(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】セロファン粘着テープ巻回体
(51)【国際特許分類】
B31C 1/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
B31C1/00
(21)【出願番号】P 2017186837
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】水野 耕治
(72)【発明者】
【氏名】村上 諒
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02350369(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープをロール状態に巻回するための巻芯であって、粘着テープの幅に対応する幅と変形しないような適宜の厚みを有する紙管製の内側管状体と、該内側管状体の外周面に片面段ボールの中芯を内側としライナーを外側にして巻き付けた外側管状体を設け、
上記外側管状体の片面段ボールの厚みを0.7~0.6mmとし、中芯の段数を30cm当り120±5とし、こうした巻芯にセロファン粘着テープを巻回したセロファン粘着テープ巻回体。
【請求項2】
上記巻芯の外側管状体の片面段ボールは、上記内側管状体の外周面に水溶性の接着剤によって固定されている請求項1に記載のセロファン粘着テープ巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ用巻芯及びこの巻芯を使用した粘着テープ巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テ-プの多くは、紙製の円筒体である紙管を巻芯として巻付けたロ-ル状態で販売されている。これらの粘着テ-プはその製造の際に一定のテンションを掛けた状態で巻芯に巻取られるために、巻取られたものには内部応力ひずみが存在し、これが原因となって縮まろうとすることから、巻回された粘着テープにいわゆる竹の子現象が生じたり、巻芯の一部が潰れるなどの変形を引起すことがある。
また、粘着テ-プの種類によっては、巻回した粘着テ-プの保管中に、湿度、温度等の影響によって新たな内部応力を発生し、変形を起す場合もある。
【0003】
このような各種の変形を避けるために、巻芯にポリエチレンその他のポリオレフィンなどの独立気泡を有する発泡シ-トを巻付け、その上から粘着テープを巻回することにより、この発泡シ-トによって内部応力を吸収緩和すること等によって変形を防止するようにしている。
【0004】
このような巻芯は、粘着テ-プを使用して全て巻戻した後で廃棄されるが、巻芯を構成する紙の部分は自然環境中で分解されて行くけれども、ポリオレフィン製の発泡シ-トは分解されることがないので、これが放置された場合には環境汚染の原因となる。また、同時に多量のものを焼却処分する場合には、高い燃焼熱が発生して焼却炉を傷めるという問題もある。
【0005】
こうしたことから、出願人は先に上記巻芯に使用する発泡シートとして生分解性プラスチックを使用するものを提案した(特許文献1)。この巻芯は、廃棄後に放置されても自然に生分解されて行き、また、焼却した場合にも低い燃焼熱しか発生せず、容易に焼却処分もできることから環境に優しいものではあるが、未だコストが割高であり、広く用いることが出来るまでには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粘着テープを巻回することによって生じる内部応力ひずみを吸収して減少し、巻回された粘着テープをできるだけ正常に保持すると共に、粘着テ-プを使い切った後で廃棄される巻芯が、自然環境中でも自然に分解されて行って環境汚染の原因となることもなく、また、同時に多量のものを焼却処分する場合にも高い燃焼熱が発生して焼却炉を傷めるという問題も起さないものを、極めて経済的に得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粘着テープを巻回するための巻芯において、粘着テープの幅に対応する幅と変形しないような適宜の厚みを有する紙管で形成された内側管状体の外周面に、片面段ボールの中芯を内側にしライナーを外側にして巻き付けた外側管状体を設け、この外側管状体の片面段ボールの厚みを1.3~0.6mmとし、中芯の段数を30cm当り90~120としたものである。
また、こうした巻芯に粘着テープを巻き付けて粘着テープ巻回体とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻芯に粘着テープを確実に巻き付けることができ、巻付けの際に生じる内部応力ひずみにより縮まろうとする作用を上記外側管状体が効果的に吸収し、いわゆる竹の子現象が生じたり、巻芯の一部がつぶれるなどの変形を引起すことがない。また、粘着テ-プの種類によっては、巻回した粘着テ-プの保管中に、湿度、温度等の影響によって新たな内部応力を発生することがあるが、これも効果的に吸収して変形することを防ぐことができる。
【0010】
そして、粘着テ-プを使用して全て巻戻した後で廃棄される巻芯は、自然環境の中でも自然と分解されて環境汚染の原因となることもなく、また、同時に多量のものを焼却処分しても高い燃焼熱が発生して焼却炉を傷めるという問題も起さない。更に、極めて経済的に製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示す巻芯に粘着テープを巻付けた粘着テープ巻回体の正面図である。
【
図3】本発明の
比較例3の巻芯に粘着テープを巻き付けた粘着テープ巻回体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
巻芯1は、紙管で形成した内側管状体2を有しており、巻き付ける粘着テープの幅に対応する幅を有すると共に、粘着テープを巻回したときにも変形しないような適宜の厚さを有している。
図示する内側管状体2は、内径を76.5mm(3インチ)とし、厚みを3.03mmとしているものであるが、内径を25.7mm(1インチ)とした小巻のものとすることができる。
【0013】
この内側管状体2の外側には外側管状体3があって、この外側管状体として片面ダンボールが使用される。この外側管状体3の片面ダンボールにはライナー4と中芯5があり、この両者を含む厚さ(段高)は1.3~0.6mm程度であり、その中芯5の30cm当りの段数は90~120程度のものが使用される。好ましくは、厚みが0.7~0.6mm程度とし、段数を30cm当り120±5程度としたものがある。
【0014】
上記外側管状体3を形成する片面ダンボールとしては、通例、E段(厚さが1.2mm,30cm当りの段数93±5)(
図3参照)とか、F段(厚さが0.6mm,30cm当りの段数120)(
図1参照)とか言われて販売されているものを使用することができる。
【0015】
上記外側管状体3片面ダンボールは、中芯5が内側になるようにして内側管状体2の紙管の外表面に巻き付けるようにすれば、中芯の存在により紙管の外表面に沿ってスムーズに一回りに巻き付けることができ、巻き付け後にライナーに皺が寄るようなこともない。
こうした外側管状体3の片面ダンボールは、内側管状体2の紙管の外表面との間に介在させた接着剤によって固定する。この接着剤としては、特に限定されないが、水溶性の接着剤を用いると巻芯を廃棄する場合に環境に優しいものとなる。
【0016】
この巻芯1には、粘着テープ6にテンションを掛けながら所要の長さに巻回して行くと粘着テープ巻回体7を得ることができる。通常、長い巻芯に広幅の粘着テープを巻回し、これを15mm、18mm、20mmその他の用途に応じた幅に輪切りに裁断して粘着テープ巻回体にするとよい。
上記粘着テープとしては、その基材にセロファンテープ、プラスチックテープ、金属テープ、紙テープなどを使用したものを用いることができる。
【0017】
こうした粘着テープ巻回体7には、上記したように粘着テープの巻回によって内部応力ひずみを生じやすいけれども、巻芯の外側管状体が片面ダンボールで形成されているので、上記ひずみを主としてその中芯が吸収して、変形することを防止することができる。
特に、セロファン粘着テープでは、温度や湿度の変化に応じて伸び縮みし易いことから、巻芯に設けた外側管状体3によってその変化を効果的に吸収することができて有効である。
【実施例】
【0018】
以下に示す実施例、比較例を作製、用意して、その性能を見るために下記の試験を行った。
(比較例3)
内側管状体(紙管): 内側より外側に向かって、0.5mm厚/0.7mm厚/0.7mm厚/0.5mm厚/0.5mm厚のボール紙を5層に重ね、その最内側を0.08mm厚の印刷紙で覆い、最外側を0.05mm厚の印刷紙で覆ったもので、紙管の総厚みが3.03mmで、内径が76.5mmで、長さが660mmのものを用意した。
【0019】
外側管状体(片面段ボール): 坪量が120g/m2のライナーに、坪量が120g/m2の原紙を中芯として、厚みが1.2mmで、30cm当りの段数が95のE段を用意した。
巻芯: 上記内側管状体(紙管)の外表面に、上記外側管状体(片面段ボール)の中芯側が内側になるようにして一重に巻回して水溶性接着剤で貼り合せ、巻芯とした。
【0020】
粘着テープ巻回体:上記巻芯に、セロファンの厚さ34μmの基材に粘着剤層を17μmの厚さに塗布したセロファン粘着テープの600mm巾のものを、長さ35mに巻き付けた。そして、これを15mm幅に輪切りに裁断して粘着テープ巻回体を作製した。
【0021】
(実施例1)
巻芯の外側管状体(片面段ボール)として、厚みが0.6mmで、30cm当りの段数が120のF段を使用し、他は比較例3と同様にして巻芯、粘着テープ巻回体を作製した。
【0022】
(比較例1)
巻芯の外側管状体(片面段ボール)として、厚みが2.0~2.1mmで、30cm当りの段数が64の5号段を使用し、他は比較例3と同様にして巻芯、粘着テープ巻回体を作製した。
【0023】
(比較例2)
巻芯の外側管状体として、厚みが1mmの独立気泡のポリオレフィン発泡シートを使用し、他は比較例3と同様にして従来品の巻芯、粘着テープ巻回体を作製した。
【0024】
(試験)
粘着テープ巻回体の経時的な変形状態を調べる為に以下の試験を行った。
【0025】
(試験1)
粘着テープ巻回体を、室温下に保存し、試験開始時、1日後、2日後、12日後、13日後において、巻芯の側端面から巻回されている粘着テープが側方に突出している変形量(単位:mm)を測定した。
また、13日後の粘着テープ巻回体の外観を目視で観察した。
【0026】
(試験2)
粘着テープ巻回体を、40℃、相対湿度75%の環境下において保存し、他は上記試験1と同様にして変形量を測定し、13日後の外観を目視で観察した。
【0027】
(試験結果)
試験1の結果を表1に示し、試験2の結果を表2に示す。
【0028】
(考察)
表1に示すように、試験1の室温に保存した状態においては、実施例1のものは比較例2の従来品、比較例3に比べてセロファン粘着テープの変化量が少なくて良好な結果が得られているし、巻芯の外側管状体(片面段ボール)の中芯の潰れが見られない。
比較例1のものでは、粘着テープの変化量が実施例1と同程度であるが、外側管状体(片面段ボール)の中芯が広く潰れており、外観が悪くて商品として相応しくないことが判った。また、比較例2のものでは、外側管状体としてポリオレフィン発泡体を使用していることから、巻芯に大きな変化は見られなかった。
【0029】
表2に示すように、試験2の保存条件として負荷を与えたものにおいても、実施例1のものは比較例1~3に比べていずれも粘着テープの変化量が少なくて良好な結果が得られているし、試験1とほぼ同様に巻芯の外側管状体(片面段ボール)の中芯の潰れが見られない。
また、比較例1のものでは、粘着テープの変化量が比較例の中では比較的に少ないけれども実施例1よりも大きいし、外側管状体(片面段ボール)の中芯が広く潰れており、外観が悪くて商品として相応しくないことが判る。
【符号の説明】
【0030】
1 粘着テープ用巻芯
2 内側管状体(紙管)
3 外側管状体(片面段ボール)
4 ライナー
5 中芯
6 粘着テープ
7 粘着テープ巻回体
【0031】
【0032】