態1概要>
【0012】
本実施形態の浚渫用取込口構造体は、背面下端部に前方へ張り出した爪部を有し、池等の水底上に堆積している放射性セシウムなど有害物を含む汚染泥土の浚渫時、拡散を抑えつつ、しっかりと効率的に取り込むことができる。
<構成>
【0013】
本浚渫用取込口構造体は、上面(0101)、背面(0102)と、側面(0103)と、取込口(0104)と、開口(0109)と、柵(0106)と、移動用シャフト(0107)と、底面にあり前方へ張り出した爪部(0105)とからなる。
以下、各部の構成について説明する。
<上面>
【0014】
「上面」(0101)は本浚渫用取込口構造体の上部に位置し、水底上で移動するための移動用シャフト(0107)を備える。その移動用シャフトの長さは水底までの距離に合わせて調整できる。
【0015】
「上面」(0101)は開口から浚渫用取込口構造体の内部に取り込んだ汚泥を取込口へと運ぶのと同時に、汚泥の巻き上がりを抑える機能を有する。
<背面>
【0016】
「背面」(0103)は上面の進行方向後端に配置される。「背面」には開口から取り込まれた放射線セシウムの汚染泥土を取込管へ送る取込口が備わる。
<側面>
【0017】
「側面」(0103)は本体の進行方向左右に設置され、上面に対し前端から後端に緩やかに高さが高くなることで、取り込んだ汚泥が左右に拡散することを防止する。また浚渫用取込口構造体の強度を確保する。側面が上面と接する先端部には開口(0109)、柵(0106)が備わり、柵から取り込まれる汚泥を安定的に取込管へ送り込む。
<取込口>
【0018】
「取込口」(0104)は、背面下端近傍に設けられ、開口より浚い取った放射線セシウムに汚染した泥や砂などを取込管へ送り出す。取込管は水上のフロートを経由し、池の縁等陸上にある保管場所へ汚泥を送る。
<開口>
【0019】
「開口」(0109)は、浚渫のため、水底の泥土を浚い取るよう構成される浚渫用取込口の上面、背面、側面に挟まれる形で進行方向に設置されている。開口は前端から背面まで続いており、水底面上の汚泥の巻き上げを抑え、また取り込む汚泥を取込管に送り出すことにより、汚泥の中での進行を可能としている。
<柵>
【0020】
「柵」(0106)は開口部(0109)に備わり、取込時のつまりの原因となりうるサイズの枝など異物の侵入を妨げるものである。池等の水底に滞積する木枝の大きさ等を考慮し、柵間及び柵と側面の幅が略8cm以下となるよう設定することが好ましい。
【0021】
また「柵」の先端は本体下面において後方に向け曲げられる。「柵」により、枝等の異物を遮断し、池等の水底に堆積される砂、小石、泥など汚染された汚泥を取り込む。
<移動用シャフト>
【0022】
「移動用シャフト」(0107)は、本浚渫用取込口構造体の上面に設けられ自身を池等の水底上で移動させるための支持柱である。移動用シャフトの長さを調節することにより水深に対応し、池等の水中を必要以上にかき回すことなく水底表面の汚泥を取り込める。
【0023】
図10は爪部を有する浚渫用取込口構造体(1001)、移動用シャフト(1002)、櫓(1003)を有するフロート集合体(1004)からなる全体の構成図である。移動用シャフトを水上で受けるフロート集合体の櫓は、レール(1005)上に設置され、車輪(1006)によりフロート上での移動が可能であり、池等の状況に対応してより効率的な浚渫作業を行うことができる。
<爪部>
【0024】
「爪部」(0105)は浚渫用取込口構造体の後端下部に前方に張り出し備えられる。背面の形状によりその前後の位置は異なるが、いずれも下部であり、その役目が最も効果的に果たせるよう設置される。代表的なものは前記側面間に渡される浚渫対象をしっかりすくい上げるため背面の下部から前方に張り出すもので、池等の水底より巻き上げられる濁りである浮泥を吸い取るために設置される。
【0025】
図2は浚渫用取込口構造体の内部構造図である。内部の構造がわかるよう上面を取り払い、斜め上から内部を概観したものである。図2において、背面の形状は取り込んだ汚泥を取込口に送りやすいV字型となっているため、爪部(0201)は後端よりも前端に近づいた逆三角形の底面(0202)の前端に備わり、柵(0204)を通過し側面(0203)間に渡される池等の汚泥をしっかりとすくい取込口(0205)から取込管(0206)へ送る役目を果たしている。このようにV字型背面の良さをさらに生かせる位置に爪部が備わっている。
【0026】
図3は浚渫用取込口構造体を斜め下から見た内部構造図である。背面が平面の場合のため、爪部は背面に接している形になる。上面前端に設置され後端へ向かう柵は、説明上すべて描かれておらず途切れた状態となっている。柵(0303)を通過し側面(0302)間に渡される池等の汚泥は取込口(0304)から取込管(0305)へ送られる。同時に爪部が内部に取り込んだ汚泥も取込口から取込管へと送られる。
【0027】
図4は爪部を備えた取込口構造体の側面図である。側面(0402)間を渡される池等の水底の汚泥は、爪部(0401)により効率的に、拡散することなく取込管(0403)へ送られる。爪部は後端下部に前方に張り出し備えられており、図からわかるように、備えがない場合取りこぼすような、背面より下の池等の水底面上にある汚泥その他の異物を取り込むことができる。この場合異物の硬度は一定の硬度以下であることが取り込みの条件となるが、水底面が必ずしも平面であるとは限らないため、汚泥取り込みは爪部の設置により大幅に改善される。
【0028】
図7は水底に堆積する汚泥と爪部の有効性を示す取込口構造体の側面図である。図にあるように浚渫用取込口構造体の作業と移動に呼応して、堆積する汚泥が斜面となる。爪部はこの斜面に対応し、爪部がない場合には取り込めない斜面となっている汚泥を取り込むことができる。図では取込口構造体が汚泥を浚渫しているが、水底の角度の影響で浚渫用取込口構造体の後ろの部分と斜面の間に隙間ができており、爪部がなければ、十分に汚泥を取り込むことができない。図の爪部にある白矢印は、爪部がない場合取り込むことができない汚泥が、爪部の設置により取り込めることを示している。
【0029】
図8は池等の水底に堆積している汚泥と浚渫用取込口構造体の位置に関する説明図となっている。図8(a)は浚渫用取込口構造体の上面略前端が汚泥の下に埋もれており、浚渫用取込口構造体の上部から上にある汚泥を取り込むことができず、上部では泥土が拡散している。一方背面下部には爪部があり、意図どおりに汚泥の取り込みが行われる。図8(b)は浚渫用取込口構造体の上面先端に庇を取り付けた場合であるが、庇が汚泥堆積の高さよりもやや高いため汚泥を拡散させずに取り込むことができるのに加え、爪部があるため、爪部がない場合に比べ、汚泥を下部からもしっかり取り込むので、取込効率は高くなっている。図8(c)のように浚渫用取込口構造体の略前端が堆積する泥土よりもはるかに高いところにある場合、爪部がない場合は取り込みの効率は落ちるが、爪部がある場合は、他の場合と同様、汚泥の取込み、汚泥の拡散防止に効果を発揮することがわかる。
【0030】
図9は爪部主要部形状の上から見た場合のバリエーションを示している。爪部は形状が異なることにより機能が変化する。図9(a)は上から見て標準の長方形となっており、これまでの説明はこの形状に基づいている。上記の説明にある通常の浚渫作業に対応できる形状ということができる。図9(b)は進行方向が鋭角となる台形の形状である。水底面上の汚泥の硬度が通常より高い場合や、水底に硬い石等など多少の障害物がある場合などに有効である。先端を頂点とする三角形の部分が図9(a)の面積よりも大きくなるため、汚泥を取り込む範囲自体が広くなることにより泥土の取り込み量が多くなるため、効率がよい。図9(c)は図9(b)では先端部が角度を持ち三角形となるのに対し、中央の頂点を引っ張られるように左右が円弧を描いているものである。そのため図9(b)よりもさらに硬度が高い汚泥に有効であり、水底の石等異物に対する対応力が高くなっている。図9(d)は進行方向前面が図(b)と違い弧を描いているものであり、爪部自体がこれらのバリエーションの中では最も大きな面積を持つため、比較的やわらかい汚泥や異物の少ない水底上の場合に汚泥を取り込む量が多く、効率的な作業ができる。
【0031】
<実施形態2概要>
<概要>
【0032】
本実施例の発明は、実施例の1の特徴に加えて、背面下端に備わる爪部(0101)が角度調整可能となっている浚渫用取込口構造体である。爪部の角度が調整可能であるため、角度を調節し汚泥の取り込みを状況に合わせてしっかり行うと同時に、浚渫用取込口構造体の移動において汚泥が巻き上がってしまうことを防止する。汚泥を効率的に取り込むためにこの浚渫用取込口構造体が取り付けられているフロート体の移動速度や汚泥の硬度、粘度などさまざまな条件を考慮しなければならないが、爪部の角度を調整することにより、爪部がない場合よりも多くの条件に比較的容易に対応できることになる。池底面の硬度が低い場合、または汚泥の粘度が低い場合は、爪部の水底面との角度を大きく、すなわち爪部を開くことにより大量の汚泥を取り込むことができる。一方汚泥の粘土が高い場合は、爪部の水底面との角度を小さくし、すなわち爪部を閉め気味にすることにより、汚泥を効率的に取り込むことができる。また作業時間を短縮する場合には、爪部を閉じ池等の水の抵抗を少なくすることができる。逆に作業時間に余裕がある場合は、取込量を優先し、爪部の角度を開きことができる。
【0033】
図5は浚渫用取込口構造体の爪部の角度調整機能に関する説明図である。爪部(0501)は角度調整用有孔金属板(0502)と爪部用のボルトとナット(0503)及び有孔金属板に使用する角度調整用ボルトとナット(0504)を使うことにより、池等の水底表面に対する爪部の角度を調整することができるため、池等の水底に堆積する汚泥の粘度ほかの条件を考慮し、最も効率的な爪部の角度を選ぶことができる。爪部を浚渫用取込口構造体の下端に有し、その角度を調節できることにより、池等の水底面に対する対応幅が広がるため、汚泥の取込効率がさらに向上する。同時に爪部により浚渫用取込口構造体の下部から拡散する汚泥を、爪部がない場合に比べしっかり取り込むことができる。
【0034】
汚泥の粘土が高く、また水底に石などの異物が想定される場合、爪部の浚渫用取込口構造体本体との角度を例えば10度前後とすることにより、異物の影響を最小限に抑えながら汚泥を取り込むことができる。反対に汚泥の粘土が低く、また水底に石などの異物が想定されないような場合、この角度を30度前後に設定することにより、大量の汚泥を効率よく取り込むことができる。角度をそれ以上広げると、例えば45度前後以上に広げると、爪部自体が進行方向に対する抵抗となり、浚渫用取込口構造体本体の進行の妨げとなることが考えられるため、注意が必要となる。
【0035】
<実施形態3概要>
<概要>
【0036】
本実施例の発明は実施例1または実施例2に記載の特徴に加え、背面は取込口を中心にV字状に形成され、爪部が逆三角形の底面の進行方向前方に設けられている浚渫用取込口構造体である。V字状の背面の泥土の効率的な取込口への送りと爪部の配置により、取込効率を高めている。V字状の背面は、進行方向略前端の開口部から異物侵入防止用の柵を通過して取り込んだ汚泥を、側面に加え背面のV字形状に沿い取込口を経て取込管へ効率的に送り込むことができる。爪部は背面ではなく、底面の逆三角形の進行方向最前端に取り付けることにより、V字状の背面の特性を損なうことなく、爪部として浚渫用取込口構造体下端の汚泥をしっかり取り込み、同時に拡散を防ぐという働きをし、効率的に取込口に汚泥を送り込むことができる。
【0037】
図6はV字型の背面を持つ浚渫用取込口構造体を斜め上から見た場合の構造説明図である。ここでは説明上一部しか描かれていない柵(0601)を通過した池等の水底の汚泥は側面(0602)間を渡り、爪部(0603)に拡散を防止され、底面(0604)に続きV字形状に配置される背面(0605)に到達し、取込口(0606)へと集められ、取込管(0607)と送られる。V字形状の背面により構成される逆三角形の底面の存在により、汚泥が滞留せずかつ拡散せず取込口に向かうことから浚渫作業が効率化される。進行方向に対し逆三角形の底面(0604)の先端に爪部を有することにより、V字形状の背面の利点と爪部の利点を同時に備えた効率の高い浚渫用取込口構造体となっている。
【0038】
このV字型の背面のV字の角度が180度よりやや狭い場合は、背面が平面の場合と変わらないため、取り込んだ汚泥の取込口への運びに対する十分な効果は得られない。背面の作るV字の角度が90度に近づくにつれて、取り込んだ汚泥の取込口への運びは効率的になり、汚泥の粘土にかかわらず効率的な取込が期待できる。これに対し背面の作るV字の角度が90度より狭くなる場合、取込口の口径を考慮して角度を決定しなければならない。90度より角度を狭くするに従い、汚泥の粘土が高い場合にはV字型の作る三角形の部分に汚泥が滞留する場合も想定され、逆にV字型の効果が減少する。
【符号の説明】
【0039】
上面:0101
背面:0102、0605
側面:0103、0203、0302、0402、0602
取込口:0104、0205、0304、0606
取込管:0206、0305、0403、0607
開口部:0109
爪部:0105、0201、0301、0401、0501、0603
爪部角度調整用有孔金属板:0502
爪部ボルトとナット:0503
角度調節用ボルトとナット:0504
柵:0106、0204、0303、0601
移動用シャフト:0107
底面:0108、0202、0604
浚渫用取込口構造体:1001
櫓:1003
フロート:1004
レール:1005
櫓の車輪:1006
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10