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特許7011486プラント機器監視制御システム及びプラント機器監視制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】プラント機器監視制御システム及びプラント機器監視制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220119BHJP
   B03C 3/02 20060101ALI20220119BHJP
   B03C 3/68 20060101ALI20220119BHJP
   B03C 3/76 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G05B23/02 301V
B03C3/02 Z
B03C3/68 Z
B03C3/76
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018025646
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019144624
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大谷 侑士
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110440(JP,A)
【文献】特開2017-176922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
B03C 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプラント機器を含む複数のプラント機器と、
前記複数のプラント機器のそれぞれに対応して設けられる複数の監視制御装置と、
前記複数のプラント機器に設けられる複数のセンサと、
前記複数のプラント機器の前記複数のセンサからのセンサ計測値を集約する監視装置と、
前記監視装置に集約される前記センサ計測値を連続監視し、前記プラント機器に対応する前記監視制御装置に、前記センサ計測値に応じてリアルタイムに運転値を指示する中央制御装置と、
前記監視装置及び前記中央制御装置から、前記センサ計測値及び前記運転値を含む第1のモニタリングデータを受信し、所定期間における前記第1のプラント機器の動作状態を解析し、前記第1のプラント機器の動作状態の解析結果により前記第1のプラント機器の最適運転値の判定を行う機器状態監視装置とを有し、
前記機器状態監視装置は、前記監視装置及び前記中央制御装置から受信した前記第1のモニタリングデータを加工して生成される前記所定期間における第2のモニタリングデータに基づき、前記第1のプラント機器の動作状態を解析し、
前記第2のモニタリングデータは、平準化された前記センサ計測値、前記センサ計測値に系統的な影響を及ぼす環境データ、前記センサ計測値に一時的な影響を及ぼす外乱データ及び前記第1のプラント機器の運転値が時間軸にリンクして記憶されているプラント機器監視制御システム。
【請求項2】
請求項において、
前記機器状態監視装置は、前記第2のモニタリングデータを、時間幅、前記環境データ、前記外乱データ、前記第1のプラント機器の運転値のいずれかに基づきフィルタリングを行い、前記第1のプラント機器の動作状態を解析するプラント機器監視制御システム。
【請求項3】
請求項において、
前記機器状態監視装置は、前記第2のモニタリングデータに含まれる2つのデータをそれぞれ軸として2軸グラフを作成するプラント機器監視制御システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記第1のプラント機器は火力発電所の電気集塵装置であり、
前記電気集塵装置の監視運転値として、前記電気集塵装置の煤塵払い落とし運用、前記電気集塵装置の電極の荷電方法、前記電極に電圧を印加する荷電装置の消費電力の少なくともいずれかを含むプラント機器監視制御システム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記第1のプラント機器は火力発電所の電気集塵装置であり、
前記環境データとして、前記火力発電所のボイラに使用される炭種、前記ボイラのボイラ負荷を含み、
前記外乱データとして、前記電気集塵装置の上流におけるダスト清浄化の実施を含むプラント機器監視制御システム。
【請求項6】
第1のプラント機器を含む複数のプラント機器と、
前記複数のプラント機器のそれぞれに対応して設けられる複数の監視制御装置と、
前記複数のプラント機器に設けられる複数のセンサと、
前記複数のプラント機器の前記複数のセンサからのセンサ計測値を集約する監視装置と、
前記監視装置に集約される前記センサ計測値を連続監視し、前記プラント機器に対応する前記監視制御装置に、前記センサ計測値に応じてリアルタイムに運転値を指示する中央制御装置と、
前記監視装置及び前記中央制御装置から、前記センサ計測値及び前記運転値を含む第1のモニタリングデータを受信し、所定期間における前記第1のプラント機器の動作状態を解析し、前記第1のプラント機器の動作状態の解析結果により前記第1のプラント機器の最適運転値の判定を行う機器状態監視装置とを有し、
前記第1のプラント機器に設けられる前記複数のセンサには、そのセンサ計測値が前記第1のプラント機器に対応して設けられる第1の監視制御装置には受信される一方、前記監視装置には集約されないセンサを含み、
前記機器状態監視装置は、前記第1の監視制御装置で受信したセンサ計測値を受信し、前記第1の監視制御装置で受信したセンサ計測値及び前記第1のモニタリングデータを加工して生成される前記所定期間における第2のモニタリングデータに基づき、前記第1のプラント機器の動作状態を解析するプラント機器監視制御システム。
【請求項7】
第1のプラント機器を含む複数のプラント機器に複数のセンサを設け、前記複数のセンサからのセンサ計測値に基づき前記複数のプラント機器を制御するプラント機器制御方法であって、
監視装置は、前記複数のセンサからの前記センサ計測値を集約し、
中央制御装置は、前記監視装置に集約される前記センサ計測値を連続監視し、前記プラント機器の監視制御装置に、前記センサ計測値に応じてリアルタイムに運転値を指示し、
機器状態監視装置は、前記センサ計測値及び前記運転値を含む第1のモニタリングデータに基づき、所定期間における前記第1のプラント機器の動作状態を解析し、前記第1のプラント機器の動作状態の解析結果により前記第1のプラント機器の最適運転値の判定を行い、
前記機器状態監視装置は、前記第1のモニタリングデータを加工して生成される前記所定期間における第2のモニタリングデータに基づき、前記第1のプラント機器の動作状態を解析し、
前記第2のモニタリングデータは、平準化された前記センサ計測値、前記センサ計測値に系統的な影響を及ぼす環境データ、前記センサ計測値に一時的な影響を及ぼす外乱データ及び前記第1のプラント機器の運転値が時間軸にリンクして記憶されているプラント機器監視制御方法。
プラント機器監視制御方法。
【請求項8】
請求項において、
前記機器状態監視装置は、前記第2のモニタリングデータを、時間幅、前記環境データ、前記外乱データ、前記第1のプラント機器の運転値のいずれかに基づきフィルタリングを行い、前記第1のプラント機器の動作状態を解析するプラント機器監視制御方法。
【請求項9】
請求項において、
前記機器状態監視装置は、前記第2のモニタリングデータに含まれる2つのデータをそれぞれ軸として2軸グラフを作成するプラント機器監視制御方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項において、
前記第1のプラント機器は火力発電所の電気集塵装置であり、
前記電気集塵装置の監視運転値として、前記電気集塵装置の煤塵払い落とし運用、前記電気集塵装置の電極の荷電方法、前記電極に電圧を印加する荷電装置の消費電力の少なくともいずれかを含むプラント機器監視制御方法。
【請求項11】
請求項7~9のいずれか1項において、
前記第1のプラント機器は火力発電所の電気集塵装置であり、
前記環境データとして、前記火力発電所のボイラに使用される炭種、前記ボイラのボイラ負荷を含み、
前記外乱データとして、前記電気集塵装置の上流におけるダスト清浄化の実施を含むプラント機器監視制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント機器を監視、制御するプラント機器監視制御システム及びプラント機器監視制御方法に関する。特に、プラントからの排ガスに含まれる煤塵を処理する電気集塵装置の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電所、製鉄所といったプラントでは、サイトに設けられた中央操作室にてプラントに設けられた各機器(「プラント機器」という)の運転状況を監視している。各プラント機器は広大なサイトに配置されているため、各機器に設けられたセンサからの計測値は中央操作室に集められ、中央操作室のオペレータはこれらから各機器の運転状況を把握し、必要な制御を行っている。これらの計測値には、プラントの稼働状況に関するデータ(例えば、燃料、材料等の投入量、発電量や生産量等)、各機器の動作パラメータ(各機器に供給される電流値、電圧値等)、排ガス、排水、廃棄物等に含まれる規制物質の濃度等のデータが含まれている。
【0003】
世界的な環境意識の高まりに伴い、各国、地域でプラントから排出される排ガス、排水、廃棄物等について様々な環境規制が定められている。このため、プラントには排ガス、排水、廃棄物等に含まれる規制物質を所定値以下に除去するための環境保全装置が設けられている。このような環境保全装置の一つとして電気集塵装置がある。電気集塵装置は排ガス中に含まれる煤塵を捕集する装置である。電気集塵装置の最適化を実現する公知技術として特許文献1がある。特許文献1は移動電極形電気集塵装置に関し、集塵極板の移動速度が大きいほどダストの堆積を抑制することができる一方、移動速度が大きいと構成部品が著しく摩耗し、寿命が短くなることから、集塵極板の周期ごとに放電極と集塵極板における荷電状況を判断し、荷電状況に応じて集塵極板の移動速度を調整することを開示する。
【0004】
一方、特許文献2には機器に設けられたセンサからの計測値を継続的に遠隔監視することにより、機器の性能特性を分析し、目標とする性能特性と比較する。これにより、機器の性能の劣化を早期に把握することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-140689号公報
【文献】米国特許第8738326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラントの中央操作室には各プラント機器に設けられたセンサから膨大なデータが集められている。一方で、省力化の進むプラントでは、中央操作室で少数のオペレータがプラント全体を制御する必要があるため、集められた膨大なデータを活用し切ることは難しい。例えば、火力発電所であれば、環境規制を守りつつ、電力需要に応じて発電量を制御するため、ボイラやタービンといったプラント機器(これらを「主機」という)への燃料等の投入量や発電量、あるいは環境保全装置から排出される排ガスや排水等における規制物質の量などについては、これらのデータをモニタし、目標値や規制値にあわせてリアルタイムに必要な制御が行われる。これに対して、特許文献1に記述されるようなプラントの運転における目標値や規制値とは直接的には関係しない、例えば補機(主機以外のプラント機器をいう)の運転の最適化といった制御はプラント全体の運転を管理する中央操作室では行わない。このため、補機の据え付け時に設定した設定値がそのまま用いられ、補機の運転状態をチェックするのは、実質的には年単位で実施される定期点検のみということも少なくない。この場合、長期間にわたって効率の下がった状態で補機の運転が継続されるおそれがある。
【0007】
特許文献1は荷電特性に基づいて移動電極の最適制御を行うとするものであるが、電気集塵装置の性能に影響する因子は多く、一部の構成要素で最適化するのではなく、過去の運転傾向なども把握して、装置全体の最適化を図る必要がある。また、特許文献2には早期に機器の異常を検知することを目的としており、センサ計測値等からの知見を機器の日々のオペレーションに反映させることについて開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様であるプラント機器監視制御システムは、第1のプラント機器を含む複数のプラント機器と、複数のプラント機器のそれぞれに対応して設けられる複数の監視制御装置と、複数のプラント機器に設けられる複数のセンサと、複数のプラント機器の複数のセンサからのセンサ計測値を集約する監視装置と、監視装置に集約されるセンサ計測値を連続監視し、プラント機器に対応する監視制御装置に、センサ計測値に応じてリアルタイムに運転値を指示する中央制御装置と、監視装置及び中央制御装置から、センサ計測値及び運転値を含む第1のモニタリングデータを受信し、所定期間における第1のプラント機器の動作状態を解析し、前記第1のプラント機器の動作状態の解析結果により第1のプラント機器の最適運転値の判定を行う機器状態監視装置とを有する。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
中央操作室の負荷を増すことなく、プラント機器、特に補機の運転値の設定値の最適値を判定することにより、プラント機器の健全性や運転コストの低減などを図りつつ、日々のオペレーションの最適運転指南を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】火力発電所の環境保全装置の構成例である。
図2A】電気集塵装置の概略構成図である。
図2B】電気集塵装置の原理を説明する図である。
図3】プラント機器監視制御システムの構成例である。
図4】監視装置で使用されるセンサ計測値と機器状態監視装置で使用されるセンサ計測値との関係を説明する図である。
図5】機器状態監視装置の構成例である。
図6】機器状態監視装置で使用するモニタリングデータの例である。
図7】データ処理部が生成する2軸グラフの例である。
図8】データ処理部が生成する2軸グラフの例である。
図9】データ処理部が生成する2軸グラフの例である。
図10】データ処理部が生成する2軸グラフの例である。
図11】プラント機器監視制御システムの別の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1にプラントの一例である火力発電所の環境保全装置の構成例を示す。100が主機に該当する装置群である。ボイラ101で発生させた蒸気によりタービン102を回転させ、発電機103を回すことにより電気を発生させる。タービン102を回転させるのに使用された蒸気は復水器104に導入されることにより水に戻され、再びボイラ101に供給される。ボイラ101は化石燃料により水を蒸気に変換するため、ボイラ101から排出される排ガスには様々な規制物質が含まれることになる。これらを除去するため、環境保全装置110が設けられている。環境保全装置110の代表的な装置には、脱硝装置111、電気集塵装置113、脱硫装置114が含まれる。脱硝装置111は排ガスに含まれる窒素酸化物(NO)を低減するための装置であり、例えば排ガスにアンモニア(NH)を吹き込み、触媒上でNOを窒素と水に分解する選択的触媒還元脱硝技術等が知られている。電気集塵装置113は排ガスに含まれる煤塵粒子を低減するための装置であり、これについては後述する。脱硫装置114は排ガスに含まれる硫黄酸化物(SO)を低減するための装置であり、例えば排ガスと石灰石スラリを気液接触させ、カルシウム(Ca)と亜硫酸ガス(SO)とを反応させることにより、SOを吸収するとともに副生品として石膏を回収する湿式石灰石膏法等が知られている。
【0013】
図2Aに電気集塵装置113の概略構成図を示す。図2Aの例では、2本の煙道201,202が設けられ、それぞれの煙道から導入された排ガスは装置を通過する過程で、排ガスに含まれる煤塵が捕集される。また、排ガスが電気集塵装置113を通過する間に3つの集塵区画203~205を通過するようにされている。各集塵区画には、煤塵を付着させる集塵極が配置されている(後述する図2Bを参照)。集塵極に付着、堆積した煤塵を剥離させ、ホッパ206内に捕集する。なお、電気集塵装置113は要求集塵性能に応じて設計され、煙道の数や集塵区画の数はそれに応じて定められるものであり、特定の数に限定されるものではない。
【0014】
図2Bを用いて電気集塵装置の原理を説明する。各集塵区画には、図2Bに示す放電極211と集塵極212との対が複数配置され、その間を排ガスが通過するように構成されている。電気集塵装置の動作時には、放電極211と集塵極212との間に高電圧を印加することにより、コロナ放電を発生させる。これによりイオン213が発生する。排ガスに含まれる煤塵はイオン213により帯電し、静電引力によって放電極に対向する集塵極212にひきつけられ、付着、堆積することで、排ガスに含まれる煤塵が低減される。煤塵が集塵極212に堆積し続けると集塵性能が低下するため、堆積した煤塵は集塵極212から剥離させる必要がある。このため、集塵極212を槌打ちして振動を与えることにより、堆積した煤塵を剥離させる固定電極式装置、あるいは集塵極212を移動可能に構成し、集塵極を移動させて堆積した煤塵をブラシで払い落とす移動電極式装置といった方式の装置が知られている。電気集塵装置113にはいずれか一方、または双方の方式の装置を適用することが可能である。
【実施例1】
【0015】
図3に実施例1におけるプラント機器監視制御システムを示す。制御対象は図1に示したようなプラント機器であり、本例では主機301、電気集塵装置303、補機305を例示している。これらプラント機器にはそれぞれ複数のセンサ302,304,306が設けられており、これらセンサの測定値はそれぞれのプラント機器を監視、制御する監視制御装置311,312,313にリアルタイムに入力される。また、そのセンサ計測値の一部は中央操作室320の監視装置321にもリアルタイムに入力されている。中央操作室320では、監視装置321に集約される各プラント機器からのセンサ計測値を連続監視しながら、中央制御装置322はプラントの目標値、規制値に応じて各プラント機器に対しての制御を行う。中央制御装置322からの指示は各プラント機器の監視制御装置311,312,313に伝達され、各監視制御装置において中央制御装置322の指示に基づくプラント機器の制御を実行する。監視制御装置311,312,313により設定された各プラント機器への運転値は、中央制御装置322にても把握されている。
【0016】
プラント機器に設けられるセンサの種類や数は特に限定されない。センサは機器の監視、制御に必要な項目に応じて設置される。例えば、電気集塵装置303に設けられるセンサ304が計測する対象としては、例えば電気集塵装置の荷電電流、荷電電圧、火花回数などが挙げられる。
【0017】
本実施例のプラント機器監視制御システムにおいては、さらに、これらプラント機器の動作状態を監視する機器状態監視装置331を有している。中央操作室がプラント機器の日々のオペレーションの制御を目的とする機器監視制御を行うのに対して、機器状態監視装置331はプラント機器の性能向上や健全性の維持や運転コストの低減等を実現する最適運転値の判定を目的とするための解析を行う。なお、図3では、機器状態監視装置331は中央操作室320外に配置されているが、中央操作室320内に設けてもよく、逆にプラントのサイト外に設けてもよい。監視装置321、中央制御装置322と機器状態監視装置331とはネットワークを通じて接続されるが、ネットワークは公衆回線であってもよく、専用回線であってもよい。
【0018】
監視装置321で使用されるセンサ計測値と機器状態監視装置331で使用されるセンサ計測値との関係について、図4を用いて説明する。監視装置321の記憶装置401には各プラント機器から収集されたセンサ計測値が蓄積されている。例えば、モニタリングデータ410のような形で蓄積され、センサ計測値が監視装置321に到達した時間とセンサ計測値とを組にして記憶する。なお、図4では説明の簡素化のためにすべてのセンサ計測値が同じタイミングで監視装置321に到達しているように記載しているが、センサ計測値はそれぞれのタイミングで監視装置321に到達すればよい。監視装置321は、モニタリングデータ410からプラントの目標値や規制値に関係するセンサ計測値、あるいはセンサ計測値から算出されるデータを指標として監視装置321のモニタ403に時系列に表示する(波形404)。中央操作室320のオペレータは、指標を連続監視しながら、中央制御装置322から各プラント機器に対してリアルタイムに必要な制御を実行する。
【0019】
一方、機器状態監視装置331ではモニタリングデータ410から加工して作成するモニタリングデータ411に基づきプラント機器の状態を監視し、プラント機器の最適運転値の判定のための解析を行う。このため、監視データにはリアルタイム性は必要なく、動作状況の細かい変動は捨象して傾向が分かればよい。このため、モニタリングデータ411は、モニタリングデータ410から、日々のオペレーション中に生じる外乱やノイズを除き、所定時間で平均化することにより平準化されている。例えば、波形404に相当するモニタリングデータ411に基づく波形406を作成したとすれば、波形404に含まれる外乱405が除去され、波形404の細かい変動が均され平準化されたものとなっている。また、プラント機器の運転の最適運転値の判定のためには、リアルタイムな変動よりも、一定期間以上蓄積された運転データから把握される傾向や同等の条件下での運転データの比較の方が重要である。このため、機器状態監視装置331での制御はバッチ処理で行われる。このため、監視装置321からのセンサ計測値、中央制御装置322からの各プラント機器の設定運転値のような制御情報は、例えば1回/日のタイミングで機器状態監視装置331に転送されればよい。
【0020】
以下、補機の一つである電気集塵装置を例として、本実施例におけるプラント機器監視制御システムにより電気集塵装置の最適運転値を判定する例について説明する。電気集塵装置の最適運転値判定の対象は少なくとも以下の3つのいずれかを含むものとする。
【0021】
(1)煤塵払い落とし運用
図2Bで説明したように、煤塵が集塵極に堆積し過ぎないよう、煤塵がある程度堆積した段階で剥離させる必要がある。一方で、煤塵の払い落としを過剰に行うと設備の早期の摩耗、劣化につながるおそれがある。このため、集塵極槌打ちサイクル、放電極槌打ちサイクルあるいは移動電極回転速度の設定値の最適値を判定する。
【0022】
(2)電極の荷電方法
電気集塵装置の集塵性能は煤塵の性状に大きな影響を受ける。例えば、排ガスに電気抵抗率の高い煤塵が多く含まれている場合、集塵極に堆積した煤塵層で絶縁破壊が起こり、集塵極より正イオンが放出される現象(「逆電離」という)が生じやすくなることが知られており、この場合、集塵性能は著しく低下する。このような場合、電極への荷電方法を間欠化することで、逆電離の発生を抑えることができる。このように煤塵の特性やプラントの運転状態に応じて、電極への荷電方法を連続荷電、間欠荷電(及びその場合の荷電率)、パルス荷電のどれが性能最大(最適運転値)となるかを判定する。
【0023】
(3)荷電装置の消費電力
放電極・集塵極間に負電圧を印加する荷電装置の消費電力は、印加する電流、電圧及び荷電方法により定まる。集塵性能を維持しつつ、消費電力を節減するよう最適な荷電装置の消費電力を判定する。
【0024】
図5に機器状態監視装置331を実現する計算機500のハードウェア構成例を示す。計算機500は、プロセッサ501、主記憶502、補助記憶503、入出力インタフェース504、表示インタフェース505、ネットワークインタフェース506を含み、これらはバス507により結合されている。入出力インタフェース504は、キーボードやマウス等の入力装置509と接続され、表示インタフェース505は、ディスプレイ508に接続され、GUIを実現する。ネットワークインタフェース506は監視装置321や中央制御装置322と接続するためのインタフェースである。補助記憶503は通常、HDDやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリで構成され、計算機500が実行するプログラムやプログラムが処理対象とするデータ等を記憶する。主記憶502はRAMで構成され、プロセッサ501の命令により、プログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を一時的に記憶する。プロセッサ501は、補助記憶503から主記憶502にロードしたプログラムを実行する。
【0025】
補助記憶503には、中央操作室から機器状態監視装置331に送信される環境データ、機器運転値、センサ計測値を含む第1モニタリングデータ5031、プラント機器(ここでは電気集塵装置)の最適運転値判定を行うために第1モニタリングデータ5031を加工して得た第2モニタリングデータ5032、電気集塵装置の動作状態を監視するための電気集塵装置(EP:Electrostatic Precipitator)監視プログラム5033を含む。
【0026】
前述の通り、機器状態監視装置331ではリアルタイム性を必要としないため、第1モニタリングデータも例えば、1回/1日の頻度のバッチ処理で中央操作室から送信され、補助記憶503に格納する。第1モニタリングデータ5031にはセンサ計測値(図4に示したモニタリングデータ410)の他に、中央制御装置322から取得される電気集塵装置の設定運転値(前述の煤塵払い落とし運用、荷電方法、消費電力)や化石燃料として石炭を使用する場合の炭種など電気集塵装置の性能に影響を及ぼす環境データが含まれる。
【0027】
EP監視プログラム5033のデータ生成部5033aは、第1モニタリングデータ5031を加工して、第2モニタリングデータ5032を生成する。第2モニタリングデータ5032の例を図6に示す。時間軸600に沿って、センサ計測値601、環境データ602、外乱データ603、機器運転値604を含んでいる。時間軸600は所定時間幅(例えば1時間単位)で纏められている。中央操作室でオペレーションのために監視するセンサ計測値が電気集塵装置出口の煤塵濃度であるとすると、環境データ602はその値に対して系統的な影響を及ぼす情報が選択される。これには、オペレータが入力するものと、他のプラント機器からのセンサ計測値から得られるものとがありうる。化石燃料として石炭を用いる場合、使用する石炭の性状は排ガスの性状に影響を及ぼす。使用されている炭種はオペレータが入力する。また、ボイラの負荷は排ガス量に影響する。これは主機のセンサ計測値から得ることができる。外乱603はセンサ計測値の一時的な変化が外乱によるものかそうでないかを判定するための情報である。例えば、図4に示した波形404が電気集塵装置出口の煤塵濃度であったとすると、その波形405が外乱によるものかそうでないかを判定するための情報である。起こりうる外乱を環境保全装置のオペレーション等から推定しておくことで判定が可能になる。例えば、波形405のような一時的な煤塵濃度の上昇は、電気集塵装置の上流においてダスト清浄化を行った場合に生じうる。具体的には、空気予熱器112(図1参照)においてスーツブロアを行うと、一時的に煤塵を多く含んだ排ガスが電気集塵装置113に流入し、電気集塵装置出口の煤塵濃度も一時的に上昇する。このような外乱による変動は機器の最適運転値判定の観点からは無視してよいため、プロセス機器(この場合は、空気予熱器112)のセンサ計測値、あるいは機器運転値から外乱の発生605を判定する。データ生成部5033aはそのデータ生成アルゴリズムにしたがって、第1モニタリングデータ5031のデータの加工(外乱イベント発生の判定、センサ計測値の平均化等)を実施して第2モニタリングデータ5032を得る。
【0028】
データ処理部5033bでは、第2モニタリングデータ5032に基づき、電気集塵装置の動作状況の解析を行う。図6に示すように、第2モニタリングデータ5032は、電気集塵装置についてのセンサ計測値601、環境データ602、外乱603、機器運転値604が、時間軸600にリンクされて記憶されることにより、環境、外乱の有無、機器制御状態によるフィルタリングが可能にされている。例えば、外乱603の清浄化ONとなっているデータをフィルタリングすることにより、電気集塵装置の上流において清浄化が行われていない期間のセンサ計測値のみを使用して電気集塵装置の動作状況を解析することが可能になる。
【0029】
データ処理部5033bでは、所定のデータ(センサ計測値やパラメータ等)のそれぞれを監視するのみでなく、複数のデータの相互関係を監視するようにデータ処理を行う。例えば、データ処理部5033bは2つのデータを軸として2軸グラフを生成し、生成した2軸グラフをデータ表示部5033cによりディスプレイ508に表示する。以下、その例を図7~10に示す。
【0030】
図7は電気集塵装置のある集塵区画(ここでは第1区)における荷電状態を示す2軸グラフ701である。電気集塵装置への荷電は区画ごとに設けられた変圧整流器により行われる。変圧整流器は、低圧電源を変換して電極に荷電電圧、電流を供給する装置である。2軸グラフ701は横軸に変圧整流器の荷電電圧、縦軸に変圧整流器の荷電電流をとったグラフである。図2Aに示したように電気集塵装置が煙道を複数有する場合には、複数の変圧整流器が設けられ、それぞれの変圧整流器がそれぞれ煙道の電極に対して荷電電流、電圧を供給している。それを区別するため、2軸グラフ701では変圧整流器ごとに異なるプロットマークを使用している。また、直近のデータのプロットマーク702,703を視認しやすくするため、他のデータとは区別して表示している。
【0031】
データ処理部5033bは、2軸グラフ701に表示させる時間幅をフィルタリングすることができる。また、時間でフィルタする他、第2モニタリングデータ5032の環境データ、例えば炭種やボイラ負荷をいくつかの負荷幅に区切ってフィルタリングすることにより、同等または類似の条件下での動作状況における変化の有無を確認することが容易になる。
【0032】
図8は電気集塵装置の集塵性能と変圧整流器の消費電力を示す2軸グラフ801である。2軸グラフ801は横軸に変圧整流器の消費電力、縦軸に電気集塵装置出口の煤塵濃度をとったグラフである。変圧整流器の消費電力と煤塵濃度との関係をとることにより、電気集塵装置の集塵効率を解析できる。先に説明したように荷電方法は複数種類ある。このため、荷電方法(連続荷電あるいは間欠荷電、またはパルス荷電)ごとに異なるプロットマークを使用している。また、直近のデータのプロットマーク802を視認しやすくするため、他のデータとは区別して表示している。図7と同様に、データ処理部5033bは、2軸グラフ801に表示させる時間をフィルタリングすることができる。
【0033】
図9図10はそれぞれ機器運転値と煤塵濃度との関係を示す2軸グラフ901,1001である。電気集塵装置が固定電極式装置の場合は、図9のように機器運転値として集塵極槌打間隔を用いて、電気集塵装置が移動電極式装置の場合は、図10のように機器運転値として移動集塵極の回転速度を用いて、グラフ化する。これにより、煤塵の払い落とし頻度が電気集塵装置出口の煤塵濃度との関係で適正に保たれているかどうかの解析が可能となる。これらのグラフにおいても直近のデータのプロットマーク902,1002を視認しやすくするため、他のデータとは区別して表示しており、図7と同様に、データ処理部5033bは、2軸グラフ901,1001に表示させる時間幅をフィルタリングすることができる。
【0034】
これらの解析を踏まえ、機器運転値の設定値の最適値を判定することが可能になる。例えば、電気集塵装置出口の煤塵濃度が定常的に十分低いとみなすことができれば、槌打間隔を伸ばす、あるいは移動集塵極の移動速度を遅くすることにより、設備の劣化の進行を遅くすることができる。同様に、環境条件ごとに機器運転値の設定値の最適値を判定することも可能である。
【実施例2】
【0035】
図11に実施例2におけるプラント機器監視制御システムを示す。実施例2における状態監視装置は個々のプラント機器に対応して設けられている。図11は電気集塵装置に対して電気集塵装置状態監視装置1101が設けられている。電気集塵装置状態監視装置1101は、電気集塵装置303に設けられたセンサ304の計測値に関しては、監視制御装置312が受信したセンサ計測値を得るようにする。中央操作室にはプラント機器に設けられている全ての機器の計測値が収集されているとは限らない。このため、監視制御装置312で収集されているセンサ計測値を得ることにより、プラント機器に対して計測されている全てのセンサ計測値を得ることが可能になる(図11の例では、センサ計測値bが実施例1に比べて新たに得ることが可能になる)。このため、実施例1のシステムよりもプラント機器についてのより詳細な情報を得ることが可能になる。
【0036】
電気集塵装置状態監視装置1101は、電気集塵装置303に関するセンサ計測値、機器運転値について、監視制御装置312から得ることができる。一方、プラントにおける環境データ、他のプラント機器に関するセンサ計測値、機器運転値については、監視装置321、中央制御装置322から得る必要がある。これにより、実施例1と同様の解析を、より多種類のセンサ計測値を用いてより詳細に実行することができる。この場合、監視装置321で受信する電気集塵装置303に関するセンサ計測値は監視制御装置312で受信するセンサ計測値との時間にずれが生じる。このため、監視装置321からのセンサ計測値データには電気集塵装置からのセンサ計測値データも含ませておき、計測値データ間のマッチングをとって時間の補正を行うようにすればよい。あるいは時間の誤差がある程度の範囲に収まるようであれば、特に時間の補正も不要としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100:主機装置群、101:ボイラ、102:タービン、103:発電機、104:復水器、110:環境保全装置、111:脱硝装置、112:空気予熱器、113,303:電気集塵装置、114:脱硫装置、115:煙突、116:熱交換器、201,202:煙道、203~205:集塵区画、206:ホッパ、211:放電極、212:集塵極、213:イオン、301:主機、305:補機、302,304,306:センサ、311,312,313:監視制御装置、320:中央操作室、321:監視装置、322:中央制御装置、331:機器状態監視装置、501:プロセッサ、502:主記憶、503:補助記憶、504:入出力インタフェース、505:表示インタフェース、506:ネットワークインタフェース、507:バス、508:ディスプレイ、509:入力装置、1101:電気集塵装置状態監視装置。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11