(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/212 20220101AFI20220119BHJP
【FI】
F24H1/18 302L
(21)【出願番号】P 2018117071
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】菅 崇
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貢也
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-185253(JP,A)
【文献】特開2016-191493(JP,A)
【文献】特開2015-098954(JP,A)
【文献】特開2008-175426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0071090(US,A1)
【文献】特開2008-008507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱するための加熱手段と、前記貯湯タンクと前記加熱手段とを湯水が循環可能に接続された加熱循環回路と、前記加熱循環回路の途中に湯水を循環させる加熱循環ポンプと、前記加熱手段から前記貯湯タンク上部に戻っていく湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサと、前記貯湯タンクに複数設けられて貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、前記貯湯タンク内の湯の一部を殺菌可能温度よりも高い第一の所定温度に沸き上げる沸き上げ動作、及び、該沸き上げ動作の後に、前記貯湯タンク内の湯を前記加熱循環ポンプの駆動により前記貯湯タンク内の湯を攪拌する攪拌動作を行う殺菌運転を制御する殺菌運転制御手段を備えた貯湯式給湯装置において、
前記貯湯タンク内の湯をすべて前記殺菌可能温度にするのに必要な熱量を算出する熱量算出手段を設け、前記殺菌運転制御手段は、前記必要な熱量になるまで前記第一の所定温度で前記加熱手段によって沸き上げるようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記必要な熱量を沸き上げるまでにかかる予測時間を算出すると共に時間をカウントする時間算出手段を設け、
前記殺菌運転制御手段は、前記時間算出手段が予め算出した予測時間が経過するまで前記加熱手段で沸き上げるようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記殺菌運転制御手段は、前記必要な熱量に応じた前記貯湯温度が検出されるまで前記加熱手段で沸き上げるようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の殺菌運転を行う貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、貯湯タンク内の温度が殺菌可能温度(約65℃)を下回った温度の状態が所定時間以上経過した場合、貯湯タンク内全体を殺菌可能温度以上に沸き上げる殺菌運転を有した貯湯式給湯装置があった。
【0003】
また、特許文献1で示すように、殺菌運転は、貯湯タンク下部に設けた貯湯温度センサの検出温度が45℃になるまで貯湯タンク内の水を沸き上げる高温加熱工程と、高温加熱工程終了後に加熱循環ポンプを駆動し貯湯タンク内の湯を攪拌する温度均一化工程とを有し、高温加熱工程でタンク内を沸き上げ、温度均一化工程でタンク内すべてを殺菌可能温度にする制御を設けた貯湯式給湯装置があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなものでは、高温加熱工程で、下部に設けた貯湯温度センサの検出温度が45℃を超えたら、温度均一化工程で攪拌することで貯湯タンク全体が殺菌可能温度するものだが、例えば、高温加熱工程前で中温水が残っていた場合、高温加熱工程を行うと短い時間で高温加熱工程が終わってしまい、その後温度均一化工程で攪拌しても貯湯タンク全体を殺菌可能温度に沸き上げることは難しく、殺菌可能温度に達しなかった場合は再び殺菌運転を行わなければいけないという無駄なエネルギーを消費することがあるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱するための加熱手段と、前記貯湯タンクと前記加熱手段とを湯水が循環可能に接続された加熱循環回路と、前記加熱循環回路の途中に湯水を循環させる加熱循環ポンプと、前記加熱手段から前記貯湯タンク上部に戻っていく湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサと、前記貯湯タンクに複数設けられて貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、前記貯湯タンク内の湯の一部を殺菌可能温度よりも高い第一の所定温度に沸き上げる沸き上げ動作、及び、該沸き上げ動作の後に、前記貯湯タンク内の湯を前記加熱循環ポンプの駆動により前記貯湯タンク内の湯を攪拌する攪拌動作を行う殺菌運転を制御する殺菌運転制御手段を備えた貯湯式給湯装置において、前記貯湯タンク内の湯をすべて前記殺菌可能温度にするのに必要な熱量を算出する熱量算出手段を設け、前記殺菌運転制御手段は、前記必要な熱量になるまで前記第一の所定温度で前記加熱手段によって沸き上げるようにした。
【0007】
また、前記必要な熱量を沸き上げるまでにかかる予測時間を算出すると共に時間をカウントする時間算出手段を設け、前記殺菌運転制御手段は、前記時間算出手段が予め算出した予測時間が経過するまで前記加熱手段で沸き上げるようにした。
【0008】
また、前記殺菌運転制御手段は、前記必要な熱量に応じた前記貯湯温度が検出されるまで前記加熱手段で沸き上げるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記熱量算出手段は、前記貯湯温度から前記殺菌運転に必要な熱量を算出し、前記殺菌運転制御手段は、算出した前記必要な熱量分沸き上げるので過不足無く沸き上げることができ、熱量が足りずに再び殺菌運転を行うという無駄なエネルギーを消費してしまうのも、必要以上に沸き上げてしまい無駄なエネルギーを消費してしまうのも防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】同実施形態の殺菌運転の動作を説明するためのフローチャート
【
図3】同実施形態のヒートポンプに入水する温度と沸き上げCOPの関系を表す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態の風呂給湯装置を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は風呂給湯装置の構成を示す概略図で、1は湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1底部に給水する給水管、3は貯湯タンク1頂部から出湯する出湯管、4は給水管2から分岐された給水バイパス管、5は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを混合する給湯混合弁、6は給湯混合弁5の出口と給湯栓7とを接続する給湯管、8は給湯管6を流れる湯水の流量を検出する給湯流量センサ、9は給湯管6を流れる湯水の温度を検出する給湯温度センサ、10は給水バイパス管4を流れる給水の温度を検出する給水温度センサである。
【0013】
11は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを混合する風呂混合弁、12は風呂混合弁11からの湯水を浴室に設置された浴槽13へ湯張りするための湯張り管、14は湯張り管12を流れる湯水の流量を検出する湯張り流量センサ、15は湯張り管12を流れる湯水の温度を検出する湯張り温度センサ、16は湯張り管12の流路を開閉する湯張り電磁弁、17a~17eは貯湯タンク1の側面上下に複数設けられて貯湯温度を検出する貯湯温度センサであり、17eは貯湯タンク1下部に設けられ、加熱手段24へ入水する温度を検出することができる。また、貯湯温度センサ17a~17eの検出値に応じて、貯湯タンク1内の湯水の温度分布を検出することができる。
【0014】
18は貯湯タンク1内に配置されたステンレス製の蛇管により構成され、浴槽13内の浴槽水を加熱するための風呂熱交換器、19は浴槽13と風呂熱交換器18とを浴槽水が循環可能に接続する風呂循環回路、20は浴槽13内の浴槽水を吸い込んで風呂熱交換器18へ圧送して浴槽水を循環させるための風呂循環ポンプ、21は浴槽水の温度を検出するための風呂温度センサ、22は水圧を検知することにより浴槽13内の水位を検出する水位センサであり、風呂循環回路19途中には湯張り管12が接続されている。
【0015】
23は風呂循環回路19途中に設けられ、風呂熱交換器18を迂回可能に構成された三方弁である。
【0016】
24は貯湯タンク1内の湯水を加熱するためのヒートポンプ式の加熱手段、25は貯湯タンク1と加熱手段24とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路、26は湯水を循環させる加熱循環ポンプ、27は加熱手段24に入水する入水温度を検出する入水温度センサ、28は加熱手段24で沸き上げられた湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサである。ここで、ヒートポンプ式の加熱手段24は、圧縮機29、水冷媒熱交換器30、膨張弁31、空気熱交換器32、送風機33、外気温度を検出する外気温度センサ34とを備えて構成され、沸き上げ温度センサ28が検出する温度が40℃~90℃の範囲で任意の温度となるように沸き上げるものである。
【0017】
35は浴室外に設けられた浴室外リモコン(リモートコントローラ)で、給湯装置の作動状態や設定状態を報知する報知部としての表示部35aと、予め記憶している音声データや報知音等を出力するスピーカー35bと、浴槽13への湯張りを開始させるための風呂スイッチ35cと、風呂設定温度を変更するための変更スイッチ35dと、その他のスイッチ35eとを備えている。
【0018】
36は浴室内に設けられた浴室内リモコン(リモートコントローラ)で、貯湯式給湯装置の作動状態や設定状態を報知する報知部としての表示部36aと、予め記憶している音声データや報知音等を出力するスピーカー36bと、浴槽13への湯張りを開始させるための風呂スイッチ36cと、風呂設定温度を変更するための変更スイッチ36dと、その他のスイッチ36eと、浴室内の室温を検出する浴室温度センサ37とを備えている。
【0019】
38はこの貯等式給湯装置の作動を制御する本体制御手段で、給湯流量センサ8、給湯温度センサ9、給水温度センサ10、湯張り流量センサ14、湯張り温度センサ15、貯湯温度センサ17、風呂温度センサ21、水位センサ22、外気温度センサ34、浴室温度センサ37の検出値が入力され、給湯混合弁5、風呂混合弁11、湯張り電磁弁16、風呂循環ポンプ20、加熱手段24の作動を制御すると共に、浴室外リモコン35および浴室内リモコン36と必要な情報を送受信可能に接続されている。ここで、本体制御手段38は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0020】
39は貯湯タンク1内の少なくとも一部の湯が所定時間以上残留したと本体制御手段38で判断すると、貯湯タンク1内のすべての湯をレジオネラ菌が殺菌される殺菌可能温度以上(ここでは65℃以上)に沸き上げる殺菌運転を制御する殺菌運転制御手段である。
【0021】
40は殺菌運転に必要な熱量を算出する熱量算出手段であり、必要な熱量については貯湯温度センサ17の検出値に基づいて必要な熱量を算出し、殺菌運転制御手段39は、熱量算出手段40で算出した必要な熱量を確保するまで加熱手段24で沸き上げる沸き上げ動作と、沸き上げ運転後に貯湯タンク1内を攪拌して貯湯タンク1内の温度を均一にする攪拌動作とを行う。
【0022】
また、殺菌運転制御手段39は、殺菌運転の沸き上げ動作の沸き上げ温度を殺菌可能温度よりも高い第一の所定温度(ここでは90℃)で沸き上げ動作を行っている。第一の所定温度で沸き上げを行うのは、可能な限り加熱手段24で加熱しない水を貯湯タンク1に残すためであり、沸き上げ動作後に沸き上げた湯水と未加熱の水を攪拌するので、高い沸き上げ温度の方が未加熱の水を多く残すことができる。
【0023】
具体的な計算例の説明をすると、貯湯タンク1には370Lの湯水が貯湯できるもので、貯湯温度センサ17eで検出した加熱手段24への入水する貯湯タンク1の最下層の貯湯温度は24℃で250Lあった場合、熱量算出手段40は、24℃の水が140L(全量の37.9%)で、90℃(殺菌可能温度よりも高い第一の所定温度)の湯が230L(全量の62.1%)であれば、貯湯タンク1内の24℃の水と90℃の湯を加熱循環ポンプ26で攪拌させると、貯湯タンク1全体を65℃の湯にできると算出する。そして、殺菌運転制御手段39は、貯湯タンク1の湯を加熱手段24で230L分を90℃に沸き上げる。
【0024】
そして、殺菌運転制御手段39は、沸き上げ熱量が所定の熱量達成条件に達したら沸き上げ動作を終了し、加熱循環ポンプ26による攪拌動作を開始し、貯湯タンク1内のすべての湯水を殺菌可能温度以上にする。
【0025】
前述した所定の熱量達成条件について詳しく説明する。
所定の熱量達成条件は、貯湯タンク1内の熱量が熱量算出手段40で算出した必要熱量に達したかどうかを判定している。
【0026】
41は熱量算出手段40で算出した必要な熱量を沸き上げるのにかかる予測時間を算出する時間算出手段であり、熱量算出手段40で算出した必要熱量から、加熱手段24の加熱能力を割ることで、必要熱量を沸き上げるのにかかる予測時間を算出する。
【0027】
具体的には、時間算出手段41は、熱量算出手段40で算出した必要熱量から、加熱手段24の加熱能力を割ることで、必要熱量を沸き上げるのにかかる予測時間を算出し、時間算出手段41は、沸き上げ動作開始時にタイマーカウントを開始し、前記予測時間が経過すると、殺菌運転制御手段39は所定の熱量達成条件を満たしたと判定する。
【0028】
次に、本発明の風呂給湯装置の作動について説明する。
【0029】
<沸き上げ運転>
電力料金単価の安価な所定時間帯(深夜時間帯)の開始時刻になると、本体制御手段38はそれまでの給湯負荷量に見合う湯量を沸き上げ開始するべく、加熱手段24に対し、給湯負荷量に見合う沸き上げ目標温度と沸き上げ開始の指示を送信し、加熱手段24は圧縮機29と膨張弁31と送風機33と加熱循環ポンプ26を駆動開始して、貯湯タンク1下部から取り出した湯水を水冷媒熱交換器30で沸き上げ目標温度まで加熱して貯湯タンク1上部へ戻し、貯湯タンク1上部から沸き上げ設定温度の湯を積層状に貯湯し、本体制御手段38は貯湯タンク1の最下部まで沸き上げるか、所定時間帯の終了時刻に到達すると、加熱手段24に沸き上げの停止を指示し、加熱手段24は圧縮機29と膨張弁31と送風機33と加熱循環ポンプ26を駆動停止して沸き上げ運転を終了する。
【0030】
<給湯>
給湯栓7が開かれると、貯湯タンク1の底部に給水管2から市水が流入すると共に貯湯タンク1の頂部から出湯管3を介して高温の湯が出湯し、給湯混合弁5で給水バイパス管4からの水と混合されて給湯管6を通過する。そして、給湯流量センサ8が最低作動水量以上を検出すると、本体制御手段38は、給湯温度センサ9が検出する温度が給湯設定温度と一致するように給湯混合弁5の弁開度をフィードバック制御して、給湯設定温度の給湯を行う。そして、給湯栓7が閉じられる等によって、給湯流量センサ8が最低作動水量未満を検出すると、本体制御手段38は、給湯混合弁5の弁開度のフィードバック制御を停止して給湯停止するようにしている。
【0031】
<湯張り運転>
本体制御手段38が湯張りを指示すると、湯張り電磁弁16を開弁し、湯張り温度センサ15が検出する温度が、本体制御手段38で指示された湯張り温度と一致するように風呂混合弁11の弁開度をフィードバック制御して、指示された湯張り温度の湯張りを開始し、浴槽13に供給する。
【0032】
そして、本体制御手段38は、湯張り流量センサ14で検出する湯張り流量の積算値が風呂設定量、または水位センサ22が風呂設定水位を検出すると、湯張り電磁弁16を閉弁して湯張り運転を終了する
【0033】
<追い焚き運転>
水位センサ22で水圧を検知し水位を検出して浴槽13内に残湯があり、本体制御手段38は、風呂循環ポンプ20を駆動して、風呂循環回路19と風呂熱交換器18に浴槽水を循環させ、浴槽水を風呂熱交換器18で加熱する。そして、風呂温度センサ21で浴槽水の温度が風呂設定温度まで上昇したことを確認すると、風呂循環ポンプ20の駆動を停止する。
【0034】
<保温運転>
また、風呂の保温運転では、一定時間毎に風呂循環ポンプ20を駆動して風呂温度センサ21で浴槽水の温度を確認し、風呂設定温度より低くなっていることを検知すると、循環を継続して浴槽水を風呂熱交換器18で加熱する。そして、風呂温度センサ21で浴槽水の温度が風呂設定温度より上昇したことを確認すると、風呂循環ポンプ20の駆動を停止する。
【0035】
また、本体制御手段38は、湯張り停止時の浴槽13内の水位を水位センサ22の検出値に基づいて記憶し、浴槽13内の水位が記憶した水位から低下すると、元の水位になるまで湯張りする補水運転を行う。
【0036】
そして、湯張りの開始から予め設定された風呂の保温時間が経過すると、風呂の保温運転および風呂補水運転も停止して、風呂の保温運転を停止する。
【0037】
<殺菌運転>
次に、第一実施形態の殺菌運転について
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
所定時間内に貯湯タンク1の湯がすべて使用されず、所定時間以上少なくとも一部の湯が貯湯タンク1内に残留した場合(S1がYes)、貯湯タンク1内の湯水の全量を殺菌可能温度(ここでは65℃)以上に沸き上げてレジオネラ菌の繁殖を防止する殺菌運転を開始する(S2)。
【0038】
まず、殺菌運転制御手段39は、貯湯温度センサ17eから加熱手段24へ入水する貯湯タンク1の最下層の貯湯温度及び貯湯タンク1の温度分布を検出し(S3)、貯湯温度センサで検出した貯湯温度から貯湯タンク1内の湯を攪拌し混ぜ合わせたときに貯湯タンク1内全体が65℃以上になるような必要熱量を熱量算出手段40で算出し(S4)、加熱手段24の沸き上げ温度を第一の所定温度に(ここでは90℃)変更する(S5)。
【0039】
さらに、時間算出手段41は、熱量算出手段40で算出した必要な熱量を沸き上げるのにかかる予測時間を算出し、予測時間を決定する(S6)。
【0040】
そして、殺菌運転制御手段39は、沸き上げ動作を開始し、時間算出手段41は予測時間に達するまでタイマーカウントを開始する(S7)。
【0041】
このとき、貯湯タンク1の下部まで殺菌可能温度(ここでは65℃)に沸き上げ、貯湯温度センサ17eが殺菌可能温度(ここでは65℃)を検出するまで沸き上げてしまうと、
図3のように加熱手段24へ入水する温度が高くなり、沸き上げCOP(沸き上げ効率)が低下してしまう。
【0042】
このように、殺菌運転制御手段39は、熱量算出手段40で必要な熱量を算出し、貯湯タンク1内に未加熱の水が残るような適切なタイミングで沸き上げ動作を終了することで、入水する温度が比較的低く、沸き上げCOP(沸き上げ効率)が高い状態を保って沸き上げ動作終了することができ、省エネルギー性に優れた殺菌運転を行うことができる。
【0043】
また、加熱手段24へ入水する温度が高くなることで冷媒の蒸発温度が高くなり、冷媒回路の圧力が上がるために冷媒回路に負担がかかり、耐久性が低下してしまうが、攪拌したときに貯湯タンク1全体が65℃以上になるのに必要な熱量を確保したら沸き上げ動作を停止するので、加熱手段24へ入水する温度が高くなることを防止することができる。
【0044】
そして、沸き上げ動作を開始し、時間算出手段41で算出した予測時間が経過するかを時間算出手段41で確認し(S8)、時間算出手段41のタイマーカウントが前記予測時間に達したら(S8がYes)、殺菌運転制御手段39は、熱量算出手段40で算出した熱量を沸き上げたと判定し、沸き上げ動作を終了する(S9)。
【0045】
次に、殺菌運転制御手段39は、攪拌動作を開始して(S10)、加熱循環ポンプ26を駆動し(S11)、貯湯タンク1下部の水を加熱循環回路25を介して貯湯タンク1上部に勢いよく流入させ、貯湯タンク1内の湯水を攪拌する。
【0046】
その後、殺菌運転制御手段39は、沸き上げ温度センサ28の検出温度が65℃以上となるか確認し(S12)、沸き上げ温度センサ28の検出温度が65℃以上になると(S12がYes)、加熱循環ポンプ26の駆動を停止し(S13)、攪拌動作を終了することで(S14)、殺菌運転を終了する(S15)。
【0047】
このように、攪拌したときに貯湯タンク1内の湯をすべて65℃以上になるように熱量算出手段40で必要熱量を算出し、加熱手段24へ入水する温度が比較的低い温度で沸き上げ動作が終了するようにすることができるので、沸き上げCOP(沸き上げ効率)が高く、省エネルギー性に優れた殺菌運転が可能であると共に、殺菌運転開始前に熱量算出手段40で必要熱量を算出しているため、殺菌運転後に殺菌可能温度に達していないので再び殺菌運転を行うという無駄なエネルギーの消費を抑制することがきる。
【0048】
また、加熱手段24へ入水する温度が高くなり、沸き上げCOP(沸き上げ効率)が低下する前に沸き上げ動作を停止するので、加熱手段24へ入水する温度が高くなって冷媒の蒸発温度が高くなり、冷媒回路の圧力が上がるために冷媒回路に負担がかかり冷媒回路が破損してしまうのを防止することができる。
【0049】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変する事を妨げるものではなく、例えば、加熱循環ポンプ26を駆動させていないときに入水する温度の検出は貯湯タンク1下部に設けられた貯湯温度センサ17eを用いているが、加熱循環ポンプ26を駆動させて入水温度センサ27で入水する温度を検出してもよいものである。
【0050】
また、熱量算出手段40で算出した必要な熱量分だけ貯湯タンク1に貯湯することが重要であり、所定の熱量達成条件は、時間算出手段41で算出した予測時間が経過するまで沸き上げ動作を行うのでも、貯湯温度センサ17a~eで検出した貯湯温度に応じた熱量まで沸き上げ動作を行うのでも良い。
【0051】
また、沸き上げ温度は、この実施形態での沸き上げ温度は第一の所定温度である90℃で沸き上げ動作をおこなっているが、この温度に限定されるものではなく、沸き上げ温度を、貯湯タンク1の下部に未加熱の水を残すように熱量計算を行って、沸き上げ温度を90℃以下に下げても良い。
【0052】
また、所定の熱量達成条件は、貯湯タンク1の側面に複数設けられた貯湯温度センサ17で検出した温度の検出値に応じて貯湯タンク1内に貯湯されている湯水の温度分布から熱量を算出し、貯湯温度センサ17の検出値に応じた熱量が、熱量算出手段40で算出した必要熱量に達したら、殺菌運転制御手段39は所定の熱量達成条件を満たしたと判定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 貯湯タンク
17 貯湯温度センサ
24 加熱手段
25 加熱循環回路
26 加熱循環ポンプ
28 沸き上げ温度センサ
38 本体制御手段(制御手段)
39 殺菌運転制御手段
40 熱量算出手段
41 時間算出手段