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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】車両用送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20220119BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220119BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220119BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220119BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220119BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20220119BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018218245
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020089013
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 真由
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-213378(JP,A)
【文献】特開2013-097708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0033227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
B60L 1/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が駐車される駐車スペースの設置面に設置されて、前記車両に搭載された受電装置に対して非接触で電力を供給する車両用送電装置であって、
送電コイルが取り付けられた送電ケースと、
前記送電ケースと前記設置面との間に配置されて前記送電ケースを上昇方向に押圧する押圧部材と、
モータによって回転される回転部材と、
前記回転部材に一端が連結されて、前記回転部材の巻き取りによって前記押圧部材の押圧力に抗して前記送電ケースを下降方向に牽引するワイヤと、
前記ワイヤの他端側に配置されて前記ワイヤに張力を付与する張力付与機構と、を備え
前記張力付与機構は、
前記ワイヤの一部が取り付けられて、前記送電ケースの上昇及び下降のそれぞれに連動して進退移動可能に配置された移動部材と、
前記移動部材の前記進退移動に伴って伸縮自在に設けられた弾性部材と、を有し、
前記送電ケースの表面が前記受電装置の対向面と接触した状態において、前記受電装置に前記電力が供給され、
前記張力付与機構は、乗員の乗降によって前記車両における車高が上がったとき、前記送電ケースの表面が前記受電装置の対向面と接触した状態が維持されるように、前記弾性部材が伸長して前記ワイヤを送り出す、
車両用送電装置
【請求項2】
前記張力付与機構は、前記移動部材の前記進退移動を案内するガイド部材をさらに有している、
請求項1に記載の車両用送電装置。
【請求項3】
前記移動部材は、前記ワイヤの一部が巻き回されて前記ワイヤの巻き取り及び送り出しが可能な回転部を含む、
請求項1又は2に記載の車両用送電装置。
【請求項4】
車両が駐車される駐車スペースの設置面に設置されて、前記車両に搭載された受電装置に対して非接触で電力を供給する車両用送電装置であって、
送電コイルが取り付けられた送電ケースと、
前記送電ケースと前記設置面との間に配置されて前記送電ケースを上昇方向に押圧する押圧部材と、
モータによって回転される回転部材と、
前記回転部材に一端が連結されて、前記回転部材の巻き取りによって前記押圧部材の押圧力に抗して前記送電ケースを下降方向に牽引するワイヤと、
前記ワイヤの配策方向を転換する配策方向転換部材と、を備え、
前記配策方向転換部材は、前記送電ケースまたは前記設置面のいずれか一方に配置され、他方には前記回転部材が配置されている、
車両用送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、車両に搭載された受電装置に内蔵される受電コイルに対して送電コイルから非接触で送電を行う車両用の送電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用送電装置は、磁気的結合により車両の受電コイルと非接触で電力の授受を行う送電コイルと、送電コイルを含むコイルユニットを出入り自在に格納する筐体と、コイルユニットを駐車スペースの面方向に沿って車両前後方向にスライドさせるスライド機構と、コイルユニットを上下方向に昇降させるアーム機構と、受電コイルを収容する受電パッドと、送電コイルを収容する送電パッドと、を備えている。
【0004】
この車両用送電装置は、受電パッドに送電パッドを接触させた状態で送電パッドをスライドさせることにより、車両前後方向における受電パッドと送電パッドとの位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-117058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の車両用送電装置では、例えば充電中において乗員が車両を乗降した場合には、車高が変動するため受電コイルと送電コイルとの間の位置ずれが生じて充電効率が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明では、車高変動に伴う充電効率の低下を抑制することができる車両用送電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、車両が駐車される駐車スペースの設置面に設置されて、前記車両に搭載された受電装置に対して非接触で電力を供給する車両用送電装置であって、送電コイルが取り付けられた送電ケースと、前記送電ケースと前記設置面との間に配置されて前記送電ケースを上昇方向に押圧する押圧部材と、モータによって回転される回転部材と、前記回転部材に一端が連結されて、前記回転部材の巻き取りによって前記押圧部材の押圧力に抗して前記送電ケースを下降方向に牽引するワイヤと、前記ワイヤの他端側に配置されて前記ワイヤに張力を付与する張力付与機構と、を備え、前記張力付与機構は、前記ワイヤの一部が取り付けられて、前記送電ケースの上昇及び下降のそれぞれに連動して進退移動可能に配置された移動部材と、前記移動部材の前記進退移動に伴って伸縮自在に設けられた弾性部材と、を有し、前記送電ケースの表面が前記受電装置の対向面と接触した状態において、前記受電装置に前記電力が供給され、前記張力付与機構は、乗員の乗降によって前記車両における車高が上がったとき、前記送電ケースの表面が前記受電装置の対向面と接触した状態が維持されるように、前記弾性部材が伸長して前記ワイヤを送り出す、車両用送電装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用送電装置によれば、車高変動に伴う充電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、本実施の形態に係る車両用送電装置が用いられる車両用充電システムの全体構成を示す説明図であり、図1(b)は、車両用送電装置の動作を模式的に表した説明図である。
図2図2は、車両用送電装置の外観を示す斜視図である。
図3図3は、車両用送電装置の構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、駆動ユニット及び張力付与機構の構成を示す斜視図である。
図5図5は、張力付与機構の構成を示す分解斜視図である。
図6図6(a)は、駆動ユニット及び張力付与機構の構成を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)におけるA-A線に沿った断面図である。
図7図7(a)~(c)は、張力付与機構の動作を模式的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態の要約)
車両用送電装置1は、車両9が駐車される駐車スペースの設置面7aに設置されて、車両9に搭載された受電装置90に対して非接触で電力を供給する車両用送電装置1であって、送電コイル20が取り付けられた送電ケース2と、送電ケース2と設置面7aとの間に配置されて送電ケース2を上昇方向に押圧する押圧部材としての第1乃至第4スプリング431~434と、モータ411によって回転される回転部材としてのドラム42と、ドラム42に一端が連結されて、ドラムの巻き取りによって第1乃至第4スプリング431~434の押圧力に抗して送電ケース2を下降方向に牽引するワイヤ44と、ワイヤ44の他端側に配置されてワイヤ44に張力を付与する張力付与機構5と、を備えている。
【0012】
この車両用送電装置によれば、車高変動に伴う充電効率の低下を抑制することができる。
【0013】
[実施の形態]
本実施の形態に係る車両用送電装置1について、図1乃至図7を参照して説明する。
【0014】
図1(a)は、本実施の形態に係る車両用送電装置が用いられる車両用充電システムの全体構成を示す説明図であり、図1(b)は、車両用送電装置の動作を模式的に表した説明図である。なお、図1(a)は、車両9を充電しない車両用送電装置1の非使用状態を示し、図1(b)は、車両9を充電する車両用送電装置1の使用状態を示している。
【0015】
(車両用充電システムの全体構成)
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る車両用充電システム100は、車両9と、車両9が駐車される駐車スペースの設置面7aに設置された車両用送電装置1と、車両9に近傍に設置された電源設備8と、から構成される。
【0016】
なお、以下の説明においては、車両9の前後方向をX方向とし、車両9の車幅方向をY方向とし、車両9の車高方向(設置面7aに対して垂直な方向)をZ方向とする。また説明の便宜上、Z方向において、設置面7aから遠ざかる方向を上方といい、設置面7aに近づく方向を下方という。
【0017】
車両9には、車両9の下部に搭載されて受電コイル91が内蔵される受電装置90と、受電装置90と電気的に接続された蓄電池92とが設けられている。車両9は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の二次電池式の電気自動車である。
【0018】
車両9は、受電装置90の真下に車両用送電装置1が位置するように駐車されている。受電装置90は、車両用送電装置1と対向する対向面90aを有している。本実施の形態では、受電装置90の対向面90aが車両9の下面9aと平行となるように、受電装置90が配置されている。ここで、本実施の形態では、車両9の下面9aは、設置面7aと平行であるものとする。
【0019】
車両用送電装置1は、電源設備8と電源ケーブル80を介して接続されている。また、車両用送電装置1は、送電コイル20が取り付けられた送電ケース2を備え、この送電ケース2が後述する昇降機構4によってZ方向に沿って昇降する。
【0020】
送電ケース2は、Z方向における最も下限の位置である格納位置と、格納位置から所定の距離だけ上昇した特定の充電位置との間を進退移動可能に設けられている。送電ケース2の充電位置は、車両9の種類や車両9の車高の高さに応じて適宜設定される。ただし、送電ケース2の位置は、車両用送電装置1の状態を限定するものではない。つまり、送電ケース2が充電位置にあることが、必ずしも車両用送電装置1が充電していることを意味するものではない。
【0021】
電源設備8は、例えば商用電源、自家発電機、バッテリー等の蓄電装置からなる。電源設備8は、設置面7aに対して固定され、図示しない電源供給部から供給される商用交流電力を高周波の電力に変換し、当該電力を車両用送電装置1に電源ケーブル80を介して出力する。
【0022】
図1(b)に示すように、車両用送電装置1は、送電コイル20が取り付けられた送電ケース2と、設置面7aに配置されたベース3と、送電ケース2とベース3との間に配置されて上昇方向に押圧する押圧部材としての第1乃至第4スプリング431~434(図1(b)では第1及び第2スプリング431,432のみ図示する)と、を備えている。
【0023】
第1乃至第4スプリング431~434は、送電ケース2に対して設置面7aから遠ざかる上昇方向に弾性力を付与している。本実施の形態では、送電ケース2の姿勢及び安定性を考慮して、本発明における押圧部材として4つのスプリングを設けているが、押圧部材の数はこれに限定されない。押圧部材は、例えば1つでも2つでもよい。
【0024】
本実施の形態では、第1乃至第4スプリング431~434にコイルばねを用いているがこれに限定されない。例えば、送電ケース2の格納位置におけるZ方向の寸法を小さくすることを考慮して、圧縮されたときのZ方向の長さを小さくできる円錐バネやたる型ばねを用いてもよい。
【0025】
送電ケース2の表面22a(後述するカバー部22の表面)が受電装置90の対向面90aと接触した状態において、受電装置90に電力が供給される。
【0026】
この構成によれば、送電ケース2が第1乃至第4スプリング431~434に弾性的に支持されているので、受電装置90の位置が上下方向に変位し、あるいは設置面7aに対して傾斜した場合に、送電ケース2の表面22aが受電装置90の対向面90aと接触した状態を維持することが可能である。
【0027】
受電装置90の対向面90aに車両用送電装置1の送電ケース2が接触した状態において、車両用送電装置1に電源設備8から電力が供給されると、送電コイル20に電流が流れて、送電コイル20と受電コイル91とが磁気的に結合する。これにより、車両用送電装置1から受電装置90に対して非接触で電力が供給される。
【0028】
受電装置90に供給される電力は、受電コイル91によって蓄電池92に供給されて当該蓄電池92に蓄えられる。この蓄電池92に蓄えられた電力によって不図示の電動機を駆動させることで車両9が走行する。
【0029】
(車両用送電装置の全体構成)
図2は、車両用送電装置1の外観を示す斜視図である。図3は、車両用送電装置1の構成を示す分解斜視図である。なお、図3では、一対の駆動ユニット40のうち一方の駆動ユニット40のみを示している。
【0030】
図2及び図3に示すように、車両用送電装置1は、前述した送電ケース2及びベース3と、送電ケース2を上下方向に昇降する昇降機構4と、を備えている。
【0031】
昇降機構4は、駆動力を発生する一対の駆動ユニット40と、一対の駆動ユニット40にそれぞれ対応して設けられる一対のワイヤ44,44と、前述の第1乃至第4スプリング431~434と、で構成される。一対の駆動ユニット40はそれぞれ同じ構成であるので、以下の説明では一方の駆動ユニット40についてのみ説明する。
【0032】
(送電ケース)
送電ケース2は、送電コイル20(図1に示す)が取り付けられるケース部21と、ケース部21の上方を覆うカバー部22と、を有している。送電コイル20は、図示しない送電パッドに収容されている。この送電パッドは、カバー部22の裏面に取り付けられて、ケース部21の中央部に設けられた不図示の貫通孔の内部に配置している。
【0033】
第1スプリング431と第2スプリング432は、X方向に沿って配列し、第1スプリング431が第2スプリング432よりも車両前方側に位置している。同様に、第3スプリング433と第4スプリング434は、X方向に沿って配列し、第3スプリング433が第4スプリング434よりも車両前方側に位置している。
【0034】
(駆動ユニット)
駆動ユニット40は、アクチュエータ41と、アクチュエータ41の出力を受けて回転するドラム42と、を有している。アクチュエータ41は、モータ411と、モータ411の回転を減速する減速機412と、を有している。
【0035】
減速機412は、モータ411に連結されたウォーム411aと噛み合って回転する第1のギヤ部412aと、第1のギヤ部412aと一体回転して第1のギヤ部412aよりも小径な第2のギヤ部412b(図4に示す)と、第2のギヤ部412bと噛み合って回転し、第1のギヤ部412aよりも大径の第3のギヤ部412cと、を有している。第3のギヤ部412cとドラム42とは、互いに一体回転するように同軸上に連結されている。このように、ドラム42は、減速機412を介してモータ411によって回転されている。
【0036】
モータ411は、ベース3に取り付けられた支持部材410を介してベース3に固定されている。減速機412における第1及び第2のギヤ部412a,412bは、X方向(本実施の形態ではモータ411の回転軸方向)に沿って伸びる板部材46に回転可能に取り付けられている。第1及び第2のギヤ部412a,412bは、板部材46に挿通される一対の軸部材47を介して回転する。板部材46は、ベース3から所定の距離だけZ方向における上方に位置している。駆動ユニット40は、板部材46を介してベース3に取り付けられている。
【0037】
ベース3には、ワイヤ44の配策方向を転換する第1及び第2方向転換部材621,622が配置されている。第1及び第2方向転換部材621,622はX方向に沿って所定の距離を隔てて配列し、第1方向転換部材621が第2方向転換部材622よりもX方向の車両前方側に位置している。
【0038】
第1方向転換部材621と第2方向転換部材622との間には、駆動ユニット40及び後述する張力付与機構5がX方向に沿って配列している。
【0039】
車両用送電装置1は、ワイヤ44の配策方向を転換する配策方向転換部材としての第1及び第2プーリー611,612を備えている。ここで第1及び第2プーリー611,612は、送電ケース2または設置面7aのいずれか一方に配置され、他方にはドラム42が配置されている。具体的には送電ケース2の下部に、ワイヤ44の巻き取り又は送り出しが可能な第1及び第2プーリー611,612が配置され、設置面7aに配置されたベース3にドラム42が配置されている。第1プーリー611は、送電ケース2の裏面に固定された第1プーリー支持部611aによって回転可能に支持されている。同様に、第2プーリー612は、送電ケース2の裏面に固定された第2プーリー支持部612aによって回転可能に支持されている。
【0040】
第1プーリー611は、Z方向において、第1方向転換部材621と対向する位置に配置されている。同様に、第2プーリー612は、Z方向において、第2方向転換部材622と対向する位置に配置されている。
【0041】
板部材46は、その一方の端部が第1方向転換部材621に連結され、他方の端部が第2方向転換部材622に連結されている。
【0042】
(ワイヤ)
ワイヤ44は、その一端がドラム42に連結され、その他端がベース3に固定された連結ピン440(後述する図4,6(a)参照)に連結されている。また、ワイヤ44は、第1及び第2方向転換部材621,622及び第1及び第2プーリー611,612によって配策方向が転換されており、ベース3と送電ケース2との間で矩形状となるように配策されている。
【0043】
より具体的には、ドラム42によってX方向の前方に導出されるワイヤ44は、第1方向転換部材621によってZ方向の上方に向けて配策され、第1プーリー611を介してX方向における車両後方側に配策される。そして、第1プーリー611から導出されるワイヤ44は、第2プーリー612によってZ方向の下方に配策され、第2方向転換部材622によってX方向における車両前方側に配策され、ベース3上に設けられた移動部材52における後述の回転部523を介して連結ピン440に到達する。連結ピン440はベース3に固定されている。
【0044】
(張力付与機構)
図4は、Z方向の下方から車両用送電装置1を見た場合の駆動ユニット40及び張力付与機構5の構成を示す斜視図である。図5は、張力付与機構5の構成を示す分解斜視図である。
【0045】
車両用送電装置1は、ワイヤ44に張力を付与する張力付与機構5をさらに備えている。張力付与機構5には、ドラム42に連結されるワイヤ44の一端とは反対の他端側が連結されている。
【0046】
張力付与機構5は、第1及び第2コイルばね511,512と、第1及び第2コイルばね511,512の一端が連結されて、送電ケース2の上昇及び下降のそれぞれに連動して2方向に進退移動可能に配置された移動部材52と、移動部材52の進退移動をガイドするガイド部材53と、を有している。移動部材52は、X方向において、第1スプリング431側に向かう方向と、第2スプリング432側に向かう方向との2方向に進退移動する。
【0047】
第1及び第2コイルばね511,512は、その一端511a,512aが板部材46に固定された軸状の第1及び第2ピン541,542にそれぞれ連結され、その他端511b,512bが移動部材52に連結されている。第1及び第2コイルばね511,512は、移動部材52の進退移動に伴って伸縮自在である。第1及び第2コイルばね511,512が本発明における「弾性部材」に相当する。
【0048】
移動部材52は、板状の本体部520と、第1及び第2コイルばね511,512の他端511b,512bが連結する第1及び第2バネ連結部521,522と、ワイヤ44の一部が巻き回される回転部523と、ガイド部材53が嵌合する嵌合部524と、を有している。
【0049】
移動部材52の回転部523は、本体部520に形成された貫通孔520aに挿通される回転ピン523aに回転可能に支持されている。回転ピン523aの先端部は回転部523からZ方向の下方へ僅かに突出し、この回転ピン523aの突出した部位がベース3に形成された長孔3a内に配置される。つまり、ベース3の長孔3aは、回転ピン523aとの接触を回避するために設けられている。
【0050】
移動部材52は、ベース3の長孔3aの長手方向の長さと第2方向転換部材622の配置位置とで設定される範囲内において移動可能である。また、移動部材52は、回転部523が長孔3a内に配置されている状態では、常に第1及び第2コイルばね511,512によって第2方向転換部材622から遠ざかるX方向の弾性力を受けている。
【0051】
移動部材52の回転部523には、ワイヤ44の他端側の一部が巻き回されている。これにより、回転部523は、ワイヤ44の巻き取り及び送り出しが可能である。
【0052】
第2方向転換部材622から導出されたワイヤ44は、回転部523に巻き回され、回転部523から導出されたワイヤ44の他端が連結ピン440に連結されている。
【0053】
移動部材52の嵌合部524は、直方形状であり、本体部520のZ方向における上方側の面に配置されている。嵌合部524には、X方向に沿って延伸した嵌合溝524aが形成されている。この嵌合溝524aに、ガイド部材53がX方向にスライドすることにより、移動部材52がX方向に沿って円滑に進退移動することができる。
【0054】
ガイド部材53は、ボルト等の固定部材によって板部材46に固定されている。ガイド部材53は、X方向に沿って伸びた棒状である。本実施の形態では、ガイド部材53の長手方向の長さが、ベース3の長孔3aよりも長く形成されており、ガイド部材53の長手方向における中間点と、長孔3aの長手方向における中間点とが一致するようにガイド部材53が配置されている。
【0055】
(車両用送電装置の動作)
次に、車両用送電装置1の基本的な動作について、図6を参照して説明する。図6(a)は、駆動ユニット40及び張力付与機構5の構成を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)におけるA-A線に沿った断面図である。
【0056】
駆動ユニット40のモータ411が回転すると、ドラム42が回転軸Oを中心として時計回り方向(矢印R方向)に回転し、ワイヤ44が送り出される。一方、モータ411が逆回転すると、ドラム42が回転軸Oを中心として反時計回り方向(矢印Q方向)に回転し、ワイヤ44が巻き取られる。
【0057】
モータ411の回転に伴ってドラム42が矢印R方向に回転すると、ワイヤ44が矢印A方向に沿って送り出されると共に、送電ケース2が第1乃至第4スプリング431~434(図6では第1及び第2スプリング431,432のみ示す)の弾性力を受けて上昇する。
【0058】
一方、モータ411の逆回転に伴ってドラム42が矢印Q方向に回転すると、ワイヤ44が矢印B方向に沿って巻き取られると共に、送電ケース2が第1乃至第4スプリング431~434(図6(b)では第1及び第2スプリング431,432のみ示す)の弾性力に抗して下降する。
【0059】
なお、送電ケース2の格納位置にある状態において、送電ケース2は第1乃至第4スプリング431~434の弾性力を受けているが、駆動ユニット40のモータ411及び減速機412の噛み合い反力によってロックされている。
【0060】
ここでワイヤ44は、第1及び第2方向転換部材621,622及び第1及び第2プーリー611,612によって配策方向が転換されており、ベース3と送電ケース2との間で矩形状となるように配策されている。つまり、図6に示すように、車両用送電装置1は、第1及び第2プーリー611,612を介してワイヤ44を配策することで、モータ411とワイヤ44とによって第1及び第2スプリング431,432を圧縮または伸長するものである。
【0061】
(張力付与機構の動作)
次に、張力付与機構5の動作について、図7を参照して説明する。図7(a)~(c)は、張力付与機構の動作を模式的に表した説明図であり、図7(a)は、車両9を充電する場合における送電ケース2の所定の充電位置であり、図7(b)は、送電ケース2が充電位置よりも下降した状態を示し、図7(c)は、送電ケース2が充電位置よりも上昇した状態を示している。なお、図7では、説明の便宜上、第1のギヤ部412aの図示を省略している。
【0062】
車両9の充電中においては、送電ケース2が設置面7aからZ方向の上方の所定の位置で受電装置90の対向面90a(図1(b)に示す)に接触している。なお、図7(a)に示す充電状態においては、送電ケース2が第1乃至第4スプリング431~434によって弾性的に支持されているので、第1乃至第4スプリング431~434のそれぞれの伸縮に応じて、送電ケース2はZ方向の上方及び下降への移動が可能な状態である。なお、送電ケース2の充電位置においては、移動部材52がガイド部材53の長手方向における中間に位置している。
【0063】
ここで、図7(a)に示す充電状態において乗員の乗降があった場合には、車高が下降することがあり、これに伴って受電装置90のZ方向における位置が下がることがある。この際、送電ケース2も下降するため、送電ケース2の移動量に応じてワイヤ44に弛みが生じる。また、送電ケース2を充電位置まで上昇させる際に、送電ケース2が充電位置に到達してもなおモータ411が慣性によって駆動することによりワイヤ44が過度に送り出され、ワイヤ44に弛みが生じることがある。本実施の形態では、上述したようなワイヤ44の弛みを除去するために、張力付与機構5を設けている。
【0064】
図7(b)に示すように、車高が下がった場合には、送電ケース2が第1及び第2スプリング431,432の弾性力に抗して充電位置よりもZ方向の下方へ移動する。この際、送電ケース2の下方への移動量に応じてワイヤ44に弛みが生じるため、第1及び第2コイルばね511,512の弾性力により、張力付与機構5の移動部材52がX方向の第1スプリング431側へ移動する。これにより、ワイヤ44に張力が付与されてワイヤ44の弛みが除去される。
【0065】
図7(c)に示すように、車高が上がった場合には、送電ケース2が第1及び第2スプリング431,432の弾性力によって充電位置よりもZ方向の上方へ移動する。この場合には、送電ケース2のZ方向の上への移動に伴って、ワイヤ44に張力が付与され、この張力を移動部材52の回転部523が受けることにより、移動部材52が第1及び第2コイルばね511,512の弾性力に抗して、X方向の第2スプリング432側へ移動する。この際、ワイヤ44は、矢印W方向に送り出される。
【0066】
以上のように、本実施の形態では、送電ケース2の充電位置において、送電ケース2の上昇又は下降に伴って移動部材52をX方向に進退移動させることにより、ワイヤ44に適切な張力が付与されるように構成されている。
【0067】
また、送電ケース2の充電位置において、移動部材52がガイド部材53の中間に位置することで、送電ケース2の充電位置からの上昇及び下降に対応することが可能である。つまり、車両用送電装置1が張力付与機構5を備えることにより、駆動ユニット40のモータ411が作動しない非作動状態においても、送電ケース2の上昇及び下降に応じてワイヤ44の巻き取り及び送り出しができるように構成されている。
【0068】
また本実施の形態では、受電装置90の対向面90aと表面22aとを接触させた状態を維持するように、送電ケース2が第1乃至第4スプリング431~434によって弾性的に支持されている。これにより、車両9における車高の変動に伴って受電装置90の位置が移動した場合であっても、受電装置90の対向面90aと送電ケース2の表面22aとの間における位置ずれを抑制することができる。つまり、車高変動に伴う充電効率の低下を抑制することができる。
【0069】
(作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下の作用及び効果を得ることができる。
【0070】
(1)車両用送電装置1は、ワイヤに張力を付与する張力付与機構5を備えているので、ワイヤ44に弛みが生じた場合にワイヤ44の弛みを除去することができる。
【0071】
(2)張力付与機構5は、送電ケース2の上昇及び下降のそれぞれに連動して2方向に進退移動可能に配置された移動部材52を有しているので、送電ケース2の上昇に伴ってワイヤ44を送り出すと共に、送電ケース2の下降に伴ってワイヤ44を巻き取ることが可能である。
【0072】
(3)張力付与機構5は、移動部材52の進退移動に伴って伸縮自在に設けられた第1及び第2コイルばね511,512を有しているので、簡素かつ安価な構成で張力付与機構5を構成することができる。
【0073】
(4)張力付与機構5は、移動部材52の進退移動を案内するガイド部材53を有しているので、移動部材52を円滑に移動させることできる。
【0074】
(5)移動部材52は、ワイヤ44の巻き取り及び送り出しが可能な回転部523を含んでいるので、ワイヤ44の弛みをより多く除去することができる。ここで、回転部523にワイヤ44を巻き回さないで直接固定した場合、ワイヤ44の緩みを除去できる長さは回転部523の移動距離と同じになる。一方で図7に示すように、ワイヤ44を回転部523に巻き回して連結ピン440に連結した場合、ワイヤ44の緩みを除去できる長さは回転部523の移動距離の倍になる。これは、回転部523が移動すると共に回転部523が移動した距離分だけ回転部523からワイヤ44が送り出されることにより、回転部523の移動距離分のワイヤ44の長さに、さらに回転部523によって送り出された回転部523の移動距離分に相当するワイヤ44の長さを加えた長さでワイヤ44の緩みを除去できるからである。
【0075】
(6)第1及び第2プーリー611,612を介してワイヤ44を配策することで、1つのモータ411と1本のワイヤ44とによって第1及び第2スプリング431,432を圧縮または伸長することができる。また、車高の変動に伴って送電ケース2が傾いた場合や、送電ケース2の高さが変化した場合に、1つのモータ411を駆動しワイヤ44の巻き取りまたは送り出しをしてワイヤ44の張力を適切に調整することができる。したがって、プーリー用いることで任意の場所に配置した1つのモータと1本のワイヤとによって複数のスプリングを圧縮または伸長すると共にワイヤの張力も適切に調整することができる。さらに、第1及び第2プーリー611,612を介してワイヤ44を配策して、ワイヤ44の他端をベース3に固定された連結ピン440に連結しているため、第1及び第2スプリング431,432の弾性力はモータ44と連結ピン440とに分散され各々に分散された弾性力が加わることとなる。一方で、ワイヤ44の他端を直接送電ケース2に連結した場合、モータ44には第1及び第2スプリング431,432の弾性力が全て加わることとなる。したがって、第1及び第2プーリー611,612によってモータ44に加わる力を軽減することができる。
【0076】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0077】
[1]車両(9)が駐車される駐車スペースの設置面(9a)に設置されて、前記車両(9)に搭載された受電装置(90)に対して非接触で電力を供給する車両用送電装置(1)であって、送電コイル(20)が取り付けられた送電ケース(2)と、前記送電ケース(2)と前記設置面(9a)との間に配置されて前記送電ケース(2)を上昇方向に押圧する押圧部材(431~434)と、モータ(411)によって回転される回転部材(42)と、前記回転部材(42)に一端が連結されて、前記回転部材(42)の巻き取りによって前記押圧部材(431~434)の押圧力に抗して前記送電ケース(2)を下降方向に牽引するワイヤ(44)と、前記ワイヤ(44)の他端側に配置されて前記ワイヤ(44)に張力を付与する張力付与機構(5)と、を備えている、車両用送電装置(1)。
【0078】
[2]前記張力付与機構(5)は、前記ワイヤ(44)の一部が取り付けられて、前記送電ケース(2)の上昇及び下降のそれぞれに連動して2方向に進退移動可能に配置された移動部材(52)を有している、前記[1]に記載の車両用送電装置(1)。
【0079】
[3]前記張力付与機構(5)は、前記移動部材(52)の前記進退移動に伴って伸縮自在に設けられた弾性部材(511,512)をさらに有する、前記[2]に記載の車両用送電装置(1)。
【0080】
[4]前記張力付与機構(5)は、前記移動部材(52)の前記進退移動を案内するガイド部材(53)をさらに有している、前記[2]又は[3]に記載の車両用送電装置(1)。
【0081】
[5]前記移動部材(52)は、前記ワイヤ(44)の一部が巻き回されて前記ワイヤの巻き取り及び送り出しが可能な回転部(523)を含む、前記[2]乃至[4]の何れか1つに記載の車両用送電装置(1)。
【0082】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【0083】
例えば、送電ケース2の格納位置において、送電ケース2の上昇方向への移動を規制するロック機構を設けてもよい。また、送電ケース2を所定の充電位置でロックするロック機構を設けてもよい。これにより、例えばアクチュエータ41が故障した場合や、ワイヤ44が切断された場合に、送電ケース2が第1乃至第4スプリング431~434の弾性力によって上方へ飛び出すことを防止することができる。
【0084】
また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…車両用送電装置
2…送電ケース
3…ベース
3a…長孔
5…張力付与機構
7a…設置面
8…電源設備
9…車両
9a…下面
20…送電コイル
21…ケース部
22…カバー部
40…駆動ユニット
41…アクチュエータ
42…ドラム
44…ワイヤ
52…移動部材
53…ガイド部材
91…受電コイル
92…蓄電池
100…車両用充電システム
411…モータ
431…第1スプリング
432…第2スプリング
433…第3スプリング
434…第4スプリング
511…第1コイルばね
512…第2コイルばね
611…第1プーリー
612…第2プーリー
621…第1方向転換部材
622…第2方向転換部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7