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特許7011601ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー及びそれらを含むポリマー組成物の製造方法、並びにそれらを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー及びそれらを含むポリマー組成物の製造方法、並びにそれらを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
C08G65/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018556390
(86)(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017060128
(87)【国際公開番号】W WO2017186881
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】62/329,462
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16187794.9
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ, クレイ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04794155(US,A)
【文献】特表2016-511770(JP,A)
【文献】特表2013-502476(JP,A)
【文献】特開2012-211290(JP,A)
【文献】特開2012-211291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0109831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-67/04
C08G 75/00-75/32
C08L 81/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーを形成する方法であって、前記方法が、
反応混合物中の第1モノマーと第2モノマーとの反応を備え、
前記第1モノマーは、以下の式:
HO-M-OH (M1)
により表されるジフェノールであり、並びに
前記第2モノマーは、以下の式:
-O-M-O-A (M2)
により表されるスルホンを含むジアリールエーテルであり、
[式中、
は、以下の式により表され:
(ここで、各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、各iは、独立して選択される0~4の整数であり、そしてZは、結合、-SO-又は-C(CH-である);
-Mは、以下の式により表され:
(ここで、各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択される)、
とAは、以下の式によりそれぞれ表され:
(ここで、各R及びRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、及び
-各jは、独立して選択される0~4の整数である)]、
ここで、前記反応混合物は、アルカリ金属炭酸塩を含む塩基を含み、前記塩基の総濃度は、前記反応混合物中のモノマー由来OH基の総モル数に対して、0.0001~0.04である、方法。
【請求項2】
前記塩基の総濃度が、前記反応混合物中のモノマー由来の-OH基の総モル数に対して、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.003、少なくとも0.004、又は少なくとも0.005であり、前記塩基の総濃度は、前記反応混合物中のモノマー由来のOH基の総モル数に対して、0.03以下又は0.025以下又は0.02以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物が、300ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、又は1ppm以下のハロゲン濃度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム及び炭酸リチウムからなる群から選択されるアルカリ金属炭酸塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物が、200℃~450℃の反応温度で前記反応中に維持される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、1時間~72時間の全反応時間中、反応温度で維持される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、少なくとも0.1ミリバールから0.9バール以下の圧力、又は1.01325バールから50バール以下若しくは20バール以下の圧力で維持される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1モノマーが、前記式(M1)により表され、前記第2モノマーが、前記式(M2)により表され、及び前記反応が、以下のスキーム:
[ここで、nは、1以上の任意の整数である]
により表される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1モノマーが、前記式(M1)により表され、前記第2モノマーが、前記式(M2)により表され、及び前記PAESポリマーが、-O-M-O-M-により表される繰り返し単位(RPAES)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1モノマーが、前記式(M1)により表されるジフェノールであり、前記第2モノマーが、前記ジアリールエーテルであり、前記反応混合物中の前記ジフェノールの相対モル比が、前記反応の少なくとも一部の間に、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9又は少なくとも0.95、かつ1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.25以下、1.2以下、1.15以下、1.1以下、又は1.05以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ポリ(アリールエーテルスルホン)「PAES」)ポリマーであって、以下の式:-O-M-O-M -により表される繰り返し単位(RPAES)を含み、ここで、
は、以下の式により表され:
[式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-各々iは、独立して選択される0~4の整数であり、及び
-Zは、結合、-SO-又は-C(CH-である];
-Mは、以下の式により表され:
[式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され;及び
-各は、独立して選択される0~4の整数である]
こで、前記PAESポリマーが、前記PAESポリマー組成物の総量部に対して、1ppm以下のハロゲン濃度を含む、ポリ(アリールエーテルスルホン)「PAES」)ポリマー。
【請求項12】
請求項11に記載のポリマーであって、式中、
が、以下の式:
[式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-各々iは、独立して選択される0~4の整数であり、及び
-Zは、結合、-SO-又は-C(CH-である]
により表され、Mが、以下の式:
[式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され;及び
-各は、独立して選択される0~4の整数である]
により表される、ポリマー。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のポリマーを含む電子機器の構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年4月29日出願の米国仮特許出願第62/329,462号及び2016年9月8日出願の欧州特許出願第16187794.9号に基づく優先権を主張し、これらの特許出願の全内容は、全ての目的に関して、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーの製造方法に関する。本発明は、さらに、PAESポリマーと、PAESポリマーを含む組成物に関する。尚さらに、本発明は、ポリマー組成物を組み込んだ物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー合成は、多数のステップを含むプロセスである。重合反応の実施に加えて、重合中に形成される副産物をポリマーから除去する必要があり(濾過により副産物を分離する場合もある)、合成したポリマーを反応混合物から分離する必要がある。さらに、必要とされる濾過の量は、意図する用途設定により、ポリマー組成物の純度要件と共に著しく増大する。例えば、電子機器等の用途設定においては、ハロゲン含有物を殆ど含まないポリマーが、非常に望まれる。それに応じて、有効な濾過(例えば、多重濾過ステップ)が、ポリマーのハロゲン含有物を許容できるレベルまで減らすために必要であり、ポリマー合成プロセスの効率が、低減する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーの製造方法、及びPAESポリマーを含むポリマー組成物の製造方法を本明細書で説明する。本方法は、従来のPAESポリマーの合成方法よりも有意な加工上の利点を有する。本明細書に記載する方法は、無塩でかつハロゲンフリーのプロセスであり、いくつかの実施形態においては、さらに、無溶媒プロセスであり得る。加えて、上述の方法は、ハロゲンフリーのプロセスであるので、得られるポリマー組成物が、ハロゲンフリーであることも可能である。ハロゲンフリーのポリマー組成物は、これに限定しないが電子用途を含む様々な用途設定において、有意な利点を有することができる。本明細書では、ハロゲンは、F、Cl、Br、I及びAtを指す。最終的には、本方法は、従来の方法よりも少ないステップを含み、そのことにより、コスト効果が高くなる。
【0005】
従来の方法においては、PAESポリマーは、ジフェノールモノマー(芳香環に結合したヒドロキシル基を2個含むモノマー)、ジハライドモノマー、溶媒、及びヒドロキシルの含有量に対して化学量論量又はモル過剰量の無機塩基を含む反応混合物中で合成され、ジフェノールとジハライドのうちの少なくともどちらかが、スルホン基(例えば、スルホンジフェノール又はジハライド)を含む。反応中に、ジフェノールは、無機塩基により活性化されて、ジフェノキシドを形成した後、ジフェノキシドはジハライドと反応して、PAESポリマーと、反応混合物中で一般的に完全に溶解しない副産物(塩)とを形成する。重合反応のいかなるステップにおいても、PAESポリマーは、ハライド、ヒドロキシル又はフェノキシド鎖末端を有する分子量の異なるモノマー、オリゴマー及びポリマーの混合物を指す。重合反応中、1モル又は無機塩基は、1モルのヒドロキシルを活性化するのに費やされるが、それは、多量の塩の生成を意味する。例えば、無機塩基が、ナトリウム塩又はカリウム塩(水酸化ナトリウム又は炭酸カリウム等)を含んでいるならば、誘導される反応によって、ナトリウム若しくはカリウムジフェノキシド塩、又はフェノキシド塩を含有するオリゴマー/ポリマーを生成でき、それらは、ハライドを含有するジハライドモノマー若しくはオリゴマー/ポリマーとさらに反応して、PAESポリマーと、副産物としてのナトリウムハライド(例えば、塩化ナトリウム)若しくはカリウムハライド(例えば、塩化カリウム)を最終的に生成できる。多量の塩が、好ましくないことに、反応混合物の粘度を増大させるので、さらに、脱揮(例えば、溶媒の留去)又は凝固によりPAESポリマーを回収する前に、一般的に濾過により、溶液中のPAESポリマーから塩を分離する必要がある。PAESポリマーは、ジハライドモノマーから合成されるので、PAESポリマーは、最終的に鎖末端に一部のハロゲン原子を含む。
【0006】
本発明は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーを形成する方法に関し、本方法は、
以下の(A)又は(B)のどちらかの、反応混合物中の第1モノマーと第2モノマーとの反応を備え、
(A)第1モノマーは、以下の式:
HO-M-OH (M1)
により表されるジフェノールであり、並びに
第2モノマーは、以下の式:
-O-M-O-A (M2)
により表されるスルホンを含むジアリールエーテルであり、又は
(B)第1モノマーと第2モノマーは、同一でも異なってよく、以下の式:
-O-M-O-M-OH (M3)、
-O-A-SO-M-OH (M4)、及び
HO-M-O-M-O-M-OH (M5)
からなる群から選択され、
[式中、
が、以下の式により表され:
(ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、各々iは、独立して選択される0~4の整数であり、そしてZは、結合、-SO-又は-C(CH-であり);
-Mは、以下の式により表され:
(ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択される)、
とAは、以下の式によりそれぞれ表され:
(ここで、各R及びRは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、並びに
-各jは、独立して選択される0~4の整数である)]、
ここで、反応混合物は、塩基を含み、塩基の総濃度は、反応混合物中のモノマー由来OH基の総モル数に対して、約0.0001~約0.2である。
【0007】
本明細書に記載する重合方法は、触媒量の塩基、場合により溶媒を含む反応混合物中での特別に選択したモノマーを反応させることを含み、その反応は、ハライド塩を生成しない。いくつかの実施形態においては、モノマーは、ハロゲン原子を含まず、したがってハロゲン含有塩もハロゲン末端PAESポリマーも反応中に形成されない。同様に、ハライド塩が反応中に生成されないので、またPAESポリマーが、いかなるハロゲン原子も含有しないので、いくつかの実施形態においては、得られるPAESポリマー(及びその後に形成されるポリマー組成物)のハロゲン含有量は、著しく低いか、検知さえできないほどであり得る。さらに、塩基は、消費されないので、塩基は、モノマー種に対して過剰に存在しない。そのような方法は、PAESポリマーの回収前に、不溶な塩を濾過により除去する必要がないので、少なくとも、この方法は、従来の方法よりも有意な加工上の利点を有する。さらに、いくつかの実施形態においては、モノマーは、ハロゲンフリーである(いかなるハロゲン原子も伴わない)。
【0008】
いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、ハロゲンフリーである。本明細書では、ハロゲンフリーのポリマー組成物は、ポリマー組成物の総量部に対して約300部/ミリオン(「ppm」)以下のハロゲン含有量を有する。本明細書では、ppmは、特に明記されない限り、黙示的に重量ppmを指す。PAESポリマーは、ハロゲン無含有の反応混合物から形成されるので、形成したPAESポリマー中のハロゲン含有物の唯一の供給源は、微量の不純物からである。したがって、PAESポリマーとハロゲン無含有の成分とから形成されるポリマー組成物にとって、ハロゲン含有量は、反応混合物からと、ポリマー組成物中の他の成分からとの微量の不純物に限定される。いくつかの実施形態においては、ポリマー中のハロゲン濃度は、約200ppm以下、約100ppm以下、約90ppm以下、約80ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下又は約1ppm以下である。いくつかの実施形態においては、ハロゲンフリーポリマー組成物は、検知できないくらいに低いハロゲン含有量を有することができる。いくつかの実施形態においては、対象のハロゲン含有量は、塩素含有量に限定できる。ハロゲン含有量は、PAESポリマー(又はそれらから作製したポリマー組成物)の試料を酸素流下で燃やすことにより、測定できる。燃焼生成物は、濃縮硫黄スクラバーを通過した後、滴定セルに運ばれることができ、滴定セルで、燃焼プロセスからのHX(ここで、Xはハロゲン原子である)は、75%体積/体積の酢酸溶液中に吸収される。次に、HX/酢酸溶液を電量的に発生した銀イオンで滴定し、積分電流と試料重量から試料中のハロゲンのパーセントを算出する。このようなプロセス法は、ThermoGLAS1200Total Organic Halogen Analyzerを用いて、実施できる。対象のハロゲン含有量が塩素含有量に限定される場合の実施形態においては、PAESポリマー又は対応するポリマー組成物中の塩素の量は、ASTM25808-09a又はD7457-12に従って、求めることができる。当業者であれば、上述のハロゲン濃度はまた、反応中及び反応混合物のハライド塩濃度を低減する任意の濾過処理又は分離処理(例えば、ハライド塩の濾過)の前の、反応混合物のハロゲン濃度に適用することを理解するだろう。
【0009】
ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーの合成
本明細書に記載のPAESポリマーを合成又は形成する方法は、塩基を含む反応混合物中の第1モノマーと第2モノマーとを反応させることを伴う。塩基は、無機塩基でも有機塩基でもよい。いくつかの実施形態においては、反応混合物は、無溶媒であり得る。これに代わる実施形態においては、反応混合物は、溶媒を含むことができる。反応パラメーターの適切な選択により、PAESポリマーの平均分子量を著しく増大することが、驚くべきことに見出された。
【0010】
反応混合物
反応混合物には、第1モノマー、第2モノマー及び塩基が含まれる。本明細書では、モノマーは、同一又は異なる別の分子との反応によりPAESポリマーに組み込まれる分子を指す。ハロゲンフリーポリマー組成物にとっては、第1モノマー及び第2モノマーが、ハロゲンフリー(例えば、ハロゲン原子を無含有)であるのが好ましい。他の実施形態においては、第1モノマー又は第2モノマーは、1種又は複数種のハロゲン原子を含有でき、どのハロゲン原子も重合中にモノマーから解離しない(例えば、モノマーの重合中にハライド塩を形成しない)。
【0011】
第1モノマーと第2モノマーは、ジフェノール、スルホンを含有するジアリールエーテル及びスルホンを含有するフェノールアリールエーテルからなる群から独立して選択できる。ジフェノールは、式:HO-M-OHにより表される(ここで、-M-は、以下の式により表される):
ここで、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、各々iは、独立して選択される0~4の整数であり、及びZは、結合、-SO2-又は-C(CH3)2-である。いくつかの実施形態においては、-M-は、以下の式により表すことができる。
【0012】
いくつかの実施形態においては、ここで-M-は、式1又は2により表され、各々iは、0である。所望のジフェノールの例としては、4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA、及びビスフェノールSが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態においては、ジフェノールは、4,4’-ビフェノール又はビスフェノールAから選択される。
【0013】
スルホンを含有するジアリールエーテルは、式A-O-M-O-Aにより表され、ここで、-M-は、以下の式により表される:
とAは、以下の式によりそれぞれ表される:
[式中、各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、各R及びRは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、並びに各jは、独立して選択される0~4の整数である]。いくつかのそのような実施形態においては、各jは0である。
【0014】
いくつかの実施形態においては、Mは、以下の式により表される、
とAは、以下の式によりそれぞれ表される:
【0015】
いくつかのそのような実施形態においては、各jは0である。スルホンを含有する所望のジアリールエーテルの例としては、4,4’-ジフェノキシジフェニルスルホン(「DPDPS」)、4,4’-ジ(4-メチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ジ(3-メチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ジ(2-メチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ジ(4-フルオロフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ジ(4-クロロフェノキシ)ジフェニルスルホンが挙げられるが、これらに限定されない。DPDPSで優れた結果が得られた。
【0016】
スルホンを含有するフェノールアリールエーテルは、以下の式のうちの少なくとも1つの式により表される:
-O-M-O-M-OH(9)、
-O-A-SO-M-OH(10)及び
HO-M-O-M-O-M-OH(11)。
【0017】
いくつかの実施形態においては、以下に記載するように、第1モノマーは、ジフェノールであり、第2モノマーは、スルホンを含有するジアリールエーテルである。このような実施形態においては、反応混合物中のジフェノールの相対モル濃度(ジフェノールのモル数/スルホンを含有するジアリールエーテルのモル数)は、反応中の少なくとも一部で、少なくとも約0.5、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、少なくとも約0.85、少なくとも約0.9又は少なくとも約0.95である。追加的に又はその代わりに、ジフェノールの相対モル濃度は、反応中の少なくとも一部で、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.25以下、約1.2以下、約1.15以下、約1.1以下、又は約1.05以下である。いくつかの実施形態においては、反応混合物中のジフェノールの濃度は、反応中の少なくとも一部で、両方とも反応混合物の総重量に対して、約20重量%~約50重量%であってよく、スルホンを含有するジアリールエーテルの濃度は、約20重量%~約80重量%であってよい。本明細書では、「反応中の少なくとも一部で」は、反応時間中の時間内の時点を指す。
【0018】
いくつかの実施形態においては、以下に記載するように、モノマーと第2モノマーは、同一であり、式(9)、(10)及び(11)から選択される(例えば第一モノマーと第2モノマーは、同じ式(9)第1により表され、(10)又は(11)は、同じ選択の結合及び置換を有する)。このような実施形態においては、反応混合物中の第1モノマーと第2モノマーを合わせた濃度は、反応混合物の総重量に対して、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%であってよい。追加的に又はその代わりに、反応混合物中の第1モノマーと第2モノマーを合わせた濃度は、反応混合物の総重量に対して、約99.9重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約80重量%以下、約70重量%以下、約60重量%以下、又は約50重量%以下であってよい。
【0019】
上述のように、第1モノマーと第2モノマーは、塩基を含む反応混合物中で反応する。本明細書で対象の塩基は、少なくとも約7のpKaを有する。pKaは、酸解離定数Kaの負の対数(底10)であり、当技術分野において、酸及び塩基の強度の尺度として広く使われている。いくつかの実施形態においては、塩基は、少なくとも約8、少なくとも約9又は少なくとも約10のpKaを有する。
【0020】
塩基には、無機塩基、有機塩基又はそれらの組み合わせが含まれる。塩基に無機塩基が含まれる実施形態においては、無機塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属フェノキシド若しくはジフェノキシド、又はアルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム及びそれらのうちの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される。アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及びそれらの混合物から選択されるのが好ましく、アルカリ金属炭酸塩が、炭酸カリウムであるのがより好ましい。アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム及びそれらのうちの2種以上の任意の組み合わせからなる群から選択される。金属アルコキシドが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びそれらの混合物から選択されるのが好ましく、金属水酸化物が、水酸化カリウムであるのがより好ましい。アルカリ金属フェノキシドは、以下の式により表される:
[式中、各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、kは、0~5の整数であり、及びMは、ナトリウム、カリウム、セシウム及びリチウムからなる群から選択されるアルカリ金属である]。好ましい実施形態においては、kは、0であり、及びMは、ナトリウム又はカリウムである。kが0であり、かつMがカリウムであるのが最も好ましい。
【0021】
実施形態においては、塩基には有機塩基が含まれる。本明細書では、有機塩基は、7よりも大きいpKaを有し、かつC、H、N、O、P、S、F、Cl、Br、Iの原子のみを含有する分子を指す。いくつかの実施形態においては、有機塩基は、メチルアミン、ジメチルアミン、ジメチルジエチルアミン、ジメチル-sec-ブチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、1-メチル-2-n-ブチル-Δ2-ピロリン、1-エチル-2-メチル-Δ2-ピロリン、1-n-ブチル-2-メチル-Δ2-ピロリン、1,2-ジメチル-Δ2-テトラヒドロピリジン、1-n-プロピルピペリジン、トリエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジメチル-イソプロピルアミン、ジメチル-t-ブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、1-n-プロピルピペリジン、1,2-ジメチルピロリジン、1-メチル-2-nブチルピロリジン、1-エチル-2-メチルピロリジン、1-n-ブチル-2-メチルピロリジン、1-エチル-2-メチルピロリジン、1,2-ジメチルピペリジン、1-エチル-2-メチル-Δ2-テトラヒドロピリジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(「DBN」)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(「DBU」)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,1,3,3テトラメチルグアニジン、リシン、アルギニン、及びグアニジンからなる群から選択できる。有機塩基が、トリシオプロピルアミン(trisiopropylamine)、トリエチルアミン、DBN、DBU、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,1,3,3テトラメチルグアニジン、グアニジン、及びそれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。有機塩基が、DBU又はトリエチルアミンであるのが好ましい。
【0022】
上述のように、従来のPAESポリマー合成法においては、塩基は、重合中に消費されるので、それに応じて、過剰の塩基を使用する。本発明の方法においては、塩基は、消費されないので、塩基は、反応混合物中に触媒量で(例えば化学量論量よりも著しく少ない量で)存在する。反応混合物中の塩基の総濃度は、少なくとも約0.0001、少なくとも約0.0005、少なくとも約0.001、少なくとも約0.002、少なくとも約0.003、少なくとも約0.004、又は少なくとも約0.005とすることができ、かつ反応混合物中のモノマー由来の-OH基の総モル数に対して、約0.2以下、約0.1以下、約0.05以下、約0.04以下、約0.03以下又は約0.025以下又は約0.02以下の濃度とすることができる。本明細書では、反応混合物中の「モノマー由来の-OH」基は、反応混合物中において-OH基含有量への各々モノマーの寄与の合計を指す。
【0023】
以下の式から塩基の総濃度を求める:
[式中、Bは、塩基jの濃度であり、N は、反応混合物中の塩基jの総モル数であり、S は、塩基jの分子中の塩基点の数であり、N は、反応混合物中のモノマーiのモル数であり、NOH は、モノマーi中の-OH基の数であり、iは、反応混合物中のモノマー型の数を超え、そしてjは、反応混合物中の塩基型の数を超える]。例えば、反応混合物が、1モルの第1モノマーと、1モルの第2モノマーと、2個の塩基点を有する単一塩基(例えばアルカリ金属炭酸塩)とからなるならば、及び第1モノマーが、OH基を2個だけ有し(例えば未置換のジフェノール)、かつ第2モノマーが、-OHを伴わない(例えば、スルホンを含有する未置換のジアリールエーテル)ならば、j=1、i=2、S =2、N =1、NOH =2、N =1、NOH =0、N =1である。さらなる例としては、反応混合物が、前述の第1モノマーと第2モノマーとに加えて、式(9)により表される未置換の第3モノマーからなるならば、上述の範囲は、(2×塩基のモル数)/(2×第1モノマーのモル数+0×第2モノマーのモル数+1×第3モノマーのモル数)と等しくなるだろう。塩基における塩基点の数は、HClでの滴定により求められる。上述の無機塩基に関して、アルカリ金属炭酸塩は、2つの塩基点を有し、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属フェノキシドは、1つの塩基点を有し、アルカリ金属ジフェノキシドは、2つの塩基点を有する。
【0024】
いくつかの実施形態においては、反応混合物は、場合により、溶媒を含むことが可能である。本明細書では、溶媒は、第1モノマー、第2モノマー及び塩基のうちの少なくともひとつを溶解するのが望ましく、またモノマーや塩基と異なる液体を指す。本明細書における対象の溶媒は、少なくとも約200℃の沸点を有する。溶媒は、好ましくは少なくとも約250℃、より好ましくは少なくとも約300℃の沸点を有する。本明細書では、沸点は、大気圧での沸点を指す。いくつかの実施形態においては、溶媒は、N-メチルピロリドン(「NMP」)、スルホラン、ジフェニルスルホン及びそれらの2種以上の任意の組み合わせから選択できる。溶媒濃度は、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、又は少なくとも約20重量%であることが可能である。追加的に又はその代わりに、溶媒濃度は、約50重量%以下、約60重量%以下、又は約70重量%以下であることが可能である。反応混合物が、溶媒を殆ど含まないのが好ましい。本明細書では、「殆ど含まない」は、反応混合物の総重量に対して、約2重量%未満の溶媒濃度を有する反応混合物を指す。いくつかの実施形態においては、反応混合物は、約1重量%未満又は約0.5重量%未満の溶媒濃度を有することが可能である。
【0025】
重合反応
重合反応には、塩基の存在下で第1モノマーと第2モノマーとを反応させてPAESポリマーを形成することが含まれる。反応中、反応混合物は、選択の反応時間に対して選択した反応温度で維持される。一般的に、反応は、圧力の範囲を超えて実施できる。塩基濃度のみを含む反応パラメーターの適切な選択、又は反応時間及び反応温度の適切な選択と兼ね合わせての反応パラメーターの適切な選択により、著しく改善された平均分子量を有するPAESポリマーをもたらすことができることを驚くべきことに判明した。
【0026】
反応は、反応混合物において実施される。反応は、以下のスキームからなる群から選択されるスキームにより、表すことができる:
[ここで、nは、1又は2以上の任意の整数であり、n’は、2以上の任意の整数である]。例えば、nは、1~1×10の任意の整数若しくはそれより大きい任意の整数であることが可能であり、n’は、2~1×10の任意の整数若しくはそれより大きい任意の整数であることが可能である。塩基は、反応中に再生されるので、触媒量で使用される。いくつかの実施形態においては、重合度は、反応中又は反応後の反応混合物の留出液から測定できる。例えば、スキーム(13)~(16)に関して、スキーム右側のアリールアルコールは、反応中又は反応後に揮発する。アリールアルコールをトラップで濃縮し、分析してアリールアルコールの量を求め、そしてそれに応じてPAESポリマーの重合度を求める。
【0027】
反応は、当技術分野で既知の任意の好適な方法により、実施できる。いくつかの実施形態においては、反応混合物は、それらに限定しないが撹拌反応容器又は溶融混合機を含む混合装置内で反応できる。溶融混合装置としては、望ましくは、混錬機、Banburyミキサー、及び押出機(例えば単軸押出機又は二軸押出機)が挙げられるが、これらに限定されない。混合装置の特定の型に関わらず、その装置は、一般的に、反応中に反応混合物を混合する混錬素子を備える。一般的に、反応混合物は、完全な反応混合物として混合装置に導入でき、又は反応混合物は、1つ又は複数の構成要素を混合装置内に別々に追加することにより、混合装置において形成できる。いくつかの実施形態においては、反応混合物は、溶融混合機におけるさらなる反応の前に、反応容器において反応できる。このような実施形態においては、反応容器中のPAESポリマーの平均分子量が、閾値に達する際に、反応は停止でき、PAESポリマーの所望の平均分子量に到達するまで、反応を続けるために、反応混合物を溶融混合装置に移すことができる。混合装置中のPAESポリマーの平均分子量は、混合装置の混錬素子を一定速度に維持するために必要とされるトルクを測定することにより、測定できる。
【0028】
混合装置の型にかかわらず、いくつかの実施形態においては、PAESポリマーの所望の平均分子量(M又はM)を達成する(例えば、撹拌機のトルクにより測定)場合に、塩基を中和しそしてそれに応じてさらなる重合を抑制する反応停止物を添加することにより、反応を停止できる。所望の反応停止物は、約7.5以下のpKaを有する酸である。いくつかの実施形態においては、酸は、約2~約7のpKaを有することができる。約7以下のpKaを有する有機又は無機の反応停止物の非限定の例として、リン酸水素ナトリウム(NaHPO)、クエン酸一ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、及びフタル酸水素ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、NaHPO等のpKaが7.5未満の無機成分が、好ましい。ハロゲンフリーのPAESポリマーが好ましくない実施形態においては、反応停止物は、塩化メチル又は4,4’ジクオロロ(dicholoro)ジフェニルスルホンであってよい。反応混合物に添加される反応停止物の量は、反応混合物中のポリマーの総重量を基準として、約0.005重量%~約5重量%、約0.1重量%~約2重量%、又は約0.2重量%~約1重量%であってよい。
【0029】
反応中、反応混合物は、選択した全反応時間に対して選択した反応温度で維持される。いくつかの実施形態においては、反応温度は約200℃~約450℃又は約250℃~約400℃である。いくつかの実施形態においては、全反応時間は、約1時間~約72時間であることが可能である。いくつかの実施形態においては、全反応時間は、離散的な反応時間の合計であってよく、反応混合物は、離散的な反応時間中に、上述の反応温度の範囲よりも低い温度まで放冷される。このような実施形態においては、離散的な反応時間の合計は、約1時間~約72時間である。いくつかの実施形態においては、反応は、大気圧(1.01325バール)で実施される。いくつかの実施形態においては、反応は、少なくとも約0.1ミリバール(「mbar」)から約0.9バール(亜大気圧)以下の圧力で実施される。いくつかの実施形態においては、反応は、ほぼ大気圧から約50バール以下又は約20バール以下の圧力で実施される。第1モノマーがジフェノールであり、かつ第2モノマーが、式(11)により表される、スルホンを含有するフェノールアリールエーテルである実施形態においては、反応は、0.1ミリバールから約0.9バール以下の圧力で実施されるのが好ましい。塩基濃度のみを含む反応パラメーターの適切な選択、又は反応時間の適切な選択と兼ね合わせての反応パラメーターの適切な選択により、著しく改善された平均分子量を有するPAESポリマーをもたらすことができることを驚くべきことに判明した。具体的には、塩基濃度を低くすること(上に提供された範囲内)により、M及びMの増大をもたらすことができることを驚くべきことに判明した。このような実施形態においては、全反応時間を増大(上に提供された範囲内)することにより、以下の実施例で実証するように、M及びMをさらに増大することもまた、驚くべきことに判明した。
【0030】
ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー及び組成物
本発明はまた、本明細書に記載される方法により得られるPAESポリマーにも関する。
【0031】
一実施形態によると、本発明は、以下の式のうち少なくとも1つにより表される繰り返し単位(RPAES)を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーに関する:
-O-M-O-M
-A-SO-M-O-、
[式中、
は、以下の式により表され:
(式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-各々iは、独立して選択される0~4の整数であり、及び
-Zは、結合、-SO-又は-C(CH-である)、
-Mは、以下の式により表され、
(式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択される)、及び
は、以下の式により表され:
(ここで、各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、並びに
-各jは、独立して選択される0~4の整数である)、
ここで、PAESポリマーは、PAESポリマー組成物の総量部に対して、約300ppm以下、例えば約200ppm以下、約100ppm以下、約90ppm以下、約80ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下又は約1ppm以下のハロゲン濃度、例えばCl濃度を含む。
【0032】
別の一実施形態によると、ポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーは、以下を含む:
-以下の式のうち少なくとも1つにより表される繰り返し単位(RPAES):
-O-M-O-M
-A-SO-M-O-、
[式中、
-Mは以下の式により表され:
(式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-各々iは、独立して選択される0~4の整数であり、及び
-Zは、結合、-SO-又は-C(CH-である)。
-Mは、以下の式により表され、
(式中、
-各Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン、及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され;及び
は、以下の式により表され:
(ここで、各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のスルホン酸塩、アルキルスルホン酸、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のホスホン酸塩、アルキルホスホン酸、アミン及び第4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、並びに
-各jは、独立して選択される0~4の整数である)]、
-式-O-R(式中、Rは、H、A、アルキル及び金属からなる群から選択される)の末端基を少なくとも97%(ポリマー中の末端基の総数を基準とした%)、例えば少なくとも98.5%又は少なくとも99.25%。
【0033】
本実施形態によれば、アルキルは、例えば、炭素数1~20の鎖状又は分岐の任意のアルキル、例えば-CH、-CH-CH、-CH(CH)-CHであってよい。
【0034】
いくつかの実施形態においては、PAESポリマーは、以下の式の以下の基から選択される式により表される繰り返し単位(RPAES)を少なくとも約50モル%有する任意のポリマーを指す:
-O-M-O-M-(17)、
-O-M-O-M-(18)、
-A-SO-M-O-、及び(19)
O-M-O-M-(20)。
【0035】
いくつかの実施形態においては、PAESポリマーは、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%、又は少なくとも約99.9モル%の繰り返し単位(RPAES)を含む。スキーム(13)~(16)の右手側のポリマーの繰り返し単位にそれぞれ対応して、式(17)~(20)の繰り返し単位(RPAES)を注目することにより、ポリマー、反応スキーム及びモノマーの選択の関係を理解できる。
【0036】
いくつかの実施形態においては、PAESポリマーは、少なくとも約10,000g/モルの重量平均分子量(「M」)を有することが可能である。いくつかのこのような実施形態においては、PAESポリマーはまた、約100,000g/モル以下、約90,000g/モル以下又は約70,000g/モル以下のMを有することも可能である。いくつかの実施形態においては、PAESポリマーは、少なくとも約5,000g/モルの数平均分子量(「M」)を有することが可能である。いくつかのこのような実施形態においては、PAESポリマーはまた、約40,000g/モル以下、約35,000g/モル以下又は約30,000g/モル以下のMを有することも可能である。M及びMは、それぞれ以下のように定められる:
[式中、Mは、ポリマー分子の分子量の離散的な値であり、Nは、分子量Mを有するポリマー分子の数である]。M及びMは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測量できる。
【0037】
PAESポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を用い、移動相として塩化メチレンを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0038】
PPSU(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、移動相としての塩化メチレン、以下のGPC構成を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、より正確に求めることができる。Agilent Technologiesからのガードカラム付き2×5μ混合Dカラム;流量:1.5mL/分;注入体積:0.2重量/体積%の試料溶液20μL。
【0039】
より正確には、PPSU(コ)ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、移動相として塩化メチレンを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。実験の部においては、以下の方法を使用した:Agilent Technologiesからの2本のガードカラム付き5μ混合Dカラムを分離のために使用した。254nmの紫外線検出器を用いて、クロマトグラムを得た。1.5ml/分の流量、及び移動相中20μLの0.2重量/体積%溶液の注入体積を選択した。較正は、12の狭分子量ポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を用いて実施した。重量平均分子量(Mw)を報告した。
【0040】
PAESポリマーは、任意の添加剤を含むポリマー組成物に組み込むことができる。一般的に、任意の添加剤は、当技術分野で既知の方法を用いて、ポリマー組成物に組み込むことができる。本明細書における対象のポリマー組成物は、PAESポリマーを含む。いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物中のPAESポリマーの濃度は、ポリマー組成物の総重量に対して、少なくとも約10重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約70重量%、又は少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約99重量%、又は少なくとも約99.9重量%である。
【0041】
ポリマー組成物は、場合により、添加剤又は補強充填剤を含むことができる。上述の通り、いくつかの実施形態においては、添加剤又は補強充填剤は、ハロゲンフリーであるように各々選択されるので、得られるポリマー組成物もまたハロゲンフリーである。所望の添加剤としては、染料若しくは顔料等の着色剤(例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、及び酸化亜鉛);紫外線安定剤;熱安定剤;有機ホスフィット及びホスホニット等の酸化防止剤;酸捕捉剤;加工助剤;造核剤;潤滑剤;難燃剤;防煙剤;帯電防止剤;遮断剤;又はカーボンブラック等の伝導剤が挙げられるがこれらに限定されない。添加剤は、ポリマー組成物の総重量を基準として、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%若しくは少なくとも約1重量%及び約30重量%未満、約25重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満若しくは約2重量%の濃度を有することができる。当業者ならば、ポリマー組成物が複数の任意の添加剤を含む場合、前述の濃度範囲は、各々の添加剤に又は全ての添加剤に全体(添加剤の総濃度)として適用できることを理解するだろう。
【0042】
いくつかの実施形態においては、PAESポリマー組成物は、繊維状充填剤及び特定の充填剤から選択される1種又は複数種の補強充填剤をさらに含む。繊維状補強充填剤は、平均長さが幅と厚さの両方よりもかなり大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると本明細書ではみなされる。そのような材料は、少なくとも5の、長さと最小の幅及び厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有するのが好ましい。補強繊維のアスペクト比が、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50であるのが好ましい。粒状充填剤は、多くとも5、好ましくは多くとも2のアスペクト比を有する。補強充填剤が、タルク、雲母、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ホウ素繊維、珪灰石、炭化ケイ素繊維、ホウ素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機充填剤から選択されるのが好ましい。
【0043】
補強充填剤の濃度は、ポリマー組成物の総重量に対して、少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%であってよい。いくつかのこのような実施形態においては、補強充填剤の濃度もまた、ポリマー組成物の総重量に対して、多くとも約60重量%、多くとも約50重量%、又は多くとも約40重量%であってよい。補強充填剤の濃度は、好ましくはポリマー組成物の約0.1重量%~約60重量%、より好ましくは5重量%~50量%、さらにより好ましくは10重量%~40重量%である。いくつかの実施形態によると、ポリマー組成物は繊維充填剤を無含有である。追加の又はこれに代わる実施形態においては、ポリマー組成物は、粒状充填剤を無含有であってよい。いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、補強充填剤を無含有である。
【0044】
いくつかの実施形態においては、1種又は複数種の成分が、重合前又は重合中に、反応混合物に添加される。追加の又はこれに代わる実施形態においては、1種又は複数種の成分が、重合後に樹脂に添加される。ポリマー組成物の成分が重合後に添加される実施形態においては、PAES樹脂は、当技術分野で既知の任意の好適な方法(例えば、押出)により、1種又は複数種の成分と組み合わせることができる。
【0045】
物品
既に考察したように、ハロゲンフリーポリマー組成物は、これらに限定しないが電子機器;衛生器具、配管及びマニホールド;並びに薄膜を含む多くの用途設定において望まれ得る。理論に制約されるものではないが、ハロゲン含有のポリマー組成物は、好ましくないことに、電子機器の金属成分に干渉すると思われている。具体的には、ポリマー中のハロゲン含有物が、ポリマー組成物と接触する金属構造(「ポリマーと金属の接合点」)を劣化させ得ると思われている。したがって、ハロゲンフリーポリマー組成物は、電子機器において非常に望まれている。
【0046】
PAESポリマー組成物が、電子機器に組み込まれる場合にポリマーと金属の接合点の部分を形成すると意図されている電子機器構成要素に形成されるのが望ましい。例えば、その機器は、携帯用電子機器であり得、携帯用電子機器の構成要素は、PAESポリマー組成物を含むことができる。本明細書では、「携帯用電子機器」は、便利よく移送され様々な場所で使用されることを意図した電子機器を意味する。携帯用電子機器としては、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティング機器(例えば、スマートウォッチ及びスマートグラス)、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤ、ポータブルラジオ、全地球測位システム受信機、及びポータブルゲームコンソールを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態においては、電子機器の構成要素の少なくとも一部は、電子機器の外部環境に曝露され得る(例えば、構成要素の少なくとも一部は、電子機器の外部の環境と接触している)。例えば、構成要素の少なくとも一部は、携帯用電子機器の外側ハウジングの少なくとも一部を形成し得る。一部のこのような実施形態において、構成要素は、携帯用電子機器の周囲の周りの完全若しくは部分「枠」、格子細工の形態での梁、又はそれらの組み合わせであり得る。別の例としては、構成要素の少なくとも一部は、入力機器の少なくとも一部を形成できる。いくつかのこのような実施形態においては、電子機器のボタンは、構成要素を含み得る。いくつかの実施形態においては、構成要素は、電子機器によって完全に囲まれている(例えば、構成要素は、携帯用電子機器の外部の観測点から目視できない)。
【0048】
いくつかの実施形態においては、構成要素は、取付け穴を有する取付け構成要素、又は他の締結機器(限定されないが、それ自体と、限定されないが回路板、マイクロホン、スピーカ、ディスプレイ、バッテリ、カバー、ハウジング、電気コネクタ若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ、又はスイッチボードを含む携帯用電子機器の別の構成要素との間のスナップフィットコネクタを含む)であり得る。いくつかの実施形態においては、携帯用電子機器は、入力機器の少なくとも一部であり得る。
【0049】
携帯用電子機器の構成要素は、当技術分野において周知の方法を使用して製作できる。例えば、携帯用電子機器構成要素は、限定されないが、射出成形、ブロー成形、又は押出成形を含む方法によって製作できる。いくつかの実施形態においては、PAESポリマー組成物は、これらに限定されるものではないが、射出成形を含む当技術分野で知られる方法により、ペレット(例えば、2つの端部の間にほぼ円筒状の本体を有する)に形成できる。いくつかのこのような実施形態において、携帯用電子機器構成要素は、ペレットから製作され得る。
【0050】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0051】
以下の実施例は、本発明の記載によるモノマー及びポリマーの合成及び特性を実証する。
【0052】
実施例1:4,4’-スルホニルビス(フェノキシベンゼン)の合成及び特性
以下の実施例は、4,4’-ジフェノキシジフェニルスルホン(「DPDPS」)とも称されるモノマー4,4’-スルホニルビス(フェノキシベンゼン)の合成及び特性を実証する。
【0053】
機械式撹拌機、窒素導入管、コンデンサー、留出液用のトラップ、温度計を備え、オイル浴を用いて加熱する、1リットル(「L」)のガラス反応フラスコ内で合成を実施した。純度98%のナトリウムフェノキシド(Alfa Aesar)136.12グラム(「g」)(1.173モル)と、99.5%より高い純度のクロロベンゼン(Sigma-Aldrich)157gと、スルホラン315gを反応フラスコ中に加えて、反応混合物を形成した。反応フラスコを窒素でパージして、反応全体にわたって、窒素の一定の流れを維持した。反応混合物を150rpmで撹拌し、160℃の温度を30分(「min」)維持し、反応混合物を脱水した。
【0054】
150gの4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを含有する溶液(0.522モル、純度99.15%、Solvayより供給)と、157gのクロロベンゼンを10分かけて反応混合物に加えた。反応混合物の温度は、その後に180℃まで上昇し、その温度で3時間(「h」)維持した。反応混合物を次に150℃まで冷却し、250gのNMPを加えた。脱イオン水中で反応混合物を凝固させ、60℃で脱イオン水で3回洗浄し、最後に、105℃、真空下で一晩乾燥させることにより、固体のDPDPSを回収した。次に、乾燥済みのDPDPSを温エタノール/トルエン50/50体積/体積を用いて再結晶させた。最終製品を105℃、真空下で一晩再び乾燥させた。ガスクロマトグラフィー質量分析法(「GC-MS」)により測定したDPDPSの純度は、99.9%よりも高く、示差走査熱量測定(「DCS」)により測定した溶融点は、144℃であった。
【0055】
実施例2:ポリ(フェニルスルホン)の合成
以下の実施例は、PPSUポリマーの合成及び特性を実証する。
【0056】
両方とも窒素導入管、機械式撹拌機、コンデンサー、トラップを備え、加熱マントルにより加熱する、ガラス製反応器(試料1~3)又はHastelloy C-276反応器(試料4及び4’)において、PSUポリマーの3つの試料を合成した。ガラス製反応器(試料1~3)における各々の反応に対して、1モルのDPDPS、1モルの4,4’-ビフェノール及び0.03~0.2モルの炭酸カリウムを100℃、真空下で乾燥させ、続いて、乾燥済みの成分をガラス製反応器に導入して、反応混合物を形成した。窒素流下、大気圧で反応混合物を加熱して、単一又は複数の反応時間に対する単一又は複数の反応温度(「反応パラメーター」)で反応混合物を維持した。多重反応パラメーターを用いて合成した試料に関して、反応混合物は、反応パラメーターの第1セットと第2セットの間に許容されなかった。試料4に関して、DPDPSモノマーと比べて5モル%過剰の4,4’-ビフェノールと、0.25モルパーセントだけの塩基との存在下での初期反応後、試料を室温まで冷却した後、異なるセットの昇温速度を用いて、同じ反応温度まで再加熱した。明確にするために、再加熱した試料4を試料4’と呼ぶ。加熱中、後からの分析のために、留出液を冷却した。次に、形成したポリマーを室温まで冷却し、押し潰して反応容器から取り出した。上述の従来の重合プロセスを用いて調製したポリ(フェニルエーテルスルホン)(「PPSU」)と同じ外観を有する、淡褐色透明のポリマーを得た。核磁気共鳴(「NMR」)分光法を用いて、生成物の構造をPPSUであると確認した。反応成分、量及び加熱特性を下の表1に示す。表1において、「RT」は、室温(約20℃)を指す。
【0057】
【0058】
表1は、試験した試料に関して、KCO濃度を増大して調製した試料が、M及びMが減少したことを実証する。例えば、試料1~3(それぞれ0.2モル、0.1モル及び0.03モルのKCO)に関して、Mは、それぞれ900、2150及び3910g/モルであり、Mは、それぞれ1,370、3,200及び7,320g/モルであった。しかし、試料4と試料1~3の比較は、試料4のM及びMは、最も低いKCO濃度(0.0025)を有するにもかかわらず、試料1~3のいずれよりも低い(M=3,240及びM=6,240g/モル)ことを示す。しかし、試料4’と試料1~3の比較は、試料4に対する前述の結果が不十分な反応時間によるものであったことを示唆する。具体的には、試料4’のM及びMは、それぞれ5,380及び13,970g/モルであった。試料4を再加熱して試料4’を得る間、再加熱から生じた留出液は、フェノールを含有し、重合反応が、試料4を得る第1重合反応において完全ではなかったことを示唆する。
【0059】
さらに、少なくとも試料1~3の合成中に生じた留出液は、ビフェノールを含有した。ビフェノールの存在は、化学量論的不均衡を示唆し、実現できたであろう最大分子量が制約されたかもしれない。加圧容器又は過剰のビフェノールの使用により、化学量論的均衡の回復に向かうことがあると思われている。
【0060】
実施例3:Hastelloy反応器におけるポリフェニレンスルホンの合成
以下の実施例は、PPSUポリマーの合成及び特性を実証する。
【0061】
窒素導入管、機械式撹拌機、コンデンサー、トラップを備え、加熱マントルにより加熱するHastelloy C-276反応器において、合成を実施した。合成の前に、反応物(DPDPS、4,4’-ビフェノール及びKCO)を100℃、真空下で乾燥させた。続いての重合反応中に、反応物を大気圧、窒素流下で加熱し、発生した留出液を濃縮し、後の分析のために、トラップに蓄積した。
【0062】
試料5に関しては、1モルのDPDPS、1モルの4,4’-ビフェノール及び0.005モルのKCOを反応器に加えて、重合反応を実施して、反応混合物を形成した。次に、反応混合物を330℃の温度まで加熱し、その温度で10.5時間維持した。330℃で加熱の2時間後、さらに0.1モルの4,4’-ビフェノール及び0.0025モルの炭酸カリウムを反応混合物に加えた。330℃での加熱の3.5時間後、別の0.1モルの4,4’-ビフェノール及び0.0025モルの炭酸カリウムを反応混合物に加えた。試料5’に関しては、試料5を窒素流下で再加熱し、330℃の温度で14時間維持した。試料5’の反応中、溶融したPAESポリマーの粘度は、非常に高くなったので、反応器の混錬素子は、反応混合物を撹拌できなかった。次に、ポリマーを室温まで冷却し、ポリマーを押し潰して、ポリマーを反応容器から取り出した。従来の重合プロセスを用いて調製したPPSUポリマーと同じ外観を有する、淡褐色透明のポリマーを得た。
【0063】
GPCにより測定した、試料5のM及びMは、それぞれM=3,360g/モル、M=7,080g/モルであり、試料5’のM及びMは、それぞれ、M=7,450、M=25,450g/モルであった。前述の結果より、重合反応は、試料5を再加熱中も継続し、試料5’を形成したことが実証された(この結果は、試料5’中の留出液により確認され、そのことにより、フェノールの存在がわかった)。試料5’の合成中に粘度が非常に高くなることが起こるので、これらに限定しないが混錬機又は押出機を含む溶融混合機を使用することにより、さらに高い平均分子量のPAESポリマーを合成することが可能となり得ると思われている。一般的に、混錬機及び押出機は、平均分子量が高いポリマーを処理できる。
【0064】
上の実施形態は、例示するためのものであり、限定を意図するものではない。さらに、本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、変更が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく形式上及び詳細に行われ得ることを認めるであろう。上の公文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明確な開示に反している主題はまったく援用されないように限定される。