(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】エレベータロープ検査装置及びエレベータロープ検査方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/12 20060101AFI20220119BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20220119BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20220119BHJP
G01B 11/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
B66B5/02 C
G01B11/02 H
G01B11/04 H
(21)【出願番号】P 2018160438
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 英樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 祥希
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇介
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012903(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145823(WO,A1)
【文献】特開2009-57126(JP,A)
【文献】特開2011-107056(JP,A)
【文献】特開2018-065695(JP,A)
【文献】特開2010-111461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00- 7/12
B66B 5/00- 5/28
G01B 11/02
G01B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数本のエレベータロープを撮影するカメラと、前記カメラから出力された撮影画像を画像処理する画像処理部とを備えるエレベータロープ検査装置において、
前記画像処理部は、前記撮影画像から摩耗箇所を検出し、
前記摩耗箇所に対してラベルを付けるラベリング処理を行い、
前記ラベリング処理で付されたラベル間の距離を測定し、その距離が一定値未満の場合には、前記ラベル間が素線切れと判定することを特徴とするエレベータロープ検査装置。
【請求項2】
前記摩耗箇所は、前記撮影画像に対して2値化処理を施すことにより検出されることを特徴とする請求項1記載のエレベータロープ検査装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、ラベリング処理の際に、前記摩耗箇所に対して連続番号を付すると共に、前記摩耗箇所の位置を示す座標と共に前記摩耗箇所の領域を摩耗量として記録することを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータロープ検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記ラベル間が素線切れと判定するときは警報を発することを特徴とする請求項1,2又は3記載のエレベータロープ検査装置。
【請求項5】
前記カメラとして、ラインセンサカメラ又はエリアカメラを使用することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のエレベータロープ検査装置。
【請求項6】
前記カメラから出力された撮影画像を収録する画像収録部を更に備えることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のエレベータロープ検査装置。
【請求項7】
1又は複数本のエレベータロープをカメラで撮影し、前記カメラから出力された撮影画像を画像処理するエレベータロープ検査方法において、
前記画像処理においては、前記撮影画像から摩耗箇所を検出し、前記摩耗箇所に対してラベルを付けるラベリング処理を行い、
前記ラベリング処理で付されたラベル間の距離を測定し、その距離が一定値未満の場合には、前記ラベル間が素線切れと判定することを特徴とするエレベータロープ検査方法。
【請求項8】
前記摩耗箇所は、前記撮影画像に対して2値化処理を施すことにより検出されることを特徴とする請求項7記載のエレベータロープ検査方法。
【請求項9】
前記ラベリング処理の際に、前記摩耗箇所に対して連続番号を付すると共に、前記摩耗箇所の位置を示す座標と共に前記摩耗箇所の領域を摩耗量として記録することを特徴とする請求項7又は8記載のエレベータロープ検査方法。
【請求項10】
前記ラベル間が素線切れと判定するときは警報を発することを特徴とする請求項7,8又は9記載のエレベータロープ検査方法。
【請求項11】
前記カメラとして、ラインセンサカメラ又はエリアカメラを使用することを特徴とする請求項7,8,9又は10記載のエレベータロープ検査方法。
【請求項12】
前記カメラから出力された撮影画像を収録することを特徴とする請求項7,8,9,10又は11記載のエレベータロープ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータロープ検査装置及びエレベータロープ検査方法に関する。詳しくは、エレベータ巻上機付近のエレベータロープ(以下、ロープと略称する)をカメラで撮影した画像データを解析装置によって処理することで非接触にロープ素線の摩耗痕、素線切れを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベータ用ワイヤーロープの素線切れの状況を事前に検査することにより、ロープの素線切れからストランド破断事故に至らないようにする「エレベータ用ワイヤーロープの素線切れ検査装置及びその方法」が記載されている。
【0003】
特許文献2には、撮像されたワイヤロープの映像からワイヤロープ状態の解析を行う「ワイヤロープ検査装置」が記載されている。
【0004】
特許文献3には、レーザ光とカメラを併用する「エレベータ用ロープの変形検出装置」が記載されている。
【0005】
特許文献4には、ワイヤーロープを連続撮影し、撮像画像とワイヤーロープ位置との対応づけを行う「ワイヤーロープ検査装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-12903号公報
【文献】国際公開第2013/145823号
【文献】特開2009-57126号公報
【文献】特開2011-107056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、エレベータ用ワイヤーロープの素線切れの状況を事前に検査することにより、ロープの素線切れからストランド破断事故に至らないようにしているが、連続的なロープ画像テクスチャの計測方法が不明である。
【0008】
特許文献2は、撮像されたワイヤロープの映像からワイヤロープ状態の解析を行うが、撮影するロープ画像のテクスチャが常に一定であることを前提としており、ロープ表面の摩耗量の計測は行っていない。
【0009】
特許文献3は、レーザ光とカメラを併用するが、摩耗量の計測は行われていない。
【0010】
特許文献4は、ワイヤーロープを連続撮影し、撮像画像とワイヤーロープ位置との対応づけを行うが、摩耗量の計測は行わない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係るエレベータロープ検査装置は、1又は複数本のエレベータロープを撮影するカメラと、前記カメラから出力された撮影画像を画像処理する画像処理部とを備えるエレベータロープ検査装置において、前記画像処理部は、前記撮影画像から摩耗箇所を検出し、前記摩耗箇所に対してラベルを付けるラベリング処理を行い、前記ラベリング処理で付されたラベル間の距離を測定し、その距離が一定値未満の場合には、前記ラベル間が素線切れと判定することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項2に係るエレベータロープ検査装置は、前記摩耗箇所は、前記撮影画像に対して2値化処理を施すことにより検出されることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係るエレベータロープ検査装置は、前記画像処理部は、ラベリング処理の際に、前記摩耗箇所に対して連続番号を付すると共に、前記摩耗箇所の位置を示す座標と共に前記摩耗箇所の領域を摩耗量として記録することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項4に係るエレベータロープ検査装置は、前記画像処理部は、前記ラベル間が素線切れと判定するときは警報を発することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係るエレベータロープ検査装置は、前記カメラとして、ラインセンサカメラ又はエリアカメラを使用することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項6に係るエレベータロープ検査装置は、前記カメラから出力された撮影画像を収録する画像収録部を更に備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する本発明の請求項7に係るエレベータロープ検査方法は、1又は複数本のエレベータロープをカメラで撮影し、前記カメラから出力された撮影画像を画像処理するエレベータロープ検査方法において、前記画像処理においては、前記撮影画像から摩耗箇所を検出し、前記摩耗箇所に対してラベルを付けるラベリング処理を行い、前記ラベリング処理で付されたラベル間の距離を測定し、その距離が一定値未満の場合には、前記ラベル間が素線切れと判定することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項8に係るエレベータロープ検査方法は、前記摩耗箇所は、前記撮影画像に対して2値化処理を施すことにより検出されることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する本発明の請求項9に係るエレベータロープ検査方法は、前記ラベリング処理の際に、前記摩耗箇所に対して連続番号を付すると共に、前記摩耗箇所の位置を示す座標と共に前記摩耗箇所の領域を摩耗量として記録することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項10に係るエレベータロープ検査方法は、前記ラベル間が素線切れと判定するときは警報を発することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項11に係るエレベータロープ検査方法は、前記カメラとして、ラインセンサカメラ又はエリアカメラを使用することを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項12に係るエレベータロープ検査方法は、前記カメラから出力された撮影画像を収録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、事前にロープのテクスチャ情報がなくとも、ロープ素線の破断を計測するという効果を奏する。
また、ロープ素線の破断を計測に加えて、摩耗箇所の領域を摩耗量として検出できるという効果も奏する。
【0017】
更に、素線切れと判定するときは警報を発するので安全性が高まるという効果も奏する。
カメラとして、高速に撮影可能なラインセンサカメラを用いると、エレベータ高速昇降時においても、画像撮影が可能になるという効果も奏する。また、色情報が計測可能なエリアカメラを使用すると、事後的な確認が容易になるという利点がある。
【0018】
カメラから出力された撮影画像を収録する画像収録部を更に備えると、画像処理部で画像処理された結果であるロープ素線の素線切れと撮影画像を照合できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係るエレベータロープ検査装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施例2に係るエレベータロープ検査装置の概略図である。
【
図3】2値化した後の撮影画像を示す説明図である。
【
図4】ラベリング後の撮影画像を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施例1に係るエレベータロープ検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
エレベータロープを非接触にて計測する方法はいくつかあるが、本発明はカメラ方式の検査装置に関する。
計測機器としてカメラを用いることで、複数本のエレベータロープ素線の破断、摩耗痕を一度に計測することが可能である。
【0021】
従来にもカメラを用いてエレベータロープの素線切れを計測する手法は提案されているが、ロープの素線破断を計測するためには事前に素線の破断状態を示すテクスチャ情報等を取得する必要がある。
そこで、本発明では、まず画像からロープ素線の表面摩耗状態を計測し、次にその情報を用いてロープの素線破断計測を行うことで、事前のデータ取得が必要ない素線破断の検査装置とした。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1に係るエレベータロープ検査装置を
図1に示す。
本実施例のエレベータロープ検査装置は、
図1に示すように、ロープRを撮影する1台のラインセンサカメラ10と、このラインセンサカメラ10から出力された撮影画像が入力される計測装置20から構成される。
【0023】
ロープRは、芯綱の周りに1又は複数のストランドを螺旋状に巻き付けたものであり、各ストランドは複数の素線から構成される。
図1に示されるラインセンサカメラ10は、エレベータ巻上機(図示、省略)付近のロープRを撮影する状態である。
ラインセンサカメラ10は、多数の画素(ピクセル)を一列(1ライン)に配置した高速に撮影可能なカメラであり、ライン方向は、ロープRの太さ方向である水平方向である。
【0024】
ラインセンサカメラ10は、通過するロープRを連続的に撮影して、1ラインの画像を時系列的に合成し、合成した撮影画像を計測装置20へ出力する。つまり、ラインセンサカメラ10の連続撮影された1ラインの画像は1次元であるが、1ラインの画像を時系列的に合成した撮影画像は2次元となる。なお、時系列的な合成は、計測装置20内の画像処理部22で行っても良い。
【0025】
図中では、ラインセンサカメラ10で撮影されるロープRは1本であるが、これに限るものではなく、複数本としても良い。つまり、本実施例のエレベータロープ検査装置は、ラインセンサカメラ10から出力される複数本のロープRの撮影画像に対する画像処理を行うことができる。
本実施例では、高速に撮影可能なラインセンサカメラ10を用いることで、エレベータ高速昇降時においても、画像撮影が可能になる。
【0026】
計測装置20は、ラインセンサカメラ10から出力された撮影画像を収録する画像収録部21と、ラインセンサカメラ10から出力された撮影画像を画像処理する画像処理部22とから構成される。
画像処理部22は、後述する通り、ロープ素線の摩耗痕、素線切れの検査を行うための画像解析を実行する。
【0027】
画像収録部21に収録された撮影画像は、画像処理部22で画像処理された結果であるロープ素線の摩耗痕、素線切れと照合される際に使用される。
計測装置20には、エンコーダ等の位置・速度検出手段30からの位置・速度検出信号が撮影開始トリガ信号として入力される一方、位置・速度検出手段30から位置・速度検出信号がエレベータコントローラ40へ入力される。位置・速度検出手段30は、エレベータ巻上機に設けられている。
【0028】
ラインセンサカメラ10は、撮影開始トリガ信号に同期して、連続撮影を開始し、ラインセンサカメラ10から出力された撮影画像が画像収録部21に収録され、更に、画像処理部22により画像解析が開始される。
計測装置20にエレベータコントローラ40等からエレベータの位置信号を撮影開始トリガ信号として入力し、エレベータ位置とカメラの撮影ラインの同期を行っても良い。エレベータ位置として、ロープRの位置を使用することができる。
【0029】
計測装置20は、ハードウェアとしても実現できるが、一般的なパーソナルコンピュータに所定のソフトウェアをインストールして実現すると汎用性が良くなる。パーソナルコンピュータとしてノートパソコンを使用すると携帯性が高まる。
【0030】
<ロープ素線破断計測方法>
ロープ素線の摩耗は、稼働に伴いロープRの表面が削れる現象であり、素線の摩耗が進行することで素線破断が生じる。
このようなロープRをラインセンサカメラ10で撮影した場合、摩耗により表面が削れて、金属反射する箇所は、削れていない他の表面に比較して明るく撮影される。
【0031】
この画像に対して、画像処理部22は、画像処理の手法である2値化を用いることで、摩耗が進んだ部分は白、それ以外は黒として処理する。これにより、ロープRの表面摩耗状態を計測することになる。
摩耗と破断の両方が生じているロープRを撮影した撮影画像に対して上記2値化処理を施した結果を
図3に示す。
【0032】
図3は、ラインセンサカメラ10から計測装置20へ出力された撮影画像を2値化したものであり、上下方向が時系列方向であるロープRの長さ方向であり、横方向がロープRの太さ方向である。
図3に示すように、ロープRの表面には、摩耗により表面が削れて白く見える部分が摩耗箇所として複数検出されている。
【0033】
ここで、ロープRの表面は、螺旋状に巻き付けられたストランドによる規則的な凹凸となっており、凸部分は凹部分に比較して摩耗の進行が早いことから、摩耗箇所は凸部分であると考えられる。そのため、各摩耗箇所の幅は、ストランドの太さ程度である。
そして、ストランドを構成する素線に破断が生じている箇所は、破断した箇所を中心にしてその上下に摩耗箇所が生じると考えられる。
【0034】
ロープ素線が破断した箇所は、表面が凹となることから、金属反射が生じず、摩耗より表面の削れた部分に比較して暗く撮影されるためである。
つまり、
図3に示すように、ロープRの下部に存在する二つの摩耗箇所の隙間は暗く撮影されていることから、ロープ素線の破断が生じている一方、ロープRの上部には1つの摩耗箇所しか存在しないため、ロープ素線の破断は発生していないと考えられるのである。
【0035】
次に、破断の検出方法について述べる。
破断検出では、画像処理部22は、先程検出した摩耗箇所に対してラベリング処理を行う。ラベリング処理では、検出した摩耗痕を識別するためにラベル付を行う。
【0036】
例えば、各摩耗箇所には、図中の上から順に連続番号を付して、ラベル1、ラベル2、ラベル3、…とし、各ラベルには、摩耗箇所の重心の位置を示す座標と共に、摩耗箇所の領域を記録する。摩耗箇所の領域の広さは、摩耗量を示すものである。なお、黒色の部分に引き出し線(黒)を付すると、視覚的に識別できないので、各ラベル1,2,3には吹き出しで符号を付した。
【0037】
図3に対してラベリング処理を行った結果を
図4に示す。この時、破断が生じた箇所では検出したラベル同士の距離が近いことがわかる。
即ち、
図4に示すように、ロープRの下部に存在するラベル2,3の隙間は細く暗く撮影されていることから、ロープ素線の破断が生じている一方、ロープRの上部にはラベル1しか存在しないため、ロープ素線の破断は発生していないと判定する。
【0038】
その為、画像処理部22は、破断検出として、ラベル間の距離を計測し、距離の値が一定の閾値未満の箇所を破断と検出する。一方、ラベル間の距離が一定の閾値以上離れているものを摩耗痕として検出する。
つまり、
図4のロープRの下部に存在するラベル2,3の間の距離が一定の閾値未満であれば、ラベル2,3の間の隙間は破断と判定し、ラベル2,3の間の距離が一定の閾値以上であれば、ラベル2,3の間の隙間は破断ではなく、ラベル2,3は摩耗痕として判定する。
【0039】
ここで、一定の閾値としては、必ずしも、素線の太さに限定されるものではない。複数の素線が同時に破断する場合もあるからである。また、ロープ画像のテクスチャが一定であることを前提とするものではない。
ここで、ラベル間の距離とは、任意のラベル間の距離の意味である。
上記例では、ロープRの下部に存在するラベル2,3の間の距離を閾値と比較したが、ロープRの上部に存在するラベル1とロープRの下部に存在するラベル2,3との間の距離を閾値と比較し、閾値以上であれば、ラベル1とラベル2,3との間にはロープ素線の破断は発生していないと判定する。
【0040】
本実施例に係るエレベータロープ検査方法について
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
(1)画像撮影
先ず、エレベータコントローラ40から取得した位置情報を用いて、カメラ撮像周期を変動させることで、ロープRの撮影ピッチを一定に撮影する。この撮影ピッチを一定にして、ラインセンサカメラ10で連続撮影し、撮影画像を計測装置20の入力とする(ステップS1)。
【0042】
(2)エッジ検出
次に、入力した画像からロープRの位置を検出するためにロープの外径(エッジ)を検出する(ステップS2)。
例えば、図中でロープRの画像を横方向に走査し、黒部分から白部分に変化する箇所又は白部分から黒部分に変化する箇所が、ロープの外径である。ロープRの表面は、ストランドによる規則的な凹凸形状であることから、ストランドの太さに基づきロープRの位置が求められる。
【0043】
ロープのエッジ検出手法としてパラボラフィッティングを用いたサブピクセル精度でのエッジ検出を行うことで、通常のエッジ検出より高精度にロープのエッジ検出できる。
この時、算出したエッジに対して移動平均法を用いることでエッジに含まれる撮像ノイズの除去も行うことができる。
【0044】
(3)2値化処理
引き続き、画像から検出したロープRの撮影画像に対して2値化処理を行う(ステップS3)。この時、摩耗が進行している箇所は白、それ以外は黒として検出される。即ち、白の部分は、摩耗箇所である。
【0045】
(4)ラベリング処理
その後、ステップS3で検出した摩耗箇所についてラベリングによるラベル付けを行う(ステップS4)。ラベリングの際に、ロープRの位置に基づいて、摩耗箇所の重心の位置を示す座標と共に、摩耗箇所の領域を記録する。
【0046】
(5)素線切れ判定
そして、ラベル同士の距離が一定の閾値未満なら素線破断、以上なら摩耗痕として判定する(ステップS5)。
【0047】
(6)警報
更に、ステップS5で、素線破断として判定したときは、警報を発する(ステップS6)。警報に応じて、点検整備を行えるので、安全性が高まる。警報を発する手段としてスピーカ(図示省略)が計測装置20に内蔵されている。
【0048】
(7)撮影終了
その後、ロープRの所定長又は全長について撮影が終了しているか否か判定し(ステップS7)、撮影が終了しているときは、全ての工程を終了する(ステップS8)。
【0049】
(8)新しい撮影した画像の入力
撮影が終了していない場合は、新しく撮影した撮影画像を入力して(ステップS9)、新しく撮影した撮影画像に対しても、ステップS1~ステップS6を繰り返す。
【0050】
上述した通り、本実施例によれば、先ず、ラインセンサカメラ10からロープRの撮影画像を取得し(ステップS1)、次に、取得した撮影画像にエッジ処理を施し(ステップS2)、引き続き、撮影画像に2値化処理を行い(ステップS3)、摩耗箇所についてラベリングによるラベル付けを行い(ステップS4)、次にそれら摩耗箇所にラベル付されたラベルの情報を用いてロープの素線破断を判定することで(ステップS5)、事前のデータ取得の必要がないエレベータロープ検査装置を実現できるという効果を奏する。
【0051】
また、ラインセンサカメラ10で複数のロープRを撮影すれば、複数本のエレベータロープ素線の破断、摩耗痕を一度に計測することが可能となるという効果を奏する。また、ラインセンサカメラ10は、高速に撮影可能なため、エレベータ高速昇降時においても、画像撮影が可能になるという効果も奏する。
【0052】
素線切れと判定するときは警報を発するので(ステップS6)、安全性が高まるという効果も奏する。更に、ラインセンサカメラ10から出力された撮影画像を収録する画像収録部21を更に備えると、画像処理部22で画像処理された結果であるロープ素線の素線切れと撮影画像を照合できるという効果を奏する。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2に係るエレベータロープ検査装置を
図2に示す。
本実施例のエレベータロープ検査装置は、実施例1で使用したラインセンサカメラ10に代えてエリアカメラ11を使用するものである。
【0054】
エリアカメラ11は、多数の画素を縦横に配置したカメラであり、1回の撮影で、静止したロープRの二次元的な画像を撮影することができる。撮影された二次元的な画像は撮影画像として計測装置20に出力される。
【0055】
また、エリアカメラ11の横方向の画素を1ラインとして抽出し、ラインセンサカメラ10と同様に、移動するロープRの一次元的画像を連続的に撮影し、時系列に合成した二次元的画像を撮影画像として計測装置20に出力することもできる。つまり、エリアカメラ11は、ラインセンサカメラ10と同様に使用することもできる。また、色情報が計測可能なエリアカメラを使用すると、事後的な確認が容易になるという利点がある。
その他の構成は前述した実施例1と同様であり、同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、エレベータロープ検査装置及びエレベータロープ検査方法として、産業上広く利用可能なものである。
【符号の説明】
【0057】
1,2,3 ラベル
10 ラインセンサカメラ
11 エリアカメラ
20 計測装置
21 画像収録部
22 画像処理部
30 速度・位置検出手段
40 エレベータコントローラ
R エレベータロープ(ロープ)