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特許7011519昇降機外部通報システム及び昇降機外部通報方法
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  • 特許-昇降機外部通報システム及び昇降機外部通報方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】昇降機外部通報システム及び昇降機外部通報方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20220119BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 T
B66B3/00 G
B66B3/00 U
B66B3/00 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018075542
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019182601
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 泰
(72)【発明者】
【氏名】柴田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 顕康
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190721(JP,A)
【文献】特開2012-006753(JP,A)
【文献】特開2007-106520(JP,A)
【文献】特開2007-186273(JP,A)
【文献】特開2013-018632(JP,A)
【文献】国際公開第02/016246(WO,A1)
【文献】特開2017-178596(JP,A)
【文献】特開2007-168957(JP,A)
【文献】特開2006-036431(JP,A)
【文献】特開2009-046291(JP,A)
【文献】特開2014-118263(JP,A)
【文献】特許第6222866(JP,B1)
【文献】特許第5996702(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/042200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターに閉じ込められた乗客から外部への通報を支援する昇降機外部通報システムであって、
前記エレベーターのかご内に表示され、通信端末によって読み取り可能な読取コードと、
前記エレベーターを遠隔から監視する遠隔監視センタと、
前記遠隔監視センタとのテキストによるメッセージの交換機能を提供するアプリケーションを配信するアプリケーション管理サーバと、
を備え、
前記読取コードには、前記アプリケーション管理サーバに接続するための接続情報と、当該読取コードが表示された前記エレベーターを識別可能な識別情報と、が登録され、
前記乗客が使用する前記通信端末によって前記読取コードを読み取った場合に、当該読取コードに登録された前記接続情報及び前記識別情報に基づいて、前記アプリケーション管理サーバから当該識別情報を埋め込んだ前記アプリケーションが当該通信端末に配信され、
前記配信されたアプリケーションが前記通信端末において起されると、前記読取コードに登録された前記識別情報が当該通信端末から前記遠隔監視センタに通知され、当該通信端末と当該遠隔監視センタとの間でテキストによる前記メッセージの交換が可能とされる
ことを特徴とする昇降機外部通報システム。
【請求項2】
前記遠隔監視センタは、異なる言語間の翻訳機能を有し、
前記アプリケーションは、前記通信端末において起動された場合に、当該通信端末で使用される第一の言語を読み取って前記遠隔監視センタに送信し、
前記アプリケーションによって提供される前記メッセージの交換において、前記遠隔監視センタで使用される第二の言語と、前記アプリケーションによって送信された前記第一の言語とが異なる言語であるとき、
前記遠隔監視センタは、前記通信端末において前記第一の言語で入力されて受信したメッセージを前記第二の言語に翻訳してから表示し、前記遠隔監視センタにおいて前記第二の言語で入力されたメッセージを前記第一の言語に翻訳してから前記通信端末に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機外部通報システム。
【請求項3】
エレベーターに閉じ込められた乗客から外部への通報を支援する昇降機外部通報システムによる昇降機外部通報方法であって、
前記昇降機外部通報システムは、
前記エレベーターのかご内に表示され、通信端末によって読み取り可能な読取コードと、
前記エレベーターを遠隔から監視する遠隔監視センタと、
前記遠隔監視センタとのテキストによるメッセージの交換機能を提供するアプリケーションを配信するアプリケーション管理サーバと、
を備え、
前記読取コードには、前記アプリケーション管理サーバに接続するための接続情報と、当該読取コードが表示された前記エレベーターを識別可能な識別情報と、が登録され、
前記乗客が使用する前記通信端末によって前記読取コードを読み取った場合に、当該読取コードに登録された前記接続情報及び前記識別情報に基づいて、前記アプリケーション管理サーバから当該識別情報を埋め込んだ前記アプリケーションが当該通信端末に配信され、
前記配信されたアプリケーションが前記通信端末において起されると、前記読取コードに登録された前記識別情報が当該通信端末から前記遠隔監視センタに通知され、当該通信端末と当該遠隔監視センタとの間でテキストによる前記メッセージの交換が可能とされる
ことを特徴とする昇降機外部通報方法。
【請求項4】
前記遠隔監視センタが、異なる言語間の翻訳機能を有し、
前記アプリケーションが、前記通信端末において起動された場合に、当該通信端末で使用される第一の言語を読み取って前記遠隔監視センタに送信し、
前記アプリケーションによって提供される前記メッセージの交換において、前記遠隔監視センタで使用される第二の言語と、前記アプリケーションによって送信された前記第一の言語とが異なる言語であるとき、
前記遠隔監視センタは、前記通信端末において前記第一の言語で入力されて受信したメッセージを前記第二の言語に翻訳してから表示し、前記遠隔監視センタにおいて前記第二の言語で入力されたメッセージを前記第一の言語に翻訳してから前記通信端末に送信する
ことを特徴とする請求項に記載の昇降機外部通報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機外部通報システム及び昇降機外部通報方法に関し、エレベーターのかご内の乗客が非常時に外部と連絡をとるための昇降機外部通報システム及び昇降機外部通報方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターには、故障等によるエレベーターの停止によってエレベーターかご内に閉じ込められた乗客が閉じ込めからの救助を要請することができる手段として、エレベーター外部と通話可能なインターホン装置が備えられている。このインターホン装置によれば、エレベーターかご内に設置されているマイク及びスピーカを用いて、エレベーター外部に備えられた通話装置、または遠隔でエレベーターを監視している遠隔監視センタに備えられた通話装置に対して通話を行うことができる。
【0003】
しかしながら、インターホン装置は外部との連絡を音声によって行う装置であり、例えば聴覚障碍者や外国語を話す外国人等が単独でエレベーターに閉じ込められた場合には、インターホンを利用した外部との通話は困難であった。この問題を解決しようとする技術として、例えば特許文献1には、エレベーター内に備えられた表示装置に、乗客が保持するスマートフォン等の通信端末を用いて外部に接続する手順を表示することにより、外部に連絡する方法を提供するエレベーター装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたエレベーター装置の場合、表示装置に表示された「外部に接続する手順」に沿って乗客が通信端末を操作できることが前提となるが、通信端末の操作方法が機種によって異なっている現状では、様々な通信端末を保持し得る乗客に対して、どのようにして上記手順を正確に伝えるかという点に課題があった。特に、前述した聴覚障碍者や外国人等の乗客においては、手順を正確に理解して実行することが困難であると想定される。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、エレベーターの閉じ込め発生時に、簡単な操作によって、かご内の乗客が音声を用いることなく外部と連絡できるようにする昇降機外部通報システム及び昇降機外部通報方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、エレベーターに閉じ込められた乗客から外部への通報を支援する昇降機外部通報システムとして、前記エレベーターのかご内に表示され、通信端末によって読み取り可能な読取コードと、前記エレベーターを遠隔から監視する遠隔監視センタと、前記遠隔監視センタとのテキストによるメッセージの交換機能を提供するアプリケーションを配信するアプリケーション管理サーバと、を備える昇降機外部通報システムが提供される。この昇降機外部通報システムにおいては、前記読取コードには、前記アプリケーション管理サーバに接続するための接続情報と、当該読取コードが表示された前記エレベーターを識別可能な識別情報と、が登録され、前記乗客が使用する前記通信端末によって前記読取コードを読み取った場合に、当該読取コードに登録された前記接続情報及び前記識別情報に基づいて、前記アプリケーション管理サーバから当該識別情報を埋め込んだ前記アプリケーションが当該通信端末に配信され、前記配信されたアプリケーションが前記通信端末において起されると、前記読取コードに登録された前記識別情報が当該通信端末から前記遠隔監視センタに通知され、当該通信端末と当該遠隔監視センタとの間でテキストによる前記メッセージの交換が可能とされることを特徴とする。
【0008】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、エレベーターに閉じ込められた乗客から外部への通報を支援する昇降機外部通報システムによる昇降機外部通報方法が提供される。ここで、前記昇降機外部通報システムは、前記エレベーターのかご内に表示され、通信端末によって読み取り可能な読取コードと、前記エレベーターを遠隔から監視する遠隔監視センタと、前記遠隔監視センタとのテキストによるメッセージの交換機能を提供するアプリケーションを配信するアプリケーション管理サーバと、を備える。そして、この昇降機外部通報方法においては、前記読取コードには、前記アプリケーション管理サーバに接続するための接続情報と、当該読取コードが表示された前記エレベーターを識別可能な識別情報と、が登録され、前記乗客が使用する前記通信端末によって前記読取コードを読み取った場合に、当該読取コードに登録された前記接続情報及び前記識別情報に基づいて、前記アプリケーション管理サーバから当該識別情報を埋め込んだ前記アプリケーションが当該通信端末に配信され、前記配信されたアプリケーションが前記通信端末において起されると、前記読取コードに登録された前記識別情報が当該通信端末から前記遠隔監視センタに通知され、当該通信端末と当該遠隔監視センタとの間でテキストによる前記メッセージの交換が可能とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エレベーターの閉じ込め発生時に、簡単な操作によって、かご内の乗客が音声を用いることなく外部と連絡できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る昇降機外部通報システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施の形態に係る昇降機外部通報システムを用いた外部通報の手順例を示すフローチャートである。
図3】外部通報の動作中におけるメッセージ交換の具体的な表示例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0012】
(1)構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る昇降機外部通報システムの構成例を示すブロック図である。昇降機外部通報システム1は、少なくとも、エレベーター2のかご3内に掲示(または表示)されて通信端末12によって読み取り可能な読取コード(詳細は後述する)と、遠隔監視網6を介して接続可能な遠隔監視センタ7及びアプリケーション管理サーバ11とを備えて構成される。
【0013】
図1に示したように、エレベーター2は、かご3の近傍に設置されたインターホン4と、インターホン4に接続された遠隔監視装置5とを備えている。遠隔監視装置5は、遠隔監視網6にも接続され、遠隔監視網6を介して、エレベーター2の外部に配置された遠隔監視センタ7及びアプリケーション管理サーバ11と双方向に通信することができる。そして、遠隔監視センタ7は、通信装置8、テキスト処理装置9、及び表示操作装置10を備えている。
【0014】
また、図1には、乗客が保持する通信端末12が示されている。通信端末12は、例えば、スマートフォンやタブレット等の、通信機能を有する携帯端末であって、遠隔監視網6を介して遠隔監視センタ7やアプリケーション管理サーバ11と双方向に通信することができる。詳細は後述するが、通信端末12にアプリケーション管理サーバ11から所定のアプリケーション(以後、専用アプリケーションと称する)をダウンロードして登録することにより、乗客は遠隔監視センタ7のオペレータと音声以外の方法(テキスト)によるメッセージ交換ができるようになる。
【0015】
以下に、図1に示した各構成について詳しく説明する。
【0016】
まず、エレベーター2には、インターホン4が備えられており、エレベーター2の故障等によって乗客がエレベーター2のかご3内に閉じ込められた場合に、インターホン4を用いて外部と音声による会話をすることができる。インターホン4には、音声による会話が可能な一般的なインターホン装置を用いることができる。
【0017】
また、エレベーター2に備えられた遠隔監視装置5は、エレベーター2の運転状態を遠隔から監視するための装置である。遠隔監視装置5には、プログラムの実行等によって所定の処理を行う計算機を用いることができる。
【0018】
具体的には、遠隔監視装置5は、遠隔監視網6を介して外部の遠隔監視センタ7に接続されることにより、エレベーター2の運転状況を遠隔監視センタ7(通信装置8)に通知する機能を有する。また、遠隔監視装置5は、エレベーター2のインターホン4にも接続されることによって、エレベーター2のかご3内の乗客がインターホン4を使用して外部(例えば遠隔監視センタ7)と会話を行う際に、音声を音声データにデータ化して送信したり、外部から受信した音声データを音声に変換してインターホン4に伝達したりする機能を有する。
【0019】
遠隔監視網6は、昇降機外部通報システム1における遠隔監視にのみ用いられる専用網としてもよいが、これに限定されるものではなく、例えばインターネット網としてもよい。
【0020】
遠隔監視センタ7は、遠隔監視装置5から送信される情報を解析してエレベーター2を遠隔から監視するとともに、閉じ込め発生時のような非常時にオペレータによって乗客との音声対応を行う機能を有する。例えば、遠隔監視センタ7は、オペレータによる音声対応のために、インターホン4から送信される音声データの処理等を行う。図1に示したように、遠隔監視センタ7は、少なくとも、通信装置8、テキスト処理装置9、及び表示操作装置10を備えて構成される。
【0021】
通信装置8は、外部との通信機能を有し、遠隔監視網6を介して通信データの送受信を行う。
【0022】
テキスト処理装置9は、通信端末12(乗客)と遠隔監視センタ7(オペレータ)とのメッセージ交換機能を有する。テキスト処理装置9は、翻訳機能も搭載しており、例えば、通信端末12の利用者(乗客)が日本語以外の言語(例えば英語)を用いてテキストデータを送信したとき、テキスト処理装置9は、オペレータが利用する言語として予め設定された言語(例えば日本語)に翻訳し、翻訳後のメッセージを表示操作装置10に表示することによってオペレータに通知する。また、テキスト処理装置9は、オペレータが自身の利用する言語(例えば日本語)でメッセージを登録したとき、対向となる通信端末12で用いられる言語に翻訳し、翻訳後のメッセージを通信装置8から送信する機能も有する。
【0023】
表示操作装置10は、遠隔監視センタ7の主にオペレータのための表示機能及び操作機能を有する。具体的には、表示機能はディスプレイ等によって実現され、遠隔監視センタ7と通信端末12との間で行われるメッセージ交換に伴うメッセージ等を表示する。操作機能はキーボード、マウス、あるいはマイク等によって実現され、上記メッセージ交換におけるオペレータのテキスト入力や、インターホン4との会話におけるオペレータの音声入力等を受け付ける。
【0024】
アプリケーション管理サーバ11は、アプリケーション管理サーバ11は遠隔監視網6に接続され、遠隔監視センタ7と通信端末12との間で通信(メッセージ交換)を行うための専用アプリケーションを提供する配信サーバである。アプリケーション管理サーバ11は、通信端末12からアプリケーションの提供要求を受けると、遠隔監視センタ7と接続可能な上記専用アプリケーションを通信端末12に配信する。
【0025】
ここで、本実施の形態における専用アプリケーションの提供について詳しく説明する。
【0026】
まず、エレベーター2の利用者(乗客)は、閉じ込め発生等の非常時以外では、遠隔監視センタ7に連絡する機会はないため、通常、通信端末12は、遠隔監視センタ7と通信する機能を備えていない。そこで、予めエレベーター2のかご3内に、一般的な通信端末(スマートフォン等)で読み取り可能なコード(読取コード)を掲示しておく。読取コードの種類は特に限定されないが、例えばQRコード(登録商標)に代表される二次元コードが考えられる。また、読取コードは、非常時に乗客が気づきやすいように掲示されることが好ましい。具体的には例えば、エレベーター2の行先を操作する操作パネルの周辺に読取コードが掲示される場合に、インターホン4の操作時に押下される押しボタンの近傍に、上記読取コードの存在を教示する表示を掲示する等が考えられる。また、読取コードの掲示方法は、例えばシール等を貼付する方法の他、情報提供のためにエレベーター2のかご3内に設置されたディスプレイにおいて、閉じ込め発生のタイミングで、乗客に読み取りを促すメッセージとともに読取コードを表示する方法等であってもよい。
【0027】
前述したように、エレベーター2において閉じ込め等が発生した非常時には、乗客はインターホン4を操作することによって、外部(遠隔監視センタ7)と音声による会話を行うことができる。しかし、乗客が聴覚障碍者や外国語を話す外国人等である場合には、インターホン4を利用して音声会話を成立させることが難しく、このような乗客は、自身が保持する通信端末12によって上記読取コードの読み取りを行う。
【0028】
ここで、読取コードには、遠隔監視センタ7からエレベーター2を識別するためのコード(エレベーター2の識別子)のほか、通信端末12と遠隔監視センタ7との間で通信(メッセージ交換)を行う「専用アプリケーション」のダウンロードのためにアプリケーション管理サーバ11に接続するための情報(例えばアプリケーション管理サーバ11のURL(Uniform Resource Locator))が登録されている。したがって、このような読取コードを読み取ることにより、通信端末12は、アプリケーション管理サーバ11に接続でき、遠隔監視センタ7と通信可能な専用アプリケーションをアプリケーション管理サーバ11からダウンロードして登録することができる。
【0029】
専用アプリケーションが通信端末12に登録されると、読取コードから読み取ったエレベーター2の識別子が通信端末12から遠隔監視センタ7に通知される。この結果、遠隔監視センタ7側では、どのエレベーター2にいる乗客からのアクセスであるかを識別することができ、オペレータが乗客とのメッセージ交換を開始する。以上のようにして、アプリケーション管理サーバ11から専用アプリケーションが乗客の通信端末12に提供され、乗客は、通信端末12に導入した専用アプリケーションを用いて、遠隔監視センタ7と通信(メッセージ交換)を行うことができるようになる。
【0030】
メッセージ交換の開始後は、オペレータが、エレベーター2の乗客とのメッセージ交換によって閉じ込め等の状況を把握すると、保守員を当該エレベーター2の設置場所に出動させて、乗客の救出及びエレベーター2の復旧を行わせる。
【0031】
なお、専用アプリケーションが提供するメッセージ交換機能は、閉じ込め発生等の非常時に利用するための機能であり、それ以外の通常時に通信端末12から遠隔監視センタ7にアクセスできることは好ましくない。したがって、乗客が救出された後は、専用アプリケーションを用いて通信端末12から遠隔監視センタ7にアクセスできないようにする。具体的には例えば、通信端末12と遠隔監視センタ7との通信を切断したことを契機として、専用アプリケーションに関するデータの一部または全てが通信端末12から消去されるようにする。このほかにも例えば、ダウンロードされる専用アプリケーションごとに一意なコードを持たせ、乗客救出後は、遠隔監視センタ7が、当該コードによる以後のアクセスを不許可と設定する等としてもよい。
【0032】
(2)外部通報
図2は、本実施の形態に係る昇降機外部通報システムを用いた外部通報の手順例を示すフローチャートである。また、図3は、外部通報の動作中におけるメッセージ交換の具体的な表示例を説明するための図である。以下では、図2及び図3を参照しながら、エレベーター2で乗客の閉じ込めが発生した際に、昇降機外部通報システム1がどのように動作するかを詳しく説明する。
【0033】
図2によれば、まず、ステップS1において、エレベーター2が停止してかご3内に乗客が閉じ込められたとする。このとき、閉じ込められた乗客による音声通話が可能か否かによってその後の外部通報手順が分かれる(ステップS2)。例えば乗客が健常な日本人であるときは、乗客による音声通話が可能な場合であり(ステップS2のYES)、このとき、通常の外部通報手順としてステップS13に進む。
【0034】
通常の外部通報手順では、閉じ込めの発生時に乗客がインターホン4を操作すると、当該操作を契機として、遠隔監視網6を介してインターホン4と遠隔監視センタ7との間で音声通話を開始することができる。
【0035】
ここでステップS13において、閉じ込められた乗客は、インターホン4を用いて遠隔監視センタ7のオペレータと音声による会話を行い、閉じ込めが発生したこと、及び当該閉じ込めが発生したエレベーター2の情報を伝達する。なお、外部通報に関する一般的な処理方法として、インターホン4の操作開始時や特定のボタン押下等を契機として、当該インターホン4が設置されたエレベーター2の情報が自動的に遠隔監視センタ7に送信されるようにしてもよい。何れにしても、オペレータは、閉じ込め発生に関して入手した情報を保守員に伝達し、連絡を受けた保守員は、エレベーター2が設置されている建物に出動することになる。
【0036】
ステップS13の後は、保守員による乗客の救助が完了したか否かを確認し(ステップS14)、完了していない場合は(ステップS14のNO)、ステップS13に戻り、オペレータは乗客との会話を継続する。そして、保守員による乗客の救助が完了した場合は(ステップS14のYES)、閉じ込め救出完了としてオペレータは音声通話を終了する(ステップS15)。閉じ込め救出完了の判定は、例えば、保守員がインターホン4や専用の通信機器を用いてオペレータに連絡する等によって行うことができる。
【0037】
そして、ステップS15の終了後は、エレベーター2における閉じ込め事案への対応が完了するので(ステップS12)、外部通報手順は終了となる。
【0038】
一方、ステップS2において、例えば乗客が聴覚障碍者であったり、日本語を話すことができない外国人であったりするときは、乗客による音声通話が不可能な場合となり(ステップS2のNO)、このとき、ステップS3に進み、本実施の形態に係る昇降機外部通報システム1に特有の機能による特別な外部通報手順が実行される。
【0039】
特別な外部通報手順では、閉じ込められた乗客が音声による通話を行うことができないため、乗客が所有する通信端末12を用いて、音声通話以外によるコミュニケーション方法が提供される。
【0040】
具体的には、まず、ステップS3において、乗客は、通信端末12のカメラ機能等を用いて、エレベーター2のかご3内に掲示されている読取コードを読み取る。ここで、(1)で詳述したように、読取コードには、遠隔監視センタ7からエレベーター2を識別するためのコード(エレベーター2の識別子)のほか、通信端末12と遠隔監視センタ7との間で通信(メッセージ交換)を行う「専用アプリケーション」のダウンロードのためにアプリケーション管理サーバ11に接続するための情報(例えばURL)が登録されている。
【0041】
したがって、ステップS3において読取コードの読み取りが行われると、遠隔監視センタ7と通信可能な専用アプリケーションを提供するアプリケーション管理サーバ11に誘導され、専用アプリケーションのダウンロードが実施される(ステップS4)。
【0042】
なお、通信端末12がアプリケーション管理サーバ11にアクセスした際には、読取コードが掲示されたエレベーター2を識別可能な情報も併せてアプリケーション管理サーバ11に通知されることで、アプリケーション管理サーバ11は、ダウンロードする専用アプリケーションにエレベーター2の識別情報を事前に埋め込むことができる。すなわち、通信端末12では、このような専用アプリケーションを登録することにより、その起動時に、通信端末12から遠隔監視センタ7に接続できるだけでなく、どのエレベーターからの接続であるか(この場合は、エレベーター2内からの接続であること)を遠隔監視センタ7に自動的に通知することができる。この結果、遠隔監視センタ7では、乗客に問い合わせることなく、どこのエレベーターで閉じ込めが発生したかを判断することができる。
【0043】
ステップS5では、乗客は通信端末12で専用アプリケーションを起動する。このとき、専用アプリケーションは、当該専用アプリケーションを実行している通信端末12で現在有効になっている言語設定を読み取り、言語設定を示す情報(言語設定情報)を添えて遠隔監視センタ7(通信装置8)に接続を行う。この結果、遠隔監視センタ7側では、通信端末12で現在有効になっている言語設定に応じたメッセージ交換機能の提供を開始することができる。
【0044】
なお、専用アプリケーションのメッセージ交換機能における言語設定については、上記のように自動で設定を取得して対応する方法の他に、専用アプリケーションの起動時に乗客が自身で選択して通知するような方法であってもよい(以下に説明する図3(A)を参照)。
【0045】
ここで、図3には、メッセージ交換における具体的な表示例として、時系列で(A)~(F)の6つの表示例が示されている。このうち、上半分に示された(A),(D),(E)は、通信端末12、すなわち乗客側における表示例であり、下半分に示された(B),(C),(F)は、遠隔監視センタ7、すなわちオペレータ側における表示例である。
【0046】
図3(A)は、図2のステップS5における乗客側の表示例に相当し、メッセージ111で「日本語」を使用することが選択され、メッセージ112で「文字での会話を希望」することが示されている。これらのメッセージが送信されることによって、遠隔監視センタ7(特にテキスト処理装置9)は、「日本語」による文字のメッセージ交換機能を提供すればよいことを判断できる。
【0047】
そして、図2のステップS6~S9にかけては、メッセージ交換が行われる。
【0048】
具体的には、ステップS6において、乗客が通信端末12を操作して、自身が使用する言語(通信端末12に設定された言語)でオペレータに対するメッセージを入力し、遠隔監視センタ7に送信する。そして遠隔監視センタ7では、通信装置8が通信端末12からのメッセージを受信すると、テキスト処理装置9がオペレータが使用する言語に当該メッセージを翻訳した後、表示操作装置10が翻訳後のメッセージを出力することでオペレータに通知する(ステップS7)。
【0049】
なお、表示操作装置10による翻訳後メッセージの出力方法は、ディスプレイにテキスト表示する方法に限るものではなく、例えば、翻訳後メッセージを音声読み上げするような方法であってもよい。
【0050】
次いで、遠隔監視センタ7のオペレータは、ステップS7で通知されたメッセージを確認すると、表示操作装置10を操作して、自身が使用する言語で、エレベーター2の乗客向けに応答メッセージを入力する(ステップS8)。そして、ステップS8で入力された応答メッセージは、テキスト処理装置9によって、通信端末12に設定された言語に翻訳された後、通信装置8から通信端末12に送信されて、通信端末12に表示される(ステップS9)。
【0051】
なお、表示操作装置10による応答メッセージの入力方法は、オペレータがキーボード等を操作してテキストを直接入力する方法に限るものではなく、例えば、マイクを使って音声入力したものをテキスト変換するような方法であってもよいし、予め用意された定型文のなかから会話に適したものをオペレータが選択するような方法であってもよい。
【0052】
そしてステップS9の後は、保守員による乗客の救助が完了したか否かを確認し(ステップS10)、完了していない場合は(ステップS10のNO)、ステップS6に戻り、乗客とオペレータとの間のメッセージ交換が継続される。
【0053】
以上のステップS6~S10の手順が繰り返されることにより、本実施の形態に係る昇降機外部通報システム1では、使用する言語が異なっていたとしても、エレベーター2に閉じ込められた乗客と遠隔監視センタ7のオペレータとの間でメッセージ交換ができ、コミュニケーションを図ることが可能となる。
【0054】
ここで図3の表示例を見ていくと、図3(A)では、前述したように、「日本語」で「文字での会話を希望」することが、乗客側(通信端末12)から入力される。この入力メッセージに対応して、オペレータ側(遠隔監視センタ7)では、図3(B)のメッセージ121のような表示が行われる。なお、メッセージ121では、「○○ビルのエレベーター」という表記がなされているが、これは、エレベーター2の識別情報に基づいて自動生成されたものである。
【0055】
次に、図3(C)では、メッセージ121への応答メッセージとして、オペレータが入力したメッセージ122が示されている。メッセージ122は、乗客に対してどのような状況であるかを問いかけている。このメッセージ122が通信端末12に送信されたものが図3(D)のメッセージ113であり、オペレータの応答メッセージの内容が伝達されていることが分かる。
【0056】
その後、図3(E)では、メッセージ113に対する乗客からの応答メッセージとして「エレベーターが止まった」ことを伝えるメッセージ114が入力されている。そして、図3(F)では、メッセージ114の内容をオペレータ側に通知するものとしてメッセージ123が示されている。その後は省略しているが、このようなメッセージの交換は、乗客が閉じ込めから救出されるまで続けられる。
【0057】
なお、図3では、乗客及びオペレータがともに日本語を使用言語としている場合の表示例であるが、例えばオペレータの使用言語が英語である場合には、図3(B),(C),(F)の表示は英語表記となる。その場合でも、各メッセージは翻訳されて伝達されるため、例えばメッセージ122とメッセージ113、及びメッセージ114とメッセージ123は、それぞれ概ね同じ内容を表すものとなる。
【0058】
図2を参照した説明に戻る。その後、ステップS10の判定において保守員による乗客の救助が完了した場合は(ステップS10のYES)、閉じ込め救出完了としてオペレータはメッセージ交換を終了する(ステップS11)。閉じ込め救出完了の判定は、例えば、保守員がインターホン4や専用の通信機器を用いてオペレータに連絡する等によって行うことができる。また例えば、乗客による専用アプリケーションの終了操作に基づいて判定するようにしてもよい。
【0059】
なお、メッセージ交換の終了処理が行われる際は、それまで起動していた専用アプリケーションによって以後は遠隔監視センタ7に接続できないような処理が行われることが好ましい。これは、当該専用アプリケーションは、今回の閉じ込めのみに対応するために、閉じ込めが発生した特定のエレベーター2に紐付いたメッセージ交換機能を提供するものであり、今後の再利用を想定したものではないためである。具体的には、専用アプリケーションの一部(例えば、エレベーター2の固有情報)または全てを通信端末12から自動削除するようにしたり、当該専用アプリケーションによるアクセスを遠隔監視センタ7(主に通信装置8)側で許可しないように設定したりする。このようにすることで、役割を終えた専用アプリケーションが想定外の用途に用いられるリスクを抑制することができる。
【0060】
そして、ステップS11の終了後は、エレベーター2における閉じ込め事案への対応が完了するので(ステップS12)、外部通報手順は終了となる。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る昇降機外部通報システム1によれば、エレベーターの閉じ込め発生時に、かご内の乗客が音声通話ができない場合であっても、簡単な操作によって、音声以外の手段によって外部と連絡できるようにすることができる。
【0062】
特に、本実施の形態に係る昇降機外部通報システム1は、外部との連絡用に提供されるメッセージ交換機能は、乗客の通信端末で読取コードを読み取って登録するだけで実施可能であることから、乗客が言語的または音声コミュニケーション的に困難を抱えていたとしても、外部通報の手順を正確に理解させることが非常に容易であり、閉じ込めという緊急状態にある乗客に負担を強いることなく、安心させる効果にも期待できる。
【0063】
また、本実施の形態に係る昇降機外部通報システム1は、管理側(遠隔監視センタ7側)からみると、専用アプリケーションの起動によって閉じ込めが発生したエレベーター2を自動的に識別できることにより、非常事態のなかにある乗客に負担を掛けることなく、必要な情報を入手することができ、速やかな復旧に向けた対応を取りやすいという効果に期待できる。また、メッセージ交換においてテキストの翻訳処理が行われることにより、オペレータと乗客との使用言語の違いを解消できることから、状況の把握や対応がしやすく、保守性の向上に期待できる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施の形態の構成の一部について、構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0065】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0066】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実施には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 昇降機外部通報システム
2 エレベーター
3 かご
4 インターホン
5 遠隔監視装置
6 遠隔監視網
7 遠隔監視センタ
8 通信装置
9 テキスト処理装置
10 表示操作装置
11 アプリケーション管理サーバ
12 通信端末
図1
図2
図3