(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】網膜色素変性症の治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220119BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220119BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220119BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220119BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220119BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220119BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220119BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220119BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20220119BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220119BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A61K31/7088
A61K48/00
A61P27/02
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
(21)【出願番号】P 2018512918
(86)(22)【出願日】2016-09-09
(86)【国際出願番号】 GB2016052802
(87)【国際公開番号】W WO2017042584
(87)【国際公開日】2017-03-16
【審査請求日】2019-08-23
(32)【優先日】2015-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクラーレン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ドミニク
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/151665(WO,A2)
【文献】WEN-TAO DENG,STABILITY AND SAFETY OF AN AAV VECTOR FOR TREATING RPGR-ORF15 X-LINKED RETINITIS PIGMENTOSA,HUMAN GENE THERAPY,米国,2015年06月15日,V26 N9,P593-602,https://doi.org/10.1089/hum.2015.035
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/12
A61K 31/7088
A61K 48/00
A61P 27/02
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/86
C12N 15/861
C12N 15/864
C12N 15/867
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(retinitis pigmentosa GTPase regulator ORF15 isoform)(RPGR
ORF15)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が該配列の複製フィデリティーを増加するようにコドン最適化されており、且つ、配列番号3に少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、野生型配列に比べてプリンヌクレオチドの数を減少するようにコドン最適化されている、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
コードされるRPGR
ORF15タンパク質がヒトRPGR
ORF15である、請求項1又は2記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が配列番号2のヌクレオチド33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2622、2634、2661、2673、2706、2712、2763、2775、2796、2811、2817、2832、2838、2871、2886、2892、2898、2910、2922、2931、2937、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405及び/又は3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない、請求項1~3のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
RPGR
ORF15コードするヌクレオチド配列が配列番号2のヌクレオチド1689及び/又は3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない、請求項1~4のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が配列番号2の位置3405に対応する位置にTヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が請求項4に挙げられたヌクレオチドの位置の少なくとも2箇所にプリンヌクレオチドを含まない、請求項1~6のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が請求項4に挙げられたヌクレオチドの位置の少なくとも全てにプリンヌクレオチドを含まない、請求項1~7のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、
(a)配列番号1に少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列;
(b)配列番号1に少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号1に少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列;又は
(d)配列番号1のアミノ酸配列
をコードする、請求項1~8のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、配列番号3に少なくとも98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、配列番号3に少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~10のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項1~11のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、配列番号2の位置30に対応する位置にC、配列番号2の位置33に対応する位置にT、配列番号2の位置48に対応する位置にA、配列番号2の位置57に対応する位置にA、配列番号2の位置60に対応する位置にT、配列番号2の位置69に対応する位置にT、配列番号2の位置72に対応する位置にA、配列番号2の位置171に対応する位置にC、配列番号2の位置189に対応する位置にC、配列番号2の位置441に対応する位置にT、配列番号2の位置537に対応する位置にT、配列番号2の位置546に対応する位置にC、配列番号2の位置786に対応する位置にT、配列番号2の位置792に対応する位置にT、配列番号2の位置966に対応する位置にA、配列番号2の位置969に対応する位置にA、配列番号2の位置990に対応する位置にA、配列番号2の位置1011に対応する位置にT、配列番号2の位置1014に対応する位置にT、配列番号2の位置1029に対応する位置にT、配列番号2の位置1299に対応する位置にA、配列番号2の位置1689に対応する位置にC、配列番号2の位置3355に対応する位置にA、配列番号2の位置3357に対応する位置にG、配列番号2の位置3363に対応する位置にG、配列番号2の位置3403に対応する位置にT、配列番号2の位置3404に対応する位置にC、配列番号2の位置3405に対応する位置にT、配列番号2の位置3408に対応する位置にA、配列番号2の位置3409に対応する位置にA、配列番号2の位置3410に対応する位置にG、配列番号2の位置3432に対応する位置にG、配列番号2の位置3438に対応する位置にC、及び配列番号2の位置3456に対応する位置にAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む、請求項1~11のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGR
ORF15)又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列は、配列番号3に少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、且つ、該ヌクレオチド配列は、配列番号2の位置30に対応する位置にC、配列番号2の位置33に対応する位置にT、配列番号2の位置48に対応する位置にA、配列番号2の位置57に対応する位置にA、配列番号2の位置60に対応する位置にT、配列番号2の位置69に対応する位置にT、配列番号2の位置72に対応する位置にA、配列番号2の位置171に対応する位置にC、配列番号2の位置189に対応する位置にC、配列番号2の位置441に対応する位置にT、配列番号2の位置537に対応する位置にT、配列番号2の位置546に対応する位置にC、配列番号2の位置786に対応する位置にT、配列番号2の位置792に対応する位置にT、配列番号2の位置966に対応する位置にA、配列番号2の位置969に対応する位置にA、配列番号2の位置990に対応する位置にA、配列番号2の位置1011に対応する位置にT、配列番号2の位置1014に対応する位置にT、配列番号2の位置1029に対応する位置にT、配列番号2の位置1299に対応する位置にA、配列番号2の位置1689に対応する位置にC、配列番号2の位置3355に対応する位置にA、配列番号2の位置3357に対応する位置にG、配列番号2の位置3363に対応する位置にG、配列番号2の位置3403に対応する位置にT、配列番号2の位置3404に対応する位置にC、配列番号2の位置3405に対応する位置にT、配列番号2の位置3408に対応する位置にA、配列番号2の位置3409に対応する位置にA、配列番号2の位置3410に対応する位置にG、配列番号2の位置3432に対応する位置にG、配列番号2の位置3438に対応する位置にC、及び配列番号2の位置3456に対応する位置にAから選択される1個以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項15】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、ヒト桿体及び錐体視細胞においてRPGR
ORF15又はそのバリアントの発現を駆動することができるプロモーターエレメントを含むポリヌクレオチドに作動可能に連結される、請求項1~14のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、ロドプシンキナーゼ(GRK1)プロモーターに作動可能に連結される、請求項1~15のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、ヒトGRK1プロモーターに作動可能に連結される、請求項16記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記GRK1プロモーターが、配列番号7のヌクレオチド配列に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項16又は17記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記GRK1プロモーターが、配列番号7のヌクレオチド配列を含む、請求項16又は17記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
制御配列をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
制御配列が、ポリアデニル化部位を含み、且つ該ポリアデニル化部位が、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化(poly-A)を含む、請求項20記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
BGHポリAシグナルが、配列番号5の配列を含む、請求項21記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列が、165個より少ないCpGジヌクレオチドを含み、且つ/又は2個以下のCpGアイランドを含む、請求項1~22のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15を含むポリヌクレオチドに比べて、複製フィデリティーが同じか又は増加している、請求項1~23のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15を含むポリヌクレオチドに比べて、安定性が増加し、且つ/又はポリヌクレオチド複製周期中に変異を発生する傾向が小さい、請求項1~24のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15を含むポリヌクレオチドに比べて高い翻訳効率及び/又はタンパク質発現量を与える、請求項1~25のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15を含むポリヌクレオチドに比べて、選択的スプライシングのバリアント及び/又はトランケートされたタンパク質の産生を減少させるか又は回避する、請求項1~26のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含むウイルスベクター。
【請求項29】
ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス又はアデノウイルスベクターである、請求項28記載のウイルスベクター。
【請求項30】
ウイルスベクターがAAVベクターである、請求項28又は29記載のウイルスベクター。
【請求項31】
ウイルスベクターがウイルス粒子の形態である、請求項28~30のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項32】
ウイルスベクターがトランスキャプシデートされた(transcapsidated)AAVベクターである、請求項30記載のウイルスベクター。
【請求項33】
ウイルスベクターが、
AAVゲノム若しくはその
派生体を含むポリヌクレオチド;
AAV2ゲノム若しくはその
派生体及びAAV5(AAV2/5)のキャプシドタンパク質;又は
AAV2ゲノム若しくはその
派生体及びAAV8(AAV2/8)のキャプシドタンパク質
を含む、請求項30~32のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項34】
ウイルスベクターが、AAV2ゲノム及び/又はAAV8のキャプシドタンパク質を含むAAVベクターである、請求項30~33のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項35】
AAV2ゲノム又はその
派生体が2つの逆方向末端反復(ITR)を含む、請求項33又は34記載のウイルスベクター。
【請求項36】
ウイルスベクターの生産に必要な構成要素をコードする1セットのポリヌクレオチドを含むウイルスベクター生産系であって、該ウイルスベクターが請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含む、前記ウイルスベクター生産系。
【請求項37】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含む、請求項36記載のウイルスベクター生産系における使用のためのDNA構築物。
【請求項38】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、請求項36記載のウイルスベクター生産系、又は請求項37記載のDNA構築物を含むウイルスベクター生産細胞。
【請求項39】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを細胞に導入すること、及びウイルスベクターの生産に好適な条件下で該細胞を培養することを含む、ウイルスベクター生産方法。
【請求項40】
請求項38記載のウイルスベクター生産細胞を使用して、又は請求項39記載の方法によって得られるウイルスベクター。
【請求項41】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを遺伝子導入された、又は請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクターにより形質導入された細胞。
【請求項42】
前記細胞がHEK293又はHEK293T細胞である、
請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記細胞がHEK293又はHEK293T細胞である、請求項41記載の細胞。
【請求項44】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクター、又は請求項41記載の細胞を、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項45】
網膜色素変性症の治療又は予防における使用のための、請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、又は請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項46】
網膜色素変性症を患っているか又は発症リスクのある対象者において視細胞の細胞死を減少させる使用のための、請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、又は請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクター。
【請求項47】
網膜色素変性症がX連鎖性網膜色素変性症である、
請求項45又は46記載の使用のためのポリヌクレオチド又はウイルスベクター。
【請求項48】
ウイルスベクターが網膜下注入、網膜への直接注入又は硝子体内注入により対象者の眼に投与される、
請求項45~47のいずれか1項記載の使用のためのポリヌクレオチド又はウイルスベクター。
【請求項49】
網膜下注入が以下のステップ:
(a)少なくとも部分的に網膜を剥離し網膜下ブレブを形成するのに有効な量の溶液の網膜下注入による対象者への投与であって、該溶液がポリヌクレオチド又はウイルスベクターを含まない、前記投与;及び
(b)ステップ(a)により形成されたブレブ中への網膜下注入による医薬組成物の投与であって、該医薬がポリヌクレオチド又はウイルスベクターを含む、前記投与
を含む、
請求項45~48のいずれか1項記載の使用のためのポリヌクレオチド又はウイルスベクター。
【請求項50】
ウイルスベクターが対象者に単回投与で投与される、
請求項45~49のいずれか1項記載の使用のためのポリヌクレオチド又はウイルスベクター。
【請求項51】
対象者の生涯の間に網膜色素変性症による視細胞の細胞変性を防止する、
請求項45~50のいずれか1項記載の使用のためのポリヌクレオチド又はウイルスベクター。
【請求項52】
治療された眼において視覚機能が回復又は維持される、
請求項45~51のいずれか1項記載の使用のためのポリヌクレオチド又はウイルスベクター。
【請求項53】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、又は請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクターを含む、網膜色素変性症の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項54】
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、又は請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクターを含む、網膜色素変性症を患うか又は発症リスクのある対象者において視細胞の細胞死を減少させるための医薬組成物。
【請求項55】
(a)野生型RPGR
ORF15遺伝子を含むベクター若しくはポリヌクレオチドに比べて、選択的スプライシングのバリアント及び/若しくはトランケートされたRPGR
ORF15タンパク質の産生を減少させるか若しくは回避するための、並びに/又は
(b)野生型RPGR
ORF15遺伝子を含むヌクレオチド配列に比べて、RPGR
ORF15遺伝子を含むヌクレオチド配列の安定性及び/若しくは複製フィデリティーを増加させるための、並びに/又は
(c)野生型RPGR
ORF15遺伝子を含むベクター若しくはポリヌクレオチドに比べてRPGR
ORF15タンパク質の翻訳及び/若しくはタンパク質発現の効率を高めるための、並びに/又は
(d)野生型RPGR
ORF15遺伝子を含むヌクレオチド配列に比べてRPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列の収量を増加させるための、
請求項1~27のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、又は請求項28~35若しくは40のいずれか1項記載のウイルスベクターを含む医薬組成物。
【請求項56】
ベクターが、眼1つ当たり
少なくとも2x10
9
、少なくとも2x10
10
又は少なくとも2x10
11
ゲノム粒子(gp)の用量で投与される、
請求項44又は53~55のいずれか1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼疾患の遺伝子治療における使用のための化合物に関する。より具体的には、本発明は、網膜色素変性症(RP)の治療または予防における使用のためのウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関し、ここでウイルスベクターは網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(retinitis pigmentosa GTPase regulator ORF15 isoform)(RPGRORF15)の眼への送達を可能にする。
【背景技術】
【0002】
網膜色素変性症(RP)は、視覚の漸進的な低下につながる遺伝性網膜ジストロフィーの表現型上で結び付いた群である。RPは約3000~4000人に1人が発症する。
【0003】
RPの初期症状は夜間視力および周辺視力の悪化を含む。疾患が進行するつれ、きめ細かい視力(detailed vision)、中心視力および色覚もまた影響され得る。RP症状の発症開始年齢は様々であるが、典型的には10歳から30歳の間であり、悪化の速度は人によって異なる。
【0004】
RPは一般的には桿体視細胞の進行性の変性により引き起こされる。しかし、網膜色素上皮(RPE)および錐体視細胞もまた疾患の進行中に変性し得る。
【0005】
RPは、例えば、眼の健康および機能に関連した多数の異なる遺伝子のうちの1つの変異により引き起こされ得る。RPのすべての単一遺伝子性原因のうち、網膜色素変性GTPアーゼ制御因子(retinitis pigmentosa GTPase regulator)(RPGR)遺伝子の欠損によって生じるX連鎖病が最も一般的である。
【0006】
X連鎖性網膜色素変性症(XLRP)は網膜色素変性症の最も重篤な形態とされる。XLRPを患う患者は一生の最初の20年間の間に周辺視野の制限および夜盲を経験する。その上、グレア、眼の不随意振り子運動、色覚障害および中心視力の低下がこの状態を特徴づける。結果として、患者は典型的には中等教育を終えるよりも前に法的には盲目になる。
【0007】
RPGR遺伝子は非常に変異しやすく、疾患の原因変異がin vivoで発生する可能性を高めている。しかし、この変異しやすい性質はまた遺伝子治療における使用のためにRPGRをコードするベクターを生産する際に問題を生じる。実際に、XLRPの遺伝子置換治療を開発する過去の戦略はそうした変異によって妨害されてきた:ほんのごく最近期待のできる研究計画が導入遺伝子カセットのORF15領域内で見つかった変異のために遅れた。別の計画では、RPGRの選択的スプライシングのバリアントがウェスタンブロットにより発見された(Wu, Z. et al. (2015) Hum. Mol. Genet. 24: 3956-3970)。
【0008】
現在のところRPの発達を予防するかまたは疾患発症後に視覚を改善する承認された治療法はない。したがって、特に視覚機能の悪化を防ぐか、または患者の視覚の改善を可能にするRPの治療には大きな必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGRORF15)遺伝子配列が、複製中の変異の発生率を減少または防止する(すなわち複製フィデリティーを増加させる)ことなどにより、配列安定性を増すように操作され得ることを驚くべきことに見出した。本発明者らはまた、遺伝子操作による遺伝子機能影響リスクが軽減され得ることを予期せず見出した。さらに、操作された遺伝子は、網膜色素変性症の動物モデルを首尾よく治療することが本発明者らにより示された。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGRORF15)をコードするヌクレオチド配列であって、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列がその配列の複製フィデリティーを増すようにコドン最適化されている前記ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0011】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、選択的スプライシングのバリアントの発生を減らすようにコドン最適化されている。
【0012】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、野生型配列に比較して新しいCpG配列の生成を最小化または回避するようにコドン最適化されている。一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は220、210、200、190、170、165、160、150、140、130、120、110または100個未満のCpG配列を含む。
【0013】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、(GGNコドンが元々GGCコドンではなかった場合に)GGNコドンの一部または全部をGGCコドンに置換することによりコドン最適化されている。
【0014】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列のプリンリッチ(すなわちGAリッチ)領域、例えばORF15エキソン領域(RPGRORF15のヌクレオチド1754-3459、例えば配列番号2のヌクレオチド1754-3459に対応する)への新しいチミンヌクレオチドの導入を最小化または回避するようにコドン最適化されている。
【0015】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、野生型配列に比較してGT配列(すなわち、潜在的なスプライス供与部位)の数を減らすようにコドン最適化されている。一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、120、115、110、105、100、90、80、70、60、50、40、30、20または10個未満のGT配列を含む。好ましい一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、105個未満のGT配列を含む。
【0016】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、変則的なポリAシグナル(例えば、AATAAA)の生成を回避するようにコドン最適化されている。
【0017】
一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、野生型配列に比較してプリンヌクレオチドの数が減らすようにコドン最適化されている。野生型配列は、例えば、配列番号2の配列であってもよい。
【0018】
好ましくは、プリンヌクレオチドの数は、プリンヌクレオチドをピリミジンヌクレオチドに置換することにより減らされる。
【0019】
一実施形態では、プリンヌクレオチドの数は、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列のプリンリッチ(すなわちGAリッチ)領域、例えばORF15エキソン領域(RPGRORF15のヌクレオチド1754-3459、例えば配列番号2のヌクレオチド1754-3459に対応する)において減らされる。
【0020】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2622、2634、2661、2673、2706、2712、2763、2775、2796、2811、2817、2832、2838、2871、2886、2892、2898、2910、2922、2931、2937、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない。好ましくはこれらの位置のヌクレオチドは配列番号3に見出されるものに対応する。別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、これらのヌクレオチドの位置の少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90またはすべてにおいてプリンヌクレオチドを含まない。好ましくは、前記ヌクレオチド配列は配列番号1と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列をコードする。より好ましくは、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸配列をコードする。
【0021】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に由来し、位置1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2622、2634、2661、2673、2706、2712、2763、2775、2796、2811、2817、2832、2838、2871、2886、2892、2898、2910、2922、2931、2937、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438のプリンヌクレオチドをピリミジンヌクレオチド(例えばチミンまたはシトシン)に置換することで得られる。好ましくは、これらの位置のヌクレオチドは配列番号3に見出されるものに対応する。別の実施形態では、前記プリンヌクレオチドは、これらのヌクレオチドの位置の少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90またはすべてにおいて置換されている。好ましくは、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列をコードする。より好ましくは、前記ヌクレオチド配列は配列番号1のアミノ酸配列をコードする。
【0022】
本発明によれば、プリンヌクレオチドの数は、野生型配列(例えば、配列番号2)におけるプリンヌクレオチドの数の少なくとも0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%分を減らされてもよい。
【0023】
本発明によれば、プリンヌクレオチドの数は、野生型配列(例えば、配列番号2)におけるプリンヌクレオチドの数の0.5-10%、0.5-7.5%、0.5-5%、0.5-4.5%、0.5-4%、0.5-3.5%、0.5-3%、1-5%、1-4.5%、1-4%、1-3.5%または1-3%分を減らされてもよい。
【0024】
一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、野生型配列に比較してアデニンヌクレオチドの数を減らすようにコドン最適化されている。野生型配列は、例えば、配列番号2の配列であってもよい。別の実施形態では、アデニンヌクレオチドの数は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200個減らされている。一実施形態では、配列番号2のヌクレオチド58、114、123、129、181、213、219、226、237、285、306、309、315、324、330、339、400、444、456、478、480、594、606、618、697、744、807、852、877、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1194、1197、1221、1249、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1413、1446、1452、1464、1474、1482、1519、1542、1584、1608、1653、1674、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1854、1881、1893、1902、1909、1929、1960、1987、1992、1998、2020、2047、2049、2062、2067、2076、2167、2169、2190、2208、2229、2259、2298、2323、2361、2373、2382、2403、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2622、2661、2673、2712、2775、2811、2832、2886、2910、2931、2958、3033、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3306、3321、3369、3405および/または3438に対応する位置のアデニンがピリミジンヌクレオチド(例えば、チミンまたはシトシン)に置換されている。好ましくは、これらの位置のヌクレオチドは配列番号3に見出されるものに対応する。
【0025】
一実施形態では、本発明のRPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列は、例えば
図2の配列アラインメント(wtRPGR、「オリジナル」;coRPGR、「最適化」)において配列番号2(wtRPGR)のプリンヌクレオチドが配列番号3(coRPGR)のピリミジンヌクレオチドに整列する位置に対応する、少なくとも1箇所、好ましくは少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170または180箇所、好ましくは全箇所でプリンヌクレオチドを含まない。
【0026】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2622、2634、2661、2673、2706、2712、2763、2775、2796、2811、2817、2832、2838、2871、2886、2892、2898、2910、2922、2931、2937、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438に対応する位置においてプリンヌクレオチドを含まない。好ましくは、これらの位置のヌクレオチドは配列番号3に見出されるものに対応する。別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、これらのヌクレオチドの位置の少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180箇所またはすべてにおいてプリンヌクレオチドを含まない。好ましくは、前記ヌクレオチド配列は配列番号1と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列をコードする。より好ましくは、前記ヌクレオチド配列は配列番号1のアミノ酸配列をコードする。
【0027】
本願ではヌクレオチドの位置は配列番号2における特定の位置に「対応する」位置により識別されることに留意すべきである。これは、本発明の配列は配列番号2に存在する配列を含まなくてはならないという意味に解釈されるべきではない。本明細書中では、RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列のヌクレオチドは、配列番号2の5’アデニンがヌクレオチド1に割り当てられるという規則に従って番号付けされる。個別のヌクレオチドおよび変異の位置が何であるかは本明細書においてこの番号付け規則に準じて記載される。当業者は、配列番号2に配列アラインメントを行うことにより相同配列中の類似した位置を容易に決定できるだろう。そのようなアラインメントの例は
図2に示される。
【0028】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に由来し、位置33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2622、2634、2661、2673、2706、2712、2763、2775、2796、2811、2817、2832、2838、2871、2886、2892、2898、2910、2922、2931、2937、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438におけるプリンヌクレオチドをピリミジンヌクレオチド(例えば、チミンまたはシトシン)に置換することにより得られる。好ましくは、これらの位置のヌクレオチドは配列番号3に見出されるものに対応する。別の実施形態では、プリンヌクレオチドは、これらのヌクレオチドの位置の少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180箇所またはすべてにおいて置換されている。好ましくは、プリンヌクレオチドはこれらのヌクレオチドの位置のすべてにおいて置換されている。好ましくは、前記ヌクレオチド配列は配列番号1と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列をコードする。より好ましくは、前記ヌクレオチド配列は配列番号1のアミノ酸配列をコードする。
【0029】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2の位置33に対応するヌクレオチドがTであり、位置58に対応するヌクレオチドがTであり、位置59に対応するヌクレオチドがCであり、位置114に対応するヌクレオチドがCであり、位置123に対応するヌクレオチドがTであり、位置129に対応するヌクレオチドがCであり、位置181に対応するヌクレオチドがTであり、位置182に対応するヌクレオチドがCであり、位置213に対応するヌクレオチドがCであり、位置219に対応するヌクレオチドがTであり、位置226に対応するヌクレオチドがTであり、位置227に対応するヌクレオチドがCであり、位置237に対応するヌクレオチドがCであり、位置267に対応するヌクレオチドがCであり、位置285に対応するヌクレオチドがCであり、位置306に対応するヌクレオチドがCであり、位置309に対応するヌクレオチドがCであり、位置315に対応するヌクレオチドがCであり、位置324に対応するヌクレオチドがCであり、位置330に対応するヌクレオチドがCであり、位置339に対応するヌクレオチドがCであり、位置400に対応するヌクレオチドがTであり、位置401に対応するヌクレオチドがCであり、位置444に対応するヌクレオチドがCであり、位置456に対応するヌクレオチドがTであり、位置478に対応するヌクレオチドがCであり、位置480に対応するヌクレオチドがCであり、位置510に対応するヌクレオチドがCであり、位置594に対応するヌクレオチドがCであり、位置606に対応するヌクレオチドがCであり、位置618に対応するヌクレオチドがCであり、位置639に対応するヌクレオチドがCであり、位置697に対応するヌクレオチドがCであり、位置726に対応するヌクレオチドがTであり、位置744に対応するヌクレオチドがCであり、位置777に対応するヌクレオチドがTであり、位置807に対応するヌクレオチドがCであり、位置852に対応するヌクレオチドがCであり、位置877に対応するヌクレオチドがCであり、位置879に対応するヌクレオチドがCであり、位置888に対応するヌクレオチドがTであり、位置891に対応するヌクレオチドがCであり、位置921に対応するヌクレオチドがCであり、位置930に対応するヌクレオチドがCであり、位置960に対応するヌクレオチドがCであり、位置1042に対応するヌクレオチドがCであり、位置1050に対応するヌクレオチドがCであり、位置1116に対応するヌクレオチドがTであり、位置1140に対応するヌクレオチドがTであり、位置1183に対応するヌクレオチドがTであり、位置1184に対応するヌクレオチドがCであり、位置1194に対応するヌクレオチドがTであり、位置1197に対応するヌクレオチドがCであり、位置1221に対応するヌクレオチドがTであり、位置1249に対応するヌクレオチドがCであり、位置1251に対応するヌクレオチドがCであり、位置1257に対応するヌクレオチドがTであり、位置1273に対応するヌクレオチドがCであり、位置1276に対応するヌクレオチドがCであり、位置1281に対応するヌクレオチドがCであり、位置1290に対応するヌクレオチドがTであり、位置1293に対応するヌクレオチドがCであり、位置1357に対応するヌクレオチドがCであり、位置1372に対応するヌクレオチドがTであり、位置1373に対応するヌクレオチドがCであり、位置1413に対応するヌクレオチドがCであり、位置1446に対応するヌクレオチドがCであり、位置1452に対応するヌクレオチドがCであり、位置1464に対応するヌクレオチドがTであり、位置1474に対応するヌクレオチドがTであり、位置1475に対応するヌクレオチドがCであり、位置1482に対応するヌクレオチドがCであり、位置1519に対応するヌクレオチドがTであり、位置1520に対応するヌクレオチドがCであり、位置1542に対応するヌクレオチドがTであり、位置1584に対応するヌクレオチドがTであり、位置1590に対応するヌクレオチドがCであり、位置1599に対応するヌクレオチドがTであり、位置1608に対応するヌクレオチドがCであり、位置1653に対応するヌクレオチドがCであり、位置1668に対応するヌクレオチドがCであり、位置1674に対応するヌクレオチドがTであり、位置1689に対応するヌクレオチドがCであり、位置1692に対応するヌクレオチドがTであり、位置1734に対応するヌクレオチドがTであり、位置1761に対応するヌクレオチドがCであり、位置1776に対応するヌクレオチドがCであり、位置1788に対応するヌクレオチドがCであり、位置1803に対応するヌクレオチドがTであり、位置1824に対応するヌクレオチドがCであり、位置1845に対応するヌクレオチドがCであり、位置1854に対応するヌクレオチドがCであり、位置1881に対応するヌクレオチドがT、位置1893に対応するヌクレオチドがTであり、位置1902に対応するヌクレオチドがCであり、位置1909に対応するヌクレオチドがTであり、位置1910に対応するヌクレオチドがCであり、位置1929に対応するヌクレオチドがTであり、位置1932に対応するヌクレオチドがCであり、位置1960に対応するヌクレオチドがCであり、位置1987に対応するヌクレオチドがTであり、位置1988に対応するヌクレオチドがCであり、位置1992に対応するヌクレオチドがCであり、位置1998に対応するヌクレオチドがTであり、位置2020に対応するヌクレオチドがCであり、位置2031に対応するヌクレオチドがCであり、位置2047に対応するヌクレオチドがCであり、位置2049に対応するヌクレオチドがCであり、位置2062に対応するヌクレオチドがCであり、位置2067に対応するヌクレオチドがTであり、位置2076に対応するヌクレオチドがCであり、位置2121に対応するヌクレオチドがCであり、位置2167に対応するヌクレオチドがCであり、位置2169に対応するヌクレオチドがCであり、位置2190に対応するヌクレオチドがCであり、位置2193に対応するヌクレオチドがCであり、位置2208に対応するヌクレオチドがCであり、位置2229に対応するヌクレオチドがCであり、位置2259に対応するヌクレオチドがCであり、位置2283に対応するヌクレオチドがCであり、位置2298に対応するヌクレオチドがCであり、位置2323に対応するヌクレオチドがCであり、位置2343に対応するヌクレオチドがCであり、位置2346に対応するヌクレオチドがCであり、位置2361に対応するヌクレオチドがCであり、位置2373に対応するヌクレオチドがCであり、位置2382に対応するヌクレオチドがCであり、位置2388に対応するヌクレオチドがCであり、位置2403に対応するヌクレオチドがCであり、位置2409に対応するヌクレオチドがCであり、位置2410に対応するヌクレオチドがCであり、位置2412に対応するヌクレオチドがCであり、位置2448に対応するヌクレオチドがCであり、位置2457に対応するヌクレオチドがCであり、位置2472に対応するヌクレオチドがCであり、位置2476に対応するヌクレオチドがCであり、位置2478に対応するヌクレオチドがCであり、位置2505に対応するヌクレオチドがCであり、位置2520に対応するヌクレオチドがCであり、位置2547に対応するヌクレオチドがCであり、位置2574に対応するヌクレオチドがCであり、位置2622に対応するヌクレオチドがCであり、位置2634に対応するヌクレオチドがCであり、位置2661に対応するヌクレオチドがCであり、位置2673に対応するヌクレオチドがCであり、位置2706に対応するヌクレオチドがCであり、位置2712に対応するヌクレオチドがCであり、位置2763に対応するヌクレオチドがCであり、位置2775に対応するヌクレオチドがCであり、位置2796に対応するヌクレオチドがCであり、位置2811に対応するヌクレオチドがCであり、位置2817に対応するヌクレオチドがCであり、位置2832に対応するヌクレオチドがCであり、位置2838に対応するヌクレオチドがCであり、位置2871に対応するヌクレオチドがCであり、位置2886に対応するヌクレオチドがCであり、位置2892に対応するヌクレオチドがCであり、位置2898に対応するヌクレオチドがCであり、位置2910に対応するヌクレオチドがCであり、位置2922に対応するヌクレオチドがCであり、位置2931に対応するヌクレオチドがCであり、位置2937に対応するヌクレオチドがCであり、位置2958に対応するヌクレオチドがCであり、位置2970に対応するヌクレオチドがCであり、位置2997に対応するヌクレオチドがCであり、位置3033に対応するヌクレオチドがCであり、位置3039に対応するヌクレオチドがCであり、位置3069に対応するヌクレオチドがCであり、位置3075に対応するヌクレオチドがCであり、位置3117に対応するヌクレオチドがCであり、位置3129に対応するヌクレオチドがCであり、位置3156に対応するヌクレオチドがCであり、位置3166に対応するヌクレオチドがCであり、位置3235に対応するヌクレオチドがCであり、位置3246に対応するヌクレオチドがCであり、位置3273に対応するヌクレオチドがCであり、位置3285に対応するヌクレオチドがCであり、位置3306に対応するヌクレオチドがCであり、位置3321に対応するヌクレオチドがCであり、位置3369に対応するヌクレオチドがTであり、位置3399に対応するヌクレオチドがCであり、位置3405に対応するヌクレオチドがTであり、かつ/または位置3438に対応するヌクレオチドがCである。
【0030】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号2のヌクレオチド1689および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない。位置1689のヌクレオチドはピリミジン、好ましくはCに置換されてもよい。位置3438のアデニンはピリミジン、好ましくはCに置換されてもよい。
【0031】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に由来し、位置3405のアデニンヌクレオチドをCpGジヌクレオチドを導入せずにピリミジンヌクレオチドに置換することにより得られる。
【0032】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号2の位置3405に対応する位置にアデニンヌクレオチドを含む。
【0033】
一実施形態では、コードされるRPGRORF15タンパク質はヒトRPGRORF15である。
【0034】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む。
【0035】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置48に対応する位置のA、配列番号2の位置57に対応する位置のA、配列番号2の位置60に対応する位置のT、配列番号2の位置69に対応する位置のT、配列番号2の位置72に対応する位置のA、配列番号2の位置171に対応する位置のC、配列番号2の位置189に対応する位置のC、配列番号2の位置441に対応する位置のT、配列番号2の位置537に対応する位置のT、配列番号2の位置546に対応する位置のC、配列番号2の位置786に対応する位置のT、配列番号2の位置792に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置990に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3355に対応する位置のA、配列番号2の位置3357に対応する位置のG、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3403に対応する位置のT、配列番号2の位置3404に対応する位置のC、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む。
【0036】
一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(b)配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列;および
(c)配列番号3のヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含み、好ましくはここで前記ヌクレオチド配列にコードされるタンパク質は、配列番号1によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0037】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、好ましくはここで前記アミノ酸配列は配列番号1によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0038】
本発明はさらに網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGRORF15)または配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するその機能的なバリアントであって、そのヌクレオチド配列が、配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択されるヌクレオチドのうち1個以上、好ましくは全部を含む前記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは前記ヌクレオチドのうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17個を含んでもよい。
【0039】
本発明はまた、網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGRORF15)または配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するその機能的なバリアントであって、そのヌクレオチド配列が、
(a)配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、該配列が配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置48に対応する位置のA、配列番号2の位置57に対応する位置のA、配列番号2の位置60に対応する位置のT、配列番号2の位置69に対応する位置のT、配列番号2の位置72に対応する位置のA、配列番号2の位置171に対応する位置のC、配列番号2の位置189に対応する位置のC、配列番号2の位置441に対応する位置のT、配列番号2の位置537に対応する位置のT、配列番号2の位置546に対応する位置のC、配列番号2の位置786に対応する位置のT、配列番号2の位置792に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置990に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3355に対応する位置のA、配列番号2の位置3357に対応する位置のG、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3403に対応する位置のT、配列番号2の位置3404に対応する位置のC、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択されるヌクレオチドのうち1個以上、好ましくは全部を含む、前記ヌクレオチド配列;または(b)配列番号3のヌクレオチド配列からなる群から選択される前記バリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは前記ヌクレオチドのうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34個を含
んでもよい。
【0040】
好ましくは、前記機能的なバリアントは配列番号1によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0041】
一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくはここで前記ヌクレオチド配列にコードされるタンパク質は配列番号1によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0042】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列にコードされるタンパク質は、配列番号1によって表されるタンパク質により提供されるものと同じかもしくはそれより改善された網膜細胞の機能および/または視覚機能を提供する。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号1のタンパク質をコードする。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のヒト野生型RPGRORF15を含む同等なポリヌクレオチドに比べて実質的に同じかまたは増加した複製フィデリティーを有してもよい。
【0045】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のヒト野生型RPGRORF15を含む同等なポリヌクレオチドに比べて安定性が増加しており、および/またはポリヌクレオチド複製周期中に変異を発生する傾向が小さくてもよい。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のヒト野生型RPGRORF15を含む同等なポリヌクレオチドに比べて翻訳および/またはタンパク質発現の効率を高めてもよい。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のヒト野生型RPGRORF15を含む同等なポリヌクレオチドに比べて選択的スプライシングのバリアントおよび/またはトランケートされたタンパク質の産生を減少させるかまたは回避してもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号3と実質的に同じかより増加した複製フィデリティーを有する。複製フィデリティーは例えば本明細書中に記載される方法など、当業者に公知である多数の方法のいずれによって測定されてもよい。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号3のヌクレオチド配列を含む。
【0050】
RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は165個より少ないCpGジヌクレオチドを含み、および/または2個以下のCpGアイランドを含んでもよい。CpGアイランドは例えばEMBOSS Cpgplot(http://www.ebi.ac.uk/Tools/seqstats/emboss_cpgplot/help/)を使用するなど、通常の方法を使用して容易に同定できる。
【0051】
本発明のポリヌクレオチドは野生型配列に比べて短くされたRPGRorf15をコードしてもよい。この点において、本明細書中に記載されるコドン最適化は短くされた配列の対応する部分に適用される。好ましくは、短くなったRPGRorf15はRPGR機能の喪失を回復する能力を有する。
【0052】
本発明のRPGRorf15をコードする配列はWO2016/001693に開示される短くされたRPGRorf15をコードしてもよい。
【0053】
一実施形態では、本発明のRPGRorf15をコードする配列は配列番号2の位置2485から2940に対応するヌクレオチドの一部または全部の除去によって短くされる。この実施形態によれば、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は好ましくは配列番号2のヌクレオチド33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない。好ましくはこれらの位置のヌクレオチドは配列番号3に見出されるものに対応する。この実施形態に従った好ましいRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号9に示される配列を含むかまたはその配列からなる。
【0054】
本発明のポリヌクレオチドは、
(a)配列番号9に示されるヌクレオチド配列、
(b)配列番号3の配列を含むが、(i)配列番号10の配列、(ii)配列番号10および配列番号3の配列において配列番号10の片側もしくは両側に配列番号10に隣接する75個までの付加的なヌクレオチドの配列、もしくは(iii)配列番号10の中に由来する390個以上の連続したヌクレオチドに対応する欠失を持つヌクレオチド配列;または
(c)(a)もしくは(b)に従ったヌクレオチド配列であるが、その5’および3’端の1つまたは両方で片側の端当たり最大150個のヌクレオチドまでトランケートされた前記ヌクレオチド配列
を含んでもよい。
【0055】
好ましくは、前記欠失は配列番号10のうち少なくとも400、420または450個の連続ヌクレオチドを含む。
【化1】
【化2】
【0056】
本発明のRPGRorf15をコードする配列は、WO2016/014353に開示される短くされたRPGRorf15をコードしてもよい。
【0057】
一実施形態では、本発明のRPGRorf15をコードする配列は、配列番号2の位置2086から3027に対応するヌクレオチドの一部または全部の除去により短くされている。
【0058】
この実施形態によれば、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、好ましくは配列番号2のヌクレオチド33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない。好ましくはこれらの位置のヌクレオチドは、配列番号3に見出されるものに対応する。この実施形態に従った好ましいRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号11に示される配列を含むかまたはその配列からなる。
【0059】
一実施形態では、RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号3を含むが配列番号12の配列の一部または全部に対応する欠失を有する。
【化3】
【化4】
【0060】
別の実施形態では、本発明のRPGRorf15をコードする配列は、配列番号2の位置2584-2961に対応するヌクレオチドの一部または全部の除去により短くされている。
【0061】
この実施形態によれば、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は好ましくは配列番号2のヌクレオチド33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない。好ましくはこれらの位置のヌクレオチドは配列番号3において見出されるものに対応する。この実施形態に従った好ましいRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号13に示される配列を含むかまたはその配列からなる。
【0062】
一実施形態では、RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列は配列番号3を含むが配列番号14の配列の一部または全部に対応する欠失を有する。
【化5】
【化6】
【0063】
本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、ヒト桿体および錐体視細胞においてRPGRORF15またはその機能的なバリアントの発現を駆動することができるプロモーターエレメントを含むポリヌクレオチドに作動可能に連結されてもよい。
【0064】
本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、ロドプシンキナーゼ(GRK1)プロモーター、好ましくはヒトGRK1プロモーターに作動可能に連結されてもよい。
【0065】
好ましくは、プロモーターの他にはRPGRORF15の発現を制御するためにいかなる追加のエンハンサーエレメントも使用されない。したがって、一実施形態では、本発明のヌクレオチド配列はエンハンサーエレメントを含まない。一実施形態では、ヌクレオチド配列はウッドチャック肝炎ポストレギュラトリーエレメント(woodchuck hepatitis postregulatory element)(WPRE)を含まない。
【0066】
別の態様では、本発明は本発明のポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを提供する。
【0067】
一実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスベクターである。
【0068】
好ましい一実施形態では、ウイルスベクターはウイルス粒子の形態にある。
【0069】
好ましい一実施形態では、ウイルスベクターはAAVベクターである。
【0070】
AAVベクターは、そのベクターが眼の細胞に感染するかまたは眼の細胞に形質導入できるならば、いかなる血清型(例えば、いかなるAAV血清型ゲノムおよび/またはキャプシドタンパク質を含む)のものであってもよい。
【0071】
一実施形態では、AAVベクターはAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11ゲノムを含む。別の実施形態では、AAVベクターはAAV血清型2、4、5または8ゲノムを含む。好ましくは、AAVベクターはAAV血清型2ゲノムを含む。
【0072】
一実施形態では、AAVベクター粒子はAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11キャプシドタンパク質を含む。別の実施形態では、AAVベクター粒子はAAV血清型2、4、5または8キャプシドタンパク質を含む。好ましくは、AAVベクター粒子はAAV血清型8キャプシドタンパク質を含む。AAV血清型8キャプシドタンパク質は、例えば、AAV8/Y733F変異体キャプシドタンパク質であってもよい。
【0073】
一実施形態では、AAVベクター粒子はAAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質(AAV2/2);AAV2ゲノムおよびAAV5キャプシドタンパク質(AAV2/5);またはAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質(AAV2/8)を含む。好ましくは、AAVベクター粒子はAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質(AAV2/8)を含む。
【0074】
本発明のAAVベクター粒子は1種類以上の自然由来のAAVのキメラの派生体、シャッフルされた派生体、またはキャプシドを改変された派生体であってもよい。特にAAVベクター粒子は、AAVの異なる血清型、クレード、クローンまたは単離体に由来するキャプシドタンパク質配列を同じベクター中に含んでもよい(すなわち、シュードタイプ化したベクター)。このように、一実施形態ではAAVベクターはシュードタイプ化したAAVベクター粒子の形態にある。
【0075】
別の態様では、本発明はウイルスベクターの生産に必要な構成要素をコードする1セットのポリヌクレオチドを含むウイルスベクター生産系を提供し、ここでウイルスベクターゲノムは本発明のポリヌクレオチドを含む。
【0076】
一実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスベクターである。好ましくはウイルスベクターはAAVベクターである。
【0077】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む、本発明のウイルスベクター生産系における使用のためのDNA構築物を提供する。
【0078】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、ウイルスベクター生産系またはDNA構築物を含むウイルスベクター生産細胞を提供する。ウイルスベクター生産細胞は、例えばHEK293、HEK293T、Sf9、C12またはHeLa細胞であってもよい。好ましくはウイルスベクター生産細胞は、HEK293またはHEK293T細胞である。
【0079】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを細胞に導入すること、およびウイルスベクターの生産に好適な条件下で該細胞を培養することを含む、ウイルスベクターを生産するための過程を提供する。
【0080】
別の態様では、本発明は、本発明のウイルスベクター生産細胞を使用して得られる、または本発明の過程によって得られるウイルスベクターを提供する。
【0081】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを遺伝子導入された、または本発明のウイルスベクターにより形質導入された細胞を提供する。
【0082】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて本発明のポリヌクレオチド、ウイルスベクターまたは細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0083】
別の態様では、本発明は、網膜色素変性症の治療または予防における使用のための本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを提供する。本発明はまた、網膜色素変性症を患うかまたは発症リスクのある対象者において視細胞の細胞死を減少させる際に使用するための本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを提供する。
【0084】
一実施形態では、網膜色素変性症はX連鎖性網膜色素変性症である。
【0085】
一実施形態では、ポリヌクレオチドまたはウイルスベクターは、網膜下注入、網膜への直接注入または硝子体内注入により対象者の眼に投与される。好ましくは、ポリヌクレオチドまたはウイルスベクターは網膜下注入により対象者の眼に投与される。網膜下注入は本明細書中に記載される2ステップ網膜下注入を使用して行われてもよい。
【0086】
網膜下注入は好ましくは、
(a)少なくとも部分的に網膜を剥離し網膜下ブレブを形成するのに有効な量の溶液の網膜下注入による対象者への投与であって、該溶液がポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを含まない、前記投与;および
(b)ステップ(a)により形成されたブレブ中への網膜下注入による医薬組成物の投与であって、該医薬がポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを含む、前記投与
のステップを含む。
【0087】
一実施形態では、AAVベクターは対象者に単回投与で投与される。
【0088】
AAVベクターは、例えば、1mL当たり約1-2x109、1-2x1010、1-2x1011、1-2x1012または1-2x1013ゲノム粒子(genome particles)(gp)の濃度の懸濁液であってもよい。したがって、約2x1010gpのAAVベクターの用量は、例えば1mL当たり約2x1012gpの濃度で約10μL用量のAAVベクターを注入することにより投与され得る。当業者は必要に応じてAAVベクターの用量、体積および濃度を容易に調節することができる。
【0089】
投与されるAAVベクターの体積は、例えば約1-500μL、例えば約10-500、50-500、100-500、200-500、300-500、400-500、50-250、100-250、200-250、50-150、1-100または1-10μLであってもよい。体積は、例えば約1、2、5、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μLであってもよい。好ましくは、注入されるAAVベクター組成物の体積は約100μLである。
【0090】
一実施形態では、AAVベクターは眼1つ当たり少なくとも2x107、2x108、2x109、2x1010、2x1011または2x1012gpの用量で投与される。別の実施形態では、AAVベクターは眼1つ当たり約1-2x107、1-2x108、1-2x109、1-2x1010、1-2x1011または1-2x1012gpの用量で投与される。好ましくはAAVベクターは、好ましくは網膜下注入により、眼1つ当たり約2x1011gpの用量で投与される。
【0091】
一実施形態では、網膜色素変性症による視細胞の細胞変性は、対象者の生涯の間に実質的に予防される。視細胞は錐体細胞および/または桿体細胞、好ましくは錐体細胞および桿体細胞を含んでもよい。別の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはウイルス(例えばAAV)ベクターの投与時に治療される眼に存在する視細胞(例えば、錐体細胞および/または桿体細胞)の数の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満がその後対象者の生涯を通じて網膜変性症により変性する。好ましくは、生き残った細胞は機能的なままである。
【0092】
一実施形態では、治療された眼において視覚機能は実質的に回復するか、または維持される。視覚機能(例えば、本明細書中に記載される視覚機能試験により決定される)は、例えば発症した眼において網膜色素変性症の発症以前に存在したものとほぼ同じレベルまで回復し得る。あるいは、視覚機能は、例えば網膜色素変性症の発症リスクのある健康的な対象者において、または網膜色素変性症を既に患う対象者においてほぼ同じレベルに維持され得る(例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルス(例えばAAV)ベクターの投与後に、視覚機能の悪化またはさらなる悪化が網膜色素変性症の結果として実質的に起きない)。
【0093】
治療されないままであれば、多くのまたはすべての桿体細胞が網膜色素変性症の結果として時間と共に変性(例えば死滅)し得る。錐体細胞もまた該疾患の進行中に変性し得る。
【0094】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターをそれを必要とする対象者に投与することを含む、網膜色素変性症を治療または予防する方法を提供する。本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを対象者に投与することを含む、網膜色素変性症を患うかまたは発症リスクのある対象者における視細胞の細胞死を減少させる方法も提供する。
【0095】
投与の様式(例えば、方法および用量)ならびに効果、治療すべき対象者は本明細書中に記載される通りであってもよい。
【0096】
本発明は、野生型RPGRORF15遺伝子を含むベクターまたはポリヌクレオチドに比べて選択的スプライシングのバリアントおよび/またはトランケートされたRPGRORF15タンパク質の産生を減少させるかまたは回避するための、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターの使用をさらに提供する。
【0097】
本発明は、野生型RPGRORF15遺伝子を含むヌクレオチド配列に比べてRPGRORF15遺伝子を含むヌクレオチド配列の安定性および/または複製フィデリティーを増加させるための、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターの使用をさらに提供する。
【0098】
本発明は、野生型RPGRORF15遺伝子を含むベクターまたはポリヌクレオチドに比べてRPGRORF15タンパク質の翻訳および/またはタンパク質発現の効率を高めるための、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターの使用をさらに提供する。
【0099】
本発明は、野生型RPGRORF15遺伝子を含むヌクレオチド配列に比べてRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列の収量を増加させるための、本発明のポリヌクレオチドまたはウイルスベクターの使用をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1-1】RPGRのヒト、マウスおよびイヌのゲノム配列の比較。
【
図2-1】コドン最適化(上部)および野生型(下部)RPGR
ORF15配列の比較。一次配列の差は赤色で強調され下線を引かれている。
【
図3】標準的なクローニングベクターにおける野生型(A、B)およびコドン最適化(C、D)RPGR配列の間の、クローニング効率および配列フィデリティーの比較。同一の配列間での、少量調製(E)および大量調製(megapreparation)(G)からのプラスミド収量の比較、ならびに試料純度の比較(F)。
【
図4A】標準的なクローニングベクターにおける野生型(A)およびコドン最適化(B)RPGR配列の間の配列フィデリティーの比較。
【
図5-1】コドン最適化RPGR配列のタンパク質産物のタンデム質量分析法(LC/MS-MS)を用いた液体クロマトグラフィーにより、約80%のアミノ酸が同定された(確認できなかったアミノ酸は赤色でマークされる)。
【
図6】野生型およびコドン最適化RPGR由来(それぞれwtRPGRおよびcoRPGR)のペプチドの同一分子量(220kDa)を確認するウェスタンブロット(上のパネル)。ウェスタンブロットのシグナル強度の違いのプロットにより、coRPGR配列からの約4倍高いRPGRタンパク質生産量が示される(下のパネル)。
【
図7】RPGRの自然に発生する変異を有するマウスモデル(C57BL/6
Rd9/Boc)におけるAAV.coRPGRを使用した治療効果の概観。治療6か月後の網膜全体の溶解物のウェスタンブロットは、C57BL/6
Rd9/Bocマウスの治療された眼(TE)における約200kDaのRPGRタンパク質産物を示すが、治療されていない眼(UE)では見られない(A)。L、タンパク質ラダー;+、陽性対照(coRPGR発現プラスミドを遺伝子導入されたHEK293T細胞のタンパク質溶解物);-、陰性対照(遺伝子導入されていないHEK293T細胞のタンパク質溶解物)。治療6か月後の未固定凍結切片の免疫組織化学(B)。上のパネルは治療されていない眼においてRPGR染色(緑色)がないことを示す。治療された眼では(下部)、RPGR染色が繊毛タンパク質Rpgrip(赤色)と共局在することが見られる。スケールバー=20μm。治療3か月後(C)および6か月後(D)の暗順応(DA)ERG単一フラッシュ強度シリーズ。赤線の平均値は治療された眼(TE)に由来し、黒線は治療されていない眼(UE)に由来する。ヒゲは95%信頼区間を示す。
【
図8】プラスミドの種類および構造的安定性、pAAV.RK.coRPGRのRCBから調製されたプラスミド。pAAV.RK.coRPGRのRCBから作製されたプラスミドDNAのエンドヌクレアーゼ制限酵素消化断片サイズ。予想パターンは、制限酵素XmnIでは11+11+161+211+2681+4006bpであり;SmaIでは11+11+161+211+2681+4006bpである(11bp断片はアガロースゲルを通り抜けて可視化されない)。マーカー 1kbpラダー(PlasmidFactory、品番MSM-865-50)、300ng;レーン1 DNA RCB1729-151023、未消化、250ng;レーン2 DNA RCB1729-151023、未消化、250ng;レーン3 DNA RCB1729-151023、XmnIで消化、250ng;レーン4 DNA RCB1729-151023、SmaIで消化、250ng。
【
図9】pAAV.RK.coRPGRの100mgプラスミド調製物のプラスミドの種類と構造的安定性。プラスミドpAAV.RK.RPGRのエンドヌクレアーゼ制限酵素消化断片サイズ。制限酵素XmnIの予想パターン:11+11+161+211+2681+4006bp(11bp断片はアガロースゲルを通り抜けて可視化されない)。マーカー 1kbpラダー(PlasmidFactory、品番MSM-865-50)、300ng;レーン1 pAAV.RK.coRPGR、250ng;レーン2 pAAV.RK.coRPGR、250ng;マーカー 1kbpラダー(PlasmidFactory、品番MSM-865-50)、300ng;レーン3 pAAV.RK.coRPGR、XmaI消化、250ng;レーン4 pAAV.RK.co.RPGR、XmaI消化、250ng;マーカー 1kbpラダー(PlasmidFactory、品番MSM-865-50)、300ng。
【
図10】AAV.RK.coRPGRの100mgプラスミド調製物の、A260によるプラスミドDNA濃度。計算された平均濃度:1.0mg/mL。
【
図11】DNA純度。方法:220nmと320nmの間の紫外スキャン。AAV.RK.coRPGRの100mgプラスミド調製物の、220nmと320nmの間の紫外によるプラスミド純度の決定。
【
図12】HEK293細胞におけるRPGR
ORF15発現のウェスタンブロット解析。(A)3回の独立な実験において、RPGR
ORF15(黒の矢印)の発現がCAG.coRPGR
ORF15(co)またはCAG.wtRPGR
ORF15(wt)のどちらかを遺伝子導入した細胞で検出され、遺伝子導入されていない試料(UNT)に比較された。(B)箱ひげ図は、内在性対照(β-アクチン)で標準化された後の、任意の単位(AU)で表された、デンシトメトリーによるRPGR
ORF15発現レベルの定量を示す。
【
図13】HEK293T細胞におけるRPGR
ORF15発現のウェスタンブロット解析。(A)RPGR
ORF15(黒の矢印)の発現がCAG.coRPGR
ORF15(co)またはCAG.wtRPGR
ORF15(wt)を遺伝子導入した細胞において検出され、遺伝子導入されていない試料(UNT)に比較された。トランケートされたタンパク質(白色矢印)が、wt配列を遺伝子導入された細胞において検出された。(B)棒グラフは、各試料において内在性対照(β-アクチン)で標準化された後の、デンシトメトリーによるRPGR
ORF15発現レベルの定量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明の様々な好ましい特徴および実施形態が次に非限定的な例により記載される。
【0102】
本発明の実施は、特に指定のない限り、当業者の能力の範囲内における化学、生化学、分子生物学、微生物学および免疫学の通常の技術を使用する。そのような技術は文献において説明される。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J. and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M. and McGee, J.O'D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; and Lilley, D.M. and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照して欲しい。これらの一般的テキストのそれぞれは本明細書中に参照により組み入れられる。
【0103】
一態様では、本発明は網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGRORF15)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供し、ここでRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列が配列の複製フィデリティーを増加するようにコドン最適化されている。
【0104】
網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子(RPGR)
網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子(RPGR)はおそらくグアニンヌクレオチド放出因子として働き、正常な視覚に必須である。研究により、RPGRはおそらく微小管構築および輸送制御への関与を通じて繊毛の生成における役割を果たすことが示唆されてきた。繊毛は、シグナリングおよび細胞運動を含む多数の生物活性に関与し得る、細胞表面からの指のような突起物である。繊毛はまた、聴覚、嗅覚および視覚を含む一連の感覚受容にも必要であり、繊毛は重要な視細胞の細胞小器官である。
【0105】
多数のRPGRタンパク質アイソフォームがRPGR遺伝子から発現される。ORF15エキソンを含むアイソフォームは本発明に特に関連性があり、時にはORF15と呼ばれる。このアイソフォームは本明細書中でRPGRORF15と呼ばれる。RPGRORF15は網膜、特に視細胞において主に発現されており、一方他のアイソフォームは他の場所で発現していて、おそらくまた繊毛の形成および/または機能に関与している。
【0106】
ヒト野生型RPGR
ORF15の例となるアミノ酸配列は:
【化7】
である。
【0107】
一実施形態では、ヒト野生型RPGR
ORF15をコードするヌクレオチド配列は:
【化8】
である。
【0108】
RPGR遺伝子における300種類超の変異が、X連鎖性網膜色素変性症(XLRP)に結び付けられている。さらに、RPGR変異はXLRPの症例の約70%に観察される。多くのXLRP関連RPGR変異はORF15エキソン(RPGRORF15のヌクレオチド1754-3459、例えば配列番号2のヌクレオチド1754-3459に対応する)内に発生し、通常はトランケートされた機能障害性のタンパク質をもたらす。RPGRの変異はおそらく視細胞繊毛の正常な機能を壊すが、これがどのように視細胞の漸進的喪失および結果的な疾患に特徴的な視覚障害を生むのかは不明である。
【0109】
RPGRは、RPGR遺伝子エキソン15のプリンリッチ領域における高度に変異しやすい領域によりRPの一般的原因である。野生型RPGRヌクレオチド配列がAAVベクターのクローニングのために使用されるならば、同様の問題がAAVベクターのクローニングにおいても起きると予想された。この問題を解決するために、本発明者らはRPGR遺伝子エキソン15における反復性GA配列を破壊し、報告された(Wu et al., Human Molecular Genetics 2015: 24(14); 3956-70)トランケートされたRPGRバリアントの大部分の原因たり得るwt cDNAにおける他の潜在的スプライス部位を回避するために、ピリミジンヌクレオチドを加えるコドン最適化を使用した。本発明のcoRPGRはCpG配列、潜在的スプライス部位および変則的polyAシグナルを回避するように設計された。
【0110】
コドン最適化
本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は野生型遺伝子配列、例えば配列番号2のヌクレオチド配列に関してコドン最適化されている。
【0111】
本明細書中に開示される最適化戦略を使用して作製された本発明のコドン最適化RPGR遺伝子は故に野生型cDNA配列よりも安定であり、それによりwtRPGRが遺伝子治療を通じて転写装置に再導入されると選択的スプライシングのバリアントおよびトランケートされたタンパク質を生じ得る(Wu et al., Human Molecular Genetics 2015: 24(14); 3956-70)wtRPGRに関連した問題を回避する。
【0112】
コドン最適化は、遺伝暗号のリダンダンシーの利点を活かし、コードされるタンパク質の同じアミノ酸配列を維持しながらヌクレオチド配列を変更することを可能にする。
【0113】
典型的にはコドン最適化はコードされるタンパク質の発現量の増加または減少を促進するために実行される。これはヌクレオチド配列中のコドン使用頻度を特定の細胞種のものに合わせることによりもたらされ、こうしてその細胞種における特定のtRNAの相対存在量の偏りに対応する細胞のコドンの偏りを利用する。ヌクレオチド配列中のコドンを変化させ、コドンが対応するtRNAの相対的存在量に一致するように合わせられることにより、発現量を増加させることができる。逆に、対応するtRNAが特定の細胞種で希少であることが公知であるコドンを選択することにより発現量を減少させることができる。
【0114】
しかし、本発明のコドン最適化は、細胞における発現レベルに影響することを特に狙いとしていない。代わりに、本発明は、RPGRORF15の変異しやすい野生型ヌクレオチド配列(例えば配列番号2)を操作し、野生型配列(例えば配列番号2)に比べて複製フィデリティーの増加を示す(すなわち、ポリヌクレオチド複製周期中、例えばクローニングの過程または自然の細胞周期中において発生する変異を受けにくい)配列を提供するために遺伝暗号のリダンダンシーを利用した。
【0115】
その上、本発明者らは:(i)コドン最適化されていないヒトcDNAのRPGR構築物に見られてきたような選択的スプライシングのバリアントをコドン最適化配列を用いて回避することができること;および(ii)コドン最適化配列からのタンパク質発現レベルは野生型配列のものよりも高く、したがって構築物を翻訳全般においてより効率的にすること(理論に拘束されることは望まないが、これはグルタミン酸およびグリシンtRNAの細胞内貯蔵量を使い切る反復性GANコドンの数の減少によるのかもしれない)を示した。
【0116】
野生型ORF15領域は、ゲノム中に予想されるよりも遥かに少ないTおよびCヌクレオチドを含む。例えば、野生型配列では位置2410と3160の間の750塩基対の配列はCヌクレオチドを全く含まない。これはクローニングおよびベクターの生産中に不正確に組換え得る反復の多い配列につながる。この領域では多くのコドンが位置1のGで始まるため、本発明のコドン最適化戦略において、先行するコドンの位置3へのCヌクレオチドの付加が、CpGジヌクレオチドの数を制限することを考慮しながら行われた。これは、これらのジヌクレオチドが多すぎると該導入遺伝子DNAが不自然であると同定され、Cヌクレオチドのメチル化に基づくサイレンシングを受けやすくするかもしれないからである。例えば、配列番号3の位置2410と3160の間の750塩基対の配列では、合計45個のCヌクレオチドがコドン最適化過程を通じて加えられ、45個のCpGジヌクレオチド(6.00%)をもたらした。これはこれらのジヌクレオチドの予想される野生型の頻度(6.25%)と好ましくも同等である。
【0117】
RPGRORF15のコドン配列を最適化する際にCpGジヌクレオチドを制限するさらなる理由は、真核細胞は進化的に保存された自然免疫機構を持っており、この機構は例えばウイルス感染(Willett et al., Frontiers in immunology 2013;4:261)に対する防御機構として前記真核細胞(というよりはその周囲の細胞)に役立つ。非メチル化CpGアイランドは宿主細胞によりウイルスDNAとして識別され得て、それによりプログラム細胞死につながる可能性を持つ経路(Toll/Nod/RIG I様受容体シグナリングなど)を誘導する(Krieg et al. The Journal of laboratory and clinical medicine 1996;128:128-133)。
【0118】
さらにその上、非メチル化CpGジヌクレオチドは炎症を引き起こす免疫応答を刺激し得る。
【0119】
その上、可能な場合にはグリシンをコードする4倍縮重コドン「GGN」にCコドン最適化が適用された。これは、GGCおよびGGTは両方ともグリシンをコードするため、導入遺伝子内のCpGジヌクレオチドにおけるCヌクレオチドのその後のいかなるメチル化およびその後のチミン(T)への脱アミノ化も、たとえそれが起こったとしても、RPGRタンパク質配列を変えないためである。
【0120】
RPGRのGAリッチ領域内へのTヌクレオチドの挿入は、本発明のコドン最適化の過程において変則的ポリAシグナル(例えばAATAAA)および潜在的スプライス供与部位(GT)の生成を回避するために、本発明のヌクレオチド配列において制限された。この領域は反復性Gピリミジン塩基およびその5’方向の潜在的Aヌクレオチド分岐部位を有する多数のスプライス受容(AG)配列を含むため、スプライス供与部位の回避は考慮すべき要素である。コドン最適化のパターンは、GA反復を減らし、また変則的スプライシングおよび未成熟ポリAシグナルの生成のリスクをも減少させるための最適な改変を決定するために、大規模にin silicoでモデル化された。本明細書中に開示される最適化戦略を使用して作製された本発明のコドン最適化遺伝子は、故に、遺伝子治療を通じて転写装置に再導入されると選択的スプライシングのバリアントおよびトランケートされたタンパク質を生成し得る(Wu et al., Human Molecular Genetics 2015: 24(14); 3956-70)野生型cDNA配列に比べてより安定である。本発明のコドン最適化遺伝子は、疾患を引き起こすwtRPGRに伴う問題をそれにより回避する。
【0121】
本発明者らにより開発され実証された原理は似たような有利な特徴を示す配列3のバリアントを生成するために適応され適用され得る。したがって、本発明は配列番号3の特定の配列に限定されると見られるべきではない。
【0122】
複製フィデリティーは当業者に公知である多数の方法のいずれによっても測定され得る。
【0123】
例えば、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列はPCR増幅され、標準的クローニングベクターにライゲーションされ得る。ライゲーション産物は次にセルライン(例えば、標準的な大腸菌(E. coli)株)に形質転換されてもよく、結果として生じた多数の形質転換体コロニーは、そこに含まれるRPGRORF15遺伝子のヌクレオチド配列を決定するために解析されてもよい。シーケンシングの結果は、RPGRORF15をコードする異なるヌクレオチド配列(例えば、参照予想配列を含めて)間で比較し、試験されたコロニーのうち変異したおよび変異していない配列を含む割合を決定してもよい。
【0124】
一実施形態では、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(例えば、コロニーからの配列を含むプラスミドの単離などによる、大腸菌(E. coli)コロニーなどの細胞コロニーから単離されたポリヌクレオチド)が、例えばサンガーシーケンシング法を使用して、ポリヌクレオチドシーケンシングにより解析される際には、9個未満、例えば8、7、6、5、4、3または2個未満の変異がRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列に存在する。好ましくは、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列がシーケンスされる際には0個の変異が存在する。
【0125】
別の実施形態では、例えば4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400または500個のクローンが解析される場合には、試験されたクローン(すなわち、大腸菌(E. coli)コロニーから単離されたプラスミドなどの、細胞コロニーから単離された本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド)のうちの25%未満、例えば、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満は、少なくとも1個の変異を含むRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、試験されたクローンの0%が、少なくとも1個の変異を含むRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0126】
一実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、野生型配列(例えば配列番号2)に比較してプリンヌクレオチドの数を減少させるようにコドン最適化されている。
【0127】
アデニンおよびグアニンは野生型のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列に見出される2種類のプリンヌクレオチドである。
【0128】
一実施形態では、プリンヌクレオチドの数は、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列のプリンリッチ(すなわちGAリッチ)領域、例えばORF15エキソン領域において減らされる。
【0129】
一実施形態では、プリンヌクレオチドの数は、野生型配列(例えば配列番号2)におけるプリンヌクレオチドの数の少なくとも0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%が減らされる。
【0130】
別の実施形態では、プリンヌクレオチドの数は、野生型配列(例えば配列番号2)におけるプリンヌクレオチドの数の0.5-10%、0.5-7.5%、0.5-5%、0.5-4.5%、0.5-4%、0.5-3.5%、0.5-3%、1-5%、1-4.5%、1-4%、1-3.5%または1-3%が減らされる。
【0131】
一例となる本発明のRPGR
ORF15のコドン最適化配列は:
【化9】
である。
【0132】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、以下の:
(a)配列番号1に対してい少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(b)配列番号3に対して少なくとも80%以上の同一性を有するヌクレオチド配列;および
(c)配列番号3のヌクレオチド配列、
からなる群から選択される配列を含み、好ましくはここで、該ヌクレオチド配列にコードされるタンパク質は配列番号1に代表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0133】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、好ましくはここで該アミノ酸配列は配列番号1に代表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0134】
別の実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、好ましくはここで該ヌクレオチド配列にコードされるタンパク質は配列番号1に代表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。
【0136】
好ましくは、本発明のRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列は、網膜色素変性症を患うかまたは発症リスクのある対象者において、配列番号1のタンパク質に比べて、
(a)RPに伴う網膜色素の変化の臨床的所見;
(b)視細胞(例えば錐体細胞、好ましくは錐体および桿体細胞)の細胞死;および/または
(c)視覚機能の悪化
の同程度またはより高度な予防を助けるタンパク質をコードする。
【0137】
本明細書中で使用されるヌクレオチドの記号「N」は、IUPAC-IUBの慣例に従い、その位置に存在し得るすべてのヌクレオチド(例えば、G、A、TまたはC)を意味する。
【0138】
網膜色素変性症
網膜色素変性症(RP)は、一般的に桿体視細胞の進行性の変性により引き起こされる、遺伝性網膜ジストロフィーの表現型上で結び付いた群である。網膜色素上皮(RPE)および錐体視細胞もまた疾患進行中に変性し得る。
【0139】
X連鎖性網膜色素変性症(XLRP)は、X染色体連鎖性パターンで遺伝する形態の疾患(すなわち、疾患に関連する遺伝子がX染色体上に位置する)であり、網膜色素変性症の最も重篤な形態とされる。
【0140】
RPは臨床的所見上、細動脈の減衰および視神経の委縮を伴い得る、網膜色素の変化により臨床所見上特徴づけられる。網膜における変化は網膜色素の分散および凝集によりもたらされ得る。これは骨小体様色素沈着に似た顆粒状または斑状のものから特徴的な限局性のものまでに渡る凝集体の外観を生じ得る。黒色または暗褐色の星形の色素集中が現れ得る。その上、網膜の四分円に限局した色素沈着、乳頭から放射状に広がるような外見の異常部分、および重篤な脈管障害に伴う変化が観察され得る。
【0141】
本明細書中に記載されるRPの治療または予防は、上述のRP表現型の出現を減少させるかまたは予防し得る。それは錐体細胞など視細胞の変性からの保護をもたらし得る。好ましくは、治療により錐体および桿体細胞の両方が変性から保護される。
【0142】
桿体錐体の数は、補償光学、自発蛍光および光干渉断層法(OCT)スキャンなどの技術を使用して診療に習熟した人が見積もることができる。
【0143】
好ましくは、RPの治療は視覚機能の維持または改善を可能にする。
【0144】
網膜の外観の可視化および視覚機能の検査は当業者により容易に実施され得る。例えば、当業者により実施されてもよい視覚機能検査は、最良矯正視力、視野テスト、マイクロペリメトリー(microperimetry)、色覚、暗順応測定、網膜電図検査および錐体閃光融合検査(cone flicker fusiion test)を含む。本明細書中で使用される「視覚機能の維持または改善」は、本発明の方法が実施された前後で治療された眼の視覚が比較された際に、1種類以上のそのような視覚機能試験により検査される視覚レベルにおける実質的に同じレベルの維持かまたは改善として理解されるべきである。
【0145】
眼の構造
本明細書中に開示される医薬は、網膜色素変性症(RP)の治療または予防に関連して哺乳類の、好ましくはヒトの眼に与えられてもよい。
【0146】
眼疾患の治療に習熟した人は、眼の構造の詳細で完全な理解を有しているだろう。しかし、本発明に特に関連した以下の構造が記載される。
【0147】
網膜
網膜は、眼の内側後房を覆い、視神経を介して脳へと伝えられる視覚世界の画像を感覚する多層状の膜である。眼の内側から外側の順番に、網膜は神経感覚上皮および網膜色素上皮の層、網膜色素上皮の外側にある脈絡膜を含む。
【0148】
網膜神経感覚上皮および視細胞
網膜神経感覚上皮は光を直接感じる視細胞を抱える。それは、以下の層:内境界膜(ILM);神経線維層;神経節細胞層;内網状層;内顆粒層;外網状層;外顆粒層(視細胞の核);外境界膜(ELM);および桿体錐体の視細胞(内節および外節)を含む。
【0149】
当業者は視細胞について詳細な理解を有するだろう。手短に述べれば、視細胞は光を生体信号に変換する網膜に位置する特化したニューロンである。視細胞は、網膜上に異なって分布する桿体および錐体細胞を含む。
【0150】
桿体細胞は主に網膜の周辺部分に渡り分布している。桿体細胞は高度に感度が高く、弱い光レベルにおける視覚を提供する。正常なヒト網膜には平均して約1億25百万個の桿体細胞がある。
【0151】
錐体細胞は網膜中に見出されるが、中心の高解像度の視覚を担う網膜神経感覚上皮における窩である中心窩に特に高度に集中している。錐体細胞は桿体細胞よりも感度が低い。正常なヒト網膜には平均して約6~7百万個の錐体細胞がある。
【0152】
網膜色素上皮
網膜色素上皮(RPE)は網膜神経感覚上皮のすぐ外側に位置する細胞の色素層である。RPEは、視細胞への栄養および他の物質の輸送、ならびに視覚を向上させるための散乱光吸収を含む多数の機能を行う。
【0153】
脈絡膜
脈絡膜は、眼のRPEおよび外側の強膜の間にある血管層である。脈絡膜の脈管構造は網膜への酸素および栄養の供給を可能にする。
【0154】
ベクター
ベクターは何らかの存在物のある環境から別の環境への移動を可能にするかまたは推進するツールである。本発明に従えば、例としては、組換え核酸技術に使用される一部のベクターは、核酸断片(例えば、異種性のcDNA断片などの、異種性のDNA断片)などの存在物が標的細胞に移動されることを可能にする。ベクターは細胞内における異種性の核酸(例えば、DNAまたはRNA)の維持、核酸断片を含むベクターの複製の促進、または核酸断片にコードされるタンパク質の発現促進の目的に役立ち得る。
【0155】
ベクターは非ウイルスまたはウイルスであってもよい。組換え核酸技術において使用されるベクターの例は、以下に限定されないが、プラスミド、染色体、人工染色体およびウイルスを含む。ベクターはまた、例えば裸の核酸(例えばDNAまたはRNA)であってもよい。最も単純な形態では、ベクターはそれ自体、目的のヌクレオチドであってもよい。
【0156】
一態様では、本発明は本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0157】
本発明において使用されるベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターであってもよく、ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターおよび場合によりプロモーターの制御因子を含んでもよい。
【0158】
ウイルスベクター
好ましい実施形態では、本発明のベクターはウイルスベクターである。好ましくは、ウイルスベクターはウイルスベクター粒子の形態にある。
【0159】
ウイルスベクターは、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスベクターであってもよい。
【0160】
当業者は、例えば送達すべき導入遺伝子のサイズおよび種類ならびに標的細胞の種類に基づき、必要な目的に応じた好適なウイルスを本発明のベクターとして容易に選択することができる。その上、AAV、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスに由来するものなどのウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子を調製し改変する方法は当技術分野においてよく公知であり、必要な目的に向けて当業者によって容易に適応され得る。
【0161】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
好ましい一実施形態では、本発明のベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。好ましくは、AAVベクターはAAV粒子の形態にある。
【0162】
AAVベクターはAAVゲノムまたはその派生物を含んでもよい。
【0163】
AAVゲノムはAAV粒子の産生に必要な機能をコードするポリヌクレオチド配列である。これらの機能は、AAVゲノムのAAV粒子中へのキャプシド形成を含む、宿主細胞においてAAVの複製およびパッケージングの周期を実行する機能を含む。天然に発生するAAVは複製欠損であり、複製およびパッケージング周期の完了にはヘルパー機能のtransでの供給に依存する。したがって、本発明のベクターのAAVゲノムは典型的には複製欠損である。
【0164】
AAVゲノムはプラスもしくはマイナスセンス鎖のどちらかの一本鎖状であるか、またはその代わりに二本鎖状であり得る。二本鎖状の形態の使用は、標的細胞におけるDNA複製ステップのバイパスを可能にし、それ故導入遺伝子の発現を加速できる。
【0165】
AAVゲノムはAAVの天然由来の任意の血清型、単離体またはクレードに由来してもよい。したがって、AAVゲノムは天然に発生するAAVの完全なゲノムであってもよい。当業者に公知であるように、天然に発生するAAVは様々な生物システムに従って分類され得る。
【0166】
一般的にAAVはその血清型に関連して参照される。血清型は、キャプシド表面抗原の発現プロファイルに従い、他のバリアント亜種から区別するのに使用され得る特徴的な反応性を有するAAVのバリアント亜種に対応する。典型的には、特定のAAV血清型を有するウイルスは、他のいかなるAAV血清型に特異的な中和抗体とも効率的には交差反応しない。
【0167】
AAV血清型はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11、ならびに最近霊長類脳から同定されたRec2およびRec3などの組換え血清型をも含む。これらのAAV血清型のいずれも本発明において使用されてよい。したがって、本発明の一実施形態では、AAVベクター粒子はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rec2またはRec3のAAVベクター粒子である。
【0168】
AAV血清型の総説はChoi et al. (2005) Curr. Gene Ther. 5: 299-310およびWu et al. (2006) Molecular Therapy 14: 316-27に見出され得る。本発明における使用のためのAAVゲノム、またはITR配列、rep遺伝子もしくはcap遺伝子を含むAAVゲノムのエレメントの配列はAAV全ゲノム配列のための以下のアクセッション番号:Adeno-associated virus 1 NC_002077、AF063497;Adeno-associated virus 2 NC_001401;Adeno-associated virus 3 NC_001729;Adeno-associated virus 3B NC_001863;Adeno-associated virus 4 NC_001829;Adeno-associated virus 5 Y18065、AF085716;Adeno-associated virus 6 NC_001862;Avian AAV ATCC VR-865 AY186198、AY629583、NC_004828;Avian AAV strain DA-1 NC_006263、AY629583;Bovine AAV NC_005889、AY388617に由来してもよい。
【0169】
AAVはまたクレードまたはクローンに関連して参照されてもよい。これは天然由来のAAVの系統学的な関係、および典型的には共通の祖先に遡ることができてそのすべての子孫を含むAAVの系統学的な群を参照する。その上、AAVは特定の単離体、すなわち天然に見出される特定のAAVの遺伝的単離体に関連して参照されてもよい。遺伝的単離体という用語は、他の天然に発生するAAVとの限定された遺伝的混合を経たAAV集団を表しており、それにより遺伝的なレベルにおいて認識できるほど異なる集団を規定する。
【0170】
当業者は、技術常識に基づき本発明における使用のためのAAVの適切な血清型、クレード、クローンまたは単離体を選択することができる。例えば、AAV5キャプシドは遺伝性色覚異常を首尾よく矯正することにより証明されるように霊長類の錐体視細胞に効率的に形質導入することが示されている(Mancuso et al. (2009) Nature 461: 784-7)。
【0171】
AAV血清型はAAVウイルスの感染の組織特異性(または親和性)を決定する。したがって、本発明に準じて患者に投与されるAAVにおける使用のための好ましいAAV血清型は、眼の中の標的細胞に天然の親和性を有するか高い感染効率を有するものである。一実施形態では、本発明における使用のためのAAV血清型は、網膜神経感覚上皮、網膜色素上皮および/または脈絡膜の細胞に感染するものである。
【0172】
典型的には、AAVの自然界由来の血清型、単離体またはクレードのAAVゲノムは、少なくとも1個の逆方向末端反復配列(ITR)を含む。ITR配列は、機能的な複製起点を提供するためにcisで働き、細胞のゲノムからのベクターの組込みと切り出しをもたらす。好ましい実施形態では、1個以上のITR配列が、RPGRORF15をコードするヌクレオチド配列に隣接する。AAVゲノムは典型的にはまたAAV粒子のためのパッケージング機能をコードするrep遺伝子および/またはcap遺伝子などのパッケージング遺伝子を含む。rep遺伝子は、Rep78、Rep68、Rep52およびRep40またはそれらのバリアントのうち1個以上をコードする。cap遺伝子はVP1、VP2およびVP3またはそれらのバリアントなどの1個以上のキャプシドタンパク質をコードする。これらのタンパク質はAAV粒子のキャプシドを構成する。キャプシドのバリアントは以下で議論される。
【0173】
プロモーターは、パッケージング遺伝子のそれぞれに作動可能に連結される。そのようなプロモーターの具体例は、p5、p19およびp40プロモーター(Laughlin et al. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 5567-5571)を含む。例えば、p5およびp19プロモーターは一般的にrep遺伝子を発現させるために使用され、一方でp40プロモーターは一般的にcap遺伝子を発現させるのに使用される。
【0174】
上で議論されるように、本発明のベクターにおいて使用されるAAVゲノムは故に天然に発生するAAVの完全なゲノムであってもよい。例えば、完全なAAVゲノムを含むベクターはin vitroでAAVベクターまたはベクター粒子を調製するために使用されてもよい。しかし、そのようなベクターは原則的には患者に投与されてもよいが、これは実際に使用されるのは稀である。好ましくはAAVゲノムは患者への投与の目的のために派生体化されるだろう。そのような派生体化は当技術分野において標準的であり、本発明は、AAVゲノムのあらゆる公知の派生体および当技術分野で公知の手法を適用することにより作製される派生体の使用を含む。AAVゲノムおよびAAVキャプシドの派生体化は、Coura and Nardi (2007) Virology Journal 4: 99、ならびに上で参照されたChoi et al.およびWu et al.において概説されている。
【0175】
AAVゲノムの派生体は、本発明のベクターからの導入遺伝子のin vivoでの発現をもたらすAAVゲノムのあらゆるトランケートされたかまたは改変された形態を含む。典型的には、最小のウイルス配列を含むがなお上述の機能を保持するように著しくAAVゲノムをトランケートすることができる。ベクターが野生型ウイルスと組換るリスクを低減し、また標的細胞におけるウイルス遺伝子タンパク質の存在により細胞の免疫反応を引き起こすことを避ける安全上の理由により、これは好ましい。
【0176】
典型的には、派生体は少なくとも1個の逆方向末端反復配列(ITR)、好ましくは例えば2個以上のITRなどの1個よりも多いITRを含むだろう。1個以上のITRは異なる血清型を有するAAVゲノムに由来してもよく、またはキメラITRもしくは変異型ITRであってもよい。好ましい変異型ITRはtrs(末端解離部位(terminal resolution site))の欠失を有するものである。この欠失は、コード配列および相補配列の両方を含む一本鎖ゲノム、すなわち自己相補的AAVゲノムを生み出す連続ゲノム複製を可能にする。これは、標的細胞におけるDNA複製のバイパスを可能にし、したがって導入遺伝子発現の加速を可能にする。
【0177】
該1個以上のITRは好ましくはいずれかの末端でRPGRORF15をコードするヌクレオチド配列と隣接するだろう。1個以上のITRを含めることは、例えば宿主細胞のDNAポリメラーゼの働きにより一本鎖ベクターDNAが二本鎖DNAに変換された後などに、宿主細胞の核において本発明のベクターの鎖状体形成を助けるために好ましい。そのようなエピソームの鎖状体形成は、宿主細胞の一生においてベクター構築物を保護し、それにより導入遺伝子のin vivoの発現を長引かせることを可能にする。
【0178】
好ましい実施形態では、ITRエレメントは派生体において天然AAVゲノムから保持される唯一の配列であるだろう。したがって、派生体は好ましくは天然ゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子ならびに天然のゲノムの他のいかなる配列も含まないだろう。これは、上述の理由により、またベクターが宿主細胞ゲノム中に組み込まれる可能性を減らすためにも好ましい。その上、AAVゲノムのサイズを減少させれば、導入遺伝子に加えてベクター中に他の配列エレメント(例えば制御エレメントなど)を取り込む際に自由度を増やすことが可能になる。
【0179】
以下の部分:1個の逆方向末端反復(ITR)配列、反復(rep)遺伝子およびキャプシド(cap)遺伝子は、故に本発明の派生体において除去されてもよい。しかし、一部の実施形態では、派生体は1個以上のrep遺伝子および/もしくはcap遺伝子またはAAVゲノムの他のウイルス配列を追加して含んでもよい。天然に発生するAAVはヒト19番染色体上の特異的な部位で高頻度で組込まれ、無視できる頻度のランダムな組込みを示すため、ベクター中の組込み能力の保持は治療上の状況では許容され得る。
【0180】
派生体がキャプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2および/またはVP3を含む場合、該派生体は1種類以上の天然に発生するAAVのキメラの派生体、シャッフルされた派生体、またはキャプシドを改変された派生体であってもよい。特に、本発明は、同じベクター(シュードタイプ化したベクター)中に異なる血清型、クレード、クローンまたは単離体のAAVに由来するキャプシドタンパク質配列の提供を含む。
【0181】
キメラの派生体、シャッフルされた派生体、またはキャプシドを改変された派生体は典型的には、ウイルスベクターにとって1個以上の望ましい機能性を提供するために選択される。したがって、これらの派生体は、AAV2ゲノムなどの天然に発生するAAVゲノムを含むAAVベクターに比べて、遺伝子送達効率の増加、免疫原性(液性および細胞性)の減少、親和性範囲の変更、および/または特定細胞種へのターゲティングの改善を示してもよい。遺伝子送達効率の増加は、細胞表面での受容体または共受容体結合の改善、内部移行の改善、細胞内輸送および核内輸送の改善、ウイルス粒子の脱コートの改善、および一本鎖ゲノムから二本鎖形態への変換の改善によりもたらされ得る。効率の増加はまた、ベクター用量がそれが必要とされない組織への投与により希釈されないように、親和性範囲または特異的細胞集団のターゲティングの変更にも関係し得る。
【0182】
キメラのキャプシドタンパク質は、天然に発生するAAV血清型の2種類以上のキャプシドをコードする配列の間での組換えにより作製されるものを含む。これは、例えば、ある血清型の非感染性キャプシド配列が異なる血清型のキャプシド配列とともに遺伝子導入され、方向づけされた選抜が、望ましい性質を有するキャプシド配列を選択するために使用されるマーカーレスキュー法により行われてもよい。異なる血清型のキャプシド配列は、新規のキメラのキャプシドタンパク質を生産するように、細胞内における相同組換えにより変更されてもよい。
【0183】
キメラのキャプシドタンパク質はまた、例えば異なる血清型の2種類以上のキャプシドタンパク質の間など、2種類以上のキャプシドタンパク質の間で特定のキャプシドタンパク質ドメイン、表面ループまたは特定のアミノ酸残基を移動するようにキャプシドタンパク質配列を操作することにより作製されるものも含む。
【0184】
シャッフルされたまたはキメラのキャプシドタンパク質はまた、DNAシャッフリングによるかまたは変異性PCR法により作製されてもよい。混成AAVキャプシド遺伝子は、関連するAAV遺伝子、例えば複数の異なる血清型のキャプシドタンパク質をコードするものなどの配列をランダムに断片化し、次にその後に、配列が相同な領域において交差をも引き起こし得る自己プライミングポリメラーゼ反応で断片を再構成することにより生成され得る。数種の血清型のキャプシド遺伝子をシャッフルすることによりこの方法で生成された混成AAV遺伝子のライブラリーは望ましい機能性を有するウイルスクローンを同定するためにスクリーニングされ得る。同様に、変異性PCRは、その後に望ましい性質を選択され得るバリアントの多様なライブラリーを生成するためにAAVキャプシド遺伝子をランダムに変異させるために使用されてもよい。
【0185】
キャプシド遺伝子の配列はまた、天然の野生型配列について特定の欠失、置換または挿入を導入するように遺伝学的に改変されてもよい。特に、キャプシド遺伝子は、キャプシドをコードする配列のオープンリーディングフレーム中、またはキャプシドをコードする配列のN末端および/またはC末端で無関係のタンパク質またはペプチドの配列を挿入することにより改変されてもよい。
【0186】
該無関係なタンパク質またはペプチドは、好都合には、特定の細胞種のためのリガンドとして働き、それにより標的細胞への結合が改善するようにするかまたはベクターの特定の細胞集団へのターゲティングの特異性を改善するものであってもよい。一例は、網膜色素上皮における取り込みを阻害しそれにより周囲の網膜組織の形質導入を促進するRGDペプチドの使用を含んでもよい(Cronin et al. (2008) ARVO Abstract: D1048)。該無関係なタンパク質はまた、生産過程の一部としてウイルス粒子の精製を助けるもの、すなわちエピトープまたは親和性タグであってもよい。挿入部位は、典型的には、ウイルス粒子の他の機能、例えば内部移行、ウイルス粒子の輸送などに干渉しないように選択されるだろう。当業者は、その技術常識に基づき、挿入に好適な部位を同定することができる。特定の部位は、上で参照されたChoi et al.において開示される。
【0187】
本発明は、天然AAVゲノムのものとは異なる順序および配置のAAVゲノムの配列の提供を追加して含む。本発明はまた、1個以上のAAV配列または遺伝子を、別のウイルス由来の配列と、または1種類よりも多いウイルス由来の配列から構成されるキメラ遺伝子と置換することも含む。そのようなキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2個以上の関連ウイルスタンパク質に由来する配列から構成されてもよい。
【0188】
本発明のベクターは、AAVゲノムまたはその派生体を含むヌクレオチド配列およびRPGRORF15導入遺伝子またはそのバリアントをコードする配列の形態をとってもよい。
【0189】
本発明のAAV粒子は、ある血清型のITRを有するAAVゲノムまたは派生体が異なる血清型のキャプシドにパッケージされるトランスキャプシデートされた形態を含む。本発明のAAV粒子はまた、2種以上の異なる血清型に由来する未改変のキャプシドタンパク質の混合物がウイルスキャプシドを構成するモザイクの形態を含む。AAV粒子はまた、キャプシド表面に吸収されたリガンドを持つ化学的に改変された形態を含む。例えば、そのようなリガンドは特定の細胞表面受容体を標的にするための抗体を含んでもよい。
【0190】
したがって、例えば、本発明のAAV粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/2)、AAV2ゲノムおよびAAV5キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/5)、ならびにAAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質を有するもの(AAV2/8)を含む。
【0191】
レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
本発明の別の実施形態では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。
【0192】
レトロウイルスおよびレンチウイルスは広範な目的のための遺伝子治療ベクターとしての使用のために適応されてきた。
【0193】
レトロウイルスは2つのカテゴリー、「単純」および「複雑」に大きく分けられ得る。レトロウイルスはさらにその上7群に分けられ得る。これらの群のうち5つは発がん性を有するレトロウイルスを代表する。残りの2群はレンチウイルスおよびスプーマウイルスである。これらのレトロウイルスの概説はCoffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, pp. 758-763, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Eds: J.M. Coffin, S.M. Hughes, H.E. Varmusに提示される。
【0194】
本発明において使用されるレトロウイルスベクターは、任意の好適なレトロウイルスに由来し得るかまたは由来可能であり得る。多数の異なるレトロウイルスが同定されており、当業者は特定の目的に適う好適なレトロウイルスをうまく選択することができる。例は、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球症ウイルス-29 (MC29)およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)を含む。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, pp. 758-763, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Eds: J.M. Coffin, S.M. Hughes, H.E. Varmusに見出すことができる。
【0195】
本発明の別の実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスである。
【0196】
レンチウイルスベクターは、より大きな群のレトロウイルスベクターの一部である。レンチウイルスの詳細なリストはCoffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, pp. 758-763, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Eds: J.M. Coffin, S.M. Hughes, H.E. Varmusに見出すことができる。手短には、レンチウイルスは、霊長類と非霊長類の群に分けられる。霊長類レンチウイルスの例は、ヒト自己免疫不全症候群(AIDS)の原因病原体である、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);サル免疫不全ウイルス(SIV)を非限定的に含む。非霊長類レンチウイルスの群は、プロトタイプである「スローウイルス」のビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびにヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)、およびより最近になって記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)ならびに牛免疫不全ウイルス(BIV)を含む。
【0197】
アデノウイルスベクター
本発明の別の実施形態では、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。
【0198】
アデノウイルスはRNA中間体を経由しない二本鎖直鎖状DNAウイルスである。遺伝学的な配列相同性に基づいた6種類の小群に分けられる、50種類以上の異なるヒト血清型のアデノウイルスがある。アデノウイルスの天然の標的は、呼吸器または胃腸の上皮であり、一般的に軽度の症状のみを生じる。血清型2および5(95%配列相同性を有する)はアデノウイルスベクター系において最も一般的に使用され、通常は若年における上気道の感染症に関連する。
【0199】
アデノウイルスは遺伝子治療および異種性遺伝子の発現のためのベクターとして使用されてきた。その大きな(36kb)ゲノムは8kbまでの外来挿入DNAを収容することができ、補完するセルラインにおいて効率的に複製し1012までの非常に高い力価を生産することができる。アデノウイルスはしたがって初代の非複製性細胞における遺伝子発現を研究するための最良の系の1つである。
【0200】
アデノウイルスゲノムからのウイルスまたは外来性の遺伝子の発現は複製細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは受容体仲介性エンドサイトーシスにより細胞に入る。一度細胞の中に入れば、アデノウイルスベクターは滅多に宿主染色体中に組み込まれない。その代わりに、アデノウイルスベクターは宿主の核の中で直鎖状ゲノムとしてエピソーマルに(宿主ゲノムから独立して)機能する。故に組換えアデノウイルスの使用は、宿主ゲノムへのランダムな組込みに関連した問題を軽減する。
【0201】
プロモーターおよび制御配列
本発明のベクターはまた、RPGRORF15導入遺伝子のin vitroまたはin vivoの発現をもたらすエレメントを含んでもよい。これらは発現制御配列と呼ばれてもよい。したがって、ベクターは典型的には導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列(例えばプロモーター配列を含む)を含む。
【0202】
任意の好適なプロモーターが使用されてもよく、その選択は当業者により容易に行われ得る。プロモーター配列は構成的に活性があってもよいし(すなわち、どんな宿主細胞背景でも機能する)、またはその代わりに特異的な宿主環境においてのみ活性があり、それ故特定の細胞種における導入遺伝子の標的化発現をもたらしてもよい(例えば組織特異的プロモーター)。プロモーターは別の因子、例えば宿主細胞中に存在する因子の存在に反応して誘導される発現を示してもよい。いずれにしても、ベクターが治療のために投与される場合には、プロモーターは標的細胞背景において機能的であることが好ましい。
【0203】
一部の実施形態では、導入遺伝子が網膜細胞集団で発現されるだけにするために、プロモーターは網膜細胞特異的な発現を示すことが好ましい。したがって、プロモーターからの発現は網膜細胞特異的であってもよく、例えば網膜感覚神経上皮および網膜色素上皮の細胞のみに限局されてもよい。
【0204】
好ましいプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントと場合により組み合わせたニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターを含む。本発明における使用のための例となるプロモーターは混成CBA/CAGプロモーター、例えばrAVE発現カセット(GeneDetect.com)において使用されるプロモーターである。本発明における使用のためのさらなる例となるプロモーターは配列:
【化10】
を有する。
【0205】
網膜特異的な遺伝子発現を誘導し得るヒト配列に基づくプロモーターの例は、桿体および錐体にはロドプシンキナーゼ(Allocca et al. (2007) J. Virol. 81: 11372-80)、錐体のみにはPR2.1(Mancuso et al. (2009) Nature 461: 784-7)および/または網膜色素上皮にはRPE65(Bainbridge et al. (2008) N. Engl. J. Med. 358: 2231-9)を含む。一部の実施形態では、RPGR
ORF15をコードするポリヌクレオチドは、好ましくはヒトのロドプシンキナーゼ(GRK1)プロモーターに作動可能に連結され、前記プロモーターは、配列番号7のヌクレオチド配列かまたはそれに対して少なくとも90もしくは95%の同一性を有する機能的なバリアントを含んでもよい。
【化11】
【0206】
他の実施形態では、RPGR
ORF15をコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結されるプロモーターエレメントは、好ましくはヒトの光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)プロモーターであり、該プロモーターは配列番号8の核酸配列またはそれに対して少なくとも90もしくは95%の同一性を有する機能的なバリアントを含んでもよい。
【化12】
【0207】
好ましくは、プロモーターの他には、いかなる追加の制御エレメントもRPGRORF15の発現を制御するために使用されない。
【0208】
しかし、本発明のベクターはまた、転写前または転写後に働き得る1個以上の追加の制御配列を含んでもよい。該制御配列は天然の導入遺伝子の遺伝子座の一部であってもよいし、または異種性の制御配列であってもよい。本発明のベクターは天然の導入遺伝子転写産物に由来する5'-UTRまたは3'-UTRの一部を含んでもよい。
【0209】
制御配列は、導入遺伝子の発現を促進する、すなわち転写産物の発現を増加させるように働くか、mRNAの核外輸送を向上するか、またはその安定性を増強する、任意の配列である。そのような制御配列は例えばエンハンサーエレメント、ポストレギュラトリーエレメントおよびポリアデニル化部位を含む。好ましいポリアデニル化部位は以下:
【化13】
に示されるようなものであってもよいウシ成長ホルモンポリAシグナルである。
【0210】
本発明のベクターの文脈では、そのような制御配列はcisに働く。しかし、本発明はまた、追加の遺伝学的構築物に位置するtransに働く制御配列の使用も含む。
【0211】
本発明のベクターにおける使用のための好ましいポストレギュラトリーエレメントはウッドチャック肝炎ポストレギュラトリーエレメント(woodchuck hepatitis postregulatory element)(WPRE)またはそのバリアントである。WPREの例示的な配列は以下に示される:
【化14】
【0212】
本発明は、WPREを含まないベクターに比べて導入遺伝子の発現を増加させるWPREの任意のバリアント配列の使用を含む。好ましくは、バリアント配列はその全体の配列に渡って配列番号6に対して少なくとも70%の同一性、より好ましくは75%、80%、85%、90%、より好ましくはその全体の配列に渡って配列番号6に対して少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の同一性を示す。
【0213】
本発明のベクターにおいて使用されてもよい別の制御配列は骨格結合領域(scaffold attachment region)(SAR)である。追加の制御配列は当業者により容易に選択され得る。
【0214】
投与方法
本発明の一実施例では、ウイルス(例えばAAV)ベクターは網膜下注入、網膜への直接注入または硝子体内注入により対象者の眼に投与される。
【0215】
当業者は個々の網膜下注入、網膜への直接注入または硝子体内注入を熟知しており首尾よく実行することができるだろう。
【0216】
好ましくは、ウイルス(例えばAAV)ベクターは網膜下注入により投与される。
【0217】
網膜下注入
網膜下注入は網膜下腔、すなわち網膜神経感覚上皮の下への注入である。網膜下注入の間、注入される物質は視細胞と網膜色素上皮(RPE)層の間に向けられ、その間に空間を生じる。
【0218】
注入が小さな網膜切開術により実行されるとき、網膜剥離が生じてもよい。注入物質により生じる網膜の剥離して上昇した層は「ブレブ」と呼ばれる。
【0219】
網膜下注入により生じた穴は、注入された溶液が投与後に硝子体腔中に著しく逆流しないように十分小さくなければならない。医薬の効果が標的領域から逸れることになるため、そのような逆流は医薬が注入された時に特に問題になるだろう。好ましくは、該注入は網膜神経感覚上皮中に自己閉鎖する入口を生じる、すなわち、一たび注入針が除去されると、注入物質がその穴からほとんど放出されないかまたは実質的に全く放出されないように針によって生じた穴が再閉鎖する。
【0220】
この過程を促進するために、専用の網膜下注入針が市販されている(例えば、DORC 41Gテフロン(登録商標)網膜下注入針、Dutch Ophthalmic Research Center International BV、Zuidland、The Netherlands)。これらは網膜下注入を実行するために設計された針である。
【0221】
注入中に網膜への損傷が発生しない限り、および十分に小さい針が使用される限り、実質的にすべての注入物質は、局所的な網膜剥離の場所で剥離された神経感覚上皮とRPEの間に局在したままである(すなわち、硝子体腔中に逆流しない)。実際、短い期間で典型的にはブレブが残っていることは、通常は注入物質は硝子体腔中にほとんど逃げていかないことを示す。ブレブは注入物質が吸収されるにつれてより長い時間をかけて消えてもよい。
【0222】
眼、特に網膜の可視化は、例えば光干渉断層法を使用して手術前に行われてもよい。
【0223】
2ステップ網膜下注入
本発明のベクターは、局所的な網膜剥離が第1液の網膜下注入により生じる2ステップ法により正確性と安全性を高めて送達されてもよい。第1液はベクターを含まない。2回目の網膜下注入は次に、1回目の網膜下注入により生じたブレブの網膜下液中にベクターを含む医薬を送達するために使用される。医薬を送達する注入は網膜を剥離するために使用されないため、特定の体積の溶液がこの第2ステップにおいて注入されてもよい。
【0224】
本発明の一実施形態では、ウイルス(例えばAAV)ベクターは以下の:
(a)少なくとも部分的に網膜を剥離し網膜下ブレブを形成するのに有効な量の溶液の網膜下注入による対象者への投与であって、該溶液がベクターを含まない、前記投与;および
(b)ステップ(a)により形成されたブレブ中への網膜下注入による医薬組成物の投与であって、該医薬がベクターを含む前記投与
によって送達される。
【0225】
少なくとも部分的に網膜を剥離するためにステップ(a)において注入される溶液の体積は、例えば約10-1000μL、例えば約50-1000、100-1000、250-1000、500-1000、10-500、50-500、100-500、250-500μLであってもよい。該体積は例えば約10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000μLであってもよい。
【0226】
ステップ(b)で注入される医薬組成物の体積は、例えば約10-500μL、例えば約50-500、100-500、200-500、300-500、400-500、50-250、100-250、200-250または50-150μLであってもよい。該体積は例えば約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500μLであってもよい。好ましくは、ステップ(b)において注入される医薬組成物の体積は100μLである。体積をより大きくすると網膜を伸ばすリスクを増加させるかもしれず、一方で体積がより少ないと見るのが困難であるかもしれない。
【0227】
医薬を含まない溶液(すなわちステップ(a)の「第1液」)は以下に説明されるように医薬を含む溶液と同様に調製されてもよい。好ましい医薬を含まない溶液は生理的食塩水(BSS)または網膜下腔のpHおよび浸透圧に一致した同様の緩衝液である。
【0228】
手術中における網膜の可視化
網膜は薄く透明であり網膜の下にある乱れて重度に色素沈着した上皮に対して見るのが困難であるため、例えば末期の網膜変性中など、ある状況下では、網膜の同定は困難である。青色生体染色色素(例えばBrilliant Peel(登録商標)、Geuder;MembraneBlue-Dual(登録商標)、ドルク)の使用により、網膜剥離手順(すなわち、本発明の2ステップ網膜下注入法におけるステップ(a))において生じた網膜の穴の同定が容易になり、硝子体腔中に逆流するリスク無しに同一の穴を通じて医薬を投与できるようになるかもしれない。
【0229】
肥厚した内境界膜または網膜上膜のどちらかを通る注入は網膜下腔中へきれいに到達するのを妨げ得るため、青色生体染色色素の使用により、肥厚した内境界膜または網膜上膜がある網膜中のあらゆる領域が同定される。その上、これらの構造のどちらかが手術直後の時期において収縮すると、網膜の入口の穴の伸長につながり得て、硝子体腔中への医薬の逆流につながり得る。
【0230】
医薬組成物および注入溶液
本発明の医薬、例えばベクターは医薬組成物に製剤化されてもよい。これらの組成物は、該医薬に加えて薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、緩衝液、安定剤または当技術分野においてよく公知である他の物質を含んでもよい。そのような物質は無毒性であるべきであり、活性成分の有効性に干渉すべきではない。担体または他の物質の正確な性質は当業者によって投与経路、例えば網膜下注入、網膜への直接注入または硝子体内注入に従って決定されてもよい。
【0231】
該医薬組成物は典型的には液体の形態である。液体の医薬組成物は一般的に、例えば水、石油、動物もしくは植物油、ミネラルオイルまたは合成油などの液体の担体を含む。生理食塩水、塩化マグネシウム、ブドウ糖もしくは他の糖類溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれてもよい。ある場合では、プルロン酸(PF68)0.001%などの界面活性剤が使用されてもよい。
【0232】
苦痛部位での注入には、活性成分は発熱性物質を含まず、好適なpH、等張性および安定性を有する水溶液の形態であってもよい。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液または乳酸リンゲル注射液などの等張溶媒を使用して好適な溶液を首尾よく調製することができる。保存料、安定剤、緩衝液、酸化防止剤および/または他の添加物が必要に応じて含まれてもよい。
【0233】
遅延放出のためには、該医薬は、当技術分野で公知の方法に従った生体適合性ポリマーから形成されたマイクロカプセルまたはリポソーム担体系など、徐放用に製剤化された医薬組成物に含まれてもよい。
【0234】
治療方法
本発明の文脈において防ぐことに関する言及は予防的な治療により一般的に関連するが、本明細書における治療に関するすべての言及は、根治の、対症的なおよび予防的な治療を含むものと理解されるべきである。治療はまた、疾患の重症度の進行を止めることも含んでもよい。
【0235】
哺乳類、特にヒトの治療が好ましい。しかし、ヒトの治療および獣医学的治療の両方が本発明の範囲内にある。
【0236】
バリアント、派生体、アナログ、ホモログおよび断片
本明細書において言及される特定のタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はまた、バリアント、派生体、アナログ、ホモログおよびそれらの断片の使用も含む。
【0237】
本発明の文脈においては、いかなる所与の配列のバリアントは、問題になっているポリペプチドまたはポリヌクレオチドが実質的にその機能を保持する様式で特定の残基(アミノ酸残基または核酸残基)の配列が改変されている配列である。バリアント配列は、天然に発生するタンパク質に存在する少なくとも1個の残基の付加、欠失、置換、改変、交換および/または変化により得ることができる。
【0238】
本明細書において使用される「派生体」という用語は、本発明のタンパク質またはポリペプチドに関連して、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドがその内在的な機能のうち少なくとも1つを実質的に保持する条件での、その配列からのまたはその配列への1個(またはそれ以上)のアミノ酸残基の任意の置換、変化、改変、交換、欠失および/または付加を含む。
【0239】
本明細書において使用される「アナログ」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関連して、任意の模倣物、すなわち、それが模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内在的な機能のうち少なくとも1つを有する化学物質を含む。
【0240】
典型的には、アミノ酸置換、例えば1、2または3個から10または20個の置換は、改変される配列が必要な活性または能力を実質的に保持する条件において、なされてもよい。アミノ酸置換は自然界には発生しないアナログの使用を含んでもよい。
【0241】
本発明において使用されるタンパク質はまた、サイレントな変化を生み機能的に同等なタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有してもよい。計画的なアミノ酸置換は、内在的な機能が保持される限りにおいて、その残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質の類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み;正に荷電したアミノ酸はリジンおよびアルギニンを含み;類似した親水性値を持つ非荷電性極性頭部基を有するアミノ酸はアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンおよびチロシンを含む。
【0242】
保存的置換は、例えば下の表に従ってなされてもよい。2番目の列における同じ区分にあり、好ましくは3番目の列の同じ行にあるアミノ酸は互いに置換されてもよい。
【表1】
【0243】
本明細書において使用される「ホモログ」という用語は、野生型のアミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有する存在物を意味する。「相同性」という用語は「同一性」と同等とされてもよい。
【0244】
相同配列は対象配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であってもよいアミノ酸配列を含んでもよい。典型的には、ホモログは対象アミノ酸配列と同じ活性部位等を含む。相同性はまた類似性(すなわち、類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)に関して考慮され得るが、本発明の文脈においては相同性を配列同一性に関して表すことが好まれる。
【0245】
相同配列は対象配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であってもよいヌクレオチド配列を含んでもよい。相同性は類似性に関して考慮され得るが、本発明の文脈においては相同性を配列同一性に関して表すことが好まれる。
【0246】
好ましくは、本明細書において詳述される配列番号のいずれか1つに対して何らかのパーセント同一性を有する配列への言及は、言及された配列番号の全長に渡り記載されたパーセント同一性を有する配列を指す。
【0247】
相同性比較は、眼によって、またはより通常は容易に利用できる配列比較プログラムの助けを得て実行され得る。これらの市販のコンピュータープログラムは2つ以上の配列間のパーセント相同性または同一性を計算することができる。
【0248】
パーセント相同性は連続的な配列に対して計算されてもよく、すなわち、1つの配列が他方の配列と整列されて、1つの配列の各アミノ酸は他方の配列の対応するアミノ酸に直接、1度に1残基が比較される。これは「ギャップ無し」のアラインメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップ無しのアラインメントは比較的短い数の残基に対してのみ行われる。
【0249】
これは非常に単純で一貫性のある方法であるが、例えば、他については同一な1対の配列においてヌクレオチド配列中の1個の挿入または欠失が以降のコドンをアラインメントの外に押し出すかもしれず、こうして結果的に全体のアラインメントが行われるときにパーセント相同性が大きく減少する可能性があることを考慮に入れていない。結果的に、多くの配列比較法は、全体の相同性スコアを不当に損なうことなく可能性のある挿入および欠失を考慮に入れる最適なアラインメントを生じるように設計されている。これは、局所的な相同性を最大化するように試みるために配列アラインメント中に「ギャップ」を挿入することにより達成される。
【0250】
しかし、これらのより複雑な方法はアラインメント中に発生する各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てることで、比較される2つの配列間のより高度な関連性を反映するようなできるだけ少ないギャップを有する配列アラインメントは、同一アミノ酸の数が同数である場合に多数のギャップを有するものよりも高いスコアを達成する。ギャップの存在に対しては比較的高い負担をかけ、そのギャップ中の後の各残基に対してはより小さいペナルティを与える「アフィンギャップコスト(Affine gap cost)」が通常は使用される。これが最も一般的に使用されるギャップ評価システムである。高いギャップペナルティは当然にギャップがより少ない最適化アラインメントを生じるだろう。多くのアラインメントプログラムではギャップペナルティの変更が許容される。しかし、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する際には初期値を使用することが好まれる。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する際には、アミノ酸配列の初期値のギャップペナルティはギャップ1つに対して-12であり、各伸長に対しては-4である。
【0251】
最大パーセント相同性の計算は故に、ギャップペナルティを考慮に入れた最適アラインメント作製をまず必要とする。そのようなアラインメントを実行するために好適なコンピュータープログラムはGCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.;Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例は、以下に限定されないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) ibid - Ch. 18を参照)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)および比較ツールのGENEWORKSスイートを含む。BLASTとFASTAの両方はオフラインおよびオンラインの検索のために利用可能である(Ausubel et al. (1999) ibid, pages 7-58 to 7-60を参照)。しかし、一部の適用のためには、GCG Bestfitプログラムを使用することが好まれる。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる別のツールもまたタンパク質配列およびヌクレオチド配列を比較するために利用できる(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247-50;FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187-8を参照)。
【0252】
最終的なパーセント相同性は同一性に関して測定することができるが、アラインメントの過程そのものは典型的には全か無かのペア比較に基づかない。その代わりに、各対ごとの比較に化学的類似性または進化的距離に基づくスコアを割り当てる、スケーリングされた類似性スコアマトリクスが一般的に使用される。一般的に使用されるそのようなマトリクスの例は、BLOSUM62マトリクス-BLASTスイートのプログラムのための初期マトリクスである。GCG Wisconsinプログラムは一般的に公の初期値または提供された場合にはあつらえの記号比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照)。一部の適用のためにはGCGパッケージには公の初期値を使用し、または他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62などの初期マトリクスを使用することが好まれる。
【0253】
ソフトウェアが最適アラインメントを作製すれば、パーセント相同性、好ましくはパーセント配列同一性を計算することが可能である。ソフトウェアは典型的には配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を生じる。
【0254】
全長RPGRORF15の「断片」もまたバリアントであり、その用語は典型的には、機能的にまたは例えば分析において興味対象であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。「断片」はしたがって全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列を指す。
【0255】
そのようなバリアントは部位特異的変異導入などの標準的な組換えDNA技術を使用して調製されてもよい。挿入が作製される場合には、挿入位置のどちらか一方の側で天然に発生する配列に対応する5'および3'隣接領域とともに挿入部分をコードする合成DNAが作製されてもよい。該隣接領域は、該配列が適切な酵素(または複数の酵素)で切断され合成DNAが切断場所にライゲーションされ得るように、天然に発生する配列における部位に対応する便利な制限酵素部位を含む。該DNAは次に、コードされるタンパク質を作製するために本発明に従って発現される。これらの方法はDNA配列操作のための当技術分野で公知の多数の標準的手法の実例となるだけであり、他の公知の手法もまた使用されてもよい。
【0256】
上記の明細書において言及されるすべての出版物が参照によって本明細書中に組み込まれる。本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、本発明において記載される製品、システム、使用、過程および方法の様々な改変および変化が、当業者には明らかになる。本発明は具体的な好ましい実施形態に結び付けて記載されているが、請求される発明はそのような具体的実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者に自明である、本発明を実行するための、記載された形態の様々な改変は、以下の請求範囲内にあることが意図される。
本発明の実施形態を以下に示す。
(1)網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(retinitis pigmentosa GTPase regulator ORF15 isoform)(RPGR
ORF15
)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が該配列の複製フィデリティーを増加するようにコドン最適化されている、前記ポリヌクレオチド。
(2)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が、野生型配列に比べてプリンヌクレオチドの数を減少するようにコドン最適化されている、(1)に記載のポリヌクレオチド。
(3)コードされるRPGR
ORF15
タンパク質がヒトRPGR
ORF15
である、(1)または(2)に記載のポリヌクレオチド。
(4)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が配列番号2のヌクレオチド33、58、59、114、123、129、181、182、213、219、226、227、237、267、285、306、309、315、324、330、339、400、401、444、456、478、480、510、594、606、618、639、697、726、744、777、807、852、877、879、888、891、921、930、960、1042、1050、1116、1140、1183、1184、1194、1197、1221、1249、1251、1257、1273、1276、1281、1290、1293、1357、1372、1373、1413、1446、1452、1464、1474、1475、1482、1519、1520、1542、1584、1590、1599、1608、1653、1668、1674、1689、1692、1734、1761、1776、1788、1803、1824、1845、1854、1881、1893、1902、1909、1910、1929、1932、1960、1987、1988、1992、1998、2020、2031、2047、2049、2062、2067、2076、2121、2167、2169、2190、2193、2208、2229、2259、2283、2298、2323、2343、2346、2361、2373、2382、2388、2403、2409、2410、2412、2448、2457、2472、2476、2478、2505、2520、2547、2574、2622、2634、2661、2673、2706、2712、2763、2775、2796、2811、2817、2832、2838、2871、2886、2892、2898、2910、2922、2931、2937、2958、2970、2997、3033、3039、3069、3075、3117、3129、3156、3166、3235、3246、3273、3285、3306、3321、3369、3399、3405および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない、(1)~(3)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(5)RPGR
ORF15
コードするヌクレオチド配列が配列番号2のヌクレオチド1689および/または3438に対応する位置にプリンヌクレオチドを含まない、(1)~(4)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(6)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が配列番号2の位置3405に対応する位置にTヌクレオチドを含む、(1)~(5)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(7)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が(4)に挙げられたヌクレオチドの位置の少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180箇所またはすべてにプリンヌクレオチドを含まない、(1)~(6)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(8)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が(4)に挙げられたヌクレオチドの位置の少なくともすべてにプリンヌクレオチドを含まない、(1)~(7)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(9)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が以下の:
(a)配列番号1に少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および/または
(b)配列番号3に少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列;または
(c)配列番号3のヌクレオチド配列
からなる群から選択される配列を含む、(1)~(8)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(10)前記アミノ酸配列が配列番号1に少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の同一性を有する、(9)(a)に記載のポリヌクレオチド。
(11)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が、配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む、(1)~(10)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド配列。
(12)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が、配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置48に対応する位置のA、配列番号2の位置57に対応する位置のA、配列番号2の位置60に対応する位置のT、配列番号2の位置69に対応する位置のT、配列番号2の位置72に対応する位置のA、配列番号2の位置171に対応する位置のC、配列番号2の位置189に対応する位置のC、配列番号2の位置441に対応する位置のT、配列番号2の位置537に対応する位置のT、配列番号2の位置546に対応する位置のC、配列番号2の位置786に対応する位置のT、配列番号2の位置792に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置990に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3355に対応する位置のA、配列番号2の位置3357に対応する位置のG、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3403に対応する位置のT、配列番号2の位置3404に対応する位置のC、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む、(1)~(11)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド配列。
(13)網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGR
ORF15
)、または配列番号1に少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100%の同一性を有するその機能的なバリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列が配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む、前記ポリヌクレオチド。
(14)網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子ORF15アイソフォーム(RPGR
ORF15
)または配列番号1に少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99もしくは100%の同一性を有するその機能的なバリアントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列が、
(a)配列番号3に少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、前記配列が配列番号2の位置30に対応する位置のC、配列番号2の位置33に対応する位置のT、配列番号2の位置48に対応する位置のA、配列番号2の位置57に対応する位置のA、配列番号2の位置60に対応する位置のT、配列番号2の位置69に対応する位置のT、配列番号2の位置72に対応する位置のA、配列番号2の位置171に対応する位置のC、配列番号2の位置189に対応する位置のC、配列番号2の位置441に対応する位置のT、配列番号2の位置537に対応する位置のT、配列番号2の位置546に対応する位置のC、配列番号2の位置786に対応する位置のT、配列番号2の位置792に対応する位置のT、配列番号2の位置966に対応する位置のA、配列番号2の位置969に対応する位置のA、配列番号2の位置990に対応する位置のA、配列番号2の位置1011に対応する位置のT、配列番号2の位置1014に対応する位置のT、配列番号2の位置1029に対応する位置のT、配列番号2の位置1299に対応する位置のA、配列番号2の位置1689に対応する位置のC、配列番号2の位置3355に対応する位置のA、配列番号2の位置3357に対応する位置のG、配列番号2の位置3363に対応する位置のG、配列番号2の位置3403に対応する位置のT、配列番号2の位置3404に対応する位置のC、配列番号2の位置3405に対応する位置のT、配列番号2の位置3408に対応する位置のA、配列番号2の位置3409に対応する位置のA、配列番号2の位置3410に対応する位置のG、配列番号2の位置3432に対応する位置のG、配列番号2の位置3438に対応する位置のC、および配列番号2の位置3456に対応する位置のAから選択される1個以上のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチド配列;および
(b)配列番号3のヌクレオチド配列
からなる群から選択される、前記ポリヌクレオチド。
(15)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が、ヒト桿体および錐体視細胞においてRPGR
ORF15
またはその機能的なバリアントの発現を駆動することができるプロモーターエレメントを含むポリヌクレオチドに作動可能に連結される、(1)~(14)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(16)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が、ロドプシンキナーゼ(GRK1)プロモーター、好ましくはヒトGRK1プロモーターに作動可能に連結される、(1)~(15)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(17)前記GRK1プロモーターが、配列番号7のヌクレオチド配列またはそれに少なくとも90%もしくは95%の同一性を有する機能的なバリアントを含む、(16)に記載のポリヌクレオチド。
(18)RPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列が、165個より少ないCpGジヌクレオチドを含み、かつ/または2個以下のCpGアイランドを含む、(1)~(17)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(19)前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15
を含む同等なポリヌクレオチドに比べて、複製フィデリティーが実質的に同じかまたは増加している、(1)~(18)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(20)前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15
を含む同等なポリヌクレオチドに比べて、安定性が増加し、かつ/またはポリヌクレオチド複製周期中に変異を発生する傾向が小さい、(1)~(19)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(21)前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15
を含む同等なポリヌクレオチドに比べて高い翻訳効率および/またはタンパク質発現量を与える、(1)~(20)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(22)前記ポリヌクレオチドが、配列番号2のヒト野生型RPGR
ORF15
を含む同等なポリヌクレオチドに比べて、選択的スプライシングのバリアントおよび/またはトランケートされたタンパク質の産生を減少させるかまたは回避する、(1)~(21)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド。
(23)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含むウイルスベクター。
(24)ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスベクターである、(23)に記載のウイルスベクター。
(25)ウイルスベクターがAAVベクターである、(23)または(24)に記載のウイルスベクター。
(26)ウイルスベクターがウイルス粒子の形態である、(23)~(25)のいずれか1に記載のウイルスベクター。
(27)ウイルスベクターがトランスキャプシデートされた(transcapsidated)AAVベクターである、(26)に記載のウイルスベクター。
(28)ウイルスベクターがAAV2ゲノムおよびAAV5(AAV2/5)またはAAV8(AAV2/8)のキャプシドタンパク質を含む、(26)に記載のウイルスベクター。
(29)ウイルスベクターがAAV2ゲノムおよび/またはAAV8のキャプシドタンパク質を含むAAVベクターである、(25)または(26)に記載のAAVベクター。
(30)ウイルスベクターの生産に必要な構成要素をコードする1セットのポリヌクレオチドを含むウイルスベクター生産系であって、該ウイルスベクターのゲノムが(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む、前記ウイルスベクター生産系。
(31)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む、(30)に記載のウイルスベクター生産系における使用のためのDNA構築物。
(32)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、(30)に記載のウイルスベクター生産系、または(31)に記載のDNA構築物を含むウイルスベクター生産細胞。
(33)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを細胞に導入すること、およびウイルスベクターの生産に好適な条件下で該細胞を培養することを含む、ウイルスベクター生産方法。
(34)(32)に記載のウイルスベクター生産細胞を使用して、または(33)に記載の方法によって得られるウイルスベクター。
(35)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを遺伝子導入された、または(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクターにより形質導入された細胞。
(36)前記細胞がHEK293またはHEK293T細胞である、(33)に記載の方法または(35)に記載の細胞。
(37)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクター、または(35)に記載の細胞を、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
(38)網膜色素変性症の治療または予防における使用のための、(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、または(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクター。
(39)網膜色素変性症を患っているかまたは発症リスクのある対象者において視細胞の細胞死を減少させる使用のための、(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、または(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクター。
(40)網膜色素変性症がX連鎖性網膜色素変性症である、(38)または(39)に記載の使用のためのポリヌクレオチドまたはウイルスベクター。
(41)ウイルスベクターが網膜下注入、網膜への直接注入または硝子体内注入により対象者の眼に投与される、(38)~(40)のいずれか1に記載の使用のためのポリヌクレオチドまたはウイルスベクター。
(42)網膜下注入が以下のステップ:
(a)少なくとも部分的に網膜を剥離し網膜下ブレブを形成するのに有効な量の溶液の網膜下注入による対象者への投与であって、該溶液がポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを含まない、前記投与;および
(b)ステップ(a)により形成されたブレブ中への網膜下注入による医薬組成物の投与であって、該医薬がポリヌクレオチドまたはウイルスベクターを含む、前記投与
を含む、(38)~(41)のいずれか1に記載の使用のためのポリヌクレオチドまたはウイルスベクター。
(43)ウイルスベクターが対象者に単回投与で投与される、(38)~(42)のいずれか1に記載の使用のためのポリヌクレオチドまたはウイルスベクター。
(44)対象者の生涯の間に網膜色素変性症による視細胞の細胞変性を実質的に防止する、’(38)~(43)のいずれか1に記載の使用のためのポリヌクレオチドまたはウイルスベクター。
(45)治療された眼において視覚機能が実質的に回復または維持される、(38)~(44)のいずれか1に記載の使用のためのポリヌクレオチドまたはウイルスベクター。
(46)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、または(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクターを、それを必要とする対象者に投与することを含む、網膜色素変性症の治療または予防方法。
(47)(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、または(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクターを対象者に投与することを含む、網膜色素変性症を患うかまたは発症リスクのある対象者において視細胞の細胞死を減少させる方法。
(48)(a)野生型RPGR
ORF15
遺伝子を含むベクターもしくはポリヌクレオチドに比べて、選択的スプライシングのバリアントおよび/もしくはトランケートされたRPGR
ORF15
タンパク質の産生を減少させるかもしくは回避するための、ならびに/または
(b)野生型RPGR
ORF15
遺伝子を含むヌクレオチド配列に比べて、RPGR
ORF15
遺伝子を含むヌクレオチド配列の安定性および/もしくは複製フィデリティーを増加させるための、ならびに/または
(c)野生型RPGR
ORF15
遺伝子を含むベクターもしくはポリヌクレオチドに比べてRPGR
ORF15
タンパク質の翻訳および/もしくはタンパク質発現の効率を高めるための、ならびに/または
(d)野生型RPGR
ORF15
遺伝子を含むヌクレオチド配列に比べてRPGR
ORF15
をコードするヌクレオチド配列の収量を増加させるための、
(1)~(22)のいずれか1に記載のポリヌクレオチド、または(23)~(29)もしくは(34)のいずれか1に記載のウイルスベクターの使用。
【実施例】
【0257】
〔実施例1〕
〔実施例1A:X連鎖性網膜色素変性症のマウスモデル系〕
例えばマウスや犬のような特定の種は、ヒトRPGRに相同な遺伝子を有する(
図1に示される黄色のエキソン配列を比較せよ)。そのような種は故にヒトRPGRにおける変異により引き起こされるX連鎖性網膜色素変性症の潜在的なモデルになり得る。2つのマウスモデルが、本研究における治療用ベクターの安全性と有効性を試験するために得られた。両者は相同遺伝子Rpgrにおいて変更を有する。
1.Rpgr
-/-系統:この系統は、β-ガラクトシダーゼおよびネオマイシン耐性マーカーをコードする遺伝子を含む配列により、エキソン4の一部からエキソン6の一部までを標的とした破壊により操作された(Hong D.H. et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 3649-3654)。
2.Rd9系統:この系統はフレームシフトにつながる32bpの天然に発生する挿入変異を備える(Thompson D.A. et al. (2012) PLoS One 7: e35865)。
【0258】
Rpgr-/-およびRd9の両方のマウスモデルはRpgrタンパク質の発現を失っているが、非常に軽度の表現型を備えるのみである(Thompson D.A. et al. (2012) PLoS One 7: e35865)。
【0259】
〔実施例1B:RPGRのコドン最適化〕
RPGRのコドン最適化
合成RPGR
ORF15配列が、高度に変異しやすいプリンリッチ領域を安定化するために、コドン最適化(coRPGR、「最適化」;配列番号3)を使用して調製された(
図2)。
【0260】
コドン最適化RPGR遺伝子の特性決定
クローニング効率および配列フィデリティーが、標準的なクローニングベクターにおける野生型およびコドン最適化配列の間で比較された(
図3A-D)。
【0261】
制限酵素消化解析を使用して、24クローンのうち3個だけが野生型配列を備えることに成功していることが見出された(wtRPGR;
図3B、成功したクローンはアスタリスクで強調されている)。対照的に、24クローンのうち18個が正確なコドン最適化配列を備えることに成功していた(coRPGR;
図3D)。
【0262】
同程度の試料純度が維持されたのにも関わらず(
図3F)、少量調製に由来するプラスミド収量は、coRPGR配列を使用した方がwtRPGRよりも高いことが見出された(
図3E)。この知見を裏付けるように大量調製に由来する全プラスミド収量(
図3G)もまた、coRPGR配列を使用した場合の方が高かった。
【0263】
クローニング中のRPGR変異の頻度の解析
結果として得られたクローンのサンガーシーケンシングは、coRPGR配列を使用する場合に、不明瞭な塩基の読み出しがより少ない傾向が見出されたため、より容易であり、より良い全体的な信号対雑音比を伴っていることが見出された(
図4)。
【0264】
wtRPGRの複数の連続したG(G-run)およびプリンリッチな性質により、34回の個別のシーケンシング反応が約4kbのDNA配列を覆うために行われなければならなかった。ORF15領域では6個の潜在的変異(2個の欠失と4個の挿入)が見つかり、並びにさらなる点変異である可能性のある74個の不明瞭な塩基の読み出しが見つかった。
【0265】
対照的に、coRPGRはシーケンスするのがより容易であり、その配列の明確な確認(少なくとも2x)が17回の反応だけで達成された。
【0266】
配列フィデリティーの定量解析
wtRPGRORF15およびcoRPGRORF15それぞれの4つの独立に作製されたプラスミド大量調製産物について、DNA配列を確認するためのゴールドスタンダードであるサンガーシーケンシング(Sanger F et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467)を使用し、商用契約者としてIS 9001資格を有しGLP認定された実験室(Source BioScience, UK)においてシーケンスを行った。
【0267】
シーケンシングデータを出版された参照データ(NCBI遺伝子番号6103)とアラインメントするとwtRPGR
ORF15のシーケンシングデータには平均20個の変異(多くが単一ヌクレオチドの欠失、挿入および点変異である)があるが、coRPGR
ORF15では全くないことが明らかになった。
【表2】
【0268】
この解析は、コドン最適化RPGR配列におけるはるかに高い配列安定性を明確に示す。
【0269】
coRPGR導入遺伝子産物タンパク質の解析
タンデム質量分析法(LC/MS-MS)を用いた液体クロマトグラフィーが、coRPGR導入遺伝子産物のタンパク質配列を確認するために行われた(
図5)。
【0270】
RPGRアミノ酸配列の約80%が直接同定された。該タンパク質のC末端側の高度にグルタミン酸リッチで反復性のある領域の一部だけがペプチド解析から逃れた(
図5、赤色の配列)。これは質量分析のためのオリゴマーを生じる特異的モチーフがないことに起因した。しかし、C末端配列の完全一致はフレームシフトのない全長タンパク質が生産されたことを示唆する。
【0271】
その上、ウェスタン解析は、遺伝子導入された細胞に由来するwtRPGRおよびcoRPGR由来のペプチドの等しい分子量を示した(
図6)。これはコドン最適化アプローチにより何の違い(例えば、挿入または欠失)も導入されていないという結論を支持する。
【0272】
ウェスタン解析はまた、コドン最適化が翻訳とタンパク質産生の効率上昇を可能にすることを明確に示す(
図6)。
【0273】
結論
全体としては、コドン最適化RPGRORF15(coRPGR)配列は野生型配列に比べて優れた配列フィデリティーおよび発現レベルの増加を示し、したがってXLRP遺伝子置換治療の治療上の可能性を改善しそうであると考えられた。
【0274】
〔実施例1C:コドン最適化RPGRのAAVに媒介されたin vivo送達〕
RPGRの発現がないマウス(Rd9およびRpgr-/-マウス系統)の視細胞の中にRPGRを導入するために使用されたAAV2/8ベクターに、coRPGR配列はパッケージされた。より詳細には、導入遺伝子カセットは、coRPGRポリヌクレオチド配列の上流にロドプシンキナーゼプロモーターおよびコザックコンセンサス配列、ならびにコーディング配列の下流にウシ成長ホルモン由来のポリA配列を備えた。
【0275】
coRPGRはRd9およびRpgr-/-マウスにおいてRPGRタンパク質の発現をもたらす
【0276】
ウェスタンブロット解析は、AAV.coRPGRベクターを用いたRd9およびRpgr
-/-マウスの治療はRPGRタンパク質の発現をもたらすことを示した(
図7A)。その上、RPGRの免疫組織化学染色がRd9およびRpgr
-/-マウスに由来する治療された眼および治療されていない眼に対して行われ、タンパク質産物の正確な局在を示した(
図7B)。
【0277】
coRPGRを用いた遺伝子増強はRd9およびRpgr-/-マウスにおいて治療効果をもたらす
【0278】
Rd9およびRpgr-/-マウスモデルの両方が片眼のみにおける遺伝子治療に供され、未治療の眼に対して治療された眼において機能を客観的に調べるため網膜電図検査(ERG)が使用された。
【0279】
暗順応後の単一フラッシュ強度シリーズのaおよびb波の振幅を調べると(
図7C、D)、治療後の2つの時点において未治療群に比べて治療群では統計学的に有意な振幅(p<0.05)が示された。
【0280】
結論としては、実施例4および5においてより詳細に記載される上述のデータはヒトRPGRのコドン最適化配列は予想されるサイズとアミノ酸配列を有する野生型RPGRタンパク質を産生することを示す。その上、コドン最適化はより高い配列フィデリティーおよび発現レベルにつながる。Rpgrタンパク質の発現を生得的に欠くモデルにおいて遺伝子置換療法を用いて適用された際には、coRPGR配列はRPGRの発現を提供する。その上、RPGRは結合繊毛における生理的機能部位に局在し、網膜構造(内節および外節の長さ)を改善しERG研究に示されるように機能することができる。
【0281】
〔実施例2:工業規模でのpAAV.RK.coRPGRプラスミドの製造〕
〔実施例2a〕
コドン最適化RPGR配列をコードするプラスミドのための細菌細胞バンクの作製
【0282】
遺伝子型TetrD(mcrA)183 D(mcrCB-hsdSMR-mrr)173 endA1 supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 lac Hte [F´ proAB lacIqZDM15 Tn10 (Tetr) Amy Camr]を有するK-12大腸菌(Escherichia coli)細菌株XL10Goldが、pAAV.RK.coRPGRプラスミドで形質転換され、コドン最適化RPGR配列を有するプラスミドDNAを含む単一コロニーを選択するためにアンピシンを補った寒天プレート上に蒔かれた。単一コロニーが選択され、培養液中に植菌され、小規模液体培養において増殖された。細胞が対数増殖期に入った後、細胞は回収され、グリセロールを含む凍結保存培地中に再懸濁され、その後約50個の1.5mL分割量が1.8mLクリオバイアル中に分注されて-80℃保存されて細菌細胞バンクRCB pAAV.RK.coRPGR E.coli XL10Goldを作製した。
【0283】
該細胞バンクは解凍されプラスミドDNAが小規模調製抽出により調製され(Birnboim H.C. and Doly J. 1979;A rapid alkaline extraction procedure for screening recombinant plasmid DNA in 1979 Nov 24;7(6):1513-23)、プラスミドの種類および構造的安定性がXmnIおよびSmaIエンドヌクレアーゼ制限酵素消化ならびにその後の0.8%アガロースゲル電気泳動および0.5mg/mL臭化エチジウム染色による解析により試験された(
図8)。
図8は、安定で構造的に完全なpAAV.RK.coRPGRプラスミドに由来する予想される制限酵素消化断片パターンを明確に示し、細胞バンク培養の増殖および生産中のプラスミドDNAの安定な維持および複製を示した。
【0284】
該細胞バンクはまた、振とうフラスコにおけるブロス培養後のプラスミド収量についても調べられ、湿細胞塊(wet cell mass)グラム当たり598μgのプラスミドDNAを生じた。正確なプラスミドの高いプラスミド収量が得られた。
【0285】
抗生物質含有および抗生物質非含有寒天プレート上へのコロニーのレプリカプレーティングにより分離安定性が試験された際には、プラスミド喪失の証拠もまたなかった。結果は100%プラスミド保持率を示した。
【0286】
該細胞バンクに由来するプラスミドDNAはサンガー(Sanger F et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467)シーケンシングを使用してシーケンスを行い、結果的な配列解析は、コドン最適化RPGR配列の理論的参照配列と比較された際に、コドン最適化RPGR配列は100%フィデリティーで保たれたことを示した。再び不安定性の証拠は何もなかった。
【0287】
RCB pAAV.RK.coRPGR E.coli XL10Goldはまた、細菌純度について(細菌の混入がないことが示された)ならびに溶解性および溶原性バクテリオファージが存在しないことについて(何も検出されなかった)も試験された。RCB pAAV.RK.coRPGR E.coli XL10Goldの種同一性もまたAPI-20E試験(BioMerieux)を使用した生化学的同定により確認された。
【0288】
結論
RPGR遺伝子のコドン最適化は、参照コドン最適化配列との100%配列フィデリティー、100%プラスミド分離安定性および良好なプラスミド収率を示した工業的に役立つ細菌細胞バンクを生じる能力をもたらすRPGR遺伝子の安定性の改善につながった。
【0289】
〔実施例2b〕
コドン最適化RPGR配列をコードする高品質プラスミドの工業規模での生産
高品質プラスミドDNAが、手短に記載されるように、実施例2aにおいて作製された大腸菌(E.coli)XL10Gold細菌細胞バンクRCB pAAV.RK.coRPGRから製造され、精製された(Schmeer et al. (2014) Pharmaceutical Grade Large-Scale Plasmid DNA Manufacturing Process: 219-242)。細菌細胞バンクの単一バイアルが解凍され、増殖され、工業規模で培養され、細菌細胞塊が次に遠心により回収された。プラスミドDNAはアルカリ細菌細胞溶解により細菌バイオマスから抽出され、結果として生じた可溶性プラスミドDNAは不溶性タンパク質および複合物になったゲノムDNAから遠心および濾過により分離された。プラスミドDNAは複数ステップのクロマトグラフィー過程によりさらに精製された。完全に精製されたプラスミドDNAは、沈殿および接線方向流の濾過および膜濾過により調合緩衝液中に最終的に調製され、10mM Tris + 1mM EDTA、pH8.0中に1.0mg/mLで100mgの高度に精製されたプラスミドDNAが得られ(
図10)、rAAVベクターの生産のためのさらなる製造過程において使用するために十分な純度(
図11)であった。
【0290】
精製されたプラスミドは、XmnIエンドヌクレアーゼ制限酵素消化ならびにその後の0.8%アガロースゲル電気泳動および0.5mg/mL臭化エチジウム染色による解析(
図10)によりプラスミドの種類と構造的安定性について試験された。
図11は、安定で構造的に完全なpAAV.RK.coRPGRプラスミドに由来する予想される制限酵素消化断片パターンを明確に示し、細胞培養増殖およびプラスミド精製中におけるプラスミドDNAの安定な維持および複製を示す。
【0291】
精製されたプラスミドはサンガーシーケンシング(Sanger F et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467)を使用してシーケンスされ、結果的な配列解析により、コドン最適化RPGR配列の理論的参照配列と比較された際に、コドン最適化RPGR配列は100%フィデリティーで保たれたことが示された。
【0292】
結論
RPGR遺伝子のコドン最適化は、rAAVベクター生産のためのさらなる製造過程に十分な量(100mg)および質の高純度プラスミドDNAを生じる能力をもたらす、RPGR遺伝子の安定性の改善につながった。
【0293】
〔実施例2c〕
コドン最適化RPGRをコードするrAAV2/8の工業規模での生産
実施例2bにおいて製造された高品質プラスミドDNAは、大規模な一過的遺伝子導入およびその後の精製(Lock et al. 2010; Human Gene Therapy: 1259-1271)によりin vivoの使用の目的でrAAV8/2ベクターを製造するためにヘルパープラスミドpDP8.ape(PlasmidFactory、Bielefeld、GermanyおよびGrimm D, Kay MA, Kleinschmidt JA. Helper virus-free, optically controllable, and two-plasmid-based production of adeno-associated virus vectors of serotypes 1 to 6. Mol Ther 2003;7:839-850)とともに使用された。手短には、HEK293細胞が、十分な多層細胞培養容器に播種するのに十分な細胞が得られるまで、10%牛胎児血清(FBS)を補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において37℃かつ5%CO2にて接着培養で生育された。未精製AAVは、生育培地中に分泌されるrAAV粒子を生産するためにpAAV.RK.coRPGRプラスミドおよびpDP8.apeヘルパープラスミドを使用して多層細胞培養容器中で接着して生育するHEK293細胞のリン酸カルシウム一過的遺伝子導入により作製された。該rAAV粒子は細胞培養容器から培地を除去することにより回収され、細胞残渣を除去するために濾過された。rAAVはまず接線方向流の濾過(TFF)および限外濾過により濃縮され、同じTFF装置を使用してダイアフィルトレーションにより部分的に精製された。該rAAVはイオジキサノール不連続グラジエント限外濾過およびイオン交換カラムクロマトグラフィーを使用してさらに精製された。精製されたrAAVは、次に、さらなるTFFに基づく限外濾過およびダイアフィルトレーションにより3.55x1012gp/mlの濃度で最終的な調合緩衝液中に調製された。第2の1.00x1012gp/mlであるより低いrAAV濃度の調製物は、より高い用量形態を調合緩衝液中に希釈することにより製造された。両方の用量形態は50μL分割量でバイアルに入れられ60℃以下で貯蔵された。
【0294】
結論
RPGR遺伝子のコドン最適化は、in vivoの投薬研究において使用するために十分な量と質の精製rAAVベクターを生じる能力をもたらす、RPGR遺伝子の安定性の改善につながった。
【0295】
〔実施例2d〕
本研究の目的は、好ましい臨床投与経路(ROA)である網膜下投薬を介して投与されるAAV8-RPGR遺伝子治療ベクターのin vivo送達を確立することであった。本研究は、AAV8-RPGRを用いて、C57B/6JマウスにおけるGLP適用で網膜下注入の単回投与試験において行われ、その後4週間および26週間の期間で解析が行われた。
【0296】
C57B/6J色素沈着マウス系統が以下の理由によりこれらのin vivo送達研究に関連した種として選択された。第1に、この系統は臨床背景において適用される投与手順を非常によく模倣することを可能にする色素沈着した眼を有する。第2に、この系統の遺伝子改変バリアントであるRPGRノックアウトマウスモデルは、ヒトにおいて予想されるものに似た、試験用のAAV8-RPGR製品に対する生物学的反応を示した。第3に、ヒトおよびマウスRPGRタンパク質は高いアミノ酸配列相同性を共有し、マウス網膜組織のAAV8-RPGRターゲティングおよび形質導入の成功がin vivo薬理試験において過去に示されている。
【0297】
動物は両眼に溶媒(BSS Plus、Alcon Pharma)またはAAV8-RPGR(2種類の異なるgp/眼の用量で)の1μLの単回網膜下注入を受けた。食料消費、臨床病理および組織病理を含めて、体重、毒性の臨床徴候の評価を含めたあらゆる毒性効果の詳細な評価が、眼球、外眼部構造、前眼部の、主に角膜および水晶体および眼底を含めた内部構造の詳細で定期的な眼科検査と並んで行われた。その上、定期的な眼圧測定および網膜電図検査が行われた。網膜電図は、異なる光強度、波長および暴露時間での光刺激後に網膜中で発生する電位を記録する。網膜電図は、色素上皮から内顆粒層までに渡る数百万個の網膜細胞の合成の活動を表す。それは網膜機能の評価および早期の網膜変性の検出に使用された。
【0298】
AAV8-RPGR遺伝子治療はマウスにおいて順調に耐用性を示し、治療に対する重大な副作用は全く観察されなかった。いかなる所見も一過的であり、投薬および麻酔手順に沿うものであり、溶媒処置群においても報告されたものだった。
【0299】
送達されたAAV8-RPGRベクターの分布を理解するために、処置された動物群は注入後8、29および183日目に屠殺される小群に分けられた。AAV8-RPGR特異的な定量PCRアッセイ(qPCR)によってベクターのレベルを決定するために、追加の非終端血液試料が、各小群において2、15および92日目に回収された。動物は両眼において溶媒(BSS Plus、Alcon Pharma)またはAAV8-RPGRの1μLの単回網膜下注入を受けた。
【0300】
8、29および183日目の死体解剖時に動物から採取された数種類の組織/体液(血液、骨髄、涙液、脳、眼、心臓、眼房水および硝子体液、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、視神経、網膜、唾液、精巣、脾臓、尿)由来のqPCR試料はベクターDNAの定量のために分析される。これらの組織/液体におけるベクターDNAの定量は本研究の終わりにqPCR法により行われる。これらの結果は遺伝子治療の送達の成功を確認し、マウス組織中でのその分布をマッピングする。
【0301】
〔実施例3:coRPGRORF15導入遺伝子産物タンパク質のin vitro解析〕
この実施例では、コドン最適化の、RPGR発現レベル増加およびスプライシングの選択的フォームの合成の改善に対する効果が解析された。この目的のため、ヒト胚腎293細胞(HEK293)およびサルウイルス40(SV40)T抗原を発現するHEK293(HEK293T)細胞が使用された。これらの細胞はCAG.coRPGRORF15およびCAG.wtRPGRORF15プラスミド構築物を遺伝子導入され、下に記載される通り導入遺伝子検出のために処理された。
【0302】
材料と方法
HEK293およびHEK293T細胞は4および2.5x105細胞/mlでそれぞれ6ウェルプレート中に播種され、70%コンフルエント以上になるまで37℃かつ5%CO2にて10%の加熱不活性化牛胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン添加DMEM中で培養された。1マイクログラムのプラスミドDNA(CAG.coRPGRORF15およびCAG.wtRPGRORF15)がMirus TransIT(登録商標)-LT1 Transfection Reagent(Geneflow Ltd.、Lichfield、UK)および無血清/無抗生物質培地を使用して細胞に送達された。遺伝子導入された細胞は37℃で48時間インキュベートされた。
【0303】
導入遺伝子の発現解析はタンパク質レベルで行われた。遺伝子導入48時間後に細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄され、その後cOmplete mini EDTA-freeプロテアーゼ阻害剤カクテルタブレット(Roche Products Ltd.、Welwyn Garden City、UK)を用いた放射線免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(Sigma-Aldrich Company Ltd.、Dorset、UK)を用いて細胞溶解およびタンパク質可溶化に進んだ。細胞ペレットは超音波周波数を使用した超音波処理により破壊され、細胞断片は13,000g、4℃、10分間の遠心により取り除かれた。全タンパク質含量は、製造者の指示に従いPierce(商標)ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Thermo Scientific)を使用して上清において定量された。
【0304】
タンパク質発現はウェスタンブロット解析により調べられた。30μgの全タンパク質が2x Laemmli緩衝液(Sigma-Aldrich)において95℃で5分間変性され、7.5%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル(Criterion(商標)TGX(商標)Precast Gels、Bio-Rad Laboratories Ltd.、Hemel Hempstead、UK)上で100V、2時間の電気泳動により分離された。SDS-PAGEで分離されたタンパク質試料は、Trans-Blot Turbo(商標)Transfer Starter System(Bio-Rad)を使用してポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン(Trans-Blot Turbo(商標)Midi PVDF、Bio-Rad)上にトランスファーされた。メンブレンは0.1%Tween20を含むPBS中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)で45分間ブロッキングされ、室温で1時間一次抗体とともにインキュベートされた。標的タンパク質としてのRPGRおよびローディングコントロールとしてのβ-アクチンは以下の一次抗体:ウサギポリクローナルRPGR(1:500、Sigma-Aldrich)およびマウスモノクローナルβ-アクチン(1:30000、Ambion Inc.、Thermo Scientific、Nortumberland、UK)を用いて同定された。バンドは西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体を用いてECL検出試薬を使用して検出された。RPGRタンパク質レベルはImage Studio Lite(バージョン5.2)を使用してデンシトメトリーにより定量され、β-アクチンに対して標準化された。
【0305】
結果
全タンパク質溶解物のウェスタンブロット解析により、CAG.coRPGR
ORF15およびCAG.wtRPGR
ORF15プラスミドを遺伝子導入したHEK293およびHEK293T細胞においてRPGR
ORF15タンパク質に対応する約220kDaの顕著なバンド(
図12Aおよび13A)が示された。β-アクチン強度により標準化されたRPGR
ORF15バンド強度の定量により、RPGRの発現は、コドン最適化プラスミドを遺伝子導入したHEK293細胞において、2.79[1.1から17.0]任意の単位(AU)(中央値[Q1からQ3])であり、野生型配列を遺伝子導入した細胞において、0.36[0.08から4.88]AUであるのに比べて高いことが明らかになった。同様に、コドン最適化配列を遺伝子導入したHEK293T細胞は、RPGR発現レベルが4.23±0.11AU(平均±標準偏差)であり、野生型配列を遺伝子導入した細胞が、3.01±0.07AU(平均±標準偏差)であるのに比べて増加を示した(
図12Bおよび13B)。
【0306】
両方のプラスミド構築物を用いた際のRPGRORF15配列全体の発現に加えて、分子量80kDaの追加の明確なバンドが、野生型RPGRORF15配列を遺伝子導入したHEK293T細胞において検出された。この結果は、コドン最適化が配列安定性を改善し、故に選択的スプライシングを受けるフォームを減少させることを示した。
【0307】
結論
これらの結果により、同義主要コドン導入によるRPGRORF15をコードする配列のコドン適応指標(CAI)の増加は、導入遺伝子の発現レベルの上昇につながり、一方で配列の安定性およびフィデリティーを増加させることによりトランケートされたタンパク質の合成を減少させることが確認された。
【0308】
〔実施例4〕
RPGR遺伝子治療は、RPGRの完全な喪失(ヌル変異)または機能不全タンパク質につながるRPGRの疾患原因変異を有する標的細胞においてRPGRの発現を再構成することを目的とする。これを達成する1つの方法は、RPGRをコードするヌクレオチド配列の正しいコピーを導入し、次にこれが標的細胞自身の翻訳機構によりRPGRタンパク質に翻訳されることによるものである。そのようなヌクレオチド配列は組換えAAVを用いた形質導入により導入され得る。
【0309】
ここで本発明者らは、マウスにおける網膜下注入後の組換えAAVベクターAAV2/8.RK.coRPGRおよびAAV2/8.RK.wtRPGRの形質導入効率を検証するために設計された予備的試験のデータを提示する。RPGR遺伝子治療を臨床シナリオにより近い形にモデル化するために、本発明者らはRpgrの発現を欠くRpgr-/yマウスを使用した。
【0310】
Rpgrは、X連鎖性網膜色素変性症のほとんどの場合に影響される遺伝子であるRPGRのマウスホモログであり、故に遺伝子改変Rpgr-/yマウスは遺伝的レベルでヒトの患者におけるヌル変異を模倣する。コドン最適化RPGRは野生型RPGRよりも高い発現を備えており、同一のRPGRタンパク質産物につながる一方でより高い配列フィデリティーを決定的に提供する。組換えAAVベクターAAV2/8.RK.coRPGRおよびAAV2/8.RK.wtRPGRはin vitroの細胞のように視細胞に形質導入することができる。
【0311】
本研究の目的は、AAV2/8.RK.coRPGRまたはAAV2/8.RK.wtRPGRの網膜下注入後にRPGRがin vivoで発現されるかどうか、および内在的なRpgrの発現を欠く視細胞においてRPGRが結合繊毛に局在するかどうかを検証することであった。
【0312】
材料と方法
AAV2/8.RK.coRPGRおよびAAV2/8.RK.wtRPGRを含む組換えAAV溶液が作製され、品質と力価について調べられた。外科的介入およびAAV2/8による視細胞の形質導入の対照とするために、CAGプロモーター制御下にレポーター遺伝子としてGFPを有する第3の構築物(AAV2/8.CAG.GFP)が使用された。これらのベクター溶液はベクターゲノム数/mlを計算するためにqPCRにより定量された。-80℃貯蔵の分割量が使用直前に氷上で溶解され、2μl容量中1x1010vgでの網膜下送達を可能にするために0.001%Pluronic(登録商標)PF68(BASF、Ludwigshafen、Germany)を含む硝子体網膜手術用の平衡塩類溶液(BSS(登録商標))(Alcon Laboratories、Camberley、UK)中に希釈された。
【0313】
Rpgr-/yマウスは、導入遺伝子産物のRPGRが局在する可能性のある結合繊毛を維持しつつもRpgr発現を欠くため、この予備的研究のために使用された。マウスは上側半網膜下に2μlのAAV溶液を網膜下注入するために麻酔された。
【0314】
手術3週間後、AAV2/8.RK.coRPGR、AAV2/8.RK.wtRPGRを受容した動物における自発蛍光パターン、およびAAV2/8.CAG.eGFPで処置された動物における形質導入効率の読み出しとしてのGFP蛍光を調べるために、処置されたRpgr-/yマウスは、共焦点走査型レーザー眼底検査(cSLO)を使用するin vivo網膜イメージングのために再び麻酔された。
【0315】
イメージング直後、マウスは屠殺されすぐに眼球摘出された。眼全体は固定せずに免疫組織化学のために迅速に処理された。手短には、固定されていない網膜試料の16μm切片は、Hoechst33342色素およびRPGRのアミノ酸379-509を標的としたポリクローナル抗体(Sigma、HPA001593)で染色された。AlexaFluor488コンジュゲートロバ抗ウサギ抗体(Invitrogen)が、示されているRPGRの検出に二次抗体として使用された。高出力(油浸x63)光学切片が、処置されたRpgr-/yマウスの視細胞におけるRPGRの発現と局在を検証するために共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710)で記録された。未処置のマウスは、アッセイの特異性を試験するための陰性対照として使用された。
【0316】
手術結果
すべての動物は、予定された用量のAAV溶液を網膜下腔に与えられ、麻酔から順調に回復した。これは、最初に前部の穿刺により眼圧(IOP)を低下させ、その後ベクター懸濁液を用いて半網膜の剥離を作る手術手順により可能になった。この手法は、角膜浮腫を発生することなく、および/または高IOPにより眼内循環を制限することなく、2μl容量までの送達を可能にした。同時に、低下したIOPは、注入の管を通る網膜下液の逆流(すなわち脈絡膜循環または眼球孔への)リスクを低下させた。
【0317】
処置したマウスの手術24時間後の眼底検査により、すべての場合において網膜が完全に再接着したことが示された。網膜のイメージングにより、安全な送達およびレポーター遺伝子発現が示された。3週間後、赤外線イメージングにおいて眼底が明確に見え、光媒体が良い状態であることが、cSLOイメージングにより明らかになった。自発蛍光イメージングにより、AAV2/8.RK.coRPGRまたはAAV2/8.RK.wtRPGRで処置されたRpgr-/yマウスにおける処置された眼および未処置の眼において極めて明るい蛍光を発する点が示された。AAV2/8.CAG.GFPベクターを与えたマウスは、GFPに由来する遍在性の強い蛍光を示した。これは導入遺伝子の揺るぎない発現を示し、その他の組換えAAVベクターについても導入遺伝子の発現に至る十分な時間を有していた可能性が高いとされた。
【0318】
処置された(未処置の)Rpgr-/yマウスにおいて共焦点走査型レーザー眼底検査が行われた。焦点面を網膜内層に置いた赤外記録が行われた。自発蛍光モードの記録が行われた。未処置のマウス、およびAAV.RK.wtRPGRまたはAAV.RK.coRPGRで処置されたマウスはすべて点状パターンの極めて明るい蛍光を示した。同一の感度設定において、AAV.CAG.GFPで処置された眼は、上側半網膜剥離の領域を超えて広範で強いGFP蛍光を示し、網膜下のベクター送達部位を超えて細胞が首尾よく形質導入されたことを示した。
【0319】
免疫組織化学によりRPGRの発現が示される
特異的シグナルが処置されたマウスに由来する切片で観察され、未処置のマウスに由来する切片では観察されなかった。このシグナルはRPGRエピトープへの抗体結合に由来し、導入遺伝子としてRPGRを持つAAVによる形質導入によるRPGRの発現と一致している。より強力なシグナルが、コドン最適化coRPGRを持つAAVであるAAV2/8.RK.coRPGRで処置された眼に由来する切片において見られた。
【0320】
免疫組織化学により、処置されたRpgr-/yマウスにおいてRPGRが示された。Rpgr-/y動物の未処置の眼はRPGR染色がないことを示した。AAV.RK.wtRPGRを用いた1回の処置が検出されるシグナルをもたらし、その多くが内節と外節の間の領域に局在した。コドン最適化ベクターで処置されたRpgr-/yマウスは、結合繊毛マーカーに典型的なコンマ型の染色パターンで最も大きなRPGR発現を示した。
【0321】
考察
ここで適用された手術手法は、マウスの網膜下腔への2μlまでの安全な注入を可能にした。結果的に生じた半網膜剥離はすべての動物で24時間以内に自発的に再接着し、眼の後遺症は全く観察されなかった。同時にそれによって事前穿刺無しの網膜下注入後に見られ得るような(一時的な)角膜浮腫形成および/または眼内循環停止が防がれた。光媒体はその後3週間きれいなままであり、細胞浸潤、虹彩の前部/後部の癒着、または白内障の形成などの眼内病態を示すものは全くなかった。網膜のイメージングにより、AAV2/8.CAG.GFPを与えられた対照群において揺るぎないレベルのGFP導入遺伝子の発現が示された。興味深いことに、直接注入されたのは上側半網膜に限定されていたのにも関わらず、レポータータンパク質GFPは網膜全体に渡ってはっきりと観察された。これは、少なくともある程度の剥離領域外側の細胞の形質導入を示す。GFPの発現は、視細胞に限定されない遍在的な導入遺伝子発現につながる非特異的CAGプロモーターにより駆動された。これは、ロドプシンキナーゼプロモーターがcoRPGRの視細胞特異的発現を駆動する本発明のcoRPGRを有するベクターとは対照的である。
【0322】
AAV2/8.RK.coRPGRまたはAAV2/8.RK.wtRPGRで処置された眼は、内網膜に焦点を合わせた赤外画像に示される通り正常な網膜脈管構造および神経線維層を示した。対照的に、AAV2/8.CAG.eGFPベクターで処置されたマウスは、GFPに由来する強い遍在性の蛍光を示した。未固定切片は、Rpgr-/yマウスにおいてRPGRの発現および結合繊毛への局在を示した。
【0323】
これは、RP動物モデルにおける遺伝子治療として、AAVによるコドン最適化RPGRベクター配列の送達成功の最初の証拠である。導入遺伝子の発現のために使用されるベクターの開発中に入った変異が別のタンパク質産物を生じた過去の研究とは対照的に、この研究は、野生型RPGRタンパク質産物に翻訳されるコドン最適化配列に基づくRPGRの発現および正確な局在を示した。
【0324】
〔実施例5〕
coRPGR遺伝子治療の安全性および有効性
XLRPの遺伝子治療の開発はいくつかの理由により課題のままであった。1つは自発的な変異に遭遇することなくクローニングすることを困難にしているRPGRORF15のプリンリッチで反復性のある配列である。サンガーシーケンシングにより配列の完全性を確認することもまた、高頻度ポリグアニン連続配列(frequent poly-guanine runs)がDNAポリメラーゼを失速または停止させるために問題である。
【0325】
第2の問題は、Rpgr/yおよびC57BL/6JRd9/Bocマウスなどのマウス疾患モデルにおける軽度の表現型である。これらの疾患モデルと野生型対照群の間の比較的小さな構造的および機能的な差異により、治療コホートにおいて統計学的に有意なレベルに到達するのは困難である。
【0326】
最初の点に取り組むために、本発明者らはRPGRORF15のコーディング配列の一次ヌクレオチド配列を変化させるためにコドン最適化の原理を適用した。同義コドンのみが使用されたため、結果として生じるアミノ酸配列は変化しないままであったが、一方でコドン最適化RPGR構築物は野生型RPGR構築物に比べて優れた配列安定性および翻訳効率を備えた。この恩恵はAAV構築物を用いたプラスミド遺伝子導入および形質導入実験を使用したときにin vitroにおいて明白であった。同一のAAV構築物が、それらの視細胞に形質導入する能力を示すための予備的試験において次に使用された(実施例4)。結果として生じたRPGRタンパク質は、視細胞におけるその生理的なコンパートメントである結合繊毛に局在した。
【0327】
破壊的なRpgr変異を有するおよび有しないコホート間の小さな差異に関する第2の問題に取り組むために、本発明者らは関連する客観的で定量的な評価項目に基づく標本サイズと検出力の計算を行った。
【0328】
この研究の目的は、2つの関連のある動物モデル(Rpgr-/yおよびC57BL/6JRd9/Bocマウス)においてAAV.RK.coRPGRのXLRP3のための遺伝子治療手段としての有効性を試験すること、および野生型動物(C57BL/6J)における潜在的な毒性作用を調査することであった。研究デザインは第I相臨床試験の規制当局承認の基礎となる可能性を有する強固な統計学的証拠を提供するために選ばれた。
【0329】
材料と方法
標本サイズと検出力の計算
標本サイズと検出力の計算はthe University of California、San Francisco Department of Epidemiology & Biostatistics、Division of BiostatisticsのRollin Brantにより提供されたJavaScript(登録商標)に基づくアルゴリズムを使用して行われた。このために使用される第1の評価項目は、本研究における標的細胞集団であるマウス網膜における大部分の視細胞の生理機能を反映する、0.01cd.s/m2の暗順応単一フラッシュ刺激後のa波振幅[μV]であった。これらの網膜電図検査(ERG)の反応が測定され、コホート(C57BL/6J、C57BL/6JRd9/BocおよびRpgr-/yマウス)当たりn=4の平均値と標準偏差がExcelにおいて計算された。標本サイズを計算する前に、C57BL/6J(ターゲットの正常値)とC57BL/6JRd9/Boc(処置前のベースライン)の間およびC57BL/6JとRpgr-/yの間の平均a波振幅の差が計算され、この1/2が、処置による50%の増加を仮定し、各疾患モデルの現在の平均値に加算された。これにより、μ0(未処置コホートの平均)およびμ1(処置されたコホートの平均)の値が提供された。σの値(標本集団の標準偏差)は各疾患モデルにおけるa波振幅の標準偏差に設定された。片側検定の設計が想定され、第1種の過誤率がα=0.05に設定され、要求検出力は標本サイズ計算の90%として規定された。
【0330】
同等な標本サイズは次にC57BL/6Jマウスにおける毒性効果の検出力を計算するために使用された。このためには、平均a波振幅のベースラインからの10%の低下が毒性効果として仮定され、ベースラインの標準偏差はσとして入力された。
【0331】
試験の設計
疾患過程に関連し、試験項目のAAV.RK.coRPGRの潜在的な治療効果および/または毒性効果の適切な読み出しである、網膜機能の客観的かつ定量的な生体指標としての第1評価項目として、ERG反応が選択された。コホート内の比較的高い個体間変動性のために、個体内試験パラダイムが選択された:片眼がAAV.RK.coRPGR(ビーラム(verum))で処置され、一方で反対側の眼が対照として使用された。そのような設計において自然な疾患過程を捉え、不活性型物質(AAV.control)の対照注入を備えるために、2つの並行した試験が実施された:無作為に選ばれた片眼のAAV.RK.coRPGRを用いた処置の(必然的な)非盲検試験が、自然な疾患過程に対して治療効果を比べるために使用された。
【0332】
第2の設計は、AAV.RK.coRPGRまたはAAV.controlを与えられる眼の無作為な選択が盲検化された試験である。後者の試験は手術とAAV暴露の効果の対照とするために使用された。全129個体が出生後P22±2日目での離乳時に処置され、その後の3時点:出生後2か月(PM2)、PM4および屠殺前のPM6に試験された。ERGは全3時点で記録され、cSLOは最終時点のPM6で追加して実施された。
【0333】
有効性および毒物学試験の設計
Rpgr-/y、C57BL/6JRd9/BocおよびC57BL/6Jマウスが、AAV.RK.coRPGR対AAV.control(上側)を試験する盲検両眼処置またはAAV.RK.coRPGR単独を用いた片側処置を与えられた。すべての眼はビーラム(verum)対偽処置または処置対無処置に無作為に指定された。手術は出生後22日(P22)に行われ、その後出生後2か月(PM2)、PM4およびPM6に網膜電図検査(ERG)を実施した。PM6では、走査型レーザー眼底検査(SLO)が、屠殺および組織学またはウェスタンブロッティングのための眼処理前に実施された。
【0334】
C57BL/6J野生型マウス
網膜下AAV2/8.RK.coRPGR送達の潜在的毒性効果を探索するために、合計n=47のC57BL/6Jマウスが2つの試験において処置された。24個体が、眼が無作為方式で選択される非盲検の片側処置を受けた。処置は、0.001%PF-68を含むBSS(登録商標)に希釈された1.5x109vgのAAV2/8.RK.coRPGRの単回網膜下注入からなった。残りの23個体は、盲検かつ無作為方式で両側注入を受けた。ビーラム(verum)群における処置は上述の通りであり、一方で対照群は、同じ溶媒(0.001%PF-68を含むBSS(登録商標))に希釈された1.5x109vgのAAV2/8.controlを受けた。両方のベクターが実施例4において詳細に記載される。
【0335】
網膜下注入は3週齢の離乳時に行われた。評点方式(0-10)が手術担当者により網膜下注入の質を示すために使用され、この評点方式では、0/10はベクター送達無しを意味し、10/10は、網膜下注入中または網膜下注入後の外側(例えば結膜下)または内側(例えば網膜内/硝子体内)の出血などのいかなる種類の複雑な要素も無い、完全なベクター送達を意味する。評点9/10は、例えば、完全なベクター送達であるが僅かな結膜下出血を有する場合に与えられた。質の低い注入は評点7以下として規定され試験から除かれた。
【0336】
外科的介入の次に、出生後2か月(PM2)およびPM4におけるERG記録における個体内変化の長期的観察が行われた。PM6では網膜の追加的なSLOイメージングがERG記録の直後に行われた。マウスは最終時点(PM6)で屠殺され、眼はウェスタンブロットまたは免疫組織化学による導入遺伝子検出のために解剖された。
【0337】
C57BL/6JRd9/Bocマウス
両方の試験で合計n=36のC57BL/6JRd9/Bocマウスが処置された。19個体は非盲検片側処置を受け、一方で17個体はC57BL/6Jマウスについて上述されたようにビーラム(verum)または対照を用いた盲検かつ無作為な両側注入のために使用された。これは、AAVに基づくRPGR遺伝子置換遺伝子治療の有効性を調べるために行われた。追跡調査は上述のように予定を組まれた。
【0338】
Rpgr-/yマウス
Rpgr-/yマウスは、第2のXLRP動物モデルにおけるAAVに基づくRPGR遺伝子置換遺伝子治療の有効性を調べるために使用された。このために、合計n=46個体が上述の2つの別々の試験において処置された。25個体は非盲検片側処置を受け、一方で21個体は上述の通り両側の眼(ビーラム(verum)および対照)において処置された。介入後の読み出しは上述のC57BL/6Jマウスのように予定を組まれた。
【0339】
結果
標本サイズと検出力の計算
計算された標本サイズはコホート(C57BL/6J、C57BL/6JRd9/BocおよびRpgr-/yマウス)当たり4個の眼(2個体)から収集されたERGデータに基づいた。n=9回の試験の平均a波振幅が各眼について記録された。
【0340】
上のデータからμ0、μ1およびシグマ値を計算した後、推奨標本サイズは16から21の範囲であった。C57BL/6JRd9/Bocマウスは野生型対照(81±7μV)に比べて最小の振幅(65±11μV;平均±標準偏差)を備え、それ故n=16の推定標本サイズを必要とするだけだった。Rpgr-/yの推奨標本サイズは、ベースラインにおける振幅がより高いためにn=21だった(728μV)。検出力計算により、n=20のコホートサイズを使用する場合には、野生型マウスにおけるベースラインから振幅が10%低下すれば、100%の検出力で検出されることが示された。
【0341】
C57BL/6J野生型マウス
6個の眼が手術の質の低さにより試験から除外され、1個は元々存在する前部の変化により除外された。これにより結果として全体のコホートサイズは片側試験ではn=19となり、両側試験ではn=22となった。記録された手術の質の平均[および範囲]は、非盲検では9.0[8-10]、ビーラム(verum)では9.5[8-10]、また対照群では9.3[8-10]であり、すべての群において非常によく似ていた。すべてのマウスが手術後にすぐに回復した。
【0342】
暗順応条件または明順応条件で記録された信号強度シリーズのいずれも、いかなる時点においても、処置対未処置の間またはビーラム(verum)対対照群の間で有意な差を示さなかった。走査型レーザー眼底検査(SLO)を用いた網膜イメージングにより、AAV.RK.coRPGRの網膜下投与6か月後まで、網膜構造上で観察され得るいかなる毒性効果もないことが確認された。
【0343】
AAV.RK.coRPGRまたはAAV.controlの両眼網膜下注入後のC57BL/6JマウスにおけるERG記録により、PM2、PM4および検査される最終時点であるPM6のデータが提供された。繰り返しのある分散分析(Factorial ANOVA for repeated measures)では、すべての解析において帰無仮説(差がないこと)が保持された。
【0344】
全網膜溶解物のウェスタンブロットにより処置された眼においてRPGR導入遺伝子の発現が確認されたが、対照の眼では確認されなかった。バンドは予想される分子量を示し、余分なバンドは何も見えなかった。未固定凍結切片の免疫組織化学でも、処置された眼におけるRPGR導入遺伝子の発現および本来のRpgripとの共局在が示されたが、未処置の対照の眼ではそれが示されなかった。
【0345】
処置された眼(TE)および未処置の眼(UE)に由来する網膜切片におけるヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色では、両方のコホートにおける正常な網膜組織が明らかにされた。いずれのコホートも、いずれの切片においても炎症または変性のいかなる徴候も示さなかった。
【0346】
C57BL/6J、C57BL/6JRd9/BocおよびRpgr-/yマウスの処置された眼対未処置の眼に由来する全網膜溶解物のウェスタンブロットが行われた。RpgrORF15の発現は処置された眼に限局し、約200kDaのバンドを示した。最も強いバンドがC57BL/6JRd9/Bocで見えており、次に強いバンドがC57BL/6Jで見られ、一方でRpgr-/yの試料は最も弱い発現を示した。GAPDHはローディングコントロール(赤色)として使用された。未操作のHEK293T細胞が陰性対照(nc)として使用され、coRPGR発現プラスミドを遺伝子導入したHEK293T細胞が陽性対照として使用された。
【0347】
C57BL/6Jマウスにおける免疫組織化学。対照処理された眼においてはRPGRの発現は見られなかった。AAV.coRPGRの処理によりRPGRの発現およびヒトRPGRのRpgripとの共局在がもたらされた。
【0348】
C57BL/6Jマウスにおけるヘマトキシリン・エオジン染色ではどの切片においても可視的な炎症および変性の徴候はなかったことが示された。正常な解剖学的形態が観察された。
【0349】
C57BL/6JRd9/Bocマウス
片側非盲検試験のうちの1個体のマウスは、未処理対照の眼において随伴小眼球による角膜浸潤が予め存在するために除外されなければならなかった。該小眼球は未処置の眼において偽の低いERG記録をもたらすかもしれなかった。これにより、片側試験では合計n=18個体、両側注入では合計n=17個体となった。処置された動物は手術の合併症により除外されなければならないものはなく、すべての動物が良または優の評点を与えられる注入を受け、評点の平均(すべての群で範囲は8-10)は非盲検については9.7、ビーラム(verum)では9.1、対照群では9.0であった。
【0350】
長期的な追跡調査では、片側試験の2個体がPM4において麻酔から回復しなかった。3時点に由来する合計102の両側ERGデータセットが首尾よく記録され、さらなる解析のために保存された。非盲検片側試験では、繰り返しのある分散分析(factorial ANOVA for repeated measures)により最初の時点(PM2)では帰無仮説(差がないこと)が保持されたが、暗順応および明順応強度シリーズの両方で、より高い強度において処置された眼では振幅がより大きい傾向が示された。PM4では、処置された眼は、暗順応強度シリーズを通して、a波(p=0.001)およびb波(p=0.002)の両方に関して有意に高い振幅で反応した。光順応の反応では有意に異ならなかった。このパターンは最終時点(PM6)まで維持された。
【0351】
盲検化両側試験では帰無仮説はすべての時点で保持された。しかし、ビーラム(verum)処置された眼は、再び、特により高い刺激強度において振幅がより高い傾向を常に示した。
【0352】
走査型レーザー眼底検査(SLO)を用いた網膜イメージングにより、AAV.RK.coRPGRの網膜下投与6か月後まで網膜構造上で観察され得るいかなる毒性効果もないことも確認された。しかし、自発蛍光イメージングにより、処置されたC57BL/6JRd9/Bocマウスにおいて疾患の様子の変化が明らかにされた:本発明者らは、マウスにおけるRpgrの発現の欠失は自発蛍光において網膜上に渡って可視的な極めて明るい蛍光点を伴うが、一方で野生型マウスは最小限の一様な自発蛍光シグナルを有することを過去に示した。興味深いことに、PM6におけるverum処置された眼のイメージングにより、ベクターが最初に投与された上側半網膜におけるこれらの極めて明るい蛍光点が減少することが示された。処置された眼の中で半網膜は有意に異なっていた:処置された上側半網膜で13±14(平均±標準偏差)であるのに対し、同側の下部網膜では59±40だった(p=0.005;n=6、両側t検定)。反対側の未処置の網膜に対して処置された網膜における上側半網膜を比較すると、同様の結果(p=0.037;n=6、両側t検定)を生じた。
【0353】
全網膜溶解物のウェスタンブロットでは、処置された眼においてRPGR導入遺伝子の発現が確認されたが、対照の眼では確認されなかった。バンドは予想される分子量を示し、余分なバンドは何も見えなかった。また未固定凍結切片の免疫組織化学では、処置された眼におけるRPGR導入遺伝子の発現および本来のRpgripとの共局在が示されたが、対照の眼ではそれが示されなかった。
【0354】
Rpgr-/yマウス
片側非盲検試験のうちの1個体のマウスは、未処理の眼において予め存在する小眼球のために除外されなければならず、該小眼球は逆側の眼の外科的介入の後に初めて気付かれたものであり、該未処置の眼において偽の低いERG記録をもたらしたはずである。その上、処置された動物の両側試験に由来する1個体は手術の合併症(硝子体内出血を伴う部分的な硝子体内注入)により除外されなければならなかった。これにより結果として、合計では、片側試験はn=24個体になり、両側注入はn=20個体になった。手術成功率はすべてのコホートにおいて高かった:平均[範囲]の評点は非盲検では9.3[8-10]であり、C57BL/6JRd9/Bocマウスにおけるビーラム(verum)および免疫組織化学では9.5[9-10]であった。上側のパネルは、対照処置の眼ではRPGRの発現がないことを示す。AAV.coRPGRを用いた処置により、RPGRの発現およびRpgripとの共局在がもたらされた。スケールバーは20μmを示す。対照群においては9.4[8-10]。長期的な追跡調査では、両側注入された1個体がPM2で、片側注入された2個体がPM4で麻酔から回復しなかった。3時点に由来する合計128の両側ERGデータセットが首尾よく記録され、さらなる解析のために保存された。
【0355】
非盲検片側試験では、最も早い時点(PM2)では両眼の間で明らかな差はなかったが、PM4(p<0.001)およびPM6(p<0.001)の暗順応ERG反応ではaおよびb波振幅両方において、可視的で揺るぎない治療効果があった。明所視のb波反応はPM6(p=0.004)では有意に大きかった。盲検両側試験では、暗順応b波反応の振幅がPM6において有意に増加し、明順応b波振幅がPM4において有意に増加した(しかしPM6では有意に増加しなかった)ことが示された。
【0356】
AAV.RK.coRPGRで処置されたRpgr-/yマウスの眼は、処置されたC57BL/6JRd9/Bocマウスでも見られるように、上側半網膜における極めて明るい蛍光点の減少を示した。対照的に、Rpgr-/yマウスの未処置の眼または偽処置を施された眼は、Rpgrヌル変異に伴う遍在的パターンの極めて明るい蛍光点を示した。
【0357】
全網膜溶解物のウェスタンブロットでは、処置された眼においてRPGR導入遺伝子の発現が確認されたが、対照の眼では確認されなかった。バンドは予想される分子量を示し、余分なバンドは何も見えなかった。また未固定凍結切片の免疫組織化学では、処置された眼においてRPGR導入遺伝子の発現および本来のRpgripとの共局在が示されたが、対照の眼ではそれが示されなかった。AAV.RK.coRPGRの片側網膜下注入後のRpgr-/yマウスにおけるERG記録。
【0358】
AAV.RK.coRPGRまたはAAV.controlの両側網膜下注入後のRpgr-/yマウスにおけるERG記録。AAV.RK.coRPGRを用いた処置は暗順応ERG振幅の有意な改善につながった。明順応b波振幅における治療効果はPM6では維持されなかった。
【0359】
赤外モードでの走査型レーザー眼底検査イメージングを使用して、焦点面が内網膜または外網膜に合わせられた。処置された眼および偽処置または対照の眼の間での明確に異なる自発蛍光パターン:処置された眼では、AAV.RK.coRPGRが投与された領域である上側半網膜において極めて明るい蛍光点がより少ないことが示される。
【0360】
Rpgr-/yマウスにおける免疫組織化学。対照処置された眼においてRPGRの発現は見られなかった。AAV.coRPGRを用いた処置によりRPGRの発現およびヒトRPGRのRpgripとの共局在がもたらされた。スケールバーは20μmを示す。
【0361】
考察
RPGRがXLRP3の遺伝的原因として特性決定されてから、RPGR置換治療は興味を集めてきた。それが未だに臨床試験に移行していない目標のままであるという事実は、主にはRPGRが変異による変化を受ける高い傾向を有する複雑な遺伝子であるという事実による。これは、臨床試験申請を支持するデータセットを築くために重大な遅延をもたらしてきた。安全性試験のための規制認可があっても、RPGR遺伝子治療のための臨床グレードAAVの生産は重要な課題である。
【0362】
これらのデータは、野生型動物C57BL/6Jでは毒性効果を全く示さず、2つの関連する動物モデル(Rpgr-/yおよびC57BL/6JRd9/Bocマウス)における、RPGR遺伝子治療のための新しいタイプのベクター構築物の有効性を示す。このAAVに基づくベクターは、同一のタンパク質産物RPGRORF15をもたらす一方で構築物を遺伝学的により安定にするRPGRORF15のコドン最適化コーディング配列を備える。詳細なin vitroの解析およびRpgr-/yマウスにおける予備試験(実施例4)を経て、本発明は、AAV.RK.coRPGRの単回網膜下投与は安全であり、Rpgrの変異による網膜変性の進行を停止または減速させ得ることを示す。
【0363】
安全性
AAV.RK.coRPGRの潜在的な毒性効果を探索するために、本発明者らは41頭のC57BL/6Jマウスにおいて同じ用量(1.5μl中の1.5x109vg)を試験した。19頭のマウスが片眼のみで処置され、一方で22頭がAAV.RK.coRPGRまたはAAV.controlのどちらかを用いて盲検両側処置を受けた。ビーラム(verum)群および対照または未処置群の間では、いずれの試験のいかなる時点においても、ERGにおける網膜機能の測定値の間で有意な差はなかった。その上、in vivoの網膜イメージングにより、AAV.RK.coRPGR処置は網膜構造に対して何の影響もないことが示唆された。H&E染色は処置により何の毒性効果もないことを示し、免疫組織化学およびウェスタンブロッティングは処置された個体ではRPGRORF15の発現と局在を示したが、未処置または対照処置の動物ではそうではなかった。以上を合わせると、野生型マウスをAAV.RK.coRPGRで1回処置してもいかなる毒性効果は惹起されず、良好な安全性プロファイルを示した。本発明者らは故にAAV.RK.coRPGRを用いた処置は安全であると結論した。
【0364】
有効性
AAV.RK.coRPGRの治療効果は、2つのよく特徴付けられたXLRP3のマウスモデル:Rpgrにおいて天然に発生する変異を備えるトランスジェニックモデルRpgr-/yおよびC57BL/6JRd9/Bocにおいて示された。両方のモデルは網膜においてRpgrORF15の発現を欠くことが示されており、したがってXLRP3関連動物モデルとして選ばれた。しかし、これらの動物モデルを使用する際に注意点がある。最も重要なことには、疾患表現型が驚くほど軽度であり、それ故に必要な統計学的検出力を得るためには試験において比較的大きなコホートを必要とする。結果として、本発明者らは合計約80個体で試験を実施し、Rpgr-/yおよびC57BL/6JRd9/Bocマウスにおける電気生理学的測定値の有意な回復に示されるような有効性の揺るぎない証拠を提供した。
【0365】
最も大きな可能性としては両方の動物モデルにおいて疾患の進行が遅いことに起因し、治療効果は最初の時点では明らかにはならなかった。しかし、AAV.RK.coRPGR処置は、PM4およびPM6では両方の動物モデルにおいてERGの有意な回復を伴った。この回復は、より低い強度範囲(約0.01cd./m2までの単一フラッシュ)では桿体視細胞の電位の総和を反映する暗順応強度シリーズにおいてより明らかであった。より高いフラッシュ強度では、錐体-桿体の混合した反応が刺激されると考えられている。処置された眼および偽/未処置の眼の間での最大差異は約1cd.s/m2の強度で見られたため、桿体および錐体視細胞の両方がAAV.RK.coRPGR形質導入により機能を向上したのかもしれないと示唆された。
【0366】
以上を合わせると、AAV.RK.coRPGRを用いた処置は安全であり有効であった。野生型マウスにおいてAAV.RK.coRPGRにより視細胞を首尾よく形質導入しても、RPGRORF15の発現に伴う毒性効果にはつながらなかった。その上、XLRP3動物モデルの処置では、処置された眼では統計学的に有意なERG反応の回復が示されたが、未処置の眼では示されなかった。これらのデータは、本発明のRPGRORF15のコドン最適化コーディング配列が安全に眼を治療するために使用され得ることを示した。
【配列表】