(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】石炭物流状況管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220119BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
(21)【出願番号】P 2018239069
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018006298
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊裕
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009222(JP,A)
【文献】特開2015-075243(JP,A)
【文献】特開2007-264681(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037826(WO,A1)
【文献】大島 有三,いちだんと高性能化が進む鉄鋼プロセス制御,電気学会雑誌,社団法人電気学会,Vol.111 No.7,pp.573-580
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を運搬する運搬装置から前記石炭を貯留する複数のサイロを経て前記石炭を燃焼する燃焼炉に至る経路における前記石炭の物流状況を管理する石炭物流状況管理装置であって、
前記複数のサイロにそれぞれ貯留されている前記石炭の品種及び在庫量を含む物流状況を記憶する物流状況記憶部と、
前記石炭の前記品種の組合せと、前記組合せにおける前記品種の比率と、予め定められた前記組合せの優先度と、を含む混炭ルールを予め記憶する混炭ルール記憶部と、
前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定する混炭決定部と、
前記燃焼炉における単位時間当りの石炭消費計画量を予め記憶する基礎情報記憶部と、
前記混炭決定部で決定された前記混炭情報に対応するサイロから前記燃焼炉に、前記石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度を算出するサイロ払出し速度計算部と、
予め定められた更新時間間隔でシミュレーション時刻を更新するシミュレーション時刻更新部と、
前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記サイロ払出し速度と前記更新時間間隔とに基づき、前記物流状況記憶部に記憶されている前記物流状況のうち、石炭を払出し中のサイロの在庫量を更新する物流状況更新部と、を備え、
石炭を払出し中のサイロのうち少なくとも1つのサイロの在庫量が前記物流状況更新部によりゼロに更新されると、前記混炭決定部は、再び、前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定し、
前記混炭決定部により、前記混炭情報が再び決定されると、前記サイロ払出し速度計算部は、再び、前記混炭決定部で再び決定された前記混炭情報に対応するサイロから前記燃焼炉に、前記石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度を算出する、
石炭物流状況管理装置。
【請求項2】
前記基礎情報記憶部は、さらに、前記複数のサイロからのそれぞれの石炭の払出し能力を予め記憶し、
前記混炭決定部は、前記サイロ払出し速度計算部により算出された石炭の払出し速度が、対応する前記サイロからの前記石炭の払出し能力を超えているときは、前記決定された混炭情報より前記組合せの優先度が低い組合せについて、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記混炭情報として決定する、
請求項
1に記載の石炭物流状況管理装置。
【請求項3】
前記運搬装置からの前記石炭のアンロードを開始するか否かを判断するアンロード判断部をさらに備え、
前記基礎情報記憶部は、さらに、前記石炭のアンロード地における前記運搬装置の到着予定時刻を予め記憶し、
前記アンロード判断部は、前記シミュレーション時刻の更新時に、前記シミュレーション時刻が前記到着予定時刻と同じ又は前記到着予定時刻以降になった場合であって、かつ、前記物流状況記憶部に記憶されている前記物流状況のなかで前記在庫量がゼロの特定サイロが存在する場合に、前記特定サイロをアンロード先として、前記運搬装置からの前記石炭のアンロードを開始すると判断する、
請求項2
に記載の石炭物流状況管理装置。
【請求項4】
前記基礎情報記憶部は、さらに、前記複数のサイロのそれぞれの容量を予め記憶し、
前記物流状況記憶部は、前記物流状況として、前記運搬装置が積載する前記石炭の積載量と、前記運搬装置からの前記石炭のアンロード速度と、をさらに記憶し、
前記物流状況更新部は、前記アンロード判断部により前記アンロードを開始すると判断された前記シミュレーション時刻以降の前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記アンロード速度と前記更新時間間隔とに基づき、前記物流状況記憶部に記憶されている、前記特定サイロの在庫量と、前記運搬装置の前記石炭の積載量と、を更新する、
請求項
3に記載の石炭物流状況管理装置。
【請求項5】
前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記運搬装置からの前記石炭のアンロードが完了したか否かを判断するアンロード完了判断部と、
前記運搬装置が前記石炭のアンロード地と前記石炭の積み込み地との間を往復する専用の運搬装置である場合に、往復ごとの、前記石炭のアンロード地における前記運搬装置の到着予定時刻及び出発予定時刻を記憶する運搬装置情報記憶部と、
前記運搬装置からの前記石炭のアンロードが完了したと前記アンロード完了判断部により判断されたアンロード完了時刻が、前記運搬装置情報記憶部に記憶されている前記運搬装置の次の出発予定時刻より遅いときに、前記運搬装置情報記憶部に記憶されている、前記次の出発予定時刻以降の前記到着予定時刻及び前記出発予定時刻を、前記アンロード完了時刻と前記次の出発予定時刻との差分だけ遅らせて更新する石炭運搬計画更新部と、をさらに備える、
請求項2~
4のいずれか1項に記載の石炭物流状況管理装置。
【請求項6】
石炭を運搬する運搬装置から前記石炭を貯留する複数のサイロを経て前記石炭を燃焼する燃焼炉に至る経路における前記石炭の物流状況を管理する石炭物流状況管理方法であって、
前記複数のサイロにそれぞれ貯留されている前記石炭の品種及び在庫量を含む物流状況を物流状況記憶部に記憶する記憶工程と、
前記石炭の前記品種の組合せと、前記組合せにおける前記品種の比率と、予め定められた前記組合せの優先度と、を含む混炭ルールを混炭ルール記憶部に予め記憶する準備工程と、
前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定する混炭決定工程と、
前記燃焼炉における単位時間当りの石炭消費計画量を基礎情報記憶部に予め記憶する基礎情報記憶工程と、
前記混炭決定工程で決定された前記混炭情報に対応するサイロから前記燃焼炉に、前記石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度を算出するサイロ払出し速度計算工程と、
予め定められた更新時間間隔でシミュレーション時刻を更新するシミュレーション時刻更新工程と、
前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記サイロ払出し速度と前記更新時間間隔とに基づき、前記物流状況記憶部に記憶されている前記物流状況のうち、石炭を払出し中のサイロの在庫量を更新する物流状況更新工程と、を備え、
石炭を払出し中のサイロのうち少なくとも1つのサイロの在庫量が前記物流状況更新工程によりゼロに更新されると、前記混炭決定工程は、再び、前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定し、
前記混炭決定工程により、前記混炭情報が再び決定されると、前記サイロ払出し速度計算工程は、再び、前記混炭決定工程で再び決定された前記混炭情報に対応するサイロから前記燃焼炉に、前記石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度を算出する、
石炭物流状況管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を運搬する運搬装置から石炭を貯留する複数のサイロを経て石炭を燃焼する燃焼炉に至る経路における石炭の物流状況を管理する石炭物流状況管理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所には、貨物船又は貨物列車などにより石炭が搬入される。搬入された石炭はサイロに搬送されて貯蔵された後、サイロから払い出されてボイラに供給される。通常、サイロは複数設けられており、異なる品種の石炭は、異なるサイロに貯蔵される。サイロにおいて石炭が長期間貯蔵されると、発熱し、自然発火に至る可能性がある。そこで、特許文献1に記載の技術では、貯炭日数が長いサイロを優先して、2基のサイロの組合せを仮決定した後、石炭混合情報を参照して、仮決定したサイロの組合せによる混炭が可能であるか否かが判断される。混炭が不可能な場合は、次に貯炭日数が長いサイロでの組合せに対して、混炭の可否が判断される。この判断手順が混炭可能な組合せになるまで繰り返される。石炭混合情報には、安定して燃焼させるために混炭が可能な石炭の品種の組合せが複数設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、サイロの組合せが1つ仮決定された後で、石炭混合情報に基づき、制約条件として混炭の可否が判断されている。このため、貯炭日数等のサイロの要因のみで優先度が設定されることとなる。したがって、サイロ以外の要因で優先度が設定される場合には、十分に対応することができない。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、サイロ以外の要因で優先度が設定される場合において、石炭の物流状況を好適に管理することが可能な石炭物流状況管理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、
石炭を運搬する運搬装置から前記石炭を貯留する複数のサイロを経て前記石炭を燃焼する燃焼炉に至る経路における前記石炭の物流状況を管理する石炭物流状況管理装置であって、
前記複数のサイロにそれぞれ貯留されている前記石炭の品種及び在庫量を含む物流状況を記憶する物流状況記憶部と、
前記石炭の前記品種の組合せと、前記組合せにおける前記品種の比率と、予め定められた前記組合せの優先度と、を含む混炭ルールを予め記憶する混炭ルール記憶部と、
前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定する混炭決定部と、
を備えるものである。
【0007】
本発明の第2態様は、
石炭を運搬する運搬装置から前記石炭を貯留する複数のサイロを経て前記石炭を燃焼する燃焼炉に至る経路における前記石炭の物流状況を管理する石炭物流状況管理方法であって、
前記複数のサイロにそれぞれ貯留されている前記石炭の品種及び在庫量を含む物流状況を物流状況記憶部に記憶する記憶工程と、
前記石炭の前記品種の組合せと、前記組合せにおける前記品種の比率と、予め定められた前記組合せの優先度と、を含む混炭ルールを混炭ルール記憶部に予め記憶する準備工程と、
前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定する混炭決定工程と、
を備えるものである。
【0008】
この第1態様及び第2態様では、物流状況に基づき、石炭の品種の組合せが燃焼炉に供給可能か否かが、組合せの優先度が高い順に判定され、最初に供給可能と判定された組合せが、燃焼炉に供給する石炭の品種の組合せを表す混炭情報として決定される。したがって、第1態様及び第2態様によれば、燃焼炉に供給可能な石炭の品種の組合せのうちで、最も優先度の高い石炭の品種の組合せ、つまり最も望ましい石炭の品種の組合せを、混炭情報として決定することができる。
【0009】
そして、上記第1態様において、例えば、前記燃焼炉における単位時間当りの石炭消費計画量を予め記憶する基礎情報記憶部と、前記混炭決定部で決定された前記混炭情報に対応するサイロから前記燃焼炉に、前記石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度を算出するサイロ払出し速度計算部と、予め定められた更新時間間隔でシミュレーション時刻を更新するシミュレーション時刻更新部と、前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記サイロ払出し速度と前記更新時間間隔とに基づき、前記物流状況記憶部に記憶されている前記物流状況のうち、石炭を払出し中のサイロの在庫量を更新する物流状況更新部と、をさらに備えてもよく、石炭を払出し中のサイロのうち少なくとも1つのサイロの在庫量が前記物流状況更新部によりゼロに更新されると、前記混炭決定部は、再び、前記物流状況に基づき、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記燃焼炉に供給する前記石炭の前記品種の組合せを表す混炭情報として決定してもよく、前記混炭決定部により、前記混炭情報が再び決定されると、前記サイロ払出し速度計算部は、再び、前記混炭決定部で再び決定された前記混炭情報に対応するサイロから前記燃焼炉に、前記石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度を算出してもよい。上記第2態様においても、同様である。
【0010】
この態様では、石炭を払出し中のサイロのうち少なくとも1つのサイロの在庫量がゼロに更新されると、再び、物流状況に基づき、組合せを燃焼炉に供給可能か否かが、組合せの優先度が高い順に判定され、最初に供給可能と判定された組合せが、燃焼炉に供給する石炭の品種の組合せを表す混炭情報として決定される。混炭情報が再び決定されると、再び、決定された混炭情報に対応するサイロから燃焼炉に、石炭消費計画量の石炭を供給するために必要な石炭のサイロ払出し速度が、算出される。したがって、この態様によれば、シミュレーション時刻を更新時間間隔で更新していくことにより、サイロから燃焼炉への石炭の払出しスケジュールを作成することができる。
【0011】
上記第1態様において、例えば、前記基礎情報記憶部は、さらに、前記複数のサイロからのそれぞれの石炭の払出し能力を予め記憶してもよく、前記混炭決定部は、前記サイロ払出し速度計算部により算出された石炭の払出し速度が、対応する前記サイロからの前記石炭の払出し能力を超えているときは、前記決定された混炭情報より前記組合せの優先度が低い組合せについて、前記組合せを前記燃焼炉に供給可能か否かを、前記組合せの優先度が高い順に判定し、最初に供給可能と判定された前記組合せを、前記混炭情報として決定してもよい。
【0012】
算出された石炭の払出し速度が、対応するサイロからの石炭の払出し能力を超えているときは、決定された混炭情報の石炭を燃焼炉に供給できない。そこで、この場合には、決定された混炭情報より組合せの優先度が低い組合せについて、組合せを燃焼炉に供給可能か否かが、組合せの優先度が高い順に判定され、最初に供給可能と判定された組合せが、混炭情報として決定される。したがって、この態様によれば、燃焼炉に供給可能な石炭の品種の組合せを決定することができる。
【0013】
上記第1態様において、例えば、前記運搬装置からの前記石炭のアンロードを開始するか否かを判断するアンロード判断部をさらに備えてもよく、前記基礎情報記憶部は、さらに、前記石炭のアンロード地における前記運搬装置の到着予定時刻を予め記憶してもよく、前記アンロード判断部は、前記シミュレーション時刻の更新時に、前記シミュレーション時刻が前記到着予定時刻と同じ又は前記到着予定時刻以降になった場合であって、かつ、前記物流状況記憶部に記憶されている前記物流状況のなかで前記在庫量がゼロの特定サイロが存在する場合に、前記特定サイロをアンロード先として、前記運搬装置からの前記石炭のアンロードを開始すると判断してもよい。
【0014】
この態様では、シミュレーション時刻の更新時に、運搬装置が到着済みで、かつ、在庫量がゼロの特定サイロが存在している場合に、アンロードを開始すると判断される。したがって、この態様によれば、シミュレーション時刻の更新を進めることによって、アンロードを開始すると判断することになる時刻を知ることができる。その結果、実現可能なアンロード計画を作成することができる。
【0015】
上記第1態様において、例えば、前記基礎情報記憶部は、さらに、前記複数のサイロのそれぞれの容量を予め記憶してもよく、前記物流状況記憶部は、前記物流状況として、前記運搬装置が積載する前記石炭の積載量と、前記運搬装置からの前記石炭のアンロード速度と、をさらに記憶してもよく、前記物流状況更新部は、前記アンロード判断部により前記アンロードを開始すると判断された前記シミュレーション時刻以降の前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記アンロード速度と前記更新時間間隔とに基づき、前記物流状況記憶部に記憶されている、前記特定サイロの在庫量と、前記運搬装置の前記石炭の積載量と、を更新してもよい。
【0016】
この態様では、シミュレーション時刻の更新ごとに、アンロード速度と更新時間間隔とに基づき、アンロード先である特定サイロの在庫量と、運搬装置の石炭の積載量とが更新される。したがって、この態様によれば、シミュレーション時刻の更新を進めることによって、アンロード先のサイロの在庫量が容量に一致する時刻と、運搬装置の石炭の積載量がゼロになってアンロードが完了する時刻と、を知ることができる。
【0017】
上記第1態様において、例えば、
前記シミュレーション時刻の更新ごとに、前記運搬装置からの前記石炭のアンロードが完了したか否かを判断するアンロード完了判断部と、
前記運搬装置が前記石炭のアンロード地と前記石炭の積み込み地との間を往復する専用の運搬装置である場合に、往復ごとの、前記石炭のアンロード地における前記運搬装置の到着予定時刻及び出発予定時刻を記憶する運搬装置情報記憶部と、
前記運搬装置からの前記石炭のアンロードが完了したと前記アンロード完了判断部により判断されたアンロード完了時刻が、前記運搬装置情報記憶部に記憶されている前記運搬装置の次の出発予定時刻より遅いときに、前記運搬装置情報記憶部に記憶されている、前記次の出発予定時刻以降の前記到着予定時刻及び前記出発予定時刻を、前記アンロード完了時刻と前記次の出発予定時刻との差分だけ遅らせて更新する石炭運搬計画更新部と、をさらに備えてもよい。
【0018】
アンロード完了時刻が運搬装置の次の出発予定時刻より遅いときは、アンロード完了時刻まで出発できないため、運搬装置の出発時刻は、次の出発予定時刻からアンロード完了時刻まで遅れることになる。この遅れは、次の出発予定時刻以降の到着予定時刻及び出発予定時刻に影響する。そこで、この態様では、運搬装置情報記憶部に記憶されている、次の出発予定時刻以降の到着予定時刻及び出発予定時刻が、アンロード完了時刻と次の出発予定時刻との差分だけ遅らせて更新される。したがって、この態様によれば、運搬装置の次の出発予定時刻に対するアンロード完了時刻の遅れを、次の出発予定時刻以降の到着予定時刻及び出発予定時刻に反映させることができる。その結果、より正確に石炭物流状況を管理することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物流状況に基づき、石炭の品種の組合せが燃焼炉に供給可能か否かが、組合せの優先度が高い順に判定され、最初に供給可能と判定された組合せが、燃焼炉に供給する石炭の品種の組合せを表す混炭情報として決定されるため、燃焼炉に供給可能な石炭の品種の組合せのうちで、最も優先度の高い石炭の品種の組合せ、つまり最も望ましい石炭の品種の組合せを、混炭情報として決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の石炭物流状況管理装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】基礎情報記憶部に予め記憶されている基礎情報を概略的に示す図である。
【
図3】混炭ルール記憶部に予め記憶されている混炭ルールを概略的に示す図である。
【
図4】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図5】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図6】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図7】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図8】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図9】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図10】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図11】物流状況記憶部の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
【
図12】シミュレーション結果の表示例を概略的に示す図である。
【
図13】本実施形態の物流状況管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。
【
図14】本実施形態の物流状況管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態における石炭物流状況管理装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図16】基礎情報記憶部に予め記憶されている基礎情報のうち船情報を概略的に示す図である。
【
図17】専用船の当初の配船計画の一例を概略的に示す図である。
【
図18】専用船の更新後の配船計画の一例を概略的に示す図である。
【
図19】基礎情報記憶部に記憶されている更新後の船情報を概略的に示す図である。
【
図20】第2実施形態の物流状況管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。
【
図21】火力発電所における石炭の物流システムの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の基礎となった知見)
図21は、火力発電所における石炭の物流システムの一例を概略的に示す図である。
図21を用いて、本発明の基礎となった知見が説明される。
【0022】
図21に示されるように、石炭を積んだ船SH1(運搬装置の一例に相当)は、バースBTに停泊する。船SH1の到着予定時刻は、事前に与えられる。また、積地により船SH1に積み込まれる石炭の品種が異なる。バースBTに停泊した船SH1に積載された石炭は、アンローダ160及びコンベア161によりサイロSI1~SI5にアンロードされて貯蔵される。
【0023】
通常、サイロは、複数設けられる。
図21の例では、5個のサイロSI1~SI5が設けられている。これは、品質安定化のために、異なる品種の石炭を1つのサイロで混合して貯蔵しないからである。また、サイロSI1~SI5における貯炭期間が長くなると、発熱又は発火の可能性がある。そこで、石炭を品種ごとに別のサイロで貯蔵するため、及び貯炭期間を管理するために、船SH1に積み込まれている石炭は、空のサイロにアンロードされる。言い換えると、空のサイロが無いときは、船SH1から石炭をアンロードすることができない。
【0024】
サイロSI1~SI5に貯蔵されている石炭は、それぞれサイロ払出し機171~175により払い出されて、ボイラBO1(燃焼炉の一例に相当)に供給される。このとき、通常、複数の品種の石炭が混合されて、ボイラBO1に送炭される。
図21では、サイロSI1に貯蔵された品種の石炭40%と、サイロSI3に貯蔵された品種の石炭60%とが混合されて、ボイラBO1に送炭される例が示されている。
【0025】
複数の品種の石炭を混合して燃焼させる場合、上記特許文献1では、良好な燃焼状態となる品種の組合せが石炭混合情報として記憶されており、このような品種の組合せのみが採用されるようになっている。しかし、品種の組合せの種類及び各品種の比率によって、燃焼性だけでなく、燃焼後の灰の品質、環境に対する負荷、コスト等も変化する。したがって、品種の組合せ及び各品種の比率には、燃焼性、燃焼後の灰の品質、環境に対する負荷、コスト等の観点を考慮して、優先的に使用する度合いを表す優先度を設定することが考えられる。これによって、燃焼性、燃焼後の灰の品質、環境に対する負荷、コスト等の観点から、より好ましい順番で、品種の組合せ及び各品種の比率を採用できるか否かを検討することができる。しかしながら、上記特許文献1では、石炭の品種の組合せ及び各品種の比率に優先度を設定することについては、全く考慮されていない。
【0026】
以上のような考察に基づき、本発明者は、石炭の品種の組合せ及び各品種の比率に優先度を設定し、優先度順に、その石炭の品種の組合せ及び各品種の比率が採用可能か否かを検討する技術を想到した。
【0027】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、詳細な説明は、適宜、省略される。
【0028】
(第1実施形態の構成)
図1は、第1実施形態における石炭物流状況管理装置100の構成例を概略的に示すブロック図である。第1実施形態における石炭物流状況管理装置100は、例えば
図21に示される火力発電所の物流システムにおける石炭の物流状況を管理する。石炭物流状況管理装置100は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。
図1に示されるように、石炭物流状況管理装置100は、ディスプレイ110、入力部120、メモリ130、記憶装置140、中央演算処理装置(CPU)150を備える。
【0029】
ディスプレイ110は、例えば液晶ディスプレイパネルを含む。ディスプレイ110は、CPU150により制御されて、後述のように、物流状況のシミュレーション結果を表示する。なお、ディスプレイ110は、液晶ディスプレイパネルに限られない。ディスプレイ110は、有機EL(electroluminescence)パネルなどの他のパネルを含んでもよい。
【0030】
入力部120は、例えばマウス又はキーボードを含む。入力部120は、ユーザにより操作されると、その操作内容を示す操作信号をCPU150に出力する。なお、ディスプレイ110がタッチパネル式ディスプレイの場合には、マウス又はキーボードに代えて、タッチパネル式ディスプレイが入力部120を兼用してもよい。
【0031】
メモリ130は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ130は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)などを含む。メモリ130のROMは、CPU150を動作させる第1実施形態の制御プログラムを記憶する。
【0032】
記憶装置140は、例えばハードディスク又は半導体メモリ等により構成される。記憶装置140は、物流状況記憶部141、混炭ルール記憶部142、基礎情報記憶部143を含む。各記憶部141~143は、互いに別の媒体で構成されてもよい。代替的に、各記憶部141~143は、記憶領域が分けられた一つの媒体で構成されてもよい。物流状況記憶部141は、船状況200(
図4等)と、サイロ状況300(
図5等)とを記憶する。物流状況記憶部141の記憶内容の具体例は、後に詳述される。基礎情報記憶部143、混炭ルール記憶部142の記憶内容は、それぞれ、
図2、
図3を用いて、次に説明される。
【0033】
図2は、基礎情報記憶部143に予め記憶されている基礎情報500を概略的に示す図である。基礎情報500は、船情報600と、サイロ情報700と、カレンダー情報800と、シミュレーション時刻の初期値900とを備える。
【0034】
船情報600は、船識別情報欄601と、到着予定時刻欄602と、品種欄603と、運搬量欄604とを含む。船識別情報欄601は、船の識別情報を表す。到着予定時刻欄602は、対応する船のバースBT(
図21)への到着予定時刻を表す。品種欄603は、対応する船に積載されている石炭の品種を表す。運搬量欄604は、対応する船が運搬する石炭の量を表す。
図2の例では、品種COaの石炭を3万トン運搬する船SH1は、10月1日の午前6時にバースBT(
図21)に到着する予定になっている。
【0035】
サイロ情報700は、サイロ識別情報欄701と、容量欄702とを含む。サイロ識別情報欄701は、サイロの識別情報を表す。容量欄702は、対応するサイロに貯蔵可能な石炭の量を表す。
図2の例では、サイロSI1~SI5は、それぞれ3万トンの石炭が貯蔵可能になっている。
【0036】
カレンダー情報800には、それぞれ日々の、サイロ払出し能力、単位時間当りの石炭消費計画量、アンロード能力が記載されている。サイロ払出し能力は、日々のサイロ払出し機171~175(
図21)の各サイロ払出し能力を表す。例えばサイロ払出し機171~175のそれぞれのメンテナンス期間には、サイロ払出し能力はそれぞれ低下する。単位時間当りの石炭消費計画量は、ボイラBO1(
図21)における日々の石炭の消費計画量を表す。例えば発電計画量が増大すると、石炭消費計画量は増大する。例えばボイラBO1が新しい場合には、燃焼効率が高いため、同じ発電計画量であっても、古い場合に比べて石炭消費計画量は少なくて済む。アンロード能力は、アンローダ160の能力を表す。例えばアンローダ160のメンテナンス期間には、アンロード能力は低下する。例えばアンローダ160として2台の機器を使用している場合において、1台の機器がメンテナンス中のときには、アンロード能力は2分の1に低下する。
【0037】
シミュレーション時刻の初期値900は、物流状況記憶部141に記憶されている物流状況のシミュレーションを開始する最初の時刻である。シミュレーション時刻の初期値900は、例えば次の日の朝など、現在の時点より未来の時刻である。基礎情報500は、例えばユーザにより入力部120を用いて基礎情報記憶部143に予め記憶される。
【0038】
図3は、混炭ルール記憶部142に予め記憶されている混炭ルール400を概略的に示す図である。混炭ルール400は、優先度欄401と、第1品種欄402と、第2品種欄403と、第3品種欄404とを備える。第1品種欄402は、品種欄411、比率欄412を含む。第2品種欄403は、品種欄421、比率欄422を含む。第3品種欄404は、品種欄431、比率欄432を含む。
【0039】
第1実施形態では、第1品種欄402と、第2品種欄403と、第3品種欄404とにおけるそれぞれの品種の石炭を、それぞれ設定された比率で混合する。第3品種欄404に品種及び比率が設定されていない場合には、第1品種欄402及び第2品種欄403の2種類の石炭が混合される。第2品種欄403及び第3品種欄404に品種及び比率が設定されていない場合には、第1品種欄402の石炭のみが用いられる。
【0040】
優先度欄401は、それぞれの品種の組合せの優先度を表す。第1実施形態では、石炭の品種の組合せ及び各品種の比率には、燃焼性、燃焼後の灰の品質、環境に対する負荷、コスト等の観点を考慮して、優先的に使用する度合いを表す優先度が設定されている。第1実施形態では、優先度の数字が小さい品種の組合せが優先される。すなわち、
図3の上から順に、品種の組合せが実施可能か否かが検討される。
【0041】
図3の混炭ルール400では、優先度欄401における優先度「4」と優先度「5」との関係のように、品種COaと品種CObとの組合せが同じで、比率が「5:3」及び「3:3」と異なる設定が例示されている。例えば、サイロに設置されたサイロ払出し機のサイロ払出し能力が補修又はトラブル等で低下した際に適用される。
図3の例では、品種COaの石炭を貯蔵するサイロに設置されたサイロ払出し能力が低下したため、品種COaの石炭をボイラBO1に必要な量の5/8を供給できない時は、品種COaの石炭をボイラBO1に必要な量の1/2の割合で供給してもよいことが示されている。
【0042】
図1に戻って、CPU150は、メモリ130に記憶された第1実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、アンロード判断部151、混炭決定部152、サイロ払出し速度計算部153、シミュレーション時刻更新部154、物流状況更新部155、表示制御部156として機能する。
【0043】
アンロード判断部151は、シミュレーション時刻において、到着済みの船があり、空のサイロがあり、かつバースBT(
図21)が利用可能であれば、船に積載された石炭のアンロードを開始すると判断する。アンロード判断部151は、例えば石炭をアンロード中の船が無ければ、バースBTが利用可能であると判断する。アンロード判断部151は、到着済みの船が複数ある場合には、到着日時が早い船を優先する。アンロード判断部151は、空のサイロが複数あるときは、空き時間の長いサイロを優先する。これによって、サイロの稼働時間が平準化される。
【0044】
アンロード判断部151は、シミュレーション時刻において、アンロード中の船の積載量がゼロになると、当該船のアンロードが終了したと判断する。アンロード判断部151は、シミュレーション時刻において、アンロード先のサイロの在庫量が、そのサイロの容量に達すると、再度、アンロード先のサイロを決定する。
【0045】
混炭決定部152は、ボイラBO1に供給する石炭の品種の組合せ及び比率について、混炭ルール400の優先度の高い品種の組合せから順に実施可能か否かを評価する。混炭決定部152は、最初に実施可能と評価した品種の組合せ及び比率を、ボイラBO1に供給する混炭情報として決定する。すなわち、混炭決定部152は、組合せに設定された品種のうち、サイロに在庫が無い品種が1つでもある場合には、より低い優先度の組合せを評価して、混炭情報を決定する。混炭決定部152は、同じ品種を貯蔵するサイロが複数ある場合には、発熱防止のために、最も貯炭日数の長いサイロを優先する。混炭決定部152は、シミュレーション時刻において、払出し中のサイロのうち少なくとも1つの在庫量がゼロになると、再度、混炭情報を決定する。
【0046】
サイロ払出し速度計算部153は、基礎情報記憶部143に記憶されているボイラBO1の単位時間当りの石炭消費計画量と、混炭決定部152で決定された混炭情報とから、各サイロの払出し速度を計算する。サイロ払出し速度計算部153は、計算されたサイロの払出し速度が、基礎情報記憶部143に記憶されているサイロ払出し能力より高い場合には、その旨を混炭決定部152に通知する。混炭決定部152は、再度、より低い優先度の組合せを評価して、混炭情報を再決定する。
【0047】
シミュレーション時刻更新部154は、事前に設定された更新時間間隔(第1実施形態では例えば1分間)でシミュレーション時刻を進める。第1実施形態の石炭物流状況管理装置100は、ユーザが入力部120を用いて、更新時間間隔を任意の値に設定することができるように構成されている。設定された更新時間間隔は、予めメモリ130に変更可能に保存される。シミュレーション時刻更新部154は、メモリ130に保存された更新時間間隔を参照して、シミュレーション時刻を進める。
【0048】
シミュレーション時刻更新部154は、シミュレーション時刻の初期値から予め定められた経過時間(例えば100日)が経過すると、シミュレーションを終了すると判断する。代替的に、シミュレーション時刻更新部154は、シミュレーション時刻が予め定められた終了時刻に達すると、シミュレーションを終了すると判断してもよい。予め定められた経過時間又は終了時刻は、例えばユーザが入力部120を用いて基礎情報記憶部143に予め記憶させておいてもよい。
【0049】
物流状況更新部155は、シミュレーション時刻の更新ごとに、式(1)を用いて、積み荷の石炭をアンロード中の船の積載量を算出する。
max(更新前の積載量-アンロード速度×更新時間間隔,0) (1)
物流状況更新部155は、シミュレーション時刻の更新ごとに、式(2)を用いて、船から石炭を受け入れ中のサイロの在庫量を算出する。
min(更新前の在庫量+受入速度×更新時間間隔,サイロの容量) (2)
物流状況更新部155は、シミュレーション時刻の更新ごとに、式(3)を用いて、ボイラBO1に石炭を払い出し中のサイロの在庫量を算出する。
max(更新前の在庫量-払出し速度×更新時間間隔,0) (3)
物流状況更新部155は、以上の算出結果を用いて、シミュレーション時刻の更新ごとに、物流状況記憶部141の記憶内容を更新する。表示制御部156は、入力部120を用いたユーザからの指示に応じて、シミュレーションの結果をディスプレイ110に表示する。
【0050】
図4~
図11は、それぞれ、物流状況記憶部141の記憶内容の一例を概略的に示す図である。
図4は、シミュレーション時刻の初期値900(
図2)における船状況200を示し、
図5は、
図4と同時刻におけるサイロ状況300を示す。
図6は、
図4の10時間後における船状況200を示し、
図7は、
図6と同時刻におけるサイロ状況300を示す。
図8は、
図4の20時間後における船状況200を示し、
図9は、
図8と同時刻におけるサイロ状況300を示す。
図10は、
図4の25時間後における船状況200を示し、
図11は、
図10と同時刻におけるサイロ状況300を示す。
図4~
図11を用いて、シミュレーション時刻ごとに物流状況更新部155によって更新される、物流状況記憶部141の記憶内容の一例が説明される。
【0051】
例えば
図4に示されるように、船状況200は、船名欄201、到着予定時刻欄202、アンロード完了時刻欄203、品種欄204、積載量欄205、アンロード速度欄206、アンロード先サイロ欄207を含む。船名欄201は、船の名称を表す。到着予定時刻欄202は、対応する船の到着予定時刻を表す。アンロード完了時刻欄203は、対応する船からの石炭のアンロードが完了した時刻を表す。品種欄204は、対応する船に積載されている石炭の品種を表す。積載量欄205は、対応する船のシミュレーション時刻における石炭の積載量を表す。アンロード速度欄206は、シミュレーション時刻に石炭をアンロード中の速度を表す。アンロード先サイロ欄207は、対応する船からの石炭のアンロード先のサイロを表す。
【0052】
船名欄201、到着予定時刻欄202、品種欄204は、それぞれ、基礎情報記憶部143(
図2)における船識別情報欄601、到着予定時刻欄602、品種欄603と同じ情報を表す。アンロード開始前に積載量欄205に表される情報は、基礎情報記憶部143(
図2)の運搬量欄604に表される情報と同じである。
【0053】
例えば
図5に示されるように、サイロ状況300は、サイロ欄301、品種欄302、在庫量欄303、受入速度欄304、払出し速度欄305、空になった時刻欄306、アンロード完了時刻欄307、送炭先ボイラ欄308を含む。サイロ欄301は、サイロを特定する情報を表す。品種欄302は、対応するサイロに貯蔵されている石炭の品種を表す。在庫量欄303は、対応するサイロのシミュレーション時刻における石炭の在庫量を表す。受入速度欄304は、シミュレーション時刻に、船から石炭を受入れ中の速度を表す。
【0054】
払出し速度欄305は、シミュレーション時刻に、ボイラBO1に向けて石炭を払出し中の速度を表す。空になった時刻欄306は、対応するサイロが空になった時刻を表す。アンロード判断部151(
図1)は、この空になった時刻を用いて、空き時間の長いサイロを特定する。アンロード完了時刻欄307は、船から対応するサイロへのアンロードが完了した時刻を表す。送炭先ボイラ欄308は、対応するサイロから払い出される石炭の供給先のボイラを特定する情報を表す。
【0055】
図5の品種欄302、アンロード完了時刻欄307は、それぞれ、船状況200(
図4)の品種欄204、アンロード完了時刻欄203と同じ情報を表す。なお、受入速度欄304に記載される値は、アンローダ160の能力によって決まるので、船状況200(
図4)のアンロード速度欄206の値と同じである。
【0056】
次に、シミュレーション時刻ごとの更新が説明される。最初に、
図4、
図5のシミュレーション時刻は10月5日10時である。
図4において、船SH1は既に到着して品種COaの石炭のアンロードが完了し、積載量は「ゼロ」になっており、アンロード先はサイロSI2である。
図5のサイロSI2では、品種COaが船SH1(
図4)の品種COaと一致し、在庫量が「30000」で、サイロSI2の容量「30000」(
図2の容量欄702)と一致し、アンロード完了時刻「10月3日7時」が、船SH1(
図4)のアンロード完了時刻「10月3日7時」と一致している。
【0057】
また、
図4において、船SH2は既に到着して品種COaの石炭をアンロード中であり、積載量は「50000」で、最初の運搬量「60000」(
図2の運搬量欄604)から「10000」減少しており、アンロード先はサイロSI3である。
図5のサイロSI3では、品種CObが船SH2(
図4)の品種CObと一致し、在庫量が「10000」で、船SH2(
図4)の積載量の減少量「10000」と一致し、受入速度が「2000」で、船SH2(
図4)のアンロード速度「2000」と一致している。
【0058】
また、
図5において、サイロSI1から払出し速度「250」で、サイロSI5から払出し速度「150」で、それぞれ、石炭をボイラBO1に払出し中である。したがって、現在のボイラBO1の石炭消費速度は、払出し速度の合計である「400」であることが分かる。また、サイロSI1が品種COaを貯蔵し、サイロSI5が品種COcを貯蔵し、混炭比率が「250:150=5:3」であるので、
図3の混炭ルール400から、優先度「4」の混炭情報が採用されていることが分かる。また、
図5において、サイロSI4は、空である。
【0059】
次に、
図6、
図7のシミュレーション時刻は、
図4、
図5から10時間後の10月5日20時である。上述のように、船状況200及びサイロ状況300は、シミュレーション時刻の更新ごとに、例えば1分間隔で更新されているが、以下では、更新時間間隔を10時間として、各値の計算結果が説明される。
【0060】
アンロード中の船SH2の積載量は、式(1)により、
max(50000-2000×10,0)
=30000
となるので、物流状況更新部155は、
図6において、船SH2の積載量欄205を「30000」に更新する。
【0061】
受入れ中のサイロSI3の在庫量は、式(2)により、
min(10000+2000×10,30000)
=30000
となるので、物流状況更新部155は、
図7のサイロ状況300において、サイロSI3の在庫量欄303を「30000」に更新する。その結果、サイロSI3の在庫量が容量(
図2の容量欄702)に一致するので、アンロード判断部151は、サイロSI3へのアンロードを停止すると判断する。アンロード判断部151は、
図7のサイロ状況300から、空のサイロSI4を特定し、アンロード先をサイロSI4に変更すると判断する。
【0062】
以上より、物流状況更新部155は、
図6の船状況200において、船SH2のアンロード先サイロ欄207をサイロSI4に更新する。また、物流状況更新部155は、
図7のサイロ状況300において、サイロSI3の、受入速度欄304を「0」に更新し、アンロード完了時刻欄307を「10月5日20時」に更新する。また、物流状況更新部155は、
図7のサイロ状況300において、サイロSI4の、品種欄302を品種CObに更新し、受入速度欄304を「2000」に更新する。
【0063】
払い出し中のサイロSI1の在庫量は、式(3)により、
max(5000-250×10,0)
=2500
となり、払い出し中のサイロSI5の在庫量は、式(3)により、
max(15000-150×10,0)
=13500
となる。そこで、物流状況更新部155は、
図7のサイロ状況300において、サイロSI1の在庫量欄303を「2500」に更新し、サイロSI5の在庫量欄303を「13500」に更新する。
【0064】
次に、
図8、
図9のシミュレーション時刻は、
図4、
図5から20時間後、つまり
図6、
図7から10時間後の10月6日6時である。以下では、上記と同様に、
図6、
図7からの更新時間間隔を10時間として、各値の計算結果が説明される。
【0065】
アンロード中の船SH2の積載量は、式(1)により、
max(30000-2000×10,0)
=10000
となるので、物流状況更新部155は、
図8の船状況200において、船SH2の積載量欄205を「10000」に更新する。
【0066】
受入れ中のサイロSI4の在庫量は、式(2)により、
min(0+2000×10,30000)
=20000
となるので、物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI4の在庫量欄303を「20000」に更新する。
【0067】
払い出し中のサイロSI1の在庫量は、式(3)により、
max(2500-250×10,0)
=0
となり、払い出し中のサイロSI5の在庫量は、式(3)により、
max(13500-150×10,0)
=12000
となる。
【0068】
そこで、物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI1の在庫量欄303を「0」に更新し、サイロSI5の在庫量欄303を「12000」に更新する。また、物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI1の、空になった時刻欄306を「10月6日6時」に更新し、送炭先ボイラ欄308を「なし」に更新する。
【0069】
サイロSI1の在庫量がゼロになったので、物流状況更新部155は、その旨を、混炭決定部152に通知する。混炭決定部152は、混炭ルール記憶部142に記憶されている混炭ルール400(
図3)の優先度の高い品種の組合せから順に実施可能か否かを評価する。
【0070】
すなわち、混炭決定部152は、まず、混炭ルール400(
図3)の優先度「1」の品種の組合せについて、実施可能か否かを評価する。混炭ルール400(
図3)の優先度「1」の組合せは、品種COa,COb,COdを比率2:2:1で混合する。混炭決定部152は、
図9のサイロ状況300では品種COdを貯炭するサイロがないので、優先度「1」の組合せは実施不可能と評価する。
【0071】
次に、混炭決定部152は、混炭ルール400(
図3)の優先度「2」の品種の組合せについて、実施可能か否かを評価する。混炭ルール400(
図3)の優先度「2」の組合せは、品種COa,COb,COcを比率2:1:1で混合する。混炭決定部152は、
図9のサイロ状況300では、品種COaを貯炭するサイロSI2、品種CObを貯炭するサイロSI3,SI4、品種COcを貯炭するサイロSI5があるので、優先度「2」の組合せは実施可能と評価する。その結果、混炭決定部152は、優先度「2」の組合せを混炭情報として決定する。
【0072】
なお、品種CObを貯炭するサイロSI3,SI4が2個あるので、混炭決定部152は、それぞれのアンロード完了時刻欄307を比較する。サイロSI3のアンロード完了時刻欄307には、アンロード完了時刻が記入されている。一方、サイロSI4のアンロード完了時刻欄307には、アンロード完了時刻が記入されておらず、現在、船からのアンロードを受入れ中である。そこで、混炭決定部152は、貯炭日数のより長いサイロSI3に貯蔵されている石炭を用いると決定する。混炭決定部152は、決定した混炭情報をサイロ払出し速度計算部153に通知する。
【0073】
上述のように、現在のボイラBO1の石炭消費速度は、払出し速度の合計である「400」である。この情報は、基礎情報500(
図2)のカレンダー情報800に記載されている。また、通知された混炭情報では、品種COa,COb,COcが比率2:1:1で混合される。そこで、サイロ払出し速度計算部153は、通知された混炭情報と、カレンダー情報800とに基づき、サイロSI2のサイロ払出し速度を「200」と算出し、サイロSI3のサイロ払出し速度を「100」と算出し、サイロSI5のサイロ払出し速度を「100」と算出する。サイロ払出し速度計算部153は、それぞれのサイロ払出し速度を物流状況更新部155に通知する。
【0074】
物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI2の、払出し速度欄305を「200」に更新し、送炭先ボイラ欄308を「BO1」に更新する。また、物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI3の、払出し速度欄305を「100」に更新し、送炭先ボイラ欄308を「BO1」に更新する。また、物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI5の払出し速度欄305を「100」に更新する。
【0075】
次に、
図10、
図11のシミュレーション時刻は、
図4、
図5から25時間後、つまり
図8、
図9から5時間後の10月6日11時である。以下では、上記と同様に、
図8、
図9からの更新時間間隔を5時間として、各値の計算結果が説明される。
【0076】
アンロード中の船SH2の積載量は、式(1)により、
max(10000-2000×5,0)
=0
となる。このため、物流状況更新部155は、
図10の船状況200において、船SH2の、アンロード完了時刻欄203を「10月6日11時」に更新し、積載量欄205を「0」に更新し、アンロード速度欄206を「0」に更新する。
【0077】
受入れ中のサイロSI4の在庫量は、式(2)により、
min(20000+2000×5,30000)
=30000
となり、サイロSI4の容量(
図2の容量欄702)に一致する。このため、物流状況更新部155は、
図11のサイロ状況300において、サイロSI4の、在庫量欄303を「30000」に更新し、受入速度欄304を「0」に更新し、アンロード完了時刻欄307を「10月6日11時」に更新する。
【0078】
払い出し中のサイロSI2の在庫量は、式(3)により、
max(30000-200×5,0)
=29000
となり、払い出し中のサイロSI3の在庫量は、式(3)により、
max(30000-100×5,0)
=29500
となり、払い出し中のサイロSI5の在庫量は、式(3)により、
max(12000-100×5,0)
=11500
となる。
【0079】
そこで、物流状況更新部155は、
図9のサイロ状況300において、サイロSI2の在庫量欄303を「29000」に更新し、サイロSI3の在庫量欄303を「29500」に更新し、サイロSI5の在庫量欄303を「11500」に更新する。
【0080】
図12は、シミュレーション結果の表示例を概略的に示す図である。
図12では、各サイロの在庫量の推移をディスプレイ110に表示する例が示されている。
【0081】
折れ線AS1は、サイロSI1の在庫量を表す。サイロSI1の在庫量は、上述のように、シミュレーション開始時に5000トンであって、250トン/時で払出しが継続されてシミュレーション開始から20時間後にゼロになっている。
【0082】
折れ線AS2は、サイロSI2の在庫量を表す。サイロSI2の在庫量は、上述のように、シミュレーション開始時に30000トンであって、シミュレーション開始から20時間後に200トン/時で払出しが開始されて減少している。
【0083】
折れ線AS3は、サイロSI3の在庫量を表す。サイロSI3の在庫量は、上述のように、シミュレーション開始時に10000トンであって、アンロードが継続されてシミュレーション開始から10時間後に30000トンになり、20時間後に100トン/時で払出しが開始されて減少している。
【0084】
折れ線AS4は、サイロSI4の在庫量を表す。サイロSI4の在庫量は、上述のように、シミュレーション開始時にはゼロであって、10時間後にアンロードが開始され、20時間後に30000トンになってアンロードが完了している。
【0085】
折れ線AS5は、サイロSI5の在庫量を表す。サイロSI5の在庫量は、上述のように、シミュレーション開始時に15000トンであって、150トン/時で払出しが継続され、シミュレーション開始から20時間後に払出し速度が100トン/時に低下して払出しが継続され、減少している。
【0086】
(第1実施形態の動作)
図13、
図14は、それぞれ、第1実施形態の物流状況管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。
図13、
図14の動作は、例えば入力部120を用いてユーザによりシミュレーション開始が指示されると、開始される。
【0087】
ステップS1000において、例えばユーザが入力部120を用いて、基礎情報500(
図2)を基礎情報記憶部143に登録する。また、初期状態として、シミュレーション時刻の初期値900(
図2)における状態が、物流状況記憶部141に設定される。この初期状態は、シミュレーション時刻の初期値900が、前回のシミュレーション時刻の最終時刻と同じであれば、その最終時刻の状態が、物流状況記憶部141に自動的に設定されてもよい。代替的に、ユーザが入力部120を用いて、シミュレーション時刻の初期値900(
図2)における状態を物流状況記憶部141に設定してもよい。
【0088】
ステップS1005において、シミュレーション時刻が初期値に設定されて、シミュレーションが開始される。第1実施形態では、上述のように、シミュレーション時刻の初期値は、2017年10月5日10時である。
【0089】
ステップS1010において、物流状況更新部155は、物流状況記憶部141のサイロ状況300における在庫量欄303(例えば
図5)の値を更新する。例えば石炭を受け入れ中のサイロについては、物流状況更新部155は、上記式(2)により算出した値で在庫量欄303の値を更新すればよい。例えば石炭を払出し中のサイロについては、物流状況更新部155は、上記式(3)により算出した値で在庫量欄303の値を更新すればよい。
【0090】
ステップS1015において、物流状況更新部155は、物流状況記憶部141の船状況200におけるアンロード中の船の積載量欄205(例えば
図4)の値を、上記式(1)により算出した値で更新する。
【0091】
ステップS1020において、アンロード判断部151は、ステップS1015で更新されたアンロード中の船の積載量欄205(例えば
図4)の値が、ゼロになったか否かを判断する。アンロード中の船の積載量欄205の値がゼロになっていれば(ステップS1020でYES)、処理はステップS1025に進む。一方、アンロード中の船の積載量欄205の値がゼロになっていなければ(ステップS1020でNO)、処理はステップS1030に進む。ステップS1025において、アンロード判断部151は、アンロード中であった船からの石炭のアンロードが完了したと判断し、その旨を物流状況更新部155に通知する。
【0092】
ステップS1030において、アンロード判断部151は、石炭を受け入れ中のサイロの在庫量が上限(つまり容量)に達し、かつ、アンロード中の船の積載量がゼロを超えている(つまり船にまだ石炭が残っている)か否かを判断する。石炭を受け入れ中のサイロの在庫量が上限に達し、かつ、アンロード中の船の積載量がゼロを超えていれば(ステップS1030でYES)、処理はステップS1035に進む。一方、石炭を受け入れ中のサイロの在庫量が上限に達していない、又は、アンロード中の船の積載量がゼロであれば(ステップS1030でNO)、処理はステップS1100に進む。
【0093】
ステップS1035において、アンロード判断部151は、空のサイロにアンロード先を変更する。アンロード判断部151は、基礎情報記憶部143に記憶されている基礎情報500のカレンダー情報800(
図2)を参照して、現在のシミュレーション時刻におけるアンロード能力を確認する。アンロード判断部151は、アンロード速度を、確認したアンロード能力に決定する。アンロード判断部151は、変更したアンロード先及び決定したアンロード速度を、物流状況更新部155に通知する。
【0094】
図14のステップS1100において、混炭決定部152は、ステップS1010で更新された物流状況記憶部141のサイロ状況300の在庫量欄303の値から、払出し中のサイロのうち少なくとも1つの在庫量がゼロになったか否かを判断する。払出し中のサイロのうち少なくとも1つの在庫量がゼロになっていれば(ステップS1100でYES)、処理はステップS1105に進む。一方、払出し中のサイロの全ての在庫量がゼロになっていなければ(ステップS1100でNO)、処理はステップS1110に進む。
【0095】
ステップS1105において、混炭決定部152は、混炭ルール記憶部142に記憶されている混炭ルール400(
図3)を参照し、優先度欄401における優先度の順に、新たな混炭情報を決定する。混炭決定部152は、決定した混炭情報を、物流状況更新部155及びサイロ払出し速度計算部153に通知する。サイロ払出し速度計算部153は、通知された混炭情報に基づき、サイロ払出し速度を算出する。サイロ払出し速度計算部153は、算出したサイロ払出し速度を物流状況更新部155に通知する。
【0096】
なお、ステップS1105では、混炭決定部152は、サイロ払出し速度計算部153により算出されたサイロ払出し速度と、基礎情報記憶部143に記憶されている基礎情報500のカレンダー情報800(
図2)の、現在のシミュレーション時刻におけるサイロ払出し能力とを比較する。
【0097】
算出されたサイロ払出し速度がサイロ払出し能力以下であれば、混炭決定部152は、決定した混炭情報を変更しない。一方、算出されたサイロ払出し速度がサイロ払出し能力を超えていれば、混炭決定部152により決定された混炭情報に従ってボイラBO1に石炭を供給することができない。そこで、混炭決定部152は、再び、混炭ルール記憶部142に記憶されている混炭ルール400(
図3)を参照し、優先度欄401における優先度の順に、新たな混炭情報を決定する。
【0098】
このように、ステップS1105では、混炭決定部152による混炭情報の決定と、サイロ払出し速度計算部153によるサイロ払出し速度の算出とが、繰り返されて、ボイラBO1に供給可能な混炭情報及びサイロ払出し速度が決定される。
【0099】
ステップS1110において、アンロード判断部151は、新規のアンロードを開始可能であるか否かを判断する。新規のアンロードを開始可能であれば(ステップS1110でYES)、処理はステップS1115に進む。一方、新規のアンロードを開始可能でなければ(ステップS1110でNO)、処理はステップS1120に進む。
【0100】
ステップS1115において、アンロード判断部151は、空のサイロにアンロード先を決定する。アンロード判断部151は、基礎情報記憶部143に記憶されている基礎情報500のカレンダー情報800(
図2)を参照して、シミュレーション時刻におけるアンロード能力を確認する。アンロード判断部151は、アンロード速度を、確認したアンロード能力に決定する。アンロード判断部151は、決定したアンロード先及びアンロード速度を、物流状況更新部155に通知する。
【0101】
ステップS1120において、物流状況更新部155は、各部から通知された内容に基づき、物流状況記憶部141の記憶内容を更新する。なお、物流状況更新部155は、各部からの通知ごとに、物流状況記憶部141の記憶内容を更新してもよい。その場合、ステップS1120は省略される。
【0102】
ステップS1125において、シミュレーション時刻更新部154は、シミュレーションを終了するか否かを判断する。シミュレーションが終了しない場合には(ステップS1125でNO)、処理はステップS1130に進む。一方、シミュレーションが終了する場合には(ステップS1125でYES)、処理はステップS1135に進む。
【0103】
ステップS1130において、シミュレーション時刻更新部154は、更新時間間隔(第1実施形態では、例えば1分間)、シミュレーション時刻を進める。その後、処理はステップS1010に戻る。ステップS1135において、表示制御部156は、例えば
図12に示されるように、シミュレーションの結果をディスプレイ110に表示する。その後、
図14の動作は終了する。
【0104】
(第1実施形態の効果)
以上説明されたように、第1実施形態では、混炭ルール記憶部142に記憶されている混炭ルール400は、石炭の品種欄411,421,431及び比率欄412,422,432に加えて、優先度欄401を備え、混炭決定部152は、優先度欄401の優先度の順に、品種の組合せ及び比率がボイラBO1に供給可能か否かを判定している。優先度欄401の優先度は、燃焼性、燃焼後の灰の品質、環境に対する負荷、コスト等の観点を考慮して、優先的に使用する度合いを表す。したがって、第1実施形態によれば、最も望ましい品種の組合せ及び比率を、ボイラBO1に供給する混炭情報として決定することができる。
【0105】
また、第1実施形態では、シミュレーション時刻の更新ごとに、物流状況更新部155によって、サイロSI1~SI5の在庫量が更新され、サイロSI1~SI5の在庫量がゼロになると、混炭決定部152によって、新たな混炭情報が決定されている。したがって、第1実施形態によれば、サイロSI1~SI5からボイラBO1への石炭供給スケジュールを迅速に作成することが可能になっている。
【0106】
また、第1実施形態では、石炭を運搬する船SH1~SH4の到着予定時刻と、サイロSI1~SI5の容量とが、予め基礎情報記憶部143に記憶され、サイロSI1~SI5の在庫量が、シミュレーション時刻の更新ごとに、物流状況記憶部141に記憶されている。したがって、第1実施形態によれば、船SH1~SH4が到着し、かつサイロSI1~SI5の1つが空になって、アンロードが開始可能となる時刻を事前に知ることができ、船SH1~SH4からサイロSI1~SI5へのアンロード計画を迅速に作成することができる。また、サイロSI1~SI5の1つが空になるまで船SH1~SH4を待たせるなどの現実的な計画を作成することが可能になる。
【0107】
また、第1実施形態では、シミュレーション時刻の更新時間間隔は、例えば1分間であり、ユーザが入力部120を用いて任意の値に設定することが可能になっている。設定された更新時間間隔は、予めメモリ130に変更可能に保存されている。したがって、第1実施形態によれば、シミュレーション時刻の更新時間間隔を変更することができ、更新時間間隔が1日の場合に比べて、より細かく設定することができる。その結果、第1実施形態によれば、より詳細な石炭供給スケジュール又はアンロード計画を作成することができる。例えば1日の途中で物流状況が切り替わった場合でも、第1実施形態の石炭物流状況管理装置100は、対処することができる。
【0108】
(第2実施形態の構成)
図15は、第2実施形態における石炭物流状況管理装置100Aの構成例を概略的に示すブロック図である。第2実施形態における石炭物流状況管理装置100Aは、第1実施形態と同様に、例えば
図21に示される火力発電所の物流システムにおける石炭の物流状況を管理する。
【0109】
石炭を運搬する船には,専用船とスポット船との2種類がある。スポット船は、石炭の需要家が、石炭の積み込み地から石炭のアンロード地まで1回の運搬のみを対象に船主と契約した船である。専用船は、石炭の需要家が、長期間に亘って使用することを船主と契約した船であり、石炭の積み込み地と石炭のアンロード地との間を継続して往復する。
【0110】
石炭を運搬してきた船が石炭のアンロード地に到着しても、石炭のアンロード地に設置されているサイロの空きが無い場合、他の船と荷役のタイミングが重なった場合などには、滞船時間が想定以上に長くなってしまう。石炭の積み込み地と石炭のアンロード地との間を継続して往復する専用船に、このような事態が発生すると、次回以降の航海にその影響が伝搬し、当初の配船計画で決定されていた到着予定時刻から大きく遅れて石炭のアンロード地に到着することがある。そのため、例えば
図21に示される火力発電所での石炭物流計画の作成においては、石炭のアンロード地における専用船の滞船時間に基づいて配船計画を更新しつつ、石炭のサイロへのアンロード、石炭のサイロからの払出し等を決定する必要がある。
【0111】
図15の石炭物流状況管理装置100Aは、例えばパーソナルコンピュータで構成される。
図15に示されるように、石炭物流状況管理装置100Aは、ディスプレイ110、入力部120、メモリ130A、記憶装置140A、CPU150Aを備える。メモリ130Aは、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ130Aは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。メモリ130AのROMは、CPU150Aを動作させる第2実施形態の制御プログラムを記憶する。
【0112】
記憶装置140Aは、例えばハードディスク又は半導体メモリ等により構成される。記憶装置140Aは、物流状況記憶部141、混炭ルール記憶部142、基礎情報記憶部143Aを含む。各記憶部141,142,143Aは、互いに別の媒体で構成されてもよい。代替的に、各記憶部141,142,143Aは、記憶領域が分けられた一つの媒体で構成されてもよい。基礎情報記憶部143Aの記憶内容は、
図2、
図16を用いて、次に説明される。
【0113】
図16は、基礎情報記憶部143Aに予め記憶されている基礎情報500Aのうち船情報600Aを概略的に示す図である。基礎情報500Aは、船情報600Aと、サイロ情報700(
図2)と、カレンダー情報800(
図2)と、シミュレーション時刻の初期値900(
図2)とを備える。
【0114】
船情報600Aは、船識別情報欄601と、到着予定時刻欄602と、品種欄603と、運搬量欄604と、出発予定時刻欄605とを含む。出発予定時刻欄605は、対応する船のバースBT(後述の
図17、
図18)からの出発予定時刻を表す。
【0115】
図16において、船SH1は、専用船であり、船SH2,SH3,SH4は、スポット船である。すなわち、船SH1は、石炭の積み込み地と石炭のアンロード地(第2実施形態では、バースBT)とを継続して往復する。このため、船SH1については、往復ごとに、到着予定時刻欄602に、バースBTへの到着予定時刻が登録され、出発予定時刻欄605に、バースBTからの出発予定時刻が登録されている。
【0116】
図16の例では、品種COaの石炭を3万トン運搬する船SH1は、10月1日6時にバースBTに到着し、10月2日18時にバースBTを出発し、10月11日18時にバースBTに到着し、10月13日6時にバースBTを出発し、10月22日6時にバースBTに到着し、10月23日18時にバースBTを出発する予定になっている。なお、船情報600Aは、出発予定時刻欄605が付加されて、往復する船SH1の到着予定時刻及び出発予定時刻が付加されていること以外は、船情報600(
図2)と同じ内容にされている。第2実施形態において、基礎情報記憶部143Aは、運搬装置情報記憶部の一例に相当する。
【0117】
図15に戻って、CPU150Aは、メモリ130Aに記憶された第2実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、アンロード判断部151(アンロード完了判断部の一例に相当)、混炭決定部152、サイロ払出し速度計算部153、シミュレーション時刻更新部154、物流状況更新部155、表示制御部156、配船計画更新部157として機能する。
【0118】
配船計画更新部157(石炭運搬計画更新部の一例に相当)は、シミュレーション時刻において、専用船(第2実施形態では、船SH1)のアンロードが完了したとアンロード判断部151により判断されると、アンロード完了時刻(つまりアンロードが完了したと判断されたシミュレーション時刻)と、次の出発予定時刻との時間差ΔTを算出する。配船計画更新部157は、基礎情報記憶部143Aにおいて、記憶されている当該専用船(船SH1)の次の出発予定時刻及びそれ以降の到着予定時刻及び出発予定時刻に時間差ΔTを加算することにより、次の出発予定時刻及びそれ以降の到着予定時刻及び出発予定時刻を更新する。
【0119】
図17は、専用船である船SH1の当初の配船計画の一例を概略的に示す図である。
図18は、専用船である船SH1の更新後の配船計画の一例を概略的に示す図である。
図19は、基礎情報記憶部143Aに記憶されている更新後の船情報600Aを概略的に示す図である。
図17~
図19を用いて、配船計画の更新が説明される。
【0120】
図17、
図18の例では、バースBT(石炭のアンロード地の一例に相当)における標準滞船時間Ts1が1.5[日]、バースBTから石炭の積み込み地までの標準航海時間Tv1が3.5[日]、石炭の積み込み地における標準滞船時間Ts2が2.5[日]、石炭の積み込み地からバースBTまでの標準航海時間Tv2が3[日]に、それぞれ設定されている。
【0121】
この設定に従って、
図16に示される船SH1の到着予定時刻及び出発予定時刻が、基礎情報記憶部143Aに記憶されている。すなわち、最初の到着予定時刻Ta1(
図16では10月1日6時)の標準滞船時間Ts1(1.5日)後に、出発予定時刻Td1(
図16では10月2日18時)が設定されている。標準航海時間Tv1と、石炭の積み込み地における標準滞船時間Ts2と、石炭の積み込み地からバースBTまでの標準航海時間Tv2との合計である非滞船時間は、9[日]である。
【0122】
出発予定時刻Td1(
図16では10月2日18時)の合計時間(9日)後に、次の到着予定時刻Ta2(
図16では10月11日18時)が設定されている。到着予定時刻Ta2(
図16では10月11日18時)の標準滞船時間Ts1(1.5日)後に、次の出発予定時刻Td2(
図16では10月13日6時)が設定されている。出発予定時刻Td2(
図16では10月13日6時)の非滞船時間(9日)後に、その次の到着予定時刻Ta3(
図16では10月22日6時)が設定されている。到着予定時刻Ta3(
図16では10月22日6時)の標準滞船時間Ts1(1.5日)後に、その次の出発予定時刻(
図16では10月23日18時)が設定されている。
【0123】
上述のように、船情報600Aは、出発予定時刻欄605が付加されて、往復する船SH1の到着予定時刻及び出発予定時刻が付加されていること以外は、船情報600(
図2)と同じ内容にされている。したがって、船SH1からの石炭のアンロードが完了したとアンロード判断部151によって判断されたシミュレーション時刻(アンロード完了時刻)は、上記第1実施形態で説明され
図4に示されるように、10月3日7時である。
【0124】
配船計画更新部157は、アンロード完了時刻(10月3日7時)と、船SH1の当初の配船計画における出発予定時刻(
図16に示されるように10月2日18時)とを比較し、アンロード完了時刻の方が遅いので、時間差ΔTを算出する。この例では、ΔT=13[時間]である。配船計画更新部157は、
図18、
図19に示されるように、以降の、基礎情報記憶部143Aに記憶されている船情報600Aにおける船SH1の到着予定時刻欄602及び出発予定時刻欄605の登録内容を時間差ΔT(13時間)だけ遅らせて、更新する。
【0125】
具体的には、
図18において、配船計画更新部157は、当初の出発予定時刻Td1(
図16では10月2日18時)を出発予定時刻Ud1(
図19では10月3日7時)に更新する。この出発予定時刻Ud1は、船SH1からの石炭のアンロードが完了したと判断されたシミュレーション時刻(アンロード完了時刻)でもある。また、配船計画更新部157は、当初の到着予定時刻Ta2(
図16では10月11日18時)を到着予定時刻Ud2(
図19では10月12日7時)に更新し、当初の出発予定時刻Td2(
図16では10月13日6時)を出発予定時刻Ud3(
図19では10月13日19時)に更新し、当初の到着予定時刻Ta3(
図16では10月22日6時)を到着予定時刻Ud4(
図19では10月22日19時)に更新し、当初の出発予定時刻(
図16では10月23日18時)を出発予定時刻(
図19では10月23日8時)に更新する。
【0126】
したがって、以降は、船SH1の到着予定時刻欄602及び出発予定時刻欄605の登録内容が更新された船情報600Aを用いて、シミュレーションが継続される。なお、配船計画更新部157は、アンロード完了時刻と出発予定時刻とを比較したときに、アンロード完了時刻の方が早い場合には、船情報600Aにおける船SH1の到着予定時刻欄602及び出発予定時刻欄605の登録内容を更新せずに当初の内容を維持してもよい。
【0127】
(第2実施形態の動作)
図20は、第2実施形態の物流状況管理装置の動作を概略的に示すフローチャートである。
図20の動作は、例えば入力部120を用いてユーザによりシミュレーション開始が指示されると、開始される。なお、
図20に引き続いて実行される動作は、上記
図14と同じである。
【0128】
図20において、ステップS1000~S1025は、上記
図13に示されるステップS1000~S1025と同じである。ステップS1025に続くステップS2000において、配船計画更新部157は、アンロード中であった船からの石炭のアンロードが完了したとステップS1025でアンロード判断部151により判断された船が、専用船の場合には、アンロード完了時刻と次の出発予定時刻とを比較する。そして、配船計画更新部157は、アンロード完了時刻の方が遅い場合には、船情報600Aにおけるアンロードが完了した専用船(第2実施形態では、船SH1)の到着予定時刻欄602及び出発予定時刻欄605における次の出発予定時刻及びそれ以降の登録内容を更新する。続くステップS1030~S1035は、上記
図13に示されるステップS1030~S1035と同じである。
【0129】
(第2実施形態の効果)
以上説明されたように、第2実施形態では、石炭のアンロードが完了したと判断された船が、専用船の場合には、アンロード完了時刻と次の出発予定時刻とが比較され、アンロード完了時刻の方が遅い場合には、船情報600Aにおけるアンロードが完了した船SH1の到着予定時刻欄602及び出発予定時刻欄605における次の出発予定時刻及びそれ以降の登録内容が更新される。したがって、以降は、更新後の到着予定時刻を用いて、シミュレーションが実行される。このため、第2実施形態によれば、専用船SH1のバースBTにおける滞船時間が想定以上に延びた場合でも、専用船SH1の次の航海への影響を考慮した、石炭物流計画を作成することができる。その結果、より正確に石炭物流状況を管理することが可能になる。
【0130】
(変形された実施形態)
(1)上記第1実施形態では、1個のボイラBO1が設けられているが、これに限られず、複数のボイラが設けられていてもよい。この場合には、CPU150は、サイロSI1~SI5から石炭を供給する供給先のボイラを、複数のボイラから決定すればよい。
【0131】
(2)上記第1実施形態の
図14のステップS1125において、シミュレーション時刻更新部154は、物流状況更新部155により更新されたサイロの在庫量が全てゼロになると、シミュレーションを終了すると判断してもよい。代替的に、シミュレーション時刻更新部154は、混炭決定部152により、混炭の可能な組合せが無いと判断されると、シミュレーションを終了すると判断してもよい。さらに代替的に、シミュレーション時刻更新部154は、ユーザが入力部120を用いてシミュレーションの終了を指示すると、シミュレーションを終了すると判断してもよい。
【0132】
(3)上記第1実施形態の
図12では、シミュレーションの結果出力として、各サイロSI1~SI5の在庫量の推移が折れ線グラフでディスプレイ110に表示されているが、これに限られない。例えば、船SH1~SH4の石炭の積載量の推移がディスプレイ110に表示されてもよい。例えば、折れ線グラフに代えて、棒グラフで、在庫量又は積載量の推移が表示されてもよい。
【符号の説明】
【0133】
100,100A 石炭物流状況管理装置
141 物流状況記憶部
142 混炭ルール記憶部
143,143A 基礎情報記憶部
150,150A CPU
151 アンロード判断部
152 混炭決定部
153 サイロ払出し速度計算部
154 シミュレーション時刻更新部
155 物流状況更新部
157 配船計画更新部
SH1~SH4 船
SI1~SI5 サイロ