(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】センサボードおよび光学ユニットを位置合わせするためのカメラ構成および方法
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20220203BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20220203BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20220203BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220203BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G03B17/02
G02B7/02 Z
G02B7/02 C
G02B7/00 F
H04N5/225 100
H04N5/232
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019088706
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-30
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ローセンバリ, ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】カールソン イェーガーマン, アンドレアス
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-146946(JP,A)
【文献】特開2015-111758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G02B 7/02-7/16
G03B 15/00
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ユニット(102)と、
センサボード(104)であって、前記光学ユニットに面する前記センサボードの第1の表面(108)に取り付けられた画像センサ(106)を有するセンサボードと、
熱可塑性材料によって形成され、前記光学ユニットに固定的に取り付けられたアライメント要素(110)と、
前記アライメント要素を付勢して前記センサボードの接触領域(114)に当接させるように構成された付勢要素(112A;112B;112C)と、
前記接触領域内に配置され、作動時に前記アライメント要素に熱を伝達するように構成され、それにより、少なくとも部分的に、前記アライメント要素が前記熱可塑性材料の少なくともガラス転移温度の温度まで加熱されて、前記光学ユニットに対する前記センサボードのアライメントを可能にする加熱要素(116)と
を備える、カメラ構成(100)。
【請求項2】
前記加熱要素(116)は抵抗加熱要素である、請求項1に記載のカメラ構成。
【請求項3】
前記アライメント要素(110)は、前記光学ユニット(102)と一体として形成されている、請求項1
または2に記載のカメラ構成。
【請求項4】
前記アライメント要素(110)は、前記光学ユニット(102)と前記センサボード(104)との間に位置しており、前記接触領域(114)は、前記画像センサ(106)を取り囲んでいる前記第1の表面(108)の領域内に位置している、請求項1から
3のいずれか一項に記載のカメラ構成。
【請求項5】
前記付勢要素は、前記センサボード(104)を前記光学ユニット(102)に向かって付勢する第1のクリップ(112A)を備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載のカメラ構成。
【請求項6】
前記付勢要素は、前記センサボード(104)および前記光学ユニット(102)に取り付けられた少なくとも1つの磁石(112C)を備え、前記少なくとも1つの磁石は、前記センサボードおよび前記光学ユニットのうちの少なくとも1つに弾性的に取り付けられている、請求項1から
5のいずれか一項に記載のカメラ構成。
【請求項7】
前記アライメント要素(110)は、ねじ継手(118)を介して、または第2のクリップ(120)を介して前記光学ユニット(102)に固定的に取り付けられている、請求項1
または2に記載のカメラ構成。
【請求項8】
前記付勢要素(112B;112C)は、前記光学ユニット(102)と前記センサボード(104)との間に位置しており、前記接触領域(114)は、前記センサボード(104)の第2の表面(122)に位置しており、前記第2の表面は、前記第1の表面(108)の反対側にある、請求項
7に記載のカメラ構成。
【請求項9】
前記付勢要素は、弾性パッド(112B)、板ばね、または圧縮ばねを備える、請求項1から
8のいずれか一項に記載のカメラ構成。
【請求項10】
前記アライメント要素(110)は複数のピラーを備え、または、前記アライメント要素はフランジを備え、前記フランジは、少なくとも部分的にリング状であり、または、前記フランジは、互いに角度を成して配置された、もしくは互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つのリッジを備える、請求項1から
9のいずれか一項に記載のカメラ構成。
【請求項11】
カメラ構成内でセンサボード(104)を光学ユニット(102)に位置合わせする方法であって、熱可塑性材料によって形成されたアライメント要素(110)が、前記光学ユニットに固定的に取り付けられ、付勢されて前記センサボードの接触領域(114)と当接し、前記方法は、
前記接触領域内に配置された加熱要素(116)を作動させ、それにより前記アライメント要素に熱を伝達させて、少なくとも部分的に、前記熱可塑性材料の少なくともガラス転移温度の温度まで前記アライメント要素を加熱させることと、
前記センサボードを前記光学ユニットに対して位置合わせすることと、
前記加熱要素を作動停止させて、前記ガラス転移温度を下回る温度まで前記アライメント要素を冷却させることと
を含む、方法。
【請求項12】
前記センサボードを前記光学ユニットに対して位置合わせするステップは、
前記センサボードおよび前記光学ユニットを含む前記カメラ構成を光学アライメント治具内に配置することと、
前記センサボードまたは前記光学ユニットを調整要素に当接させることと
を含み、
前記調整要素は力を加え、それにより前記センサボードと前記光学ユニットとを互いに位置合わせさせる、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱要素を作動させる動作は、抵抗加熱要素を通して電流を供給することを含む、請求項
11または
12に記載の方法。
【請求項14】
前記アライメント要素を冷却することを更に含む、請求項
11から
13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ構成における光学ユニットに対するセンサボードのアライメントに関する。
【背景技術】
【0002】
モニタ用カメラは、屋内および屋外の両方で、多くの異なる用途で使用されている。カメラに関する技術分野は継続的に発展しており、改良によって、例えば、より高い画像解像度、光学系の改善、および新規な機能性がもたらされている。
【0003】
より高い画像解像度は、画素数を増加させた大型画像センサによって得られる。そのような画像センサを有するカメラはまた、画像センサと、描写されるシーンを表す光を画像センサに供給する光学ユニットとの間の位置ずれに対して、より敏感である。換言すると、画像センサ内の画素強度が高いほど、光学ユニットとセンサボード(画像センサPCBA)との間の位置ずれが、撮像画像の品質に対して、より大きな影響をもたらすことになる。したがって、カメラ構成内の光学ユニットと画像センサとの間の正確なアライメントを確保することが益々重要である。
【0004】
今日、カメラ製造において一般に使用されているアライメント技術はアクティブアライメントである。ここでは、画像センサを備えるセンサボードと、光学ユニットとが、アライメント工程中に取得した画像に基づき互いに対して調整されて、得られた画像の品質特性(焦点、および光軸を画像センサ上でセンタリングすることなど)が最適化される。
【0005】
多くのアクティブアライメント技術では、画像センサを光学ユニットに固定するために紫外線硬化接着剤が使用される。紫外線硬化接着剤は画像センサと光学ユニットとの間に塗布される。その後、アライメント、すなわち画像センサと光学ユニットとの互いに対する位置決めが行われる。最後に、アライメントが充分と考えられる場合、接着剤は紫外線にさらされ、それにより接着剤は凝固し、よって画像センサと光学ユニットの互いに対する位置が固定される。紫外線硬化接着剤の使用には、接着剤を保管する必要があること、接着剤を塗布する必要があり工程が複雑になること、アウトガス、および接着剤の硬化は永続的でありしたがって元に戻すことができないこと、を含むいくつかの欠点がある。加えて、紫外線の適用は、接着剤が正しく硬化することを確実にするために、例えば紫外線の波長、出力強度、硬化時間、硬化程度等に関する特定の知識を必要とする場合がある。
【0006】
アクティブアライメントの代替はパッシブアライメントである。この工程では、センサボード、光学ユニット、および一方を他方に取り付けるための手段、例えばねじ取り付け具またはクランプ装置は全て、低減された製造公差で設計され、その公差は、カメラ構成が組み立てられる場合に、センサボードと光学ユニットとの正しいアライメントが自動的に提供されるような程度である。パッシブアライメントは通常、より少ない時間を要し、より簡単な組み立て工程を提供するが、他方で、画素数が多いセンサに対して製造公差を許容可能な程度まで減らすことは難題であることが示され得る。
【0007】
パッシブアライメント工程およびアクティブアライメント工程の両方において、画像センサと光学ユニットとの間に塵埃が入り、画像劣化を引き起こす場合がある。したがって、アクティブアライメント工程を含む取り付け工程の少なくとも一部は、清浄な室内環境で実施する必要がある。
【0008】
カメラ構成における光学ユニットとセンサボードとの間のアライメントは、パッシブアライメントおよびアクティブアライメントの利点を組み合わせた形態で提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、上述の欠点のうちの少なくともいくつかを考慮して、センサボードと光学ユニットとの間のアライメントを改善する変更されたカメラ構成を提供することである。更なる目的は、そのような変更されたカメラ構成のアライメントのための方法を提供することである。
【0010】
本発明の第1の態様によると、カメラ構成は、光学ユニットと、センサボードであって、光学ユニットに面するセンサボードの第1の表面に取り付けられた画像センサを有するセンサボードと、熱可塑性材料によって形成され、光学ユニットに固定的に取り付けられたアライメント要素と、アライメント要素を付勢してセンサボードの接触領域と当接させるように構成された付勢要素と、接触領域内に配置され、作動時にアライメント要素に熱を伝達するように構成され、それにより、少なくとも部分的には、アライメント要素が熱可塑性材料の少なくともガラス転移温度の温度まで加熱されて、光学ユニットに対するセンサボードのアライメントを可能にする加熱要素と、を備える。
【0011】
本発明のカメラ構成の利点は、センサボードのアライメントを含む取り付けが、パッシブアライメント工程に従って単純な方法で実施でき、一方で依然として、必要であればアクティブアライメントなどの組み立て後のアライメントを可能にしていることである。これにより、様々な部品に必要な機械的公差への要件が低減されることになる。
【0012】
加熱要素をセンサボードにおいて接触領域に配置することは、センサボードの相当に単純な修正を意味する。加熱要素は、例えば導電性トレースまたは導電性プレートの形態で提供され、導電性トレースまたは導電性プレートに電源が接続されて加熱されてもよい。センサボードへの既存の電源接続を介して、加熱要素に電力を供給することも、相当に単純である。
【0013】
加えて、従来のカメラ構成は、典型的には、(センサボードの)画像センサと光学ユニットとの間の領域に塵埃が入ることを回避するために、光学ユニットとセンサボードの互いに対するアライメントを含めて、クリーンルーム内で取り付けられる必要がある。これは、例えば紫外線接着剤を使用する場合である。接着剤の塗布、(アクティブ)アライメント工程、および光学ユニットとセンサボードの位置を互いに対して固定するための接着剤の硬化などの、取り付け工程ステップはクリーンルーム内で実施される必要がある。
【0014】
しかし、本発明の手法により、クリーンルーム内で実施する必要のある取り付け工程のステップ数が少ないという点で、単純な取り付け工程が可能になり得る。これは、全ての部品が組み立てられた時に画像センサに対して密閉された空間が提供されるように、アライメント要素、光学ユニット、付勢要素、およびセンサボードが配置される場合に、特に該当する。その時、カメラ構成の組み立て中はクリーンルーム環境が必要であるが、画像センサは密閉空間内に位置しており、したがって密閉空間によって保護されているので、その後のアライメント手順はクリーンルームを何ら必要としない。その結果、典型的には多くの空間を必要とし、(これもまたクリーンである必要がある)外部装置を伴うアライメント工程のために、クリーンルームを適合させる必要がない。それゆえ、本発明概念は、より単純で、よりコストが低い可能性のある取り付け工程を可能にし、一方で依然として、組み立て後のアライメントの実施を可能にする。
【0015】
本発明のカメラ構成に関連する別の利点は、光学ユニットに対するセンサボードの単純なアライメント手順が可能になることである。いったん組み立てられると、アライメント手順用に制御するパラメータはほんの少数であり、例えば、いくつかの実施形態の場合のように、抵抗加熱要素の形態の加熱要素を使用する場合、電流量および電流の持続時間である。抵抗加熱要素は、接触領域内に配置された、例えばセンサボードの表面上に埋め込まれた、または配置された、導電性の線、トレースまたはプレートの形態で提供されてもよい。
【0016】
本出願との関係において、熱可塑性材料は、特定の温度を越えると柔軟または成形可能になり、この特定の温度を下回る温度まで冷却すると凝固するプラスチック材料(ポリマー)を意味する。熱可塑性材料は、例えば非晶質ポリマーまたは液晶ポリマー(LCP)であってもよく、またアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、およびポリカーボネート(PC)の群から選択されてもよい。PCは加熱時の膨張率が比較的低いので、有利な材料であることに留意されたい。
【0017】
熱可塑性材料は、ガラス転移温度、およびガラス転移温度よりも常に高い融解温度に関連付けられる。熱可塑性材料が、少なくともガラス転移温度であるが、融解温度を下回る温度まで加熱された場合、熱可塑性材料はガラス状態にある。ガラス状態では、熱可塑性材料は粘性状態またはゴム状態と称される場合もある状態をとり、その状態では熱可塑性材料は融解することなく変形可能である。ガラス転移温度はまた、軟化温度と称される場合もある。
【0018】
アライメント要素の少なくとも一部が少なくともガラス転移温度の温度まで加熱された場合、アライメント要素内の熱可塑性材料のその部分は柔らかくなり、ガラス状態を呈し、それにより、センサボードの位置または光学ユニットの位置を調整することによりセンサボードと光学ユニットとの間の相対位置を調整することができる。換言すると、センサボードおよび光学ユニットのうちの少なくとも1つを、他方に対する直線移動または傾き移動により、およびカメラ構成の光軸を考慮して移動させることができる。このようにして、センサボードの光学ユニットに対するアライメントが可能になる。加熱要素が作動停止され、それにより加熱要素からアライメント要素に熱がもはや伝達されない場合、アライメント要素はガラス転移温度を下回る温度まで冷却され、熱可塑性材料は凝固する。このようにして、センサボードと光学ユニットとの間の相対位置は再び固定され、調整することはできない。換言すると、このようにして、センサボードにとってアライメントの新しい平面が構築されたことになる。
【0019】
本出願との関係において、「固定的に取り付けられた」とは、アライメント要素と光学ユニットとの間に非弾性の、または剛性の接続が存在することを意味する。これは、例えば、光学要素とアライメント要素とが一体として形成されることにより、または光学要素とアライメント要素とがねじ継手、または(非弾性の)第2のクリップもしくはクランプなどの剛性接続要素を介して接続される(固定的に取り付けられる)ことにより実現され得る。
【0020】
本出願との関係において、「付勢して当接させる」とは、付勢要素が、アライメント要素を接触領域(に向かう方向)に対して押圧する、押し付けるか、または押し込み、より具体的には、接触領域と接触させるように構成されていることを意味する。このことは、アライメント要素の一部が、例えばアライメント工程中に圧縮されて高さが減少するなど、形が変わるように変形した場合、付勢要素は、例えば、より圧縮された状態から圧縮が減少された状態に少なくとも部分的に弾性的に拡張させることにより、または、拡張された(引き離された)状態から拡張が減少された状態に少なくとも部分的に弾性的に収縮させることにより、アライメント要素を接触領域に当接させ続けることになる。
【0021】
一実施形態では、付勢要素はセンサボードを光学ユニットに向かって付勢する第1のクリップを備えてもよい。その時、アライメント要素は、センサボード上の接触領域に抗して(接触して)光学ユニットとセンサボードとの間で押圧され、クランプされ、または挟まれる。アライメントが実施されている際に、アライメント要素の一部が形状を変えた場合、典型的には高さを変えた場合、第1のクリップが弾性を有することに起因して、第1のクリップが、拡張された状態から拡張が減少された状態に少なくとも部分的に収縮させることにより、アライメント要素を接触領域に当接させ続けることになる。
【0022】
一実施形態では、付勢要素は、センサボードおよび光学ユニットに取り付けられた1つ以上の磁石を備え、1つ以上の磁石は、センサボードおよび光学ユニットのうちの少なくとも1つに弾性的に取り付けられている。磁石が光学ユニット内に設けられる場合は、磁石は、例えばセンサボード上に配置された電磁鋼板に取り付けられることになり、磁石がセンサボード上に取り付けられる場合は、そのような電磁鋼板等は光学ユニット上に配置されることになる。1つ以上の磁石は、例えばリング状の磁石として、または磁石のセットとして設けられ、両方とも確実で安定した取り付けをもたらし得る。
【0023】
磁石を用いてセンサボードを光学ユニットに取り付けることにより、簡単で迅速な組み立て工程がもたらされ、一方で、必要であれば、例えば画像センサから塵埃を取り除くためにカメラ構成を簡単に分解することが可能になる。
【0024】
一実施形態では、付勢要素は弾性パッド、板ばね、または圧縮ばねを備える。この場合、アライメント要素は、圧縮された付勢要素によって接触領域に対して押圧されており、アライメントが実施されている際に、アライメント要素の一部が変形して形状(高さ)が変化した場合、パッドまたはばねは、その弾性ゆえに、圧縮された状態から圧縮が減少された状態に拡張され、アライメント要素を接触領域に当接させ続け、すなわち、アライメント要素を付勢して接触領域に当接させ続ける。
【0025】
一実施形態では、アライメント要素が接触領域に当接するように構成された、アライメント要素の端部は、丸みを帯びた断面形状、またはテーパ状の断面形状を有する。これは、アライメント工程中に必要な熱の量を減らすことになる。その理由は、アライメント要素の高さを変化させるために加熱する必要のある熱可塑性材料の量が少ないからである。センサボード上の接触領域を、より小さくすることもでき、これはセンサボードの表面上の空間を節約するために有利である。加えて、アライメント中にアライメント要素に伝達される熱を減らすことにより、アライメント要素の形状を過度に変化させるリスクが低減される。そうしない場合は、要素の過剰な部分が加熱されることにより柔らかくなるとリスクとなり得る。
【0026】
一実施形態では、アライメント要素は、光学ユニットとセンサボードとの間に位置しており、接触領域は、画像センサを取り囲んでいる第1の表面の領域内に位置している。本実施形態では、アライメント要素は、例えば光学ユニットと一体として設けられている。本実施形態では、付勢要素は、例えば、(弾性の)第1のクリップの形態で設けられ、センサボードを光学ユニットにクランプし、これら2つの間にアライメント要素を挟んでいる。
【0027】
代替的実施形態では、付勢要素は、光学ユニットとセンサボードとの間に位置しており、接触領域は、センサボードの第2の表面に位置しており、第2の表面は、第1の表面の反対側にある。したがって、本実施形態では、アライメント要素は、センサボードの、画像センサが位置している側とは反対側に位置している。付勢要素は、例えば、弾性パッド、板ばね、または圧縮ばね、または、光学ユニットとセンサボードとの間で少なくとも部分的に圧縮され、それによりセンサボードを付勢して(押圧する、押し込む、押し付ける)アライメント要素と当接(接触)させる別の種類の圧縮可能な要素の形態で提供されてもよい。この実施形態では、アライメント要素は光学ユニットに、例えば、ねじ継手または第2の(非弾性)クリップを介して固定的に取り付けられている。
【0028】
一実施形態では、アライメント要素は複数のピラーを備える。ピラーはセンサボードにおいて接触領域に当接するように配置されている。この場合、接触領域は、対応する複数の別個の接触領域を、各ピラーに対して1つずつ含み得る。有利には、少なくとも3つのピラーが設けられて、アライメントピラーに当接するセンサボードのために安定したアライメント平面を設け得ることが確保される。
【0029】
一実施形態では、アライメント要素は、少なくとも部分的にリング状(円形)であるフランジを備えるか、または、互いに角度を成すか、または互いに距離を置いて配置された少なくとも2つのリッジを備え、それによりフランジによって安定したアライメント平面がセンサボードのために形成される。フランジは、センサボードの接触領域に当接するように配置されていてもよく、その結果、接触領域は、フランジの形状に対応する形状を有してもよい。フランジは、光学ユニットからセンサボードに光を伝えるための開口を画定してもよい。
【0030】
本発明の第2の態様によると、センサボードを光学ユニットに位置合わせする方法が提供され、熱可塑性材料によって形成されたアライメント要素は、光学ユニットに固定的に取り付けられ、付勢されてセンサボードの接触領域と当接し、本方法は、
接触領域内に配置された加熱要素を作動させ、それによりアライメント要素に熱を伝達させて、少なくとも部分的に、熱可塑性材料の少なくともガラス転移温度の温度までアライメント要素を加熱させるステップと、
センサボードを光学ユニットに対して位置合わせするステップと、
加熱要素を作動停止させて、ガラス転移温度を下回る温度までアライメント要素を冷却させるステップと、を含む。
【0031】
上記の開示された実施形態および利点は、第2の態様にも適用可能である。過度な繰り返しを避けるために、上記を参照する。
【0032】
一実施形態では、センサボードを光学ユニットに対して位置合わせするステップは、カメラ構成を光学アライメント治具内に配置することと、センサボードまたは光学ユニットを調整要素と当接させて、調整要素が力を加えることにより、センサボードと光学ユニットとを互いに位置合わせさせることと、を含む。調整要素は、例えば、複数の調整ピン、調整プレート、またはセンサボードまたは光学ユニットの側部を把持するデバイスの形態で提供されてもよい。
【0033】
加熱要素を作動させる動作は、抵抗加熱要素を通して電流を供給することを含み得る。
【0034】
本方法は、アライメント要素を冷却させることを更に含み得る。これとの関係において、冷却とは、能動冷却、例えば空気流または類似のものを供給することを意味する。能動冷却は、アライメント要素をより速く凝固させるように、冷却工程を加速させ得る。
【0035】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で明確に別途定義されない限り、当該技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a)/1つの(an)/その(the)[要素、デバイス、構成要素、手段、ステップなど]」の参照は全て、明示的に他の記載がない限り、前述の要素、デバイス、構成要素、手段、ステップ等の少なくとも1つのインスタンスを参照するものと解釈されるべきである。本明細書で開示されたいかなる方法のステップも、明示的に他の記載がない限り、開示された厳密な順序で実施される必要はない。
【0036】
次に、本発明の上述の態様および他の態様が、本発明の実施形態を示す添付図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】カメラ構成の様々な実施形態の断面図である。
【
図2】カメラ構成の様々な実施形態の断面図である。
【
図3】カメラ構成の様々な実施形態の断面図である。
【
図4】カメラ構成の様々な実施形態の断面図である。
【
図5】カメラ構成の様々な実施形態の断面図である。
【
図7】
図1から
図5に示すカメラ構成内で光学ユニットに対してセンサボードを位置合わせするための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
明瞭にするために図面は必ずしも縮尺通りではないことに留意されたい。
【0039】
ここで、現時点で好ましい本発明の実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明が、より完全に説明されるであろう。しかし、本発明は多くの様々な形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈するべきではない。
【0040】
図1は、光学ユニット102およびセンサボード(PCBA)104を有するカメラ構成100を示す。カメラ構成100は典型的には監視カメラユニットの一部であり、シーンを監視するために使用される場合、カメラハウジング(図示せず)内に配置され得る。光学ユニット102はレンズ103を保持するように構成され、レンズ103を通して監視されたシーンからの光が画像センサ106に送られ、それにより監視されたシーンを示す画像が、更なる画像化および符号化用のソフトウェアまたはハードウェアにより形成され得る。画像センサ106はセンサボード104の第1の表面108上に配置されている。第1の表面108は光学ユニット102に面している。
【0041】
カメラ構成100は更に、熱可塑性材料によって形成されたアライメント要素110を備える。この実施形態では、アライメント要素110は光学ユニット102とセンサボード104との間に配置され、それにより構成の小型化に寄与している。アライメント要素110は、例えば、射出成形プロセスなどを介して、光学ユニット102と共に一部品として、すなわち一体化して作られ得る。アライメント要素110はまた、接着剤、ねじ継手、または固定取り付けを提供する他の種類の取り付け手段を介して光学ユニット102に固定的に取り付けられ得る。
【0042】
アライメント要素110は複数のピラーの形態であってもよい。アライメント要素はまた、少なくとも部分的にリング状(例えば、円形または楕円形)であってもよいフランジの形態で提供されてもよい。アライメント要素110がリング状のフランジである場合は、アライメント要素は典型的には、レンズ103を介して画像センサ106に到達する光のための開口を形成することになる。別の選択肢として、アライメント要素110は、互いに角度を有して、または互いに間隔を置いて配置され得る、2つ以上のリッジを含み得る。
【0043】
本質的には、アライメント要素110はそのような形状なので、センサボード104のために安定したアライメント平面を提供することができる。センサボード104および光学ユニット102が適切に位置合わせ(平面に平行)されていない場合、アライメント要素110の一部の形状、またはより正確には高さが、アライメント工程中に変化または変形されて新たなアライメント平面が提供される。
【0044】
アライメント要素110は、センサボード104の第1の表面108の接触領域114に当接している。接触領域114は、センサボード104の表面108の1つの連続した領域を含むか、またはいくつかの別個の領域を含むかの、いずれかであってもよい。しかし、説明を簡単にするために、そのような別個の接触領域の集合体も「接触領域」と称することにする。
図1の領域の接触領域114は、画像センサ106を取り囲む第1の表面108の領域に配置されている。
【0045】
図1において弾性クリップの形態である付勢要素112Aが、アライメント要素110を2つの間に挟んで、センサボード104を光学ユニット102にクランプすることにより、カメラ構成100を一緒に保持している。そのようなクリップにより、カメラ構成100用の簡単で効率的な組み立て工程が可能になる。カメラ構成100を組み立てる場合、典型的には、アライメント要素110がセンサボード104に当接し、次いでクリップが単にスナップ嵌めされ、それによりクリップが光学ユニット102およびセンサボード104を互いに対して所定位置に保持し、アライメント要素110を付勢して接触領域114に当接させるように、光学ユニット102およびセンサボード104が位置決めされる。
【0046】
図6により詳細に示すように、加熱要素116が接触領域114に配置されている。加熱要素116は、典型的には、センサボード表面内に埋め込まれ得る、またはセンサボード表面上に配置され得る抵抗加熱要素、例えば、導電性ねじ、フィラメント、トレースまたはプレートの形態で提供される。接続部124を介して加熱要素116に電流が供給された場合、抵抗加熱要素は加熱されアライメント要素110に熱を伝達し、それにより、接触領域114に最も近いアライメント要素110の少なくとも端部において、熱可塑性材料は少なくとも熱可塑性材料のガラス転移温度の温度まで加熱される。次に、これにより加熱された熱可塑性材料は軟化しかつ変形可能になり、光学ユニット102に対するセンサボード104のアライメントの平面を変更することが可能になるであろう。
【0047】
アライメント要素110の端部は、その最端部が接触領域114と接触し、アライメント工程中に加熱要素116から熱を受け取り、(
図1に示すように)丸みを帯びた断面形状、または(例えば
図2に示すように)テーパ状の断面形状を有し得る。これが、熱可塑性材料を軟化させるのに必要な熱の量を減らす効果を有し、これが次いでアライメント工程に必要な電力を減らし、かつ時間を短縮させ得る。
【0048】
アライメント工程は、典型的にはある種の光学アライメント治具を使用し、アライメント工程中に組み立て前のカメラ構成100が治具内に配置され、加熱要素116が作動され、ある種の調整デバイス、例えば調整ピンもしくはプレート、または把持デバイスがセンサボード104または光学ユニット102に接触に、柔らかくなったアライメント要素110の一部の形状(高さ)を変化させることにより、これら2つを位置合わせさせて、センサボード104のための新しいアライメント平面を構築し、その時、レンズ103の光軸は画像センサ106に垂直である。
【0049】
アライメントは、画像センサ106からの画像が分析されて、センサボード104および光学ユニット102の適切な相対位置を見つけるアクティブアライメントとして実施されるか、または、光学ユニット102に対するセンサボード104の表面または画像センサの機械的アライメントを実現するように治具が構成されているかの、いずれかであってもよい。最も簡単な形では、これはセンサボード104の平面を、センサボード104に面する光学ユニット102の側の平面に平行に位置合わせすることであり得る。
【0050】
アライメントが達成されたら、加熱要素116によって供給される熱は遮断され、アライメント要素110の材料はガラス転移温度を下回る温度まで冷却され、よって材料は再び凝固し、それによりセンサボード104用の新しい安定なアライメント平面がもたらされる。冷却を加速させるために、能動的冷却を、例えば冷気を吹き付けるファンによって追加してもよい。次いでカメラ構成100は治具から取り外される。
【0051】
図7は、カメラ構成100内でセンサボード104を光学ユニット102に位置合わせする方法を示す。
【0052】
第1の(任意選択の)ステップ702では、カメラ構成100は、センサユニット104と光学ユニット102を互いに対して位置合わせするために装着された光学アライメント治具内に配置される。次に、ステップ704において、センサボード104の接触領域114内の加熱要素116が作動されて、接触領域114に当接するアライメント要素110に熱が伝達され、それにより接触領域114に最も近いアライメント要素110の少なくとも一部が少なくともガラス転移温度まで加熱される。このようにして、センサボード104または光学ユニット102を介してアライメント要素に力を加えることにより、アライメント要素110の形状を、典型的には高さを変化させることが可能になるであろう。
【0053】
任意選択のステップ706において、センサボード104または光学ユニット102(または両方)を、調整ピンのセット、調整プレート、またはセンサボード104または光学ユニット102を把持するある種のデバイスなどの調整要素と接触させる。次いで、ステップ708において、センサボード104および光学ユニット102は、例えばセンサボード104に、または光学ユニット102に力を加える調整要素によって互いに位置合わせされ、その結果、加熱されたアライメント要素110の一部の形状が変形または変化し、その結果、センサボード102にとって新しいアライメント平面が形成される。
【0054】
ステップ710では、加熱要素116は作動停止され、アライメント要素110はガラス転移温度を下回る温度まで冷却される。任意選択のステップ712において、冷却を加速させるために、アライメント要素110に、例えば冷気(すなわち、ガラス転移温度よりも冷たい空気)を供給することにより、能動的冷却が提供される。
【0055】
図1に示す実施形態に関連して説明してきたが、アライメント方法700は、
図2~
図5に示す実施形態に同様に適用可能であり、以下により詳細に説明されるであろう。
図1に関連して説明したものと類似した、これら実施形態の特徴は、再び説明されないであろう。
【0056】
図2は、カメラ構成の別の実施形態におけるカメラ構成100を示す。この変形形態では、付勢要素112Bは、弾性パッド、板ばね、または圧縮ばねなどの弾性的に圧縮可能な要素の形態で提供され、これらはセンサボード104の第2の表面122に隣接するプレート126上に位置している。ねじ連結具128が、付勢要素112Bと共に、プレート126を光学ユニット102に固定的に取り付けている。ねじ連結具128を締め付けることにより、付勢要素112Bはある程度まで圧縮されることになり、それにより付勢要素112Bはセンサボード104を付勢してアライメント要素110と当接させることになる。アライメント要素110は、
図1に示す実施形態と同様に、センサボード104と光学ユニット102との間に位置している。
【0057】
図3はカメラ構成100の別の実施形態を示す。この実施形態では、付勢要素112Bは光学ユニット102とセンサボード104との間に位置しており、弾性パッド、板ばね、または圧縮ばねなどの弾性的に圧縮可能な要素の形態で提供されている。この実施形態では、付勢要素112Bは、例えば、リング状であるか、楕円形の断面を有するか、または画像センサ106を少なくとも部分的に取り囲む2つ以上のリッジまたはピラーを有してもよい。付勢要素112Bは、センサボード104の第1の表面108と、光学ユニット102との間で少なくとも部分的に圧縮されており、それにより、センサボード104を付勢してアライメント要素110と当接させており、アライメント要素110は本実施形態ではセンサボード104の第2の表面122に当接して位置している。本実施形態では、加熱要素116を有する接触領域114は第2の表面122に位置している。
【0058】
アライメント要素110は、プレート130によって保持されるか、またはプレート130に取り付けられており、次いでプレート130はねじ継手118によって光学ユニット102に固定的に取り付けられている。ねじ継手118を締め付けることにより、付勢要素112Bの圧縮がもたらされる。
【0059】
図4は、
図3に示す実施形態と類似の、カメラ構成100の別の実施形態を示す。差異は、ねじ連結具または継手118の代わりに第2のクリップ120が設けられていることである。クリップ120は、簡便にはプレート130と一体として形成されていてもよい。この第2のクリップ120は本質的に非弾性であり、アライメント要素を接触領域114と接触させる付勢効果が、センサボード104の第1の表面108と、光学ユニット102との間に位置し、第2のクリップ120によって少なくとも部分的に圧縮されている付勢要素112Bによって提供されるように、寸法設定されている。
【0060】
図5は、
図1に示す実施形態と類似の、カメラ構成100の更なる別の実施形態を示す。
図5の変形形態では、1つ以上の磁石112Cがセンサボード104を光学ユニット102に取り付けている。2つの磁石112Cが示されているが、安定で確実な取り付けをもたらす任意の数、例えば3つ以上または1つのみを使用することができる。後者の場合、磁石112Cは典型的には細長い形状または円形を有する。磁石112Cは典型的には、光学ユニット102の中にモールド成形されることによって光学ユニット102に取り付けられ、磁石112Cが磁気的に引き付けられている金属要素132が、センサボード104おいて整合する位置に配置されている。金属要素132は典型的には、磁気的に取り付ける実施形態に弾性的特性をもたらす、弾性的に圧縮可能な板ばねの形態である。
図1の実施形態と同様に、アライメント要素110はセンサボード104と光学ユニット102との間に配置されている。
【0061】
当業者は、本発明が、上述の好ましい実施形態に決して限定されるものではないことを、理解するものである。むしろ、多くの修正形態および変形形態が、添付の請求項の範囲内で可能である。例えば、上で例示したものとは異なる他の種類の加熱要素を利用して、アライメント要素の少なくとも一部がガラス転移温度に到達するようにアライメント要素の加熱を実現してもよい。その上、所望の特性を実現するために、上記で例示されたもの以外の熱可塑性材料を使用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 カメラ構成
102 光学ユニット
103 レンズ
104 センサボード
106 画像センサ
108 第1の表面
110 アライメント要素
112A 付勢要素
112B 付勢要素
112C 磁石
114 接触領域
116 加熱要素
118 ねじ継手
120 第2のクリップ
122 第2の表面
124 接続部
126 プレート
128 ねじ連結具
130 プレート
132 金属要素