(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】液化天然ガス気化システム
(51)【国際特許分類】
F17C 9/02 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
F17C9/02
(21)【出願番号】P 2018066984
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正英
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】江頭 慎二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朝寛
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191424(JP,A)
【文献】特開2010-267707(JP,A)
【文献】特開2004-324761(JP,A)
【文献】特開2015-010683(JP,A)
【文献】特開2008-089164(JP,A)
【文献】特開2000-146091(JP,A)
【文献】特表2011-504991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガス気化システムであって、
中間媒体を介して水
の熱で液化天然ガスを加熱することによって当該液化天然ガスの少なくとも一部を気化させる気化器と、
前記気化器から流出した
前記水の冷熱を利用する冷熱利用部と、
前記水が前記気化器及び前記冷熱利用部をこの順に流れるように前記気化器及び前記冷熱利用部を接続する循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
前記気化器において前記中間媒体を介して加熱されることによって前記液化天然ガスから生じたガスであって前記気化器から流出した前記ガスを、前記循環流路において前記冷熱利用部を通過した水によって加熱する加温部と、を備え、
前記気化器は、
前記水の凝固点よりも低い凝固点を有する
前記中間媒体と、前記冷熱利用部から流出した
前記水と、を熱交換させることによって前記中間媒体の少なくとも一部を蒸発させる中間媒体蒸発部と、
前記中間媒体蒸発部において液相の中間媒体が蒸発することにより生じた気相の中間媒体と前記液化天然ガスとを熱交換させることにより前記液化天然ガスの少なくとも一部を気化させる液化天然ガス気化部と、を有する、液化天然ガス気化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記冷熱利用部をバイパスするように前記循環流路に接続されたバイパス流路と、
前記冷熱利用部へ流入する前記水の流量と前記バイパス流路へ流入する前記水の流量とを調整することが可能な調整部と、をさらに備える、液化天然ガス気化システム。
【請求項3】
請求項2に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記気化器から流出した
前記水の温度が設定温度になるように前記調整部を制御する調整部制御部をさらに備える、液化天然ガス気化システム。
【請求項4】
請求
項3に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記調整部は、前記バイパス流路に設けられたバイパスポンプを有し、
前記調整部制御部は、前記気化器から流出した
前記水の温度が前記設定温度になるように前記バイパスポンプの回転数を制御する、液化天然ガス気化システム。
【請求項5】
請求項
2に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記バイパス流路の下流側の端部は、前記循環流路のうち前記加温部と前記気化器との間の部位に接続されている、液化天然ガス気化システム。
【請求項6】
請求項
2に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記加温部をバイパスするように前記循環流路に接続された分岐流路をさらに備え、
前記バイパス流路の下流側の端部は、前記分岐流路又は前記循環流路のうち前記加温部と前記気化器との間の部位に接続されている、液化天然ガス気化システム。
【請求項7】
請求項2ないし
6のいずれかに記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記循環ポンプの回転数を制御する循環ポンプ制御部をさらに備え、
前記循環ポンプは、前記循環流路のうち当該循環流路と前記バイパス流路の上流側の端部との接続部である上流側接続部と前記冷熱利用部との間の部位に設けられており、
前記循環ポンプ制御部は、前記冷熱利用部が出力する信号であって当該冷熱利用部の負荷を示す負荷信号に応じて前記循環ポンプの回転数を制御する、液化天然ガス気化システム。
【請求項8】
請求項
7に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記循環流路のうち前記上流側接続部と前記循環ポンプとの間の部位に設けられており、前記気化器から流出した
前記水を貯留する冷水タンクをさらに備える、液化天然ガス気化システム。
【請求項9】
請求項1に記載の液化天然ガス気化システムにおいて、
前記循環流路には、前記冷熱利用部から流出し且つ前記気化器に流入する前の前記水を加熱するバックアップ加温器が設けられている、液化天然ガス気化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス気化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス(LNG)を気化させるための気化器において液化天然ガスから回収された冷熱を、当該冷熱の利用先に供給する液化天然ガス気化システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、LNG気化器と、ガスタービン吸気冷却器と、ガスタービン吸気冷却水循環系路と、ガスタービン吸気冷却水循環ポンプと、ガスタービン発電装置と、を備えるLNG焚きコンバインドサイクル発電設備が開示されている。LNG気化器は、LNGを流すための伝熱管を含んでいる。このLNG気化器では、伝熱管内を流れるLNGと伝熱管の表面に接触する水とを熱交換させることによってLNGを気化させる。ガスタービン吸気冷却器は、LNG気化器から流出した水(冷却水)と空気とを熱交換させることによって空気を冷却する。つまり、このガスタービン吸気冷却器が、液化天然ガスから回収された冷熱の利用先に相当する。ガスタービン吸気冷却水循環系路は、LNG気化器及びガスタービン吸気冷却器を接続している。水は、ガスタービン吸気冷却水循環系路を循環することにより、LNG気化器及びガスタービン吸気冷却器をこの順に流れる。ガスタービン吸気冷却水循環ポンプは、ガスタービン吸気冷却水循環系路に設けられている。ガスタービン発電装置は、ガスタービン吸気冷却器から流出した空気を圧縮するガスタービン圧縮機と、ガスタービン圧縮機から吐出された空気と天然ガス(NG)の燃焼ガスとの混合ガスにより駆動されるガスタービンと、ガスタービンに接続された発電機と、を有している。
【0004】
この特許文献1に記載されるLNG焚きコンバインドサイクル発電設備の気化器では、LNGが流れる伝熱管の表面に着氷が生じる場合がある。
【0005】
一方、このような気化器での着氷の発生を抑制可能なシステムとして、特許文献2に開示される液化ガスの気化システムが知られている。具体的に、特許文献2に記載のシステムでは、熱交換器においてLNGと熱交換させる媒体として、水の凝固点よりも低い凝固点を有するいわゆる代替フロンが使用されている。このため、熱交換器での着氷の発生が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-213001号公報
【文献】特許第6092065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載される液化ガスの気化システムでは、媒体(代替フロン)が循環する流路が当該媒体で満たされる必要があるので、コスト(特にイニシャルコスト)が非常に高くなる。
【0008】
本発明の目的は、気化器における着氷の発生を抑制することが可能でかつコストの著しい増大を抑制可能な液化天然ガス気化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する手段として、本発明は、液化天然ガス気化システムであって、中間媒体を介して水の熱で液化天然ガスを加熱することによって当該液化天然ガスの少なくとも一部を気化させる気化器と、前記気化器から流出した前記水の冷熱を利用する冷熱利用部と、前記水が前記気化器及び前記冷熱利用部をこの順に流れるように前記気化器及び前記冷熱利用部を接続する循環流路と、前記循環流路に設けられた循環ポンプと、前記気化器において前記中間媒体を介して加熱されることによって前記液化天然ガスから生じたガスであって前記気化器から流出した前記ガスを、前記循環流路において前記冷熱利用部を通過した水によって加熱する加温部と、を備え、前記気化器は、前記水の凝固点よりも低い凝固点を有する前記中間媒体と、前記冷熱利用部から流出した前記水と、を熱交換させることによって前記中間媒体の少なくとも一部を蒸発させる中間媒体蒸発部と、前記中間媒体蒸発部において液相の中間媒体が蒸発することにより生じた気相の中間媒体と前記液化天然ガスとを熱交換させることにより前記液化天然ガスの少なくとも一部を気化させる液化天然ガス気化部と、を有する、液化天然ガス気化システムを提供する。
【0010】
本液化天然ガス気化システムでは、循環流路を循環する媒体が水であるので、コストの増大を抑えつつ気化器において回収した冷熱を冷熱利用部において有効に利用でき、かつ、気化器では、水の凝固点よりも低い凝固点を有する中間媒体(プロパン等)を介して水と液化天然ガスとの熱交換が行われるので、中間媒体蒸発部での着氷の発生が抑制される。しかも、気化器から流出したガスが加温部において有効に加熱される。
【0011】
また、前記液化天然ガス気化システムにおいて、前記冷熱利用部をバイパスするように前記循環流路に接続されたバイパス流路と、前記冷熱利用部へ流入する前記水の流量と前記バイパス流路へ流入する前記水の流量とを調整することが可能な調整部と、をさらに備えることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、冷熱利用部の負荷が比較的低い場合においても、当該気化器へは、中間媒体蒸発部での着氷の発生を抑制するのに十分な流量の水を供給しながら冷熱利用部に対して当該冷熱利用部の負荷に応じた流量の水を供給することが可能となる。例えば、冷熱利用部の負荷が比較的低い場合、冷熱利用部へ供給する水の流量も少なくなる。その場合において、冷熱利用部へ供給する流量よりも多量の水を気化器の中間媒体蒸発部に流入及び中間媒体蒸発部から流出させ、かつ、中間媒体蒸発部から流出した水のうち冷熱利用部へ供給する流量の余剰分がバイパス流路に流入するように調整部が調整されることにより、前記負荷に応じた流量の水が冷熱利用部に供給されるとともに、前記気化器へは中間媒体蒸発部から流出する水の温度の過度の低下を防ぐために十分な流量の水が供給されるので、中間媒体蒸発部での着氷の発生が抑制される。
【0013】
また、前記液化天然ガス気化システムにおいて、前記気化器から流出した前記水の温度が設定温度になるように前記調整部を制御する調整部制御部をさらに備えることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、冷熱利用部へ供給される水の温度が概ね設定温度に自動で維持される。
【0015】
また、前記調整部は、前記バイパス流路に設けられたバイパスポンプを有し、前記調整
部制御部は、前記気化器から流出した前記水の温度が前記設定温度になるように前記バイパスポンプの回転数を制御することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、冷熱利用部へ流入する水の流量とバイパスへ流入する水の流量との割合が有効に制御される。
【0019】
前記液化天然ガス気化システムにおいて、前記バイパス流路の下流側の端部は、前記循環流路のうち前記加温部と前記気化器との間の部位に接続されていてもよい。
【0020】
この態様では、バイパス流路を通過した水の加温部への流入(気化器において液化天然ガスから回収された冷熱の加温部への投入)が回避されるので、加温部においてガスが有効に加熱される。
【0021】
あるいは、前記液化天然ガス気化システムにおいて、前記加温部をバイパスするように前記循環流路に接続された分岐流路をさらに備え、前記バイパス流路の下流側の端部は、前記分岐流路又は前記循環流路のうち前記加温部と前記気化器との間の部位に接続されていてもよい。
【0022】
この態様においても、バイパス流路を通過した水が加温部に流入しないので、加温部においてガスが有効に加熱される。さらに、冷熱利用部から流出した水の一部のみが加温部に流入するので、冷熱利用部から流出した水の全量が加温部に流入する場合に比べて、加温部の小型化が可能になる。
【0023】
また、前記液化天然ガス気化システムにおいて、前記循環ポンプの回転数を制御する循環ポンプ制御部をさらに備え、前記循環ポンプは、前記循環流路のうち当該循環流路と前記バイパス流路の上流側の端部との接続部である上流側接続部と前記冷熱利用部との間の部位に設けられており、前記循環ポンプ制御部は、前記冷熱利用部が出力する信号であって当該冷熱利用部の負荷を示す負荷信号に応じて前記循環ポンプの回転数を制御することが好ましい。
【0024】
このようにすれば、冷熱利用部の負荷に応じて循環ポンプの回転数、すなわち、冷熱利用部への給水量が調整される。
【0025】
また、前記液化天然ガス気化システムにおいて、前記循環流路のうち前記上流側接続部と前記循環ポンプとの間の部位に設けられており、前記気化器から流出した前記水を貯留する冷水タンクをさらに備えることが好ましい。
【0026】
この態様では、冷水タンクに冷水(気化器から流出した水)が貯留されているので、冷熱利用部の負荷の変動に応じて有効に冷熱利用部への給水量を調整することが可能となる。
前記循環流路には、前記冷熱利用部から流出し且つ前記気化器に流入する前の前記水を加熱するバックアップ加温器が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、気化器における着氷の発生を抑制することが可能でかつコストの著しい増大を抑制可能な液化天然ガス気化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の液化天然ガス気化システムの構成の概略を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の液化天然ガス気化システムの構成の概略を示す図である。
【
図3】本発明の第3実施形態の液化天然ガス気化システムの構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の液化天然ガス気化システム1について、
図1を参照しながら説明する。本液化天然ガス気化システム1は、水で液化天然ガス(LNG)を気化させるとともに、そのときに水が液化天然ガスから回収した冷熱を当該冷熱の利用先に供給するシステムであって、気化器10として、いわゆる中間媒体式気化器(IFV)が採用されている。具体的に、液化天然ガス気化システム1は、気化器10と、冷熱利用部20と、循環流路30と、循環ポンプ32と、バイパス流路40と、調整部42と、コントローラ50と、加温部E3と、を備えている。循環流路30は、気化器10及び冷熱利用部20をこの順に接続している。
【0031】
気化器10は、水の凝固点よりも低い凝固点を有する中間媒体(例えば、プロパンや、HFC-32,R410A等の代替フロン)Mを介して水と液化天然ガスとを熱交換させることによって液化天然ガスの少なくとも一部を気化させる中間媒体式気化器(IFV)である。つまり、この気化器10では、水によって中間媒体Mが加熱され、その中間媒体Mによって液化天然ガスが加熱される。具体的に、気化器10は、中間媒体蒸発部E1と、液化天然ガス気化部E2と、中間媒体蒸発部E1、液化天然ガス気化部E2及び中間媒体Mを収容可能なシェル11と、を有する。
【0032】
中間媒体蒸発部E1は、液相の中間媒体Mと、冷熱利用部20から流出した水(温水)とを熱交換させることによって中間媒体Mの少なくとも一部を蒸発させる。本実施形態では、中間媒体蒸発部E1は、伝熱管により構成されている。中間媒体蒸発部E1は、シェル11内の下部(シェル11内のうち液相の中間媒体Mに浸る位置)に配置されている。つまり、中間媒体蒸発部E1内を流れる水によって中間媒体蒸発部E1の表面に接する中間媒体Mが加熱される。
【0033】
液化天然ガス気化部E2は、液化天然ガスと気相の中間媒体Mとを熱交換させることによって液化天然ガスの少なくとも一部を気化させる。本実施形態では、液化天然ガス気化部E2は、U字状に形成された伝熱管により構成されている。液化天然ガス気化部E2は、シェル11内の上部(シェル11内のうち液相の中間媒体Mの表面よりも上方の領域)に配置されている。つまり、液化天然ガス気化部E2内を流れる液化天然ガスは、液化天然ガス気化部E2の表面に接する気相の中間媒体Mによって加熱される。具体的に、液化天然ガス気化部E2内を流れる液化天然ガスは、気相の中間媒体Mの蒸発潜熱を奪うことによって気化する一方、気相の中間媒体Mは、蒸発潜熱を放出することによって凝縮する。
【0034】
シェル11には、互いに仕切板14で仕切られた入口室12及び出口室13が接続されている。入口室12は、当該入口室12内と液化天然ガス気化部E2内とが連通するように液化天然ガス気化部E2の一端に接続されている。出口室13は、当該出口室13内と液化天然ガス気化部E2内とが連通するように液化天然ガス気化部E2の他端に接続されている。つまり、入口室12から液化天然ガス気化部E2内に流入した液化天然ガスは、液化天然ガス気化部E2内を通過する過程で気相の中間媒体Mに加熱されることによってその少なくとも一部が気化し、出口室13に流入する。
【0035】
また、シェル11には、水入口室15と、水出口室16と、が接続されている。水入口室15は、当該水入口室15内と中間媒体蒸発部E1内とが連通するようにシェル11の一方側に接続されている。水出口室16は、当該水出口室16内と中間媒体蒸発部E1内とが連通するようにシェル11の他方側に接続されている。つまり、水入口室15から中間媒体蒸発部E1内に流入した水(温水)は、中間媒体蒸発部E1内を通過する過程で液相の中間媒体Mから冷熱を回収し、水出口室16を経由して循環流路30に流出する。なお、水入口室15内に仕切板が設けられ、中間媒体蒸発部E1内に流入した水が折返し流れとされてもよい。
【0036】
冷熱利用部20は、気化器10から流出した水の冷熱を利用する。冷熱利用部20として、ガスタービンコンバインドサイクル発電装置に供給される空気の冷却に用いられる熱交換器や、各種施設の冷房に用いられる熱交換器等が挙げられる。
【0037】
循環ポンプ(冷水ポンプ)32は、循環流路30のうち気化器10の下流側の部位に設けられている。循環ポンプ32は、気化器10から流出した水(冷水)を冷熱利用部20に送る。本実施形態の液化天然ガス気化システム1は、循環流路30のうち気化器10と循環ポンプ32との間の部位に設けられた冷水タンク34を備えている。冷水タンク34は、気化器10から流出した水(冷水)を貯留する。
【0038】
また、本実施形態の液化天然ガス気化システム1は、循環流路30のうち冷熱利用部20の下流側の部位に設けられた温水ポンプ36と、循環流路30のうち冷熱利用部20と温水ポンプ36との間の部位に設けられた温水タンク38と、をさらに備えている。温水ポンプ36は、冷熱利用部20から流出した水(温水)を気化器10に送る。温水タンク38は、冷熱利用部20から流出した水(温水)を貯留する。さらに、循環流路30のうち冷熱利用部20と温水タンク38との間の部位には、熱源(海水等)によって水を加熱するバックアップ加温器39が設けられてもよい。
【0039】
バイパス流路40は、冷熱利用部20をバイパスするように循環流路30に接続されている。バイパス流路40の上流側の端部は、循環流路30のうち気化器10と冷水タンク34との間の部位に接続されている。バイパス流路40の下流側の端部は、循環流路30のうち温水ポンプ36と気化器10との間の部位に接続されている。このため、バイパス流路40を通る水(冷水)は、冷熱利用部20において受熱することなく再び気化器10に戻される。
【0040】
調整部42は、気化器10から流出した水のうち冷熱利用部20へ流入する水の流量とバイパス流路40へ流入する水の流量との割合を調整する。本実施形態では、調整部42として、バイパス流路40にバイパスポンプが設けられている。このバイパスポンプの回転数(周波数)の調整により、気化器10から流出した水のうち冷熱利用部20へ流入する水の流量とバイパス流路40へ流入する水の流量との割合が調整される。なお、バイパスポンプの代わりに、調整部42として開度調整可能な開閉弁がバイパス流路40に設けられてもよい。あるいは、前記開閉弁の代わりに、調整部42として三方弁が循環流路30とバイパス流路40の上流側の端部との接続部に設けられてもよい。
【0041】
コントローラ50は、調整部制御部51と、循環ポンプ制御部52と、を有する。
【0042】
調整部制御部51は、調整部(本実施形態ではバイパスポンプ)42の回転数を制御する。具体的に、調整部制御部51は、気化器10から流出した水の温度が設定温度(例えば4℃)になるようにバイパスポンプの回転数を制御する。なお、気化器10から流出した水の温度は、循環流路30のうち気化器10の下流側の部位に設けられた温度センサ61によって検出される。
【0043】
循環ポンプ制御部52は、循環ポンプ32及び温水ポンプ36の回転数を制御する。具体的に、循環ポンプ制御部52は、冷熱利用部20が出力する信号であって当該冷熱利用部20の負荷を示す負荷信号に応じて循環ポンプ32及び温水ポンプ36の回転数を制御する。例えば、循環ポンプ制御部52は、前記負荷信号が大きくなるにしたがって循環ポンプ32及び温水ポンプ36の回転数を上げる。ここで、冷熱利用部20への水の供給量が前記負荷信号の大きさに対応している場合、冷熱利用部20の下流側の部位の温度(例えば温水タンク38に設けられた温度センサ63の検出値)と冷熱利用部20の上流側の部位の温度(例えば冷水タンク34に設けられた温度センサ62の検出値)との温度差が概ね規定値に維持される。このため、前記温度差が概ね規定値に維持されている場合、冷熱利用部20への水の供給量が前記負荷信号の大きさに対応していると判断することが可能である。なお、循環ポンプ制御部52による循環ポンプ32及び温水ポンプ36の制御は、調整部制御部51による調整部42の制御から独立して行われる。
【0044】
また、コントローラ50は、中間媒体蒸発部E1の温度が第1所定温度(例えば-1℃)以下になったときにアラームを出力し、中間媒体蒸発部E1の温度(伝熱管の管壁の温度)が第1所定温度よりも低い第2所定温度(例えば-3℃)以下になったときに気化器10への液化天然ガスの供給を停止してもよい。なお、中間媒体蒸発部E1の温度は、中間媒体蒸発部E1の下流側の端部に設けられた温度センサ64によって検出される。
【0045】
加温部E3は、循環流路30のうち冷熱利用部20と気化器10との間の部位、より詳細には、温水ポンプ36と気化器10との間の部位に設けられている。加温部E3は、気化器10から流出したガスを冷熱利用部20から流出した水(温水)によって加熱する。なお、加温部E3として、いわゆるシェルアンドチューブ式の熱交換器やいわゆるプレート式の熱交換器が好ましく用いられる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の液化天然ガス気化システム1では、循環流路30を循環する媒体が水であるので、コストの増大を抑えつつ気化器10において回収した冷熱を冷熱利用部20において有効に利用でき、かつ、気化器10では、水の凝固点よりも低い凝固点を有する中間媒体Mを介して水と液化天然ガスとの熱交換が行われるので、中間媒体蒸発部E1での着氷の発生が抑制される。
【0047】
また、この液化天然ガス気化システム1は、バイパス流路40と調整部42とを備えているので、冷熱利用部20の負荷が比較的低い場合においても、気化器10へは、中間媒体蒸発部E1での着氷の発生を抑制するのに十分な流量の水を供給しながら冷熱利用部20に対して当該冷熱利用部20の負荷に応じた流量の水を供給することが可能となる。例えば、冷熱利用部20の負荷が比較的低い場合、冷熱利用部20へ供給する水の流量も少なくなる。その場合において、冷熱利用部20へ供給する流量よりも多量の水を気化器10の中間媒体蒸発部E1に流入及び中間媒体蒸発部E1から流出させ、かつ、中間媒体蒸発部E1から流出した水のうち冷熱利用部20へ供給する流量の余剰分がバイパス流路40に流入するように調整部42が調整されることにより、前記冷熱利用部20の負荷に応じた流量の水が冷熱利用部20に供給されるとともに、気化器10へは中間媒体蒸発部E1から流出する水の温度の過度の低下を防ぐために十分な流量の水が供給されるので、中間媒体蒸発部E1での着氷の発生が抑制される。
【0048】
また、液化天然ガス気化システム1は、加温部E3を備えているので、気化器10から流出したガスが加温部E3において有効に加熱される。
【0049】
さらに、液化天然ガス気化システム1は、調整部制御部51を備えているので、冷熱利用部20へ供給される水の温度が概ね設定温度に自動で維持される。
【0050】
また、液化天然ガス気化システム1は、循環ポンプ制御部52を備えているので、冷熱利用部20の負荷に応じて循環ポンプ32及び温水ポンプ36の回転数、すなわち、冷熱利用部20及び気化器10への給水量が調整される。
【0051】
さらに、液化天然ガス気化システム1は、冷水タンク34を備えているので、冷熱利用部20の負荷の変動に応じて有効に冷熱利用部20への給水量を調整することが可能となる。同様に、この液化天然ガス気化システム1は、温水タンク38を備えているので、気化器10の負荷変動に応じて有効に気化器10への給水量を調整することが可能となる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、
図2を参照しながら、本発明の第2実施形態の液化天然ガス気化システム1について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0053】
本実施形態の液化天然ガス気化システム1では、バイパス流路40の下流側の端部は、循環流路30のうち加温部E3と気化器10との間の部位に接続されている。
【0054】
この態様では、バイパス流路40を通過した水(冷水)の加温部E3への流入(気化器10において液化天然ガスから回収された冷熱の加温部E3への投入)が回避されるので、加温部E3においてガスが有効に加熱される。
【0055】
(第3実施形態)
次に、
図3を参照しながら、本発明の第3実施形態の液化天然ガス気化システム1について説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0056】
本実施形態の液化天然ガス気化システム1は、加温部E3をバイパスするように循環流路30に接続された分岐流路31をさらに備えており、バイパス流路40の下流側の端部は、分岐流路31又は循環流路30のうち加温部E3と気化器10との間の部位に接続されている。
【0057】
この態様においても、バイパス流路40を通過した水(冷水)の加温部E3への流入が回避されるので、加温部E3においてガスが有効に加熱される。さらに、冷熱利用部20から流出した水の一部のみが加温部E3に流入するので、第1実施形態のように冷熱利用部20から流出した水の全量が加温部E3に流入する場合に比べて、加温部E3の小型化が可能になる。
【0058】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
例えば、コントローラ50が省略され、循環ポンプ32の回転数やバイパスポンプの回転数がオペレータによって手動で制御されてもよい。
【0060】
また、冷熱利用部20と並列になるように循環流路30に対して別の冷熱利用部が接続されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 液化天然ガス気化システム
10 気化器
20 冷熱利用部
30 循環流路
31 分岐流路
32 循環ポンプ(冷水ポンプ)
34 冷水タンク
36 温水ポンプ
38 温水タンク
40 バイパス流路
42 調整部(バイパスポンプ)
50 コントローラ
51 調整部制御部
52 循環ポンプ制御部
E1 中間媒体蒸発部
E2 液化天然ガス気化部
E3 加温部
M 中間媒体