(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】被覆ガラスシート
(51)【国際特許分類】
C03C 17/25 20060101AFI20220119BHJP
C03B 27/012 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C03C17/25 A
C03B27/012
(21)【出願番号】P 2018521363
(86)(22)【出願日】2016-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2016075984
(87)【国際公開番号】W WO2017072259
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-09-30
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ペルー, ウジェニー
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-058851(JP,A)
【文献】特開平10-316885(JP,A)
【文献】特開平09-295834(JP,A)
【文献】特開2012-148950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0009388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00-23/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の表面上に与えられた加水分解性のネットワーク形成シリカゲルコーティングの機械抵抗および耐化学薬品性を高めるための方法であって、前記表面に
、low-eアンダーコート、及び酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体でドープされた加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルを含むコーティング組成物が塗布されること
、及び前記加水分解性のネットワーク形成シリカゲルコーティングの上にいかなる保護コーティングも塗布されないことを特徴とする方法。
【請求項2】
ビスマスまたはセリウムの前記前駆体が、0.4~5重量%の範囲のコーティングの重量における百分率で表されるレベルで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングが前記
ガラス基板の全表面または実質的に全表面を覆う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラス基板を、前記ガラスがコートされた後に加熱するさらなる工程を含む請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルを含む前記コーティング組成物が、酸化ビスマスの前駆体でドープされる請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
low-
eアンダーコート、及び酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体でドープされた加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルを含む組成物のコーティングでコートされた
熱処理可能なガラス基板
であって、前記加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルを含む組成物のコーティングの上にいかなる保護コーティングも塗布されていないことを特徴とする熱処理可能なガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を改善された材料でコートすることによる高められた機械抵抗および耐化学薬品性表面の製品の製造方法ならびに前記方法によって得られる製品に関する。特に、本発明はまた、熱処理された被覆ガラスシート、特にコーティングがその表面上に形成されたガラスシートに、ならびに高められた機械抵抗および耐化学薬品性表面特性を持って熱処理可能であり、かつ、そのような熱処理後に取り扱われ得るそのようなガラスシートに関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性のネットワーク形成シリカゲルコーティングを物体に提供することは一般に公知である。そのようなコーティングは一般に、要望される色を物体に与えるための着色、物体を美的ではない引っ掻き傷から防ぐための抗引っ掻き傷特性などの特定の特性、反射を減らし、そして光透過率を高めるための抗反射コーティング、物体の屈折率を調整するためのコーティングおよび疎水性コーティング‥‥‥に関連している。しかし、これらのコーティングは、多くの場合長持ちせず、多くの場合機械的および化学的ストレスに敏感である。したがって、一般にさらなるコーティングが、第1コーティングを機械的および化学的ストレスから保護するために、ならびに第1コーティングの寿命を延ばすために第1コーティングの下または上に塗布される。
【0003】
さらに、強化ガラスのような、熱処理されたガラスが、安全目的のために建物および自動車においてますます要望されている。
【0004】
建築用途向けおよび自動車用途向けガラスシートのほとんどは、引張ストレスに対する耐性を向上させるためにそれらの表面に加えられた圧縮ストレスを保持している、強化ガラス製である。その安全性および強度の結果として、強化ガラスは、窓、シャワードア、建築ガラスドアおよびテーブル、冷蔵庫トレーなどの、様々な要求が厳しい用途において、防弾ガラスの成分として、ダイビングマスク、ならびに様々なタイプの平皿および調理器具用に使用されている。
【0005】
したがって、ある種の用途向けには、安全上の理由から強化ガラスの使用が要求される。さらに、美的および手入れしやすさの観点から、きれいにするのが容易な特性が、エンドユーザーによって期待されている。最良にきれいにするのが容易な表面は、多くの場合疎水性コーティングである。
【0006】
したがって、機械的および化学的ストレスに対して耐性がある加水分解性ネットワーク形成シリカゲルコーティングをその表面の少なくとも1つの上に有する基板、特にガラス基板を製造する簡単なおよび低コストの方法を見いだすことが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、それ故、基板の表面上に与えられた加水分解性ネットワーク形成シリカゲルコーティングの機械抵抗および耐化学薬品性を高めるための方法を提供することである。耐化学薬品性は、すなわち酸性および塩基性条件に対する耐性であり、機械抵抗は、すなわち耐摩耗性である。
【0008】
本発明の別の目的は、耐化学薬品性および機械抵抗を高めることによって長持ちするコーティングを有する基板、特にガラス基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、目的は、基板の表面の少なくとも1つの上に塗布される、酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体でドープされた加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルを含むコーティング組成物によって達せられる。
【0010】
加水分解性のネットワーク形成シリカゲルコーティングは、本発明の枠組みにおいてその一般的な意味を有する、すなわち、シリカゲルコーティングは、公知のシリカ加水分解性前駆体から主として出発するゾルゲル化学によって得られる。好適なシリカ加水分解性前駆体は、例えば、テトラエチルオルトシリケート、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどである。本発明によれば、改善された加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルコーティングは、
- 溶媒、(または溶媒の混合物)、
- 金属塩形態下または金属アルコキシドのような有機金属形態下(例えば:硝酸ビスマス、塩化ビスマス、硝酸セリウム‥)の、酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体、
- 少なくとも1つのケイ素アルコキシド、
- 任意選択的に、金属がジルコニウム、チタン、アルミニウム、…であり得る他の金属アルコキシド、
- 任意選択的に、添加することができる触媒、および
- 水
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アルコキシドとして、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシドなどを使用することができる。より具体的には、次のケイ素アルコキシド:テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびメチルトリエトキシシランなどを使用することができる。
【0012】
好ましくは、溶媒は、エタノールまたはイソプロパノールまたはエトキシ-エタノールである。ゾル-ゲル組成物に通常使用される他の溶媒が使用できることが理解される。
【0013】
好ましくは、アルコキシドは、一般にTEOSとして知られる、テトラエチルオルトリシリケートつまりテトラエトキシシランである。本発明によれば、上記の液体ゾル-ゲル組成物からの固体乾燥抽出物として表されるSiO2の総量は、0.5~10重量%の範囲である。
【0014】
本発明によれば、酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体は、硝酸ビスマス、塩化ビスマスまたは硝酸セリウム、酢酸セリウムである。他の好適な前駆体は、クエン酸ビスマス、酢酸ビスマス、リン酸ビスマス、塩化セリウム、硫酸セリウム、セリウムアセチルアセトナートなどである。ある種の化学種はまた、同様に包含されるそれらの水和物下で存在してもよい。好ましくは、酸化ビスマスの前駆体は硝酸ビスマスであり、酸化セリウムの前駆体は硝酸セリウムである。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、コーティング組成物は、ビスマスおよびセリウムの前駆体の混合物を含んでもよい。
【0016】
したがって、本発明は、一様な耐性のあるコーティングまたは製品上のコーティングであって、前記製品の表面に、その中に一様に分配される酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体でドープされたシリカ酸化物ネットワークマトリックスを含む層を提供することによって得ることができるコーティングを提案する。コーティングは、ドープされていないコーティングと比べて高められた耐化学薬品性および機械抵抗を提供する。コーティング組成物中のセリウムまたはビスマスの存在は有利にも、それでコートされた基板の化学的および機械的性能を改善する。ビスマスドーピングは、セリウムよりもさらに良好な性能を与える。
【0017】
この層は通常、シートのように広げられたコヒーレントシリカ酸化物ネットワークの一様な層である。本発明のドープされたシリカ酸化物ネットワークは、開気孔または独立気孔を有することができる。本発明のドープされたシリカ酸化物層は、塗布されたゲル層を加熱することによって形成され、固体コーティングとして製品上に残る。
【0018】
本発明に従って使用されるゲルは、特に、ゾル-ゲル法によって調製されるシリカ酸化物ゲルである。ゲルは、コートされるべき物品または製品への塗布中にその場形成され、コートされるべき物体の表面上に一様な、連続のゲルネットワークを生じさせる。本発明によるシリカ金属酸化物はSiO2である。シリカ酸化物は、コーティング組成物の総量中の0.1~3%のAl2O3、Fe2O3、SnO2、ZrO2、および/またはTiO2の中から選ばれる金属酸化物と混合されてもよい。言い換えれば、コーティング組成物は、コーティングの重量パーセント(または総重量の百分率)で表される含有量で、0.1~3%の前記金属酸化物を含む。Al2O3、Fe2O3、SnO2、ZrO2、および/またはTiO2の中から選ばれるとは、Al2O3、Fe2O3、SnO2、ZrO2、TiO2またはそれらの任意の混合物を意味する。
【0019】
本発明によれば、コーティング組成物は、コーティングの総重量の百分率として表される含有量で、0.4~5%の酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体を含む。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、コーティング組成物は、コーティングの総重量の百分率として表される含有量で、0.4~5%の酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体を含む。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、疎水性物質をコーティング組成物に添加することができる。さらに、本発明によれば、ゲル形成前またはゲル形成中のゾル混合物への疎水性物質の添加は、疎水性物質が形成ゲルネットワークの全容積中に一様に分配されるであろうこと、およびそれが、例えば、それのシラノール基への重縮合によって化学結合するであろうことを確実にする。このようにして、酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体でドープされたシリカゲルネットワークのおかげで、顕著な耐摩耗性特性および耐久性のある防汚特性を、このように処理された表面に付与することが可能であった。
【0022】
形成ゲル中へ組み込むことができるそれらの疎水性物質が一般に、疎水性物質として好適である。本発明の方法のためには、ゲル形成ソル溶液中に非常に一様に分布することができる疎水性物質を使用することが好ましい。本発明の方法に使用される疎水性物質はしたがって好ましくは、それら自体、ゾル-ゲルに使用される溶媒に、または加水分解によってわずかに可溶性である。そのような物質の例は、天然および合成油ならびに/または長鎖脂肪酸、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、特に少なくとも10個の炭素原子の鎖の脂肪酸である。しかし、疎水性物質、特に、シラン、シロキサン、およびシリコーンが特に好ましい。
【0023】
任意選択的に、耐湿性が、ジルコニウムまたはアルミニウムの添加でさらに高められてもよい。それは、ジルコニウム塩もしくはアルコキシドまたはアルミニウム塩もしくはアルコキシドの添加によって特に高めることができる。
【0024】
本発明によるコーティングは、透明であり、ゾル-ゲル塗布のためのいろいろな通常の技術によって堆積させることができる。しかし、コーティングは、着色成分を添加することによって着色されてもよい。好適な着色成分は、無機もしくは有機顔料または有機染料であってもよい。
【0025】
コーティング組成物中に含まれる金属アルコキシドおよびケイ素アルコキシドは、水、加水分解用の触媒およびアルコールなどの溶媒と攪拌することによって、次に所与の時間放置することによって加水分解することができる。触媒として、塩酸、硝酸および硫酸などの無機酸、または酢酸およびクエン酸などの有機酸を導入することができる。溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノール、2-エトキシ-エタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコール、またはアセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトンによって代表される水溶性有機溶媒を水と同様に使用することができる。水溶性有機溶媒として、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールおよびメシチルオキシドをまた挙げることができる。有機溶媒と水との混合物もまた、溶媒用に使用することができる。本発明の枠組みの中で、2-エトキシ-エタノール、1-メトキシ-2-プロパノールが、エタノールなどの標準的なゾルゲル溶媒への限定された溶解度を有する酸化ビスマスの前駆体用の好ましい溶媒であることが発見された。
【0026】
加水分解される化合物を含む組成物のコーティングは、基板上にコートされる。加水分解される化合物は、様々なコーティング法によってガラス基板の表面上へコートされる。コーティング法として、スピンコーター、ロールコーター、スプレーコーター、カーテンコーターなどを使ったコーティング法;浸漬法;フローコーティング法;ならびにスクリーン印刷、グラビア印刷、および曲面印刷などの印刷法を挙げることができる。加水分解される化合物は、層が乾燥または加熱処理後に10nm~500nmの厚さを有し得るようにガラス板の表面上へ塗布される。
【0027】
コーティング付きのガラス基板は、より高い温度で一般に数秒間から数時間加熱される前に、室温~300℃の温度で乾燥させられる。加熱の温度は、ガラスを強化するために400℃~800℃の間で、好ましくは530℃~710℃の間で選択されることが好ましい。特に、加熱温度は、500℃からガラス基板の軟化点までの範囲にあり得る。加熱温度は、540℃から軟化点までの範囲、より好ましくは550℃~軟化点の範囲にあることが好ましい。こうして、被覆ガラスシートは、必要とされるサイズに切断し、研削し、洗浄し、後で強化することができる。
【0028】
任意選択的に、本発明によるコーティングを堆積させる前に、防食コーティングなどの、アンダーコートをまた適用することができる。そのようなアンダーコートは、例えば、ナトリウムがガラスバルクから移動するのを防ぐために好ましい。例えば、xが0よりも大きい、SiOx型などの酸化ケイ素を含むアンダーコートを、化学蒸着(CVD)によって堆積させることができる。酸化ケイ素または窒化ケイ素のような他のバリア層を、化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)によって堆積させることができる。周知のlow-e(低放射)コーティングをまた、ガラスの表面上に堆積させることができる。
【0029】
low-eコーティングは一般に、PVD法によって製造され、断熱二重もしくは三重グレージングに使用される。それらの限定された耐性により、それらは一般に、外部環境との接触を制限し、そして美的および/または光学的特性の機械的または化学的劣化を回避するためにグレージングの内面(それらの面は、グレージングの内側に面している)上に配置される。low-e PVDコーティングの限定された機械抵抗および/または耐化学薬品性は、屋内もしくは屋外使用のための、簡単なグレージングでの、または二重もしくは三重グレージングの場合には外側位置での、すなわち、グレージングの外面上でのそれらの使用に制限する。
【0030】
本発明によるコーティングは有利にも、low-eコーティングの放射率特性への実質的な影響なしにlow-e PVDコーティングの機械抵抗および/または耐化学薬品性を高め、グレージングの外面上でのそれらの使用を可能にする。
【0031】
本発明の別の態様によれば、SiO2またはAl2O3のナノ粒子をコーティング組成物に添加することができる。好ましくは、SiO2のナノ粒子がコーティング組成物に添加される。好ましくは、ナノ粒子は、ガラスシートの表面の少なくとも1つの部分上へのその堆積前にコーティング組成物に添加される。こうして、いくつかの機能化ナノ粒子を、例えば、溶液でまたは非溶液で、親水性または疎水性または中性のものとして使用することができる。使用することができるナノ粒子は、例えば、次の製品:約12nmの直径の親水性SiO2としての、Evonik製のAerosil 200(登録商標)、約16nmの直径の疎水性SiO2としてのEvonik製のAerosil R972、日産化学工業(Nissan Chemical)製のNanouse CE-20B(溶液中のCeO2)、溶液中の中性SiO2(サイズ9/15~40/100nm)としての日産化学工業(Nissan Chemical)製のIPA-ST-UP…である。
【0032】
好ましくは、添加されるナノ粒子は疎水性SiO2ナノ粒子である。実際に、疎水性SiO2ナノ粒子の添加は、焼きなまし後でさえも、超疎水性の、150°よりも上の接触角のコーティングを達成することを可能にする。接触角測定中に、小滴は、小滴の沈着を強いる場合でさえも表面上にとどまりたがらない。
【0033】
本発明はまた、基板、特に本発明によるコーティングでコートされたガラスに関する。被覆基板は、非ドープトコーティングでコートされた基板と比べて高められた耐化学薬品性および機械抵抗を有する。基板に塗布されるコーティング組成物中のセリウムまたはビスマスの存在は有利にも、被覆基板の化学的および機械的性能を改善する。ビスマスドーピングはセリウムよりもさらに良好な性能を与える。
【0034】
本発明による基板は、ガラス基板またはプラスチック基板または金属基板である。好ましくは、基板はガラスシート基板である。本発明によるガラスシート基板は、その面の1つの上に本発明によるコーティングを含む。
【0035】
ガラスは、本発明によるコーティングが高温で耐性があるので、長持ちするコーティングでコートされたガラスがコーティングのいかなる保護もなしに直接加熱できることを特徴とする。
【0036】
本発明によるコーティングは、耐引っ掻き性、抗反射、防指紋、防曇、着色…などの異なる特性を与え得る。したがって、公知のコーティングは、それらの耐化学薬品性および機械抵抗を高めることによって高性能化し得る。言い換えれば、酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体は、公知のコーティングと匹敵し、それらの耐化学薬品性および機械抵抗を改善するためにそれらに添加することができる。
【0037】
本発明は、熱処理可能なガラスシートとの関連で特定の利点を有する。用語「熱処理可能なガラスシート」は、本明細書で用いるところでは、被覆ガラスシートが、欠陥(例えば、コーティング中の美的欠陥)を生み出すことなく、かつ、ガラスシートとコーティングとの間で良好な接着を依然として有して、曲げおよび/もしくは熱強化および/もしくは熱硬化操作ならびに/またはエナメル焼成および/もしくは他の匹敵する熱処理プロセスを受けることに適応していることを意味する。熱硬化という用語は、熱的に強靱化されるまたは熱的強靱化すると同じ意味を有する。そのような熱処理プロセスは、とりわけ、オーブンのタイプにおよびガラスシートの厚さに応じて、2分~20分間、好ましくは最大15分間、大気中で約530℃よりも高い、例えば、530℃~735℃、より好ましくは530℃~710℃の温度に被覆ガラスシートを加熱するまたは曝すことを含んでもよい。しかし、化学的強化がまた用いられてもよい。
【0038】
本発明によるガラスシートは、いったん熱処理されると、さらに有利にも、ガラスへのコーティングの接着、耐化学薬品性、機械抵抗の観点からより良好な特性を通常の非熱処理ガラスに提供し得る。
【0039】
用語「コーティング」は、任意の乾燥または熱処理後の、および熱処理後のコーティング組成物に対して等しく本明細書では用いられる。それは、乾燥後または乾燥および熱処理後を意味する。
【0040】
用語「コーティング液」は、基板の表面上への堆積前のおよび任意の乾燥または熱処理前のコーティングの溶液の組成物に対して等しく本明細書では用いられる。
【0041】
好ましい実施形態においては、本発明のコーティングは、連続であり、ガラスシートの全表面に実質的にわたって、すなわち、ガラスシートの表面の90%超にわたって、好ましくはガラスシートの表面の95%超にわたって広がっていてもよい。
【0042】
使用されるガラス基板は、フラットガラス、特に様々な厚さ(例えば、0.5~15mm)のフロートガラスであってもよく;それは、ソーダ石灰ガラスであってもよいし、無色透明の、超無色透明の、着色した、エッチングされた、サンドブラストで磨かれた、模様のある、またはコートされたガラス、またはディスプレイ用途向けの特定の組成物であってもよい。本発明によるガラスシートは、1m×1mよりも大きいサイズを有してもよい。それらは、例えば3.21m×6mもしくは3.21m×5.50mもしくは3.21m×5.10mもしくは3.21m×4.50mの、PLFとして知られる、サイズ、または例えば3.21m×2.50mもしくは3.21m×2.25mの、DLFとして知られる、サイズを有してもよい。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、ガラス基板はホウケイ酸ガラスであってもよい。
【0044】
本発明によるより化学的および機械的耐性のある被覆ガラスシートの形成は、以下の工程:
- ガラスシートを提供する工程;
- 加水分解性の、ネットワーク形成シリカゲルおよび酸化ビスマスまたはセリウムの前駆体を含む組成物のコーティングをガラスシートの表面上に塗布する工程;
- コーティングが乾燥する、すなわち、有機溶媒の多い部分が蒸発し、そしてシリカネットワークがさらに架橋し、ガラスにくっつくように、300℃を超えない、好ましくは250℃を超えない、より好ましくは約150~200℃の温度でコーティングを乾燥させる工程(これは、約30秒~20分、好ましくは1~10分を要し得る)
を含んでもよい。
【0045】
コーティングは、当技術分野において公知の任意の方法、例えばローラーコーティングまたはカーテンコーティングの方法、スプレー方法またはフロープロセスまたは浸漬コーターによって塗布されてもよい。スクリーン印刷法がまた、とりわけガラスシートの部分のみがコートされなければならない場合に、またはデジタル印刷法(例えばインクジェット)が用いられてもよい。他の塗布方法は、スピンコーティング、グラビア印刷または曲面印刷である。
【0046】
好ましくは、本発明によるガラスシートは、いったん熱的に強靱化されると、標準EN12150-1:2000に従って、建物における安全ガラスとして使用されてもよい。好ましくは、本発明によるガラスシートは、いったん熱的に強靱化されると、標準prEN14-179-1:2001またはEN1863-1:2000の破砕試験に従って壊れる。
【0047】
好ましくは、本発明によるガラスシートは、いったん熱的に強靱化されると、シャワードア、テーブル、ディスプレイ用のスクリーン…として使用される。
【0048】
本発明の実施形態は、本発明に従っていない比較例と比較するために、単なる例として、これからさらに説明される。単純化のために、以下の説明は、ガラスシートに関して行われるが、本発明によるコーティングが、例えば建物においてシャワードア、ドア、壁用に、および自動車において、サイドもしくは風防またはバックライト窓…用に、耐性のある、機械的特性を有することを意図するあらゆる表面上に塗布できることは理解される。
【0049】
本発明に従って得られるコーティングは、攻撃的物質または湿潤環境に曝される基板用に特に適している。
【0050】
基板の一種は、コーティングが異なる攻撃的物質(酸性、塩基性、クリーニング製品)と接触する、そして湿潤環境にある、シャワードアのものであってもよい。したがって、本発明によるコーティングは、これらの日常的攻撃に耐えるべきである。さらに、シャワーは多くの場合、スポンジまたは布できれいにされる。本発明によるコーティングは、この要請(機械的摩耗)に耐えるべきである。コーティングの機械抵抗を試験するために、様々な試験が本出願によれば可能である。
【実施例】
【0051】
実施例1:本発明によるビスマスドープトSiO2コーティングの調製
0.058gの硝酸ビスマス、1.00gのアセチルアセトンおよび18mLの2-エトキシ-エタノールを30分間攪拌する。使用される硝酸ビスマスはここでは、硝酸ビスマス五水和物である。4.22gのテトラエチルオルトシリケートを添加し、1.00mLの水中の0.03gの氷酢酸の希薄溶液を適切に滴加する。得られた溶液を室温で18時間攪拌状態に保って加水分解および縮合反応させてゾル-ゲルを形成する。おおよそ2mLの溶液を次に、きれいな無色透明ガラス上にスピンコーティングによって堆積させた。ガラスを次に、160℃で12分間乾燥させ、次に650℃で3.5分間空気下に熱的に焼きなました。
【0052】
実施例2:本発明によるセリウムドープトSiO2コーティングの調製
0.10gの酢酸セリウム(III)水和物を、11.50gのエタノールと15.00gのイソプロパノールとの混合物中で30分間攪拌する。6.25gのテトラエチルオルトシリケートを添加した。0.02gの硝酸1M、0.06gの氷酢酸および1.08gの水の溶液を前記溶液へ適切に滴加した。得られた溶液を18時間攪拌下のままにした。おおよそ2mLの溶液を次に、きれいな無色透明ガラス上にスピンコーティングによって堆積させた。ガラスを次に、160℃で12分間乾燥させ、次に650℃で3分30秒間空気下に熱的に焼きなました。
【0053】
実施例3:本発明によるビスマスドープトSiO2コーティングの調製およびPVD low-e被覆ガラス基板への塗布
24.3gの硝酸ビスマス五水和物および100.0gのアセチルアセトンを、1800.0gの2-エトキシ-エタノール中で30分間攪拌する。422.0gのテトラエチルオルトシリケートを添加する。3.0gの氷酢酸および108.0gの水の溶液を前記溶液へ適切に滴加する。得られた溶液を室温で18時間攪拌下のままにする。おおよそ2mLの溶液を次に、PVD low-e被覆ガラス基板(AGCから名称Planibel ASで商業的に入手可能な)上に1分当たり1000回転でのスピンコーティングによって堆積させる。基板を次に、160℃で12分間乾燥させ、次に670℃で4分間空気下に熱的に焼きなます。
【0054】
実施例4:本発明によるビスマスドープトSiO2コーティングの調製およびPVD low-e被覆ガラス基板への塗布
0.81gの硝酸ビスマス五水和物および0.33gのアセチルアセトンを、200.27gの2-エトキシ-エタノール中で30分間攪拌する。46.87gのテトラエチルオルトシリケートを添加する。0.33gの氷酢酸および12.0gの水の溶液を前記溶液へ適切に滴加する。得られた溶液を室温で48時間攪拌下のままにする。おおよそ2mLの溶液を次に、PVD low-e被覆ガラス基板(AGCから名称Smart 51で商業的に入手可能な)上に1分当たり2000回転でのスピンコーティングによって堆積させる。基板を次に、160℃で12分間乾燥させ、次に650℃で5分30秒間空気下に熱的に焼きなます。
【0055】
実施例5:本発明によるセリウムドープトSiO2コーティングの調製およびPVD low-e被覆ガラス基板への塗布
0.074gの硝酸セリウム(III)六水和物および0.066gのアセト酢酸エチルを、121.66gの2-エトキシ-エタノール中で30分間攪拌する。20.83gのテトラエチルオルトシリケートを添加する。0.018gの硝酸65重量%および7.20gの水の溶液を前記溶液へ適切に滴加する。得られた溶液を室温で48時間攪拌下のままにする。おおよそ2mLの溶液を次に、PVD low-e被覆ガラス基板(AGCから名称Smart 51で商業的に入手可能な)上に1分当たり2000回転でのスピンコーティングによって堆積させる。基板を次に、160℃で12分間乾燥させ、次に650℃で5分30秒間空気下に熱的に焼きなます。
【0056】
比較例1:SiO2コーティングの調製
46.8gのテトラエチルオルトシリケートを、30分の間に200mLの2-エトキシ-エタノール中へ攪拌して入れた。20mLの水中の0.33gの氷酢酸を適切に滴加する。得られた溶液を18時間攪拌下のままにした。おおよそ2mLの溶液を次に、きれいな無色透明ガラス上にスピンコーティングによって堆積させた。ガラスを次に、160℃で12分間乾燥させ、650℃で3分30秒間空気下に熱的に焼きなました。
【0057】
比較例2:PVD low-e被覆ガラス基板上でのSiO2コーティングの調製
比較例1において調製された溶液を、PVD low-e被覆ガラス基板(AGCから名称Planibel ASで商業的に入手可能な)上に1分当たり1000回転でのスピンコーティングによって堆積させる。基板を次に、160℃で12分間乾燥させ、次に670℃で4分間空気下に熱的に焼きなます。
【0058】
比較例3:SiO2コーティングの調製
46.3gのテトラエチルオルトシリケートを、30分の間に200.2mLの2-エトキシ-エタノール中へ攪拌して入れる。12mLの水中の0.33gの氷酢酸を適切に滴加する。得られた溶液を室温で24時間攪拌下のままにする。おおよそ2mLの溶液を次に、PVD low-e被覆ガラス基板(AGCから名称Smart 51で商業的に入手可能な)上に1分当たり2000回転でのスピンコーティングによって堆積させる。ガラスを次に、160℃で12分間乾燥させ、次に650℃で5分30秒間空気下に熱的に焼きなます。
【0059】
被験コーティングの機械抵抗に関する性能
実施例1および2においてならびに比較例1において調製されたコーティングを、Elcometer 1720摩耗および洗浄試験装置(Elcometer 1720 Abrasion and Washability Tester)で行われる摩耗試験にかけた。この試験は、ASTM D2486標準に記載されているように被覆ガラスをナイロン毛ブラシで500、1000、2000または3000サイクルの間ゴシゴシと洗うことを含む。表面を、照明下での反射で検査する。摩耗エリア(abraded area)の外観が区別できる場合には、試料は、良好な機械抵抗を持たないことを意味する「ko」と考えられる。摩耗エリアと非摩耗エリアとの間の相違がない場合には、コーティングは、本発明による良好な機械抵抗を有することを意味する「ok」と考えられる。試験結果を表1にまとめる:
【0060】
【0061】
被験コーティングの耐化学薬品性に関する性能
酸に対する耐性:実施例1および2に従ってならびに比較例1において調製されたコーティングを、HCl 0.1モル/Lの水溶液中室温での化学的浸漬にかけた。試料は、対照として用いられる非浸漬エリアを有するために、溶液に完全に浸漬されるわけではない。浸漬後に、試料を脱イオン水でリンスし、乾燥のために室内雰囲気でそのままにしておく。
【0062】
アルカリに対する耐性:実施例1および2に従ってならびに比較例1において調製されたコーティングを、NaOH 0.1モル/Lの水溶液中室温での化学的浸漬にかけた。試料は、対照として用いられる非浸漬エリアを有するために、溶液に完全に浸漬されるわけではない。浸漬後に、試料を脱イオン水でリンスし、乾燥のために室内雰囲気でそのままにしておく。
【0063】
両方の試験(酸に対する耐性およびアルカリに対する耐性)について、評価は、変色/定時層間剥離/欠陥が試料上に観察できるかどうかを判定するために、人工空下での試料の観察によって行う。浸漬エリアの外観が非浸漬エリアと区別できる場合には、試料は、検討媒体(酸性またはアルカリ性)に対する良好な耐性を持たないことを意味する、「ko」と考えられる。浸漬エリアと非浸漬エリアとの間に相違がない場合には、コーティングは、検討媒体(酸性またはアルカリ性)に対して良好な耐性を有することを意味する、「ok」と考えられる。
【0064】
【0065】
被験コーティングの耐湿性に関する性能
実施例1および2に従ってならびに比較例3において調製された試料を、標準EN1096-2に従って40℃および95%相対湿度での密閉高湿度チャンバー中で高湿度環境に曝した。
【0066】
【0067】
PVD low-e被覆ガラス基板上の被験コーティングの機械抵抗に関する性能
実施例3、4および5ならびに比較例2および3において調製されたコーティングを、標準EN1096に従って自動湿式摩擦試験にかけた:綿布で覆われた平らな円形テフロン(登録商標)ヘッドが、一定の、内臓荷重でコーティング上を引きずられる。被覆表面上での綿の摩耗は、ある一定数のサイクル後にコーティングを傷つける(除去する)であろう。綿は、試験の全継続時間の間ずっと脱イオン水で湿った状態に保たれるべきである。スピードは、60~90フル振動(前後に)/分の間で調整されるべきである。評価は、変色/引っ掻き傷を試料上に見ることができるかどうかを判定するために、人工空下での試料の観察によって行う。摩耗エリアの外観が有意に区別できる場合には、試料は、良好な機械抵抗を持たないことを意味する「ko」と考えられる。コーティングの層間剥離なしにおよびコーティング上の引っ掻き傷なしに着色にわずかな相違がある場合には、コーティングは、改善された機械抵抗を有することを意味する、「許容し得る」と考えられる。摩耗エリアと非摩耗エリアとの間に相違がない場合には、コーティングは、本発明による良好な機械抵抗を有することを意味する、「ok」と考えられる。試験結果を表2および3にまとめる。
【0068】
【0069】
【0070】
表2および3の結果は、セリウムまたはビスマスでドープされたコーティングで得られる性能改善を示す。表3は、この改善が、より低い含有量で使用された場合でさえもビスマスでより顕著であることをさらに示す。