(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】少なくとも一つの振動可能に取り付けられた物体の機械的結合のための装置及び方法、並びに可変調節可能な減衰要素としてのその使用法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20220119BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20220119BHJP
F16F 15/027 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/04 A
F16F15/027
(21)【出願番号】P 2018507510
(86)(22)【出願日】2016-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2016069239
(87)【国際公開番号】W WO2017029217
(87)【国際公開日】2017-02-23
【審査請求日】2019-03-08
(31)【優先権主張番号】102015215554.4
(32)【優先日】2015-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンスマン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルター,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ザイペル,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】カール,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヘーロルト,スヴェン
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-125027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014808(US,A1)
【文献】特開2005-240318(JP,A)
【文献】特表2011-502867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0121444(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009047134(DE,A1)
【文献】特開2003-336683(JP,A)
【文献】特開2011-106515(JP,A)
【文献】特開平06-341489(JP,A)
【文献】特開2002-310238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16F 1/12
B60G 1/00- 99/00
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の力経路(K1)に沿って振動可能に取り付けられた物体(1)と静止している物体(2)との機械的結合のための装置であって、前記第1の力経路(K1)に沿って少なくとも一つのばね硬さを可変調節可能な剛性体(9’)が組み込まれる、装置において、 振動数に依存しない減衰特性を有する減衰要素(7’)が、前記第1の力経路(K1)に沿って前記ばね硬さを可変調節可能な剛性体(9’)に直接的に又は間接的に直列に結合され、前記第1の力経路(K1)に平行に通る第2の力経路(K2)を介して、両方の物体(1、2)が、直接的に、機械的に結合され、前記第2の力経路(K2)に沿って少なくとも一つのばね硬さを可変調節可能な剛性体(9”)が組み込まれており、
前記減衰要素(7’)の前記減衰特性と前記ばね硬さを可変調節可能な各剛性体(9’、9”)とが、互いに協調しており、機械的結合のための前記装置に割り当てられた減衰特性を、前記可変調節可能な剛性体(9’、9”)のばね硬さだけによって変えることができるような態様で構成されており、
前記第1及び第2の力経路のそれぞれに沿って配置される前記ばね硬さを可変調節可能な剛性体は、純粋に機械的な結合システムを使用して実装されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記減衰要素(7’)が、第1の硬い連結構造体を介して前記第1の力経路に沿って、前記ばね硬さを可変調節可能な剛性体(9’)に機械的に結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ばね硬さを可変調節可能な各剛性体(9’、9”)が、不連続な剛性のステップで、又は連続的に、可変調節可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ばね硬さを可変調節可能な各剛性体(9’、9”)のばね硬さを調節するアクチュエータが提供されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記二つの物体(1、2)間の相対的な位置変化を記録するためのセンサ(17)が提供されることと、
前記剛性をアクチュエータによって調節することができ、その結果、調節可能な減衰システムの減衰挙動及び剛性挙動を調整することができるように、前記アクチュエータを作動させる閉ループ又は開ループ制御が提供されることとを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
力センサ(27)が、前記第1及び第2の力経路に沿って作用する力の合計を前記力センサが記録するような態様で、二つの物体(1、2)間に提供されることと、
前記剛性をアクチュエータによって調節することができ、その結果、調節可能な減衰システムの減衰挙動及び剛性挙動を調整することができるように、前記アクチュエータを作動させる閉ループ又は開ループ制御が提供されることとを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記減衰要素(7’)がエラストマであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の力経路(K2)に沿って配置された少なくとも前記ばね硬さを可変調節可能な剛性体(9”)が、少なくとも、ばね硬さが可変調節可能である弾性変形可能なばね要素を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
互いに移動可能に取り付けられた前記二つの機械的に結合された物体間の可変調節可能な減衰要素として請求項1から8のいずれか一項に記載された前記装置の使用法であって、
前記装置の減衰挙動が、前記ばね硬さを可変調節可能な各剛性体のばね硬さを変えることによって可変調節可能であることを特徴とする、使用法。
【請求項10】
力経路に沿った少なくともばね硬さを可変調節可能な剛性体を介して、機械的に結合された二つの物体間の機械的結合に影響を与えるための方法であって、
振動数に依存しない減衰特性を有する減衰要素が、前記第1の力経路に沿って前記ばね硬さを可変調節可能な剛性体に直接的に又は間接的に直列に結合され、前記第1の力経路に平行に通る第2の力経路を介して、両方の物体が、直接的に、機械的に結合され、前記第2の力経路に沿って少なくとも一つのばね硬さを可変調節可能な剛性体が組み込まれており、
前記機械的結合の前記減衰特性に可変に影響を与えるために、前記第1の及び/又は前記第2の力経路に沿った前記剛性体のばね硬さだけが変えられること、を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の力経路に沿って振動可能に取り付けられた物体と静止体との機械的結合のための装置及び方法であって、第1の力経路に沿って少なくとも一つの可変調節可能な剛性体が組み込まれる、装置及び方法に関する。さらに、可変調節可能な減衰特性及び剛性特性を有する減衰要素としての前述の装置の使用法が、説明される。
【背景技術】
【0002】
一般的な装置は、好ましくは機械工学、車両及び装置構築において機械的ベアリングとして使用されており、その動的特性の結果、それらの装置は、ベアリングを介して少なくとも一つの第2の物体に機械的に結合された移動可能に取り付けられた物体の移動又はバイブレーション挙動に影響を与えることができる。用語「移動可能に取り付けられた物体」は、第2の物体に相当する静止支持構造体に、通常は移動可能に、又は好ましくは振動可能に取り付けられた任意の構成要素、構成要素のグループ、構造体、又は構成要素として理解されるものとする。少なくとも移動可能に取り付けられた物体の移動に影響を与えることを目的として、ベアリングは減衰特性を有しており、その減衰特性によって、移動可能な物体の物体移動は、その移動方向とは反対に向かう力によって制動される。この力は、ベアリングを介して互いに機械的に結合された両方の物体の関連移動速度に依存し、互いに対して移動している二つの物体系(body system)からエネルギーを抽出することができ、それによりエネルギーが散逸する。減衰効果について少し述べると、減衰ベアリングの技術的な構築構成に応じて、発現する減衰効果は異なる物理的作用機序に基づいており、その作用機序は、例えば表面間での摩擦、又は流体内での摩擦、又は弾性材料内での摩擦などである。
【0003】
二つの物体間の機械的結合の減衰ベアリング特性に加えて、機械的結合の弾性変形に対する抵抗力を示すその剛性によって、機械的結合をさらに特徴付けることができる。剛性によって復元力が生じ、復元力は、外部から作用する力から始まる、機械的結合の弾性特性に依存する。
【0004】
したがって、機械的結合を介して移動可能に取り付けられた物体のすべての動的特性の影響を記述するためには、機械的結合の剛性特性とさらに減衰特性の両方を考慮することが必要である。機械的結合の構成に応じて、減衰特性又は剛性特性が優位になり得る。
【0005】
例えば二つの物体が機械的片持ち梁を介して相互連結される場合、この機械的結合は、間違いなく片持ち梁の剛性によって実質的に特徴付けられる。これらの片持ち梁は、基本的に減衰特性も有するが、これらの発現は非常に少ない程度に過ぎず、これらは例えば、片持ち梁の変形中の材料固有の摩擦効果に起因するか、又は振動する片持ち梁が露出される空気抵抗に起因するものである。また、起こり得る音の放出がバイブレーション減衰に寄与することもある。
【0006】
例えばこれと比較して、油圧流体によって部分的に満たされる、スロットル開口を介して流体連通している二つのチャンバを典型的には提供する油圧ダンパーでは、ダンパーシステムになお固有の剛性と比較して、減衰特性の方が優位になり、これは、構造上、構成要素及び流体に固有の剛性に起因している。
【0007】
さらなる考察及び説明は、システムに固有の結合剛性よりも減衰の方が優位である動的結合特性を有する二つの物体間の機械的結合を対象とする。
【0008】
最初に説明したように、減衰要素として設計された二つの物体間の機械的結合は、その減衰要素によって相互連結された相対的に移動可能な物体から運動エネルギーを抽出する速度依存性の力によって特徴付けることができ、結果的には、最終的にいずれの事例においても、移動可能な物体が、静止して取り付けられた物体に対して静止するようになる。
【0009】
機械的に結合された物体の使用目的に応じて、減衰力と移動速度との関係を変える、つまり減衰特性を可変調節することが、有利であり得る。
【0010】
可変調節可能な減衰特徴を有する減衰要素は、例えばそれ自体知られている油圧又は空気圧の減衰要素を形成し、その減衰要素は流体が流れるチャネルを含み、そのチャネルの断面が可変調節可能である。この連結においてDE 3721811 A1から推論されるのは、スロットル開口が貫通している液体で満たされた二つのチャンバ間に、分離壁が配置されている油圧減衰を有するエンジンベアリングである。スロットル開口の領域に、さらに穿孔スクリーンが設けられ、その開口幅は、信号により作動可能な調節装置によって最小寸法から最大寸法まで調節可能である。
【0011】
減衰の可変調節についての別の原理は、DE 102 14 325 A1から推論することができ、これには、いわゆるオーバーフローチャネルによって相互に流体連通している二つの別々の流体チャンバを提供する油圧ベアリングが記述されている。オーバーフローチャネルに沿って、磁力により補助される双方向に偏向可能な磁気ピストン配置が導入され、その磁気ピストン配置は、偏向に応じて、オーバーフローチャネルの内側の、第1の近似による圧縮不可能な流体に沿って、さらなる力効果を加えることができ、それにより油圧ベアリングの減衰特性に能動的に影響を与えることができる。
【0012】
流体を含むすべての減衰システムは、流体を封止する手段が必要であることから、構築及びコストに関する多くの費用が必要である。加えて、そのような流体に基づく減衰要素は、振動可能に取り付けられるという意味で移動可能である減衰システムに作用する物体の増大したバイブレーション数に伴って、動的剛性が増大されることになる。
【0013】
さらに、流体の粘度を変え、これに関連してチャンバシステムに封入された流体の流れ抵抗を変えることによって、その減衰特性を調整可能である流体ベースの減衰要素が知られている。この目的のために、電界又は磁界との相互作用によってその粘性が可変である電気粘性流体又は磁気粘性流体が使用される。流体に依存した封止を理由にすでに述べた構築に係る費用に加えて、電気粘性流体及び磁気粘性流体は、さらに導電性粒子又は磁性粒子の沈降という問題を有する。さらにこの場合も、高い振動数に向かって動的剛性が増大するという問題がある。
【0014】
ハイシッヒ(Heissing)らによる技術本の記事、「Fahrwerkhandbuch」第4版、2013年、75ページ以降、ISBN 978-3-658-01991-4では、自動車のバイブレーションダンパーの設計が推論され、それは、ダンパー設計についての、硬い安全な減衰と柔らかく快適な減衰との間の最適な妥協点を目指すものである。この目的のために、ホイールサスペンションは、二つの別々の力経路を介して本体に連結され、第1の力経路に沿って、ダンパー要素がホイールと直列に配置され、第2の力経路に沿って、ばね剛性が提供される。
【0015】
文献EP 2 615 325 A1は、二つの物体間に二つの平行な力経路を提供する能動ベアリングを記述している。第1の力経路に沿って、調節可能な減衰要素、弾性変形可能な要素、伝動ユニット、及び線形アクチュエータが直列に並んで提供され、それらは第2の力経路に平行に配置されており、その第2の力経路に沿って、弾性支持要素が配置される。
【0016】
文献DE 10 2009 047 134 A1は、車両のホイールと車両の本体との間に配置されたばねシステムを有する車両用のホイールサスペンションを開示しており、そのホイールサスペンションは、調節装置によってそのばね剛性が調節可能であるばね要素を有する。
【0017】
文献DE 10 2009 015 166 A1は、その減衰及び剛性の変動に対する自動車用適合性アセンブリベアリングを記述している。ダンパーユニット及び剛性体を両方とも調節するために、アクチュエータが設けられている。
【0018】
文献DE 10 2008 057 577 A1は、少なくとも一つの支持体の作用によってその拡張性に影響を与えることができるばね/ダンパー物体を有するエラストマベアリングを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、第1の力経路に沿って振動可能に取り付けられた物体と静止している物体との機械的結合のための装置であって、第1の力経路に沿って少なくとも一つの可変調節可能な剛性体が組み込まれる、装置を、二つの物体を機械的に連結している結合の優位な減衰特性が、機械的結合の剛性に対して可変である、すなわち個々に調節可能であるような態様で、さらに発展させることであり、各事例において調節される減衰挙動は、大半の振動数範囲にわたって、特に高振動数において一定のままである、又は主に一定のままである。本解決策による装置は、さらに機械的に単純であり、費用効果的であり、可能な限り維持が容易であり、それにより特に流体ベースの減衰システムが省かれる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の基礎を形成する目的の解決策は、請求項1に明示される。装置の好ましい使用法は、請求項10の主題である。装置の動作モードの基礎を形成する全体的な手順は、請求項12の主題である。本発明の概念を有利な態様でさらに発展させる特徴は、従属請求項の主題であり、具体的な例示的実施形態を参照したさらなる記述から推論することができる。
【0021】
第1の力経路に沿って可変調節可能な剛性体を介して機械的に結合された二つの物体のうちの少なくとも一つの移動可能に取り付けられた物体の動的特性に影響を与えるための解決策による装置は、一定の減衰特性を有する減衰要素が、第1の力経路に沿って可変調節可能な剛性体に直接的に又は間接的に直列に連結されることによって特徴付けられる。両方の物体は、第1の力経路に平行に通る第2の力経路を介して直接的に又は間接的に、機械的に結合されており、この第1の力経路に沿って少なくとも一つの調節可能な剛性体が組み込まれ、減衰要素の減衰特性と、調節可能な剛性体とが互いに協調しており、機械的結合のための装置に割り当てられた減衰特性を、調節可能な剛性体だけによって変えることができるような態様で構成されている。
【0022】
各事例において第1及び第2の力経路に沿って配置される可変調節可能な剛性体は、好ましくは、純粋に機械的な結合システムだけを使用して実装され、それにより、動的特性を有する説明した流体ベースの油圧又は空気圧要素において以前から存在する問題などの封止問題がなくなる。このことは、可変調節可能な剛性体だけを変えることによってその減衰挙動が可変調節可能である可変調節可能な減衰システムの新しいタイプの可能性を切り開くものである。
【0023】
好ましい実施形態において、減衰要素としてエラストマが使用される場合、本解決策による装置は、その減衰挙動が質的にはエラストマの減衰挙動に主に対応する可変調節可能な減衰を有し、つまり振動可能に取り付けられた物体の振動数が高振動数において変化するときでも、減衰挙動は事前定義された減衰で主に一定のままである。言い換えれば、本解決策による装置は、主に振動数に依存しないエラストマの減衰特徴を、ほぼ理想的な態様でシミュレートし、減衰の程度は、装置に含まれる減衰要素を全く変えることなく、可変調節可能な剛性体を用いて可変調節可能である。具体的な例示的実施形態を参照する以下の説明によって示されるように、本解決策による装置は、可変調節可能な減衰挙動を有し、つまり、損失角とも称される特定の減衰値又は減衰の程度をそれぞれに設定した後、大半の振動数範囲にわたって減衰又は損失角が一定のままである。
【0024】
上記で説明した装置の基礎を形成する本解決策による発見は、力経路に沿って少なくとも可変調節可能な剛性体を介して機械的に結合された二つの物体のうちの少なくとも一つの移動可能に取り付けられた物体の動的特性に影響を与えるための解決策による方法にも反映され、少なくとも一つの力経路に沿った機械的結合の動的特性に影響を与える少なくとも一つの減衰要素は、その一つの力経路に沿って、又は、二つの物体を互いに機械的に結合する少なくとも一つの他の力経路に沿って組み込まれており、その減衰特性は機械的結合の動的特性で優位にある。したがって、これは、減衰特性によって優位に特徴付けられ得る第1と第2の物体間の機械的結合である。本解決策によれば、減衰挙動に影響を与えるために使用されるのは少なくとも一つの減衰要素ではなく、一つの力経路に沿った剛性体だけを変えて、機械的結合の減衰特性に可変に影響を与える。
【0025】
この理由のために、互いに移動可能に取り付けられた二つの物体間の、本解決策により構成される機械的結合は、可変調節可能な剛性体を変えることによって事前定義された態様でその減衰挙動を調節可能である可変調節可能な減衰要素として、好適である。
【0026】
さらなる詳細は、以下の例示的実施形態を参照するさらなる記述から推論することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】可変調節可能な減衰を有する減衰システムの回路トポロジの概略図である。
【
図1b】可変調節可能な減衰を有する減衰システムの回路トポロジの概略図である。
【
図2】可変調節可能な減衰を有する装置のための好ましい例示的実施形態の回路トポロジである。
【
図4】距離センサベースの閉ループ制御を有する本解決策による装置の回路トポロジである。
【
図5】センサ力測定により補完される
図5としての回路トポロジである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1aは、二つの物体1、2間の機械的結合のトポロジを示し、この機械的結合は減衰特性によって特徴付けられる、つまり、この機械的結合に同じく固有である剛性よりも、減衰効果のほうが優位である。
【0029】
さらに結合システムは、可変調節可能な動的特性によって特徴付けられる、すなわち、結合システムは可変調節可能な減衰特性を有しており、この減衰特性は減衰システム6によって示される。さらに、物体1は、静止体2に対して振動可能に取り付けられることが仮定される。
【0030】
以下に複数回参照される
図1bに示される実施形態では、両方の物体1、2は、二つの力経路K1、K2を介して機械的に結合される。第1の減衰要素7’は、第1の力経路K1に沿って提供され、可変調節可能な剛性体9’と直列に結合される。可変調節可能な剛性体9”の形態の動的特性を有するユニットは、第2の力経路K2に沿って提供される。第2の力経路K2に沿って可変調節可能な剛性体9”が組み込まれた結果、第1の力経路に沿って配置された調節可能な剛性体9’の可変剛性挙動に関して補償を行うことができ、それにより、二つの物体間の機械的結合の減衰挙動を、可変に調節することができる。
【0031】
示される結合トポロジは、その結合トポロジに組み込まれた少なくとも一つの可変調節可能な剛性体9’又は9”だけを変化させることによって、事前定義可能な態様でその優位な減衰特性を可変調節可能であるという原理に基づいている。減衰要素7’は一定の減衰特性を有し、好ましくはエラストマ物体から、又は少なくとも一つのエラストマ物体を有する減衰ユニットから形成される。
【0032】
説明される減衰トポロジの特定の特徴は、結果的に生じるその減衰特性が、質的には使用される減衰要素の減衰特性に対応するが、量的には結合トポロジの剛性特性を変えることなくその大きさを調節可能であることである。剛性特性と減衰特性とを、主に別々に調節することが可能になる。例えば、減衰ユニット又は少なくとも一つのエラストマ物体を有する減衰ユニットとしてエラストマが使用される場合、結合トポロジ全体に対して広範囲にわたって、振動数に依存しないエラストマの減衰特性を維持することが可能になるが、同時に、剛性及び損失角を単独で調節することも可能になる。
【0033】
図2は、
図1bによる好ましい実施形態を詳細に示す。移動可能に又は振動可能に取り付けられた物体1及び好ましくは静止して取り付けられた物体2は、本解決策による可変調節可能な減衰システム6を介して相互連結又は結合されている。その減衰特性を可変調節可能な減衰システム6は、第1の力経路K1に沿って両方の物体1、2を相互連結する二つの直列に連結された要素、すなわち減衰要素7’及び調節可能な剛性体9’を提供する。剛性体要素9”が、さらに第1の力経路K1に平行に配置され、その剛性体は調節可能又は可変である。調節可能な剛性体要素9’及び9”は、それらの剛性調節範囲の下限及び上限によってそれぞれ特徴付けられ、これらは使用される調節可能な剛性体要素9’及び9”の実施形態、及びそれらの設計に応じて決まる。剛性体の可変性は、剛性体の構築設計に応じて変えることができ、つまり連続的に調節可能であるか、又は不連続的なステップ若しくは段階で調節可能である。
【0034】
可変調節可能な剛性体9”のための好ましい実施形態が、文献DE 10 2011 015 798 B4に開示されている。知られている可変調節可能な剛性体は、二つの構成要素、第1及び第2の構成要素を、少なくとも一つの作用方向に沿って結合し、その作用方向に沿って、少なくとも一つの構成要素が振動可能に取り付けられ、上側表面及び下側表面、並びに表面の長手方向長さを有する表面要素を有し、その表面要素は、表面の長手方向長さにおいて寸法安定性があり、且つそれに対して横向きに弾性がある。二つ以上の接触手段が、空間的に固定された態様で第1の構成要素に取り付けられており、その接触手段を介して、第1の構成要素が、二つ以上の第1の接触点で、表面要素の下側表面及び/又は上側表面に接触する。同様に、二つ以上の接触手段が、空間的に固定された態様で第2の構成要素に取り付けられており、その接触手段を介して、第2の構成要素が、二つ以上の第2の接触点で、表面要素の下側表面及び/又は上側表面に接触する。両方の構成要素は、表面の長手方向長さに直交するように配向された空間軸周りに、互いに対して回転可能に配置されており、その空間軸は、少なくとも一つの構成要素が振動可能に取り付けられた少なくとも一つの作用方向と一致しており、それにより、回転中に表面要素の表面剛性が可変になる。
【0035】
本発明により構成される調節可能な減衰システム6は、距離依存性の、すなわち弾性の動的挙動と、速度依存性の、すなわち減衰の動的挙動の両方を呈し、速度依存性の減衰挙動の方が優位である。原理上は、調節可能な減衰システム6を、
図3bで説明される調節可能な剛性体によって減衰される要素として使用することも可能である。
【0036】
剛性挙動とともにいわゆる損失角の観点からも特徴付けられる減衰挙動が、
図3a、bに示される図において、本解決策により構成された減衰システム6について示される。剛性[N/mm](S)は、横座標に沿ってプロットされ、損失角[°] (V)は、縦座標に沿ってプロットされる。
【0037】
図3aは、調節可能な減衰システム6の調節範囲全体を特徴付ける表面32を示す。これは四つの隅点A、B、C、Dまで広がっている。隅点Aでは、調節可能な減衰システム6は剛性S1及び損失角V1を有する。隅点Bでは、調節可能な減衰システム6は剛性S2及び損失角V2を有する。隅点Cでは、調節可能な減衰システム6は剛性S3及び損失角V3を有する。隅点Dでは、調節可能な減衰システム6は剛性S4及び損失角V4を有する。隅点Aは、調節可能な剛性体要素9’及び9”が、それぞれその最小可能剛性に調節されたときに、確立される。ここで剛性体要素9”がその最小可能剛性のままで、剛性体要素9’がその最大可能剛性に調節された場合、調節可能な減衰システム6に関して、特性は隅点Bにおいて確立される。ここで剛性体要素9’がその最大可能剛性のままで、剛性体要素9”がその最大可能剛性に調節された場合、調節可能な減衰システム6に関して、特性は隅点Dにおいて確立される。ここで剛性体要素9”がその最大可能剛性のままで、剛性体要素9’がその最小可能剛性に調節された場合、調節可能な減衰システム6に関して、特性は隅点Cにおいて確立される。一つの調節可能な剛性体要素9’又は9”のみの特性を変える場合、調節可能な減衰システム6の剛性特性及び減衰特性は、互いに依存して変化する。
【0038】
図3bは、調節可能な減衰システム6の調節範囲全体を特徴付ける表面32を示し、加えて、剛性特性と減衰特性を別々に調節するための二つの例を示す。二つの調節可能な剛性体要素9’及び9”の特性が、隅点Bから始まって連帯的に変わる場合、調節可能な減衰要素6の減衰を、一定の剛性S2で調節することが可能である。二つの調節可能な剛性体要素9’及び9”の特性が、隅点Aから始まって連帯的に変わる場合、調節可能な減衰要素6の減衰を、一定の損失角V1で調節することが可能である。
【0039】
本解決策により構成される調節可能な減衰システムは、
図4の例示的実施形態によれば、閉ループ制御で組み合わされることが有利であり、その閉ループ制御によって、剛性体9’及び9”をアクチュエータによって調節することができ、その結果、調節可能な減衰システムの減衰挙動及び剛性挙動を調整することができる。互いに移動可能又は振動可能に取り付けられた物体1及び2の変位をセンサ記録するために、センサシステム17が提供され、それにより、二つの物体1、2間の調節行程、速度、及び/又は加速度を記録することが可能である。センサシステム17は、調整ユニット19に連結され、調整ユニット19は、アクチュエータ21に連結されて調節可能な剛性体9の調節を行う。
【0040】
センサシステム17は、例えば二つの物体1、2間の変位18を記録する。いわば、センサによって記録することができる実際値としての、二つの物体1、2間の相対的な加速度値また速度値を、調整19のための基準として取得することができる。調整に必要な、比較するための所望の値は、調整器19内で特定されてもよく、又は例えば閉ループシステム又は開ループ制御の形態で、起点31から所望の信号30として提供されてもよい。
【0041】
図5は、閉ループ制御システムを有する
図4に示される例示的実施形態に利点が付加された図を示す。加えて
図5に示される例示的実施形態は、本解決策により構成された減衰システム6に物体1と2の間で直列に連結された付加的な力測定センサ27を提供する。距離測定センサ17を用いて記録される変位18、及び力測定センサ27を用いて記録される力信号28は、調整器29に導かれ、それらは両方とも、調節可能な減衰要素の剛性と損失角との両方を判定するための基準である。このように判定された剛性、及び判定された損失角は、調整器29を用いて所望の信号30に適合され、その所望の信号30は、例えば別の閉ループ制御システム又は開ループ制御の形態で、起点31から提供される。
【符号の説明】
【0042】
1 第1の物体
2 第2の物体
6 調節可能な減衰要素
7’ 減衰要素
9’、9” 可変調節可能な剛性体
17 距離センサ
18 変位
19 調整器
20 調整信号
21 アクチュエータ
27 力測定
28 力信号
29 調整器
30 所望の信号
31 起点
32 表面