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特許7011618溶存水素水生成装置及び溶存水素水生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】溶存水素水生成装置及び溶存水素水生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A61M1/16 161
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019061115
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157254
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】仲西 直樹
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177911(JP,A)
【文献】特開2015-003871(JP,A)
【文献】TERAWAKI, Hiroyuki, et al.,Effect of a hydrogen (H2)-enriched solution on the albumin redox of hemodialysis patients,Hemodialysis International,2014年,Vol.18, No.2,pp.459-466,ISSN 1542-4758
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に水素が溶け込んだ溶存水素水を生成するための装置であって、
前記溶存水素水を生成する水素水生成部と、
前記溶存水素水で調製された透析液を用いて透析を受けている患者の血液に含まれる水素ガスを検出するための検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記水素水生成部を制御するための制御部とを備え
前記検出部は、前記患者からダイアライザーに送られる前記血液に含まれる前記水素ガスの量を検出する第1検出器と、前記ダイアライザーから前記患者に返還される前記血液に含まれる前記水素ガスの量を検出する第2検出器とを含み、
前記制御部は、前記第2検出器によって検出された前記水素ガスの前記量と前記第1検出器によって検出された前記水素ガスの前記量との差の累積値に基づいて、前記溶存水素水を生成する、
溶存水素水生成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記差の平均値に基づいて、前記水素水生成部を制御する、請求項1記載の溶存水素水生成装置。
【請求項3】
前記差を通知する通知部をさらに備える、請求項1又は2に記載の溶存水素水生成装置。
【請求項4】
前記水素水生成部は、水を電気分解するための陽極給電体と陰極給電体とを含み、
前記制御部は、前記差が予め定められた閾値よりも小さいとき、前記制御部は、前記陽極給電体及び前記陰極給電体に供給する前記電気分解のための電流を大きくする請求項1ないし3のいずれかに記載の溶存水素水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液の調製に用いられる溶存水素水を生成するための溶存水素水生成装置及び溶存水素水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療においては、水素が溶け込んだ溶存水素水を用いて調製された透析液が患者の酸化ストレスの低減に寄与するとして、近年注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5840248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置を用いた透析治療において、水素がどの程度患者の体内に届けられているかが不明であり、体内に届けられた水素に応じて溶存水素の生成を制御する技術の確立が望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、溶存水素水を用いた血液透析治療において、患者の体内に届けられた水素に応じて溶存水素の生成を制御する技術を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、水に水素が溶け込んだ溶存水素水を生成するための溶存水素水生成装置であって、前記溶存水素水を生成する水素水生成部と、前記溶存水素水で調製された透析液を用いて透析を受けている患者の血液に含まれる水素ガスを検出するための検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記水素水生成部を制御するための制御部とを備える。
【0007】
本発明に係る前記溶存水素水生成において、前記検出部は、前記患者からダイアライザーに送られる前記血液に含まれる前記水素ガスの量を検出する第1検出器と、前記ダイアライザーから前記患者に返還される前記血液に含まれる前記水素ガスの量を検出する第2検出器とを含む、ことが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記溶存水素水生成装置において、前記制御部は、前記第2検出器によって検出された前記水素ガスの前記量と前記第1検出器によって検出された前記水素ガスの前記量との差に基づいて、前記水素水生成部を制御する、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記溶存水素水生成において、前記制御部は、前記差の平均値に基づいて、前記水素水生成部を制御する、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記溶存水素水生成装置において、前記制御部は、前記差の累積値に基づいて、前記溶存水素水を生成する、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記溶存水素水生成において、前記水素ガスの前記量又は前記差を通知する通知部をさらに備える、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記溶存水素水生成装置において、前記水素水生成部は、前記水を電気分解するための陽極給電体と陰極給電体とを含み、前記制御部は、前記溶存水素水の溶存水素濃度を大きく又は小さくするように、前記陽極給電体及び前記陰極給電体に供給する前記電気分解のための電流を制御する、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記溶存水素水生成において、前記水素水生成部は、前記水を電気分解するための陽極給電体と陰極給電体とを含み、前記制御部は、前記差が予め定められた閾値よりも小さいとき、前記制御部は、前記陽極給電体及び前記陰極給電体に供給する前記電気分解のための電流を大きくすることが望ましい。
【0014】
本発明の第2発明は、水に水素が溶け込んだ溶存水素水を生成するための溶存水素水生成方法であって、前記溶存水素水を生成する生成工程と、前記溶存水素水で調製された透析液を用いて透析を受けている患者の血液に含まれる水素ガスを検出する検出工程と、前記水素ガスの検出結果に基づいて、前記溶存水素水の溶存水素濃度を制御する制御工程とを含む。
【0015】
本発明に係る前記溶存水素水生成方法において、前記検出工程は、前記患者からダイアライザーに送られる前記血液に含まれる前記水素ガスの量を検出する第1検出工程と、前記ダイアライザーから前記患者に返還される前記血液に含まれる前記水素ガスの量を検出する第2検出工程とを含み、前記制御工程は、前記第2検出工程によって検出された前記水素ガスの前記量と前記第1検出工程によって検出された前記水素ガスの前記量との差に基づいて、前記溶存水素濃度を制御する、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
前記第1発明の前記溶存水素水生成装置は、前記透析中の前記患者の前記血液に含まれる前記水素ガスを検出する前記検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記水素水生成部を制御するための前記制御部とを備える。これにより、前記患者の体内に届けられた前記水素に基づいて前記透析液の調製に用いられる前記溶存水素水の生成を適切に制御することが可能となる。
【0017】
前記第2発明の前記溶存水素水生成方法は、前記透析中の患者の血液に含まれる前記水素ガスを検出する前記検出工程と、前記水素ガスの前記検出結果に基づいて、前記溶存水素水の溶存水素濃度を制御する制御工程とを含む。これにより、前記患者の体内に届けられた前記水素に基づいて前記透析液の調製に用いられる前記溶存水素水の溶存水素濃度を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の溶存水素水生成装置を含む透析システムの概略構成を示す図である。
図2図1の検出部を詳細に示す図である。
図3図1の水素水生成部の一例である電解槽を示す図である。
図4図1の溶存水素水生成装置に用いられる溶存水素水生成方法の処理手順を示すフローチャートである。
図5図4の溶存水素水生成方法の変形例の処理手順を示すフローチャートである。
図6図5の溶存水素水生成方法の別の変形例の処理手順を示すフローチャートである。
図7図5の溶存水素水生成方法のさらに別の変形例の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の溶存水素水生成装置1を含む透析システム100の概略構成を示している。溶存水素水生成装置1は、溶存水素水生成で調製された透析液が用いられる透析システム100において、溶存水素水を生成するための装置である。
【0020】
透析システム100は、逆浸透膜処理装置2と、溶存水素水生成装置1と、透析液調製装置5と、透析装置6とを含んでいる。
【0021】
逆浸透膜処理装置2は、原水を逆浸透処理によって浄化して、溶存水素水生成装置1に供給する。原水には、一般的には水道水が利用されるが、その他、例えば、井戸水、地下水等を用いることができる。
【0022】
逆浸透膜処理装置2は、軟水化処理装置21と、活性炭処理装置22と、逆浸透膜モジュール23とを含んでいる。軟水化処理装置21は、原水からカルシウムイオン及びマグネシウムイオン等の硬度成分を除去して軟水化する。活性炭処理装置22は、微細な多孔質物質である活性炭を有し、軟水化処理装置21から供給される水から塩素等を吸着・除去する。逆浸透膜モジュール23は、活性炭処理装置22から供給された水を、逆浸透膜によって浄化された処理水と、不純物を含む濃縮水とに分離する。逆浸透膜モジュール23によって浄化された処理水は、溶存水素水生成装置1に送られる。一方、逆浸透膜を透過できなかった濃縮水は、逆浸透膜処理装置2の外部に排出される。
【0023】
溶存水素水生成装置1は、逆浸透膜処理装置2によって浄化処理された水に水素を付加して溶存水素水を生成する。溶存水素水生成装置1は、水素ガスが溶け込んだ溶存水素水(水素含有水)を生成するための水素水生成部3を含んでいる。本実施形態では、水素水生成部3の一部として電解槽4が適用されている。電解槽4の詳細については、後述する。水素水生成部3によって生成された溶存水素水は、透析液調製用水として透析液調製装置5に送られる。
【0024】
透析液調製装置5は、水素水生成部3から供給された透析液調製用水を用いて、例えば、液状の透析原剤を希釈して、透析液を調製する。透析液調製装置5によって調製された透析液は、透析装置6に送られる。
【0025】
透析装置6は、透析液供給装置61とダイアライザー62とを含んでいる。透析液供給装置61は、透析液調製装置5から供給された透析液をダイアライザー62に送出する。ダイアライザー62は、例えば、中空糸膜等の多孔質膜によって構成された透析膜62aを含む人工腎臓であり、透析膜62aを介して透析液調製装置5から供給された透析液を透析治療を受ける患者Hの血液に作用させ、血液から老廃物及び水分を除去する。
【0026】
患者Hとダイアライザー62とは、血液回路63、64を介して接続されている。血液回路63は、患者Hから採取した血液をダイアライザー62に送る。血液回路63には、血液を送出するためのポンプ65が設けられている。血液回路64は、ダイアライザー62によって老廃物等が除去された血液を患者Hに返還する。
【0027】
溶存水素水生成装置1は、患者Hの血液に含まれる水素ガスを検出するための検出部12と、水素水生成部3を制御するための制御部13とを備えている。
【0028】
検出部12は、患者Hの血液を採取し、この血液の単位体積あたりの水素ガスの量を検出し、対応する電気信号を制御部13に出力する。検出部12には、既知の水素ガス検知器等が適用されうる。本実施形態の検出部12は、血液回路63、64に設けられ、血液回路63、64を流れる血液に含まれる水素ガスを検出する。血液回路63、64を流れる血液の一部が検出部12に供給されるように構成されていてもよい。
【0029】
制御部13は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)及びCPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等によって構成されている。制御部13は、溶存水素水生成装置1の各部の制御を司る。
【0030】
より具体的には、制御部13は、検出部12から入力された電気信号、すなわち、検出部12の検出結果に基づいて、水素水生成部3を制御する。例えば、患者Hの血液から水素ガスが検出された場合、水素水生成部3において付加された水素が、透析液及び血液を介して患者Hの体内に確実に行き届いて、吸収されていると確認できるため、水素水生成部3の動作を弱める又は停止する。
【0031】
一方、患者Hの血液から水素ガスが検出されない場合、未だ水素が患者Hの体内に行き届いてないと確認できるため、例えば、水素水生成部3の動作、すなわち、溶存水素水の生成を継続する。この場合、制御部13は、溶存水素濃度を大きくするように、水素水生成部3の動作を制御してもよい。
【0032】
従って、溶存水素水生成装置1によれば、患者Hの体内に届けられた水素に基づいて透析液の調製に用いられる溶存水素水の生成を適切に制御することが可能となる。
【0033】
図2は、検出部12を示している。検出部12は、血液に含まれる水素ガスの量を検出する第1検出器12a及び第2検出器12bを含んでいる。
【0034】
第1検出器12a、第2検出器12bは、血液回路63、64を流れる血液を採取し、この血液に含まれる水素ガスの量を検出する。より具体的には、第1検出器12aは、血液回路63に設けられ、患者Hからダイアライザー62に送られる血液の単位体積あたりの水素ガスの量を検出する。第2検出器12bは、血液回路64に設けられ、ダイアライザー62から患者Hに返還される血液の単位体積あたりの水素ガスの量を検出する。検出部12は、第1検出器12a及び第2検出器12bが検出した水素ガスの量に対応する電気信号を制御部13に出力する。これにより、制御部13は、血液回路63及び64を流れる血液に含まれる水素ガスの量を個別に知得し、水素水生成部3の制御に用いることができる。
【0035】
例えば、第2検出器12bによって検出された水素ガスの量が第1検出器12aによって検出された水素ガスの量より多い場合、血液中の水素ガスが患者Hによって吸収されたと考えられる。従って、制御部13は、第2検出器12bによって検出された水素ガスの量と第1検出器12aによって検出された水素ガスの量との差を計算することにより、患者Hによって吸収された水素ガスの量を知得でき、水素水生成部3の制御に活用できる。
【0036】
例えば、制御部13は、上記水素ガスの量の差を算出し、予め定められた第1閾値と比較することにより、水素水生成部3を適切に制御する。第1閾値は、例えば、患者Hの症状の推移に関する情報を統計的に処理することにより、定めることができる(以下、第2閾値乃至第6閾値についても同様である)。このような構成では、患者Hによって吸収された水素ガスの量に基づいて、水素水生成部3を適切に制御することが可能となる。
【0037】
なお、上記水素ガスの量としては、質量の他、体積、分子量等であってもよい。また、制御部13は、患者Hによって単位時間に吸収される水素ガスの量を計算するように構成されていてもよい。
【0038】
また、本溶存水素水生成装置1において、制御部13は、上記水素ガスの量の差の平均値に基づいて、水素水生成部3を制御する、ように構成されていてもよい。例えば、制御部13は、上記水素ガスの量の差の平均値を算出し、予め定められた第2閾値と比較することにより、水素水生成部3を制御する。制御部13は、上記平均値として、一定時間毎の移動平均値を算出する形態が望ましい。このような構成では、血液中の水素ガスの濃度の微小な変動に影響されることなく、水素水生成部3を適切に制御することが可能となる。
【0039】
また、本溶存水素水生成装置1において、制御部13は、上記水素ガスの量の差の累積値に基づいて、水素水生成部3を制御する、ように構成されていてもよい。例えば、制御部13は、検出部12によって上記水素ガスの量の差の累積値を算出し、予め定められた第3閾値と比較することにより、水素水生成部3を制御する。このような構成では、患者Hの体内に蓄積されている水素ガスに基づいて、水素水生成部3を適切に制御することが可能となる。
【0040】
本溶存水素水生成装置1では、上記水素ガスの量又は差を通知する通知部14をさらに備える、ことが望ましい。通知部14には、例えば、光信号を出力するLED等の他、音声信号を出力するスピーカー装置等が適用される。通知は、光信号と音声信号とが併用されてもよい。通知部14の動作は、例えば、制御部13によって制御される。溶存水素水生成装置1に通知部14が設けられることにより、医師、看護師又は患者Hは、通知部14によって患者Hの体内に水素が届いていることを知得できる。
【0041】
図3は、水素水生成部3を構成する電解槽4を示している。電解槽4は、水を電気分解することにより、水素分子を発生させる。この水素分子が水に溶け込むことにより、第1水素が付加された水である溶存水素水が生成される。
【0042】
電解槽4は、電解室40を備え、電解室40内に第1給電体41と、第2給電体42と、を有する。第1給電体41及び第2給電体42は、電解室40に設けられている。
【0043】
第1給電体41と第2給電体42との間には、隔膜43が設けられている。電解室40は、隔膜43によって第1給電体41が配された第1極室40aと、第2給電体42が配された第2極室40bとに区分される。
【0044】
第1給電体41及び第2給電体42の極性及び第1給電体41及び第2給電体42に印加される電圧は、制御部13によって制御される。
【0045】
給電体41、42と制御部13との間の電流供給ラインには、電流検出器が設けられている。電流検出器は、第1給電体41、第2給電体42に供給する電解電流を検出し、その値に相当する電気信号を制御部13に出力する。
【0046】
制御部13は、例えば、電流検出器から出力された電気信号に基づいて、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧を制御する。より具体的には、制御部13は、電流検出器によって検出される電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体41及び第2給電体42に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部13は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部13は、上記電圧を増加させる。これにより、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電解電流が適切に制御される。
【0047】
電解室40内で水が電気分解されることにより、水素ガス及び酸素ガスが発生する。例えば、陰極側の第2極室40bでは、水素ガスが発生し、当該水素分子が溶け込んだ溶存水素水が生成され、逆浸透膜処理装置2の逆浸透膜モジュール23に供給される。なお、このような電気分解を伴って生成された溶存水素水は、「電解水素水」とも称され、電解水素水を用いた透析治療は、「電解水透析」とも称される。一方、陽極側の第1極室40aでは、酸素ガスが発生する。
【0048】
隔膜43には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子膜が適宜用いられている。固体高分子膜は、電気分解により、陽極側の第1極室40aで発生したオキソニウムイオンを陰極側の第2極室40bへと移動させて、水素ガスの生成原料とする。従って、電気分解の際に水酸化物イオンが発生することなく、溶存水素水のpHが変化しない。
【0049】
本実施形態では、制御部13は、検出部12によって検出された水素ガスの量の差に基づいて、溶存水素水の溶存水素濃度を大きく又は小さくするように、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電気分解のための電流を制御する、ように構成されている、のが望ましい。
【0050】
より具体的には、検出部12によって検出された水素ガスの量の差が予め定められた閾値よりも小さいとき、制御部13は、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電気分解のための電流を大きく制御する。一方、上記水素ガスの量が予め定められた閾値よりも大きいとき、制御部13は、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電気分解のための電流を小さく制御してもよい。
【0051】
また、検出部12によって検出された上記水素ガスの量の平均値又は累積値が予め定められた閾値よりも小さいとき、制御部13は、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電気分解のための電流を大きく制御するように構成されていてもよい。一方、上記水素ガスの量の平均値又は累積値が予め定められた閾値よりも大きいとき、制御部13は、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電気分解のための電流を小さく制御してもよい。
【0052】
また、制御部13は、呼気の単位体積あたりの水素ガスの量の平均値及び累積値の組み合わせに基づいて、第1給電体41及び第2給電体42に供給する電気分解のための電流を大きく制御するように構成されていてもよい。
【0053】
図4は、本溶存水素水生成装置1に用いられる溶存水素水生成方法500の処理手順を示している。溶存水素水生成方法500は、水素が付加された透析液を用いた透析治療中に繰り返し実行されるものであり、生成工程S1、検出工程S21、S22及び制御工程S3、S4、S5を含んでいる。
【0054】
生成工程S1では、水素水生成部3によって溶存水素水が生成される。溶存水素水の生成は、透析治療の実行中は原則として継続される。
【0055】
検出工程S21では、透析中の患者Hの血液が採取される。本溶存水素水生成装置1では、検出部12によって検出工程S21が実行される。検出工程S22では、検出部12が、検出工程S21で採取した血液に含まれる水素ガスを検出する。制御工程S3、S4、S5では、制御部13が、検出工程S2での検出結果に基づいて、水素水生成部3を制御する。例えば、血液から水素ガスが検出された場合(S3においてY)、水素ガスが患者Hの体内に行き届いていると判断できるため、水素水生成部3の動作を弱める又は停止する(S4)。例えば、制御工程S4では、制御部13は、電気分解のための電流を弱める又は遮断する。
【0056】
一方、血液から水素ガスが検出されなかった場合(S3においてN)、溶存水素濃度を大きくするように、水素水生成部3の動作を制御し(S5)、S21に戻る。例えば、制御工程S5では、制御部13は、電気分解のための電流を大きくする。
【0057】
本溶存水素水生成方法500によれば、患者Hの体内に届けられた水素に基づいて透析液の調製に用いられる溶存水素水の生成を適切に制御することが可能となる。
【0058】
図5は、図4の溶存水素水生成方法500の変形例である溶存水素水生成方法500Aを示している。溶存水素水生成方法500Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した溶存水素水生成方法500の処理手順が採用されうる。
【0059】
溶存水素水生成方法500Aでは、溶存水素水生成方法500の検出工程S21、S22に替えて、検出工程S23、S24、S25、S26が適用され、制御工程S3に替えて、制御工程S31、S32が適用される。
【0060】
検出工程S23では、血液回路63に設けられた第1検出器12aによって患者Hからダイアライザー62に送られる血液が採取される。検出工程S24では、血液回路64に設けられた第2検出器12bによってダイアライザー62から患者Hに返還される血液が採取される。
【0061】
検出工程S25では、検出工程S23で採取された血液に含まれる水素ガスの量が検出される。これにより、患者Hからダイアライザー62に送られる血液に含まれる水素ガスの量が検出される。検出工程S26では、検出工程S24で採取された血液に含まれる水素ガスの量が検出される。これにより、ダイアライザー62から患者Hに返還される血液に含まれる水素ガスの量が検出される。
【0062】
制御工程S31では、検出工程S26で検出された水素ガスの量と検出工程S25で検出された水素ガスの量との差が計算される。すなわち、制御部13は、検出工程S26で検出された水素ガスの量から検出工程S25で検出された水素ガスの量を減ずることにより、上記水素ガスの量の差を計算する。上記水素ガスの量の差は、患者Hに吸収された水素ガスの量と考えることができる。
【0063】
制御工程S32では、制御工程S31で計算された上記水素ガスの量の差が第1閾値と比較される。上記水素ガスの量の差が第1閾値以上である場合(S32においてY)、S4に移行する。S4を実行した後、S21に戻るように構成されていてもよい。
【0064】
一方、上記水素ガスの量の差が第1閾値より小さい場合(S32においてN)、S5に移行した後、S21に戻る。溶存水素水生成方法500Aでは、上記水素ガスの量との差を計算することにより、患者Hに吸収された水素ガスの量に基づいて制御部13が水素水生成部3の動作を制御するので、透析液の調製に用いられる溶存水素水の生成を適切に制御することが可能となる。
【0065】
図6は、図5の溶存水素水生成方法500Aの変形例である溶存水素水生成方法500Bを示している。溶存水素水生成方法500Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した溶存水素水生成方法500A等の処理手順が採用されうる。
【0066】
溶存水素水生成方法500Bでは、溶存水素水生成方法500Aの制御工程S31、S32に替えて、制御工程S33、S34が適用される。制御工程S33、S34、S4、S5では、制御部13が、検出工程S25、S26での検出結果に基づいて、上記水素ガスの量の差の平均値を算出し、水素水生成部3の動作を制御する。
【0067】
すなわち、制御工程S33では、制御部13が、検出工程S25、S26での検出結果に基づいて、上記水素ガスの量の差の平均値を算出する。そして、水素ガスの量の平均値が第2閾値以上である場合(S34においてY)、S4に移行する。一方、水素ガスの量の平均値が第2閾値より小さい場合(S34においてN)、S5に移行した後、S21に戻る。溶存水素水生成方法500Bでは、呼気中の水素ガスの濃度の平均値に基づいて水素水生成部3の動作が制御されるので、呼気中の水素ガスの濃度の微小な変動に影響されることなく、透析液の調製に用いられる溶存水素水の生成を適切に制御することが可能となる。
【0068】
図7は、図5の溶存水素水生成方法500Aの別の変形例である溶存水素水生成方法500Cを示している。溶存水素水生成方法500Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した溶存水素水生成方法500の処理手順が採用されうる。
【0069】
溶存水素水生成方法500Cでは、溶存水素水生成方法500Aの制御工程S31、S32に替えて、制御工程S35、S36が適用される。制御工程S35、S36、S4、S5では、制御部13が、検出工程S25、S26での検出結果に基づいて、上記水素ガスの量の差の累積値を算出し、水素水生成部3の動作を制御する。
【0070】
すなわち、制御工程S31では、制御部13が、検出工程S25、S26での検出結果に基づいて、検出された水素ガスの量の差の累積値を算出する。そして、水素ガスの量の差の累積値が第3閾値以上である場合(S35においてY)、S4に移行する。。一方、水素ガスの量の累積値が第1閾値より小さい場合(S36においてN)、S5に移行した後、S21に戻る。溶存水素水生成方法500Cでは、水素ガスの量の差の累積値に基づいて水素水生成部3の動作が制御されるので、患者Hの体内に蓄積されている水素ガスに応じて透析液の調製に用いられる溶存水素水の生成を適切に制御することが可能となる。
【0071】
以上、本発明の溶存水素水生成装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本溶存水素水生成装置1は、少なくとも、水に水素が溶け込んだ溶存水素水を生成するための装置であって、溶存水素水を生成する水素水生成部3と、溶存水素水で調製された透析液を用いて透析を受けている患者Hの血液に含まれる水素ガスを検出するための検出部12と、検出部12の検出結果に基づいて、水素水生成部3を制御するための制御部13とを備えていればよい。
【0072】
従って、例えば、制御部13は、上記水素ガスの量の差又上記平均値が予め定められた第4閾値又は第5閾値を超える場合、透析が完了したと判断するように構成されていてもよい。また、制御部13は、上記累積値が予め定められた第6閾値を超える場合、透析が完了したと判断するように構成されていてもよい。
【0073】
また、水素水生成部3は、水を電気分解することにより溶存水素水を生成する電解槽4に限られず、例えば、水とマグネシウムとの化学反応等により発生した水素分子を水に溶解させて溶存水素水を生成する装置、又は、水素ガスボンベから供給された水素ガス(水素分子)を水に溶解させて溶存水素水を生成する装置であってもよい。
【0074】
また、本溶存水素水生成方法500等は、少なくとも、水に水素が溶け込んだ溶存水素水を生成するための方法であって、溶存水素水を生成する生成工程S1と、溶存水素水で調製された透析液を用いて透析を受けている患者Hの血液に含まれる水素ガスを検出する検出工程S22と、水素ガスの検出結果に基づいて、溶存水素水の溶存水素濃度を制御する制御工程S3ないしS5とを含んでいればよい。
【符号の説明】
【0075】
1 溶存水素水生成装置
3 水素水生成部
12 検出部
13 制御部
14 通知部
500 溶存水素水生成方法
500A 溶存水素水生成方法
500B 溶存水素水生成方法
500C 溶存水素水生成方法
S2 検出工程
S21 検出工程
S22 検出工程
S3 制御工程
S31 制御工程
S32 制御工程
S4 制御工程
S5 制御工程
H 患者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7