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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220119BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018116504
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019221061
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木田 喜啓
(72)【発明者】
【氏名】木村 光徳
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-056166(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157374(WO,A1)
【文献】特開2007-295694(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームスイッチ(SH)及び下アームスイッチ(SL)を備える電力変換装置(20)において、
直流電源(10)の正極側が接続される第1接続点(SP1)と前記上アームスイッチの高電位側端子とを接続する正極側経路(12H)と、
前記直流電源の負極側が接続される第2接続点(SP2)と前記下アームスイッチの低電位側端子とを接続する負極側経路(12L)と、
前記上アームスイッチの低電位側端子と前記下アームスイッチの高電位側端子とを接続する中間経路(13)と、
前記第1接続点と前記第2接続点との間に接続される電源側コンデンサ(11)と、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチを交互にオン状態とする駆動部(40)と、
前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、いずれのスイッチが前記駆動部により次回オン状態とされるかの情報である次回オン情報に基づいて、前記正極側経路の正極側インダクタンス(IH)、前記負極側経路の負極側インダクタンス(IL)、前記上アームスイッチの高電位側端子と基準電位導体(GD)との間の正極側静電容量(CP1)、前記下アームスイッチの低電位側端子と前記基準電位導体との間の負極側静電容量(CP4)、並びに前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子の少なくとも一方と前記基準電位導体との間の中間静電容量(CP2,CP3)のうち、少なくとも一つの値を可変に制御する制御部(40,90)と、を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記正極側インダクタンスと前記負極側インダクタンスとの少なくとも一方の値を可変に制御する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記正極側経路と前記負極側経路との少なくとも一方の経路は、
互いに並列接続された2以上の経路(12HT,12HN)と、
前記2以上の経路のうち、少なくとも一つの経路に設けられ、開状態と閉状態とに切り替えられる切替部(SW)と、を含み、
前記制御部は、前記次回オン情報に基づいて、前記切替部の開閉状態を切り替える請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記一方の経路と磁気結合された電磁コイル(54)と、前記電磁コイルに電流を流すコイル電源(52)と、開状態と閉状態とに切り替えられる切替部(SW)とを含むループ回路(50)を備え、
前記制御部は、前記次回オン情報に基づいて、前記切替部の開閉状態を切り替える請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記正極側静電容量、前記負極側静電容量、及び前記中間静電容量の少なくとも一つの値を可変に制御する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記正極側静電容量、前記負極側静電容量、及び前記中間静電容量のうち、少なくとも一つの容量に直列接続され、開状態と閉状態とに切り替えられる切替部(SW1,SW2)を備え、
前記制御部は、前記次回オン情報に基づいて、前記切替部の開閉状態を切り替える請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記正極側静電容量、前記負極側静電容量、及び前記中間静電容量のうち、少なくとも一つの容量は、容量を可変とする可変コンデンサ(80)であり、
前記制御部は、前記次回オン情報に基づいて、前記可変コンデンサの容量を可変に制御する請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記中間経路に流れる電流を検出する電流検出部(91)を備え、
前記制御部は、前記電流検出部により検出された電流に基づいて、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうちいずれのスイッチが前記駆動部により次回オン状態とされるかを判定する請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に見られるように、上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を備える電力変換装置が知られている。上アームスイッチ及び下アームスイッチが半導体スイッチである場合、上,下アームスイッチのそれぞれには、逆並列に接続された還流ダイオードが形成されている。このような電力変換装置では、例えば直列接続体の上アームスイッチの高電位側端子に、直流電源の正極側が接続され、直列接続体の下アームスイッチの低電位側端子に、直流電源の負極側が接続されている。上アームスイッチの低電位側端子と下アームスイッチの高電位側端子とは中間経路により接続されており、この中間経路が外部負荷に接続されている。電力変換装置では、上,下アームスイッチがデッドタイムを挟みつつ交互にオン状態とされることで、直流電源の電圧が負荷に印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-41524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上,下アームスイッチが交互にオン状態とされることに起因して、還流ダイオードにはリカバリ電流が流れる。リカバリ電流は、還流ダイオードと中間経路とを含む閉ループ回路を循環する。リカバリ電流が流れる還流ダイオードは、オン状態とされるアームスイッチによって切り替わる。これにより、リカバリ電流が循環する閉ループ回路が切り替わると、リカバリ電流が電力変換装置の外部に漏洩してノイズとなり得る。このため、オン状態とされるアームスイッチが切り替わっても、リカバリ電流が電力変換装置の外部に漏洩することを抑制できる技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、オン状態とされるアームスイッチが切り替わっても、リカバリ電流が電力変換装置の外部に漏洩することを抑制できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上アームスイッチ及び下アームスイッチを備える電力変換装置において、直流電源の正極側が接続される第1接続点と前記上アームスイッチの高電位側端子とを接続する正極側経路と、前記直流電源の負極側が接続される第2接続点と前記下アームスイッチの低電位側端子とを接続する負極側経路と、前記上アームスイッチの低電位側端子と前記下アームスイッチの高電位側端子とを接続する中間経路と、前記第1接続点と前記第2接続点との間に接続される電源側コンデンサと、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチを交互にオン状態とする駆動部と、前記上アームスイッチ及び前記下アームスイッチのうち、いずれのスイッチが前記駆動部により次回オン状態とされるかの情報である次回オン情報に基づいて、前記正極側経路の正極側インダクタンス、前記負極側経路の負極側インダクタンス、前記上アームスイッチの高電位側端子と基準電位導体との間の正極側静電容量、前記下アームスイッチの低電位側端子と前記基準電位導体との間の負極側静電容量、並びに前記上アームスイッチの低電位側端子及び前記下アームスイッチの高電位側端子の少なくとも一方と前記基準電位導体との間の中間静電容量のうち、少なくとも一つの値を可変に制御する制御部と、を備える。
【0007】
リカバリ電流が循環する閉ループ回路の容量やインダクタンス(以下、容量等という)を調整することで、リカバリ電流が電力変換装置の外部に漏洩することを抑制することが可能である。しかし、オン状態とされるスイッチが切り替り、リカバリ電流が循環する閉ループ回路が切り替わると、各閉ループ回路の容量等を調整することができないことがある。例えば中間経路は、いずれの閉ループ回路にも含まれる。そのため、一方の閉ループ回路を用いて中間経路の容量等を調整した場合でも、その調整値が他方の閉ループ回路において適切でないことがあり得る。この場合、他方の閉ループ回路の容量等を調整することができず、リカバリ電流が電力変換装置の外部に漏洩することを抑制することができない。
【0008】
本発明の電力変換装置は、上アームスイッチ及び下アームスイッチのうち、いずれのスイッチが駆動部により次回オン状態とされるかの情報である次回オン情報に基づいて、正極側インダクタンス、負極側インダクタンス、正極側静電容量、負極側静電容量、並びに中間静電容量の少なくとも一つの値を可変に制御する制御部を備えている。これにより、次回オン状態とされるスイッチに対応する閉ループ回路毎に、閉ループ回路の容量等を適切に調整することができる。この結果、リカバリ電流が電力変換装置の外部に漏洩することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】制御システムの全体構成図。
図2】第1実施形態に係るインバータを示す図。
図3】上アームリカバリ電流が流れる場合におけるインバータの等価回路を示す図。
図4】下アームリカバリ電流が流れる場合におけるインバータの等価回路を示す図。
図5】リカバリ電流により発生するノイズのノイズ強度を示すグラフ。
図6】リカバリ電流により発生するノイズの周波数特性を示すグラフ。
図7】第2実施形態に係るインバータを示す図。
図8】第3実施形態に係るインバータを示す図。
図9】第4実施形態に係るインバータを示す図。
図10】その他の実施形態に係るインバータを示す図。
図11】その他の実施形態に係るインバータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、回転電機の制御システムを構成する。
【0011】
図1に示すように、制御システムは、直流電源10、電力変換装置を構成するインバータ20、及び回転電機30を備えている。直流電源10は、例えば2次電池である。
【0012】
回転電機30は、インバータ20を介して直流電源10に電気的に接続されている。本実施形態では、回転電機30として、3相のものを用いている。回転電機30は、3相分の巻線31を備えている。各巻線31の第1端には、バスバー等の導電部材14を介して各アーム部21が接続されている。各巻線31の第2端は、中性点で接続されている。すなわち、各巻線31は星形結線されている。回転電機30は、例えば永久磁石同期機である。
【0013】
インバータ20は、正極側経路を構成する正極側導電部材12H、負極側経路を構成する負極側導電部材12L、中間経路を構成する中間導電部材13、電源側コンデンサを構成する平滑コンデンサ11、3相分のアーム部21、並びに駆動部及び制御部を構成する制御装置40を備えている。正極側導電部材12H及び負極側導電部材12Lは、例えばバスバーである。正極側導電部材12Hは、第1接続点SP1において直流電源10の正極側と接続されている。負極側導電部材12Lは、第2接続点SP2において直流電源10の負極側と接続されているとともに、接地電位を有するグランドに接続されている。
【0014】
平滑コンデンサ11は、第1接続点SP1と第2接続点SP2との間に接続されている。平滑コンデンサ11は、直流電源10に対して並列接続され、直流電源10の出力電圧の変動を抑制する。
【0015】
図2を用いて、各アーム部21の構成について説明する。本実施形態において、各アーム部21は、基本的には同じ構成である。このため、図2には、1相分のアーム部21を示す。
【0016】
アーム部21は、上アームスイッチSHと下アームスイッチSLとを備えている。本実施形態において、各スイッチSH,SLは、IGBTである。上アームスイッチSHには、上アームダイオードDHが逆並列に接続され、下アームスイッチSL1には、下アームダイオードDLが逆並列に接続されている。
【0017】
上アームスイッチSHの高電位側端子であるコレクタは、正極側導電部材12Hを介して第1接続点SP1に接続されている。上アームスイッチSHの低電位側端子であるエミッタは、中間導電部材13を介して下アームスイッチSLのコレクタに接続されているとともに、導電部材14を介して対応する巻線31の第1端に接続されている。回転電機30に接続されている。下アームスイッチSLのコレクタは、負極側導電部材12Lを介して第2接続点SP2に接続されている。
【0018】
導電部材12H,12L及びスイッチSH,SLには、寄生インダクタンスや寄生容量が形成されている。具体的には、正極側導電部材12Hには、正極側インダクタンスIHが形成されており、負極側導電部材12Lには、負極側インダクタンスILが形成されている。
【0019】
上アームスイッチSHのコレクタと、グランドに接続された接地導体GDとの間には、第1容量CP1が形成されており、上アームスイッチSHのエミッタと接地導体GDとの間には、第2容量CP2が形成されている。下アームスイッチSLのコレクタと接地導体GDとの間には、第3容量CP3が形成されており、下アームスイッチSLのエミッタと接地導体GDとの間には、第4容量CP4が形成されている。本実施形態において、第1容量CP1は「正極側静電容量」の一例であり、第2容量CP2と第3容量CP3とは「中間静電容量」の一例であり、第4容量CP4は「負極側静電容量」の一例である。また、接地導体GDは「基準電位導体」の一例である。本実施形態において、接地導体GDは、IGBTである各スイッチSH,SLを冷却する冷却器(ヒートシンク)であり、接地電位を有するグランドは、インバータ20を収容するケースである。
【0020】
制御装置40は、回転電機30の制御量をその指令値に制御すべく、各アーム部21を駆動する。制御量は、例えばトルクである。制御装置40は、各アーム部21の各スイッチSH,SLをオン状態(閉状態)又はオフ状態(開状態)とすべく、各スイッチSH,SLに対応する駆動信号を、各スイッチSH,SLのゲートに対して出力する。本実施形態では、各アーム部21において、上アームスイッチSHと下アームスイッチSLとは、デッドタイムを挟みつつ交互にオン状態とされる。
【0021】
ところで、各アーム部21において、上アームスイッチSHと下アームスイッチSLとが交互にオン状態とされることに起因して、各ダイオードDH,DLにはリカバリ電流が流れ得る。例えば、デッドタイムの後、下アームスイッチSLがオン状態に切り替えられると、上アームダイオードDHに、カソードからアノードに向かう上アームリカバリ電流RH(図3参照)が流れる。
【0022】
図3には、上アームリカバリ電流RHが流れる場合におけるインバータ20の等価回路を示す。この等価回路では、上アームダイオードDHが、上アームリカバリ電流RHを発生させる電源として記載されている。オン状態の下アームスイッチSLは、低抵抗な導体として機能するため、その記載が省略されている。同様に、平滑コンデンサ11は、所定の周波数成分を含む上アームリカバリ電流RHに対して導体として機能するため、その記載が省略されている。
【0023】
図3に破線にて示すように、上アームリカバリ電流RHとして、中間導電部材13、負極側導電部材12L、平滑コンデンサ11、及び正極側導電部材12Hを含む第1閉ループ回路CS1を循環する第1上アームリカバリ電流RH1が流れる。また、上アームリカバリ電流RHとして、中間導電部材13、第2容量CP2と第3容量CP3と第4容量CP4との第1合成容量CPA、接地導体GD、及び第1容量CP1を含む第2閉ループ回路CS2を循環する第2上アームリカバリ電流RH2が流れる。
【0024】
接地導体GDと平滑コンデンサ11とは、インピーダンスZcを介して接続されている。そのため、第1上アームリカバリ電流RH1により平滑コンデンサ11に発生する電位が接地電位と異なる場合には、上アームリカバリ電流RHの一部RH3がインピーダンスZcを介して流れる。つまり、上アームリカバリ電流RHの一部RH3がインバータ20の外部に漏洩してノイズとなり得る。なお、インピーダンスZcは、グランドと平滑コンデンサ11との間のインピーダンスである。
【0025】
そのため、インバータ20では、第1上アームリカバリ電流RH1により平滑コンデンサ11に発生する電位が接地電位となるように、寄生インダクタンスIH,ILや寄生容量CP1~CP4の値が調整されている。具体的には、これらの値が以下の式1を満たすように調整されている。
IH×CP1=IL×CPA=IL×(CP2+CP3+CP4)・・・(式1)
【0026】
また例えば、デッドタイムの後、上アームスイッチSHがオン状態に切り替えられると、下アームダイオードDLに、カソードからアノードに向かう下アームリカバリ電流RL(図4参照)が流れる。
【0027】
図4には、下アームリカバリ電流RLが流れる場合におけるインバータ20の等価回路を示す。この等価回路では、下アームダイオードDLが、下アームリカバリ電流RLを発生させる電源として記載されている。オン状態の上アームスイッチSHは、低抵抗な導体として機能するため、その記載が省略されている。同様に、平滑コンデンサ11は、所定の周波数成分を含む下アームリカバリ電流RLに対して導体として機能するため、その記載が省略されている。
【0028】
図4に破線にて示すように、下アームリカバリ電流RLとして、第1閉ループ回路CS1を循環する第1下アームリカバリ電流RL1が流れる。また、下アームリカバリ電流RLは、第4容量CP4、接地導体GD、第1容量CP1と第2容量CP2と第3容量CP3との第2合成容量CPB、及び中間導電部材13を含む第3閉ループ回路CS3を循環する第2下アームリカバリ電流RL2が流れる。つまり、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとでは、循環する閉ループ回路CS2,CS3が異なる。
【0029】
上述したように、接地導体GDと平滑コンデンサ11とは、インピーダンスZcを介して接続されている。そのため、第1下アームリカバリ電流RL1により平滑コンデンサ11に発生する電位が接地電位と異なる場合には、下アームリカバリ電流RLの一部RL3がインピーダンスZcに流れてノイズとなり得る。
【0030】
そのため、インバータ20では、第1下アームリカバリ電流RL1により平滑コンデンサ11に発生する電位が接地電位となるように、寄生インダクタンスIH,ILや寄生容量CP1~CP4の値が調整されることが好ましい。具体的には、以下の式2を満たすように調整されることが好ましい。
IH×CPB=IH×(CP1+CP2+CP3)=IL×CP4・・・(式2)
【0031】
しかし、式1と式2との連立方程式は、第2容量CP2と第3容量CP3との第3合成容量CPC(図2参照)がゼロの場合に成り立つ。そのため、第3合成容量CPCがゼロでない場合には、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとの少なくとも一方がインピーダンスZcに流れてノイズとなり得る。
【0032】
そこで、本実施形態では、正極側インダクタンスIHが可変に設けられている。具体的には、図2に示すように、正極側導電部材12Hには、第1経路を構成する調整経路12HTと第2経路を構成する常時経路12HNとが設けられている。調整経路12HTと常時経路12HNとは、第1接続点SP1と上アームスイッチSHのコレクタとの間に並列接続されている。調整経路12HTの寄生インダクタンスはIHTであり、常時経路12HNの寄生インダクタンスはIHNである。
【0033】
また、調整経路12HTには、切替部を構成する正極側スイッチSWHが設けられている。制御装置40は、正極側スイッチSWHを開状態(オフ状態)又は閉状態(オン状態)に切り替えるための制御信号を、正極側スイッチSWHに対して出力する。詳細には、制御装置40は、制御装置40によりスイッチSH,SLのうち、いずれのスイッチが次回オン状態とされるかの情報である次回オン情報に基づいて、正極側スイッチSWHの開閉状態を切り替える。
【0034】
具体的には、図3に示すように、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合、制御装置40は正極側スイッチSWHを開状態に切り替える。制御装置40は、下アームスイッチSLがオン状態に切り替えられるまでに次回オン状態を取得し、例えば下アームスイッチSLがオン状態に切り替えられる直前に正極側スイッチSWHを開状態に切り替える。例えば、制御装置40は、上アームスイッチSHがオフ状態に切り替えられてから、下アームスイッチSLがオン状態に切り替えられるまでのデッドタイムに、正極側スイッチSWHを開状態に切り替える。
【0035】
本実施形態において、負極側インダクタンスILはLxであり、調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTはLx/3であり、常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNは3Lxである。また、第1~第4容量CP1~CP4は、Cxである。正極側スイッチSWHが開状態に切り替えられると、正極側インダクタンスIHは、常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNである3Lxとなる。この結果、以下の式3、4に示すように式1が満たされ、上アームリカバリ電流RHがインピーダンスZcに流れない。
IH×CP1=3Lx×Cx=3Lx・Cx・・・(式3)
IL×CPA=Lx×3Cx=3Lx・Cx・・・(式4)
【0036】
また、図4に示すように、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合、制御装置40は正極側スイッチSWHを閉状態に切り替える。制御装置40は、上アームスイッチSHがオン状態に切り替えられるまでに次回オン状態を取得し、例えば上アームスイッチSHがオン状態に切り替えられる直前に正極側スイッチSWHを閉状態に切り替える。例えば、制御装置40は、下アームスイッチSLがオフ状態に切り替えられてから、上アームスイッチSHがオン状態に切り替えられるまでのデッドタイムに、正極側スイッチSWHを閉状態に切り替える。
【0037】
正極側スイッチSWHが閉状態に切り替えられると、正極側インダクタンスIHは、調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTと常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNとの合成インダクタンスとなる。具体的には、インダクタンスが小さい調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTであるLx/3と略等しくなる。この結果、以下の式5、6に示すように式2が満たされ、下アームリカバリ電流RLがインピーダンスZcに流れない。
IH×CPB=Lx/3×3Cx=Lx・Cx・・・(式5)
IL×CP4=Lx×Cx=Lx・Cx・・・(式6)
【0038】
つまり、制御装置40は、次回オン情報に基づいて正極側インダクタンスIHを可変に制御する。そのため、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合には、常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNを調整することで、式1が成り立つようにすることができる。また、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合には、調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTを調整することで、式2が成り立つようにすることができる。これにより、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとのいずれもがインピーダンスZcに流れないようにすることができ、ノイズを抑制することができる。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0040】
本実施形態では、制御装置40は、次回オン情報に基づいて正極側インダクタンスIHを可変に制御する。これにより、次回オン状態とされるスイッチに対応する閉ループ回路CS2,CS3毎に、正極側インダクタンスIHを好適に調整することができ、ノイズを抑制することができる。
【0041】
図5に、本実施形態と従来の形態、つまり正極側インダクタンスIHが一定値である形態とのノイズ強度を比較する。図5では、横軸に、リカバリ電流RH,RL発生からの経過時間が示されており、縦軸に、ノイズ強度が示されている。また、図5において、曲線C1は本実施形態を示し、曲線C2は従来の形態を示す。図5に示すように、本実施形態によれば、リカバリ電流RH,RLの発生時におけるノイズ強度を従来に比べて略半分程度に抑制することができる。
【0042】
図6に、ノイズの周波数特性を示す。図6では、横軸に、ノイズ周波数の対数値が示されており、縦軸に、ノイズ強度が示されている。図6に示すように、本実施形態によれば、ノイズ周波数がFa以上の領域において、ノイズ強度を従来に比べて好適に抑制することができる。
【0043】
本実施形態では、制御装置40は、正極側インダクタンスIHを可変に制御する。そのため、スイッチSH,SLのコレクタ又はエミッタと接地導体GDとの間に形成された容量が寄生容量であり、これらの容量を可変に制御することができない場合でも、リカバリ電流RH,RLがインバータ20の外部に漏洩することを抑制することができる。
【0044】
本実施形態では、正極側導電部材12Hに互いに並列接続された調整経路12HTと常時経路12HNとが設けられており、調整経路12HTに設けられた正極側スイッチSWHの開閉状態を切り替えることで、正極側インダクタンスIHを可変に制御する。調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTと常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNとは、別々に調整することができる。具体的には、これらの経路12HT,12HNにリカバリ電流RH,RLが流れる方向における長さや断面積を調整することにより、それぞれの寄生インダクタンスIHT,IHNを調整することができる。これにより、正極側インダクタンスIHを好適に調整することができる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0046】
本実施形態では、図7に示すように、調整経路12HTに正極側スイッチSWHが設けられていない点、及びインバータ20が調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTを可変に制御するためのループ回路50を備えている点で異なる。なお、図7は、本実施形態に係るインバータ20を示す図である。図7において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
ループ回路50は、コイル電源を構成する交流電源52、電磁コイル54、及び切替部を構成するループ側スイッチSWRを備えている。交流電源52は、電磁コイル54に電流を流すための電源である。そのため、回転電機30を駆動するための制御量(トルク)を回転電機30に与える直流電源10に比べて、出力電圧の絶対値が小さい。
【0048】
電磁コイル54は、調整経路12HTに対向配置されているとともに、調整経路12HTに近接配置されている。そのため、電磁コイル54は、通電により調整経路12HTに対して磁気相互作用を及ぼす。つまり、電磁コイル54と調整経路12HTとは、磁気結合されている。したがって、電磁コイル54に電流が流れているか否かにより、調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTが変化する。
【0049】
制御装置40は、ループ側スイッチSWRを開状態(オフ状態)又は閉状態(オン状態)に切り替えるための制御信号を、ループ側スイッチSWRに対して出力する。詳細には、制御装置40は、次回オン情報に基づいてループ側スイッチSWRの開閉状態を切り替える。
【0050】
具体的には、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合、制御装置40はループ側スイッチSWRを開状態に切り替える。これにより、調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTは、磁気相互作用のない通常時の寄生インダクタンスIHAとなり、正極側インダクタンスIHは、通常時の寄生インダクタンスIHAと常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNとの合成インダクタンスとなる。
【0051】
また、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合、制御装置40はループ側スイッチSWRを閉状態に切り替える。これにより、調整経路12HTの寄生インダクタンスIHTは、磁気相互作用時の寄生インダクタンスIHBとなり、正極側インダクタンスIHは、磁気相互作用時の寄生インダクタンスIHBと常時経路12HNの寄生インダクタンスIHNとの合成インダクタンスとなる。
【0052】
つまり、制御装置40は、次回オン情報に基づいて正極側インダクタンスIHを可変に制御する。そのため、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合には、通常時の寄生インダクタンスIHAを調整することで、式1が成り立つようにすることができる。また、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合には、磁気相互作用時の寄生インダクタンスIHB、例えば、電磁コイル54に流れる電流等を調整することで、式2が成り立つようにすることができる。これにより、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとのいずれもがインピーダンスZcに流れないようにすることができ、ノイズを抑制することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、ループ回路50を備えており、ループ回路50に設けられたループ側スイッチSWRの開状態と閉状態とを切り替えることで、正極側インダクタンスIHを可変に制御する。交流電源52の出力電圧の絶対値は、直流電源10の出力電圧の絶対値よりも小さい。そのため、ループ回路50側に正極側インダクタンスIHを可変に制御するためのスイッチを設けることで、正極側スイッチSWHを調整経路12HT側に設ける場合に比べて、スイッチの切替時に生じるスイッチング損失を小さくすることができる。これにより、インバータ20の電力損失を低減しつつ、正極側インダクタンスIHを適切に調整することができる。
【0054】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0055】
本実施形態では、図8に示すように、正極側導電部材12Hに調整経路12HTが設けられていない点、並びに第1容量CP1を形成する第1コンデンサ62及び第4容量CP4を形成する第2コンデンサ72を備えている点で異なる。なお、図8は、本実施形態に係るインバータ20を示す図である。図8において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、第1容量CP1は寄生容量ではなく、上アームスイッチSHのエミッタと接地導体GDとの間に設けられた第1コンデンサ62の容量である。第1コンデンサ62は、第1直列回路60に設けられている。第1直列回路60は、上アームスイッチSHのエミッタと接地導体GDとの間に設けられており、直列接続された第1コンデンサ62と第1スイッチSW1とを含む。
【0057】
また、第4容量CP4は寄生容量ではなく、下アームスイッチSLのコレクタと接地導体GDとの間に設けられた第2コンデンサ72の容量である。第2コンデンサ72は、第2直列回路70に設けられている。第2直列回路70は、下アームスイッチSLのコレクタと接地導体GDとの間に設けられており、直列接続された第2コンデンサ72と第2スイッチSW2とを含む。
【0058】
制御装置40は、スイッチSW1,SW2を開状態又は閉状態に切り替えるべく、スイッチSW1,SW2に対する制御信号を、スイッチSW1,SW2に対して出力する。詳細には、制御装置40は、次回オン情報に基づいてスイッチSW1,SW2の開閉状態を切り替える。
【0059】
具体的には、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合、制御装置40は第1スイッチSW1を閉状態に切り替えるとともに、第2スイッチSW2を開状態に切り替える。これにより、第4容量CP4はゼロとなり、図3に示す第1合成容量CPAが減少する。この結果、第1容量CP1は第1合成容量CPAに対して相対的に大きくなる。
【0060】
また、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合、制御装置40は第1スイッチSW1を開状態に切り替えるとともに、第2スイッチSW2を閉状態に切り替える。これにより、第1容量CP1はゼロとなり、図4に示す第2合成容量CPBが減少する。この結果、第2合成容量CPBは第4容量CP4に対して相対的に小さくなる。
【0061】
つまり、制御装置40は、次回オン情報に基づいて第1容量CP1と第4容量CP4とを可変に制御する。そのため、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合には、第1容量CP1が第1合成容量CPAに対して相対的に大きくなることを利用するとともに、第1容量CP1を調整することで、式1が成り立つようにすることができる。また、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合には、第2合成容量CPBが第4容量CP4に対して相対的に小さくなることを利用するとともに、第4容量CP4を調整することで、式2が成り立つようにすることができる。これにより、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとのいずれもがインピーダンスZcに流れないようにすることができ、ノイズを抑制することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、制御装置40は、次回オン情報に基づいて第1容量CP1と第4容量CP4とを可変に制御する。これにより、第2閉ループ回路CS2に対応して第1容量CP1を調整し、第3閉ループ回路CS3に対応して第4容量CP4を調整することで、ノイズを好適に抑制することができる。
【0063】
制御装置40は、第1容量CP1と第4容量CP4とを可変に制御する。そのため、正極側導電部材12Hや負極側導電部材12Lの鉄損を小さくするために、これらのインダクタンスを小さく維持する必要がある場合でも、リカバリ電流RH,RLがインバータ20の外部に漏洩することを抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、上アームスイッチSHのエミッタと接地導体GDとの間に、第1コンデンサ62と第1コンデンサ62とを含む第1直列回路60が設けられており、第1スイッチSW1の開状態と閉状態とを切り替えることで、第1容量CP1を可変に制御する。そのため、第1直列回路60に設けられる第1コンデンサ62の容量を適宜選択することで、上アームリカバリ電流RHがインピーダンスZcに流れないようにすることができる。なお、第2直列回路70についても同様である。
【0065】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
本実施形態では、図9に示すように、正極側導電部材12Hに調整経路12HTが設けられていない点、及び第1容量CP1を形成する可変コンデンサ80を備えている点で異なる。なお、図9は、本実施形態に係るインバータ20を示す図である。図9において、先の図2に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、第1容量CP1は寄生容量ではなく、上アームスイッチSHのエミッタと接地導体GDとの間に設けられた可変コンデンサ80の容量である。制御装置40は、可変コンデンサ80の容量を可変に制御するための制御信号を、可変コンデンサ80に対して出力する。詳細には、制御装置40は、次回オン情報に基づいて可変コンデンサ80の容量を可変に制御する。
【0068】
そのため、次回オン情報が下アームスイッチSLである場合には、式1が成り立つように可変コンデンサ80の容量、つまり第1容量CP1を調整することができる。また、次回オン情報が上アームスイッチSHである場合には、式2が成り立つように可変コンデンサ80の容量を調整することができる。これにより、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとのいずれもがインピーダンスZcに流れないようにすることができ、ノイズを抑制することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態では、可変コンデンサ80を備えており、可変コンデンサ80の容量を可変に制御することで、第1容量CP1を可変に制御する。そのため、第1容量CP1を可変に制御する際に、スイッチを切り替える必要がなく、スイッチング損失が生じない。これにより、インバータ20の電力損失を低減しつつ、第1容量CP1を適切に調整することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0071】
上記各実施形態では、制御装置40が、正極側インダクタンスIH、第1容量CP1、及び第4容量CP4を可変に制御する例を示したが、これに限られず、負極側インダクタンスIL、第2容量CP2、及び第3容量CP3を可変に制御してもよい。
【0072】
例えば、図10に示すように、正極側導電部材12Hには、正極側調整経路12HTと正極側常時経路12HNとが設けられ、正極側調整経路12HTに正極側スイッチSWHが設けられていてもよい。また、負極側導電部材12Lには、負極側調整経路12LTと負極側常時経路12LNとが設けられ、負極側調整経路12LTに負極側スイッチSWLが設けられていてもよい。また、スイッチSH,SLのコレクタ又はエミッタと接地導体GDとの間にそれぞれ直列回路が設けられ、各直列回路に、対応する容量CP1~CP4を形成する第1~第4コンデンサ62、72、66、68とスイッチSW1~SW4が設けられていてもよい。
【0073】
制御装置40は、次回オン情報に基づいて、これらのスイッチSWH,SWL,SW1~SW4のうちの少なくとも一つの開閉状態を切り替えることで、正極側インダクタンスIH、負極側インダクタンスIL、第1容量CP1、第2容量CP2、第3容量CP3、並びに第4容量CP4の少なくとも一つの値を可変に制御することができる。これにより、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLとのいずれもがインピーダンスZcに流れないようにすることができ、ノイズを抑制することができる。
【0074】
上記各実施形態では、制御装置40が駆動部及び制御部を構成する例を示したが、これに限られない。図11に示すように、駆動部を構成する第1制御装置40と、制御部を構成する第2制御装置90とが別々に設けられていてもよい。
【0075】
この場合、第2制御装置90は、第1制御装置40から次回オン情報を取得してもよい。また、図11に示すように、中間導電部材13に接続される導電部材14に電流検出部を構成する電流計91が設けられていてもよい。電流計91により中間導電部材13に流れる電流が検出され、検出された検出電流に基づいて、次回オン情報が判定される。具体的には、第2制御装置90は、検出電流の正負、つまり、検出電流の流れる方向により、上アームリカバリ電流RHと下アームリカバリ電流RLのうちいずれのスイッチが第1制御装置40により次回オン状態とされるか、を判定することができる。これにより、次回オン情報を取得することができる。
【0076】
上記第1実施形態では、正極側導電部材12Hに並列接続される2つの経路12HT,12HNが設けられる例を示したが、並列接続される経路が3つ以上設けられてもよい。この場合、3つ目以降の経路には、スイッチが設けられてもよければ、設けられなくてもよい。3つ目以降の経路にスイッチが設けられる場合には、このスイッチは、調整経路12HTに設けられたスイッチSWと同じ状態となるように切り替えられてもよければ、調整経路12HTに設けられたスイッチSWと異なる状態となるように切り替えられてもよい。
【0077】
上記第2実施形態では、正極側導電部材12Hに常時経路12HNが設けられている形態を例示したが、常時経路12HNは必ずしも設けられなくてもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、ループ回路50に設けられたスイッチSWの開閉状態を切り替えることにより、正極側インダクタンスIHを可変に制御する例を示したが、これに限られない。例えば、電磁コイル54と調整経路12HTとの間の距離を変化させることにより、正極側インダクタンスIHを可変に制御してもよい。
【0079】
上記実施形態では、第1容量CP1が寄生容量である形態や、第1容量CP1に寄生容量が含まれない形態を例示したが、これに限られず、寄生容量が第1容量CP1の一部を形成してもよい。つまり、上アームスイッチSHのコレクタと接地導体GDとの間には、寄生容量が形成されているとともに、第1コンデンサ62や可変コンデンサ80が設けられていてもよい。これにより、寄生容量を考慮しつつ、ノイズを好適に抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
10…直流電源、11…平滑コンデンサ、12H…正極側導電部材、12L…負極側導電部材、13…中間導電部材、20…インバータ、30…回転電機、40…制御装置、CP1…第1容量、CP2…第2容量、CP3…第3容量、CP4…第4容量、IH…正極側インダクタンス、IL…負極側インダクタンス、SH…上アームスイッチ、SL…下アームスイッチ、SP1…第1接続点、SP2…第2接続点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11