(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】塗料組成物及び複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 167/08 20060101AFI20220119BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220119BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220119BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C09D167/08
C09D7/61
B05D1/36 Z
B05D7/24 302S
B05D7/24 302W
B05D7/24 303B
B05D7/24 303E
B32B27/36
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2018164198
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 慎司
(72)【発明者】
【氏名】若林 史朗
(72)【発明者】
【氏名】西澤 安明
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008205(JP,A)
【文献】特開平02-075669(JP,A)
【文献】特開2011-219550(JP,A)
【文献】特開2012-067162(JP,A)
【文献】特開昭62-197465(JP,A)
【文献】特開昭60-088077(JP,A)
【文献】特開2013-040331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00、
101/00-201/10
B05D 1/36、7/24
B32B 27/20、27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量40000~200000のフェノール変性アルキド樹脂(A1)、重量平均分子量2000~40000のフェノール変性アルキド樹脂(A2)、シランカップリング剤(B)及び平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)を含有する組成物であって、
フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、硫酸バリウム(C)を1~200質量%含有する塗料組成物。
【請求項2】
フェノール変性アルキド樹脂(A1)及び/又はフェノール変性アルキド樹脂(A2)が、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸及び大豆油脂肪酸から選ばれる少なくとも1種を構成成分とすることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、フェノール変性アルキド樹脂(A1)が10~70質量%、フェノール変性アルキド樹脂(A2)が30~90質量%である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤(B)が、アミノ基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに、金属がコバルト、マンガン、ジルコニウム、リチウム及びバリウムである金属ドライヤーから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
下塗塗膜及び上塗塗膜からなる複層塗膜の、下塗塗膜形成の下塗塗料組成物として、請求項1~5のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装する複層塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の塗料組成物を使用して塗装された建設機械又は産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上り外観及び防食性に優れる高固形分の塗料組成物及び複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業用機械の塗装において、所望の要求性能に応じて、様々な塗料組成物が使用されている。
【0003】
近年の建機、産機メーカーからの塗料に対する要望として、下塗/上塗塗装仕様におけるウエットオンウエット塗装の仕上り外観及び防食性の向上、塗料の高固形分化がある。
特許文献1には、交通機器や産業機器等の金属材用途の常温硬化型塗料として、アルキド樹脂ワニスを樹脂成分とする塗料組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された常温硬化型塗料は複層塗膜仕様ではなく、この常温硬化型塗料による塗膜単層によって、防食性等の塗膜性能を満足させようとするものであって、中塗塗料、上塗塗料等の上層に塗装される塗料とのウエットオンウエット適性が不十分であるため、下塗/中塗/上塗或いは下塗/上塗塗装仕様の仕上り外観が良好ではなく、塗料固形分も低いものであった。また、単層塗膜であるため防食性も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、仕上り外観及び防食性に優れる高固形分のアルキド樹脂塗料組成物及び該塗料組成物により得られる塗膜を有する複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討した結果、高分子量と低分子量のフェノール変性アルキド樹脂を併用し、シランカップリング剤及び特定平均粒子径範囲の硫酸バリウムを含有する組成物によれば、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
1.重量平均分子量40000~200000のフェノール変性アルキド樹脂(A1)、重量平均分子量2000~40000のフェノール変性アルキド樹脂(A2)、シランカップリング剤(B)及び平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)を含有する組成物であって、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、硫酸バリウム(C)を1~200質量%含有する塗料組成物、
2.フェノール変性アルキド樹脂(A1)及び/又はフェノール変性アルキド樹脂(A2)が、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸及び大豆油脂肪酸から選ばれる少なくとも1種を構成成分とすることを特徴とする項1に記載の塗料組成物、
3.フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、フェノール変性アルキド樹脂(A1)が10~70質量%、フェノール変性アルキド樹脂(A2)が30~90質量%である、項1又は2に記載の塗料組成物、
4.シランカップリング剤(B)が、アミノ基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種である項1~3のいずれか一項に記載の塗料組成物、
5.さらに、金属が、コバルト、マンガン、ジルコニウム、リチウム及びバリウムである金属ドライヤーから選ばれる少なくとも1種を含有する項1~4のいずれか一項に記載の塗料組成物、
6.下塗塗膜及び上塗塗膜からなる複層塗膜の、下塗塗膜形成の下塗塗料組成物として、項1~5のいずれか一項に記載の塗料組成物を塗装する複層塗膜形成方法、
7.項1~5のいずれか一項に記載の塗料組成物を使用して塗装された建設機械又は産業機械、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物は、基体樹脂として、平均分子量の異なる2種類のフェノール変性アルキド樹脂を併用しているので、ウエットオンウエット適性と塗料の高固形分化を両立させることができる。また、シランカップリング剤により基材との密着性が向上し、防食性にも優れた塗膜を得ることができる。さらに体質顔料成分として、特定の小さい平均粒子径範囲の硫酸バリウムを用いているため得られる塗膜の平滑性も向上し、仕上り外観に優れた塗膜を得ることができる。
【0010】
したがって、本発明の塗料組成物によれば、従来のアルキド下塗塗料では硬化が遅く、強制乾燥或いは長時間の養生期間を要するために不可能であった上塗塗料とのウエットオンウエット塗装が可能となった。
【0011】
以上、本発明の塗料組成物によれば、仕上り性及び防食性に優れる高固形分の塗料組成物を得ることができ、VOC(揮発性有機化合物)の削減も可能となり、本発明の塗料組成物により得られる塗膜により、仕上り外観及び防食性に優れる複層塗膜を得ることができる、という効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の塗料組成物(以下、単に、本塗料と略すこともある。)は、重量平均分子量40000~200000のフェノール変性アルキド樹脂(A1)、重量平均分子量2000~40000のフェノール変性アルキド樹脂(A2)、シランカップリング剤(B)及び平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)を含有する塗料組成物である。以下、詳細に述べる。
【0013】
フェノール変性アルキド樹脂(A)
フェノール変性アルキド樹脂(A1)とフェノール変性アルキド樹脂(A2)の総称を、フェノール変性アルキド樹脂(A)とする。
【0014】
フェノール変性アルキド樹脂(A)は、アルキド樹脂をフェノール樹脂により変性することによって得られる樹脂であり、従来公知のものを制限なく使用することができる。
上記フェノール変性アルキド樹脂(A)としては例えば、動植物油脂又はその脂肪酸(a1)、飽和多塩基酸(a2)、多価アルコール(a3)及びフェノール樹脂(a4)を構成成分とする樹脂を挙げることができる。
【0015】
動植物油脂又はその脂肪酸(a1)としては、特に制限なく従来公知のものを使用することができるが、乾性油を使用することが好ましい。具体的には例えば、魚油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、亜麻仁油、大豆油、ゴマ油、ケシ油、エノ油、麻実油、ブドウ核油、トウモロコシ油、トール油、ヒマワリ油、綿実油、クルミ油、米ぬか油、桐油又はその脂肪酸等を挙げることができる。
【0016】
上記乾性油のうち、仕上り外観の観点から、亜麻仁油、桐油及び大豆油を好適に使用することができる。これらは単独で或いは2種以上を組合せて使用することができる。
【0017】
多塩基酸(a2)としては、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン2酸,2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4´-ビフェニルジカルボン酸、又はこれらのジアルキルエステル等を挙げることができ、これらは単独で或いは2種以上を組合せて使用することができる。
【0018】
多価アルコール(a3)としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ビスフェノール類又はビスフェノール類とアルキレンオキシドの付加物、1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3-プロパンジオール、1,2-シクロヘキサングリコール、1,3-シクロヘキサングリコール、1,4-シクロヘキサングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル-4,4´-ジオール、2,6-デカリングリコール、2,7-デカリングリコール等を挙げることができる。これらは単独で或いは2種以上を併用して使用することができる。
【0019】
上記フェノール変性アルキド樹脂(A)は、従来公知の手法にて製造することができ、例えば、動植物油脂又はその脂肪酸(a1)、飽和多塩基酸(a2)、多価アルコール(a3)を縮合反応させて得られるアルキド樹脂に、フェノール樹脂(a4)を反応させることによって製造することができる。
【0020】
上記フェノール樹脂(a4)は、アルキド樹脂を高分子量化させ、本発明の塗料組成物により得られる塗膜の乾燥性を高めるために使用されるものであり、従来公知のフェノール樹脂を制限なく使用することができる。
【0021】
フェノール樹脂(a4)としては、例えばフェノール類とホルムアルデヒド類とを反応させて得られる樹脂を使用することができる。
【0022】
該フェノール類としては、例えば、フェノール、メチルフェノール、p-エチルフェノール、p-n-プロピルフェノール、p-イソプロピルフェノール、p-n-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-アミルフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-シクロヘキシルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、3,5-キシレノール、レゾルシノール、カテコール等の1分子中にベンゼン環を1個有するフェノール類;フェニルo-クレゾール、p-フェニルフェノール等の1分子中にベンゼン環を2個有するフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等を挙げることができ、これらは単独で、或いは2種以上を組合せて使用することができる。また、ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等を挙げることができる。
【0023】
フェノール樹脂(a4)は重量平均分子量が1000~10000、特に2000~8000の範囲内であることが適しており、フェノール変性アルキド樹脂(A)の固形分総量を基準とするフェノール樹脂(a4)の質量が0.5~10質量%、好ましくは1.0~5.0質量%の範囲内にあることが仕上り外観の観点から適している。
【0024】
本明細書において樹脂の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
【0025】
ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0026】
アルキド樹脂にフェノール樹脂(a4)を反応させてフェノール変性アルキド樹脂(A)を得るには、アルキド樹脂の水酸基とフェノール樹脂(a4)のメチロール基又はジメチルエーテル基が縮合反応していると推察され、該アルキド樹脂とフェノール樹脂(a4)を混合し、反応温度は、120~180℃程度で1~10時間程度加熱反応させることにより得ることができる。
【0027】
本発明の塗料組成物は、平均分子量の異なるフェノール変性アルキド樹脂(A)を2種併用するものであり、ウエットオンウェット適性の観点から、フェノール変性アルキド樹脂(A1)の重量平均分子量は、40000~200000であり、好ましくは45000~150000、さらに好ましくは50000~90000である。また、塗料の高固形分化の観点から、フェノール変性アルキド樹脂(A2)の重量平均分子量は、2000~40000(2000以上かつ40000未満)であり、好ましくは5000~35000、さらに好ましくは8000~30000である。
【0028】
また、ウエットオンウェット適性及び塗料の高固形分化の両立の観点から、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、フェノール変性アルキド樹脂(A1)が10~70質量%、特に15~60質量%、さらに特に15~50質量%であることが好ましく、フェノール変性アルキド樹脂(A2)が30~90質量%、特に40~85質量%、さらに特に50~85質量%であることが好ましい。
【0029】
シランカップリング剤(B)
本発明の塗料組成物において、シランカップリング剤(B)は、金属基材との密着性を高めて防食性向上を目的として含有されるものである。
【0030】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシキシシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;β-カルボキシルエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-β-(N-カルボキシメチルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシル基含有シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0031】
上記のうち、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤が、防食性向上の観点から好ましい。上記シランカップリング剤は、単独で或いは2種以上を併用して使用することができる。
【0032】
シランカップリング剤の市販品としては、KBM-402、KBM-403、KBM-502、KBM-503、KBM-603、KBE-903、KBE-602、KBE-603(いずれも信越シリコーン社製、商品名)等を挙げることができる。
【0033】
本発明の塗料組成物においてシランカップリング剤の使用量は、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、0.1~10質量%、特に0.5~7質量%、さらに特に0.8~3.5質量%であることが、防食性及び仕上り外観の観点から好ましい。
【0034】
硫酸バリウム(C)
本発明の塗料組成物は、平均粒子径が0.01~5.0μm、好ましくは0.05~4.0μm、さらに好ましくは0.05~3.0μmの硫酸バリウム(C)を含有する。(以下、平均粒子径0.01~5.0μmの硫酸バリウム(C)を単に硫酸バリウム(C)と略称する)。
【0035】
このような硫酸バリウム(C)の市販品としては、バリファインBF-20(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.03μmの硫酸バリウム)、BARIACE B-30(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.3μmの硫酸バリウム)、SPARWITE(スパーワイト)W-5HB(Sino-Can社製、商品名、硫酸バリウム粉末、平均粒子径:1.6μm)等を挙げることができる。
なお本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定により得られる値である。
【0036】
具体的には、例えばUPA-EX250(商品名、日機装株式会社製、動的光散乱法による粒度分布測定装置)を用いて測定することができる。
【0037】
本発明の塗料組成物における硫酸バリウム(C)の量は、仕上り外観及び高固形分化の観点から、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、1~200質量%、好ましくは5~150質量%、さらに好ましくは10~100質量%である。
【0038】
本発明の塗料組成物には、防食性の向上を目的として防錆顔料を含有させることができる。防錆顔料としては、具体的には例えば、酸化亜鉛、亜リン酸塩化合物、リン酸塩化合物、ホウ酸塩化合物、メタホウ酸塩化合物、モリブテン酸塩系化合物、ビスマス化合物、変性シリカ、金属イオン交換シリカ等を挙げることができる。
【0039】
上記のうち、特に、亜リン酸塩化合物、リン酸塩化合物を好適に使用することができる。
【0040】
上記亜リン酸塩化合物としては、EXPERT NP-1000、EXPERT NP-1020C等の亜リン酸カルシウム化合物、EXPERT NP-1100、EXPERT NP-1102等の亜リン酸アルミニウム化合物を挙げることができる(EXPERTシリーズはいずれも東邦顔料社製、商品名)。
【0041】
上記リン酸塩化合物としては、金属化合物で処理されたトリポリリン酸二水素アルミニウム等を挙げることができる。上記金属化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ビスマス、コバルト、スズ、ジルコニウム、チタニウム、ストロンチウム、銅、鉄、リチウム、アルミニウム、ニッケル、及びナトリウムの塩化物、水酸化物、炭酸化物、硫酸物等を挙げることができる。
【0042】
上記金属化合物で処理されたトリポリリン酸二水素アルミニウムの市販品としては、K-WHITE140、K-WHITE Ca650、K-WHITE450H、K-WHITE G-105、K-WHITE K-105、K-WHITE K-82(いずれもテイカ社製、商品名)等を挙げることができる。
【0043】
上記モリブテン酸塩系化合物の市販品としては、例えば、LFボウセイ M-PSN、LFボウセイ MC-400WR、LFボウセイ PM-300、PM-308(いずれもキクチカラー社製、商品名)等を挙げることができる。
【0044】
上記ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス及び有機酸ビスマス等を挙げることができる。
変性シリカとしては、カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウム等のカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた化合物等を挙げることができる。
【0045】
上記金属イオン交換シリカとしては、例えば、カルシウムイオン交換シリカ、マグネシウムイオン交換シリカ等を挙げることができる。これらの金属イオン交換シリカとしてはリン酸変性金属イオン交換シリカを使用することもできる。
【0046】
上記カルシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって、カルシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。カルシウムイオン交換シリカの市販品としては、SHIELDEX(シールデックス、登録商標)C303、SHIELDEXAC-3、SHIELDEXC-5(以上いずれもW.R.Grace&Co.社製)、サイロマスク52(富士シリシア社製)等を挙げることができる。
【0047】
上記マグネシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって、マグネシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。マグネシウムイオン交換シリカの市販品としては、サイロマスク52M(富士シリシア社製)、ノビノックスACE-110(SNCZ社製・フランス)等を挙げることができる。
【0048】
本発明の塗料組成物において防錆顔料を使用する場合、使用量は、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、5~50質量%、特に10~40質量%であることが、防食性の観点から好ましい。
【0049】
本発明の塗料組成物には、所望の色とすることを目的として、着色顔料を使用することができる。着色顔料としては、具体的には、チタン白、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等を挙げることができる。
【0050】
本発明の塗料組成物において着色顔料を使用する場合、使用量は、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、10~150質量%、特に20~110質量%であることが、仕上り外観の観点から好ましい。
【0051】
本発明の塗料組成物には必要に応じて体質顔料(硫酸バリウム(C)を除く)を含有させることができる。
【0052】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、シリカ、硫酸バリウム(硫酸バリウム(C)を除く)、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、珪藻土、炭酸マグネシウムアルミニウムフレーク、雲母フレーク等を挙げることができる。
【0053】
本発明の塗料組成物において体質顔料を使用する場合、使用量は、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、20~150質量%、特に40~130質量%であることが、付着性の観点から好ましい。
【0054】
本発明の塗料組成物には、塗料の流動性を制御して仕上り外観及び塗装作業性の向上を目的として、レオロジーコントロール剤を使用することができる。
【0055】
レオロジーコントロール剤としては、具体的には例えば、粘土鉱物(例えば、金属ケイ酸塩、モンモロリロナイト)、アクリル樹脂(例えば、分子中にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマー、オリゴマーからなる構造を含むもの)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アマイド(高級脂肪酸アマイド、ポリアマイド、オリゴマー等)、ポリカルボン酸(分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有する誘導体を含む)、セルロース(ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースエーテル等種々の誘導体を含む)、及びウレタン(分子中にウレタン構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレア(分子中にウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレタンウレア(分子中にウレタン構造とウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)等を挙げることができる。
【0056】
レオロジーコントロール剤の市販品としては、例えば、ディスパロン6900(楠本化成(株)製)、チクゾールW300(共栄社化学(株))等のアマイドワックス;ディスパロン4200(楠本化成(株)製)等のポリエチレンワックス;CAB(セルロース・アセテート・ブチレート、イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、疎水化HEC、CMC(カルボキシメチルセルロース)等のセルロース系のレオロジーコントロール剤;BYK-410、BYK-411、BYK-420、BYK-425(以上、ビックケミー(株)社製)等のウレタンウレア系のレオロジーコントロール剤;フローノンSDR-80(共栄社化学(株))等の硫酸エステル系アニオン系界面活性剤;フローノンSA-345HF(共栄社化学(株))等のポリオレフィン系のレオロジーコントロール剤;フローノンHR-4AF(共栄社化学(株))等の高級脂肪酸アマイド系のレオロジーコントロール剤;等を挙げることができる。
【0057】
本発明の塗料組成物においてレオロジーコントロール剤を使用する場合、使用量は、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、0.1~20質量%、特に0.5~15質量%、さらに特に0.8~10質量%の範囲内であることが、仕上り外観及び塗装作業性の観点から好ましい。
【0058】
本発明の塗料組成物において、硬化促進のため、硬化触媒として、金属ドライヤーを好適に使用することができる。金属ドライヤーは、金属と脂肪酸との金属塩化合物である。
上記金属としては、具体的には例えば、コバルト、マンガン、ジルコニウム、リチウム、バリウム、亜鉛、銅、鉄、カルシウム、マグネシウム、セリウム、アルミニウム、ストロンチウム等を挙げることができる。
【0059】
上記脂肪酸としては、具体的には例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグリノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、マッコウ酸、ミリストオレイン酸、ゾーマリン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、鯨油酸、エルシン酸、サメ油酸、リノール酸、ヒラゴ酸、エレオステアリン酸、ブニカ酸、トリコサン酸、リノレン酸、モロクチ酸、パリナリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ヒラガシラ酸、ニシン酸、大豆油脂肪酸、ステアリン酸、トール油脂肪酸等を挙げることができる。
【0060】
上記金属塩化合物としては、具体的には例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸バリウム、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸バリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉄、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸銅、オクチル酸鉄、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、オクチル酸セリウム、オクチル酸アルミニウム、ネオデカン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0061】
これらは単独で或いは2種以上を併用して使用することができる。
【0062】
上記の金属塩化合物のうち、特に、金属がコバルト、マンガン、ジルコニウム、リチウム及びバリウムである金属塩化合物を好適に使用することができる。
【0063】
上記の金属塩のうち、コバルト金属塩が塗膜表面の硬化に特に寄与し、マンガン金属塩、ジルコニウム金属塩、リチウム金属塩及びバリウム金属塩が塗膜内部の硬化に特に寄与する。
【0064】
本発明の塗料組成物において、金属ドライヤーを使用する場合、使用量は、フェノール変性アルキド樹脂(A1)及びフェノール変性アルキド樹脂(A2)の固形分総量を基準にして、合計金属量(質量換算)で0.01~15質量%、特に0.1~10質量%、さらに特に0.5~5質量%であることが好ましい。
【0065】
本発明の塗料組成物にはさらに必要に応じて、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、消泡剤、硬化剤、硬化触媒(上記、金属ドライヤーを除く)、防腐剤、凍結防止剤等を含有させることができる。
【0066】
本発明の塗料組成物は、通常、フェノール変性アルキド樹脂(A)、シランカップリング剤(B)及び硫酸バリウム(C)、その他必要に応じて使用される各成分を混合し、有機溶剤等の溶媒を必要に応じて添加して粘度調整することにより使用される。混合は、例えばディスパー、ホモジナイザー等の混合装置を用いて行うことができる。
【0067】
本明細書において、「高固形分」とは、通常よりも塗装固形分濃度(塗装時の固形分濃度;塗装NV(nonvolatile content)値)が高いことをいう。例えば、本発明の塗料組成物が下塗塗料として使用される場合、高固形分とは塗装固形分濃度が55~60質量%程度以上のものをいう。本塗料の塗装固形分濃度は、通常、55~65質量%、特に、55~63質量%であることが高固形分化及び仕上り外観の両立の観点から好ましい。
【0068】
なお、固形分は、JIS K5601に規定されている、所定条件下で蒸発によって得られる残さの質量分率である加熱残分として求めることができる。
【0069】
本発明の塗料組成物の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。乾燥膜厚は、通常10μm~150μm、好ましくは30μm~80μmの範囲内が適している。
【0070】
被塗物としては、冷延鋼板、黒皮鋼板、合金化亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板等、及びこれらを素材とするブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業用機械等を挙げることができる。これらは必要に応じて、ショットブラスト、表面調整、表面処理等を施したものであってもよい。
【0071】
本発明の塗料組成物は、仕上り外観及び防食性に優れ、高固形分とすることができるので、上記被塗物用途の下塗塗料(プライマー塗料)、特にウエットオンウエット仕様の下塗塗膜及び上塗塗膜からなる複層塗膜における下塗塗膜形成の下塗塗料組成物として、好適に使用することができる。
【0072】
ウエットオンウエット仕様とは、未硬化の下層塗膜上に上層塗膜を形成する複層塗装工程の仕様である。
【0073】
本発明の複層塗膜形成方法は、下塗塗膜及び上塗塗膜からなる複層塗膜形成方法において、下塗塗膜形成の下塗塗料組成物として、本発明の塗料組成物を塗装する方法である。
本発明の塗料組成物は、ウエットオンウエット適性に優れているので、特に、被塗物上に、本発明の塗料組成物による未硬化塗膜を形成し、該未硬化塗膜上に、上塗塗料組成物による上塗塗膜を形成し、両塗膜を同時に乾燥して塗膜を形成する方法、において好適に使用することができる。
【0074】
上塗塗膜形成の上塗塗料組成物としては、従来公知の塗料組成物を制限なく使用することができる。具体的には例えば、ウレタン樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料、弗素樹脂系塗料、油性系塗料、フタル酸樹脂系塗料等を使用することができる。
【0075】
防食性及び仕上り外観の観点からはエポキシ樹脂及び/又はアクリル樹脂を基体樹脂とし、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする上塗塗料組成物を好適に使用することができる。
【0076】
上記ウエットオンウエットの塗膜形成方法において、本発明の塗料組成物の塗装は、前記の塗装方法によって行うことができる。乾燥膜厚は、通常10μm~150μm、好ましくは30μm~80μmの範囲内が適している。
【0077】
上記本発明の塗料組成物による未硬化塗膜上への、前記の上塗塗料組成物の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。乾燥膜厚は、通常、10μm~150μm、好ましくは30μm~80μmの範囲内が適している。次いで、常温~160℃で10~120分間、好ましくは60~120℃で20~90分間乾燥させることにより、複層塗膜を得ることができる。
【0078】
本発明の塗料組成物を塗装して該未硬化塗膜を形成した後、必要に応じて、常温でのセッティング又は予備加熱を行うこともできる。
【実施例】
【0079】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
下塗塗料組成物(プライマー塗料組成物)の製造
実施例No.1 プライマー塗料組成物No.1の製造
以下の工程1~工程2によって、プライマー塗料組成物No.1を得た。
【0080】
工程1:
アラキード7104(注1)30部(固形分)、アラキード7112(注3)70部(固形分)、SPARWITE W-5HB(注4)75部、タイピュア R-902(注9)60部、K-WHITE 105(注10)20部、サンライト SL-1500(注11)50部に、キシレン及びスワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)を適量加え、サンドミルにて分散し、顔料分散ペーストを得た。
【0081】
工程2:
上記にて得た顔料分散ペーストに、ディスパロンA603-20X(注12)2部(固形分)、KBM-503(注13)1部、ヘキソエートコバルト 12%(注15)1部(固形分)、及びDICNATE AL-500(注16)1部(固形分)を配合し、表面調整剤、消泡剤を加えて攪拌し、キシレン及びスワゾール1000を加えて攪拌し、固形分を調整することによって、固形分60%、塗装粘度20秒/25℃(イワタカップで測定)のプライマー塗料組成物No.1を得た。
【0082】
実施例No.2~13 プライマー塗料組成物No.2~No.13の製造
表1の配合内容とする以外は、実施例No.1と同様にして、各プライマー塗料組成物No.2~13を得た。
【0083】
比較例No.1~6 プライマー塗料組成物No.14~No.19の製造
表2の配合内容とする以外は、実施例No.1と同様にして、各プライマー塗料組成物No.14~No.19を得た。
(注1)アラキード7104:荒川化学工業株式会社、商品名、亜麻仁油/桐油脂肪酸変性アルキド樹脂のフェノール変性アルキド樹脂、重量平均分子量60000
(注2)アラキード7109:荒川化学工業株式会社、商品名、大豆油脂肪酸変性アルキド樹脂のフェノール変性アルキド樹脂、重量平均分子量150000
(注3)アラキード7112:荒川化学工業株式会社、商品名、亜麻仁油脂肪酸変性アルキド樹脂のフェノール変性アルキド樹脂、重量平均分子量15000
(注4)SPARWITE W-5HB:Sino-Can Micronized Product co.,Ltd、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径1.6μm、吸油量13ml/100g
(注5)BARIACE B-30:堺化学工業株式会社、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.3μm
(注6)BARIFINE BF-20:堺化学工業株式会社、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.03μm、吸油量24ml/100g
(注7)硫酸バリウムBA:堺化学工業株式会社、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径8μm、吸油量8ml/100g
(注8)LAKABAR SF:LAKAVISUTH LTD、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径10.4μm、吸油量10ml/100g
(注9)タイピュア R-902:デュポン株式会社、商品名、二酸化チタン、吸油量16ml/100g
(注10)K-WHITE 105:テイカ株式会社製、商品名、トリポリリン酸二水素アルミニウム
(注11)サンライト SL-1500:竹原化学工業株式会社、商品名、炭酸カルシウム
(注12)ディスパロン A603-20X:楠本化成株式会社、商品名、脂肪酸アマイドワックス
(注13)KBM-503:信越化学株式会社、商品名、メタクリロキシ基含有シランカップリング剤
(注14)KBM-403:信越化学株式会社、商品名、エポキシ基含有シランカップリング剤
(注15)ヘキソエートコバルト 12%:東栄化工株式会社、商品名、オクチル酸コバルト、固形分70%
(注16)DICNATE AL-500:DIC株式会社、商品名、アルミニウムキレート
上塗塗料組成物の製造
製造例No.1 アクリル樹脂溶液の製造
スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)28部、トルエン85部、スチレン41.6部、n-ブチルアクリレート6.9部、イソブチルメタクリレート19部、プラクセルFM-3(注17)15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート17部、アクリル酸0.5部、ジ-tert-ブチルハイドロパーオキサイド8部を窒素ガス下で110℃において反応させて、固形分質量濃度45%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価3.9mgKOH/g、水酸基価94.9mgKOH/g、重量平均分子量11,000であった。
(注17)プラクセルFM-3:ダイセル化学工業株式会社製、商品名、2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン変性ビニルモノマー
製造例No.2 上塗塗料組成物No.1の製造例
製造例No.1で得たアクリル樹脂溶液80部(固形分)、タイピュア R-902(注9)12部、ホスターパームエローH-3G(注18)12部、BARIFINE BF-20(注6)15部、Bayferrox4905(注19)12部及びTINUVIN292(注20)1部を配合し、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、芳香族炭化水素系溶媒)で固形分を調整した混合物を、サンドミルにて分散することによって主剤塗料を得た。さらに塗装直前に、スミジュール N3300(注21)20部(固形分)及びKBM-403(注14)0.5部を混合攪拌し、固形分60%の上塗塗料組成物No.1を得た。
(注18)ホスターパームエローH-3G:クラリアント社製、商品名、ハンザエロー系黄色顔料
(注19)Bayferrox 4905:Lanxess株式会社、商品名、
赤色顔料
(注20)TINUVIN292:BASF株式会社、商品名、光安定化剤
(注21)スミジュール N3300:住化コベストロウレタン株式会社、商品名、イソシアヌレート変性HDI(HDIの3量体)
<複層塗膜形成塗板の作成>
複層塗膜形成塗板No.1の作成(実施例用)
下記の工程1~工程3によって、複層塗膜形成塗板No.1を得た。
【0084】
工程1:冷間圧延鋼板(大きさ0.8×70×150mm、パルボンド#3020)に実施例No.1で得られたプライマー塗料組成物No.1を用い、乾燥膜厚が40μmになるようにスプレー塗装し、25℃で3分間セッティングした。
【0085】
工程2:次いでプライマー塗膜上に、製造例No.2で得られた上塗塗料組成物No.1を用い、カンペ工業用ウレタンシンナー205(関西ペイント社製、2液ウレタン塗料用シンナー)で、上塗塗料組成物No.1 100部に対して、シンナーを10部配合し、乾燥膜厚が40μmになるようにスプレー塗装にてウェットオンウェットで塗装して、上塗塗膜を形成した。
【0086】
工程3:工程1及び工程2によって得られた複層塗膜を、25℃で10分間セッティングした後、80℃で30分間加熱乾燥させ、さらに室温(20℃)で72時間乾燥させて複層塗膜形成塗板No.1を得た。
【0087】
複層塗膜形成塗板No.2~No.13の作成(実施例用)
プライマー塗料組成物を表1の塗料とする以外は、複層塗膜形成塗板No.1の作成と同様にして、複層塗膜形成塗板No.2~No.13を得た。
【0088】
複層塗膜形成塗板No.14~No.19の作成(比較例用)
プライマー塗料組成物を表2の塗料とする以外は、複層塗膜形成塗板No.1の作成と同様にして、複層塗膜形成塗板No.14~No.19を得た。
【0089】
塗膜性能試験
各複層塗膜形成塗板について、後記の試験項目につき塗膜性能試験に供した。試験結果を併せて表1及び表2に示す。
【0090】
性能評価
仕上り外観(注22):各複層塗膜形成塗板の塗面外観を目視及び光沢で評価した。
◎は、上塗塗膜とプライマー塗膜の混層がなく平滑性が良好で、かつ60度光沢値が90以上であった。
○は、上塗塗膜とプライマー塗膜の混層がなく平滑性が良好で、かつ60度光沢値が75以上90未満であった。
△は、上塗塗膜とプライマー塗膜が混層しており、うねり、ツヤビケ及びチリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り外観の低下がやや見られ、60度光沢値が60以上75未満であった。
×は、上塗塗膜とプライマー塗膜の混層が著しく、うねり、ツヤビケ、チリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り外観の低下が著しく、60度光沢値が60未満であった。
【0091】
鉛筆硬度(注23):各複層塗膜形成塗板を、JIS K 5600-5-4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかったもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
◎は、H以上であった。
○は、F以上 H未満であった。
△は、HB以上 F未満であった。
×は、HB未満であった。
【0092】
付着性(注24):各複層塗膜形成塗板を、JIS K 5600-5-6に準じて、2mm碁盤目試験を行い、碁盤目の残数を評価した。
◎は、分類1以上であった。
○は、分類2以上 分類1未満であった。
△は、分類3以上 分類2未満であった。
×は、分類3未満であった。
【0093】
防食性(注25):各複層塗膜形成塗板に、ナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z-2371に準じて120時間耐塩水噴霧試験を行い、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm未満(片側)。
○は、錆、フクレの最大幅が、カット部から2mm以上でかつ3mm未満(片側)。
△は、錆、フクレの最大幅が、カット部から3mm以上でかつ4mm未満(片側)。
×は、錆、フクレの最大幅が、カット部から4mm以上(片側)。
【0094】
【0095】
【産業上の利用可能性】
【0096】
高固形分化が可能な塗料組成物から得られる塗膜により、仕上り外観及び防食性に優れる複層塗膜を有する塗装物品を提供することができる。