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特許7011624モータ付シートベルト装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】モータ付シートベルト装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20220119BHJP
   H02P 7/29 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
B60R22/46 166
H02P7/29 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019102779
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196309
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐樹
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-111035(JP,A)
【文献】特開2009-255749(JP,A)
【文献】特開2010-047096(JP,A)
【文献】特開2009-262811(JP,A)
【文献】特開2013-038902(JP,A)
【文献】特開2009-213234(JP,A)
【文献】米国特許第04966394(US,A)
【文献】特開2008-195124(JP,A)
【文献】特開2009-159697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/46
B60R 22/48
H02P 7/00
H02P 7/03 - 7/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト部材を巻回するスプールを有するリトラクタに接続され、かつ、該スプールを回転させるためのモータと、
前記モータに接続された駆動回路と、
前記駆動回路に接続された電源と、
前記駆動回路に接続された制御部と、
前記駆動回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記制御部に接続された遮断部と、
を備え、
前記制御部及び前記遮断部は、前記ベルト部材が前記スプールから引き出される際に生じる前記モータの起電力に起因して前記駆動回路に許容量を超えるリーク電流が流れ得る所定条件を満たす場合に、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断する、
モータ付シートベルト装置。
【請求項2】
前記ベルト部材の引出速度、前記モータの回転速度、前記モータによる起電力、又は前記リーク電流を検出又は推定可能な検知センサを有するセンサ部を備え、
前記制御部及び前記遮断部は、前記所定条件として、前記検知センサによる検知結果が規定値以上であるときに、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断する、
請求項1記載のモータ付シートベルト装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、還流ダイオードが内在又は外在する複数のスイッチング素子を有し、かつ、該複数のスイッチング素子は、Hブリッジ形式で接続されている、
請求項1又は2記載のモータ付シートベルト装置。
【請求項4】
前記遮断部は、スイッチング素子又はメカニカルリレーを有する、
請求項1乃至3の何れか記載のモータ付シートベルト装置。
【請求項5】
ベルト部材を巻回するスプールを有するリトラクタに接続され、かつ、該スプールを回転させるためのモータと、前記モータに接続された駆動回路と、前記駆動回路に接続された電源と、前記駆動回路に接続された制御部と、前記駆動回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記制御部に接続された遮断部とを備えるモータ付シートベルト装置の制御方法であって、
前記ベルト部材が前記スプールから引き出される際に生じる前記モータの起電力に起因して前記駆動回路に許容量を超えるリーク電流が流れ得る所定条件を満たす場合に、前記制御部及び前記遮断部が、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断するステップを有する、
モータ付シートベルト装置の制御方法。
【請求項6】
前記モータ付シートベルト装置は、検知センサを有するセンサ部を備え、
前記検知センサが、前記ベルト部材の引出速度、前記モータの回転速度、前記モータによる起電力、又は前記リーク電流を検出又は推定するステップを有し、
前記遮断するステップにおいては、前記制御部及び前記遮断部が、前記所定条件として、前記検知センサによる検知結果が規定値以上であるときに、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断する、
請求項5記載のモータ付シートベルト装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ付シートベルト装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両事故等の車両緊急時には、シートベルト等のベルト部材によって乗員を拘束することにより、乗員の安全が図られる。近年では、モータを動力源とするリトラクタを備えるいわゆるモータ付シートベルト装置に関する技術が広く開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シートベルトによる乗員の拘束が完了した後、モータのトルクを減少させることにより、ロードリミッターが作動可能となるプリテンショナーが記載されている。また、特許文献2には、モータを電気的短絡又は非短絡に所定の時間制御によって切り替えることにより、車両緊急時に牽引されるベルト部材(ウェビング)の引出荷重を制御するように構成されたモータ式シートベルトリトラクタが記載されている。さらに、特許文献3には、プリテンショナーの作動後に、車両の緊急状態の判定結果に応じてモータをベルト部材の巻取り方向に駆動制御することにより、ベルト部材の引出負荷を制御するように構成されたシートベルト装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-56655号公報
【文献】特開2001-270423号公報
【文献】特開2010-179826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータ付シートベルト装置に備わるモータは、リトラクタによる通常のベルト部材の巻取り用だけではなく、ベルト部材のたるみを巻き取って緊張状態とするためのプリ・プリテンショナーの動力源としても用いられ得る。この場合、スイッチング性能に優れる例えばMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子がHブリッジ形式で接続された構成を有する駆動回路により、モータの駆動及び必要に応じて正転/反転動作を好適に制御することができる。
【0006】
ここで、図4は、従来のモータ付シートベルト装置の一例の概略構成を模式的に示すブロック図である。モータ付シートベルト装置400は、ベルト部材を巻回するスプールを有するリトラクタ(ともに図示せず)に接続され、かつ、スプールを回動させるためのモータ41と、モータ41に接続された駆動回路Bを備える。駆動回路Bは、MOSFET等のスイッチング素子T1~T4がHブリッジ形式で接続された回路構成を有しており、また、適宜の電源42に接続されている。さらに、駆動回路Bには、スイッチング素子T1~T4のオン/オフ(ON/OFF)制御を行う制御装置43が接続されている。制御装置43は、ECU(Electronic Control Unit)及びその他の適宜の制御回路を備えている。また、制御装置43には、例えば衝突センサ、加速度センサ、ベルト部材加重センサ等を含むセンサ装置44が接続されている。
【0007】
図5は、モータ付シートベルト装置400において、通常のベルト部材の巻取動作を行っている状態の一例を模式的に示すブロック図である。通常のベルト部材の巻取動作を行う場合、例えば同図に示す如く、制御装置43からの指令信号に基づいて、上流側スイッチング素子T1及び下流側スイッチング素子T4をオン/オフ制御し、かつ、上流側スイッチング素子T2及び下流側スイッチング素子T3をオフに固定する。このとき、上流側スイッチング素子T1及び下流側スイッチング素子T4をオンにすることにより、上流側スイッチング素子T1から下流側スイッチング素子T4に通電され、図5の破線矢印Caで示す方向に電流が流れ、ベルト部材の巻取方向にモータ41を駆動することができる。
【0008】
一方、一般に、車両緊急時に瞬間的にベルト部材を締めるプリテンショナーの作動後には、乗員の荷重を支える支持反力を制御するために、ベルト部材に印加される荷重(引出荷重)の制御が行われる。図6及び図7は、モータ付シートベルト装置400において、ベルト部材の荷重制御動作を行っている状態の一例を模式的に示すブロック図である。ベルト部材の荷重制御時には、制御装置43からの指令信号に基づいて、上流側スイッチング素子T1,T2をオフに固定し、かつ、下流側スイッチング素子T3をオンに固定し、かつ、下流側スイッチング素子T4をオン/オフ制御する。この状態でベルト部材が引出方向に動くと、モータ41がベルト部材の巻取方向と逆向きに回転することで発電機として作動し、その際に生じる起電力により、図6の破線矢印Cbで示す方向に電流が流れる。そして、下流側スイッチング素子T4のオン/オフ制御でその電流量を調整することにより、電流量に応じたモータトルクを発生させ、例えばギア機構を介してベルト部材に印加される荷重を所望に調節することができる。
【0009】
なお、ベルト部材の荷重制御としては、下流側スイッチング素子T4による制御に代えて、上記特許文献2に記載されているように、別途設けた固定抵抗への電流経路を形成して通電させる方法や、上記特許文献3に記載されているように、適宜のバッテリからモータに対して通電する方法等も挙げられる。後者の場合、モータを流れる電流量はバッテリから供給される電流と起電力による電流の合計となる。
【0010】
しかし、本発明者の知見によれば、ベルト部材の引き出しによって生じる起電力が、電源42から駆動回路Bへ印加される電圧を超過すると、上流側スイッチング素子T2のフライホイールダイオード(フリーホイールダイオード:MOSFETのドレイン-ソース間に存在するボディダイオードや素子デバイスに並列接続された還流ダイオード等)を通じて、図7の破線矢印Clで示す方向に流れるリーク電流が発生する。こうなると、下流側スイッチング素子T4をオフにしていても、駆動回路Bにリーク電流が流れてしまうので、モータトルクをある値以下にすることができなくなる。その結果、ベルト部材の荷重をある荷重以下に調節することができなくなるので、ベルト部材の荷重制限範囲が制限されてしまうという問題が生じてしまう。
【0011】
そこで、本開示は、一側面では、かかる事情に鑑みてなされたものであり、モータの駆動回路に許容量を超えるリーク電流が流れることに起因して、ベルト部材の荷重制限範囲が制限されてしまうことを防止することができ、これにより、乗員の荷重を支える支持反力を従来に比してより柔軟に制御することが可能なモータ付シートベルト装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0013】
〔1〕本開示に係るモータ付シートベルト装置の一例は、ベルト部材を巻回するスプールを有するリトラクタに接続され、かつ、スプールを回転させるためのモータと、前記モータに接続された駆動回路と、前記駆動回路に接続された電源と、前記駆動回路に接続された制御部と、前記駆動回路と前記電源との間に設けられ、かつ、前記制御部に接続された遮断部とを備え、前記制御部及び前記遮断部は、前記ベルト部材が前記スプールから引き出される際に生じる前記モータの起電力に起因して前記駆動回路に許容量を超えるリーク電流が流れ得る所定条件を満たす場合に、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断する(切り離す)ように構成される。
【0014】
先に説明したとおり、従来のベルト部材の荷重制御においては、ベルト部材がスプールから引き出されるときに、モータが回転することよって生じる起電力に起因して、モータの駆動回路にリーク電流が流れるおそれがある。これに対し、本開示の構成では、そのような起電力に起因して許容量を超えるリーク電流が生じ得る所定条件を満たす場合に、制御部及び遮断部によって、駆動回路と電源とが電気的に遮断される。したがって、許容量を超えるリーク電流に起因してベルト部材の荷重制限範囲が制限されてしまうことを、有効に防止することができる。なお、リーク電流の「許容量」としては、0(ゼロ)以上の値を適宜設定することができ、「許容量=0」の所定条件とは、リーク電流が生じない(リーク電流=0)という条件に相当する。
【0015】
〔2〕また、具体的には、上記構成において、前記ベルト部材の引出速度、前記モータの回転速度、前記モータによる起電力、又は前記リーク電流を検出又は推定可能な検知センサを有するセンサ部を更に備え、前記制御部及び前記遮断部は、前記所定条件として、前記検知センサによる検知結果が規定値以上であるときに、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断するようにしてもよい。
【0016】
当該構成では、検知センサがベルト部材の引出速度又はモータの回転速度を検出又は推定する場合、それらの検知結果(検出値又は推定値)から、ベルト部材がスプールから引き出される際に生じるモータの起電力ひいてはリーク電流を求めることができるので、駆動回路と電源との電気的な遮断制御を好適に行うことができる。また、検知センサがモータの起電力又はリーク電流を直接的に検出又は推定する場合も同様に、それらの検知結果から、駆動回路と電源との電気的な遮断制御を好適に行うことができる。なお、検知センサがリーク電流を検出又は推定する場合、検知結果の「規定値」として、前述のリーク電流の「許容量」と同等の値を設定することができる。
【0017】
〔3〕より具体的には、上記構成において、前記駆動回路としては、フライホイールダイオード(フリーホイールダイオード)が内在又は外在する複数のスイッチング素子(ボディダイオードを内包するMOSFETや還流ダイオードが並列接続された素子デバイスから構成される素子等)を有し、かつ、該複数のスイッチング素子が、Hブリッジ形式で接続された回路を例示することができる。かかる駆動回路は先に説明したリーク電流を生じ得るので、本開示における制御部及び駆動回路によるベルト部材の荷重制御が特に有効となる。
【0018】
〔4〕さらに、上記構成において、前記遮断部としては、駆動回路と前記電源とを電気的に遮断する(切り離す)ことが可能な機能を有するものであれば特に制限されず、例えば適宜のスイッチング素子又はメカニカルリレーといった開閉器等を挙げることができる。
【0019】
〔5〕また、本開示に係る制御方法の一例は、本開示に係るモータ付シートベルト装置を有効に制御する方法であって、前記ベルト部材が前記スプールから引き出される際に生じる前記モータの起電力に起因して前記駆動回路に許容量を超えるリーク電流が流れ得る所定条件を満たす場合に、前記制御部及び前記遮断部が、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断するステップを有する。当該構成では、前記〔1〕で述べた本開示によるモータ付シートベルト装置の一例と同等の作用効果が奏される。
【0020】
〔6〕また、上記構成において、前記モータ付シートベルト装置は、検知センサを有するセンサ部を備え、前記センサ部が、前記ベルト部材の引出速度、前記モータの回転速度、前記モータによる起電力、又は前記リーク電流を検出又は推定するステップを有し、前記遮断するステップにおいては、前記制御部及び前記遮断部が、前記所定条件として、前記検知センサによる検知結果が規定値以上であるときに、前記駆動回路と前記電源とを電気的に遮断するようにしてもよい。当該構成では、前記〔2〕で述べた本開示によるモータ付シートベルト装置の一例と同等の作用効果が奏される。
【0021】
なお、本開示において、「部」及び「装置」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」及び「装置」が有する機能をソフトウェアによって実現する構成も含む。また、1つの「部」及び「装置」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置によって実現されてもよく、或いは、2つ以上の「部」及び「装置」の機能が1つの物理的手段や装置によって実現されてもよい。さらに、「部」及び「装置」とは、例えば「手段」及び「システム」と言い換えることも可能な概念である。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、制御装置及び遮断部によってモータの駆動回路への電源供給を制御することにより、駆動回路に許容量を超えるリーク電流が流れることを抑止することができる。したがって、そのようなリーク電流に起因してベルト部材の荷重制限範囲が制限されてしまうことを防止することができるので、乗員の荷重を支える支持反力を従来に比してより柔軟に制御することが可能となる。また、その結果、モータギア比の設計自由度やモータの選択自由度を高めることができるので、例えば、モータ付シートベルト装置の体格、耐久性、経済性(コスト)、及びプリ・プリテンショナー性能を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施形態に係るモータ付シートベルト装置の一例の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図2】本開示の実施形態に係るモータ付シートベルト装置の一例に備わる遮断回路(遮断部)の一例を示す概略構成図である。
図3】本開示の実施形態に係るモータ付シートベルト装置の一例によるベルト部材の荷重制御動作における手順の一例を示すフローチャートである。
図4】従来のモータ付シートベルト装置の一例の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図5】従来のモータ付シートベルト装置の一例において、通常のベルト部材の巻取動作を行っている状態の一例を模式的に示すブロック図である。
図6】従来のモータ付シートベルト装置の一例において、ベルト部材の荷重制御動作を行っている状態の一例を模式的に示すブロック図である。
図7】従来のモータ付シートベルト装置の一例において、ベルト部材の荷重制御動作を行っている状態の一例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図ではない。すなわち、本開示の一例は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付しており、図面は模式的なものであって、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。さらに、以下に説明する実施形態は本開示の一部の実施形態であって、全ての実施形態ではないことは言うまでもない。またさらに、本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造性のある行為を必要とせずに得られる他の実施形態は、何れも本開示の保護範囲に含まれる。
【0025】
[構成]
図1は、本実施形態に係るモータ付シートベルト装置の一例の概略構成を模式的に示すブロック図である。モータ付シートベルト装置100は、ベルト部材を巻回するスプールを有するリトラクタ(ともに図示せず)に接続され、かつ、スプールを回転させるためのモータ11と、モータ11に接続された駆動回路Bを備える。駆動回路Bは、MOSFET等のスイッチング素子T1~T4がHブリッジ形式で接続された回路構成を有しており、また、適宜の電源12に接続されている。さらに、駆動回路Bには、スイッチング素子T1~T4のオン/オフ制御を行う制御装置13が接続されている。また、制御装置13(制御部)は、ECU及びその他の適宜の制御回路を備えており、制御装置13には、センサ装置14(センサ部)が接続されている。
【0026】
センサ装置14は、例えば衝突センサ、加速度センサ、ベルト部材加重センサの他、ベルト部材の引出速度、モータ11の回転速度、モータ11による起電力、又は、その起電力に起因して駆動回路Bを流れるリーク電流を検出又は推定可能な検知センサを有する。また、駆動回路Bと電源12との間には、それらを電気的に遮断可能な遮断回路15(遮断部)が設けられており、遮断回路15は、制御装置13に接続されている。
【0027】
図2は、モータ付シートベルト装置100に備わる遮断回路15の一例を示す概略構成図である。遮断回路15は、スイッチング素子151,152(MOSFET)が、互いのソース端子及びドレイン端子が逆向きとなるように接続された構成を有する。かかる遮断回路15では、MOSFETのボディダイオード(寄生ダイオード)が互いに対向するので、MOSFETをオフにすることにより、遮断回路15の電路が閉じられ、駆動回路Bと電源12が電気的に遮断される(切り離される)。
【0028】
[作用・効果]
このように構成されたモータ付シートベルト装置100は、図4に示す従来のモータ付シートベルト装置400と同様の制御により、図5に示す通常のベルト部材の巻取動作、及び、図6に示すプリテンショナーの作動後におけるベルト部材の荷重制御動作を行うことができる。ただし、モータ付シートベルト装置100によるベルト部材の荷重制御動作においては、図7に示す従来のモータ付シートベルト装置400で生じ得るようなリーク電流は、発生しないか、又は、許容量以下に抑制される。
【0029】
かかるモータ付シートベルト装置100におけるベルト部材の荷重制御動作について、図1及び図3を参照して更に説明する。図3は、モータ付シートベルト装置100によるベルト部材の荷重制御動作における手順の一例を示すフローチャートである。
【0030】
車両の運転開始後、当該車両に設置されたモータ付シートベルト装置100が作動している状態において、センサ装置14に備わる衝突センサや加速度センサが車両の緊急状態を予測又は検知する(ステップS31)と、制御装置13からの指令信号に基づいて、プリ・プリテンショナーが作動し、ベルト部材のたるみが巻き取られて緊張状態とされる(ステップS32)。それに続いて、制御装置13からの指令信号に基づいて、プリテンショナーが作動し、一瞬でベルト部材を締めることにより、乗員が車両シートに拘束される(ステップS33)。
【0031】
さらに、プリテンショナーの作動後、乗員の荷重を支える支持反力を制御するために、制御装置13からの指令信号に基づいて、駆動回路Bによるベルト部材の荷重制御が開始される(ステップS34)。このベルト部材の荷重制御時には、制御装置13からの指令信号に基づいて、図1に示すとおり、上流側スイッチング素子T1,T2をオフに固定し、かつ、下流側スイッチング素子T3をオンに固定し、かつ、下流側スイッチング素子T4をオン/オフ制御する。この状態でベルト部材が引き出し方向に動くと、モータ11が発電機として作動し、その際に生じる起電力により、図6に示すのと同様に、図6の破線矢印Cbの方向に電流が流れる。そして、下流側スイッチング素子T4のオン/オフ制御でその電流量を調整することにより、電流量に応じたモータトルクを発生させ、例えばギア機構を介してベルト部材に印加される荷重が調節される。
【0032】
このようなベルト部材の荷重制御時に、図7に示す従来のモータ付シートベルト装置400では、許容量を超えるリーク電流が発生するおそれがあるのに対し、モータ付シートベルト装置100では、そのようなリーク電流の発生が抑止される。すなわち、モータ付シートベルト装置100では、ベルト部材の荷重制御時に、センサ装置14に備わる検知センサが、ベルト部材の引出速度、モータ11の回転速度、モータ11による起電力、又はリーク電流を常時検出又は推定しており、また、その検知結果(検出値又は推定値)が予め設定した規定値以上であるか否かを常時モニターしている(ステップS35)。
【0033】
そして、検知センサによる検知結果が規定値以上である場合(ステップS35でYes)、制御装置13は、起電力が駆動回路Bの電源電圧を超過して許容量を超えるリーク電流が発生し得る状態であると判断し、制御装置13からの指令信号に基づいて、オン/オフ制御されている遮断回路15のスイッチング素子151,152(MOSFET)をオフにする。これにより、遮断回路15の電路が閉じられ(遮断に切り替えられ)、駆動回路Bと電源12とが電気的に遮断されるので、許容量を超えるリーク電流が上流側スイッチング素子T2を経由して駆動回路Bに流れてしまうことを防止することができる(ステップS36)。よって、モータ11の電流を下流側スイッチング素子T4のオン/オフにより制御することができる。一方、検知センサによる検知結果が規定値未満である場合(ステップS35でNo)には、制御装置13は、遮断回路15の電路を閉じることなく、ベルト部材の荷重制御動作を継続し、適宜のタイミングで(例えば車両の運転終了により)ベルト部材の荷重制御を終了する。
【0034】
このように構成されたモータ付シートベルト装置100によれば、ベルト部材の荷重制御時に、制御装置13及び遮断回路15によってモータ11の駆動回路Bへの電源供給を制御することにより、駆動回路Bに許容量を超えるリーク電流が流れることを抑止することができる。したがって、そのようなリーク電流に起因してベルト部材の荷重制限範囲が制限されてしまうことを防止することができるので、乗員の荷重を支える支持反力を従来に比してより柔軟に制御することが可能となる。
【0035】
また、一般に、モータギア比が大きいと、モータの回転は速くなり、その結果、モータによる起電力は大きくなる関係にあるので、仮に許容量を超えるリーク電流の発生を回避できない場合には、リーク電流を抑えるためにモータギア比をあまり大きくできないという制約が生じてしまう。これに対し、モータ付シートベルト装置100によれば、許容量を超えるリーク電流の発生を回避することができるので、モータギア比の設計自由度を高めることができる。これにより、例えば、モータ付シートベルト装置の体格、耐久性、経済性(コスト)、及びプリ・プリテンショナー性能を向上させることができる。
【0036】
さらに、通常、モータトルクと起電力は比例関係にあるので、仮に許容量を超えるリーク電流の発生を回避できない場合には、高トルクなモータの使用にも制約が生じてしまう。これに対し、モータ付シートベルト装置100によれば、許容量を超えるリーク電流の発生を回避することができるので、モータの選択自由度を高めることができる。この点においても、モータ付シートベルト装置の体格、耐久性、経済性(コスト)、及びプリ・プリテンショナー性能を一層向上させることができる。
【0037】
以上、本開示の一例としての実施形態について詳細に説明してきたが、前述した説明は、あらゆる点において本開示の一例を示すに過ぎず、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもなく、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものや特定のものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。すなわち、例えば、遮断回路15として、メカニカルリレー等の開閉器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
11…モータ、12…電源、13…制御装置(制御部)、14…センサ装置(センサ部)、15…遮断回路(遮断部)、41…モータ、42…電源、43…制御装置、44…センサ装置、100…モータ付シートベルト装置、151,152…スイッチング素子、400…モータ付シートベルト装置、B…駆動回路、S31~S36…ステップ、T1,T2…上流側スイッチング素子、T3,T4…下流側スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7