(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】透析液中の物質を検出するための感知システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A61M1/28 130
A61M1/28 110
(21)【出願番号】P 2018508213
(86)(22)【出願日】2016-08-24
(86)【国際出願番号】 SG2016050408
(87)【国際公開番号】W WO2017034481
(87)【国際公開日】2017-03-02
【審査請求日】2019-08-23
(32)【優先日】2015-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510338259
【氏名又は名称】テマセク ポリテクニック
【氏名又は名称原語表記】TEMASEK POLYTECHNIC
(73)【特許権者】
【識別番号】518049809
【氏名又は名称】アワック テクノロジーズ ピーティーイー エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】AWAK TECHNOLOGIES PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ブルーシェル クリスティアン ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヤンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ザン フア
(72)【発明者】
【氏名】エラ ジュイ ピン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン キム ジフ
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0184198(US,A1)
【文献】特表2015-502773(JP,A)
【文献】特開平11-225752(JP,A)
【文献】特表2014-500067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 - 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液中の物質を検出するための感知システムであって、
疎水性バリアであり、前記バリアを通して前記透析液中の前記物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる前記疎水性バリアと、
前記ガスを検出することができる検出器と、
前記疎水性バリアと前記検出器の間に配置されたインタフェースであり、前記インタフェースに沿った前記ガスの濃度勾配に従った前記疎水性バリアと前記検出器の間の前記ガスの輸送を可能にするように構成された前記インタフェースと
を含み、
前記疎水性バリアが、使用時において、前記透析液と流体連通するように構成され、かつ、前記疎水性バリアが、前記透析液の圧力変化に応答して
、前記インタフェース内での前後のガス移動を生じさせるように構成された変形可能な隔膜を含む、前記感知システム。
【請求項2】
インタフェースが、約0.1mm~10mmの長さであるように構成された、請求項1に記載の感知システム。
【請求項3】
インタフェースが、約1.0mmの長さであるように構成された、請求項1に記載の感知システム。
【請求項4】
変形可能な隔膜の変形が、インタフェース内でのガス移動を生じさせて、疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送速度を増大させる、請求項1に記載の感知システム。
【請求項5】
物質が、アンモニウム又はアンモニアである、請求項1に記載の感知システム。
【請求項6】
疎水性バリアが、脱ガスバリア又は細菌濾過器を含む、請求項1に記載の感知システム。
【請求項7】
インタフェースが、前記インタフェース内に、アンモニアガスに適合する吸水体を含む、請求項1に記載の感知システム。
【請求項8】
使い捨てのハウジングをさらに含み、前記使い捨てのハウジングが、透析液流路及び疎水性バリアを含み、インタフェースが、前記使い捨てのハウジングと検出器の間に配置された、請求項1に記載の感知システム。
【請求項9】
透析液中の物質を検出するための感知システムであって、
前記透析液と接触する疎水性バリアであり、前記バリアを通して前記透析液中の前記物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる前記疎水性バリアと、
前記ガスを検出することができる検出器と、
前記疎水性バリアと前記検出器の間に配置されたインタフェースであり、前記疎水性バリアと前記検出器の間の前記ガスの流体連通を可能にするように構成された前記インタフェースと、
前記透析液と接触する変形可能な隔膜であり、前記透析液の流体圧力の変動に応答した前記インタフェース内での前後のガス移動を生じさせるように構成された前記変形可能な隔膜と
を含む、前記感知システム。
【請求項10】
疎水性バリア及び変形可能な隔膜が透析液流路を流れている透析液と接触するような前記透析液流路をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
疎水性バリアが変形可能な隔膜を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
蠕動ポンプの動作が透析液の流体圧力の変動を生じさせるような前記蠕動ポンプをさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
検出器が、アンモニアの存在下で変色する材料を含む、請求項1又は9に記載のシステム。
【請求項14】
検出器が、アンモニアに敏感な膜を含む、請求項1又は9に記載のシステム。
【請求項15】
検出器が、アンモニア選択性の電位差電極又は電流測定電極を含む、請求項1又は9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透析装置に関し、詳細には、携行可能な又は着用可能な透析装置に関する。本発明はさらに、透析を実施する方法に関する。本発明はまた、透析液中のアンモニウムを検出するための感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、生命の維持に欠かせない、人間のホメオスタシス系(homeostasis system)の器官である。腎臓は、体内で尿素などの有毒な代謝老廃物を血液から除去する自然の濾過器の働きをする。腎不全すなわち腎臓の機能不全は、毒素の蓄積及び血液中の電解質濃度の失調につながる可能性があり、それにより、個人の健康に有害な望ましくない影響が生じる可能性がある。
【0003】
腎臓の機能障害及び/又は腎不全、特に末期腎臟病によって、人体は、血液中の有毒な老廃物を十分に除去し、血液中の電解質の濃度を生理的範囲内の最適な濃度に戻す能力を失うことがある。有毒な老廃物を除去することによって不十分な腎臓機能を補うために、透析が一般的に使用されている。
【0004】
この数年の間、末期腎臓病(ESRD、end-stage renal disease)の患者に対して主に使用されている透析の形態は血液透析である。血液透析は、大量の血液を濾過ユニットすなわち透析器に通すことによって患者の血液から毒素を直接に除去する体外システムの使用を含む。血液透析治療は一般に数時間続き、医療専門家のモニターの下で週に3回ないし4回実施しなければならず、このことは患者の移動性及び生活の質を大幅に低下させる。さらに、血液透析は連続的にではなく周期的に実行されるため、汚染物質を除去する「治療サイクル」が完了した瞬間から患者の健康は悪化し始める。
【0005】
腎不全患者に対して使用されている他の形態の透析は腹膜透析である。腹膜透析は普通、2つの方法、すなわち「連続携行式腹膜透析」(CAPD、continuous ambulatory peritoneal dialysis)及び「自動腹膜透析」(APD、automated peritoneal dialysis)によって実施される。CAPDでは、患者の腹腔(腹膜腔)に新鮮な透析液を注入する。腹腔では、血液中の代謝老廃物及び電解質が、拡散により、腹膜を通して透析液と交換される。電解質及び代謝老廃物が十分に拡散することができるように、2時間の間、透析液を腹腔(腹膜腔)内に保持してから、(使用済みの透析液を)除去し、新鮮な透析液と交換する。連続携行式腹膜透析の重大な欠点は、毒素が除去される程度が低いことと、使用済みの透析液を絶えず取り替える必要があることであり、透析液を絶えず取り替える必要があることは、患者にとって骨の折れることであることがあり、また、患者の日々の活動に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
この問題に対処するため、血液透析及び/又は腹膜透析の使用後/使用済みの透析液を、廃棄するのではなしに再構成する装置が設計された。しかしながら、使用後/使用済みの透析液を再構成する現在の装置は、準備手順が複雑であること及び構成部品の無菌性を維持することが困難であることを含む、関連するいくつかの欠点を有する。他の欠点は、現在の装置がしばしば複数の流体接続を必要とすることである。流体接続は、生物汚染を導入する危険を増大させ、装置の無菌性を低下させる。加えて、毎日、週に1度又は月に1度、いくつかの構成部品を廃棄しなければならず、このことは、このような装置の操作をより複雑にする。加えて、知られている再生式透析装置の流れシステムは複数のポンプを必要とし、このことは装置の全体サイズ、重量及び消費電力を増大させ、望ましくない。
【0007】
したがって、上述の1又は2以上の欠点を解決し、又は少なくとも改善する透析装置を提供することが求められている。装置のサイズ、重量及び消費電力に関して妥協しない透析装置を提供することも求められている。
【0008】
さらに、理想的な人工腎臓が、連続的な代謝及び流体の制御、毒素の除去、並びに拘束のない患者の自由を提供することによって、正常な腎臓を模擬的に再現すべきである。これまでに言及したように、血液透析、連続携行式腹膜透析(CAPD)、自動腹膜透析(APD)、及び「24/7」稼働の腹膜ベースの着用可能な人工腎臓(WAK、“24/7” wearable, peritoneal-based artificial kidney)は、腎不全の患者を助け、代謝老廃物を除去する方法の一部である。こうした方法のいくつか、例えば「24/7」稼働の腹膜ベースの着用可能な人工腎臓(WAK)は、吸着剤カートリッジ技術を使用して透析液を連続的に再生することによって、尿毒症性の毒素を最適に取り除くことができる。
【0009】
吸着剤カートリッジ技術を利用する方法は通常、吸着剤の消耗をモニターする安全機構を必要とする。吸着剤が消耗する若しくはうまく機能しなくなる前、又はそのときに、使用者はカートリッジを交換し、毒素が患者に戻るのを防止する必要がある。一般的な手法の1つは、再生された透析液のアンモニウム濃度をモニターし、それが安全なレベルにあることを確認することである。
【0010】
しかしながら、透析におけるアンモニア/アンモニウムの検出には難点がある。再生された腹膜透析液のアンモニウム濃度をインラインでモニターする、既知の方法は、アンモニア/アンモニウムセンサを、透析液の液体ラインに直接組み込むものである。換言すれば、感知システムが透析液の流れの一部になる。しかしながら、この方法では、うまく機能するだけではなく、常にその無菌性を維持するアンモニア/アンモニウム感知システムが必要になる。また、生体適合性の問題も存在する場合がある。さらに、感知システムは、液相の利用法と適合したものでなければならない。
【0011】
現在、アンモニア/アンモニウムのレベルを感知及びモニターする液相の利用法の多くに、欠点及び制約がある。したがって、そうした利用法は、腹膜透析での使用には不適切である。
【0012】
アンモニア/アンモニウムセンサを再生された透析液の液体ラインに直接組み込むことに加えて、アンモニウム濃度をモニターするために、液体の透析液の近くにセンサを組み込むことが可能である。例えば、米国出願特許出願公開第2007/0161113A1号明細書、及び国際公開第2007/081565A2号パンフレットは、アンモニアに敏感な材料が再生された透析液を含有する液体流路のすぐ隣りに配置される、光学的なアンモニア検出装置を開示している。光学的な検出装置のための構成部品は、データ処理及び信号検出のための電気的な付属機器と共に、アンモニアに敏感な材料の隣りに配置される。
【0013】
しかしながら、アンモニアを感知する材料が疎水性膜のすぐ近くにあるため、電気的な付属機器は、透析液ラインのきわめて近くに配置されることになる。この手法では、いかなる外部光の干渉も防止するために、閉じた「光を通さないケーシング」も必要であり、そのために製造が複雑化する。データ処理及び信号検出のための電気的な付属機器は、比較的かさばるものである。したがって、携行及び着用が可能な腹膜透析装置の小型化は難しい。この概念に関する他の欠点には、以下のことが含まれる場合もある:
アンモニアを感知する材料/部分が、使い捨て/単回使用である;
使用するには、患者がカートリッジを組み立てる必要がある;
きわめて近い/若しくは直接接触するセンサが、透析液の浸出を引き起こし、生体適合性の問題をまねく可能性がある;
誤って組み立てられる可能性があり、そのために不正確になることがある。
【0014】
他の文献に開示される検出方法及び検出システムは、非生体適合性、組み立ての難しさ(例えば、誤って組み立てられ、そのために不正確になることがある)、かさばること、1回しか使えないアンモニア感知用の構成部品及び無菌性の問題など、いくつかの欠点を有する。
【0015】
したがって、上述の1又は2以上の欠点を解決し、又は少なくとも改善する透析液中のアンモニウムを検出するための感知システムを提供することも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国出願特許出願公開第2007/0161113A1号明細書
【文献】国際公開第2007/081565A2号パンフレット
【発明の概要】
【0017】
本明細書で使用される以下の語及び用語は以下に示す意味を有する。
【0018】
本明細書で使用される用語「吸着剤」は広く、関心の所望の物質を吸着し及び/又は吸収することができることを特徴とする一群の材料を指す。
【0019】
本明細書で使用される用語「非毒性の」は、人間の体内に存在するときに有害な反応をほとんど又は全く引き起こさない物質に関する。
【0020】
本明細書の文脈において、用語「汚染物質」は、人間の健康に対して一般に有害であり、透析液の無毒化工程において除去されることが望ましい透析液中の成分、典型的には有毒成分を意味する。典型的な汚染物質には、限定はされないが、アンモニウム、リン酸塩、尿素、クレアチニン、尿酸などがある。
【0021】
本明細書で使用される用語「生体適合性の」は、人間又は動物の体に対して有害な生物反応を引き起こさない材料の特性に関する。
【0022】
本明細書で使用される用語「上流の」は、基準点から見て、透析液が流れる方向とは反対の方向にある流路内の位置に関する。本明細書で使用される用語「下流の」は、基準点から見て、透析液が流れる方向と同じ方向にある流路内の位置に関する。
【0023】
本明細書で使用される用語「クラック圧力」は、空気圧システムの内圧によって弁が開くときの圧力を指す。
【0024】
本明細書で使用される用語「再生する」は、尿毒症性毒素を除去することによって透析液を無毒化する行為を言う。
【0025】
本明細書で使用される用語「再構成する」は、再生された透析液を、透析前の新鮮な腹膜透析液と本質的に同じ状態及び同じ化学組成の透析液にする行為を言う。
【0026】
本明細書で使用される用語「流出モード」は、患者の体から出て吸着剤を通過する透析液の流れに関する。この流れは、患者の体から流出する。
【0027】
本明細書で使用される用語「流入モード」は、吸着剤から患者の体への透析液の流れに関する。この流れは、患者の体に流入する。
【0028】
本明細書で使用される用語「流体」は液体又はガスを指す。
【0029】
本開示の全体を通じて、ある種の実施形態が、範囲形式で開示されることがある。範囲形式での記述は、単に便宜上から及び表現を簡潔にするためになされるものであること、並びに、範囲形式での記述を、開示された範囲の幅だけに限定するものと解釈すべきでないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は、可能な下位範囲並びにその範囲内の個別の数値の全てを具体的に開示したものであると考えるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの下位範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5及び6を具体的に開示したものであると考えるべきである。このことは、その範囲の幅を問わず適用される。
【0030】
語「実質的に」は、「完全に/全く」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まなくてもよい。必要な場合には、本発明の定義から語「実質的に」を省くことができる。
【0031】
特に明記しない限り、用語「備える(comprising)」及び「備える(comprise)」、並びにこれらの用語の文法上の異形は、列挙された要素を含むだけでなく、追加の列挙されていない要素の包含をも許容するというように、「オープン」形式ないし「包括」形式を表すことが意図されている。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、製剤の成分の濃度の文脈において、典型的には記載された値の+/-5%、より典型的には記載された値の+/-4%、より典型的には記載された値の+/-3%、より典型的には記載された値の+/-2%、より典型的には記載された値の+/-1%、より典型的には記載された値の+/-0.5%を意味する。
【0033】
本明細書では、ある種の実施形態が、広く及び包括的に記述されていることがある。属の開示の範囲に含まれるより狭い種及び亜属のそれぞれのグルーピングも、本開示の部分を構成する。削除された要素が本明細書に明確に列挙されているか否かにかかわらず、これは、属から主題を除去する但し書き又は消極的な限定を含む実施形態の属の記述を含む。
【0034】
本発明の一実施形態は、透析液中の物質を検出するための感知システムを提供する。感知システムは、透析液中の物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる疎水性バリアと、ガスを検出することができる検出器と、疎水性バリアと検出器の間に配置され、ガスの流体連通を可能にするように構成されたインタフェースと、ガスを疎水性バリアから検出器まで輸送することができる1又は2以上の送達機構とを含むことができる。
【0035】
一実施形態では、1又は2以上の送達機構が、ガスを疎水性バリアから検出器まで輸送することができる駆動力を提供する。
【0036】
一実施形態では、駆動力が、ガスをインタフェース内で循環させる。他の実施形態では、駆動力が、ガスをインタフェース内で前後に(back and forth)移動させる。
【0037】
一実施形態では、透析液中の物質を検出するための感知システムであって、疎水性バリアであり、このバリアを通して透析液中の物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる疎水性バリアと、ガスを検出することができる検出器と、疎水性バリアと検出器の間に配置されたインタフェースであり、インタフェースに沿ったガスの濃度勾配に従った疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送を可能にするように構成されたインタフェースとを含む感知システムが提供される。
【0038】
インタフェースは、約0.1mm~10mmの長さであるように構成することができ、約1.0mmの長さであるように構成されていることが好ましい。
【0039】
疎水性バリアは、透析液と流体連通することができる。
【0040】
疎水性バリアは、透析液の圧力変化に応答して変形するように構成された変形可能な隔膜を含むことができる。
【0041】
一実施形態では、変形可能な隔膜の変形が、インタフェース内でのガス移動を生じさせて、疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送速度を増大させる。
【0042】
一実施形態では、検出器が、アンモニア若しくはアンモニウムイオンにさらされると変色する、又はアンモニア若しくはアンモニウムイオンの存在下で変色する材料又は指示ストリップ(indicator strip)を含むことができる。一実施形態では、検出器が光化学センサである。他の実施形態では、検出器が、アンモニアに敏感な膜を含む。他の実施形態では、検出器が、アンモニアをモニターする導電率センサ(conductivity sensor)を含むことができる。一実施形態では、検出器が、アンモニア選択性の電位差電極(potentiometric electrode)又は電流測定電極(amperometric electrode)である。
【0043】
この感知システムはさらに使い捨てのハウジングを含むことができ、この使い捨てのハウジングは、透析液流路及び疎水性バリアを含むことができ、インタフェースは、使い捨てのハウジングと検出器の間に配置することができる。
【0044】
一実施形態では、透析液中の物質を検出するための感知システムであって、透析液と接触する疎水性バリアであり、このバリアを通して透析液中の物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる疎水性バリアと、ガスを検出することができる検出器と、疎水性バリアと検出器の間に配置されたインタフェースであり、疎水性バリアと検出器の間のガスの流体連通を可能にするように構成されたインタフェースと、透析液と接触する変形可能な隔膜であり、透析液の流体圧力の変動に応答したインタフェース内でのガスの前後の移動を生じさせるように構成された変形可能な隔膜とを含む感知システムが提供される。
【0045】
このシステムはさらに、疎水性バリア及び変形可能な隔膜が透析液流路を流れている透析液と接触するような透析液流路を含むことができる。
【0046】
疎水性バリアは変形可能な隔膜を含むことができる。
【0047】
このシステムはさらに、蠕動ポンプの動作が透析液の流体圧力の変動を生じさせるような蠕動ポンプを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付図面は、開示された実施形態を示し、開示された実施形態の原理を説明する役目を果たす。しかしながら、添付図面は、単に例示だけを目的に描かれたものであり、本発明の範囲を定義するものではないことを理解すべきである。
【
図1a】開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図1b】腹膜腔から蓄積室へ向かって透析液が流れている、開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図1c】蓄積室から腹膜腔へ透析液が流れている、開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図1d】開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図1e】開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図1f】開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図2a】腹膜腔から蓄積室へ向かって透析液が流れている、開示の透析装置の代替実施形態の略図である。
【
図2b】蓄積室から腹膜腔へ向かって透析液が流れている、
図2aの実施形態の略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に基づく透析液の流れ制御を示すグラフである。
【
図4a-d】本開示の一実施形態に基づく使い捨てのハウジングの原型の断面図である。
【
図5】本明細書に開示された透析装置の一実施形態の原型の透視図である。
【
図6】別個の添加剤分配手段を備える、開示の使い捨てのハウジングの一実施形態の略図である。
【
図7】本開示に従って使い捨てのハウジングとロック式に係合した別個の添加剤分配手段を備える、開示の透析装置の一実施形態の略図である。
【
図8】本開示に基づく添加剤分配手段の封止されたコネクタの断面図である。
【
図9】本開示に基づく添加剤分配手段の封止されたコネクタの断面図である。
【
図10】本開示に基づく添加剤分配手段の一実施形態の断面図である。
【
図11】本開示に基づく添加剤分配手段の一実施形態の断面図である。
【
図12a-c】本開示に基づく自動分配システムの一実施形態の断面図である。
【
図13】本開示に基づく透析装置の充電式電池の電圧降下を透析時間に対して示したグラフである。
【
図14】ポンプを常に作動させたときの本開示に基づく透析装置の充電式電池の電圧降下を、透析時間に対して示したグラフである。
【
図15】本開示に基づく装置内の脱ガス器の一実施形態を示す図である。
【
図16】本開示に基づく装置内のフィブリントラップの一実施形態を示す図である。
【
図17】本開示に基づく電力接続スイッチの一実施形態を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システムの略図である。
【
図19】本発明の一実施形態に基づく他のアンモニア感知システムの略図である。
【
図20】本発明の一実施形態に基づく他のアンモニア感知システムの略図である。
【
図21a-21d】アンモニア感知システムの実施形態の4つの例示的な構成の略図である。
【
図22a-22b】
図21aに示すアンモニア感知システムの実施形態について、透析液の流入段階及び透析液の流出段階を示す図である。
【
図23】
図21aに示すアンモニア感知システムの実施形態に対して実行される、制御方法のためのタイミング図の一例を示す図である。
【
図24(a)-24(b)】電気的なアンモニア検出器を使用する、本発明の例示的な一実施形態から得られる結果を示すグラフである。
【
図25】透析装置の使い捨ての吸着剤カートリッジと流体連通する、本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システム用のコントローラシステムの略図である。
【
図26】インタフェースに沿った濃度勾配に従ってアンモニアガスが輸送される、本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システムの略断面図である。
【
図27(a)-27(b)】疎水性バリアが、インタフェース内でのガスの前後の輸送を生じさせる変形可能な隔膜の働きをする、本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システムの略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
これらの図では同様の符号が同様の部分を表す。
【0050】
図1aを参照すると、開示の透析装置(200)の一実施形態が示されている。
【0051】
この透析装置は、導管(20)の形態の流路を有する使い捨てのハウジング(10)と、使い捨てのハウジング(10)の動作を制御する制御ハウジング(30)の形態のコントローラとを備える。この図では、使い捨てのハウジング(10)と制御ハウジング(30)とが互いに動作可能に接続されてはいない。使い捨てのハウジング(10)及び制御ハウジング(30)は、前記制御ハウジング(30)上に配置された導管コネクタ(40a)及び使い捨てのハウジング(10)上に配置された導管コネクタ(40b)の形態のインタフェース手段を備え、このインタフェース手段は、制御ハウジングと使い捨てのハウジングとを接続することができる。導管コネクタ(40a)と導管コネクタ(40b)とをロック式に係合させると、使い捨てのハウジング(10)と制御ハウジング(30)とが動作可能に係合する。使い捨てのハウジング(10)の導管(20)は、制御ハウジング(30)及び導管コネクタ(40a、40b)から流体封止されている。
【0052】
この透析装置は、腹膜腔(60)及び導管(20)と流体連通することができる柔軟な透析液管(50)を備える。この透析装置はさらに、剛性区画(180)内に位置する蓄積室(70)を備える。蓄積室(70)は、蓄積室(70)の壁の1つにその壁と一体に形成された変形可能な隔膜(71)を備える。変形可能な隔膜(71)は、1つの面が透析液導管(20)と流体連通し、反対側の別の面が圧力室(80)と流体連通する。使い捨てのハウジング(10)と制御ハウジング(30)とが互いに動作可能に結合されているとき、導管コネクタ(40a、40b)は、使い捨てのハウジング(10)の圧力室(80)を、制御ハウジング(30)内に位置するポンプ(90)に流体結合する。
【0053】
ポンプ(90)は、圧力室(80)内に圧力変化を生じさせることによって変形可能な隔膜(71)を作動させるように構成されている。この圧力変化は、変形可能な隔膜(71)を変形させ、それによって前記透析液導管(20)内の透析液を移動させる。
【0054】
導管(20)に沿って逆止め弁(100、101、102、103)が配置されており、これらの逆止め弁は、流出モードでは、腹膜腔(60)から蓄積室(70)へ透析液が流れることを可能にし、流入モードでは、透析液中の汚染物質を除去するために透析液が蓄積室(70)から前記吸着剤ゾーン(110)へ流れることを可能にし、さらに、前記汚染物質を実質的に含まない透析液が腹膜腔(60)へ再び戻ることを可能にするように構成されている。
【0055】
使い捨てのハウジングはまた、導管(130)を介して導管(20)と流体連通した、予め選択されたある量の強化溶液(enrichment solution)を透析液に分配するための強化モジュール(120)を備える。強化モジュールは、強化溶液リザーバ(121)とも流体連通している。使い捨てのハウジング(10)と制御ハウジング(30)とが動作可能に係合しているとき、ポンプ(90)は、導管コネクタ(40a、40b)を介して、強化モジュール120の変形可能な膜(72)と流体連通する。
【0056】
さらに、透析液中のアンモニアを検出するため、吸着剤ゾーン(110)の下流にアンモニアセンサ(140)が配置されている。アンモニアは、使い捨てのハウジング(10)と制御ハウジング(30)とが互いに動作可能に結合されているときに、アンモニア検出器(141)によって検出される。
【0057】
吸着剤ゾーンの下流にはさらに、疎水性膜(150)の形態の脱ガス器が位置する。制御ハウジングと使い捨てのハウジングとが動作可能に結合されているときには、疎水性膜(150)の外面が、導管コネクタ(40a、40b)を介して真空ポンプ(151)と流体連通する。
【0058】
次に
図1bを参照すると、互いに動作可能に結合された使い捨てのハウジング(10)と制御ハウジング(30)とを示す
図1aの実施形態が、流出モードで動作している。流出モードでは、患者の腹膜腔(60)から蓄積室(70)へ向かって透析液が流れる。ポンプ(90)は、圧力室(80)内に負圧を生じさせることによって変形可能な隔膜(71)を作動させる。圧力室(80)内の負圧は、変形可能な隔膜(71)を矢印Aの方向へ偏らせることによって変形可能な隔膜(71)を変形させ、それにより、透析液を、患者の前記腹膜腔(60)から透析液導管(20)内へ、気泡トラップ(51)を介して移動させる。透析液は、逆止め弁(100)を通って蓄積室(70)へ流れる。圧力室(80)内において予め選択された負圧を確立するため、及び腹膜腔(60)から抜き取っている透析液の圧力が安全限界内にあるかどうかを判定するために、ポンプ(90)と動作可能に連通した圧力センサ(170)が配置されている。
【0059】
ポンプ(90)は、圧力センサ(170)の制御下で断続的に動作して、圧力室(80)内の負圧を予め選択された範囲内に維持する。蓄積室(70)が透析液でいっぱいになると、そのことが圧力センサ(170)によって検出され、圧力センサ(170)は、ポンプ方向を反転させ、したがってシステムを流入モードに切り換える。
【0060】
ポンプ90は、前記強化モジュール(120)の壁にその壁と一体に形成された隔膜(72)とも流体連通している。負圧下で蓄積室(70)が作動するのと同時に、強化モジュール(120)も、ポンプ(90)による負圧の下で、逆止め弁(103)を通して強化溶液リザーバ(121)から強化モジュール(120)内へ所定量の強化溶液が抜き取られるような態様で作動する。逆止め弁(102)は、導管(20)から強化モジュール(120)内へ透析液が引き込まれないことを保証する。
【0061】
図1cを参照すると、流入モードにある
図1bの流れシステムが示されている。流入モードでは、蓄積室(70)から腹膜腔(60)へ透析液が流れる。蓄積室(70)がいっぱいになると、ポンプ(90)は、圧力室(80)内に正圧を生じさせることによって変形可能な隔膜(71)を作動させる。
【0062】
圧力室(80)内の正圧は、変形可能な隔膜(71)を矢印Bの方向へ偏らせることによって変形可能な隔膜(71)を変形させ、それにより透析液を蓄積室(70)から移動させる。逆止め弁(100)は閉じて、汚染物質を除去する処理の前に透析液が腹膜腔(60)へ戻るのを防ぐ。
【0063】
流入モードにおいて腹膜腔(60)へ戻している透析液の圧力が安全限界内にあることを保証するため、圧力センサ(170)が圧力室(80)内の圧力をモニターする。
【0064】
透析液は、蓄積室(70)から逆止め弁(101)を通って吸着剤ゾーン(110)へ流入する。次いで、再生された吸着剤ゾーン(110)からの透析液が、疎水性膜(150)の形態の脱ガス器を通過する。透析操作の間に発生したガスの除去を補助するため、この膜の外面には真空ポンプ(151)によって負圧がかけられる。透析液は次いでアンモニアセンサ(140)を通過する。アンモニアセンサ(140)は、再生された透析液を患者の腹膜腔(60)へ戻す前に、透析液中のアンモニアの濃度をモニターして、アンモニア濃度が安全限界を超えないことを保証する。アンモニアはアンモニア検出器(141)によって検出される。
【0065】
再生された透析液は次いで、強化モジュール(120)を通過する。流入モードでは、ポンプ(90)が、強化モジュール(120)の隔膜(72)を正圧下で作動させる。強化モジュール(120)には予め、強化溶液リザーバ(121)からある体積の強化溶液が注入されている。強化モジュール(120)が作動すると、逆止め弁(103)が閉じて、強化溶液が強化溶液リザーバ(121)内へ逆流しないことを保証する。強化モジュール(120)は次いで、電解質、浸透圧剤、栄養素、薬物などの所望の物質を含む予め選択された量の強化溶液を、逆止め弁(102)及び導管(130)を通して透析液導管(20)内へ分配する。
【0066】
再生された透析液は次いで、気泡トラップ(51)及び柔軟な透析液導管(50)を通って腹膜腔(60)へ戻る。
【0067】
流出モードの場合と同様に、ポンプ(90)は、圧力センサ(170)の制御下で断続的に動作して、圧力室(80)内の正圧を予め選択された範囲内に維持する。蓄積室の透析液がなくなると、圧力センサ(170)はそのことを検出し、ポンプ方向を反転させ、システムを流出モードに切り換えて、透析サイクルを繰り返す。
【0068】
図1dを参照すると、本開示に基づく透析装置の代替実施形態が示されている。透析装置(200)は、
図1a~cで説明した装置と本質的に同じように動作する。再生された吸着剤ゾーン(110)からの透析液は、疎水性膜(150)の形態の脱ガス器を通過する。透析操作の間に発生したガスの除去を補助するため、膜の外面には、疎水性膜と流体連通した真空ポンプ(151)によって負圧がかけられる。透析操作の間に発生したガスの除去を補助するため、この膜の外面には真空ポンプ(151)によって負圧がかけられる。
図1a~cとは違い、透析液から排出されたガスは次いで、制御ハウジング(30)内に位置するアンモニアセンサ(140)に通される。このアンモニアセンサは、患者の腹膜腔(60)へ透析液を戻す前に、透析液から排出されたガス中のアンモニアの濃度をモニターして、アンモニア濃度が安全限界を超えないことを保証する。
【0069】
図1eを参照すると、本開示に基づく透析装置の代替実施形態が示されている。透析装置(200)は、
図1a~cで説明した装置と本質的に同じように動作する。しかしながら、流出モード(このモードでは、柔軟な透析液管(50)を介して患者の腹膜腔(60)から透析液が受け取られる)の間、ポンプ(90)は、導管コネクタ(図示せず)及び弁(104)を介して疎水性膜(150)にも負圧をかける。弁(104)は、流入モード中に、ポンプ(90)が圧力室(80)に正圧をかけたときに、疎水性膜(150)を通して透析液経路内へガスが導入されないことを保証する。透析液から放出されたアンモニアガスは次いで、アンモニアセンサ(140)によって検出される。
【0070】
図1fを参照すると、本開示に基づく透析装置の代替実施形態が示されている。透析装置(200)は、
図1a~cで説明した装置と本質的に同じように動作する。しかしながら、ポンプ(90)は、使い捨てのハウジング(10)内の単一の接続(41)によって、圧力室(80)と強化モジュール(120)の両方と流体連通する。ポンプ(90)は、流出モード(このモードでは、柔軟な透析液管(50)を介して患者の腹膜腔(60)から透析液が受け取られる)の間、疎水性膜(150)の形態の脱ガス器にも負圧をかける。流入モードの間、ポンプ(90)は圧力室(80)に正圧をかける。弁(104)は、流入モード中に、ポンプ(90)が圧力室(80)に正圧をかけたときに、疎水性膜(150)を通して透析液経路内へガスが導入されないことを保証する。透析液から放出されたアンモニアガスは次いで、アンモニアセンサ(140)によって検出される。
【0071】
図2aを参照すると、腹膜腔(60)から蓄積室(70)へ向かって透析液が流れている、すなわち流出モードにある、本開示に基づく流れシステム(201)の代替実施形態が示されている。ポンプ(90)は、圧力室(80)内に負圧を生じさせることによって変形可能な隔膜(71)を作動させる。圧力室(80)内の負圧は、変形可能な隔膜(71)を矢印Aの方向へ偏らせることによって変形可能な隔膜(71)を変形させ、それにより、透析液を、患者の前記腹膜腔(60)から透析液導管(20)内へ、気泡トラップ(51)を介して移動させる。透析液は、逆止め弁(100)を通って、剛性区画(180)内に位置する蓄積室(70)へ流れる。圧力室(80)内において予め選択された負圧を確立するため、及び腹膜腔(60)から抜き取っている透析液の圧力が安全限界内にあるかどうかを判定するために、ポンプ(90)と動作可能に連通した圧力センサ(170)が配置されている。
【0072】
ポンプ(90)は、圧力センサ(170)の制御下で断続的に動作して、圧力室(80)内の負圧を予め選択された範囲内に維持する。蓄積室(70)が透析液でいっぱいになると、そのことが圧力センサ(170)によって検出され、圧力センサ(170)は、ポンプ方向を反転させ、システムを流入モードに切り換える。
【0073】
導管(130)を介して導管(20)と流体連通した強化モジュール(120)が配置されている。強化モジュール(120)は、流入モードにおいてシリンジポンプ(91)によって作動するように構成される。
【0074】
図2bを参照すると、流入モードにある
図2aの流れシステムが示されている。流入モードでは、蓄積室(70)から腹膜腔(60)へ透析液が流れる。蓄積室(70)がいっぱいになると、ポンプ(90)は、圧力室(80)内に正圧を生じさせることによって変形可能な隔膜(71)を作動させる。圧力室(80)内の正圧は、変形可能な隔膜(71)を矢印Bの方向へ偏らせることによって変形可能な隔膜(71)を変形させ、それにより透析液を蓄積室(70)から移動させる。逆止め弁(100)は閉じて、汚染物質を除去する処理の前に透析液が腹膜腔(60)へ戻るのを防ぐ。
【0075】
流入モードにおいて腹膜腔(60)へ戻している透析液の圧力が安全限界内にあることを保証するため、圧力センサ(170)が圧力室(80)内の圧力をモニターする。
【0076】
透析液は、蓄積室(70)から逆止め弁(101)を通って吸着剤ゾーン(110)へ流入する。再生された吸着剤ゾーン(110)からの透析液は、逆止め弁(105)の上流に位置する疎水性膜(150)の形態の脱ガス器を通過する。逆止め弁(105)が存在することにより、疎水性膜を横切る正の圧力勾配が生じ、この正の圧力勾配が、透析操作中に放出された不要なガスの除去を可能にする。透析液は次いでアンモニアセンサ(140)を通過する。アンモニアセンサ(140)は、再生された透析液を患者の腹膜腔(60)へ戻す前に、透析液中のアンモニアの濃度をモニターして、アンモニア濃度が安全限界を超えないことを保証する。
【0077】
再生された透析液は次いで、強化モジュール(120)を通過する。流入モードでは、シリンジポンプ(91)が、ある体積の強化溶液を含む強化モジュール(120)を正圧下で作動させる。強化モジュール(120)は次いで、電解質、浸透圧剤、栄養素、薬物などの所望の物質を含む予め選択された量の強化溶液を、導管(130)を通して透析液導管(20)内へ分配する。シリンジポンプ(91)は、流入モードのときにだけ動作する。
【0078】
再生された透析液は次いで、気泡トラップ(51)及び柔軟な透析液導管(50)を通って腹膜腔(60)へ戻る。
【0079】
流出モードの場合と同様に、ポンプ(90)は、圧力センサ(170)の制御下で断続的に動作して、圧力室(80)内の正圧を予め選択された範囲内に維持する。蓄積室の透析液がなくなると、圧力センサ(170)はそのことを検出し、ポンプ方向を反転させ、システムを流出モードに切り換えて、透析サイクルを繰り返す。
【0080】
図3は、本開示に基づく透析装置の一実施形態における透析液の流れ制御のグラフを示す。
図3の流れ制御は、「流出」段階、「流入」段階及び「ドウェル(dwell)」段階に分かれている。
【0081】
流出モードでは、ポンプによって負の作動圧力が生み出される。このポンプは、圧力センサの制御下で断続的に動作する。
図3に示されているように、圧力室内の負圧は、予め選択された上下の圧力限界内に維持される。ポンプの休止時間中に(負の)圧力が連続的に(速やかに)解放されていることによって、透析液が妨げられることなく流れていることが分かる。圧力解放中の経過時間(t
R - 緩和時間)の測定を使用して、生み出された流体流の速度を推定することができる。蓄積室が透析液でいっぱいのときには、圧力をそれ以上解放することができず、圧力は、ある時間の間、静止する(t
S - 静止時間)。このことが圧力センサによって検出され、圧力センサは、ポンプを反転させて流入モードに切り換える。平均「流出」流量は、蓄積室の容積(「一回量」)を、蓄積室を完全にいっぱいにするのに必要な時間で割ったものに等しい。この流量は、予め選択する圧力限界の選択に依存し、したがって変更することができる。
【0082】
流入モード中には、同じポンプによって正の作動圧力が生み出される。続いて、蓄積室の中に入っていた透析液が押し出されて装置の吸着剤ゾーンを通過し、次いで患者へ戻される。ポンプは、蓄積室内の正圧が、予め選択された圧力の上限と下限の間に調節されるような態様で、断続的に動作する。蓄積室内の透析液は押し出されて吸着剤カートリッジを通し、それによって(正の)圧力を解放する。この圧力解放の持続時間(tR - 緩和時間)を使用して流量を推定することができる。ポンプ室が空のときには、圧力をそれ以上解放することができず、圧力は、ある時間の間、静止し(tS - 静止時間)、「流入」段階の完了を指示する。平均「流入」流量は、蓄積室の容積を、「流入」を完了するのに必要な時間で割ったものに等しい。
【0083】
図3はさらに、待機時間すなわち「ドウェル」時間(t
W)を示している。この時間は、全体流体交換速度を制御するために使用される。全体流量は、蓄積室の容積(一回量)を、総サイクル時間(t
C=流出+流入+ドウェル)で割ったものに等しい。例えば、特定の全体交換速度が所望の場合、システムは、このドウェル時間を、所望の総サイクル時間が経過するまでの融通の利く待機時間として使用することができる。
【0084】
図4aは、本開示の一実施形態に基づく使い捨てのハウジングの原型(400)を示す。
図4bは、
図4aの軸A-Aに沿って切った使い捨てのハウジングの断面図を示す。使い捨てのハウジングは、導管コネクタ(403)を介して制御ハウジング(図示せず)を受け取るための内部(402)を画定する囲い(401)を備える。使い捨てのハウジングは、圧力室(405)を画定する剛性区画(404)を備え、剛性区画(404)内には蓄積室(406)が配置されている。蓄積室は、蓄積室の壁にその壁と一体に形成された変形可能な隔膜(420)を有する。蓄積室(406)は、流体チャネル(416)を介して吸着剤ゾーン(407)と流体連通している。
【0085】
吸着剤ゾーン(407)は、疎水性膜(410)の形態の脱ガス器と流体連通した逆止め弁(409。
図4c及び4d参照)を備える。
【0086】
図4cは、
図4aの軸C-Cに沿って切った吸着剤モジュールの断面図を示す。強化モジュール(411)が、逆止め弁(413)を介して強化溶液リザーバ(412)と流体連通している。強化モジュール(411)はさらに、逆止め弁(414)を介して透析液の導管とも流体連通している。
【0087】
図4dは、
図4aの軸D-Dに沿って切った吸着剤モジュールの断面図を示す。再生された透析液は、逆止め弁(409)及び出口(415)を通って使い捨てのハウジングを出る。
【0088】
流出モードでの使用を説明する。使い捨てのハウジング(400。
図4a及び4b参照)の内部(402)に、制御ハウジング(図示せず)が配置される。制御ハウジング内のポンプが、導管コネクタ(403。
図4b参照)からポンプ流体を送り、それによって圧力室(405)内に負圧を生じさせることによって、蓄積室(406)の壁に位置する変形可能な隔膜(420)を、導管コネクタ(403)を介して作動させる。圧力室(405)内の負圧は、逆止め弁(408)を通して患者の腹膜腔から蓄積室(406)内へ透析液を移動させる。負圧下で蓄積室(406)が作動するのと同時に、強化モジュール(411。
図4c参照)も、ポンプによる負圧の下で、逆止め弁(413)を通して強化溶液リザーバ(412)から強化モジュール(411)内へ所定量の強化溶液が抜き取られるような態様で作動する。
【0089】
流入モードでの使用を説明する。蓄積室(406)がいっぱいになると、ポンプが、導管コネクタ(403)へ流体を送り、それによって圧力室(405)内に正圧を生じさせることによって、蓄積室(406)の壁に位置する変形可能な隔膜(420)を、導管コネクタ(403)を介して作動させる。圧力室(405)内の正圧は、蓄積室(406)から透析液を移動させる。逆止め弁(408)は閉じて、汚染物質を除去する処理の前に透析液が腹膜腔へ戻るのを防ぐ。透析液は、蓄積室(406)からチャネル(416)を通って吸着剤ゾーン(407)へ流入する。吸着剤ゾーン(407)を出た再生された透析液は、透析操作中に放出された不要なガスを除去するため疎水性膜(410)を通過する。ガスが除去された透析液は次いで、強化モジュール(411)及び逆止め弁(409)を通過し、管コネクタ(415)を通って使い捨てのハウジングを出る。
【0090】
流入モードでは、このポンプがさらに、強化モジュール(411)を正圧下で作動させ、逆止め弁(413)が閉じる。強化モジュール(411)は、電解質、浸透圧剤、栄養素、薬物などの所望の物質を含む予め選択された量の強化溶液を、逆止め弁(414)を通して透析液中に分配する。透析液は次いで、逆止め弁(409)及び管コネクタ(415)を介して腹膜腔に戻される。
【0091】
次に
図5を参照すると、使い捨てのハウジング(500)及び制御ハウジング(510)を含む、本明細書に開示された完全な流れシステムの一実施形態の原型の図が示されている。
【0092】
図6を参照すると、導管(20)の形態の流路を有する使い捨てのハウジング(601)の一実施形態が示されている。使い捨てのハウジング(601)は、腹膜腔(60)及び導管(20)と流体連通することができる柔軟な透析液管(50)を備える。この透析装置はさらに、剛性区画(180)内に位置する蓄積室(70)を備える。蓄積室(70)は、蓄積室(70)の壁の1つにその壁と一体に形成された変形可能な隔膜(71)を備える。変形可能な隔膜(71)は、1つの面が透析液導管(20)と流体連通し、反対側の別の面が圧力室(80)と流体連通する。
【0093】
ポンプ(670)は、変形可能な隔膜(71)を変形させ、それによって前記透析液導管(20)内の透析液を移動させる圧力変化を圧力室(80)内に生じさせることによって、変形可能な隔膜(71)を作動させるように構成されている。
【0094】
導管(20)に沿って逆止め弁(100、102、103、105)が配置されており、これらの逆止め弁は、流出モードでは、腹膜腔(60)から蓄積室(70)へ透析液が流れることを可能にし、流入モードでは、透析液中の汚染物質を除去するために透析液が蓄積室(70)から前記吸着剤ゾーン(110)へ流れることを可能にし、さらに、前記汚染物質を実質的に含まない透析液が腹膜腔(60)へ再び戻ることを可能にするように構成されている。
【0095】
使い捨てのハウジングはさらに、予め選択されたある量の強化溶液を透析液に分配するための別個の強化モジュール(620)を備える。この図では、強化モジュールが透析液流路と流体連通していない。強化モジュールは強化溶液リザーバ(621)を備える。強化溶液リザーバ(621)は、生体適合材料から製造された、強化溶液(図示せず)を保持するためのバッグの形態の容器である。強化モジュール(620)は、使い捨てのハウジング(601)の透析液導管(20)と流体連通するように適合されたコネクタ(622)を備える。強化モジュール(620)内の強化溶液の無菌性を維持するため、コネクタ(622)は、使い捨てのハウジングに挿入されるまで封止される。使い捨てのハウジングは、強化モジュール(620)上に配置されたコネクタ(622)と相補的な構成の雄型コネクタ(623)を備える。対合させるとき(
図7参照)、雄型コネクタ(623)は、強化モジュール(620)の強化リザーバ(621)と使い捨てのハウジング(601)の透析液導管(20)との間の流体接続を形成するためにコネクタ(622)のシールを破壊する役目を果たす。
【0096】
使い捨てのハウジング(601)はさらに、所定量の強化溶液を透析液導管(20)に追加するための強化ポンプ(660)を備える。
【0097】
さらに、吸着剤ゾーン(110)の下流には、疎水性膜(150)の形態の脱ガス器が位置する。疎水性膜(150)の外面は、空気導管(630及び631)と流体連通している。
【0098】
脱ガス器の区画内には、透析液流路上の疎水性脱ガス膜(150)のすぐ下流側に、親水性膜(610)が配置されている。親水性膜(610)は、吸着剤ゾーン(110)を出た透析液に含まれるガス、粒子及び細菌が腹膜腔(60)に到達することを防ぐバリアの役目を果たす。この膜はさらに、脱ガス膜(150)によるガス抜きを容易にする背圧を生み出す。
【0099】
図7を参照すると、開示の透析装置(700)の一実施形態が示されている。この透析装置は、導管(20)の形態の流路を有する使い捨てのハウジング(601)と、使い捨てのハウジング(601)の動作を制御する制御ハウジング(690)の形態のコントローラとを備える。使い捨てのハウジング(601)及び制御ハウジング(690)は、制御ハウジング(690)と使い捨てのハウジング(601)とを接続する導管コネクタ(691a、691b、691c)の形態のインタフェース手段を備える。これらの導管コネクタをロック式に係合させると、使い捨てのハウジング(601)と制御ハウジング(690)とが動作可能に係合する。使い捨てのハウジング(601)の導管(20)は、制御ハウジング(690)及び導管コネクタ(691a、691b、691c)から流体封止されている。
【0100】
透析装置(700)は、腹膜腔(60)及び導管(20)と流体連通することができる柔軟な透析液管(50)を備える。この透析装置はさらに、剛性区画(180)内に位置する蓄積室(70)を備える。蓄積室(70)は、蓄積室(70)の壁の1つにその壁と一体に形成された変形可能な隔膜(71)を備える。変形可能な隔膜(71)は、1つの面が透析液導管(20)と流体連通し、反対側の別の面が圧力室(80)と流体連通する。使い捨てのハウジング(601)と制御ハウジング(690)とが互いに動作可能に結合されているとき、導管コネクタ(691a、691b、691c)は、使い捨てのハウジング(601)の圧力室(80)を、制御ハウジング(690)内に位置する空気ポンプ(670)に流体結合する。
【0101】
空気ポンプ(670)は、圧力室(80)内に圧力変化を生じさせることによって変形可能な隔膜(71)を作動させるように構成されている。この圧力変化は、変形可能な隔膜(71)を変形させ、それによって前記透析液導管(20)内の透析液を移動させる。
【0102】
導管(20)に沿って逆止め弁(100、102、103、105)が配置されており、これらの逆止め弁は、流出モードでは、腹膜腔(60)から蓄積室(70)へ透析液が流れることを可能にし、流入モードでは、透析液中の汚染物質を除去するために透析液が蓄積室(70)から前記吸着剤ゾーン(110)へ流れることを可能にし、さらに、前記汚染物質を実質的に含まない透析液が腹膜腔(60)へ再び戻ることを可能にするように構成されている。
【0103】
この図では、別個の強化モジュール(620)が、使い捨てのハウジング(601)内に位置する。強化モジュール(620)のコネクタ(622)は、使い捨てのハウジングの雄型コネクタ(623)と対合して、強化モジュール(620)の強化リザーバ(621)と使い捨てのハウジング(601)の透析液導管(20)との間に流体接続を形成している。
【0104】
使い捨てのハウジング(601)はさらに、所定量の強化溶液を透析液導管(20)に追加するための強化ポンプ(660)を備える。強化ポンプ(660)は、空気ポンプ(670)と流体連通した隔膜(661)を備える定容量型ポンプである。空気ポンプ(670)は、強化ポンプ(660)の隔膜(661)及び蓄積室(70)の変形可能な隔膜(71)に、正又は負の空気圧を加え、同時に、透析液導管(20)を通して透析液を循環させるニューマティクポンプとしても機能する。強化ポンプ(660)の隔膜(661)の一方の側には、空気ポンプ(670)に流体接続する空気区画があり、もう一方の側は、対合したコネクタ(622、623)を介して強化リザーバ(621)リザーバに接続する強化溶液区画である。強化溶液区画に負圧がかかっているときには、強化リザーバ(621)から強化溶液が抜き取られる。空気区画に正圧が加わっているときには、強化ポンプ(660)から透析液導管(20)内へ強化溶液が押し出される。
【0105】
さらに、吸着剤ゾーン(110)の下流には、疎水性膜(150)の形態の脱ガス器が位置する。疎水性膜(150)の外面は、空気導管(630及び631)と流体連通している。通常の透析操作において、空気導管(630)は、アンモニアセンサ(140)へ通じる出口であり、空気導管(630)は空気ポンプ(670)と流体連通している。脱ガスの間、制御ハウジング(690)内の空気ポンプ(670)は、透析液導管(20)内の透析液からガスを除去するため負圧を与える。逆止め弁(680)は、外部の空気が空気導管(630)に入ることを防ぐ。
【0106】
疎水性膜(150)の下流の親水性膜濾過器(610)は、透析液に含まれるガス、粒子及び細菌が腹膜腔(60)に到達することを防ぐ。膜(610)はさらに、疎水性膜(150)によるガス抜きを容易にする背圧を生み出す。
【0107】
図8a及び8bは、本発明に基づく封止されたコネクタ(622)の一実施形態を示す。強化モジュール(620)上のコネクタ(622)は、使い捨てのハウジング(601)上に位置するコネクタ(623)によって取り除くことができる栓(800)を備える。
図8bでは、栓(800)を取り除くために、強化モジュール上のコネクタ(622)が、使い捨てのハウジング(601)上のコネクタ(623)と対合している。
【0108】
図9a及び9bは、本発明に基づく封止されたコネクタ(622)の一実施形態を示す。強化モジュール(620)上のコネクタ(622)は、使い捨てのハウジング(601)上に位置するコネクタ(623)によって穴をあけることができる栓(800)を備える。
図8bでは、栓(800)に穴をあけるために、強化モジュール上のコネクタ(622)が、使い捨てのハウジング(601)上のコネクタ(623)と対合している。
【0109】
図10a及び10bは、
図9a及び9bの封止されたコネクタの実施形態を示す。強化モジュール(620)上のコネクタ(622)は、使い捨てのハウジング(601)上に位置するコネクタ(623)によって穴をあけることができる栓(800)を備える。
図10bでは、栓(800)に穴をあけるために、強化モジュール上のコネクタ(622)が、使い捨てのハウジング(601)上のコネクタ(623)と対合している。この強化モジュールは、添加剤溶液を保持するための剛性容器であり、容器の端には、コネクタ(622)と連通したスポンジ(1001)が位置する。このスポンジは、強化リザーバ(621)から透析液導管(20)への強化溶液の送達を容易にする。
【0110】
図11は、強化モジュール(620)内の容器の他の実施形態を示す。この図では、この容器が、弾性的に変形可能なボトル(1101)の形態を有する。左側のボトルには強化溶液がいっぱいに入っている。図の右側のボトルは使用されて空になっている。
【0111】
図12aは強化ポンプ(660)の断面図を示す。強化モジュール(620)は、対合したコネクタ(622及び623)を介して強化ポンプ(660)と流体連通した強化リザーバ(621)を備える。強化ポンプ(660)は、空気ポンプ(図示せず)と流体連通した空気室(662)と、強化リザーバ(621)と流体連通した強化溶液室(663)とを画定する隔膜(661)を備える。
【0112】
図12bは、流出サイクルにおける
図12aの大写し図を示す。透析液流出サイクルにおいて、空気ポンプが50mmHgを超える負圧を加えると、強化リザーバ(621)から、強化ポンプ(660)の強化溶液室(663)内へ強化溶液が抜き取られる。
【0113】
図12cは、流入サイクルにおける強化ポンプ(660)を示す。流入サイクルにおいて、空気室(662)内に200mmHgよりも大きな正圧が加わると、強化溶液室(663)が空になり、ある固定された体積の強化溶液VEPが、出口(1201)を通って透析液導管に流入し、透析液導管内の透析液と混ざり合う。
【0114】
図13及び14は、本開示に基づく透析装置に対する電池試験の結果を示す。実験の目的は、大容量透析カートリッジの動作を少なくとも12時間維持するのに必要な電池の最小容量を決定することである。システムの平均消費電力153mAを基にすれば、12時間動作させるのに必要な最小電池容量は少なくとも1836mA時になる。したがって、電池容量の少なくとも80%を1年にわたって維持するためには、最小電池が2203mA時である必要がある。この値は、電池の動作サイクルが300サイクルを超えたときには電池容量がその電池の全体容量の80%まで低下するとする電池の容量維持仕様に基づく(1836mA時×120%)。システムの実際の使用持続時間を決定するため、11.1V、2250mA時のリチウムポリマー電池を使用して2つの試験を実行した。
【0115】
試験1:
圧力の緩和なしでポンプのオンとオフを切り換えて、圧力を400mmHg(流入)又は-100mmHg(流出)に維持する通常の流れ制御に対する代表的な動作シナリオを仮定した。その結果によれば、容量が2250mA時の電池は、ファームウェアによって10.5Vで運転が停止されるまでに、上記の動作を18時間維持することができた。
図13は、この実験における電池の電圧降下を動作時間に対して示したグラフを示す。
【0116】
試験2:
第2の試験では、流入サイクルと流出サイクルの全動作の間、ポンプが常にオンであるワーストケースシナリオを仮定した。その結果によれば、この電池は、ファームウェアによって10.5Vで運転が停止されるまでに、14.5時間機能し続けることができる。この実験における電池の電圧降下を動作時間に対して示したグラフを以下に示す。
【0117】
図15aは、本開示に基づく脱ガス器(1501)の分解図を示す。この脱ガス器は、2つの疎水性膜(1502)及び(1503)の形態のガス抜き手段を備える。それらの疎水性膜は、親水性膜(1504)の両側に平行に配置される。疎水性膜(1502及び1503)はそれぞれ、空気抜き(1505及び1506)に隣接して配置される。この脱ガス器はさらに、空気入口/出口(1507及び1508)及び透析液出口(1509)を備える。透析装置の透析液導管内の透析液からガスを除去するために、透析液中のガスが疎水性膜、続いて空気抜きへ流れるのを容易にするため、親水性膜は湾曲している。使用時、4マイクロ紙濾過器が、透析装置内の吸着剤ゾーンの上面を封止し、この紙濾過器は脱ガス器によって覆われる。親水性膜は、スペーサ(図示せず)によって紙濾過器に隣接した位置に配置される。親水性膜は、吸着剤ゾーン及び紙濾過器からの吸着剤粉末の漏れを低減させ、細菌濾過器としても機能する。
【0118】
図15bを参照すると、通常の透析操作では、第1の空気出口(1507)がアンモニアセンサと流体連通し、第2の空気出口(1508)が、別の接続空気口(図示せず)を介して脱ガス排気管と流体連通する。吸着剤カートリッジ排気の場合にアンモニアガスの存在を検出するときには、大気が、コントローラ内の絞り弁又は任意の安定流被拘束弁(stable flow constrained valves)を通して流れ、制御された量の空気が、第1の空気出口(1507)を通って疎水性膜の上方の空気導管へ流れ、空気導管の他端から第2の空気出口(1508)へ流出し、コントローラ内のアンモニアセンサへ循環することを可能にする。脱ガスしている間、コントローラ内の空気ポンプは負圧を与えて、空気導管内のガス、特にCO
2を、第1の空気出口(1507)を通してコントローラ内の排気管へ除去する。
【0119】
図16を参照すると、フィブリントラップ(1601)の分解図が示されている。透析時、透析液が少量のフィブリンを含むことがある。このトラップは、入口弁(1602)と、入口弁(1602)の反対側に位置する濾過器(図示せず)とを備える。入口弁は、スタッド(1605)上に蝶番で取り付けられた弾性的に変形可能な円板の形態を有し、入口弁は、トラップに流入する透析液の流れから離れた位置に蝶番が配置され、したがって透析液中に存在するフィブリンを蝶番が捕捉しないような態様でスタッド(1605)上に取り付けられる。使用時、透析液は、入口(1604)を通ってトラップに入り、円板弁(1602)を通過する。円板弁はスタッド(1605)上に位置する。流出モードの間、円板弁(1602)は入口(1604)に対して閉じられ、吸着剤ゾーンから患者へ透析液が流れることを防ぐ。吸着剤ゾーンに入る透析液はフィブリンを含む可能性がある。濾過器(1603)はフィブリンが吸着剤ゾーンに入ることを防ぎ、したがってフィブリンはトラップ(1601)に保持される。
【0120】
図17Aは、本発明の一実施形態に基づく電力接続スイッチを示す。スイッチ(1701)はコントローラ(1702)内に位置する。コントローラ(1702)が使い捨てのハウジングに結合されていないとき、このスイッチは開いた状態にある。溝(1704)の中には、スイッチ(1701)にじかに隣接したゴム管(1703)の形態の弾性的に変形可能な材料が配置されている。
【0121】
使い捨てのハウジング(1707)上の破壊することができるフレーム(1706)上にはピン(1705)が位置し、ピン(1705)は、コントローラ(1702)上に位置する溝(1704)と相補的な形状を有する。使い捨てのハウジングとコントローラを互いに結合させると、溝(1704)の中にピン(1705)が受け取られ、コントローラ(1702)によってフレームが変形し、破壊される(1708)(
図17B)。
【0122】
溝(1704)の中に位置するとき、ピン(1705)は、ゴム管(1703)に対して正の圧縮力を加え、ゴム管(1703)はスイッチ(1701)を閉じる。フレームは、ピンをゴム管の方へ押して、スイッチ(1701)を閉じた状態で作動させ続ける(
図17B)。このとき、スイッチ(1701)は、電池(図示せず)をコントローラに電気的に接続して、患者が透析装置を使用することを可能にする。折れたフレーム(1706)はもはや、コントローラ(1702)上の溝(1704)にピン(1705)を再び挿入するために、ピン(1705)をしっかりとまっすぐに保持することはできない。
【0123】
この装置の利点は、流路がコントローラから流体封止されているため、使い捨てのハウジングを毎日廃棄することにより、装置の無菌性を維持することができることである。
【0124】
この透析装置の他の利点は、使い捨てのハウジングとコントローラの間のコネクタが1つで済み、したがって、これにより、動作させるための装置の準備の複雑さが低減することである。
【0125】
他の利点は、本開示に基づく透析装置のサイズを、他の透析装置に比べてかなり小さくすることができることである。
【0126】
他の利点は、本開示に基づく装置のエネルギー効率が高いことである。
【0127】
本開示に基づく装置の他の利点は、流体移動手段が蓄積室の壁と一体に形成されているため、それにより、透析装置のポンピング機構を蓄積室が共用することができ、それによって使い捨てのハウジングのサイズを低減することができることである。さらに、こうすると、患者が、より携行しやすく邪魔にならない装置の構造を使用することができるため、このことは有利である。
【0128】
他の利点は、装置の生物汚染又は化学汚染を防ぐために、使い捨てのハウジングとコントローラの間のコネクタが流体封止されていることである。この装置の利点は、流路がコントローラから流体封止されているため、コントローラによる透析液の生物及び/又は化学汚染の危険性がかなり低下することである。
【0129】
この装置の他の利点は、1つのポンプだけ及び1つのインタフェースコネクタだけが必要であるため、それにより追加のポンプ及び追加の接続に対する要求が低減し、その結果、透析装置のサイズが、知られている透析装置に比べてかなり小さくなることである。
【0130】
本開示の装置の他の利点は、蓄積室、添加剤分配手段及びガス抜き手段を稼動させるのに1つのポンプだけが必要であるため、これによりさらに、装置の小型化が可能になり、携行性及びエネルギー効率が向上することである。
【0131】
他の利点は、蓄積室、添加剤分配手段及びガス抜き手段を稼動させるのに1つのポンプだけが必要であるため、装置の複雑さがかなり低減し、その結果、知られている透析装置に比べて製造コストが低下することである。
【0132】
この装置の他の利点は、圧力センサを使用してさらに、患者の腹腔内の圧力を、追加の圧力センサなしで測定することができることである。
【0133】
本発明の他の実施形態は、腹膜透析及び血液透析のための生体適合性及び遠隔のアンモニア感知システムを提供しようとするものである。感知システムは、有利には安全な方法で絶えず透析液のアンモニウムのレベルをモニターすると同時に、アンモニア感知システムまで運ばれるアンモニアガスの量が限られているという課題を解決することができる。感知システムは、透析装置用の安全機構として機能するように、再生された透析液のアンモニウム濃度を遠隔距離からモニターすることができる。例示的な実施形態に基づく感知システムは、小型化され、携行及び着用が可能な透析装置に特に適している。
【0134】
発明者等は、小型化され、携行及び着用が可能な腹膜透析装置が、(i)透析液の無菌性を維持するために、アンモニア感知部分を透析液ラインに近づけないこと、(ii)吸着剤の交換を簡単にし、コントローラ及び使い捨ての透析ハウジングの設計並びに組み立てを容易にするために、アンモニア感知用の構成部品を疎水性膜に近づけないこと、並びに(iii)透析装置をできるだけ携行及び着用が可能であるようにすることなど、いくつかの特定の利用条件を必要とすることを認識している。
【0135】
しかしながら、上述の特定の利用条件によって、いくつかの課題が生じる。第1に、再生された透析液がその安全限界のアンモニウムレベルに達したときに、疎水性バリアで生成されるアンモニアガスの量が限られている。第2に、限られた量のアンモニアガスを(遠隔位置にある場合がある)アンモニア感知システムに送達し、その存在を検出することが難しい可能性がある。
【0136】
限られた量のアンモニアガスをアンモニア感知システムまで輸送するためには、ガス接続管路がアンモニアガスに適合していなければならないが、それは、その材料がアンモニアガスと反応しない、又はアンモニアガスを吸着しない、またアンモニアガスも同様の化学物質も放出しないようにすべきであることを意味している。
【0137】
限られた量のアンモニアガスの輸送を容易にするには、疎水性バリアとアンモニア検出器の間のインタフェースにおけるガス輸送を制御しなければならない。限定はされないが、ガスをアンモニア検出器に送達する追加の駆動力を導入することを含む他の手段によって、ガス輸送の効率を高めることができる。これにより、遠隔のアンモニア感知システムの感度を高めることができる。
【0138】
図18は、本発明の一実施形態に基づく感知システム1800の略図である。感知システム1800は、ガス「発生器」1802、発生したガスを検出することができる検出器1804、ガス発生器1802と検出器1804の間のインタフェース(例えば、ガス管路又はチャネル)1806、及び適切な組のファームウェアを含む電気システム(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、感知システム1800は、アンモニアガスを感知するように設計される。この実施形態では、ガス発生器1802はアンモニアガス発生器であり、検出器1804はアンモニア/アンモニウム検出器である。
【0139】
上述の感知システム1800、及び以下に記載する感知システムの様々な代替実施形態は、アンモニアの検出について記載されるが、記載される感知システムを使用して、他のタイプのガスも検出可能であることが理解される。限定的ではないが例として、システムは、アセトンなどの揮発性有機化合物(VOC、volatile organic compound)、又はCO2 O2、SO2、HCN、NOxなど、医学的状態の検出に使用される他のバイオマーカを検出するように構成することができる。
【0140】
透析液は、点1809で液体ライン1808に流入し、毒素除去器1812を含む吸着剤カートリッジを通過する。透析液は、毒素の除去後に点1810から流出する。アンモニアガス発生器1802は、毒素除去器1812から来る透析液の液体の流れと直接接触する。
【0141】
アンモニアガス発生器1802は、アンモニアガス(NH3)が、限定はされないが、疎水性膜、中空の繊維などの疎水性バリアを横断し、気相に入る部分である。アンモニア(NH3)は、透析液中でアンモニウム(NH4
+)とpH依存の平衡状態にある。アンモニアガス発生器1802は、アンモニア検出器1804に対して遠位の点に配置される。以下の説明において、用語「アンモニア」及び「アンモニウム」は、例えば「アンモニア/アンモニウム検出器」など互換的に使用されることがある。例示的な一実施形態では、透析液中のアンモニウム(NH4
+)は、アンモニアガス(NH3)に対して平衡を保つ。「検出器」はアンモニアガスを検出するように構成されるが、透析液中のNH4
+の濃度は、発生したNH3ガスに比例する。したがって、「検出器」はアンモニウム検出器と考えることもできる。したがって、説明では、2つの用語は実質的に同等のものと解釈される。
【0142】
一実施形態では、アンモニアガス発生器1802は、疎水性バリアとすることができる。疎水性バリアは、再生された透析液の液体の流れと直接接触する。透析液中にアンモニウムが存在すると、アンモニウムは疎水性の脱ガスバリア上で平衡を保ち、アンモニアガスを発生させることができる。例示的な一実施形態では、疎水性バリアは、脱ガス用の膜又は脱ガス用の繊維/樹脂である。他の実施形態では、疎水性バリアは細菌濾過器である。
【0143】
一実施形態では、アンモニア検出器1804は、疎水性バリアであるアンモニアガス発生器1802におけるアンモニアガスの存在を検出することができるが、それは、疎水性バリアの他方の側(疎水性バリアの液相側)での再生された透析液中のアンモニウム濃度を反映する。
【0144】
化学的なセンサ(例えば、化学的に敏感な材料及びマトリクス、pHに敏感な比色材料など)、電気的なセンサ(例えば、半導体ベースのセンサ、ナノ粒子、ナノワイヤ及びカーボンナノチューブ、グラフェンセンサなど)、生物学的なセンサ、並びにそれらの組み合わせ及び/又はそれらの派生物を含む、様々なタイプのアンモニアセンサを使用することができる。用語「センサ」及び「検出器」は、説明において互換的に使用されることがあり、実質的に同等のものと解釈される。
【0145】
一実施形態では、インタフェース1806は、(疎水性バリアの気相側における)アンモニアガス発生器1802からのアンモニアガスが、遠隔位置にあるアンモニアガス検出器1804に対して流体連通することを可能にするように構成されたチャネルである。用語「流体連通」は、ガス発生器1802からアンモニアガス検出器1804へのアンモニアガスの輸送を可能にする、拡散を含む適当な送達機構を指すことがある。チャネルに使用される材料は、中性又は塩基性(すなわち、アンモニアガスに適合する)、及び非多孔性であることが好ましい。アンモニアガスに適合する材料は、アンモニアガス又は他の同様の化学物質を吸着することも放出することもない。有利には、インタフェース材料の非多孔性が、限られた量のアンモニアガスの不要な物理的吸着を最小限に抑える。チャネルに適した材料には、限定はされないが、金属、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、polytetrafluoroethylene)(「Teflon」)、ポリ塩化ビニル(PVC、polyvinyl chloride)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS、acrylonitrile butadiene styrene)、ポリエチレン(PE、polyethylene)及びポリプロピレン(PP、polypropylene)が含まれる。
【0146】
他の実施形態では、ガスチャネルの寸法(例えば長さ、厚さなど)を最適化することによって、アンモニア感知システムの感度を高めることができる。例示的な一実施形態では、チャネルは約1cm~約50cmの長さである。さらに他の例示的な実施形態では、チャネルが、約0.1mm~約10mmの長さであり、約1.0mmの長さであることが好ましい。
【0147】
一実施形態では、インタフェース内での液体の凝縮を低減することによって、アンモニアガスのアンモニアガス検出器への輸送を高めることができる。アンモニアガスは中性の水性液に簡単に溶解する可能性があるため、インタフェースチャネル内での液体の凝縮を低減することによって、有利にはアンモニアガスの移動が増す。
【0148】
例示的な一実施形態では、アンモニアガスの輸送を高めるために、凝縮を最小限に抑えるように、熱分離バリアを使用して熱の損失を低減し、システムの温度をできるだけ一定に保つことができる。限定的ではないが例として、熱分離バリアは、着用可能な透析装置を収納するための、熱分離パッドを有するキャリヤバッグとすることができる。さらに他の実施形態では、ガスチャネルの中に適切なアンモニアガスに適合する吸水体を導入することによって、有利には生じ得るいかなる凝縮液滴も吸収する。適切な吸水体には、限定はされないが、アルカリ性又は中性の材料、例えばソーダ石灰、セルロース、及びその誘導体ベースのポリマーなどが含まれる。
【0149】
他の実施形態では、インタフェースの長さが、約0.1mm~約10mmであるように構成されており、約1.0mmであるように構成されているとより好ましい。有利には、この実施形態に基づくインタフェースのこの長さが、インタフェースに沿ったガス物質の濃度勾配に従った疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送/拡散を可能にする。
【0150】
他の実施形態では、チャネルの中でアンモニアガスに適合するガス吸着器を使用して、干渉を最小限に抑え、アンモニア感知システムの感度を高めることができる。適切な吸着体には、限定はされないが、アルカリ性又は中性の材料、例えばソーダ石灰、セルロース、及びその誘導体ベースのポリマーなどが含まれる。
【0151】
アンモニア検出器1804を通り過ぎたアンモニアガスは、当業者に知られている適切な手段を使用して、点1814から排出することができる。
【0152】
例示的な一実施形態では、遠隔のアンモニア感知システムは、アンモニアガスを検出器に対して遠位の点から検出器まで輸送することができる送達機構/媒体を備える。換言すれば、媒体によって、発生したアンモニアガスを疎水性バリアから、インタフェースに沿ってアンモニアセンサ/検出器まで輸送することが容易になる。媒体は、ガス、及び電場又は磁場のリストから選択することができる。他の実施形態では送達機構が拡散であってもよい。
【0153】
例示的な一実施形態では、アンモニアガスを現時の位置から疎水性バリアの気相側の遠隔位置まで輸送することを容易にするために、疎水性バリアの気相側のまわりでガスを循環させる。循環させたガスは、アンモニアガスをアンモニア検出器に送達する。この実施形態では、追加のポンプを使用して追加の駆動力を提供することができる。
【0154】
図19は、本発明の一実施形態に基づく、ガスの循環を使用するアンモニア感知システム1900の略図である。システム1900は、追加の駆動力を提供することができるポンプ1950を含む。透析液の流路1908が、アンモニアガス発生器1902によってガス流路1906から分離される。アンモニア検出器1914、逆止め弁1952及びポンプ1950は、ガス流路1906に動作可能に接続される。ポンプ1950は、アンモニアガス及び他の脱ガス後のガス混合物を、ガス流路1906のまわりで循環させる駆動力を提供する。ガス流路1906のまわりでガスの単一方向の流れを生成するために、逆止め弁1952と一緒に一方向ポンプを使用することができる。循環の構成はまた、発生器からのアンモニアガスの最高濃度を有する送達媒体のみが検出器へ押し進められる点において、往復式のポンプ構成にまさる利点を有する。したがって、この構成は、システムにより高い感度をもたらすことができる。
【0155】
他の実施形態では、アンモニアガスをアンモニア検出器の遠隔位置に送達するために、脱ガス後のガスをガスループの中で前後に移動させる。この実施形態では、追加の二方向ポンプを使用して駆動力を提供することができる。
図20は、本発明の一実施形態に基づく、ガスの往復動(行き来する移動)を可能にするアンモニア感知システム2000の略図である。システム2000は、追加の駆動力を提供することができるポンプ2050を含む。透析液の流路2008が、アンモニアガス発生器2002によってガス流路2006から分離される。アンモニア検出器2014及びポンプ2050は、ガス流路2006に動作可能に接続される。ポンプ2050は、ガスをガス流路2006の中で前後に移動させる二方向ポンプとすることができる。この実施形態において、ガスの前後の動きによって提供される循環型ポンプにまさる利点は、ガスが疎水性バリア上で押されると、ガスが、生じる可能性のあるバリアを妨げる微小な液滴を改善するのを助けることである。この構成により、試験用の構成では、循環の構成に比べて凝縮が低減される。この実施形態では、ガスの前後の動きは、循環型ポンプにまさる1つの利点を有する。ガスが、疎水性バリア上で押されると、ガスが、生じる可能性のあるバリアを妨げる微小な液滴を改善するのを助ける。この構成により、試験用の構成では、循環の構成に比べて凝縮が低減する。
【0156】
他の実施形態では、疎水性バリアと検出器の間のガスの前後の移動を生じさせるために、疎水性バリアが、透析液の圧力変化に応答して変形するように構成された変形可能な隔膜であって、この変形可能な隔膜の変形に応答してインタフェース内でガス移動が生じるような変形可能な隔膜を含む。
図20を参照すると、疎水性バリアが、アンモニアガス発生器2002及びポンプ2050として機能する。
【0157】
換言すれば、疎水性バリアは透析液の流れと流体連通しているため、透析液の圧力が変化すると疎水性バリアが変形する。疎水性バリアが変形するとインタフェース内のガスが移動する。インタフェース内のガスが移動すると、その結果として、疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送速度が増大するような態様で、インタフェース内のガスが脈動的に前後に移動することがある。
【0158】
疎水性バリアは、変形可能な隔膜(71)と同様の方式で実現することができる。疎水性バリアの脈動は、透析液の(例えば蠕動ポンプを用いた)ポンピングに起因する透析液の流体圧力の変化/脈動によって生じさせることができる。インタフェースの長さは、約1mmとなるように構成されていることが好ましい。
【0159】
一実施形態では、透析液中の物質(例えばアンモニウム又はアンモニア)を検出するための感知システムが提供される。このシステムは、疎水性バリアであり、このバリアを通して透析液中の物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる疎水性バリアと、ガスを検出することができる検出器と、疎水性バリアと検出器の間に配置されたインタフェースであり、インタフェースに沿ったガスの濃度勾配に従った疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送を可能にするように構成されたインタフェースとを含む。
【0160】
インタフェースは、約0.1mm~10mmの長さであるように構成されており、約1.0mmの長さであるように構成されていることが好ましい。
【0161】
疎水性バリアは透析液と流体連通し、疎水性バリアは、透析液の圧力変化に応答して変形するように構成された変形可能な隔膜を含むことができる。疎水性バリアは、脱ガスバリア又は細菌濾過器を含むことができる。
【0162】
変形可能な隔膜の変形は、インタフェース内でのガス移動を生じさせて、疎水性バリアと検出器の間のガスの輸送速度を増大させる。インタフェースは、インタフェース内に、アンモニアガスに適合する吸水体を含むことができる。
【0163】
この感知システムはさらに使い捨てのハウジングを含むことができ、この使い捨てのハウジングは、透析液流路及び疎水性バリアを含むことができる。インタフェースは、使い捨てのハウジングと検出器の間に配置することができる。検出器は、使い捨てでない構成部品とすることができる。
【0164】
一実施形態では、検出器が、アンモニア若しくはアンモニウムイオンにさらされると変色する、又はアンモニア若しくはアンモニウムイオンの存在下で変色する材料又は指示ストリップを含むことができる。一実施形態では、検出器が光化学センサである。他の実施形態では、検出器が、アンモニアに敏感な膜を含む。他の実施形態では、検出器が、アンモニアをモニターする導電率センサを含むことができる。一実施形態では、検出器が、アンモニア選択性の電位差電極又は電流測定電極である。
【0165】
他の実施形態では、透析液中の物質を検出するための感知システムであって、透析液と接触する疎水性バリアであり、このバリアを通して透析液中の物質がガスに対して平衡を保つことを可能にすることができる疎水性バリアと、ガスを検出することができる検出器と、疎水性バリアと検出器の間に配置されたインタフェースであり、疎水性バリアと検出器の間のガスの流体連通を可能にするように構成されたインタフェースと、透析液と接触する変形可能な隔膜であり、透析液の流体圧力の変動に応答したインタフェース内でのガスの前後の移動を生じさせるように構成された変形可能な隔膜とを含む感知システムが提供される。
【0166】
このシステムはさらに、疎水性バリア及び変形可能な隔膜が透析液流路を流れている透析液と接触するような態様の透析液流路を含むことができる。
【0167】
或いは、疎水性バリアは変形可能な隔膜を含む。すなわち、疎水性バリアと変形可能な隔膜とを単一の構成部品として物理的に統合することができる。
【0168】
このシステムはさらに、蠕動ポンプの動作が透析液の流体圧力の変動を生じさせるような態様の蠕動ポンプを含むことができる。
【0169】
さらに他の実施形態では、アンモニアガスをアンモニア検出器の遠隔位置に送達する送達/キャリヤガスとして、外部のガスを使用することができる。この実施形態では、外部のガスを、主要なポンプ2150(
図20参照)を介してガスループに導入することができる。このことは、
図25においてより明確に示される。システム全体の流入段階の間、システムのファームウェアが、弁2506の動きを制御する。主要なシステムは正圧下にあるため、ガスの制御された部分が、弁2504を経てガスインタフェースの中に放出され、その後、発生器2562(疎水性バリア)に達する。適切な外部のガスには、限定はされないが、空気又は窒素が含まれる。
【0170】
システムの実施形態の4つの例示的な構成を、
図21(a)~(d)に示す。4つの構成は全て、アンモニアガス発生器2102によってガス流路2106から分離される透析液の流路2108を備える。アンモニア検出器2114、逆止め弁1952a/b、弁2154及びポンプ2150が、ガス流路2106に動作可能に接続される。いくつかの実施形態では、弁2154は、オリフィスとの結合の有無にかかわらずスイッチコンセプト弁(switch concept valve)、ソレノイド弁、又は当業者に知られている他のタイプの弁とすることができる。
【0171】
より詳細には、第1の構成(すなわち
図21(a))のガスの接続パターンは、それぞれ
図22(a)及び(b)に示す、透析液の流入段階及び透析液の流出段階を説明するために最適化してある。流入段階の間、弁2154が接続される。ガスは、アンモニアセンサ2114及び逆止め弁2152aを通って流れ、アンモニアガスはガス流路2106から排出される。流出段階の間、弁2154は切り離される。ガスはアンモニアセンサ2114及び逆止め弁2152bを通って流れ、弁2150を経てガス流路2106から出て、透析装置に戻る。
【0172】
より詳細には、第1の構成(すなわち
図21(a))のガスの接続パターンは、それぞれ
図22(a)及び(b)に示す、透析液の流入段階及び透析液の流出段階を説明するために最適化してある。
図22aでは、流入段階の間、主要な運転中のシステムは正圧下にある。ファームウェアが弁2154を接続する。ガスは、ポンプ2150からガスチャネル2106へ流れる。輸送媒体は、まずアンモニアガス発生器2102に達し、次いで(発生器2102と検出器2114の間にある)ガスインタフェース2103を通り、アンモニアセンサ2114に至る。
【0173】
流出段階の間、主要なシステムは負圧下にあり、ファームウェアは弁2154を切り離す。外部のガスは、ガスチャネルに入らない。ガスチャネルは、主要なポンプ2150によって排気される。脱ガス後のガスはガスインタフェースを通過し、アンモニア/アンモニウム検出器に達する。ガスチャネルの圧力がシステムの外部の圧力より低いため、ガスはさらに、弁2152aではなく弁2152bへ移動する。ガスは、弁2152bを通り、主要なポンプ2150を経て主要なシステムの排気装置(
図25 2158)へ流れる。
【0174】
上述の機構の組み合わせを使用して、検出器に対して遠位の点から検出器までのアンモニアガスの輸送を容易にすることができる。例えば、窒素を含むキャリヤガスを、二方向ポンプと共に使用することができる。
【0175】
送達/キャリヤガスを使用するとき、連続的又は断続的なガスのパターンを使用することができる。ガス管路内の送達ガスの量は、最適化することが好ましい。送達ガスが少なすぎると、アンモニアガスをアンモニア検出器まで輸送する十分な駆動力を生成することができない。一方において、送達ガスの流れが多すぎると、限られた量のアンモニアガスが薄められ、場合によってはアンモニアガスの濃度が下がり、アンモニア検出器の検出限界から外れる可能性がある。送達ガスの流れを最適化することによって、アンモニアガスが所望の時間内でアンモニア検出器まで運ばれるようになる。例示的な一実施形態では、ガスの流れの範囲は、約2~50ml/分及び/又は5~200ml/ストロークである。実施形態において最適化された結果は、約5~25ml/分及び/又は30~70ml/ストロークである。
【0176】
適切な最適化後の連続的なキャリヤガスのパターンは、理論的にはガス送達により効率的である。しかしながら、それは比較的多くの動力を消費し、キャリヤガスを輸送する追加のポンプを必要とする場合がある。
【0177】
断続的なキャリヤガスのパターンは、必要な動力はより少なく、必要な時点で必要な量のキャリヤガスをシステムの中に放出するのに、透析コントローラ装置2500の主要なガスポンプ2512(
図25参照)を使用することができる。
【0178】
一実施形態では、電子制御手段及びプロセッサ(すなわち、電気的なシステム及びファームウェア)が、アンモニアガスを遠隔位置まで輸送するための駆動力を制御し、自動化されたコントローラとして機能する。適切な組のファームウェアは、アンモニアガスをガス発生器からアンモニア検出器に送達するようなガス流路内の弁の開閉、アンモニアセンサのリードバックと弁のタイミング制御との同期、アンモニアの信号に関する勾配の決定及び/又は所定の閾値との比較、並びに警報システムの起動に対するタイミング制御を含むことができる。
【0179】
図23は、第1の構成(すなわち
図21(a))のために実行される制御方法に関する1つのタイミング図を示す。サイクルごとに、2つの異なる段階、すなわち流出段階及び流入段階がある。流入段階の間、ガス経路は時間t1からt2まで開かれる。時間t3において、アンモニアセンサからの測定値が得られる。制御方法は、コントローラのファームウェアにインストールされる。制御は、流入段階の間、内部のカートリッジと脱ガスチャネルの間の圧力差が流出段階より顕著で安定しているときに実行される。アンモニアガスが膜を通ってガス発生器及びアンモニアガス検出器のインタフェースに進入するには、圧力勾配が高いとより好都合である。
【0180】
いくつかの実施形態では、10~760mmHgの圧力勾配が可能である。いくつかの実施形態の場合、50~200mmHgの圧力勾配が好ましいことがある。他の実施形態では、t1~t2の間隔は0~30秒とすることができる。好ましい一実施形態では、1~10秒を使用することができる。他の実施形態では、t3はt2+(1秒以上)からサイクルの最後までとすることができる。好ましい一実施形態では、t3はt2+(20~100秒)である。
【0181】
2つの異なる方法を使用して、アンモニアの信号レベルを決めることができる。第1の方法は、アンモニアの信号の整定時間の後、アンモニア検出器からの測定値を直接得るものである。第2の方法は、流入段階の間、所定の割合(例えば1Hz)で得られるアンモニアの信号の測定値の最小値又は最大値を使用するものである。
【0182】
再生された透析液の中にアンモニウムが存在しない、又は安全なレベルのアンモニウムが存在する(すなわち、吸着剤カートリッジが十分に機能し、まだ消耗していない)場合、疎水性バリア上でのアンモニウムとアンモニアガスの平衡によって、疎水性膜の気相に対してアンモニアガスはほとんど発生しない。送達ガス機構を始動させると、脱ガス後のガス及び内部の送達ガスがアンモニア検出器まで運ばれる。アンモニア検出器は、このガス混合物に反応せず、処理されたセンサ信号は依然として安全範囲内にとどまる。信号の勾配が利用できない最初のサイクルを除く2つの連続する流れサイクルの測定値から、アンモニアの信号の勾配が計算される。高濃度のアンモニアガス又はシステム故障の警報は発せられない。
【0183】
再生された透析液中のアンモニウムのレベルが安全限界に近付いた(すなわち、吸着剤カートリッジがうまく働かない、又は消耗しそうである)場合、疎水性バリア上でのアンモニウム/アンモニアの平衡によって、疎水性バリア上の気相にアンモニアガスが存在するようになる。送達ガス機構を始動させると、送達ガスが、アンモニアガスをガスチャネルに沿ってアンモニア検出器まで輸送する。アンモニア検出器がアンモニアガスと反応し、警報信号を発生させる。2つの連続する流れサイクルの測定値から、アンモニアの信号の勾配が計算される。警報は、アンモニアの信号の測定値が所定の閾値を超え、信号の勾配が正である(すなわち、システム内のアンモニウム/アンモニアの量の増加を示す)ときに起動するように構成することができる。
【0184】
図24(a)及び(b)は、電気的なアンモニア検出器を使用する本発明の例示的な一実施形態から得られた結果を示すグラフである。
図24(a)では、(アンモニアの分析結果から、アンモニアの濃度(mM単位)の増加によって示されるように)時間が経つにつれてシステム内のアンモニアのレベルが上昇すると、それに対応して、アンモニア検出器のアンモニア感知部分の信号が高まる。一実施形態では、警報は、所定の信号レベルに達したときに発せられるように構成することができる。
図24(b)では、(アンモニアの分析結果から、アンモニアの濃度(mM単位)の増加によって示されるように)時間が経つにつれてシステム内のアンモニアのレベルが上昇すると、それに対応して、アンモニアセンサ/検出器から得られる測定値が高まる。
図24(a)及び24(b)のどちらについても、右側のy軸は、mM単位の実際のアンモニアの濃度を表し、左側のy軸は、センサからのアナログ信号の電圧に正比例し、それに関連する値である。
【0185】
図25は、透析装置の使い捨ての吸着剤カートリッジ2550と流体連通する、本発明の一実施形態に基づくコントローラシステム2500の略図である。使い捨ての吸着剤カートリッジ2550は、毒素吸着器2552、UFバッグ2554、収納モジュール/空気ポンプ2556、注入液ポンプ2558、注入液リザーバ2560、脱ガス器/無菌濾過器2562及び逆止め弁2564を備える。使い捨ての吸着剤カートリッジ2550は、コネクタ2582を介して患者の腹膜腔2580に接続される。適切な流体ラインに対して、ピンチクランプ2584を使用することができる。使い捨ての吸着剤カートリッジ2550内の構成部品の働き及び/又は接続は、使い捨ての吸着剤カートリッジ2550の本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システム2500への接続を理解するという現在の目的とは無関係である。
【0186】
コントローラシステム2500は、アンモニア検出器2502、逆止め弁2504、弁2506/2508/2510、ポンプ2512、圧力センサ2514、安全スクリーン2516及び排出手段2518を備える。一実施形態では、安全スクリーン2516は、限定的ではないが例として、5μmの金属スクリーンとすることができる。
【0187】
この実施形態では、システム2500はコントローラシステムであり、システム2500は、アンモニアガス発生器2562、ガスインタフェース2590、アンモニア検出器2502、逆止め弁2504a~c、及び2504cに接続されたもう1つの弁2506を含む、上述のようなアンモニア感知システムを含む。アンモニア感知システムは、主要なコントローラシステムの一部に、携行可能な透析システムに使用することができる使い捨てのカートリッジの一部を加えたものである。
【0188】
使い捨ての吸着剤カートリッジ2550内の脱ガス器2562を通過した後、透析液は、透析液ライン2570を通過し、注入液ポンプ2558によって2560の中の注入液の凝縮物と共に再構成され、次いで弁2564、ピンチクランプ2584及びコネクタ2582を経て患者へ戻される。発生器(疎水性バリア2561)上で平衡させたアンモニアガスは、インタフェース/チャネル2590を経てアンモニア検出器2502まで運ばれる。アンモニア検出器2502を通過した後、ガス混合物は、流入段階の間に逆止め弁2504aを通して排出されるか、又は流出段階の間に逆止め弁2504b、2510、2512、2508、2516及び2518を通して排出される。
【0189】
本発明の実施形態は、いくつかの利点をもたらす。アンモニアガス検出器は、アンモニアガス発生器から分離され、遠隔位置に配置される。換言すれば、アンモニアガス検出器は、液体ラインから空間的に隔離され、有利には透析液の無菌性を維持する。さらに、システムによって、使い捨ての装置又は部分的に使い捨ての装置における組み立てを容易にすることができる。
【0190】
さらに、統合された脱ガス器、無菌濾過器、及び/又は(アンモニアガス発生器として働く)他の機能的な疎水性バリア、並びにポンプシステムを備えたアンモニア感知システムは、コンパクトなシステム設計を可能にする。
【0191】
アンモニアガス発生器とアンモニアガス検出器の間の統合されたガス輸送機構/媒体は、有利には感知システムの感度を改善し、したがって、限られた量のアンモニアを検出することが可能になる。
【0192】
さらに、適切な検出アルゴリズムを備えた適切なコントローラのファームウェアを使用することによって、アンモニア感知システムを完全に自動化することができる。
【0193】
上述の本発明の実施形態に基づく生体適合性の遠隔のアンモニア感知システムは、透析装置に組み込むことができる。透析装置は、腹膜透析装置又は血液透析装置とすることができる。
【0194】
本発明の一実施形態はまた、アンモニアガスを検出することができる検出器を提供するステップと、アンモニアガスの流体連通を可能にするように構成されたチャネルを提供するステップとを含む、透析液中のアンモニウムを検出する方法に関し、チャネルは検出器と検出器に対して遠位の点との間に配置され、その点は、透析液中のアンモニウムが、アンモニアガスを形成するように平衡を保つところである。
【0195】
本発明のさらに他の実施形態では、上述の本発明の実施形態に基づく生体適合性の遠隔のアンモニア感知システムを、他の流体(例えば、透析液中に存在する他のガス)を検出するように変更することができる。限定的ではなく例として、システムは、限定はされないが、アセトンを含む揮発性有機化合物(VOC)、CO2 O2、SO2、HCN、NOxなどを検出するように構成することができる。
【0196】
図26は、インタフェース2606に沿った濃度勾配に従ってアンモニアガスが輸送される、本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システム2600の略断面図を示す。アンモニア感知システム2600は、組み立てられた使い捨てのハウジング2601と、検出器2604を有する使い捨てでないハウジング2603と備える。透析液2607が透析液流路2605を流れている。使用時、透析液2607に含まれる物質、例えばアンモニアは、疎水性バリア2602を横切って、インタフェース2606内のガスに対して平衡を保つ。このガスは次いで、インタフェース2606に沿った濃度勾配に従った拡散によって検出器2604へ運ばれる。
【0197】
図27(a)及び(b)は、疎水性バリア2702が、インタフェース2706内でのガスの前後の輸送を生じさせる変形可能な隔膜の働きをする、本発明の一実施形態に基づくアンモニア感知システム2700の略断面図である。
【0198】
アンモニア感知システム2700は、組み立てられた使い捨てのハウジング2701と、検出器2704を有する使い捨てでないハウジング2703とを備える。使用時、透析液2707に含まれる物質、例えばアンモニアは、疎水性バリア2702を横切って、インタフェース2706内のガスに対して平衡を保つ。
【0199】
疎水性バリア2702は、インタフェース2706内でガスの往復ポンピング移動を生じさせる変形可能な隔膜の働きをする。具体的には、
図27aは、透析液圧力が増大したときのシステム2700を示している。疎水性バリア/変形可能な隔膜2702はインタフェース2706の方へ変形して、インタフェース2706内のガスを検出器2704の方へ押している。
図27bは、透析液圧力が低下したときのシステム2700を示している。疎水性バリア/変形可能な隔膜2702は透析液流路2705の方へ変形して、インタフェース2706内のガスを検出器2704から遠ざかる方向へ引っ張っている。このように、例えば蠕動ポンプに起因する圧力脈動によって、透析液圧力が増大した段階と透析液圧力が低下した段階とが交互に起こる結果、インタフェース2706内のガスが前後に移動し、検出器2704へのガスの輸送速度が増大する。
【0200】
本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない以上の開示を読んだ当業者には、本発明の他の様々な変更及び適合が明白であることは明らかであり、そのような変更及び適合は全て、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。