(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20220203BHJP
B62K 25/08 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
F16F9/32 B
F16F9/32 C
B62K25/08 C
(21)【出願番号】P 2018018747
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】中野 崇彬
(72)【発明者】
【氏名】松原 勇太
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-261477(JP,A)
【文献】実開昭57-070536(JP,U)
【文献】特開2015-197153(JP,A)
【文献】特開2014-240664(JP,A)
【文献】特開2008-298138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
B62K 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に液体が貯留されるチューブと、
前記チューブに対して軸方向へ移動可能な軸と、
前記軸の外周に装着されてばねの一端を支持するカラーとを備え、
前記カラーは、一端を前記軸で支持される環状の装着部と、前記装着部よりもばね側に設けられて前記チューブの内周に摺接する環状の摺接部と、前記装着部と前記摺接部とを接続するとともに前記カラーの内外を移動する液体の流れに抵抗を与える孔が形成される円錐台形状の胴部と、前記胴部の内周に軸方向に沿って形成されるリブとを有
し、
前記リブは、前記カラーにおいて、前記軸で支えられる支点と、前記ばねから荷重を受ける点とを結ぶ直線上に配置される
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記リブは、前記カラーの周方向に並んで複数形成されており、
前記孔は、隣り合う前記リブの間にそれぞれ形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記カラーにおいて前記リブが形成された軸方向の範囲内に前記孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記リブは、前記軸の外周に接している
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両における車体と車軸との間に介装される緩衝器の中には、車体側チューブと車軸側チューブとを有して構成されるテレスコピック型のチューブ部材を備え、チューブ部材内にメインの減衰力を発揮する緩衝器本体と、車体を弾性支持する懸架ばねとを収容したものがある。
【0003】
さらに、このような緩衝器の中には、車体側チューブに連結した緩衝器本体のシリンダの外周に車軸側チューブの内周に摺接するカラーを装着し、当該カラーで懸架ばねの一端を支持するとともに、液体の流れに抵抗を与える孔をカラーに形成したものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記構成によれば、緩衝器の伸縮時に緩衝器本体によるメインの減衰力が発生するとともに、カラーが車軸側チューブ内に貯留した液体に浸かるのを境に、液体が孔を通ってカラーの上下に移動するようになり、孔を液体が通過する際の抵抗に起因する二次的な減衰力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示すように、従来のカラー400は、シリンダ200で支えられる小径環状の装着部500と、車軸側チューブ100の内周に摺接する大径環状の摺接部700と、装着部500と摺接部700とを接続する円錐台形状の胴部600とを有しており、胴部600に二次的な減衰力を発生するための孔900が形成されている。
【0007】
また、
図5(a)中、摺接部700の下端には、車体を弾性支持する懸架ばね300の上端が当接するばね受710が設けられている。そして、懸架ばね300の弾性力によりカラー400が押し上げられて、装着部500の上端がシリンダ200の外周に設けたストップリング201に突き当たると、カラー400が軸方向へ動かなくなり、シリンダ200の外周に固定される。
【0008】
つまり、カラー400には、取付状態において軸方向へ荷重が加わるようになっており、当該荷重に耐え得る強度を確保するため、胴部600の外周には、軸方向に沿う縦リブ800が複数形成されるとともに、孔900の縁に沿って起立する環状リブ810が形成されている(
図5(b))。
【0009】
そして、カラー400において、シリンダ200で支えられる支点Pから外周側へずれた位置(点E)に懸架ばね300による荷重が加わるようになっており、摺接部700が懸架ばね300から受けた荷重は、縦リブ800を伝ってシリンダ200へ伝達される。前述のように、縦リブ800は、胴部600の外周に位置するので、摺接部700に加わる荷重は、荷重を受ける点Eと支点Pとを結ぶ直線Lよりも外周側を伝わる。
【0010】
すると、胴部600を押し広げるようなモーメントが生じてしまい、緩衝器のストロークの開始時にモーメントの作用によりカラー400が変形すると、カラー400が懸架ばね300の一部の如く振る舞って、ストローク初期における懸架ばね300の弾性力が実質的に減少し、リニアなばね特性を得られない(
図6中、破線a)。また、上記モーメントが発生すると強度上不利になるので、カラー400の強度を確保するには環状リブ810が必要になって、カラー400が重くなる。
【0011】
そこで、本発明は、このような不具合を解消し、リニアなばね特性を得られるとともに、カラーを軽量化できる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決する緩衝器では、チューブに対して軸方向へ移動可能な軸の外周に装着されてばねの一端を支持するカラーが、一端を軸で支持される環状の装着部と、装着部よりもばね側に設けられてチューブの内周に摺接する環状の摺接部と、装着部と摺接部とを接続するとともにカラーの内外を移動する液体の流れに抵抗を与える孔が形成される円錐台形状の胴部と、胴部の内周に軸方向に沿って形成されるリブとを有し、リブは、カラーにおいて、軸で支えられる支点と、ばねから荷重を受ける点とを結ぶ直線上に配置されている。
【0013】
このように、カラーにおける胴部の内周にリブが設けられており、リブが、カラーにおいて、軸で支えられる支点と、ばねから荷重を受ける点とを結ぶ直線上に配置されているので、ばねからの荷重が摺接部からリブを伝って軸へ伝達される際、荷重がカラーにおいて軸で支えられる支点と荷重を受ける点とを結ぶ直線近くを伝わるようになる。このため、荷重が効率よく伝達されるとともに、胴部を押し広げるようなモーメントの発生を抑制できるので、緩衝器のストローク開始時におけるカラーの変形を抑制し、緩衝器のばね特性をよりリニアな特性にできる。さらに、モーメントの発生を抑制すると強度上有利になるので、カラーを軽量化できる。
【0014】
なお、上記緩衝器では、リブがカラーの周方向に並んで複数形成されていて、孔が隣り合うリブの間にそれぞれ形成されているとよい。当該構成によれば、カラーの強度を確保しやすい。
【0015】
また、上記緩衝器では、カラーにおいてリブが形成された軸方向の範囲内に孔が形成されているとよい。当該構成によれば、カラーの摺接部側から孔へ流入する液体の流れをリブで整流できる。
【0016】
また、上記緩衝器では、リブが軸の外周に接しているとよい。当該構成によれば、カラーの変形をシリンダでも抑制できるので強度上、一層有利になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の緩衝器によれば、リニアなばね特性を得られるとともに、カラーを軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る緩衝器の一部を部分的に切欠いて示した正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のカラーを部分的に切欠いて示した正面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のカラーを
図4(a)中XX線で切断した断面図である。
【
図4】(a)は、本発明の一実施の形態に係る緩衝器のカラーの底面図である。(b)は、取付状態において、カラーの胴部とシリンダとの間に形成される隙間の形状を説明する説明図である。
【
図5】(a)は、従来の緩衝器の一部を部分的に切欠いて示した正面図である。(b)は、従来の緩衝器のカラーを部分的に切欠いて示した正面図である。
【
図6】緩衝器のストローク開始時のばね特性を示した
特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態の緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0020】
図1に示す本発明の一実施の形態に係る緩衝器Dは、鞍乗型車両の前輪を懸架するフロントフォークに利用されている。当該フロントフォークが車両に取り付けられた状態、即ち、取付状態における緩衝器Dの上下を、以下特別な説明がない限り、単に緩衝器Dの「上」「下」という。
【0021】
緩衝器Dは、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有して構成されるテレスコピック型のチューブ部材1と、チューブ部材1内に収容される緩衝器本体2、及び懸架ばね3とを備える。
【0022】
チューブ部材1は、本実施の形態において、倒立型となっており、アウターチューブ10を上側(車体側)へ、インナーチューブ11を下側(車軸側)へ向けて配置されている。つまり、本実施の形態では、アウターチューブ10が車体側チューブ、インナーチューブ11が車軸側チューブとなっている。
【0023】
そして、アウターチューブ10が車体側ブラケット(図示せず)を介して車両の車体に連結され、インナーチューブ11が車軸側ブラケット12を介して前輪の車軸に連結されている。このように、緩衝器Dは、車体と車軸との間に介装されており、車両が凹凸のある路面を走行する等して前輪が上下に振動すると、インナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りして緩衝器が伸縮する。
【0024】
なお、チューブ部材1は、正立型になっていて、アウターチューブ10を車軸側チューブ、インナーチューブ11を車体側チューブとしてもよい。また、緩衝器Dの用途は、フロントフォークに限られず、鞍乗型車両の後輪を懸架するリヤクッションユニット、又は自動車のサスペンション等に利用されてもよい。
【0025】
つづいて、アウターチューブ10の上端は、キャップ13で塞がれている。また、インナーチューブ11の下端は、車軸側ブラケット12で塞がれている。さらに、アウターチューブ10とインナーチューブ11の重複部の間は、シール部材14で塞がれている。このようにしてチューブ部材1は密閉されており、その内側に緩衝器本体2と懸架ばね3が収容されている。
【0026】
また、チューブ部材1と緩衝器本体2との間は、液溜室Rとされており、作動油が貯留されるとともに、その液面上方に気体が封入されている。
【0027】
緩衝器本体2は、作動油を収容するシリンダ20と、シリンダ20内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド21とを備え、シリンダ20とロッド21が軸方向へ相対移動する際に生じる作動油の流れに抵抗を与えてメインの減衰力を発生する。
【0028】
また、本実施の形態において、緩衝器本体2は、倒立型となっており、シリンダ20外へ突出するロッド21を下側(車軸側)へ向けて配置されている。そして、シリンダ20がキャップ13を介してアウターチューブ10に連結されるとともに、ロッド21が車軸側ブラケット12を介してインナーチューブ11に連結されている。このように、緩衝器本体2は、アウターチューブ10とインナーチューブ11との間に介装されており、緩衝器Dが伸縮すると、シリンダ20とロッド21が軸方向へ相対移動して、メインの減衰力が発生する。
【0029】
なお、緩衝器本体2は、正立型になっていて、シリンダ20外へ突出するロッド21を上側(車体側)へ向けて配置され、当該ロッドが車体側チューブに連結されるとしてもよい。また、緩衝器本体2に利用する流体は、作動油に限られず、水、水溶液等の作動油以外の液体、又は気体であってもよい。また、液溜室Rに貯留する液体も作動油に限られず、水、水溶液等の作動油以外の液体であってもよい。
【0030】
つづいて、懸架ばね3は、コイルばねである。そして、懸架ばね3の上端がシリンダ20の外周に装着されたカラー4で支持されるとともに、懸架ばね3の下端が車軸側ブラケット12で支持される。車軸側ブラケット12は、インナーチューブ11に連結されているので、懸架ばね3は、シリンダ20とインナーチューブ11との間に介装されているともいえる。
【0031】
そして、伸切りとなっている緩衝器Dがストロークを開始してシリンダ20がインナーチューブ11内へ進入すると、懸架ばね3が圧縮されて弾性変形し、その変形量に見合った弾性力を発揮する。すると、懸架ばね3によりシリンダ20がインナーチューブ11から退出する方向へ附勢される。つまり、緩衝器Dは、懸架ばね3により伸長方向へ附勢される。そして、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、懸架ばね3で車体を弾性支持するようになっている。
【0032】
なお、カラー4で支持するばねは、懸架ばね3以外のばねであってもよい。また、本実施の形態では、インナーチューブ11が作動油(液体)を貯留するチューブ、シリンダ20がチューブに対して軸方向へ移動して、外周にカラー4が装着される軸である。しかし、チューブ部材1が倒立型である場合には、アウターチューブ10をチューブとしてもよい。また、緩衝器本体2が正立型である場合には、ロッド21を軸として、ロッド21の外周にカラー4を装着してもよい。
【0033】
つづいて、カラー4は、
図2に示すように、カラー4の上部に位置する環状の装着部5と、装着部5の下端に連なり、下方へ向かうに従って徐々に拡径する円錐台形筒状の胴部6と、胴部6の下端に連なり、装着部5よりも内外径がそれぞれ大きい環状の摺接部7とを有する。このように、カラー4は、全体として、上下に大小の環状部を有した円錐台形の筒状となっている。また、カラー4の内周には、軸方向に沿ってリブ8が形成されるとともに、胴部6の肉厚を貫通する孔9が形成されている。
【0034】
そして、カラー4は、
図1に示すように、摺接部7を懸架ばね3側へ向けて配置され、当該摺接部7で懸架ばね3の上端を支えるようになっている。具体的に、本実施の形態のカラー4は、合成樹脂製であり、摺接部7の下端に設けた嵌合部7a(
図2)に金属製のばね受70を嵌合し、当該ばね受70に懸架ばね3の上端を当接させている。このように、本実施の形態では、カラー4が合成樹脂で形成されているので軽量である。
【0035】
なお、カラー4とばね受70とを一体化させる方法は、嵌合に限られず、インサート成形等であってもよい。また、カラー4とばね受70の素材は、それぞれ変更できる。そして、カラー4の素材によっては、嵌合部7aとばね受70とを廃し、摺接部7の下端に懸架ばね3を直接突き当てるようにしてもよい。
【0036】
また、懸架ばね3のカラー4を挟んで反対側に位置するシリンダ20の外周には、シリンダ20から径方向外側へ突出するようにストッパ22が設けられている。そして、懸架ばね3がばね受70に当接すると、当該懸架ばね3の弾性力によりカラー4が押し上げられて装着部5の上端がストッパ22に突き当たり、カラー4がシリンダ20に対して軸方向へ動かなくなる。このように、カラー4は、シリンダ20の外周にストッパ22で位置決めされた状態で取り付けられる。
【0037】
本実施の形態において、ストッパ22は環状であり、シリンダ20の外周に装着されたスナップリング23の外周に加締め固定されている。しかし、装着部5の上端をシリンダ20で支えるようになっていれば、そのための構造は適宜変更できる。例えば、ストッパ22がシリンダ20と一体形成されていてもよく、ストッパ22がシリンダ20の外周に周方向に並べて設けた複数の突起であってもよい。
【0038】
前述のように、カラー4がシリンダ20の外周に取り付けられた状態で、装着部5がシリンダ20の外周に当接し、その内周をシリンダ20で支えられている。また、装着部5の外径は、インナーチューブ11の内径よりも小さく、装着部5の外周側に隙間ができる。また、カラー4がシリンダ20の外周に取り付けられた状態で、摺接部7がインナーチューブ11の内周に摺接し、その外周をインナーチューブ11で摺動自在に支えられている。また、摺接部7の内径は、シリンダ20の外径よりも大きく、摺接部7の内周側に隙間ができる。
【0039】
そして、胴部6の形状は、摺接部7側の内外径が装着部5側の内外径よりもそれぞれ大きい円錐台形筒状となっている。このため、胴部6の外周側に隙間ができるとともに、当該隙間の径方向の幅が装着部5へ向かうに従って広くなる。その一方、胴部6の内周側にも隙間ができて、当該隙間の径方向の幅が摺接部7へ向かうに従って広くなる。
【0040】
前述のように、カラー4の内周には軸方向に沿ってリブ8が形成されており、後に詳細に説明するように、リブ8は胴部6の内周側を通る。そして、胴部6の内周側にできる隙間は、リブ8で仕切られる。その一方、カラー4の外周にはリブが無いので、胴部6の外周にできる隙間は、筒状となる。
【0041】
図2,3に示すように、本実施の形態のリブ8は、カラー4の軸方向に沿って直線状に形成されており、装着部5の下端から胴部6を通って摺接部7の下端近くまで連続して形成されている。つまり、本実施の形態において、リブ8は、胴部6の内周の軸方向全体に形成されるとともに、下端が摺接部7の内周側まで延びている。
【0042】
このように、本実施の形態では、リブ8を胴部6の内周に設けている。このため、カラー4においてシリンダ20で支えられる支点P(
図3)から外周側へずれた位置で懸架ばね3から荷重を受けたとしても、当該荷重を受ける点Eと支点Pとを結ぶ直線L上にリブ8が配置される。よって、荷重が摺接部7からリブ8を伝ってシリンダ20へ伝達される際、荷重が直線L近くを伝わるので、効率よく荷重が伝達されて、カラー4の変形を抑制できる。
【0043】
より詳しくは、従来のように、胴部600の外周に縦リブ800を設けた場合には、上記直線Lよりも外周側を荷重が伝わるので、胴部600を押し広げるようなモーメントが発生する。これに対して、本実施の形態のように、胴部6の内周にリブ8を設けた場合には、従来よりも直線的に荷重が伝達されるので効率がよく、モーメントの発生を抑制できる。
【0044】
このため、モーメントの作用によりカラー4が変形するのを抑制できるので、緩衝器Dのストローク開始時におけるカラー4の変形を抑制し、緩衝器Dのばね特性をよりリニアな特性にできる。換言すると、ばね特性を
図6中実線bで示したリニアな特性に近づけられる。さらに、モーメントの発生を抑制すると強度上有利になるので、カラー4の強度を確保するための環状リブ(例えば、
図5(b)の環状リブ810)を設ける必要がなく、カラー4を軽量化できる。
【0045】
また、
図4に示すように、本実施の形態のリブ8は、カラー4の周方向に
等間隔で並べて四条設けられている。そして、これら四条のリブ8,8,8,8は
、カラー4の中心側へそれぞれ突出する。そして、胴部6に形成される孔9は、隣り合うリブ8,8の間にそれぞれ配置される。つまり、本実施の形態では、四つの孔9と、四条のリブ8が設けられ、これらが周方向に交互に配置されている。しかし、孔9とリブ8の数、及び間隔は、この限りではなく、適宜変更できる。
【0046】
また、各リブ8において、カラー4の中心側端を先端とすると、胴部6に位置するリブ8の先端は、シリンダ20の外周に当接する。その一方、摺接部7に位置するリブ8の先端は、下端へ向かうに従ってシリンダ20から離れるように傾斜する(
図2,3)。以下、リブ8において、シリンダ20の外周に接する部分を仕切部8a、先端が傾斜する部分を案内部8bとする。
【0047】
前述のように、本実施の形態では、リブ8の下端に案内部8bを設けているので、カラー4をシリンダ20の外周に容易に装着できる。さらに、案内部8bは、摺接部7に形成されている。
図3に示すように、摺接部7のリブ8の先端が傾斜して、シリンダ20から離れていても、懸架ばね3からの荷重を受ける点Eと支点Pとを結ぶ直線Lからリブ8が外れないので、強度的に不利にはならない。
【0048】
また、本実施の形態では、仕切部8aが胴部6に形成されており、胴部6におけるリブ8の先端がシリンダ20に近接する。このため、カラー4の変形をシリンダ20でも抑制できるので、強度上一層有利になる。さらに、仕切部8aにより胴部6とシリンダ20との間の隙間が仕切られる。前述のように、リブ8は、胴部6の周方向に並んで四条設けられている(
図4(a))。このため、胴部6とシリンダ20との間には、リブ8により仕切られた四つの隙間が形成される。これら隙間の形状を
図4(b)に示す。
【0049】
そして、四つの孔9は、胴部6に形成されていて、隣り合うリブ8,8の間に一つずつ配置される。このため、摺接部7側からカラー4の内側へ流入した作動油がリブ8によって孔9へ案内されて、孔9からカラー4の外側へ滞りなく流れる。つまり、本実施の形態では、仕切部8aを胴部6の内周に設けているので、孔9を通じてカラー4の内側から外側へ向かう液体の流れを整流できる。
【0050】
なお、整流用の仕切として機能するには、リブ8とシリンダ20との間に多少の隙間があってもよい。さらに、整流効果を得る上では、カラー4において、リブ8の形成された軸方向の範囲M(
図3)内に孔9が収まるように形成されていればよく、リブ8、仕切部8a、及び案内部8bを設ける範囲は、要求される強度等に応じてそれぞれ変更できる。とはいえ、整流効果をより確実に得る上では、カラー4において、先端がシリンダ20の外周に近接する仕切部8aの形成された軸方向の範囲m(
図3)内に孔9が収まるように形成されているのがより好ましい。
【0051】
ここでいう仕切部8aの先端がシリンダ20の外周に近接した状態とは、仕切部8aの先端がシリンダ20の外周に当接した状態、及び、仕切部8aとシリンダ20の外周との間にわずかな隙間ある状態を含む。わずかな隙間とは、当該隙間を作動油が通り難くなっていればよい。
【0052】
また、カラー4におけるリブ8(仕切部8a)の形成された軸方向の範囲M(m)内とは、径方向視(カラー4を側面から見た状態)において、カラー4の軸に直交してリブ8(仕切部8a)の上端を通る直線maと、カラー4の軸に直交してリブ8(仕切部8a)の下端を通る直線mb(mc)とで挟まれた範囲のことである。
【0053】
そして、カラー4におけるリブ8(仕切部8a)の形成された軸方向の範囲M(m)内に孔9が設けられた状態とは、孔9の上端が直線maと同じか、それよりも低い位置にあり、且つ、孔9の下端が直線mb(mc)と同じか、それよりも高い位置にあり、孔9が範囲M(m)から上下に逸脱しない状態をいう。
【0054】
つづいて、孔9は、本実施の形態において、胴部6の軸方向に沿って縦長に形成されるとともに、上端へ向かうに従って幅狭となっており、孔9の形状が先端に丸みを帯びた涙滴状となっている。そして、孔9は、当該孔9を通過する作動油の流れに抵抗を与えるようになっている。
【0055】
なお、孔9の形状は、図示する限りではなく、適宜変更できる。また、本実施の形態のように、カラー4に複数の孔9を設けた場合には、各孔9の大きさ及び形状が同じでなくてもよい。
【0056】
上記構成によれば、シリンダ20とインナーチューブ11が軸方向へ相対移動する緩衝器Dの伸縮時であって、カラー4が作動油内を上下に移動する場合には、作動油が孔9を通ってカラー4の上下に移動する。そして、カラー4の上下に移動する作動油の流れに対しては、孔9により抵抗が付与される。よって、緩衝器Dの伸縮時にカラー4が作動油に浸漬した位置にある場合には、緩衝器本体2によるメインの減衰力が発生するとともに、作動油が孔9を通過する際の抵抗に起因する二次的な減衰力が発生する。
【0057】
これに対して、シリンダ20とインナーチューブ11が軸方向へ相対移動する緩衝器Dの伸縮時であって、カラー4が作動油の液面よりも上側を移動する場合には、気体が孔9を抵抗なく通過する。このため、緩衝器Dの伸縮時にカラー4が作動油の液面より上側にある場合には、二次的な減衰力が発生しないので、緩衝器Dの発生する減衰力は、緩衝器本体2によるメインの減衰力のみとなる。
【0058】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
【0059】
本実施の形態に係る緩衝器Dは、内側に作動油(液体)が貯留されるインナーチューブ(チューブ)11と、インナーチューブ11に対して軸方向へ移動可能なシリンダ(軸)20と、シリンダ20の外周に装着されて懸架ばね(ばね)3の一端を支持するカラー4とを備える。
【0060】
そして、本実施の形態において、カラー4は、上端(一端)をシリンダ(軸)20で支持される環状の装着部5と、装着部5よりも懸架ばね3側(ばね側)に設けられてインナーチューブ(チューブ)11の内周に摺接する環状の摺接部7と、装着部5と摺接部7とを接続するとともにカラー4の内外を移動する液体の流れに抵抗を与える孔9が形成される円錐台形状の胴部6と、胴部6の内周に軸方向に沿って形成されるリブ8とを有する。
【0061】
このように、本実施の形態では、カラー4における胴部6の内周にリブ8が設けられている。このため、カラー4においてシリンダ20で支えられる支点Pから外周側へずれた位置で懸架ばね3から荷重を受けたとしても、当該荷重を受ける点Eと支点Pとを結ぶ直線L上にリブ8を配置できる。よって、懸架ばね3からの荷重が摺接部7からリブ8を伝ってシリンダ20へ伝達される際、荷重が従来よりも直線L近くを伝わっていくので、荷重が効率よく伝達されて胴部6を押し広げるようなモーメントの発生を抑制し、カラー4の変形を抑制できる。
【0062】
さらに、モーメントの作用によりカラー4が変形するのを抑制できるので、緩衝器Dのストローク開始時におけるカラー4の変形を抑制し、緩衝器Dのばね特性をよりリニアな特性(
図6中、実線b)にできる。さらに、モーメントの発生を抑制すると強度上有利になる。このため、従来のカラー400のように環状リブ810を設ける必要がなく、カラー4を軽量化できる。
【0063】
また、本実施の形態において、リブ8がカラー4の周方向に並んで複数形成されており、孔9が隣り合うリブ8,8の間にそれぞれ形成されている。そして、カラー4において、リブ8が形成された軸方向の範囲M内に孔9が形成されている。このため、緩衝器Dの収縮時にカラー4の摺接部7側から各孔9へ流入する作動油(液体)の流れをリブ8で整流できるので、収縮時における二次的な減衰力が安定する。さらに、上記構成によれば、孔9の周方向の両側にリブ8,8が配置されるので、カラー4の強度を確保しやすい。しかし、リブ8と孔9の数、及び配置は、図示する限りではなく、適宜変更できる。
【0064】
また、本実施の形態のリブ8は、シリンダ(軸)20の外周に接している。このため、カラー4の変形をシリンダ20でも抑制できるので、強度上も有利である。しかし、リブ8とシリンダ(軸)20との間に隙間があってもよい。そして、このような変更は、孔9とリブ8の数、及び配置に限らず可能である。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
D・・・緩衝器、M・・・カラーにおいてリブが形成された軸方向の範囲、3・・・懸架ばね(ばね)、4・・・カラー、5・・・装着部、6・・・胴部、7・・・摺接部、8・・・リブ、9・・・孔、11・・・インナーチューブ(チューブ)、20・・・シリンダ(軸)