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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】柱梁接合部の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220119BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04B1/30 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018030348
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143422
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】シング ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-344419(JP,A)
【文献】特開2014-190040(JP,A)
【文献】特開2010-196347(JP,A)
【文献】特開平07-062732(JP,A)
【文献】特開2007-023495(JP,A)
【文献】特開平07-229202(JP,A)
【文献】特開平05-214770(JP,A)
【文献】特開2006-249816(JP,A)
【文献】特開2008-291567(JP,A)
【文献】中国実用新案第203022129(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の鉄筋コンクリート柱の間に位置し、複数本の鉄骨梁が交差しそれらが接合された交差部とその交差部の周囲の空間に充填された充填コンクリートとを備える柱梁接合部の補強構造であって、
前記鉄骨梁が挿通された隙間を設けて配置され前記充填コンクリートに密着すると共に前記隙間部分で前記鉄骨梁に連結されて前記柱梁接合部の周囲を囲み前記柱梁接合部を拘束する鋼製の囲み板と、
上下方向において前記柱梁接合部に連結される上鉄筋コンクリート柱の下端と下鉄筋コンクリート柱の上端とにそれぞれ密着してそれら下端と上端とを囲みそれら下端と上端とを拘束する鋼製の上バンドプレートおよび下バンドプレートとを有し、
前記上バンドプレートと前記囲み板とは上下方向において切り離され、かつ、前記下バンドプレートと前記囲み板とは上下方向において切り離され、
前記鉄骨梁は、鉛直方向に延在するウェブと、水平方向に延在する一対のフランジとを有するH形鋼であり、
前記隙間の上端で隣り合う前記囲み板の上端に前記フランジに対応した幅で上方に開放状の上凹部が設けられると共に、前記隙間の下端で隣り合う前記囲み板の下端に前記フランジに対応した幅で下方に開放状の下凹部が設けられ、
前記H形鋼の前記一対のフランジはそれらの厚さ方向の一部が前記上凹部と前記下凹部に配置されると共に残りの部分が前記囲み板の上縁と下縁から突出して配置され、
前記隙間部分、前記上凹部、前記下凹部の箇所において、前記ウェブと一対のフランジの互いに対向箇所とは、前記囲み板に接合され、
前記上凹部、前記下凹部の箇所において、前記一対のフランジの幅方向の両端と前記囲み板とは切り離されている、
ことを特徴とする柱梁接合部の補強構造。
【請求項2】
前記交差部が、平面視した場合、鉄筋コンクリート柱の中心から偏心した箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項1記載の柱梁接合部の補強構造。
【請求項3】
前記囲み板の上縁は前記鉄骨梁の上端よりも低い箇所に位置すると共に、前記囲み板の下縁は前記鉄骨梁の下端よりも高い箇所に位置し、
前記上バンドプレートの下縁は前記鉄骨梁の上端と同一の高さに位置すると共に、前記下バンドプレートの上縁は前記鉄骨梁の下端と同一の高さに位置している、
ことを特徴とする請求項1または2記載の柱梁接合部の補強構造。
【請求項4】
前記上バンドプレートの下縁と前記囲み板の上縁との間、および、前記下バンドプレートの上縁と前記囲み板の下縁との間の寸法は、1mm~2mm程度である、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の柱梁接合部の補強構造。
【請求項5】
前記上下のバンドプレートの表面は、前記鉄筋コンクリート柱の表面と同一面上に位置している、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の柱梁接合部の補強構造。
【請求項6】
前記上バンドプレートの内面と下バンドプレートの内面にはそれぞれリブプレートが突設され、
前記リブプレートは、前記柱梁接合部の内部で前記鉄骨梁に接合されている、
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項記載の柱梁接合部の補強構造。
【請求項7】
前記囲み板を含んだ前記柱梁接合部は、前記囲み板の内側で前記鉄骨梁の交差部の周囲の空間に前記充填コンクリートが打設され養生されたプレキャスト部材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項記載の柱梁接合部の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合部の補強構造に関し、より詳細には、複数本の鉄骨梁の交差部が、平面視した場合、鉄筋コンクリート柱の中心から偏心した箇所に位置する柱梁接合部に好適な柱梁接合部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内のスペースを大きく確保する観点や、水回りのパイプ配設スペースを確保する観点や、外壁側の鉄骨梁の合成耐火の観点などから、複数本の鉄骨梁の交差箇所を鉄筋コンクリート柱の中心に対して偏心させることが行なわれている。
このように鉄骨梁の交差箇所を鉄筋コンクリート柱の中心に対して偏心させた柱梁接合部では、鉄骨梁の交差箇所を鉄筋コンクリート柱の中心に合致させた柱梁接合部に比べ、柱梁接合部のせん断耐力が低下し、鉄筋コンクリート柱に大きなねじれ力が作用する。
したがって、このように鉄骨梁の交差箇所を鉄筋コンクリート柱の中心に対して偏心させた柱梁接合部では、柱梁接合部のせん断耐力の確保や、鉄筋コンクリート柱に作用するねじれ力を抑える必要がある。
本出願人は、柱梁接合部を鋼製の囲み板で覆い、かつ、柱梁接合部に連結される鉄筋コンクリート柱の端部を鋼製のバンドプレートで覆うと共にバンドプレートを鉄骨梁の上下のフランジに溶接やボルト、ナットにより強固に一体化させ、柱梁接合部を補強する構造を提供している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-190040号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら先の補強構造では、鉄骨梁の交差箇所が鉄筋コンクリート柱の中心に対して偏心している柱梁接合部では、柱梁接合部のせん断耐力の確保や、鉄筋コンクリート柱の軸力、曲げ耐力の保持にも限界があることが判明した。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、鉄骨梁の交差箇所が鉄筋コンクリート柱の中心に対して偏心している柱梁接合部であっても、柱梁接合部のせん断耐力の確保や、鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力の保持ができる柱梁接合部の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、上下の鉄筋コンクリート柱の間に位置し、複数本の鉄骨梁が交差しそれらが接合された交差部とその交差部の周囲の空間に充填された充填コンクリートとを備える柱梁接合部の補強構造であって、前記鉄骨梁が挿通された隙間を設けて配置され前記充填コンクリートに密着すると共に前記隙間部分で前記鉄骨梁に連結されて前記柱梁接合部の周囲を囲み前記柱梁接合部を拘束する鋼製の囲み板と、上下方向において前記柱梁接合部に連結される上鉄筋コンクリート柱の下端と下鉄筋コンクリート柱の上端とにそれぞれ密着してそれら下端と上端とを囲みそれら下端と上端とを拘束する鋼製の上バンドプレートおよび下バンドプレートとを有し、前記上バンドプレートと前記囲み板とは上下方向において切り離され、かつ、前記下バンドプレートと前記囲み板とは上下方向において切り離され、前記鉄骨梁は、鉛直方向に延在するウェブと、水平方向に延在する一対のフランジとを有するH形鋼であり、前記隙間の上端で隣り合う前記囲み板の上端に前記フランジに対応した幅で上方に開放状の上凹部が設けられると共に、前記隙間の下端で隣り合う前記囲み板の下端に前記フランジに対応した幅で下方に開放状の下凹部が設けられ、前記H形鋼の前記一対のフランジはそれらの厚さ方向の一部が前記上凹部と前記下凹部に配置されると共に残りの部分が前記囲み板の上縁と下縁から突出して配置され、前記隙間部分、前記上凹部、前記下凹部の箇所において、前記ウェブと一対のフランジの互いに対向箇所とは、前記囲み板に接合され、前記上凹部、前記下凹部の箇所において、前記一対のフランジの幅方向の両端と前記囲み板とは切り離されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記交差部が、平面視した場合、鉄筋コンクリート柱の中心から偏心した箇所に位置していることを特徴とする。
また、本発明は、前記囲み板の上縁は前記鉄骨梁の上端よりも低い箇所に位置すると共に、前記囲み板の下縁は前記鉄骨梁の下端よりも高い箇所に位置し、前記上バンドプレートの下縁は前記鉄骨梁の上端と同一の高さに位置すると共に、前記下バンドプレートの上縁は前記鉄骨梁の下端と同一の高さに位置していることを特徴とする。
また、本発明は、前記上バンドプレートの下縁と前記囲み板の上縁との間、および、前記下バンドプレートの上縁と前記囲み板の下縁との間の寸法は、1mm~2mm程度であることを特徴とする。
また、本発明は、前記上下のバンドプレートの表面は前記鉄筋コンクリート柱の表面と同一面上に位置していることを特徴とする。
た、本発明は、前記上バンドプレートの内面と下バンドプレートの内面にはそれぞれリブプレートが突設され、前記リブプレートは、前記柱梁接合部の内部で前記鉄骨梁に接合されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記囲み板を含んだ前記柱梁接合部は、前記囲み板の内側で前記鉄骨梁の交差部の周囲の空間に前記充填コンクリートが打設され養生されたプレキャスト部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、柱梁接合部と、この柱梁接合部に連結される鉄筋コンクリート柱の端部とを囲み板と上下のバンドプレートとにより別々に拘束するようにした。
すなわち、左右の鉄骨梁から柱梁接合部に入力されるせん断力の一部は囲み板で受ける。入力されるせん断力は柱梁接合部を介して上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱へそれぞれ伝達される。
また、上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱に取付けた上バンドプレートと下バンドプレートは柱頭と柱脚をそれぞれ拘束することで鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力を保持する。
そのため、柱梁接合部のせん断耐力を向上させ、同時に、上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力を保持させ、建物の耐震性能を高める上で有利となる。
また、鉄骨梁の交差部を鉄筋コンクリート柱の中心に対して偏心させた柱梁接合部では、鉄骨梁の交差部を鉄筋コンクリート柱の中心に合致させた柱梁接合部に比べ、接合部のせん断耐力が低下し、鉄筋コンクリート柱に大きなねじれ力が作用するものの、前記と同様に、左右の鉄骨梁から柱梁接合部に入力されるせん断力の一部は囲み板で受ける。
入力されるせん断力は柱梁接合部を介して上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱へそれぞれ伝達される。また、上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱に取付けた上バンドプレートと下バンドプレートは柱頭と柱脚をそれぞれ拘束し鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力を保持することで、柱梁接合部のせん断耐力を向上させ、同時に、上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力を保持させ、建物の耐震性能を高める上で有利となる。
また、上バンドプレートの下縁と囲み板の上縁との間、および、下バンドプレートの上縁と囲み板の下縁との間の寸法を1mm~2mm程度とすると、柱梁接合部のせん断耐力を向上させ、同時に、上鉄筋コンクリート柱と下鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力を保持させる上で有利となる。
また、囲み板は柱梁接合部を囲み覆っているので、柱梁接合部の拘束効果に有利となると共に、型枠が不要となるため省力化が図れる。
また、本発明は、柱梁接合部があらかじめ工場で製作されたプレキャスト部材の場合も適用可能であり、工期の短縮化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】柱梁接合部の補強構造の正面図である。
図2】(A)は柱梁接合部の断面図で(B)のAA線断面に相当する図、(B)は柱梁接合部の断面平面図である。
図3】鉄骨梁と囲み板の接合状態の説明図である。
図4】(A)は柱梁接合部の断面図で(B)のAA線断面に相当する図、(B)は上下のバンドプレート部分の断面平面図である。
図5】鉄筋コンクリート柱のバンドプレート部分の断面平面図である。
図6】バンドプレートとリブプレートの接合状態の説明図である。
図7】(A)、(B)は柱梁接合部の変形例の説明図、(C)はコンクリート柱および柱梁接合部の変形例の説明図である。
図8】柱梁接合部の変形例の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施の形態の柱梁接合部の補強構造を添付図面に従って説明する。
図1図2に示すように、柱梁接合部10において、平面視した場合、4本の鉄骨梁12の交差部12Aが、鉄筋コンクリート柱14の中心から偏心した箇所に位置している。
なお、本発明において柱梁接合部10とは、複数本の鉄骨梁12の交差部12Aとその交差部12Aの周囲の空間に充填された充填コンクリート16とを含んで構成され、上下の鉄筋コンクリート柱14の間に位置する箇所をいう。
【0009】
鉄骨梁12は、例えば、鉛直方向に延在するウェブ1202と、ウェブ1202の上下に位置し水平方向に延在する上下のフランジ1204とからなるH型鋼である。
4本の鉄骨梁12が交差する交差部12Aは、平面視十字状を呈している。
図2(B)に示すように、鉄骨梁12の交差部12Aの中心C2は、鉄筋コンクリート柱14の中心C1から偏心している。
鉄筋コンクリート柱14の中心C1から鉄骨梁12の交差部12Aの中心C2までの距離を偏心距離eとすると、偏心距離eと柱幅Bcの比e/Bcは、後述する柱梁接合部10の補強効果を発揮させる上で、また、柱主筋1402を配置する上で1/6よりも小さいことが好ましい。
【0010】
柱梁接合部10の上方に位置する上鉄筋コンクリート柱14Aは柱梁接合部10から立設され、柱梁接合部10の下方に位置する下鉄筋コンクリート柱14Bは、例えば、フロア上に立設されている。
本実施の形態では、上下の鉄筋コンクリート柱14A、14Bの断面は矩形状を呈しており、下鉄筋コンクリート柱14Bの上端部から突出した柱主筋1402は、継手1404を介して上鉄筋コンクリート柱14Aの柱主筋1402に連結されている。なお、この柱主筋1402の本数は建物に合わせ適宜決定される。
【0011】
柱梁接合部10の補強構造は、鋼製の囲み板20と、鋼製の上バンドプレート22A、下バンドプレート22Bとを含んで構成されている。
囲み板20は、上下の鉄筋コンクリート柱14A、14Bの4つの側面を覆う4つの矩形板部2002を有し、各矩形板部2002に鉄骨梁12が挿通される溝2004が形成されている。
囲み板20は、各矩形板部2002の溝2004にそれぞれ鉄骨梁12を挿通した状態で各矩形板部2002の内面は充填コンクリート16にそれぞれ密着して設けられている。
囲み板20の上縁2001Aは鉄骨梁12の上フランジ1204の上面よりも低い箇所に位置すると共に、囲み板20の下縁2001Bは鉄骨梁12の下フランジ1204の下面よりも高い箇所に位置している。
【0012】
したがって、囲み板20は柱梁接合部10の周囲を囲み覆っており、柱梁接合部10を拘束し、柱梁接合部1014のせん断耐力の向上を図っている。
また、鉄骨梁12が溝2004に挿通された状態で、溝2004部分と鉄骨梁12は溶接やボルトナットにより接合され、囲み板20の小口部分では、溝2004部分と鉄骨梁12とは接合されておらず切り離されている。
すなわち、鉄骨梁12が溝2004に挿通された状態で、図3に示すように、溝2004部分は鉄骨梁12のウェブ1202の両側に接合され、上下のフランジ1204の互いに対向する箇所は溝2004部分に接合され、上下のフランジの幅方向の両端は溝2004部分に接合されておらず切り離されている。
このように、上下のフランジ1204の幅方向の両端を溝2004部分に接合しないことにより、柱梁接合部10の耐力の向上が図られている。
また、囲み板20は、4本の鉄骨梁12の交差部12Aの周囲の空間に充填コンクリート16を打設する際のコンクリート型枠を省略するものでもある。
なお、囲み板20を、柱梁接合部10の4つの角部のうち隣り合う2つの角部を含んだ2つの囲み板分割体で構成し、あるいは、柱梁接合部10の角部を含んだ4つの囲み板分割体により構成するなど任意である。
【0013】
図4図5に示すように、上バンドプレート22Aは、上鉄筋コンクリート柱14Aの下端に設けられ、下バンドプレート22Bは、下鉄筋コンクリート柱14Bの上端に設けられている。
上バンドプレート22Aと囲み板20とは切り離され、また、下バンドプレート22Bと囲み板20とも切り離されている。
上バンドプレート22Aの下縁2201Aは鉄骨梁12の上フランジ1204の上面と同一の高さに位置すると共に、下バンドプレート22Bの上縁2201Bは鉄骨梁12の下フランジ1204の下面と同一の高さに位置している。
すなわち、上バンドプレート22Aの下縁2201Aと囲み板20の上縁2001Aとは隙間Sを離して配置され、また、下バンドプレート22Bの上縁2201Bと囲み板20の下縁2001Bとも隙間Sを離して配置されている。この場合、隙間Sは、1mm~2mm程度であることが、後述する効果を奏する上で好ましい。
なお、上バンドプレート22Aの下縁2201Aと鉄骨梁12の上フランジ1204の上面、および下バンドプレート22Bの上縁2201Bと鉄骨梁12の下フランジ1204の下面とは、溶接やボルトナットなどにより接合されていない。
また、囲み板20の上下方向の長さは、柱梁接合部10の上下方向の長さに比べ、隙間Sの2倍の寸法分だけ短い。
【0014】
上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bは、上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bの4つの側面に対応した4つの横長の矩形板部2202を有し、それら4つの矩形板部2202の内面は、上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bの4つの側面に密着している。
したがって、上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bは、上鉄筋コンクリート柱14Aの下端と下鉄筋コンクリート柱14Bの上端とをそれぞれ囲み、それら下端と上端とを拘束している。
【0015】
また、上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bの4つの矩形板部2202の表面は、上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bの4つの側面と同一面上に位置している。すなわち、上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bとが配置された上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bの箇所は、その側面が他の側面に比べて上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bの厚さ分くぼんだ箇所に位置している。
したがって、上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bの表面は、柱梁接合部10の表面と同一面上に位置している。
また、本実施の形態では、上下のバンドプレート22A、22Bの各4つの矩形板部2202の内面にリブプレート2210が突設されている。
このリブプレート2210は、図6に示すように、上下のバンドプレート22A、22Bの各4つの矩形板部2202の内面に溶接で接合されており、また、鉄骨梁12の上下のフランジ1204の幅方向の中央(ウェブ1202の厚さの中心上)に溶接やボルトナットで接合されている。
このようなリブプレート2210を設けると、鉄骨梁12が受けた力を柱梁接合部10から上下の鉄筋コンクリート柱14A、14Bへ伝達でき、鉄骨梁12の耐久性を高める上で有利となる。
なお、上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bを、柱梁接合部10の4つの角部のうち隣り合う2つの角部を含んだ2つのバンドプレート分割体で構成し、あるいは、柱梁接合部10の角部を含んだ4つのバンドプレート分割体により構成し、あるいは、一枚の板を4つに折り曲げて構成するなど任意である。
【0016】
本実施の形態によれば以下の効果が奏される。
鉄骨梁12の交差部12Aを鉄筋コンクリート柱14の中心C1に対して偏心させた柱梁接合部10では、鉄骨梁12の交差部12Aを鉄筋コンクリート柱14の中心C1に合致させた柱梁接合部10に比べ、柱梁接合部のせん断耐力が低下し、鉄筋コンクリート柱に大きなねじれ力が作用する。
本実施の形態では、鉄骨梁12の交差部12Aを鉄筋コンクリート柱14の中心C1に対して偏心させた柱梁接合部10において、柱梁接合部10を囲み板20で拘束し、かつ、柱梁接合部10と切り離して上鉄筋コンクリート柱14Aの下端と、下鉄筋コンクリート柱14Bの上端とを上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bとで拘束するようにした。
【0017】
すなわち、柱梁接合部10と、この柱梁接合部10に連結される鉄筋コンクリート柱14の端部とを、囲み板20と、この囲み板20と切り離された上下のバンドプレート22A、22Bで別々に拘束するようにした。
そのため、左右の鉄骨梁12から柱梁接合部10に入力されるせん断力の一部は囲み板20で受ける。入力されるせん断力は柱梁接合部10を介して上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bへそれぞれ伝達される。
また、上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bに取付けた上バンドプレート22Aと下バンドプレート22Bは柱頭と柱脚をそれぞれ拘束することで鉄筋コンクリート柱の曲げ耐力を保持する。
そのため、柱梁接合部10のせん断耐力を向上させ、同時に、上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bの曲げ耐力を保持させ、建物の耐震性能を高める上で有利となり、鉄骨梁12の交差部12Aを鉄筋コンクリート柱14の中心C1に合致させ囲み板20のみを設けた柱梁接合部とほぼ同等の耐力を得ることが可能となる。
【0018】
なお、柱梁接合部10は、下鉄筋コンクリート柱14Bの上端部に載置される前に囲み板20の内側で鉄骨梁12の交差部12Aの周囲の空間に充填コンクリート16が打設され養生されたプレキャスト部材であってもよく、あるいは、鉄骨梁12の交差部12Aを下鉄筋コンクリート柱14Bの上端部に載置し、複数の柱主筋1402を上方に突出させたのち鉄骨梁12の交差部12Aの周囲の空間に充填コンクリート16を打設したもの(現場打ちコンクリート)であってもよい。
また、交差部12Aは鉄骨梁12が十字状に交差するものに限定されず、例えば、図7(A)に示すようにT字状や、図7(B)に示すようにL字状に交差する場合などにも無論適用可能である。
【0019】
また、囲み板20、上バンドプレート22A、下バンドプレート22Bの平面視した輪郭は矩形に限定されず、円形や多角形などであってもよく、鉄筋コンクリート柱14の平面した輪郭に対応して決定される。
例えば、鉄筋コンクリート柱14の平面した輪郭が円形である場合、囲み板20の平面した輪郭は図7(C)に示すように円形となり、これに対応して上バンドプレート22A、下バンドプレート22Bの平面視した輪郭も円形となる。
【0020】
また、本実施の形態では、十字状に交差する2つの鉄骨梁12のうちの一方の鉄骨梁12を鉄筋コンクリート柱14の中心C1から偏心させた場合について説明したが、図8に示すように、2つの鉄骨梁12の双方を鉄筋コンクリート柱14の中心C1から偏心させた場合にも本発明は無論適用可能である。
さらに、本実施の形態では、鉄骨梁12の交差部12Aの中心C2が鉄筋コンクリート柱14の中心C1から偏心している柱梁接合部10について説明したが、本発明は、鉄骨梁12の交差部12Aの中心C2と鉄筋コンクリート柱14の中心C1とが合致した柱梁接合部10にも無論適用可能であり、柱梁接合部10のせん断耐力を向上させ、同時に、上鉄筋コンクリート柱14Aと下鉄筋コンクリート柱14Bの曲げ耐力を保持させることが可能となる。
【符号の説明】
【0021】
10……柱梁接合部
12……鉄骨梁
12A……鉄骨梁の交差部
C2……鉄骨梁の交差部の中心
1202……ウェブ
1204……フランジ
14……鉄筋コンクリート柱
14A……上鉄筋コンクリート柱
14B……下鉄筋コンクリート柱
C1……鉄筋コンクリート柱の中心
1402……梁主筋
16……充填コンクリート
20……囲み板
2002……矩形板部
2004……溝
22A……上バンドプレート
22B……下バンドプレート
2202……矩形板部
2210……リブプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8