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  • 特許-海底メタン生産組立体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】海底メタン生産組立体
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/01 20060101AFI20220119BHJP
   E21C 50/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E21B43/01
E21C50/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018568776
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 NO2017050176
(87)【国際公開番号】W WO2018009073
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】20161125
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】516129471
【氏名又は名称】エイカー ソリューションズ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビリントン,アンダース
(72)【発明者】
【氏名】ゴルディーバ,タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノフ,パヴェル
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105041271(CN,A)
【文献】特開2015-203282(JP,A)
【文献】特開2015-030967(JP,A)
【文献】特開2010-261252(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101555797(CN,A)
【文献】特表2009-520097(JP,A)
【文献】国際公開第2012/061027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/01
E21C 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底からメタンハイドレート地層(5)へ延びる海底坑井(3)を備えるメタン生産組立体であって、
-海底坑井(3)へ延びる坑井ケーシング(7)と、
坑井制御弁(23)付きのボア(21)を有する海底坑井制御組立体(9)であって、前記ボア(21)が、前記坑井ケーシング(7)の内に面する壁により画定される坑井スペースと流体連通する、海底坑井制御組立体(9)と、
-メタンハイドレート地層と流体連通する水中ポンプ(17)と、
-水出口(31)及びメタン出口(32)を有するメタン-水分離器(29)と、
をさらに備え、
前記水中ポンプが前記海底坑井よりも上に配置される、メタン生産組立体。
【請求項2】
洋上設備(11)から下へ、前記海底坑井制御組立体(9)へ延びるライザ(13)を備える、請求項1に記載のメタン生産組立体。
【請求項3】
前記水中ポンプ(17)が、前記海底坑井制御組立体(9)及び前記ライザ(13)の外部に配置される、請求項2に記載のメタン生産組立体。
【請求項4】
前記水中ポンプ(17)が、前記海底坑井制御組立体(9)と又は切り離し装置(15)と一体化される、請求項2に記載のメタン生産組立体。
【請求項5】
前記メタン-水分離器(29)がライザジョイント(113)と一体化される、請求項2乃至4の一項に記載のメタン生産組立体。
【請求項6】
前記メタン-水分離器(29)が前記海底坑井制御組立体(9)の下流に配置され、前記水中ポンプ(17)が前記水出口(31)に接続し、海岸へ延びるフローライン(213)が前記メタン出口(32)と流体連通する、請求項1に記載のメタン生産組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底メタンハイドレート貯留層からのメタンの生産に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンクラスレートと呼ばれることもある膨大な量の自然発生するメタンハイドレートが存在する。このような地層の典型的な領域は、永久凍土域及び或る一定の圧力が存在する海底下にある。石油及びガスの分野では、メタンハイドレートは、炭化水素を伝送する送り管内で生成し、これにより、このような管を詰まらせる傾向があるものとしてよく知られる物質である。
【0003】
或る温度以下及び/又は或る圧力以上では、メタンハイドレートは固体である。温度を上昇させることにより及び/又は圧力を低下させることにより、これはメタンと水に分解することになる。これを分解する別の方法は、圧力-温度平衡をシフトさせるべくメタノールなどの抑制剤を注入することである。国際特許出願公開WO2012061027はこのことを紹介している。
【0004】
多くの国にとって可能性のあるエネルギー資源であるため、海底地層からメタンを生産する方法を調査するための研究が行われている。メタンは、顕著な温室効果ガスである。したがって、メタンは、大気中に逃げないようにされなければならない。
【0005】
海底地層からメタンを生産する1つの公知の方法は、地層内の圧力を下げ、これにより、水和物がメタンと水に分かれるようにすることである。圧力を下げるために、メタンハイドレート貯留層の近くの坑井内にESP(電動水中ポンプ)などの水中ポンプを設けることが公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、好ましくは時間とコストとの両方に関して効率的な様態で海底メタンハイドレート層からメタンを生産するための方策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、海底からメタンハイドレート地層へ延びる海底坑井を備えるメタン生産組立体が提供される。坑井ケーシングが海底坑井へ延びる。その組立体は、海底坑井制御組立体と、メタンハイドレート地層と流体連通する水中ポンプと、水出口及びメタン出口を有するメタン-水分離器とを有する。本発明によれば、水中ポンプは海底坑井よりも上に配置される。
【0008】
有利には、坑井制御弁は、坑井制御組立体の一部である。
【0009】
いくつかの実施形態では、メタン生産組立体は、洋上設備から下へ、坑井制御組立体へ延びるライザを備えてよい。このような洋上設備は、船などの浮かんでいる洋上施設、又は海底により支持される設備であってよい。
【0010】
このようなライザを備える実施形態では、水中ポンプは、坑井制御組立体及びライザの外部に配置されてよい。
【0011】
代替的に、水中ポンプは、坑井制御組立体と又は切り離し装置と一体化することができる。
【0012】
また、メタン生産組立体がライザを備える実施形態によれば、メタン-水分離器は、ライザジョイントと一体化することができる。好ましくは、分離器は、この場合、最も下の又は下側のライザジョイントのうちの1つと一体化されることになる。
【0013】
いくつかの実施形態では、メタン-水分離器は、坑井制御組立体の下流に配置することができる(すなわち、坑井制御組立体は、分離器と坑井との間に位置決めされる)。さらに、水中ポンプを水出口に接続することができる。メタン出口と流体連通するフローラインが、海岸へ延びることができる。
【0014】
このような方策によれば、生産段階中に洋上設備又はライザストリングは必要とされない。
【0015】
坑井制御組立体は、典型的に、坑井制御弁付きのボアを有する。いくつかの実施形態では、ボアは、ケーシングの内に面する壁により画定される坑井スペースと流体連通する。したがって、このような実施形態では、坑井へ延びる生産チュービングは必要とされない。分解されたメタンは、坑井の内部を通して上へ導かれ、ケーシング壁と接触する。
【0016】
本発明が、上記の一般的な用語で論じられている一方で、実施形態のいくつかの詳細かつ非限定的な例が、図面を参照して以下に提示されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】先行技術に係るメタン生産組立体の概略図である。
図2】本発明に係るメタン生産組立体の概略図である。
図3】本発明に係る別の実施形態の概略図である。
図4】本発明に係るさらなる実施形態の概略図である。
図5】本発明の別の実施形態の概略図である。
図6】メタン-水分離器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、先行技術の方策に係るメタン生産組立体を示す。海底1から下では、海底坑井3が、海底よりも下のメタンハイドレート地層5へ延びる。坑井ケーシング7が坑井3に配置される。
【0019】
坑井3の頂部上のウェルヘッドに、坑井制御組立体9が設けられる。洋上設備11から、ライザストリング13が下へ、坑井制御組立体9へ延びる。この図示した先行技術の方策では、ライザストリング13と坑井制御組立体9との間に切り離し装置15も配置されている。
【0020】
図示した方策での海深は、例えば約1000mとすることができる。したがって、約100バールの圧力が海底に存在することになる。さらに、ライザストリング13及びケーシング7の内部の水柱により、約130バールの圧力が、ケーシング7の下側部分に(すなわち、メタンハイドレート地層の位置に)存在し得る。
【0021】
坑井3内の下では、坑井3内に配置された導水管19を通して上方へ揚水するように構成されるESP(電動水中ポンプ)17が配置されている。
【0022】
ESP17が水柱から水を除去する(水柱の高さが下がる)とき、圧力が下がり、メタンハイドレートを水とメタンに分解することができる。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態を、図1の図と類似した概略的な側面図で示す。図1で言及したものと同一の又は類似の構成要素に同じ参照番号が与えられている。図2に示された、本発明に係るこの実施形態では、坑井制御組立体9は、2つの坑井制御弁23を備えるボア21を有する。切り離し装置15もボア弁27付きのボア25を有する。ライザストリング13が坑井制御組立体9から切り離される場合、切り離し装置15のボア弁が、典型的にはメタンであろう流体をライザストリング13内に保持することになる。このようなシナリオでは、坑井制御弁23も閉じることになる。
【0024】
図2に示された実施形態では、メタン-水分離器29が、坑井制御組立体9よりも上に、すなわちその下流に配置される。この実施形態では、これは切り離し装置15の下流に配置されるということでもある。メタン-水分離器29は、ポンプホース33に接続する水出口31を有する。ポンプホース33は水中ポンプ17に接続し、水中ポンプ17は、この実施形態では坑井スタックとは別に、すなわち、坑井制御組立体9、切り離し装置15、及びライザストリング13から離して位置決めされる。導水管19が、水中ポンプ17から上へ、洋上設備11へ延びる。図2の例では、洋上設備は、単に洋上フローツリーの形態で表される。洋上フローツリーは、通常は、浮かんでいる船などの上に設置されることになる。
【0025】
図3は、図2に示された実施形態と類似した実施形態を示す。しかしながら、図3に示された実施形態では、ポンプ17は、切り離し装置15と一体化される。
【0026】
図面に示していない別の実施形態では、ポンプ17は坑井制御組立体9と一体化することもできる。このような実施形態は、切り離し装置15なしとすることもできる。
【0027】
図4に示された実施形態では、分離器29が、ライザジョイント113のうちの1つと一体化され、これはさらなるライザジョイント113と共にライザストリング13を形成する。図示した実施形態では、メタン-水分離器29は、切り離し装置15に接続するライザジョイント113内に一体化される。切り離し装置なしの実施形態では、分離器29を備えるライザジョイント113を、坑井制御組立体9に接続することもできる。図4での例には、坑井制御組立体9よりも下にある坑井は示されていない。
【0028】
図2図3、及び図4を参照して説明した実施形態では、生成した水は、導水管19を通して洋上設備11へ汲み上げることができる。導水管19は、ライザストリング13に取り付けられてよい。
【0029】
さらに別の実施形態が図5に示される。この実施形態では、坑井制御組立体9に接続される洋上設備は存在しない。代わりに、生成したメタンは、フローライン213を通じて陸上受入設備(図示せず)へ流れる。フローライン213は、分離器29のメタン出口32に接続する。さらに、水中ポンプ17は、分離器29の水出口31に接続する。メタンハイドレートから分解されて生成した水は、メタンを受け入れるのと同じ陸上受入設備などの陸上へ送られる。
【0030】
図6は、メタン-水分離器29を概略的に示す。一実施形態では、図4を参照して前述した実施形態のように、分離器29は、ライザストリング13の下部と一体化することができる。したがって、図6に示した実施形態は、図4を参照して説明した実施形態に対応し得る。
【0031】
分離器29は、メタンハイドレート地層5と流体連通するソースパイプ35を有する。ソースパイプ35は、坑井3へ延びる生産チュービング(図示せず)を介して地層5に接続してよい。しかしながら、生産チュービングを用いない方策もあり得る。このような実施形態では、ソースパイプ35は、例えば、切り離し装置15の上側部分又は坑井制御組立体9の上側部分に単純に接続してよい。
【0032】
図示した実施形態では、ソースパイプ35の上端は、ライザストリング13の下側ライザジョイント113であり得る外側パイプ内に配置される。
【0033】
分離器29の下部で、水出口31がESP17と流体連通する。
【0034】
ライザストリング13が高い水柱を有する場合、メタンハイドレート地層5に顕著な圧力が存在し得る。しかしながら、ポンプ17が分離器29から水を汲み出す際に、ライザストリング13内の水柱の高さが下がることになる。最終的には、水柱の高さは、地層5に十分に低い圧力が存在するのに十分なだけ低い。温度が十分に高ければ、典型的には少なくとも約0℃ならば、メタンハイドレートは水とメタンガスに分解することになる。水とガスとの混合物は、ソースパイプ35を通って上方へ流れることになる。重力に起因して、水は、ソースパイプ35の外側の、外側パイプ113の下部に溜まることになり、一方、メタンガスは、ライザストリング13を通って上方へ(又は図5に示すようにフローライン213へ)上昇することになる。
【0035】
当業者には分かるように、地層よりも上の水柱(又はメタンと水との混合物を含有する柱)の垂直高さは、分解が起こる地層の領域での圧力を支配することになる。さらに、メタンハイドレートが分解する条件と分解しない条件との境界は、圧力と温度の関数である曲線に沿って延びる。例えば、約0℃で、圧力は約28バール未満でなければならない。しかしながら、温度が例えば10℃に上昇する場合、水和物は、約65バール(約650メートルの水柱に対応する)ででさえも分解することになる。その結果、ポンプ17が水を除去し得る位置と分解が起こる領域の位置との間の高さは、分解プロセスをもたらすのに適する高さ内である必要がある。
【0036】
地層5内の温度を高めるために、坑井内にヒータ(図示せず)が配置されてよい。
【0037】
水中ポンプ17は、例えば、ESP(電動水中ポンプ)又はHSP(液圧式水中ポンプ)などの任意の適切なタイプのものであってよい。
【0038】
種々の詳細及び技術的特徴を異なる実施形態に関連して前述している。いくつかの特徴は特定の実施形態に関連しているが、このような特徴は、他の実施形態に存在してもよく、その特徴が開示された実施形態の他の特徴から分離していてよいことに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6