(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】天然油ポリオールに基づくハイブリッドポリオール
(51)【国際特許分類】
C08G 63/12 20060101AFI20220119BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220119BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220119BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08G63/12
C08L67/00
C08G18/42
C08G18/00 F
(21)【出願番号】P 2018568684
(86)(22)【出願日】2017-06-27
(86)【国際出願番号】 US2017039562
(87)【国際公開番号】W WO2018005538
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-12
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】アーネ・マシュー・ターウィルガー
(72)【発明者】
【氏名】チダラト・トスコウォン
(72)【発明者】
【氏名】チャーリス・デニストン
(72)【発明者】
【氏名】ヌッタラ・ジャモナク
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202861(JP,A)
【文献】特開2014-118562(JP,A)
【文献】特開2002-105182(JP,A)
【文献】特開2013-151649(JP,A)
【文献】特表2013-545846(JP,A)
【文献】特表2015-506401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277338(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0218264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドポリオールであって、
少なくともひとつの
官能化天然
油と、
少なくともひとつの多官能カルボン酸および少なくともひとつの多価アルコールをポリエステル形態で含む、少なくともひとつのバイオ系ポリエステルポリオール
と、
の反応形態で
あり、
前記
官能化天然
油は、エチレン性不飽和天然油と、エチレン性不飽和ジカルボン酸との反応によって、2個のカルボキシ基がエチレン性不飽和脂肪酸側鎖の二重結合に導入され、
ここに、前記官能化天然油が、式(i):
【化1】
の構造を有し、R
1
およびR
2
は、独立して、9から21個の炭素原子を含むアルキル鎖である、ハイブリッドポリオール。
【請求項2】
前記ハイブリッドポリオールが
、ヒドロキシル官能性として、0.2から4.0の範囲の範囲にある
理論平均官能性を有する、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項3】
前記ハイブリッドポリオールが30から250
mg KOH/gの範囲にあるヒドロキシル数を有する、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和天然油が
、各々12から22個の炭素原子を含有する
脂肪酸側鎖を持つ1以上のトリグリセリドまたはそれらの混合物である、請求項1に記載
される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項5】
前記
官能性天然
油の調製に用いる天然油が、ヒマシ油、ココナッツ油、コーチン油、コーン油、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、ダイズ油、ヒマワリ油、トール油、獣脂、レスクエレラ油、桐油、鯨油、茶実油、ゴマ油、サフラワー油、ナタネ油、魚油、それらのいずれかの誘導体、およびそれらのいずれかの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項6】
前記
官能性天然
油が、ココナッツ油、コーチン油、コーン油、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、官能化パーム核油、ピーナッツ油、ダイズ油、ヒマワリ油、トール油、獣脂、レスクエレラ油、桐油、鯨油、茶実油、ゴマ油、サフラワー油、ナタネ油、魚油、それらのいずれかの誘導体、およびそれらのいずれかの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載する
、ハイブリッドポリオール。
【請求項7】
前記多官能カルボン酸が、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シトラコン酸、セバシン酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、ムコン酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメシン酸、2-ブチン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ジクロロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、それらのいずれかの誘導体およびそれらのいずれかの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項8】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ベンジルアルコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサントリオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、それらのいずれかの混合物、それらのいずれかの誘導体およびそれらのいずれかの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項9】
前記多官能カルボン酸がコハク酸であって、前記多価アルコールがジエチレングリコールである、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項10】
前記多官能カルボン酸がコハク酸であって、前記多価アルコールが1,3-プロパンジオールである、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項11】
前記多官能カルボン酸がバイオ系コハク酸であって、前記多価アルコールがバイオ系1,3-プロパンジオールである、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項12】
前記ハイブリッドポリオールが、少なくとも10パーセントのバイオ再生可能含量を有する、請求項1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項13】
前記
エチレン性不飽和ジカルボン酸が無水マレイン酸である、請求項
1に記載される
、ハイブリッドポリオール。
【請求項14】
前記多官能カルボン酸がコハク酸であり、前記多価アルコールがジエチレングリコールであって、前記ハイブリッドポリオールが式(ii):
【化2】
の構造を有し、R
1およびR
2は、独立して、9から21個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、nおよびmは、独立して、1以上である、請求項1に記載する
、ハイブリッドポリオール。
【請求項15】
前記多官能カルボン酸がコハク酸であり、前記多価アルコールが1,3-プロパンジオールであって、前記ハイブリッドポリオールが式(ii):
【化3】
の構造を有し、R
1およびR
2は、独立して、9から21個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、nおよびmは、独立して、1以上である、請求項1に記載する
、ハイブリッドポリオール。
【請求項16】
請求項1に記載のハイブリッドポリオールおよび1以上の石油系ポリオールを含み、請求項1に記載のハイブリッドポリオールが、当該ポリオール混合物の少なくとも10パーセントである、ポリオール混合物。
【請求項17】
前記石油系ポリオールがポリエステルポリオールである、請求項
16に記載のポリオール混合物。
【請求項18】
前記石油系ポリオールがポリエーテルポリオールである、請求項
16に記載のポリオール混合物。
【請求項19】
請求項1に記載のハイブリッドポリオールおよび1以上のイソソルビド系ポリオールを含むポリオール混合物であって、前記イソソルビド系ポリオールが当該ポリオール混合物の少なくとも10%である、ポリオール混合物。
【請求項20】
前記イソソルビド系ポリオールが、バイオ系イソソルビドを用いて調製されたものである、請求項
19に記載のポリオール混合物。
【請求項21】
請求項1に記載のハイブリッドポリオールとイソシアネートとを反応させて得られた、ポリウレタン生成物。
【請求項22】
請求項
12に記載のハイブリッドポリオールとイソシアネートとを反応させて得られたポリウレタン生成物であって、少なくとも10パーセントのバイオ再生可能含量のポリウレタン生成物。
【請求項23】
式(ii):
【化4】
の構造を有し、R
1
およびR
2
は、独立して、9から21個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、nおよびmは、独立して、1以上であるハイブリッドポリオールとイソシアネートとを反応させて得られた、ポリウレタン生成物。
【請求項24】
ハイブリッドポリオールを製造する方法であって
、
(a)
官能性天然
油と、(b
)少なくともひとつのバイオ系ポリエステルポリオールと
を、エステル化触媒の存在下で反応させて、当該ハイブリッドポリオールを得るステップを含み
、
前記バイオ系ポリエステルポリオールは、少なくとも2個のカルボキシ基を持つ少なくともひとつの多官能カルボン酸および少なくとも2個のヒドロキシ基を持つ少なくともひとつの多価アルコールを含み、
前記
官能化天然
油は、
エチレン性不飽和天然油と、エチレン性不飽和ジカルボン酸との反応によって、2個のカルボキシ基がエチレン性不飽和脂肪酸側鎖の二重結合に導入され、
ここに、前記官能化天然油が、式(i):
【化5】
の構造を有し、
R
1
およびR
2
は、独立して、9から21個の炭素原子を含むアルキル鎖である、方法。
【請求項25】
前記
官能化天然
油の調製に用いる天然油が、ヒマシ油、ココナッツ油、コーチン油、コーン油、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、ダイズ油、ヒマワリ油、トール油、獣脂、レスクエレラ油、桐油、鯨油、茶実油、ゴマ油、サフラワー油、ナタネ油、魚油、それらのいずれかの誘導体、およびそれらのいずれかの組合せからなる群より選択される、請求項
24に記載する
、ハイブリッドポリオールを製造する方法。
【請求項26】
前記多官能カルボン酸が、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シトラコン酸、セバシン酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、ムコン酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメシン酸、2-ブチン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ジクロロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、それらのいずれかの誘導体およびそれらのいずれかの混合物から選択される、請求項
24に記載する
、ハイブリッドポリオールを製造する方法。
【請求項27】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ベンジルアルコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサントリオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、それらのいずれかの混合物、それらのいずれかの誘導体およびそれらのいずれかの組合せからなる群より選択される、請求項
24に記載する
、ハイブリッドポリオールを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年6月28日出願の米国仮特許出願第62/355,779号および2016年10月4日出願の米国仮特許出願第62/404,085号の優先権を主張する。
【0002】
本発明はフレキシブルポリウレタンフォーム製造の分野にある。より詳しくは、本発明は、フレキシブルポリウレタンフォーム製造に有用な、高レベルのバイオ再生可能含量を持つハイブリッドポリオールの化学合成に関する。
【背景技術】
【0003】
フレキシブルポリウレタンフォームは、独特の機械的、吸音、耐荷重および/またはその他の物理特性を要する様々なアプリケーションで広く用いられている。フレキシブルポリウレタンフォームは、発泡剤、界面活性剤、触媒その他の任意の添加物の存在下、イソシアネート (NCO)基を含有する少なくともひとつのポリイソシアネートとヒドロキシル (OH)基を含有する少なくともひとつのポリオールとの反応によって作られる。最も普通に用いられる発泡剤は、水であり、それは、ポリイソシアネートと反応して、二酸化炭素およびポリ乳酸を形成する。ポリ尿素は、ポリイソシアネート-ポリオール反応から生じたポリウレタン共に存在する。
【0004】
フレキシブルポリウレタンフォームは、典型的に、スラブストックフォーム製造プロセスまたは成形されたフレキシブルフォーム製造プロセスのいずれかを用いて製造される。スラブストックフレキシブルフォームは、典型的に、連続ミキサーを有する高圧または低圧機械のいずれかで製造される。そのような連続混合機は、通常、1分あたり100ポンド以上のスラブストックフォームを製造する。通常、スラブストックフォームの製造は、分離された供給ライン(すなわち、ストリーム)から、ピンミキサーを有するミキシングヘッドまたは高せん断ミキサーを介して、ポリオール含有組成物およびポリイソシアネート含有組成物を槽に計量することを必要とする。生成物は、泡立ち始め、槽より立ち上がり、フォールプレート上にこぼれる。フォールプレート上で、生成物は立ち上がり続けてコンベヤーに接触する。生成物は、コンベヤーにそれを運搬されながら、スラブストックフォームを形成する長さで硬化する。コンベヤーは、典型的に、紙製またはプラスチック製ライナーで裏打ちされて、スラブストックフォームを簡単に取り出せるようになっている。フォームが機械を出るとき、大きなブロックに切り出される。
【0005】
通常、成形されたフレキシブルフォームは、典型的に、ポリオール含有組成物およびポリイソシアネート含有組成物を計量されたフォーム混合分散ユニット内で混合してフォーム中間体組成物を形成し、そのフォーム中間体組成物を十分加熱された所望の設計の金型に分注することによって製造される。金型は、典型的に、築盛し、引き続き、内圧を解放できるように通気されている。金型は、自動開閉に備えて2以上の区分を有し、鋳造アルミニウムまたはその他いずれかの適切な材料で形成することができる。混合及び分散ステップ後、金型の蓋を閉じ、ロックし、フォーム中間体組成物は、十分な温度にて、十分な時間で硬化できるようにする。金型を受容することができる十分に加熱したオーブンも、硬化ステップの間、採用することができる。一旦、硬化ステップが完了すれば、金型の蓋を開け、得られたフォーム生成物を取り出し、次いで、気泡セル破壊装置に搬送し、そこでは、裁断や作製などの他の関連する完成フォーム取扱いシステムにより加工する前に、セルを開くためにフォーム生成物に圧力をかけた。フォームを裁断や作製して、自動車シートクッションなどの完成品に転換する。
【0006】
典型的に、スラブストックおよび成形されたフレキシブルフォームは、ポリエーテルまたはポリエステルポリオール、トルエンジイソシアネートなどのポリイソシアネート、アミン触媒、スズ触媒、発泡剤その他の補助的添加剤から作られる。ポリウレタンフォームを作るために伝統的に用いられるポリエーテルポリオールは、通常、石油系原料に由来する。フレキシブルスラブストックフォーム産業に用いる標準ポリエーテルポリオールは、アルコキシル化触媒の存在下、エチレンまたはプロピレンオキシドとグリセロールとの反応により、製造される。ポリオール(すなわち、ポリオールブレンド)の官能性、分子量およびアルコキシド組成物を調節して、生成されるフォームの物理および/または加工特性を左右することができる。
【0007】
ポリエステルポリオールは、フレキシブルスラブストックまたは成形されたポリウレタンフォーム産業のある程度をシェアし;そのマーケットシェアは、エステル系材料の増大するコストと粘度のためにわずかである。それらの性能は、しかしながら、典型的に、ポリエーテルアナログのものよりも遙かに優れている。ポリエステル系フォームは、優れた溶剤耐性、張力を要求するアプリケーションに、および、しばしば、フレームラミネーションのため、卓越している。
【0008】
フレキシブルフォーム産業が、石油系ポリエーテルまたはポリエステルポリオールの代わりに配合物に導入するバイオ系ポリオールの使用において著しい増加を証明した。
あるレベルのバイオ系ポリオールを持つポリウレタンフォーム生成物は、石油に由来するのみで調製されたその生成物に関連して競争力の高いマーケティング利点を有する。さらに、バイオ系ポリオールは、容易に入手可能な原料のため、コスト安定性を有する。結果として、フレキシブルポリウレタンフォーム製造業者は、フレキシブルポリウレタンフォーム生成物において、より高い比率のバイオ系ポリオールを用いることを好む。
【0009】
バイオ系ポリオールは、典型的に、植物種子に存在する天然油に由来する。それらの化学同一性の観点では、天然油は、各々10~22個の炭素の脂肪酸側鎖を持つトリグリセリドである。通常、ヒマシ油を除き、トリグリセリド中の脂肪酸側鎖は、官能基を有さず、ポリイソシアネートに対して反応性ではない。ヒマシ油中のヒドロキシ基は、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応を担い、天然油の「ヒドロキシル官能性」または「官能性」といわれる。官能性を欠如する天然油は、いずれかの化学変換手順に付して官能性を導入し、得られた生成物は、官能化天然油または天然油ポリオールといわれる。天然油に官能性を導入するために使用できる化学反応のリストは、官能化材料でのトランスエステル化、エポキシ化および開環、酸化、オゾン分解およびヒドロホルミル化を包含する。付加された反応官能性は、いずれかの活性水素部分であり得、典型的に、ヒドロキシ基またはアミンである。トリグリセリドに官能性を導入するための多数の化学修飾が、数々の特許文献で報告され、それらの全てが出典明示して本明細書に組み込まれる。米国特許第6,107,433および6,121,398号は、天然油に官能性を導入するエポキシ化手順を記載する。国際公開第2003/029182号は、トリグリセリドに官能性を導入するヒドロキシル化手順を記載する。米国特許第6,897,283、6,962,636および6,979,477号は、トリグリセリドに官能性を導入するエステル化手順を記載する。国際公開第2004/096744号は、トリグリセリドに官能性を導入するヒドロホルミル化手順を記載する。米国特許第4,640,801号は、トリグリセリドに官能性を導入するグラフト化手順を記載する。米国特許第6,433,121号は、トリグリセリドに官能性を導入するエポキシ化およびヒドロキシル化手順を要件とする連続ツーステッププロセスを記載する。米国特許第4,534,907号および国際出願第2004/020497号は、トリグリセリドに官能性を導入するアルコキシル化手順を記載する。
【0010】
フレキシブルポリウレタンフォーム生成物の製造におけるポリオール成分として官能化天然油(「天然油ポリオール」または「NOP」としても知られる)の使用に対する要求がある。官能化天然油とイソシアネートとの反応から形成されるフォームの引裂強度、張力および伸長(「TTE」)、ボールリバウンド、圧縮撓み (CFD)ならびに圧縮永久歪みのような機械強度特性は、典型的に、石油化学ポリオールのみから作製されるフォームに対して劣っている。ポリウレタンフォーム製造における典型的な天然油ポリオールの使用の課題は、2つである:(1)石油に由来するポリオール中のアルコール基は1級であり、それは、NOP中の2級アルコールよりも3.3倍イソシアネートに反応性である;および(2)天然油ポリオール中の飽和脂肪酸は反応性でなく、ポリウレタンフォームの特性に悪影響する。これらの物理特性は、フレキシブルフォーム配合物に導入し得る天然油ポリオールの量を効率的に制限する。
【0011】
米国特許出願公開第2012/0277338号は、ポリエステルポリオール、好ましくは、芳香族ポリエステルポリオールを天然油ポリオールまたは、ダイズ油のような天然油でトランスエステル化してその物理特性を向上することを記載する。
【0012】
米国特許第9,260,346号は、アクリルポリオールを天然油ポリオールにグラフト化してその物理特性を増強する技術を記載する。米国特許第8,828,269号は、モノグリセリドを天然油ポリオールにエステル化してその性能を増強する技術を記載する。米国特許第8,765,828号は、熱可塑性アクリル粉末を発泡性マトリクスに混練して反発性を増強する方法を記載する。米国特許第8,541,536号は、エステル化モノマーを介する天然油ポリオールのカップリングを記載する。これらのアプローチは、ポリウレタンフォームの製造における天然油ポリオールの使用に関連する欠陥を対処する。しかしながら、これらの修飾天然油ポリオールは、比較的低いエステル含量のため、所望の機械特性も、石油源由来のポリオールとの親和性も発揮しない。上記を考慮すると、バイオ系ポリオールから作製されたフレキシブルフォームの機械強度を向上し、機械強度の損失なくより高濃度のバイオ系ポリオールの使用を可能にする方法は、フレキシブルポリウレタンフォーム製造の分野に著しい利益をもたらすであろう。本発明は、天然油ポリオールのトランスエステル化に反して、天然油ポリオールにエステルを築く手順を提供する。本発明に記載の手順は、天然油ポリオールに基づく、ハイブリッドポリオールともいわれる、性能が向上したコポリエステルポリオールを生成する。さらに、本発明により調製された、天然油ポリオールに基づくハイブリッドポリオールは、高比率のバイオ再生可能含量を含有する。しかも、これらの天然油ポリオールに基づくハイブリッドポリオールと、石油化学源に由来する従来のポリエーテルポリオールとを、相分離の虞なく現行の科学技術を用いてブレンドするという選択肢は、当該分野の向上である。
【0013】
本明細書で引用される全ての先行技術文献は出典明示により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第2,968,575号
【文献】米国特許第3,036,042号
【文献】米国特許第3,479,310号
【文献】米国特許第4,534,907号
【文献】米国特許第4,640,801号
【文献】米国特許第4,714,717号
【文献】米国特許第6,107,433号
【文献】米国特許第6,121,398号
【文献】米国特許第6,291,409号
【文献】米国特許第6,433,121号
【文献】米国特許第6,897,283号
【文献】米国特許第6,962,636号
【文献】米国特許第6,979,477号
【文献】米国特許第8,153,746号
【文献】米国特許第8,293,808号
【文献】米国特許第8,541,536号
【文献】米国特許第8,507,701号
【文献】米国特許第8,575,294号
【文献】米国特許第8,664,352号
【文献】米国特許第8,692,030号
【文献】米国特許第8,765,828号
【文献】米国特許第8,828,269号
【文献】米国特許第9,212,250号
【文献】米国特許第9,260,346号
【文献】米国特許出願公開第2006/0276609号
【文献】米国特許出願公開第2010/0104872号
【文献】米国特許出願公開第2010/0298453号
【文献】米国特許出願公開第2012/0022186号
【文献】米国特許出願公開第2012/0277338号
【文献】米国特許出願公開第2013/0035467号
【文献】米国特許出願公開第2016/0002386号
【文献】国際出願公開第2003/029182号
【文献】国際出願公開第2004/020497号
【文献】国際出願公開第2004/096744号
【文献】国際出願公開第2009/045926号
【文献】国際出願公開第2011/137011号
【文献】国際出願公開第2013/053555号
【文献】国際出願公開第2015/047919号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Desroches, M., Escouvois, M., Auvergne, R., Caillol, S. and Boutevin, B. (2012) from vegetable oils to polyurethanes: Synthetic routes to polyls and main industrical products. Polymer Reviees 52: 38-79.
【文献】Miao, S., Wang, P., Su, Z and Zhang, S. (2014) Vegetable-oli-based polymers as future polymeric biomaterials. Acta Bomaterialia 10: 1692-1704.
【文献】Patel, M. R., Shukla, J. M., Patel, N. K. and Patel, K. H. (2009) Biomaterials based novel polyurethane adhesion for wood to wood and metal to metal binding. Materials Research, 12: 385-393.
【文献】Petrovic, Z. S., Javani, I., Jing, X., Hong, D. P. and Guo, A. (2007) Effect of hyperbranched vegetable oil polyols on properties of flexible polyurethane foams. Materials Sci. Forum. 555: 459-465.
【文献】Petrovic, Z. S., Cvetkovic, I., Hong, D., Wan, X. Zhang, W., Abraham, T. W. and M alsam, J. (2010) Vegetable oil-based triols from hydrofomylated fatty acid and polyurethane elastomers. Eur. J. Lipd Sci. Technol. 112: 97-102.
【文献】Petrovic, Z.S., Ji, Ye, Inoescu, M. (2010) Polyurethanes from hybrid vegetable oil/petrochemical polyester polyols. Polymer Preprints 51: 757-758.
【文献】Petrovic, Z. S., Javni, I. and Ionescu, M. (2013) Biological oils as precursors to novel polymeric materials. J. Renew. Mater. 1: 167-186.
【文献】Raquez, J. -M., Deleglise, M., Lacrampe, M. -F. and Krawczak, P. (2010) Thermosetting (bio)materials derived from renewable resources: A critical review. Progress in Polymer Science 35: 487-509.
【文献】Zlatanic, A., Javani, I., Lonescu, M., Bilic, N. and Pterovic, Z. S. (2015) Polyurethane molded foams with high content of hyperbranched polyls from soybean oil. J. Cellular Plastics, 51: 289-306.
【発明の概要】
【0016】
本発明は、高レベルのバイオ再生可能含量を持つフレキシブルポリウレタンフォームを製造する方法を提供する。より詳しくは、本発明は、天然油ポリオールに基づく、ハイブリッドポリオールともいわれる、フレキシブルポリウレタンフォームの調製に有用な高バイオ再生可能含量のコポリエステルポリオールを提供する。天然油のような植物源由来のトリグリセリド、動物源からの脂肪酸、ならびに、炭化水素およびセルロース加水分解物のような生物学的材料を用いる発酵プロセスにより誘導されたポリカルボン酸および多価アルコールが、高百分率のバイオ再生可能含量を持つ、本発明のコポリエステルポリオールの調製に用いられる。高百分率のバイオ再生可能含量を持つコポリエステルポリオールは、イソシアネートと反応して、フレキシブルポリウレタンフォームを製造できる。本発明で製造された高百分率のバイオ再生可能含量を持つコポリエステルポリオールは、それ自体で用いることに適し、または、フレキシブルポリウレタンフォームの製造において、ポリエステルポリオールおよび石油原料由来のポリエーテルポリオールと一緒の混合物として用いることができる。
【0017】
本発明のひとつの具体例において、天然油として植物種子に由来するトリグリセリドを化学反応に付して、カルボキシ基やヒドロキシ基などのある種の官能基をエチレン性不飽和二重結合の代わりに脂肪酸側鎖に挿入し、官能化天然油ともいわれる天然油ポリオールの形成に導く。官能化天然油を、エステル化触媒の存在下、1以上のポリカルボン酸および1以上の多価アルコールと反応させて、特定範囲にある官能性およびヒドロキシル数を持つ、ハイブリッドポリオールともいわれるコポリエステルポリオールを生成する。さらに、ポリカルボン酸および多価アルコールの適当な源を選択すれば、得られたコポリエステルポリオール内のバイオ再生可能含量の範囲を制御することも可能である。
【0018】
この具体例のひとつの局面において、本発明のコポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させて、フレキシブルポリウレタンフォームを生成する。この発明のひとつの局面において、本具体例により調製したコポリエステルポリオールを石油化学源由来のポリオールと混合する。本発明のコポリエステルポリオールと石油化学源由来のポリオールとを合わせた混合物をポリイソシアネートと反応させて、混合物中のコポリエステルポリオールのバイオ再生可能含量に比例するバイオ再生可能含量を持つフレキシブルポリウレタンフォームを生成する。この具体例のコポリエステルポリオールとの混合物を調製するにあたり、石油化学源由来のポリエステルポリオールまたは石油化学源由来のポリエーテルポリオールのいずれかを用いる。本具体例の好ましい局面において、フレキシブルポリウレタンフォームの調製に用いるポリオール混合物は、石油化学源由来のポリエステルポリオールおよび本具体例により調製したコポリエステルポリオールを含有する。
【0019】
本発明のもうひとつの具体例において、コポリエステルポリオールは、エチレン性不飽和モノマーをトリグリセリド分子内のエチレン性不飽和脂肪酸側鎖にフリーラジカル介在グラフト化することを要件とする方法に従って調製する。この具体例のひとつの局面において、エチレン性不飽和ジカルボン酸を、フリーラジカル介在グラフト化反応のモノマーとして用いて、天然油ポリオールともいわれる官能化天然油を生成する。本具体例のもうひとつの局面において、エチレン性不飽和ジオールを、フリーラジカル介在グラフト化反応のモノマーとして用いて、天然油ポリオールともいわれる官能化天然油を生成する。フリーラジカル介在グラフト化反応の結果、エチレン性不飽和モノマーを、脂肪酸側鎖の二重結合にグラフト化して、二重結合があったところに2個の官能基を導入する。エチレン性不飽和ジカルボン酸をグラフト化反応に用いる場合、2個のカルボキシ官能基が付加される。一方、エチレン性不飽和ジオールをグラフト化反応に用いる場合、2個のヒドロキシ官能基が付加される。新たに付加された官能基は、1以上のポリカルボン酸、1以上の多価アルコールおよびエステル化触媒を供給すると、エステル化反応の開始を助ける。この具体例により製造された官能化天然油、ポリカルボン酸および多価アルコールの比率を制御することによって、特定範囲にある官能性およびヒドロキシル数を持つコポリエステルポリオールが製造される。さらに、ポリカルボン酸および多価アルコールの適当な源を選択することによって、得られたコポリエステルポリオール中のバイオ再生可能含量の量を制御することも可能である。
【0020】
この具体例のひとつの局面において、フリーラジカル介在グラフト化反応を用いて製造されたコポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させて、フレキシブルポリウレタンフォームを生成する。この発明のひとつの局面において、本具体例により調製したコポリエステルポリオールを石油化学源由来のポリオールと混合して、ポリオール混合物を生成する。コポリエステルポリオールと石油化学源由来のポリオールとを合わせた混合物をポリイソシアネートと反応させて、混合物中のコポリエステルポリオールのバイオ再生可能含量に比例するバイオ再生可能含量を持つフレキシブルポリウレタンフォームを生成する。この具体例のポリオール混合物を調製するにあたり、石油化学源由来のポリエステルポリオールまたは石油化学源由来のポリエーテルポリオールのいずれかを用いる。本具体例の好ましい局面において、ポリウレタンフォームの調製に用いるポリオール混合物は、石油化学源由来のポリエステルポリオールおよびフリーラジカル介在グラフト化反応を用いて調製したコポリエステルポリオールを含有する。
【0021】
本発明のもうひとつの具体例において、本発明により調製した2つのタイプのコポリエステルポリオールのいずれかをイソソルビド系ポリエステルポリオールと混合し、フレキシブルポリウレタンフォームの調製に用いる。イソソルビド系ポリエステルポリオールは、全てが生物学的発酵プロセスにより再生可能生物学的材料に由来するバイオ系イソソルビド、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを要件とするエステル化反応により調製する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の図面は、本発明のある局面を図示するために含まれており、排他的な具体例と見なされるべきではない。開示される主題は、形状および機能において、本開示に利益を有し、当業者が行うであろう、相応の修飾、変形、組合せおよび等価物が可能である。
【0023】
【
図1】
図1は、ハイブリッドポリオールの調製を示す。市販の天然油ポリオール(Agrol
(R) - BioBased Technologies製ダイズ油ポリオール)をコハク酸、ジエチレングリコールおよび、任意でトリメチロールプロパンまたはグリセロールと、エステル化触媒の存在下で反応させて、ハイブリッドポリオールを得る。トリメチロールプロパンまたはグリセロールの組み込みは、得られたハイブリッドポリオールに枝分かれを引き起こすことが予測されるが、図示していない。この反応に用いる天然油ポリオールおよびコハク酸はいずれも、バイオ再生可能源由来である。得られたハイブリッドポリオールのバイオ再生可能含量は、天然油ポリオールおよびコハク酸の含量に比例する。
【
図2】
図2は、ハイブリッドポリオールの調製を示す。市販の天然油ポリオール(Agrol
(R) - BioBased Technologies製ダイズ油ポリオール)をコハク酸、1,3-プロパンジオールおよび、任意でトリメチロールプロパンまたはグリセロールと、エステル化触媒の存在下で反応させて、ハイブリッドポリオールを得る。トリメチロールプロパンまたはグリセロールの組み込みは、得られたハイブリッドポリオールに枝分かれを引き起こすことが予測されるが、図示していない。この反応に用いる天然油ポリオールおよびコハク酸はいずれも、バイオ再生可能源由来である。得られたハイブリッドポリオールのバイオ再生可能含量は、天然油ポリオール、1,3-プロパンジオールおよびコハク酸の含量に比例する。
【
図3】
図3は、フリーラジカル介在グラフト化反応によるハイブリッドポリオールの調製を示す。この反応において、エチレン性不飽和二重結合を持つバージンダイズ油をエチレン性不飽和二重結合を有する無水マレイン酸と、フリーラジカル開始剤(ジクミルペルオキシド)の存在下で反応させて、無水マレイン酸がダイズ油にグラフトされた生成物を得る。得られた生成物は、2個の官能性カルボキシ基を有し、それらはさらなるエステル化反応に参与し、コハク酸、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパンまたはグリセロールおよびエステル化触媒が与えられる。エステル化反応の終点で、フリーヒドロキシ官能基を持つハイブリッドポリオールが生成される。このハイブリッドポリオールへのトリメチロールプロパンまたはグリセロールの組み込みは、得られたハイブリッドポリオールに枝分かれを引き起こすことが予測されるが、図示していない。この反応に用いる天然油ポリオールおよびコハク酸はいずれも、バイオ再生可能源由来である。得られたハイブリッドポリオールのバイオ再生可能含量は、天然油およびコハク酸の含量に比例する。
【
図4】
図4は、フリーラジカル介在グラフト化反応によるハイブリッドポリオールの調製を示す。この反応において、エチレン性不飽和二重結合を持つバージンダイズ油を、エチレン性不飽和二重結合を有する無水マレイン酸と、フリーラジカル開始剤(ジクミルペルオキシド)の存在下で反応させて、無水マレイン酸がダイズ油にグラフトされた生成物を得る。得られた生成物は、2個の官能性カルボキシ基を有し、それはさらなるエステル化反応に参与し、コハク酸、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパンまたはグリセロールおよびエステル化触媒が与えられる。エステル化反応の終点で、フリーヒドロキシ官能基を持つハイブリッドポリオールが生成される。トリメチロールプロパンまたはグリセロールの組み込みは、得られたハイブリッドポリオールに枝分かれを引き起こすことが予測されるが、図示していない。この反応に用いる天然油、1,3-プロパンジオールおよびコハク酸はいずれも、バイオ再生可能源由来である。得られたハイブリッドポリオールのバイオ再生可能含量は、天然油、1,3-プロパンジオールおよびコハク酸の含量に比例する。
【
図5】
図5は、イソソルビド系ポリエステルの調製を図示する。生物学的発酵プロセスにより誘導されたバイオ系イソソルビドおよびバイオ系コハク酸を、エステル化触媒の存在下で一緒に混合して、双方の出発成分を含むイソソルビドエステルモノマー(プレポリマー)を得る(A)。次の段階で、1,3-プロパンジオールを添加し、重合反応により、多くの異なるタイプのイソソルビド系ポリエステルが生成される。本発明のひとつの局面において、イソソルビドエステルモノマーで開始し、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールのみの使用を伴う、ポリエステル鎖延長が量末端に起こる(B)。本発明のもうひとつの局面において、重合反応は、イソソルビドエステルモノマー(A)の使用を要件とし、3成分全て、すなわち、バイオ系イソソルビド、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを均等比率で有するポリエステルポリオールを生じる(C)。この図に描写するポリマーは、単なる代表的な構造であり、作製できる全てのイソソルビド系ポリエステル調製物を完全に包含していると解釈するべきではない。当業者は、そのような方法でエステル化反応を実行して、比率が異なり、配置が異なる、これら3つの基本成分(バイオ系イソソルビド、バイオ系コハク酸、およびバイオ系1,3-プロパンジオール)を含むポリオール分子を得ることができる。
【
図6】
図6は、石油化学由来ポリエーテルポリオールを用いて調製したフレキシブルポリウレタンフォーム配合物の外観である。
【
図7】
図7は、石油化学由来ポリエーテルポリオールおよび、50% (v/v)または75% (v/v)でバイオ系ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-163を含むポリオール混合物を用いて調製したフレキシブルポリウレタンフォーム配合物、ならびに、100% (v/v)のバイオ系ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-163を用いて調製したフレキシブルポリウレタンフォーム配合物の外観である。MYR11,3-163は、バイオ系天然油ポリオールAgrol
(R)、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを用いて調製されたので、このハイブリッドポリオールは、ほぼ100%バイオ系である。「50% 11,3-163」と表示されたフレキシブルポリウレタンフォームの調製において、石油化学源由来の50% (v/v)ポリエーテルポリオールおよび50% (v/v)ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-163を含むポリオール混合物を一緒に混合して、それを用いた。得られたフレキシブルポリウレタンフォーム調製物は、50%バイオ系含量を有すると算出される。「75% 11,3-163」と表示されたフレキシブルポリウレタンフォームの調製において、石油化学源由来の25% (v/v)ポリエーテルポリオールおよび75% (v/v)ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-163を含むポリオール混合物を一緒に混合し、それを用いた。得られたフレキシブルポリウレタンフォーム調製物は、75%バイオ系含量を有すると算出される。「100% 11,3-163」と表示されたフレキシブルポリウレタンフォームの調製において、ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-163のみを用いた。得られたフレキシブルポリウレタンフォーム調製は、100%バイオ系含量を有すると算出される。
【
図8】
図8は、石油化学由来ポリエーテルポリオールおよびバイオ系ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-172を50% (v/v)、または75% (v/v)で含むポリオール混合物を用いて調製されたフレキシブルポリウレタンフォーム配合物ならびに、100% (v/v)のハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-172を用いて調製されたフレキシブルポリウレタンフォーム配合物の外観である。ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-172は、バイオ系天然油ポリオールAgrol
(R)、バイオ系コハク酸およびジエチレングリコールを用いて調製されたので、このハイブリッドポリオールのバイオ系含量は、バイオ系天然油ポリオールAgrol
(R)およびバイオ系コハク酸の含量に比例する。「50% 11,3-172」と表示されたフレキシブルポリウレタンフォームの調製において、石油化学源由来の50% (v/v)ポリエーテルポリオールおよび50% (v/v)ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-172を含むポリオール混合物を一緒に混合し、それを用いた。「75% 11,3-172」と表示されたフレキシブルポリウレタンフォームの調製において、石油化学源由来の25% (v/v)ポリエーテルポリオールおよび75% (v/v)ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-172を含むポリオール混合物を一緒に混合し、それを用いた。「100% 11,3-172」と表示されたフレキシブルポリウレタンフォームの調製において、ハイブリッドポリオールバッチNo. MYR11,3-172のみを用いた。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のバイオ系ハイブリッドポリオールは、少なくともひとつの官能化天然油(天然油ポリオールともいわれる)もしくは官能化天然油由来脂肪酸および/またはイソシアネート反応性1級または2級ヒドロキシ基を含有する脂肪酸エステルを含み、少なくとも約1.5、好ましくは、少なくとも約2.0の官能性を有する。
【0025】
この発明で用いるとき、用語「バイオ系」は、コハク酸のような単分子またはポリエステルポリオールのような化合物のいずれかであろう特定の化学部分の起源をいう。化学分子または化合物が生物学的材料に由来するとき、その場合、バイオ系化学分子または化合物といわれる。かくして、コハク酸および1,3-プロパンジオール分子が再生可能生物学的材料を用いる生物学的発酵プロセスにより製造されるとき、それらは、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールといわれる。バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールがエステル化触媒の存在下で反応されるとき、得られたポリエステル分子である、ポリプロピレンスクシネートもバイオ系ポリプロピレンスクシネートといわれる。同様に、バイオ系コハク酸、バイオ系1,3-プロパンジオールおよび天然油ポリオールを反応させて、バイオ系ハイブリッドポリオールを製造する。用語「バイオ再生可能」も、用語「バイオ系」と交換可能に使用される。
【0026】
バイオ系化学物質は、再生可能生物学的材料に由来する。この発明で規定するとき、用語「再生可能生物学的材料」は、石油化学原料に由来する材料に反し、植物性または動物性材料に由来するいかなる原料も包含する。用語「再生可能生物学的材料」も、用語「バイオマス」と交換可能に使用される。本発明で用いられるとき、用語「バイオマス」は、本発明に有用なコハク酸のようなモノマーおよび1,3-プロパンジオールの発酵的製造に使用できる再生可能植物源に由来する炭化水素、糖類、グリセロールおよびリグノセルロース材料をいう。生物学的発酵プロセスにより再生可能生物学的材料から得られたコハク酸、1,3-プロパンジオールおよびその誘導体などのモノマーは、「バイオマス由来」または「バイオ系」化学物質といわれる。一方、化学手段により石油化学原料から得られたコハク酸、1,3-プロパンジオールおよびその誘導体は、「石油化学由来」または「石油化学系」といわれる。
【0027】
本発明に有用なバイオ系モノマーは、米国試験材料協会(American Society of Testing and Materials)が提供する方法ASTM-D6866によるカーボン14含量に基づき石油原料を要件とする伝統的化学方法により製造されたモノマーとは識別可能である。宇宙線は、窒素の中性子衝撃によって、成層圏に14C(「放射性炭素」)を生じる。14C原子は、大気中の酸素原子と組み合わさって、重14CO2を形成し、それは、放射性崩壊の点を除き、通常の二酸化炭素とは区別ができない。CO2濃度および14C/12C比は、地球全体で均一であり、それは植物によって使用されるため、比14C/12Cはバイオマスによって保持されるが、元々は光合成エネルギー変換に由来する化石材料中の14Cの含有量は、5730年という短い半減期のために減衰する。14C対12Cの比を分析することで、化石燃料由来炭素対バイオマス由来炭素の比を決定することが可能である。国際出願公開第2009/155085 A2号および米国特許第6,428,767号は、化学組成物中バイオマス由来炭素含量のパーセントを決定するためのASTM-D6866方法の使用についての詳細を提供する。米国特許第6,428,767号に開示された炭素年代測定に関する詳細は、本明細書に組み込まれる。”Differentiation between Fossil and Biofuels by Liquid Scintillation Beta Spectrometry - Direct Method”と題されるPerkin Elmerからのアプリケーションノートは、ASTMスタンダードD6866を要件とする方法についての詳細を提供する。
【0028】
ここで用いる用語「天然油」は、限定されないが、植物油、藻類油、動物性脂肪、トール油、これらの油類の誘導体、これらの油類のいずれかの組合せなど、を包含する。植物油の代表的非制限例示は、キャノーラ油、ナタネ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、桐油、ジャトロファ油、カラシ油、ナズナ油、カルネリーナ油、およびヒマシ油を包含する。動物性脂肪の代表的非制限例示は、ラード、獣脂、家禽脂肪、黄色油脂、および魚油を包含する。トール油、木材パルプ製造プロセスの副生成物も、本発明に有用である。ある具体例において、天然油は、部分的に水素添加することができる。他の具体例において、天然油は、精製、漂白および/または脱臭することができる。
【0029】
用語「官能化」は、ここでその最も広い意味で用いられ、天然油ならびに残留ヒドロキシ基を含有するそれらの天然油に由来する脂肪酸および/または脂肪酸エステルをカバーする意図である。ある種の天然油および、それに由来する脂肪酸(ヒマシ油およびそれに由来するリシノール酸)は、それらが植物内で産生される場合、残留ヒドロキシ基を含有する。天然油ならびにその天然油に由来する脂肪酸および/または脂肪酸エステルが残留ヒドロキシ基を含有しない場合、それらは、化学修飾されてヒドロキシル官能性が付与される。残留ヒドロキシ基を含有しない天然油がヒドロキシ基を有するように化学修飾されるとき、それは天然油ポリオールといわれる。バイオ系天然油ポリオールは、約25から約230、特別には約40から約130、より特別には約70から約80 mg KOH/gの範囲のヒドロキシル値 (OH)を所持する。
【0030】
多数の化学経路を官能化天然油に対してとることができる。天然油の官能化にとり得る経路のひとつは、天然油中の二重結合のエポキシ化に続く求核開環反応のステップを要件とする。求核開環反応の終わりに、求核付加により、1以上のヒドロキシ官能基を天然油に付加する。天然油のエポキシ化のための最もありふれた方法は、イオン交換樹脂触媒と共に、60℃にてトルエン中で12時間、酢酸と過酸化水素との間の反応からイン・サイチュで形成された過酢酸に基づく。天然油は、マイクロウェーブでも、5分間以内で、90%収率でエポキシ化できる。酵素反応によるエポキシ化も可能である。エポキシド環開環は、硫酸および水を用いて65℃にて実行できる。もうひとつの方法において、エポキシド環開環反応は、サンプルを50℃と65℃との間にて30分間維持して、水中メタノールをフルオロホウ酸触媒とともに用いて実行する。本発明において、エポキシド環開環は、天然油に基づくハイブリッドポリオールの調製におけるビルディングブロックとしても用いられる多官能カルボン酸または多価アルコールのいずれかを用いて達成する。
【0031】
バイオ系本発明により調製したハイブリッドポリオールは、25℃にて約2000から約6000センチポワズの範囲の粘度を所持する。バイオ系成分は、典型的に、ポリオール含有組成物に存在するポリオール成分の少なくとも約5重量パーセントを占める。例えば、バイオ系成分はポリオール含有組成物に存在するポリオール成分の約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約50、約60、約70、約80、約90およびさらには100重量パーセントを占めることができる。
【0032】
バイオ系ポリオールは、天然油をエポキシ化し、引き続き、そのエポキシ化天然油を水および/またはヒドロキシル化材料と反応させてエポキシ基をヒドロキシ基に転換することによって調製できる。エポキシ化天然油に基づくバイオ系ポリオールは、市販され、または、代替として、不飽和天然油をペルオキシ酸と反応させてエポキシ化油を形成することによって調製できる。エポキシ基をヒドロキシ基(開環剤)に転換する際に用いる適切な材料は、水素、水、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、アンモニア、または脂肪族もしくは芳香族アミン、脂肪族もしくは芳香族アルコールならびにそれらのアルコキシド(単官能性)、グリコール、トリオール、テトラオール、糖類、カルボン酸ならびに、例えば、塩酸、硫酸、およびリン酸を包含する鉱酸などのいかなる反応性水素化合物をも包含する。官能化天然油の調製において、ある量の開環剤を、約10%から約100%のエポキシ基からヒドロキシ基へと転換するのに十分なエポキシ化トリグリセリドと反応させる。エポキシ化天然油の加水分解は、約50℃から約250℃の範囲の温度にて、0から約4000 psiの範囲の圧力で行うことができる。得られた天然油ポリオールは、約25から約500 mg KOH/gの範囲のヒドロキシル値および0から約10 mg KOH/gの酸価を有するであろう。
【0033】
官能化天然油(天然油ポリオールともいわれる)は市販されている。それらは、1以上の天然油または、エポキシ化され、次いで、1以上のモノオールおよび/またはジオールと反応して1級または2級ヒドロキシ基を有するバイオ系ポリオールを形成すした天然油に由来する脂肪酸および/もしくは脂肪酸を含むことができる。本発明の実施内で採用することができる市販のバイオ系ポリオールのリストは、商標名BiOH(R)でCargillが販売するバイオ系ポリオール、商標名Agrol(R)でBioBased Technologiesが販売するバイオ系ポリオールおよび商標名SOYOL(R)でUrethane Soy Systemsが販売するバイオ系ポリオールを包含する。
【0034】
本発明に適切な官能化天然油(天然油ポリオールともいわれる)のリストは、ヒマシ油、官能化ヒマシ油、官能化ココナッツ油、官能化コーチン油、官能化コーン油、官能化綿実油、官能化アマニ油、官能化オリーブ油、官能化ヤシ油、官能化パーム核油、官能化ピーナッツ油、官能化ダイズ油、官能化ヒマワリ油、官能化トール油、官能化獣脂、官能化レスクエレラ油、官能化桐油、官能化鯨油、官能化茶実油、官能化ゴマ油、官能化サフラワー油、官能化ナタネ油、官能化魚油、それらの誘導体、およびそれらの組合せを包含する。
【0035】
非官能化天然油も市販されている。それらは、1以上の天然油および/または、その天然油由来の脂肪酸を含むであろう。本発明に適切な天然油のリストは、ヒマシ油、ココナッツ油、コーチン油、コーン油、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ピーナッツ油、ダイズ油、ヒマワリ油、トール油、獣脂、レスクエレラ油、桐油、鯨油、茶実油、ゴマ油、サフラワー油、ナタネ油、魚油、それらの誘導体、およびそれらの組合せを包含する。
【0036】
本発明のひとつの具体例において、ダイズ由来天然油ポリオールを、バイオ系コハク酸、バイオ系1,3-プロパンジオールおよび(任意で))グリセロールと反応させる。反応物を充填し、天然油ポリオールに存在する二級ヒドロキシルを低減または除去するように反応させ、それらを、1,3-プロパンジオール上の1級ヒドロキシルと交換する。わずかなトランスエステル化が二級ヒドロキシルの100%転換を妨げるが、その量は、天然油ポリオールに元々存在する量と比較して減少している。この具体例よれば、天然油ポリオールAgrol(R) 3.0 (BioBased Technologies製、3.0の計算官能性および115 mg KOH/gの報告ヒドロキシル数を持つ)を、バイオ系コハク酸、バイオ系1,3-プロパンジオールおよびエステル化触媒と反応させる。反応は、205℃にて、12時間、または全ての水が除去されるまで行う。また、この具体例によれば、Agrol(R) 3.0もバイオ系コハク酸、ジエチレングリコールおよびエステル化触媒と反応させる。反応は、205℃にて、12時間または、全ての水が除去されるまで行う。さらに、この具体例によれば、天然油Agrol(R) 3.0を、オルト-無水フタル酸、1,3-プロパンジオール、およびエステル化触媒と反応させる。反応は、205℃にて、12時間、または全ての水が除去されるまで行う。
【0037】
本発明のもうひとつの具体例において、ダイズ油を、いかなる修飾にも先駆けて、フリーラジカルペルオキシド開始剤、溶媒、および連鎖移動剤 (CTA)の存在下、無水マレイン酸と反応させる。反応は、150℃にて、3時間または、IR分光分析による分析により、出発材料内の全ての二重結合が除去されるまで行う。
【0038】
本発明のもうひとつの具体例において、無水マレイン酸とダイズ油との間の反応の生成物を、さらに、バイオ系コハク酸、ジエチレングリコールおよびエステル化触媒とエステル化する。反応は、210℃にて、12時間または、全ての水が除去されるまで行う。
【0039】
本発明のもうひとつの具体例において、無水マレイン酸とダイズ油との間の反応の生成物を、さらに、バイオ系コハク酸、バイオ系1,3-プロパンジオールおよびエステル化触媒とエステル化する。反応は、210℃にて、12時間または、全ての水が除去されるまで行う。
【0040】
あるいは、天然油ポリオールを要件とするエステル化反応は、ポリエステル合成用のモノマーの範囲で実行できる。多数の多官能カルボン酸および多価アルコールを用いることができる。本発明に適切な多官能カルボン酸(またはそれらのアルキルエステル)のリストは、限定されないが:コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ドデカン二酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、無水フタル酸;テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸、イソフタル酸、無水1,8-ナフチル酸、1,8-ナフチルジカルボン酸、1,8-ジメチルナフタレート、イソフタル酸ジメチル、フタル酸、ジメチルテレフタレートボトム、無水フタル酸ボトム、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、メリト酸、無水トリメリト酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリエチレンテレフタレート再生ポリマー、ポリブチレンテレフタレート再生ポリマー、ポリエチレンテレフタレートバージンポリマー、ポリブチレンテレフタレートバージンポリマー、それらの混合物などを包含する。本発明の好ましい具体例において、バイオ系多官能カルボン酸が用いられる。
【0041】
本発明による芳香族または脂肪族ポリエステルポリオールの調製に用いるために適切な多価アルコールの例示は、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジポリプロピレングリコール、トリポリプロピレングリコール、テトラポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,2,3-トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、および各繰り返し単位がエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドの高分子付加により誘導された2~4個の炭素原子を含有するポリ(オキシアルキレン)ポリオール、ならびにそれらの混合物を包含する。本発明の好ましい具体例において、バイオ系多価アルコールが用いられる。
【0042】
本発明に有用なフリーラジカル開始剤は、ペルオキシドであるか、または、ペルオキシドの組合せである。ペルオキシドは、「基」--O--O--を含む。ペルオキシドは、あるいは、一般式:
【0043】
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ、アルキル基、酸素-アルキル基および酸素-酸素-アルキル基のひとつを含み、X
1は、エステル基、酸素、およびアルキル基の一つを含み、X
2は、メチル基または、X
1がエステル基である限り水素を含む。)を含むことができる。典型的に、ペルオキシドは、モノペルオキシカーボネート、ペルオキシケタール、およびそれらの組合せを包含する。
【0044】
フリーラジカル開始剤はジイミド官能性を発揮し、すなわち、フリーラジカル開始剤は、「アゾ」フリーラジカル開始剤である。この実施例において、フリーラジカル開始剤は、典型的に、商標名VazoでDuPontから市販されている2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)を包含する。フリーラジカル開始剤は、典型的に、100重量部の重合性モノマーあたり0.01から5重量部、あるいは、0.1から1重量部の量で供給される。
【0045】
連鎖移動剤を添加して重合を緩和する。連鎖移動剤は、典型的に、チオールである。連鎖移動剤は、アルカンチオール、メルカプトカルボン酸、ヒドロキシルメルカプタン、アミノメルカプタン、カルボキシルスルフィド、無水硫化酸、それらの塩、およびそれらの組合せからなる群より選択される。連鎖移動剤は、典型的に、100重量部の重合性反応物あたり0.1から5重量部、あるいは、0.1から2重量部の量で供給される。
【0046】
本発明は、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒および1以上の任意の添加物または補助的化合物を用いる、ここに記載するハイブリッドポリオール由来のフレキシブルポリウレタンフォームを製造する方法も提供する。本発明の特許性あるハイブリッドポリオールは、あるパーセンテージの再生可能バイオ系成分を持つフレキシブルポリウレタンフォームを製造するために伝統的に用いられるバイオ系天然油ポリオールを上回るある種特別の利点を有している。通常、伝統的天然油ポリオールを用いて調製されるポリウレタンフォームは、特に、発熱スラブストック条件で、しばしば、臭気を発するが、本発明により製造されたハイブリッドポリオールを用いたポリウレタンフォームは無臭であることが分かった。本発明のハイブリッドポリオールのもうひとつの利点は、通常、フレキシブルポリウレタンフォームの調製に用いる石油化学由来ポリエーテルポリオールとの親和性である。ほとんどの伝統的天然油ポリオールは、石油化学由来ポリエーテルポリオールと混合すると、時間経過とともに相分離を起こし、フレキシブルポリウレタンフォーム調製のために混合物を使用する前に混合することが必要である。一方、本発明のハイブリッドポリオールは、石油化学由来ポリエーテルポリオールと制限なく混合され、永久に均質性を維持する。本発明のハイブリッドポリオールは、イソソルビド系ポリエステルポリオールと親和性があることが分かった。さらに、本発明のハイブリッドポリオールが3種の異なるポリオール化学によって3つの異なる成分を含むという事実は、このコポリエステルポリオールを仕立てて対象のアプリケーションに利益をもたらす特定の化学の強度を最大限にすることを可能にする。例えば、水性環境に曝されるポリウレタンフォームの調製において、ポリエステル部分を最小限にしつつ、溶剤耐性が要求されるアプリケーションにおいて、ポリエステル部分を最大限にすることができる。
【0047】
本発明に用いることができるポリイソシアネートは、少なくとも2個のイソシアネート基を有する、脂肪族、シクロ脂肪族、アリール脂肪族および芳香族ポリイソシアネートを包含する。フレキシブルスラブストックフォームの製造のため、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。適切な芳香族ポリイソシアネートの例示は、ジフェニルメタンジイソシアネート (MDI)の4,4’-、2,4’-および2,2’-異性体、それらのブレンド、ポリマー性およびモノマー性MDIブレンド、トルエン-2,4-および2,6-ジイソシアネート (TDI)、m-およびp-フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチルジフェニル-メタン-4,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルエーテルジイソシアネートおよび2,4,6-トリイソシアナトトルエンならびに2,4,4’-トリイソシアナトジフェニルエーテルを包含する。
【0048】
イソシアネートの混合物を用いることができ、例えば、トルエンジイソシアネートの2,4-および,6-異性体の市販の混合物である。TDI/MDIブレンドも用いることができる。ポリオールで作成されたMDIまたはTDI系プレポリマーも使用できる。イソシアネート-末端プレポリマーは、過剰なポリイソシアネートをアミン化ポリオールまたはそれらのイミン/エナミン、もしくはポリアミンを包含するポリオールと反応せせて調製する。
【0049】
脂肪族ポリイソシアネートの例示は、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート (HDI)、イソホロンジイソシアネート (IPDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート (H12MDI)、上記芳香族イソシアネートの飽和アナログおよびそれらの混合物を包含する。
【0050】
好ましいポリイソシアネートは、トルエン-2,4-および2,6-ジイソシアネートまたはMDIまたはTDI/MDIの組合せまたは、それらから作製されるプレポリマーである。
【0051】
ポリウレタンフォームを製造するために、発泡剤が通常必要とされる。フレキシブルポリウレタンフォームの製造において、水が、発泡剤として好ましい。水の量は、100重量部のポリオールに基づき、好ましくは、0.5から10重量部、より好ましくは2から7重量部の範囲にあり、なおより好ましくは、水は、100部のポリオールあたり2から5部の間である。いくつかのアプリケーションにおいて、水は、好ましくは、100重量部以上のポリオールあたり3部存在する。いくつかの好ましい具体例において、水は、100重量部未満のポリオールあたり6部存在する。他の発泡剤のリストは、液体または気体の二酸化炭素、塩化メチレン、アセトン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、メチラールまたはジメトキシメタンおよび炭酸ジメチルを包含する。
【0052】
ポリオールとポリイソシアネートとの反応のため、1以上の触媒を使用できる。いかなる適切なウレタン触媒も用いることができ、三級アミン化合物、イソシアネート反応性基を持つアミンおよび有機金属化合物を包含する。代表的な三級アミン触媒は、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、1-メチル-4-ジメチルアミノエチル-ピペラジン、3-メトキシ-N-ジメチルプロピルアミン、N-エチルモルホリン;ジメチルエタノールアミン、N-ココモルホリン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジメチルイソプロピルプロピレンジアミン、N,N-ジエチル-3-ジエチルアミノ-プロピルアミンおよびジメチルベンジルアミンを包含する。代表的な有機金属触媒は、有機ビスマス、有機水銀、有機鉛、有機鉄および有機スズ触媒を包含し、有機スズ触媒がこれらの中で好ましい。適切なスズ触媒は、塩化第一スズ、ジブチルスズジラウレート、およびオクタン酸第一スズなどのカルボン酸のスズ塩、ならびに他の有機金属化合物を包含する。アルカリ金属アルコキシドのような、ポリイソシアネートを三量化してポリイソシアヌレートを得るための触媒も、任意で、採用することができる。アミン触媒の量は、通常、配合物中0.02から5パーセントで変化する。有機金属触媒の量は、通常、配合物中で0.001から1パーセントで変化する。
【0053】
ポリウレタンフォームの作製に際して、通常、添加物または補助的化合物としてある量の界面活性剤を採用して、硬化するまで、発泡反応混合物を安定化することが好ましい。そのような界面活性剤は、有利には、液体または固体オルガノシリコーン界面活性剤を含む。他の界面活性剤は、長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、長鎖のアルキル酸硫酸エステル、アルキルスルホン酸エステルおよびアルキルアリールスルホン酸の三級アミンまたはアルカノールアミン塩を包含する。そのような界面活性剤は、崩壊および大きく不均一なセルの形成に対して発泡反応混合物を安定化させるのに十分な量で採用される。典型的に、100重量部の総ポリオールあたり0.2から3部の界面活性剤がこの目的には十分である。
【0054】
架橋剤または鎖延長剤は、所望すれば、添加物または補助的化合物として添加することができる。架橋剤または鎖延長剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびグリセロールなどの低分子量多価アルコール;ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどの低分子量アミンポリオール;エチレンジアミン、キシレンジアミン、およびメチレン-ビス(o-クロロアニリン)などのポリアミンを包含する。
【0055】
ポリウレタン生成物は、インジェクション、注入、スプレイ、キャストおよびカレンダーによって、連続的または非連続的のいずれかで製造される。これらのポリウレタン生成物は、フリーライズまたは、離型剤のありなし、インモールド装飾、または金型内にいずれかの挿入物もしくは被覆の投入などの成形条件で作製される。フレキシブルフォームの場合、生成物はモノ-またデュアル-硬度であり得る。フレキシブルスラブストックフォームは、フォーム成分を混合し、それらを、反応混合物が反応し、大気(あるときは、フィルムその他のフレキシブルカバー下で)に対して自由に立ち上がり、そして硬化する、槽その他の領域に分注することによって簡便に調製する。普通の商業スケールでのフレキシブルスラブストックフォーム製造において、フォーム成分または種々のそれらの混合物は、独立して、ミキシングヘッドにポンプで送られ、そこで、それらは混合され、紙またはプラスチックで裏張りされたコンベヤー上に分注される。発泡および硬化がコンベヤー上で起こり、フォームバンが形成される。得られたフォームは、典型的に、約10 kg/m3から最大で80 kg/m3である。好ましい範囲は、密度で約10 kg/m3から60 kg/m3であり、より好ましくは約10 kg/m3から50 kg/m3である。なおより好ましい具体例において、フレキシブルスラブストックフォームは、40 kg/m3以下の密度を有する。
【0056】
本発明により製造されたポリウレタンフォームは、当該産業においてすでに周知の様々なアプリケーションにおいて使用できる。フレキシブルおよびセミフレキシブルフォームは、寝具、家具、自動車のシート、サンバイザー、アームレスト、ドアパネル、および遮音および遮熱パーツなどのアプリケーションで使用される。
【実施例】
【0057】
総論
酸価の決定:
およそ1.00 - 2.00グラムのサンプルを三角フラスコに入れ、その後、およそ75 mlのトルエンを添加する。サンプルを、撹拌子を用いて溶解する。フラスコの内容物を加熱してサンプルを溶解する。一旦サンプルが溶解すれば、75 mlの酸価溶液をサンプルフラスコに入れる。酸価溶液は、600 mLトルエンおよび300mLメタノールおよび3-5 mlの2%エタノール性フェノールフタレインを含む。酸価溶液の添加後、得られた溶液を0.1 Nメタノール性水酸化カリウム (KOH)でピンクの終点まで滴定する。サンプルの酸価は、下式:
【0058】
【数1】
(式中、Vは、添加したKOH溶液のミリリットルで表した体積、NはKOH溶液の規定である。)で算出する。
【0059】
ヒドロキシル値の決定:60 mL無水酢酸、7.2 g p-トルエンスルホン酸および180 mL酢酸エチルを含む無水酢酸試薬溶液と、各mLの水に対しておよそ3 mLピリジンを含むピリジン-水溶液とを調製する。0.75-5.0 gの計量したサンプルを250 mLアセチル化フラスコに入れる。この分析に用いるサンプルの量は、サンプルの予測ヒドロキシル値に依存する。5 mLの無水酢酸試薬を250 mlアセチル化フラスコ中のサンプルに添加し、アセチル化フラスコに空冷管を取り付ける。サンプルなしであるが、対応する体積の試薬を含む、試薬ブランクも並行して調製する。試験サンプルや試薬ブランクを含有するアセチル化フラスコを水浴中70-72℃にてインキュベートする。試験サンプルを含有するアセチル化フラスコを、固体試験サンプルが溶けるまで撹拌して完全に混合し、その後、70-72℃にて1時間、いずれのフラスコもインキュベーションする。1時間のインキュベーションの終了後、アセチル化フラスコを水浴から取り出し、少なくとも10分間、室温水浴で冷却し、その後、2 mlの脱イオン水および10 mlのピリジン-水溶液を、空冷管を通して各フラスコに添加する。フラスコを激しく撹拌して完全混合を達成し、70-72℃浴に10分間戻し、頻繁な頻度で撹拌して、過剰無水酢酸試薬の加水分解を完了する。フラスコを取り出し、冷浴中で少なくとも10分間冷却し、濃縮管を取り外す。1 mLのクレゾールレッド-チモールブルー指示液を添加し、マグネット撹拌子を用いて撹拌し、サンプルおよびブランクを、0.5 Nメタノール性水酸化カリウムを用いて滴定する。ブランクの終点は、赤のかけらもない目立つ青色である。サンプルの終点は、サンプルの色に依存するが、通常は、最後の赤の痕跡が消えると、濃青灰色である。サンプルは、熱水で加熱して、滴定終了の直前に、酸のいかなる残留閉塞痕跡を解放する。ヒドロキシル値は、下式:
【0060】
【0061】
ハイブリッドポリオール調製物の官能性の決定
本発明により調製したハイブリッドポリオールの官能性は、ハイブリッドポリオールの合成に関わった各々の成分に割り当てられた官能性値および最終ハイブリッドポリオール調製物中の各々の成分の相対比率を用いて理論的に決定する。理論平均官能性は、下式:
【0062】
【数3】
のように算出できる。ヒドロキシル当量 (eq OH)は、各多価アルコールの官能性に、反応中の多価アルコールのモルを掛けて算出する。同様に、酸当量 (eq 酸)は、各ポリカルボン酸の官能性に、反応中のポリカルボン酸のモルを掛けて算出する。
【0063】
実施例1
ダイズ由来天然油ポリオール、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを用いるハイブリッドポリオールの調製
745 g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、生物学的発酵により誘導された270 gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)および0.63 g Reaxis(R) C-256 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)触媒を、N2雰囲気下の3 L丸底フラスコに充填した。温度を210℃に設定し撹拌した。723 gバイオ系1,3-プロパンジオール (Susterra, DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)に反応容器からのN2出口を用いて通気した。幾分かのコハク酸の昇華がフラスコの上半分で生じた。3時間(1時間ほど210℃での加温時間を含める)の加熱後、反応器を723 gのN2-通気1,3-プロパンジオールおよび782gコハク酸の添加のために、155℃に冷却した。温度を1時間80℃に設定し、ビグローカラムを反応器に取り付けた。1時間後、温度を、段階的に5時間かけて最高210℃まで昇温した。次いで、ビグローカラムを取り外し、酸価およびヒドロキシル値を測定して、反応進行を追跡した。総合で3 gのさらなる1,3-プロパンジオールを、58.9の理論ヒドロキシル値を狙って、210℃で加熱調理の12時間かけて添加した。さらなる0.63g Reaxis(R) C-256を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は1未満であった。最終酸価は0.825 mg KOH/gであり、最終ヒドロキシル値は57.4 mg KOH/gであった。得られたハイブリッドポリオールのサンプルをテトラヒドロフラン (THF)に溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)に通した。GPC分析は、この実施例に記載した方法により調製したハイブリッドポリオールが4696の数平均分子量、4181の重量平均分子量および3.02の多分散指数を有することを示した。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR11,3-88という。
【0064】
実施例2
ダイズ由来天然油ポリオール、バイオ系コハク酸およびジエチレングリコールを用いるハイブリッドポリオールの調製
756g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、生物学的発酵により誘導された275gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)および0.63g Reaxis(R) C-256触媒 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)を、N2雰囲気下の3L丸底フラスコに充填した。温度を210℃に設定し撹拌した。853 gジエチレングリコールに反応容器からのN2出口を用いて通気した。幾分かのコハク酸の昇華がフラスコの上半分で生じた。3.5時間(1.5時間ほど210℃での加温時間を含める)の加熱後、反応器を853 gのN2-通気ジエチレングリコールおよび623 gコハク酸の添加のために、155℃に冷却した。温度を80℃に1時間設定し、ビグローカラムを反応器に取り付けた。1時間後、温度を段階的に8時間かけて210℃まで昇温した。ビグローカラムを、次いで、取り外し、酸価およびヒドロキシル値を測定して、反応進行を追跡した。総合で20 gのさらなるジエチレングリコールを、58.9の理論ヒドロキシル値を狙って、210℃で加熱調理の24時間かけて添加した。さらなる0.63 g Reaxis(R) C-256触媒を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は2未満であった。ハイブリッドポリオール調製物の最終酸価は1.6 mg KOH/gであり、最終ヒドロキシル値は54.5 mg KOH/gであった。このハイブリッドポリオールのサンプルをTHFに溶解し、GPCに通した。GPC分析は、この実施例に記載した方法により調製したハイブリッドポリオールが4627の数平均分子量、14054の重量平均分子量および3.03の多分散指数を有することを明らかにした。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR11,3-121という。
【0065】
実施例3
ダイズ由来天然油ポリオール、無水フタル酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを用いるハイブリッドポリオールの調製
812 g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、369 g無水フタル酸、および0.63 g Reaxis(R) C-256触媒 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)をN2雰囲気下の3 L丸底フラスコに充填した。温度を210℃に設定した。30分間加熱して、130℃に達した後、ビグローカラムを反応器に取り付け、613 gバイオ系1,3-プロパンジオール (Susterra, DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)および727g無水フタル酸をフラスコに入れた。温度を1時間100℃に設定した。1時間後、温度を段階的に4時間かけて205℃まで昇温した。205℃にて4時間のインキュベーション後、ビグローカラムを取り外し、酸価およびヒドロキシル値の測定を行って、反応進行を追跡した。総合で27 gのさらなるバイオ系1,3-プロパンジオールを、58.9の理論ヒドロキシル値を狙って、210℃で加熱調理の30時間かけて添加した。さらなる0.63g Reaxis(R) C-256触媒を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は2未満であった。得られたハイブリッドポリオールの最終酸価およびヒドロキシル値は、それぞれ、1.87 mg KOH/gおよび68 mg KOH/gであった。粘度は測定しなかったが、定性的に、この実施例で記載された方法により調製されたこのハイブリッドポリオールは、実施例1および実施例2に記載された手順で調製されたハイブリッドポリオールよりもより粘稠であった。得られたハイブリッドポリオールのサンプルをテトラヒドロフラン (THF)に溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)に通した。GPC分析は、この実施例に記載した方法により調製したハイブリッドポリオールが3769の数平均分子量、6482の重量平均分子量および1.72の多分散指数を有することを示した。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR11,3-123という。
【0066】
実施例4
ダイズ由来天然油ポリオール、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを用いるハイブリッドポリオールの調製
1361.9 g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、生物学的発酵により誘導された481.7 gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)および1.13 g Reaxis(R) C-256触媒 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)をN2雰囲気下の5 L丸底フラスコに充填した。温度を210℃に設定し撹拌した。幾分かのコハク酸の昇華がフラスコの上半分で生じ、84 g PDOを添加して昇華を制御した。フラスコの含有物を6時間調理し、そして、一晩冷却した。1190 gバイオ系1,3-プロパンジオール (DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)に反応容器からのN2出口を用いて通気した。1190 g N2-通気1,3-プロパンジオール (Susterra, DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)および生物学的発酵により誘導された1396 gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)を冷却した反応器に添加し、温度を1時間80℃に設定した。ビグローカラムを反応器に取り付けた。1時間後、温度を10時間かけて昇温した。次いで、ビグローカラムを取り外し、酸価およびヒドロキシル値を測定して反応進行を追跡した。総合で84 gの1,3-プロパンジオール (DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)を、58.4の理論ヒドロキシル値を狙って、210℃で加熱調理の33時間かけて添加した。さらなる1.13 g Reaxis(R) C-256触媒を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は1未満であった。最終酸価は0.855 mg KOH/gであり、最終ヒドロキシル値は78.8 mg KOH/gであった。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR11,3-163という。
【0067】
実施例5
ダイズ由来天然油ポリオール、バイオ系コハク酸およびジエチレングリコールを用いるハイブリッドポリオールの調製
1361 g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、生物学的発酵により誘導された494gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)および1.13 g Reaxis(R) C-256触媒 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)をN2雰囲気下の5 L丸底フラスコに充填した。温度を210℃に設定し撹拌した。1541 gジエチレングリコールに反応容器からのN2出口を用いて通気した。幾分かのコハク酸の昇華がフラスコの上半分で生じた。6時間の加熱後、1541 g N2-通気ジエチレングリコールおよび生物学的発酵により誘導された1121 gコハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)を添加した。温度を1時間80℃に設定し、ビグローカラムを反応器に取り付けた。温度を、次いで、段階的に8時間かけて210℃に昇温した。次いで、ビグローカラムを取り外し、酸価およびヒドロキシル値を測定して反応進行を追跡した。総合で13.6 gのジエチレングリコールを、58.9の理論ヒドロキシル値を狙って、210℃で加熱調理の38時間かけて添加した。さらなる1.13g Reaxis(R) C-256触媒 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は3未満で安定した。最終酸価は2.26 mg KOH/gであり、最終ヒドロキシル値は58.2 mg KOH/gであった。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR11,3-172という。
【0068】
実施例6
ダイズ由来ポリオール、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを用いるハイブリッドポリオールの調製
1335 g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、生物学的発酵により誘導された472 gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)、1.13 gトリメチロールプロパン、および1.13 g Reaxis(R) C-256触媒 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)をN2雰囲気下の5 L丸底フラスコに充填した。温度を210℃に設定し撹拌した。幾分かのコハク酸の昇華がフラスコの上半分で生じた。75 g 1,3-プロパンジオール (DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)を3時間後、コハク酸昇華を制御する温度にて添加した。1170 g 1,3-プロパンジオール (DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)に反応容器からのN2出口を用いて通気した。5時間の加熱後、酸価はAV=104であると分析され、1170 g N2-通気1,3-プロパンジオール (Susterra, DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)、103.4 gトリメチロールプロパン、および生物学的発酵により誘導された1370 gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)を添加した。温度を1時間90℃に設定し、ビグローカラムを反応器に取り付けた。1時間の保持時間後、温度を段階的に8時間かけて昇温した。次いで、ビグローカラムを取り外し、酸価およびヒドロキシル値試験を行って、84.6の理論ヒドロキシル値を狙って、反応進行を追跡した。さらなる1.13 g Reaxis(R) C-256触媒(Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は1未満であった。最終酸価は0.95 mg KOH/gであり、最終ヒドロキシル値は80.5 mg KOH/gであった。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR160-9という。
【0069】
実施例7
豆由来天然油ポリオール、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを用いるハイブリッドポリオールの調製
741.6 g Agrol(R) 3.0 (BioBased Technologies, Rogers, Arkansas USA)、生物学的発酵により誘導された262.3 gバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)および0.63 gチタン(IV)イソプロポキシ (Sigma Aldrich)をN2雰囲気下の3 L丸底フラスコに充填した。温度を80℃に設定して1時間撹拌し、次いで、温度を205℃に昇温した。幾分かのコハク酸の昇華がフラスコの上半分で生じ、42.8 g PDOを添加して、昇華を制御し、ビグローカラムを取り付けた。フラスコの含有物を7時間反応させた。反応器を150℃に冷却し、646 g 1,3-プロパンジオール (Susterra, DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)、生物学的発酵により誘導された760 gコハク酸(Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)、および58.1 gトリメチロールプロパン (Alfa Aesar)を添加した。温度を段階的に10時間かけて最高で205℃まで昇温した。次いで、ビグローカラムを取り外し、酸価の測定を行って反応進行を追跡した。さらなる0.63 gチタン(IV)イソプロポキシ (Sigma Aldrich)を添加すると、酸価は20未満に低下した。反応物を冷却したとき、酸価は1未満であった。最終酸価は00.67 mg KOH/gであり、最終ヒドロキシル値は68.7 mg KOH/gであった。この実施例に記載した手順により調製したこのバッチのハイブリッドポリオールをMYR160-69という。
【0070】
実施例8
バイオ系イソソルビド、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを含むバイオ系ポリエステルポリオールの調製
バイオ系イソソルビド、バイオ系コハク酸およびバイオ系1,3-プロパンジオールを含むバイオ系ポリエステルポリオールを、窒素下、680グラムのバイオ系イソソルビド (Polysorb PA, Roquette, Lestrem, France)、124.6グラムのトリメチロールプロパン (Alfa Aesar)、127グラムのバイオ系1,3-プロパンジオール (DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)、1097グラムの生物学的発酵により誘導されたバイオ系コハク酸 (Myriant Corporation, Woburn, Massachusetts, USA)、5.16グラムAnox(R) 1315 (Addivant, Danbury, Connecticut, USA)、および0.38グラムのReaxis(R) C-256 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)を添加し、混合物を80℃に加熱することによって調製した。反応物を80℃にて1時間保持し、次いで、温度を210℃に昇温した。およそ9時間後、さらなる500グラムの1,3-プロパンジオール (DuPont Tate & Lyle, Louden, Tennessee, USA)を反応物に添加し、温度を205℃に徐々に昇温した。酸価を20未満に下げて、さらなる0.38グラムのReaxis(R) C-256 (Reaxis Inc., McDonald, Pennsylvania, USA)を添加し、反応物を、酸価が1未満になるまで205℃に保持した。このポリエステルポリオール調製物の最終実測酸価は0.87 mg KOH/gであった。この実施例に記載した手順により調製したポリエステルポリオールのこのバッチを51701251という。ポリウレタン配合物中のイソソルビドの存在が、剛性、強度および靱性を付与する。
【0071】
実施例9
ポリウレタンフォームの調製および試験
内寸 (LxBxH)が約12” x 7” x 7”の合板ボックスを構築し、買い物袋をこのボックスの内部に適合するサイズに裁断して、内部に貼り付けた。この合板ボックスは、フォームサンプルを長方形に維持して、フォームサンプルをより簡単に切り出せるようにする。
【0072】
ドラフトチャンバーに置いた較正したはかりを用いて、全ての材料を計量した。全てのポリオールおよびイソシアネートを除く添加物をビーカーAに計り取った。トルエンジイソシアネート (TDI)を、「湿潤風袋」技術を用いてビーカーBに計り取った。湿潤風袋技術は、注入プロセスの間ビーカー内のいかなる滞留物も補償し、湿潤風袋技術は、はかりの上でゼロ点に設定する前に、ビーカーを満たしその含有物をからにするステップを要件とする。
【0073】
ビーカーA中の成分を(記録タイマーを用いて)10秒間混合した。10秒の時点で、イソシアネートビーカーBからビーカーAに添加した。タイマー上20秒間後またはクリーム時間の直前、発泡性混合物を上記ボックスに注ぎ込む。全ての混合は、スタンドに取り付けたドリルミキサーを用いて行った。ドリルミキサーは約1500 RPMのスピードを有する。
【0074】
フォーム混合物の共通の観察は、クリーム時間(混合物が、半透明液体からクリーム状に変化するとき)、立ち上がり時間(発泡体が立ち上がりを終わらせた瞬間)および、適切な反応バランスを表す、ほぼ完全立ち上がりの時間にてフォームの表面に良好なバブルが現れるまでの時間である。
【0075】
表1に示す組成物を用いて石油化学由来ポリエーテルポリオールCarpenter Carbopol GP 3008のみを含有するポリウレタン配合物を調製した。Carpenter Carbopol GP 3008は、3000 MWグリセロールおよび、内部に8%エチレンオキシドがあるプロピレンオキシド系ポリエーテルポリオールトリオールである。Carpenter Carbopol GP 3008は、フレキシブルスラブストックポリウレタンフォームに適している。この発明において、ポリエーテルポリオールCarpenter Carbopol GP 3008のみを用いて調製したポリウレタン配合物を、「対照」または「対照配合物」または「対照ポリウレタン配合物」という。表1の対照ポリウレタン配合物中の種々の成分の相対分率は、用語pph(質量百分率)で表される。
【0076】
石油化学由来ポリエーテルポリオールおよび様々なパーセンテージのバイオ系ハイブリッドポリオールを含む多数のポリウレタンフォームバッチは、表2および3に示す組成物を用いて調製した。この発明により調製されたハイブリッドポリオールの寄与は、用語「百分率 (pph)」で表記される。かくして、最終ポリウレタン調製物中のハイブリッドポリオール含有物の含量が25 pphと表記されたとき、最終ポリウレタン調製物中、本発明により調製した特定のハイブリッドポリオールが25パーセントのポリオール含量であることを示す。バッチMYR11,3-163のような、本発明により調製されたある種のハイブリッドポリオールは、全てバイオ系成分で調製されているため、11,3-163 (25pph)ポリウレタンの調製に用いた総ポリオール中のバイオ系成分の寄与は25%であるとみなすことができる。換言すれば、25 pphのMYR11,3-163バッチのハイブリッドポリオールを用いて調製されたポリウレタンは、25%再生可能バイオ系材料を含有している。実施例4に表記したように、MYR11,3-163バッチのハイブリッドポリオールは、全てがバイオ系材料に由来するAgrol(R) 3.0、コハク酸および1,3-プロパンジオールを用いて調製された。バイオ系成分を持つポリウレタン配合物の調製に用いたハイブリッドポリオールバッチ11,3-163およびバッチ11,3-172は、表2に示されるように、それぞれ、78.8 mg KOH/gおよび58.2 mg KOH/gのヒドロキシル値を有していた。バイオ系成分を持つポリウレタン配合物の調製に用いたハイブリッドポリオールバッチ160-9は、表3に示されるように、80.5 mg KOH/gのヒドロキシル値を有していた。
【0077】
様々な比率のハイブリッドポリオールを用いて調製した種々のフォーム配合物の物理特性試験は、当該産業分野で広く用いられているASTM 3574-11法に従って行った。本発明で試験した種々のフォーム配合物の物理特性のリストは、密度、圧縮撓み (CFD) 25%および65%(フォーム硬度)、張力、破断時伸長、弾力(ボールリバウンド)、空気流抵抗、圧縮永久歪みならびにぬれ圧縮永久歪みを包含する。物理試験の結果は表4~13に示す。
【0078】
対照ポリウレタン配合物および、分率が増進するバイオ系成分を含むポリウレタン配合物の外観を
図6、7および8に描写する。これらの図に描写されるように、外観の観点で、対照ポリウレタン配合物と、本発明により調製された増進するバイオ系含量の種々の他の配合物との間には、全く相違点がない。全てのフォームは、おおよそ、許容品質であったが、外来ポリオールのレベルが増大すると空気流が明らかに低下した。この効果を埋め合わせるために、フォームは、より低レベルのスズ触媒を用いるハイブリッドポリオールMYR11,3-163で作製して、表2に示すように、空気流を増やした。
【0079】
実施例10
イソソルビド、コハク酸および1,3-プロパンジオールを含むバイオ系コポリエステルポリオールを用いるポリウレタンフォームの調製および試験
イソソルビド、コハク酸および1,3-プロパンジオールを含むバイオ系ポリエステルポリオールを含むポリウレタンフォームを調製するにあたり、実施例7のように調製した885グラム (85%)のMYR160-69を、実施例8のように調製した156グラム (15%)の51701251と混合して、組成物MYR160-98を得た(表14)。ポリウレタンフォーム調製物を、表15のように試薬を合わせることによって配合した。合わせて5つの異なるフォーム配合物を、MYR160-98の濃度を0%から50に増大させて調製した。これらの種々のフォーム配合物の物理特性の試験は、当該産業分野で広く用いられているASTM 3574-11法に従って行った。本発明で試験した種々のフォーム配合物の物理特性のリストは、密度、フラジール透過度 (1/2”)、圧縮撓み (CFD) 25%および65%(フォーム硬度)、張力、破断時伸長、弾力(ボールリバウンド)、空気流抵抗、50%および90%圧縮永久歪みおよびぬれ圧縮永久歪みを包含する。物理試験の結果は表16に示す。
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