(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】断熱容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20220119BHJP
B65D 81/26 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B65D81/38 N
B65D81/26 C
B65D81/38 B
(21)【出願番号】P 2018172666
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹彦
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145081(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211437(JP,U)
【文献】実開平04-032970(JP,U)
【文献】特開2012-136231(JP,A)
【文献】登録実用新案第3011585(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0369529(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B65D 81/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器の上端部に設けられた開口部を閉塞する蓋と、該蓋により前記開口部が閉塞された前記容器の内部空間と外部空間とを連通する外部通気孔と、前記内部空間を仕切る仕切板と、を備えた断熱容器であって、
前記仕切板は、前記外部通気孔に対向して前記内部空間に断熱室を画定する外壁面と、前記内部空間に内容物の収容室を画定する内壁面と、を有し、
前記断熱室と前記収容室とを連通する内部通気孔を備え
、
前記外部通気孔は、前記容器の側壁の上端部に設けられた外部通気溝と前記蓋とによって画定され、
前記内部通気孔は、前記仕切板の上端部に設けられた内部通気溝と前記蓋とによって画定され、前記外部通気孔に対向する位置から側方にずれた位置に設けられていることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
容器と、該容器の上端部に設けられた開口部を閉塞する蓋と、該蓋により前記開口部が閉塞された前記容器の内部空間と外部空間とを連通する外部通気孔と、前記内部空間を仕切る仕切板と、を備えた断熱容器であって、
前記仕切板は、前記外部通気孔に対向して前記内部空間に断熱室を画定する外壁面と、前記内部空間に内容物の収容室を画定する内壁面と、を有し、
前記断熱室と前記収容室とを連通する内部通気孔を備え、
前記外部通気孔は、前記容器の側壁の下端部に開口する貫通孔であり、
前記内部通気孔は、
前記仕切板の下端部に設けられた内部通気溝と前記容器の底壁とによって画定され、前記外部通気孔に対向する位置から側方にずれた位置に設けられていることを特徴とす
る断熱容器。
【請求項3】
前記仕切板は、前記断熱室の空気の対流を抑制する対流抑制部と、前記断熱室の空気の対流を許容する対流許容部とを有し、
前記対流抑制部と前記側壁との間隔は、前記対流許容部と前記側壁との間隔よりも狭いことを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記対流許容部は、前記外部通気孔に対向する前記仕切板の端部に設けられていることを特徴とする請求項
3に記載の断熱容器。
【請求項5】
前記対流許容部は、前記仕切板の上端から下端まで連続していることを特徴とする請求項
3に記載の断熱容器。
【請求項6】
前記仕切板は、前記容器の側壁に設けられた係合部に取り外し可能に係合されることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品、電気製品等を収容する発泡スチロール製箱の仕切り構造に関する考案が知られている(下記特許文献1を参照)。この従来構造は、方形箱の身の相対する壁面の内側に、上端より下方に向け複数の対向した溝が形成され、対向した溝間に仕切り板が着脱可能に嵌入されていることを特徴としている(同文献、請求項1等を参照。)。
【0003】
この従来構造によれば、対向した溝が複数形成されているため、仕切り板の嵌入する溝を選択することにより区画室の大きさは自由に調節できる。したがって、収容物品の種類による区分けや、本体と付属品等の区分け等その物品に応じて、最も適切に箱内に収容できるよう区画できる(同文献、第0013段落等を参照。)。
【0004】
また、イカ、鮮魚等の被梱包物を好適に冷却することができる保冷容器に関する発明が知られている(下記特許文献2を参照。)。この従来の保冷容器は、上方に開口した開口部が形成された容器本体と、その容器本体の前記開口部を覆うように被着自在な蓋体とを備え、容器本体に蓋体を被着した状態で、内部に被梱包物を収容する収容空間が形成される(同文献、請求項1等を参照。)。
【0005】
この従来の保冷容器は、容器本体に蓋体を被着した状態で、保冷容器の側壁部には、保冷容器の外部と収容空間とを連通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、保冷容器の側壁部を水平方向から見た側面視において、保冷容器の外部から貫通孔を介して収容空間が見えないように形成されている。また、この貫通孔は、保冷容器の側壁部を水平方向に対して斜め上方向から見たときに、保冷容器の外部から貫通孔を介して収容空間が見えるように形成されている。
【0006】
この従来の保冷容器によれば、保冷容器の外部上方から下方に向かって流れやすい冷気を、貫通孔に沿って流しやすくすることができる。そのため、保冷容器の外部の冷気を、貫通孔を介して収容空間に取り込みやすく、保冷容器内の被梱包物を迅速に冷却することができる(同文献、第0012段落を参照。)。
【0007】
また、保冷容器の下方から上方に向かって流れやすい暖気を、保冷容器の外部から貫通孔に沿って収容空間に入り込みにくくすることができる。さらに、収容空間の上方から下方に向かって流れやすい予冷された被梱包物の冷気を、保冷容器の収容空間から貫通孔に沿って外部に流れ出しにくくすることができる。このような結果、収容空間に収容された被梱包物の保冷性を高めることができる(同文献、第0013段落を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第3011585号公報
【文献】特開2016-145081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
断熱容器は、たとえば、冷凍または冷蔵貨物の輸送に使用される温度管理が可能なリーファーコンテナに収容される場合がある。前記特許文献1に記載された従来構造の発泡スチロール製箱は、通気孔を有しない。そのため、リーファーコンテナ内で方形箱本体の内部に冷気を取り入れるためには、身と蓋からなる方形箱本体の蓋を外して身の開口部を開放する必要がある。
【0010】
これに対し、前記特許文献2に記載された保冷容器は、リーファーコンテナ内の冷気を、貫通孔を介して収容空間に取り込み、保冷容器内の被梱包物を迅速に冷却することができる。しかしながら、この従来の保冷容器は、温度管理がされている環境下で収容空間の温度を外部の温度に迅速に追従させるために貫通孔を大きくすると、温度管理がされていない環境下で収容空間の温度変化が大きくなるという課題がある。
【0011】
本開示は、外部空間の温度管理がされている環境下では蓋を外すことなく収容室の温度を外部空間の温度に迅速に追従させることができ、外部空間の温度管理がされていない環境下では収容室の温度変化を抑制することが可能な断熱容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、容器と、該容器の上端部に設けられた開口部を閉塞する蓋と、該蓋により前記開口部が閉塞された前記容器の内部空間と外部空間とを連通する外部通気孔と、前記内部空間を仕切る仕切板と、を備えた断熱容器であって、前記仕切板は、前記外部通気孔に対向して前記内部空間に断熱室を画定する外壁面と、前記内部空間に内容物の収容室を画定する内壁面と、を有し、前記断熱室と前記収容室とを連通する内部通気孔を備えることを特徴とする断熱容器である。
【0013】
この構成により、断熱容器は、温度管理がされている環境下では、容器の上端部の開口部が蓋によって閉塞された状態で、容器の内部空間と外部空間とを連通する外部通気孔を介して、外部空間の空気を内部空間へ導入することができる。断熱容器の内部空間へ導入された空気は、仕切板によって仕切られた断熱室へ流入する。
【0014】
仕切板は、容器の内部で容器外方を向く外壁面によって、容器の内部空間の最も外方側に断熱室を画定する。また、仕切板は、容器の内部で容器内方を向く内壁面によって、断熱室よりも容器の内部空間の内方側に、容器の内容物を収容するための収容室を画定する。そして、断熱容器は、容器の内部空間の外方側に位置する断熱室と、その断熱室よりも容器の内部空間の内方側に位置する収容室とを連通する内部通気孔を有している。
【0015】
そのため、容器の外部空間から外部通気孔を介して断熱室へ流入した空気は、容器の内部空間の外方側に位置する断熱室から、容器の内部空間の内方側に位置する収容室へ、内部通気孔を介して導入される。このように、容器の外部空間の温度管理がされている環境下では、外部通気孔、断熱室、および内部通気孔を介して、容器の外部の空気を容器の内部の収容室へ導入することができる。これにより、容器の開口部を閉塞する蓋を外すことなく、収容室の温度を外部の温度に迅速に追従させることができる。
【0016】
また、断熱容器は、外部空間の温度管理がされている環境から、外部空間の温度管理がされていない環境に搬出される場合がある。この場合に、収容室よりも容器の内部空間の外方側に位置する断熱室の空気が、容器の外部空間と収容室との間の伝熱を抑制する断熱層として機能する。これにより、容器の外部空間の温度管理がされていない環境下では、断熱室の空気によって容器の外部空間と収容室との間を断熱し、収容室の温度変化を抑制することができる。
【0017】
また、断熱容器の外部空間の温度管理がされていない環境下では、外部空間の温度管理がされていた環境下で収容室に流入した空気が、収容室から内部通気孔を介して断熱室へ流出する。これにより、断熱容器の外部空間と断熱室との間の伝熱によって断熱室と収容室との温度差が拡大することが抑制される。したがって、断熱室による断熱効果を向上させ、断熱容器の外部空間と収容室との間の伝熱による温度変化を抑制することができる。
【0018】
前記断熱容器において、前記外部通気孔は、前記容器の側壁の上端部に設けられた外部通気溝と前記蓋とによって画定され、前記内部通気孔は、前記仕切板の上端部に設けられた内部通気溝と前記蓋とによって画定されていてもよい。
【0019】
この構成により、たとえば、断熱容器を保冷容器として用いる場合に、断熱容器の外部空間で冷凍または冷蔵用の低温管理がされている環境下で、蓋を外すことなく、収容室の温度を外部環境の温度に追従させて迅速に低下させることができる。また、断熱容器の外部空間で冷凍または冷蔵用の低温管理がされていない環境下では、収容室の温度上昇を抑制することができる。
【0020】
前記断熱容器において、前記外部通気孔は、前記容器の側壁の下端部に開口する貫通孔であり、前記内部通気孔は、前記仕切板の下端部に設けられた内部通気溝と前記容器の底壁とによって画定されていてもよい。
【0021】
この構成により、たとえば、断熱容器を保冷容器として用いる場合に、断熱容器の外部空間で冷凍または冷蔵用の低温管理がされている環境下で、蓋を外すことなく、収容室の温度を外部環境の温度に追従させて迅速に低下させることができる。また、断熱容器の外部空間で冷凍または冷蔵用の温度管理がされていない環境下では、収容室の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
また、たとえば、断熱容器を保温容器として用いる場合に、断熱容器の外部空間で保温用の温度管理がされている環境下で、蓋を外すことなく、収容室の温度を外部環境の温度に追従させて迅速に上昇させることができる。また、断熱容器の外部空間で保温用の温度管理がされていない環境下では、収容室の温度低下を抑制することができる。
【0023】
前記断熱容器において、前記内部通気孔は、前記外部通気孔に対向する位置から側方にずれた位置に設けられていてもよい。
【0024】
この構成により、断熱容器の外部空間の温度管理がされている環境下では、容器の外部空間から外部通気孔を介して断熱室へ流入した空気が仕切板の外壁面に衝突し、断熱室に行き渡りやすくなる。これにより、断熱室の温度を、温度管理がされた断熱容器の外部空間の温度に迅速に追従させることができる。したがって、断熱室から内部通気孔を介して空気が流入する収容室の温度を、外部空間の温度に迅速に追従させることができる。
【0025】
また、断熱容器の外部空間の温度管理がされていない環境下では、収容室から内部通気口を介して断熱室へ流出した空気が、断熱室を画定する容器の側壁の内壁面に衝突し、断熱室に行き渡りやすくなる。これにより、断熱容器の外部空間と断熱室との間の伝熱によって断熱室と収容室との温度差が拡大することが抑制される。したがって、断熱室による断熱効果を向上させ、断熱容器の外部空間と収容室との間の伝熱による温度変化を抑制することができる。
【0026】
前記断熱容器において、前記仕切板は、前記断熱室の空気の対流を抑制する対流抑制部と、前記断熱室の空気の対流を許容する対流許容部とを有してもよく、前記対流抑制部と前記側壁との間隔は、前記対流許容部と前記側壁との間隔よりも狭くてもよい。
【0027】
この構成により、断熱容器の外部空間の温度管理がされている環境下で、断熱容器の外部空間から外部通気孔を介して断熱室へ流入した空気は、仕切板の対流許容部と対流抑制部によって断熱室の一部で対流が許容され、断熱室の一部で対流が抑制される。これにより、空気の対流が許容された断熱室の一部の温度を、断熱容器の外部空間の温度に迅速に追従させることができる。したがって、断熱室から内部通気孔を介して空気が流入する収容室の温度を、外部空間の温度に迅速に追従させることができる。一方、断熱容器の外部空間の温度管理がされていない環境下では、仕切板の対流抑制部によって断熱室の一部の空気の対流を抑制し、断熱室の空気による収容室の断熱性を向上させることができる。
【0028】
前記断熱容器において、前記対流許容部は、前記外部通気孔に対向する前記仕切板の端部に設けられていてもよい。
【0029】
この構成により、断熱容器の外部空間の温度管理がされている環境下で、外部空間から外部通気孔を介して断熱室へ流入する空気を仕切板の外壁面に衝突させ、対流許容部によって断熱室内で対流させることができる。これにより、仕切板に対流許容部が設けられている断熱室の一部において、断熱室の温度を断熱容器の外部空間の温度に迅速に追従させることができる。さらに、断熱室から内部貫通孔を介して収容室へ空気を流入させることで、収容室の温度を外部空間の温度に迅速に追従させることができる。
【0030】
前記断熱容器において、前記対流許容部は、前記仕切板の上端から下端まで連続していてもよい。
【0031】
この構成により、断熱容器の外部空間の温度管理がされている環境下で、外部空間から外部通気孔を介して断熱室へ流入した空気を、断熱室の上端部と下端部との間で対流させ、断熱室の温度を外部空間の温度に迅速に追従させることができる。また、断熱容器の外部空間の温度管理がされていない環境下で、収容室から断熱室へ流出した空気を、断熱室の上端部と下端部との間で対流させ、断熱室と収容室との温度差を低下させることができる。
【0032】
前記断熱容器において、前記仕切板は、前記容器の側壁に設けられた係合部に取り外し可能に係合されていてもよい。この構成により、仕切板を交換したり、仕切板を取り外して断熱容器を使用したりすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、外部空間の温度管理がされている環境下では蓋を外すことなく収容室の温度を外部空間の温度に迅速に追従させることができ、温度管理がされていない環境下では収容室の温度変化を抑制することが可能な断熱容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本開示の実施形態1に係る断熱容器の斜視図。
【
図3】
図1に示す断熱容器の蓋を取り外した状態の平面図。
【
図4】
図1に示す断熱容器のIV-IV線に沿う断面図。
【
図5】
図1に示す断熱容器のV-V線に沿う断面図。
【
図6】本開示の実施形態2に係る断熱容器の蓋を取り外した状態の平面図。
【
図8】
図6に示す断熱容器の蓋を取付けた状態の断面図。
【
図9】本開示の実施形態3に係る断熱容器の蓋を取り外した状態の平面図。
【
図11】
図9に示す断熱容器の蓋を取付けた状態の断面図。
【
図12】本開示の実施例に係る断熱容器の内容物の温度変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本開示の断熱容器の一実施形態を説明する。
【0036】
[実施形態1]
図1は、本開示の実施形態1に係る断熱容器100の斜視図である。
図2は、
図1に示す断熱容器100の分解斜視図である。
図3は、
図1に示す断熱容器100の蓋20を取り外した状態の平面図である。
図4は、
図1に示す断熱容器100のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、
図1に示す断熱容器100のV-V線に沿う断面図である。
【0037】
詳細については後述するが、本実施形態に係る断熱容器100は、以下の構成を特徴としている。断熱容器100は、容器10と、その容器10の上端部に設けられた開口部10aを閉塞する蓋20と、その蓋20により開口部10aが閉塞された容器10の内部空間ISと外部空間ESとを連通する外部通気孔30と、容器10の内部空間ISを仕切る仕切板40と、を備えている。仕切板40は、外部通気孔30に対向して容器10の内部空間ISに断熱室50を画定する外壁面41と、容器10の内部空間ISに内容物の収容室60を画定する内壁面42と、を有している。そして、断熱容器100は、断熱室50と収容室60とを連通する内部通気孔70を備えている。
【0038】
以下、本実施形態の断熱容器100の構成を詳細に説明する。容器10は、たとえば、底壁11と、その底壁11の周囲に立設された側壁12と、その側壁12の上端部によって画定された開口部10aとを有している。容器10は、特に限定されないが、たとえば、おおむね直方体の箱型形状を有している。容器10は、長方形板状の底壁11と、その底壁11の長手方向に沿って延び、底壁11の短手方向に対向する一対の矩形板状の側壁12と、を有している。また、容器10は、底壁11の短手方向に沿って延び、底壁11の長手方向に対向する一対の矩形板状の側壁12と、容器10の上端部に設けられた長方形の開口部10aを有している。
【0039】
以下では、たとえば、容器10の長方形板状の底壁11に垂直な方向を断熱容器100の高さ方向、底壁11の短手方向を断熱容器100の横方向、長方形の底壁11の長手方向を断熱容器100の縦方向とする。また、以下の説明における上下、左右、縦横などの方向は、図面を用いて断熱容器100の各部を説明するための便宜的なものであり、断熱容器100の使用時の方向を限定するものではない。
【0040】
断熱容器100の横方向に対向し、断熱容器100の縦方向に延びる一対の長側壁である側壁12は、たとえば、断熱容器100の高さ方向の上端部に外部通気溝31を有している。断熱容器100の長側壁である一対の側壁12は、たとえば、断熱容器100の高さ方向の下端部に、貫通孔32を有している。
【0041】
外部通気溝31は、たとえば、側壁12をその厚さ方向に貫通する切欠きである。側壁12は、たとえば、複数の外部通気溝31を有している。複数の外部通気溝31は、たとえば、断熱容器100の縦方向に等間隔に設けられている。外部通気溝31の大きさおよび数は、条件に応じて適宜変更することが可能である。外部通気溝31は、たとえば、容器10の縦方向に対向する一対の内側壁と、その一対の内側壁に直交する底壁を有する矩形の断面形状を有している。
【0042】
外部通気溝31の底壁は、たとえば、容器10の底壁11の下面におおむね平行に設けられている。なお、外部通気溝31の断面形状は、特に限定されず、たとえば、半円形、半楕円形、その他の形状を有してもよい。また、外部通気溝31の底壁は、容器10の底壁11の下面に対して傾斜していてもよい。この場合、外部通気溝31の底壁は、たとえば、容器10の外方から内方へ向けて底壁11に近づくように傾斜していてもよい。
【0043】
貫通孔32は、たとえば、容器10の底壁11と側壁12との間の角部に設けられ、底壁11および側壁12をそれぞれの厚さ方向に貫通する切欠きまたは溝である。貫通孔32は、たとえば、底壁11の下面と、側壁12の下端部の外壁面と、側壁12の下端部の内壁面に開口している。側壁12は、たとえば、複数の貫通孔32を有している。複数の貫通孔32は、たとえば、外部通気溝31と同様に、断熱容器100の縦方向に等間隔に設けられている。貫通孔32の大きさおよび数は、条件に応じて適宜変更することが可能である。貫通孔32は、たとえば、断熱容器100の縦方向に対向する一対の内側壁と、その一対の内側壁に直交する上壁を有する矩形の断面形状を有している。
【0044】
貫通孔32の上壁は、たとえば、容器10の底壁11の下面におおむね平行に設けられている。なお、貫通孔32の断面形状は、特に限定されず、たとえば、半円形、半楕円形、その他の形状を有してもよい。また、貫通孔32の上壁は、容器10の底壁11の下面に対して傾斜していてもよい。この場合、貫通孔32の上壁は、たとえば、容器10の外方から内方へ向けて開口部10aまたは蓋20に近づくように傾斜していてもよい。
【0045】
断熱容器100の縦方向に対向し、断熱容器100の横方向に延びる一対の短側壁である側壁12は、たとえば、内壁面に断熱容器100の高さ方向に延びる複数の内壁溝13を有している。内壁溝13は、たとえば、側壁12の上端から下端まで断熱容器100の高さ方向に連続して設けられている。複数の内壁溝13は、たとえば、断熱容器100の横方向に等間隔に設けられている。
【0046】
内壁溝13は、たとえば、断熱容器100の横方向に対向する一対の内側壁と、その一対の内側壁に直交する底壁を有する矩形の断面形状を有している。内壁溝13の底壁は、たとえば、断熱容器100の高さ方向におおむね平行に設けられている。なお、内壁溝13の断面形状は、特に限定されず、たとえば、半円形、半楕円形、その他の形状を有してもよい。断熱容器100の縦方向に対向する一対の内壁溝13は、同方向における仕切板40の両端部を、容器10の側壁12の上端の開口から挿入して底壁11へ向けてスライドさせてはめ込むことができるように、寸法および形状が規定されている。
【0047】
容器10の底壁11は、たとえば、下面に凸部11aを有している。凸部11aは、たとえば、底壁11の下面の周縁部の内側の部分を、その周縁部よりも容器10の開口部10aまたは蓋20から遠ざかるように、下方へ向けて突出させて設けられている。これにより、容器10の底壁11を下にして断熱容器100を平坦な床面に置いたときに、底壁11の凸部11aが床面に接し、容器10の下面の周縁部と床面との間に隙間が形成されるようになっている。
【0048】
蓋20は、容器10の上端部に設けられた開口部10aを閉塞する板状の部材である。蓋20は、たとえば、上面に凹部21を有している。凹部21は、たとえば、蓋20の上面の周縁部の内側の部分を、周縁部よりも容器10の底壁11へ向けて陥没させて設けられている。また、蓋20は、下面に凸部22を有している。凸部22は、たとえば、蓋20の下面の周縁部の内側の部分を、周縁部よりも容器10の底壁11へ向けて突出させて設けられている。
【0049】
外部通気孔30は、蓋20により開口部10aが閉塞された容器10の内部空間ISと外部空間ESとを連通させるように設けられている。断熱容器100の上端部に設けられた外部通気孔30は、たとえば、容器10の側壁12の上端部に設けられた外部通気溝31と蓋20の下面とによって画定されている。一方、断熱容器100の下端部に設けられた外部通気孔30は、前述のように、容器10の側壁12の下端部に開口する貫通孔32である。
【0050】
仕切板40は、たとえば容器10の内部空間ISを複数の空間に仕切る板状の部材である。仕切板40は、前述のように、外部通気孔30に対向して容器10の内部空間ISに断熱室50を画定する外壁面41と、容器10の内部空間ISに内容物の収容室60を画定する内壁面42と、を有している。仕切板40は、たとえば外部通気孔30が設けられた側壁12におおむね平行に配置され、側壁12に対して所定の間隔で対向している。
【0051】
たとえば、断熱容器100において内容物を収容するための収容室60の容積を十分に確保する観点から、断熱室50を画定する仕切板40と側壁12との間隔は、その測定方向における収容室60の寸法の1/2以下であることが好ましい。また、同じ観点から、仕切板40と側壁12との間隔は、その測定方向における収容室60の寸法の1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることがさらに好ましく、1/5以下であることがさらにより好ましい。
【0052】
仕切板40は、たとえば、上端部に内部通気溝71を有している。また、仕切板40は、たとえば、下端部にも内部通気溝71を有している。内部通気溝71は、たとえば、仕切板40をその厚さ方向に貫通する切欠きである。仕切板40は、たとえば、上端部と下端部にそれぞれ複数の内部通気溝71を有している。複数の内部通気溝71は、たとえば、断熱容器100の縦方向に等間隔に設けられている。内部通気溝71の大きさおよび数は、条件に応じて適宜変更することが可能である。
【0053】
仕切板40の上端部に設けられた内部通気溝71は、たとえば
図3に示すように、側壁12の上端部に設けられた外部通気溝31に対向する位置から側方にずれた位置に設けられている。同様に、仕切板40の下端部に設けられた内部通気溝71は、たとえば、側壁12の下端部に設けられた貫通孔32に対向する位置から側方にずれた位置に設けられている。
【0054】
より具体的には、仕切板40の上端部の内部通気溝71は、たとえば、断熱容器100の縦方向において、側方に隣り合う二つの外部通気溝31の中間で側壁12に対向する位置に設けられている。また、仕切板40の下端部の内部通気溝71は、たとえば、断熱容器100の縦方向において、側方に隣り合う二つの貫通孔32の中間で側壁12に対向する位置に設けられている。
【0055】
内部通気溝71は、たとえば、容器10の縦方向に対向する一対の内側壁と、その一対の内側壁に直交する底壁または上壁を有する矩形の断面形状を有している。内部通気溝71の底壁または上壁は、たとえば、容器10の底壁11の下面におおむね平行に設けられている。なお、内部通気溝71の断面形状は、特に限定されず、たとえば、半円形、半楕円形、その他の形状を有してもよい。
【0056】
また、内部通気溝71の底壁または上壁は、容器10の底壁11の下面に対して傾斜していてもよい。この場合、仕切板40の上端部に設けられた内部通気溝71の底壁は、たとえば、容器10の外方から内方へ向けて底壁11に近づくように下方へ傾斜していてもよい。また、仕切板40の下端部に設けられた内部通気溝71の上壁は、たとえば、容器10の外方から内方へ向けて開口部10aまたは蓋20に近づくように上方へ傾斜していてもよい。
【0057】
断熱容器100を構成する容器10、蓋20、および仕切板40の素材は、特に限定はされないが、たとえば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン-スチレン共重合体、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂発泡体を用いることができる。また、容器10、蓋20、および仕切板40は、たとえば中空の非発泡樹脂によって構成することも可能である。
【0058】
断熱室50は、蓋20により開口部10aが閉塞された容器10の内部空間ISの一部であり、容器10と蓋20と仕切板40とによって画定された空間である。同様に、収容室60は、蓋20により開口部10aが閉塞された容器10の内部空間ISの一部であり、容器10と蓋20と仕切板40とによって画定された空間である。断熱室50の容積は、たとえば、収容室60の容積よりも小さい。
【0059】
断熱室50は、たとえば、空気を収容することで断熱容器100の外部空間ESと収容室60との間の伝熱を抑制するための空間である。断熱室50は、たとえば、外部通気孔30を介して断熱容器100の外部空間ESに連通するとともに、内部通気孔70を介して収容室60に連通している。
【0060】
収容室60は、たとえば、断熱容器100の内容物を収容するための空間である。収容室60は、断熱容器100の内部空間ISにおいて、断熱室50よりも容器10の内方側に設けられている。換言すると、断熱室50は、断熱容器100の内部空間ISにおいて、収容室60よりも容器10の外方側に設けられている。
【0061】
図5に示すように、断熱容器100の上端部に設けられた内部通気孔70は、たとえば、仕切板40の上端部に設けられた内部通気溝71と蓋20とによって画定されている。同様に、断熱容器100の下端部に設けられた内部通気孔70は、たとえば、仕切板40の下端部に設けられた内部通気溝71と容器10の底壁11とによって画定されている。
【0062】
また、断熱容器100の上端部の内部通気孔70は、たとえば断熱容器100の上端部の外部通気孔30に対向する位置から側方にずれた位置に設けられている。より具体的には、断熱容器100の上端部の内部通気孔70は、たとえば、断熱容器100の縦方向において、側方に隣り合う二つの外部通気孔30の中間で側壁12に対向する位置に設けられている。これは、前述の仕切板40の上端部の内部通気溝71と、側壁12の上端部の外部通気溝31との位置関係によるものである。
【0063】
同様に、断熱容器100の下端部に設けられた内部通気孔70は、たとえば断熱容器100の下端部に設けられた外部通気孔30に対向する位置から側方にずれた位置に設けられている。より具体的には、断熱容器100の下端部に設けられた内部通気孔70は、たとえば、断熱容器100の縦方向において、断熱容器100の下端部に設けられて側方に隣り合う二つの外部通気孔30の中間で側壁12に対向する位置に設けられている。これは、前述の仕切板40の下端部の内部通気溝71と、側壁12の下端部の貫通孔32との位置関係によるものである。
【0064】
以上のように、断熱容器100は、容器10と、その容器10の上端部に設けられた開口部10aを閉塞する蓋20と、その蓋20によって開口部10aが閉塞された容器10の内部空間ISと外部空間ESとを連通する外部通気孔30と、を備えている。さらに、断熱容器100は、内部空間ISを仕切る仕切板40を備えている。この仕切板40は、外部通気孔30に対向して内部空間ISに断熱室50を画定する外壁面41と、内部空間ISに内容物の収容室60を画定する内壁面42と、を有している。そして、断熱容器100は、断熱室50と収容室60とを連通する内部通気孔70を備えている。
【0065】
以下、本実施形態に係る断熱容器100の作用を説明する。
【0066】
断熱容器100は、たとえば、収容室60に内容物が収容され、容器10の上端部の開口部10aが蓋20によって閉塞された状態で、温度管理がされている環境下に置かれる場合がある。このような場合に、断熱容器100は、容器10の内部空間ISと外部空間ESとを連通する外部通気孔30を介して、外部空間ESの空気を内部空間ISへ導入することができる。断熱容器100の内部空間ISへ導入された空気は、仕切板40によって仕切られた断熱室50へ流入する。
【0067】
仕切板40は、前述のように、容器10の内部で容器外方を向く外壁面41によって、容器10の内部空間ISの最も外方側に断熱室50を画定する。また、仕切板40は、前述のように、容器10の内部で容器内方を向く内壁面42によって、断熱室50よりも容器10の内部空間ISの内方側に、内容物を収容するための収容室60を画定する。そして、断熱容器100は、前述のように、内部空間ISの外方側に位置する断熱室50と、その断熱室50よりも内部空間ISの内方側に位置する収容室60とを連通する内部通気孔70を有している。
【0068】
そのため、断熱容器100の外部空間ESから外部通気孔30を介して断熱室50へ流入した空気は、内部空間ISの外方側に位置する断熱室50から、内部空間ISの内方側に位置する収容室60へ、内部通気孔70を介して導入される。このように、断熱容器100の外部空間ESの温度管理がされている環境下では、外部通気孔30、断熱室50、および内部通気孔70を介して、断熱容器100の外部の空気を断熱容器100の内部の収容室60へ導入することができる。これにより、容器10の開口部10aを閉塞する蓋20を外すことなく、収容室60の温度を断熱容器100の外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。
【0069】
また、断熱容器100は、外部空間ESの温度管理がされている環境から、外部空間ESの温度管理がされていない環境に搬出される場合がある。この場合に、収容室60よりも断熱容器100の内部空間ISの外方側に位置する断熱室50の空気が、断熱容器100の外部空間ESと収容室60との間の伝熱を抑制する断熱層として機能する。これにより、断熱容器100の外部空間ESの温度管理がされていない環境下では、断熱室50の空気によって外部空間ESと収容室60との間を断熱し、収容室60の温度変化を抑制することができる。
【0070】
また、断熱容器100の外部空間ESの温度管理がされていない環境下では、外部空間ESの温度管理がされていた環境下で収容室60に流入した空気が、収容室60から内部通気孔70を介して断熱室50へ流出する。これにより、断熱容器100の外部空間ESと断熱室50との間の伝熱によって断熱室50と収容室60との温度差が拡大することが抑制される。したがって、断熱室50による断熱効果を向上させ、断熱容器100の外部空間ESと収容室60との間の伝熱による温度変化を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態の断熱容器100において、外部通気孔30は、容器10の側壁12の上端部に設けられた外部通気溝31と蓋20とによって画定されている。また、内部通気孔70は、仕切板40の上端部に設けられた内部通気溝71と蓋20とによって画定されている。
【0072】
たとえば、断熱容器100を保冷容器として用い、断熱容器100の外部空間ESで冷凍または冷蔵用の低温管理がされている環境下に置いた場合、断熱容器100の内部空間ISの温度が外部空間ESの温度よりも高い場合がある。一般に、冷気は下方へ移動しやすい。そのため、上記の構成によって断熱容器100の上端部に外部通気孔30を画定することで、蓋20を外すことなく、外部通気孔30を介して外部空間ESの冷気を容易に断熱室50へ流入させ、断熱室50の温度を迅速に低下させることができる。同様に、上記の構成によって断熱容器100の上端部に内部通気孔70を画定することで、内部通気孔70を介して断熱室50の冷気を容易に収容室60へ導入することができる。これにより、収容室60の温度を低温管理された断熱容器100の外部空間ESの温度に追従させて迅速に低下させることができる。
【0073】
また、断熱容器100の外部空間ESで冷凍または冷蔵用の低温管理がされていない環境下では、外部空間ESの温度が断熱容器100の内部空間ISの温度よりも高くなる場合がある。一般に、冷気は上方へ移動しにくい。そのため、上記の構成によって断熱容器100の上端部に外部通気孔30を画定することで、断熱室50内の冷気が外部通気孔30を介して外部空間ESへ流出しにくくなる。同様に、上記の構成によって断熱容器100の上端部に内部通気孔70を画定することで、収容室60内の冷気が内部通気孔70を介して断熱室50へ流出しにくくなる。したがって、収容室60の温度上昇を抑制することができる。
【0074】
本実施形態の断熱容器100において、外部通気孔30は、容器10の側壁12の下端部に開口する貫通孔32である。また、内部通気孔70は、仕切板40の下端部に設けられた内部通気溝71と容器10の底壁11とによって画定されている。
【0075】
前述のように、断熱容器100を保冷容器として用い、断熱容器100の外部空間ESで冷凍または冷蔵用の低温管理がされている環境下に置いた場合、断熱容器100の内部空間ISの温度が外部空間ESの温度よりも高い場合がある。一般に、冷気は下方へ移動しやすい。そのため、上記の構成によって断熱容器100の下端部に外部通気孔30を画定することで、蓋20を外すことなく、外部通気孔30を介して外部空間ESの冷気を容易に断熱室50へ流入させ、断熱室50の温度を迅速に低下させることができる。同様に、上記の構成によって断熱容器100の下端部に内部通気孔70を画定することで、内部通気孔70を介して断熱室50の冷気を容易に収容室60へ導入することができる。これにより、収容室60の温度を低温管理された断熱容器100の外部空間ESの温度に追従させて迅速に低下させることができる。
【0076】
また、断熱容器100を保冷容器として用い、断熱容器100の外部空間ESで冷凍または冷蔵用の低温管理がされていない環境下に置いた場合、外部空間ESの温度が断熱容器100の内部空間ISの温度よりも高くなる場合がある。一般に、冷気は下方へ移動しやすい。そのため、上記の構成によって断熱容器100の下端部に内部通気孔70を画定することで、収容室60内の冷気が内部通気孔70を介して断熱室50へ流出しやすくなる。これにより、断熱容器100の外部空間ESから断熱室50への伝熱によって断熱室50の温度が上昇するのを抑制することができ、断熱容器100の外部空間ESから収容室60への伝熱による収容室60の温度上昇を抑制することができる。
【0077】
また、断熱容器100を保温容器として用い、断熱容器100の外部空間ESで保温用の温度管理がされている環境下に置いた場合、断熱容器100の内部空間ISの温度が外部空間ESの温度よりも低い場合がある。一般に、暖気は上方へ移動しやすい。そのため、上記の構成によって断熱容器100の下端部に外部通気孔30を画定することで、蓋20を外すことなく、外部通気孔30を介して外部空間ESの暖気を容易に断熱室50へ流入させ、断熱室50の温度を迅速に上昇させることができる。同様に、上記の構成によって断熱容器100の下端部に内部通気孔70を画定することで、内部通気孔70を介して断熱室50の暖気を容易に収容室60へ導入することができる。これにより、収容室60の温度を保温用の温度管理がされた断熱容器100の外部空間ESの温度に追従させて迅速に上昇させることができる。
【0078】
また、断熱容器100を保温容器として用い、断熱容器100の外部空間ESで保温用の温度管理がされていない環境下に置いた場合、外部空間ESの温度が断熱容器100の内部空間ISの温度よりも低くなる場合がある。一般に、暖気は下方へ移動しにくい。そのため、上記の構成によって断熱容器100の下端部に外部通気孔30を画定することで、断熱室50内の暖気が外部通気孔30を介して外部空間ESへ流出しにくくなる。同様に、上記の構成によって断熱容器100の下端部に内部通気孔70を画定することで、収容室60内の暖気が内部通気孔70を介して断熱室50へ流出しにくくなる。したがって、収容室60の温度低下を抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態の断熱容器100において、内部通気孔70は、外部通気孔30に対向する位置から側方にずれた位置に設けられている。
【0080】
この構成により、断熱容器100の外部空間ESの温度管理がされている環境下では、外部空間ESから外部通気孔30を介して断熱室50へ流入した空気が仕切板40の内壁面42に衝突し、断熱室50に行き渡りやすくなる。これにより、断熱室50の温度を、温度管理がされた断熱容器100の外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。したがって、断熱室50から内部通気孔70を介して空気が流入する収容室60の温度を、外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。
【0081】
また、断熱容器100の外部空間ESの温度管理がされていない環境下では、収容室60から内部通気孔70を介して断熱室50へ流出した空気が、断熱室50を画定する容器10の側壁12の内壁面に衝突し、断熱室50に行き渡りやすくなる。これにより、断熱容器100の外部空間ESと断熱室50との間の伝熱によって断熱室50と収容室60との温度差が拡大することが抑制される。したがって、断熱室50による断熱効果を向上させ、断熱容器100の外部空間ESと収容室60との間の伝熱による温度変化を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態の断熱容器100において、仕切板40は、容器10の側壁12に設けられた係合部である内壁溝13に取り外し可能に係合されている。この構成により、仕切板40を交換したり、仕切板40を取り外して断熱容器100を使用したりすることができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、外部空間ESの温度管理がされている環境下では蓋20を外すことなく、収容室60の温度を外部空間ESの温度に迅速に追従させることができ、温度管理がされていない環境下では収容室60の温度変化を抑制することが可能な断熱容器100を提供することができる。
【0084】
[実施形態2]
次に、
図1を援用し、
図6から
図8を参照して、本開示の断熱容器の実施形態2を説明する。
図6は、本開示の実施形態2に係る断熱容器100Aの蓋20を取り外した状態の平面図である。
図7は、
図6に示す断熱容器100Aの仕切板40Aの斜視図である。
図8は、
図6に示す断熱容器100Aの蓋20を取付けた状態の断面図である。
【0085】
本実施形態の断熱容器100Aは、仕切板40Aが、断熱室50の空気の対流を抑制する対流抑制部43と、断熱室50の空気の対流を許容する対流許容部44とを有している点で、前述の実施形態1に係る断熱容器100と異なっている。本実施形態の断熱容器100Aのその他の点は、前述の実施形態1に係る断熱容器100と同様であるため、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
本実施形態の断熱容器100Aにおいて、仕切板40Aは、断熱室50の空気の対流を抑制する対流抑制部43と、断熱室50の空気の対流を許容する対流許容部44とを有している。仕切板40Aの対流抑制部43と、容器10の側壁12との間隔D1は、仕切板40Aの対流許容部44と、容器10の側壁12との間隔D2よりも狭い。より具体的には、対流抑制部43と側壁12との間隔D1は、たとえば5[mm]以下であり、対流許容部44と側壁12との間隔D2は、たとえば10[mm]以上である。対流抑制部43は、たとえば、仕切板40Aの外壁面41から対向する側壁12へ向けて突出する凸状に設けられている。
【0087】
対流許容部44は、たとえば、外部通気孔30に対向する仕切板40Aの端部に設けられていている。具体的には、対流許容部44は、たとえば、外部通気孔30に対向する仕切板40Aの上端部と下端部に設けられていている。また、対流許容部44は、たとえば、仕切板40Aの外壁面41の側端部に設けられ、仕切板40Aの上端から下端まで連続している。これにより、対流許容部44は、たとえば、仕切板40Aの外壁面41の周縁部に、対流抑制部43を囲む矩形枠状に設けられている。
【0088】
以下、本実施形態に係る断熱容器100Aの作用を説明する。
【0089】
本実施形態の断熱容器100Aは、前述の実施形態1の断熱容器100と同様に、容器10と、その容器10の上端部に設けられた開口部10aを閉塞する蓋20と、その蓋20によって開口部10aが閉塞された容器10の内部空間ISと外部空間ESとを連通する外部通気孔30と、を備えている。さらに、断熱容器100Aは、内部空間ISを仕切る仕切板40Aを備えている。この仕切板40Aは、外部通気孔30に対向して内部空間ISに断熱室50を画定する外壁面41と、内部空間ISに内容物の収容室60を画定する内壁面42と、を有している。そして、断熱容器100Aは、断熱室50と収容室60とを連通する内部通気孔70を備えている。したがって、本実施形態の断熱容器100Aによれば、前述の実施形態1の断熱容器100と同様の効果を奏することができる。
【0090】
また、本実施形態の断熱容器100Aにおいて、仕切板40Aは、断熱室50の空気の対流を抑制する対流抑制部43と、断熱室50の空気の対流を許容する対流許容部44とを有している。仕切板40Aの対流抑制部43と、容器10の側壁12との間隔D1は、仕切板40Aの対流許容部44と、容器10の側壁12との間隔D2よりも狭い。
【0091】
この構成により、断熱容器100Aの外部空間ESの温度管理がされている環境下で、外部空間ESから外部通気孔30を介して断熱室50へ流入した空気は、仕切板40Aの対流抑制部43と対流許容部44によって断熱室50の一部で対流が抑制され、断熱室50の一部で対流が許容される。これにより、空気の対流が許容された断熱室50の一部の温度を、断熱容器100Aの外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。したがって、断熱室50から内部通気孔70を介して空気が流入する収容室60の温度を、外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。一方、断熱容器100Aの外部空間ESの温度管理がされていない環境下では、仕切板40Aの対流抑制部43によって断熱室50の一部の空気の対流を抑制し、断熱室50の空気による収容室60の断熱性を向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態の断熱容器100Aにおいて、対流許容部44は、外部通気孔30に対向する仕切板40Aの端部に設けられている。
【0093】
この構成により、断熱容器100Aの外部空間ESの温度管理がされている環境下で、外部空間ESから外部通気孔30を介して断熱室50へ流入する空気を仕切板40Aの外壁面41に衝突させ、対流許容部44によって断熱室50内で対流させることができる。これにより、仕切板40Aに対流許容部44が設けられている断熱室50の一部において、断熱室50の温度を断熱容器100Aの外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。さらに、断熱室50から内部通気孔70を介して収容室60へ空気を流入させることで、収容室60の温度を外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。
【0094】
また、本実施形態の断熱容器100Aにおいて、仕切板40Aの対流許容部44は、仕切板40Aの上端から下端まで連続している。
【0095】
この構成により、断熱容器100Aの外部空間ESの温度管理がされている環境下で、外部空間ESから外部通気孔30を介して断熱室50へ流入した空気を、断熱室50の上端部と下端部との間で対流させ、断熱室50の温度を外部空間ESの温度に迅速に追従させることができる。また、断熱容器100Aの外部空間ESの温度管理がされていない環境下で、収容室60から断熱室50へ流出した空気を、断熱室50の上端部と下端部との間で対流させ、断熱室50と収容室60との温度差を低下させることができる。
【0096】
[実施形態3]
次に、
図1を援用し、
図9から
図11を参照して、本開示の断熱容器の実施形態3を説明する。
図9は、本開示の実施形態3に係る断熱容器100Bの蓋を取り外した状態の平面図である。
図10は、
図9に示す断熱容器100Bの仕切板40Bの斜視図である。
図11は、
図9に示す断熱容器100Bの蓋20を取付けた状態の断面図である。
【0097】
本実施形態の断熱容器100Bは、仕切板40Bが複数の対流抑制部43を有し、対流抑制部43と対流抑制部43との間に仕切板40Bの上端から下端まで連続する対流許容部44が設けられている点で、前述の実施形態2に係る断熱容器100Aと異なっている。本実施形態の断熱容器100Bのその他の点は、前述の実施形態2に係る断熱容器100Aと同様であるため、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
仕切板40Bは、前述の実施形態2に係る断熱容器100Aと同様に、対流抑制部43と対流許容部44を有している。したがって、本実施形態の断熱容器100Bによれば、前述の実施形態2の断熱容器100Aと同様の効果を奏することができる。
【0099】
また、複数の対流抑制部43は、断熱容器100Bの縦方向に間隔をあけて配置され、対流抑制部43と対流抑制部43との間に仕切板40Bの上端から下端まで連続する対流許容部44が設けられている。この構成により、前述の実施形態2の断熱容器100Aと比較して、断熱室50の上端部と下端部との間の空気の対流をより促進させることができる。したがって、断熱容器100Bの外部空間ESの温度管理がされている環境下で、断熱室50の温度を外部空間ESの温度により迅速に追従させることができる。また、断熱容器100Bの外部空間ESの温度管理がされていない環境下で、断熱室50と収容室60との温度差をより低下させることができる。
【0100】
以上、図面を用いて本開示に係る断熱容器の一実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【0101】
たとえば、前述の実施形態では、外部通気孔および内部通気孔が断熱容器の上端部および下端部の双方に設けられている構成を説明した。しかし、本開示の断熱容器において、外部通気孔および内部通気孔は、断熱容器の上端部のみに設けられていてもよく、断熱容器の下端部のみに設けられていてもよい。また、外部通気孔を断熱容器の上端部のみに設け、内部通気口を断熱容器の下端部のみに設けてもよく、外部通気孔を断熱容器の下端部のみに設け、内部通気口を断熱容器の上端部のみに設けてもよい。また、外部通気孔および内部通気口は、それぞれ、容器の側壁および仕切板の上端部から下端部までの任意の位置に設けられた貫通孔であってもよい。
【0102】
また、前述の実施形態では、外部通気孔が容器の側壁の上端部に設けられた外部通気溝と蓋とによって画定され、内部通気孔が仕切板の上端部に設けられた内部通気溝と蓋とによって画定される断熱容器について説明した。しかし、外部通気孔を画定する外部通気溝は、たとえば、側壁の上端部と蓋の下端部の双方に設けられてもよい。また、外部通気孔を画定する外部通気溝は、たとえば、蓋の下端部のみに設けられ、側壁の上端部との間に外部通気溝を画定してもよい。同様に、断熱容器の下端部の内部通気孔は、仕切板の下端部と容器の底壁の双方に設けられた内部通気溝によって画定されてもよく、容器の底壁に設けられた内部通気溝と内部通気溝を有しない仕切板の下端部とによって画定されていてもよい。
【0103】
また、前述の実施形態では、直方体の箱形の容器の対向する一対の側壁に沿って一対の仕切板を備える断熱容器について説明したが、断熱容器は、すべての側壁に沿う仕切板を備えてもよい。たとえば、容器が直方体の箱形である場合には、たとえば、対向する一対の側壁に沿う一対の仕切板に対し、別の対向する一対の側壁に沿う一対の仕切板を井桁状に組み合わせることができる。さらに、断熱容器は、蓋または容器の底壁を上下方向に沿って貫通する外部通気孔を備えてもよい。この場合、仕切板は、蓋の下面または容器の底壁の上面に対向して配置されていてもよい。
【0104】
以下、本開示の断熱容器の実施例とその比較対象としての比較例を説明する。
【0105】
[実施例]
ポリスチレン樹脂を発泡させて押出成形した厚さ5[mm]の発泡ポリスチレンシートを用いて前述の実施形態1の断熱容器と同様の構成を備えた実施例に係る断熱容器を製作した。断熱容器の外寸は、縦方向を200[mm]、横方向を200[mm]、高さ方向を200[mm]とした。
【0106】
断熱容器の外部通気孔は、容器の対向する一対の側壁の中央部の上端部と下端部にそれぞれ一つずつ形成した。また、断熱容器の内部通気孔は、仕切板の上端部と下端部に二つずつ、外部通気孔に対向する位置の両側に形成した。断熱容器の上端部に形成した外部通気孔と内部通気孔の開口は、高さを40[mm]、幅を20[mm]とした。また、断熱容器の下端部に形成した外部通気孔と内部通気孔の開口は、高さを40[mm]、幅を10[mm]とした。
【0107】
次に、断熱容器の内容物として、120[ml]の水を入れて蓋をしたガラス瓶を用意した。そして、ガラス瓶の表面に温度センサを貼着して断熱容器の収容室に収容し、温度センサを安立計器製のデータコレクタ(AM-7002)に接続した。その後、断熱容器をエスペック株式会社製の恒温器(PL-4ST)に収容し、断熱容器の外部空間の温度を、室温から5[℃]に低下させて18[Hr]にわたって保持した後、30[℃]に上昇させて24[Hr]にわたって保持した。その後、断熱容器の外部空間の温度を、再度、5[℃]に低下させて24[Hr]にわたって保持した後、再度、30[℃]に上昇させて24[Hr]にわたって保持した。
【0108】
[比較例1]
外部通気孔、内部通気孔および仕切板を有しない以外は、実施例の断熱容器と同様に比較例1の断熱容器を製作した。その後、実施例と同様のガラス瓶を比較例の断熱容器の内部に収容し、実施例と同様に比較例1の断熱容器を恒温器に収容して、比較例1の断熱容器の外部空間の温度を変化させた。
【0109】
[比較例2]
内部通気孔および仕切板を有しない以外は、実施例の断熱容器と同様に比較例2の断熱容器を製作した。その後、実施例と同様のガラス瓶を比較例2の断熱容器の内部に収容し、実施例と同様に比較例2の断熱容器を恒温器に収容して、比較例2の断熱容器の外部空間の温度を変化させた。
【0110】
図12は、実施例ならびに比較例1および比較例2の断熱容器の内容物であるガラス瓶の表面の温度変化を示すグラフである。
図12において、破線は断熱容器の外部空間の温度を示し、実線は実施例に係る断熱容器の内容物の温度変化を示し、一点鎖線は比較例1に係る断熱容器の内容物の温度変化を示し、二点鎖線は比較例2に係る断熱容器の内容物の温度変化を示している。
【0111】
図12に一点鎖線で示すように、比較例1の断熱容器の内容物は、外部空間の温度が低下したときに、温度の低下に遅れが見られた。これに対し、実施例に係る断熱容器の内容物と、比較例2に係る断熱容器の内容物は、外部空間の温度の低下に追従して、迅速に温度が低下した。
【0112】
また、
図12に二点鎖線で示すように、比較例2の断熱容器の内容物は、外部空間の温度が上昇したときに、外部空間の温度上昇に追従して急激に温度が上昇した。これに対し、実施例および比較例1の断熱容器の内容物は、外部空間の温度が上昇しても、温度が急激に上昇するのを抑制できた。
【0113】
以上のように、本実施例に係る断熱容器によれば、外部空間において低温の温度管理がされている環境下で、比較例1の断熱容器よりも内容物の温度を迅速に低下させることができた。また、本実施例に係る断熱容器によれば、外部空間において低温の温度管理がされていない環境下で、比較例2の断熱容器よりも内容物の温度変化を抑制することができた。
【符号の説明】
【0114】
10 容器
10a 開口部
11 底壁
12 側壁
13 内壁溝(係合部)
20 蓋
30 外部通気孔
31 外部通気溝
32 貫通孔
40 仕切板
40A 仕切板
40B 仕切板
41 外壁面
42 内壁面
43 対流抑制部
44 対流許容部
50 断熱室
60 収容室
70 内部通気孔
71 内部通気溝
100 断熱容器
100A 断熱容器
100B 断熱容器
D1 間隔
D2 間隔
ES 外部空間
IS 内部空間