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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド1類似体の精製
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20220203BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 1/04 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 1/30 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 1/34 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C07K14/605
C07K1/20 ZNA
C07K1/04
C07K1/30
C07K1/34
C07K1/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019501750
(86)(22)【出願日】2017-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2017056668
(87)【国際公開番号】W WO2017162653
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】16162066.1
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518337832
【氏名又は名称】バッヘン・ホールディング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュテーデルマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・オー・シェーンレーバー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ザムゾン
(72)【発明者】
【氏名】フランク・デトナー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/005960(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/019262(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02813514(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/605
C07K 1/20
C07K 1/04
C07K 1/30
C07K 1/34
C07K 1/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラグルチドを精製するための方法であって、
a)リラグルチドと少なくとも1種の不要な構成成分を含む液体組成物Cを準備する工程と;
b)組成物Cを、7.0から7.8の間のpHで、第1の逆相高速液体クロマトグラフ(RP-HPLC)精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、リン酸緩衝水溶液AB1およびアセトニトリルを含む移動相を使用し、溶出を、リラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を徐々に上昇させることによって実行する工程と;
c)工程b)で得られたプールされたリラグルチドを含有する画分を、3.0未満のpHで、第2の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、トリフルオロ酢酸およびアセトニトリルを含む移動相を使用し、溶出を、精製したリラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を徐々に上昇させることによって実行する工程
とを含む前記方法。
【請求項2】
工程b)のリン酸緩衝水溶液AB1は、リン酸アンモニウム緩衝液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)の勾配はアセトニトリル19から67%(v/v)であり、および/または工程c)の勾配はアセトニトリル31から100%(v/v)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)で使用される移動相内のトリフルオロ酢酸濃度は、0.05~0.5%(v/v)の範囲から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
d)工程c)で得られたリラグルチドを、7.0から7.8の間のpHで、第3の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、緩衝水溶液AB2のアセトニトリルとの混合物を移動相として使用し、溶出を、精製したリラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を徐々に上昇さ
せることによって実行する工程
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記緩衝水溶液AB2は、
- リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物、
- リン酸二水素カリウムとリン酸水素二カリウムの混合物、
- 酢酸カリウム、および
- 酢酸ナトリウム
からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程b)および/もしくは工程c)ならびに/または存在する場合は工程d)の、すべてまたは一部は、4~25℃の範囲から選択される温度で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)およびc)ならびに存在する場合は工程d)で使用される固定相は、C8に結合したシリカまたはC18に結合したシリカである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
サイズ排除クロマトグラフィーの工程e)をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ペプチドを脱塩する工程f)をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
それぞれの工程のすべてまたは一部は、4~20℃の範囲から選択される温度で行われる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
工程a)は、7.0から7.5の範囲から選択されるpHで、乾燥された粗製のリラグルチドペプチドをリン酸緩衝水溶液AB0に溶解することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記粗製のリラグルチドペプチドは、固相ペプチド合成と、それに続く、トリフルオロ酢酸に媒介される切断および切断組成物からのペプチドの沈殿によって得られる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
精製されたリラグルチドは、凍結乾燥される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、工業的規模または実験室規模でのペプチド精製の分野に関する。本発明は、リラグルチドのようなグルカゴン様ペプチド1類似体を有効に精製する方法を対象とする。
【0002】
好ましい実施形態では、本発明は、グルカゴン様ペプチド1類似体を精製する方法であって、二次元逆相高速液体クロマトグラフィーのプロトコルを含み、第1の工程は、リン酸緩衝液およびアセトニトリルを含む移動相を使用して、7.0から7.8の間のpH値で行われ、第2の工程は、トリフルオロ酢酸およびアセトニトリルを含む水性移動相を使用して、3.0未満のpH値で行われる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトGCG遺伝子(HGNC:4191)は、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)およびグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)を含む複数の関連するペプチドをコードする。これらは、かなりの配列相同性を共有し(図1を参照のこと)、血糖のホメオスタシス、腸の細胞増殖、および満腹を制御することにおいて重要である。GLP-1機能の異常は、肥満、食後の反応性低血糖、および2型糖尿病に関連付けられてきた。よって、GLP-1類似体は、薬剤研究において非常に興味深い。アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)に見られるペプチドホルモンエクセンディン-4の変異体および誘導体ならびにそのGLP-1ペプチドの変異体および誘導体は、広範囲にわたって研究されている。市販されている薬物は、エクセナチドおよびリキシセナチドを含み、いずれも、GLP-1由来のリラグルチドと同様に、エクセンディン-4ペプチドから導出される。
【0004】
NN2211としても知られている、リラグルチドである(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-Lys26Arg34-GLP-1(7-37)は、2型糖尿病の処置に対してと、関連する共存症を有する成人の肥満の処置に対して承認されている。
【0005】
この物質は、組換え技術によって工業的規模で製造されている。特許文献1には、発現した親ペプチドをNα-ヘキサデカノイル-Glu(ONSu)-OtBuと組換えによって反応させて、リラグルチドを得ることについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO1998/008871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リラグルチドのようなグルカゴン様ペプチドの全化学合成のための大規模での方法を提供することが望ましい。化学ペプチド合成は、文献に広範囲にわたって記載されている。ペプチドの化学合成への2つの標準手法は区別することができ、すなわち液相ペプチド合成(LPPS)および固相ペプチド合成(SPPS)である。さらに、混成の手法を利用することができ、ここで、上記の技術のうちの一方によって、最初に断片が合成され、次いで、もう一方の手法を使用して一緒に接合される。溶液ペプチド合成とも称されるLPPSは、均質な反応媒体中で行う。連続的なカップリングにより、所望のペプチドが得られる。SPPSでは、不溶性ポリマー樹脂に、そのC末端によって固定されたペプチドは、その配列を構成する保護されたアミノ酸の連続的付加によってアセンブルされる。成長する鎖は不溶性支持体に結合しているため、過剰な試薬および可溶性副生成物は簡単な濾過によって除去することができる。しかし、特に、大きなペプチドの合成に対して、脱保護の間に、または分解によって形成された副生成物に加えて、樹脂結合副生成物が蓄積する可能性がある。結果として、最終生成物の精製は非常に困難である場合がある。
【0008】
グルカゴン様ペプチドの精製は、その凝集する傾向により、特に労力を要する。グルカゴンおよびグルカゴン様ペプチドは、酸性pHで凝集し易いことが知られている(例えば、European J. Biochem. 11 (1969) 37~42頁)。本発明は、GLP-1およびGLP-1類似体の製造および精製、特にリラグルチドの精製のための方法を提供する。
【0009】
特許出願CN-A 103275208は、C18カラム、および0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)溶液とアセトニトリルまたは1%の酢酸水溶液とアセトニトリルからなる酸性の移動相を使用する逆相高速クロマトグラフィー(RP-HPLC)を含むリラグルチドのための精製プロトコルを開示している。全体的な収率は、わずか20.2%であると示されている。
【0010】
WO 2011/161007は、GLP-1誘導体の精製のための方法を開示している。この方法は、二次元RP-HPLCに関し、ここで、移動相中の有機溶媒はアセトニトリルであり、第2の次元は、8.0から11.0の間のpHで、塩基性緩衝液を使用して行われる。
【0011】
好ましい実施形態では、C18カラムは、第1の次元の移動相としてpH2.4のリン酸アンモニウム/アセトニトリル、および第2の次元の移動相としてpH9.5の炭酸アンモニウム/アセトニトリルを用いて使用される。報告されている最大純度は97.4%である。したがって、純度は、所望されるほど高くなく、特に、WO 2011/161007で使用された塩基性緩衝剤は蒸発可能ではないため、ペプチドは、ペプチドの保存に対する欠点を有する場合のある塩基性緩衝液中で得られる。塩基性緩衝剤の除去には追加の脱塩工程が必要とされる場合がある。
【0012】
EP-A 2 813 514には、リラグルチドの精製のための方法が開示されている。この方法は、三次元RP-HPLCによる精製に関し、第1の次元の固定相としてオクチルシランにより結合したシリカおよび移動相として水性のイソプロパノール/TFA/アセトニトリル系;第2の次元の固定相としてシアノシランにより結合したシリカおよび移動相として水性の過塩素酸/アセトニトリル系;ならびに第3の次元の固定相としてオクチルシランにより結合したシリカおよび移動相として水性のアンモニア/アセトニトリル系を用いる。面倒な手順で、異なる固相および完全に異なる移動相を使用する3つの連続するHPLC精製工程を用いているが、報告された最大純度は98.7%である。
【0013】
WO 2014/199397には、C8カラムと、移動相としてTFA/メタノール/アセトニトリル系を使用するRP-HPLCを用いる混成の手法によって合成された粗製のリラグルチドの精製について開示されている。得られた組成物は、大量の毒性メタノールを含む。得られた純度は97%より高いことが報告されている。
【0014】
WO 2010/066734には、ペプチドの精製のための向流クロマトグラフィーの使用について開示されている。逆相カラムおよび陰イオン交換カラムが固定相として使用される。ここでは、対イオンに基づく方法が、むしろ理論に基づいて記載されている。この方法は、むしろ複雑である。
【0015】
WO 2000/055203およびWO 2000/055184には、イオン交換クロマトグラフィーによるペプチドの精製について開示されている。同様に、WO 2005/019261には、イオン交換クロマトグラフィーによって、ラセミ夾雑物からリラグルチドを分離する方法について記載されている。
【0016】
このような方法から得られた組成物は、所望されるより多いかなりの量の塩を含むことが多く、これらをさらなる精製工程において除去しなければならない。
【0017】
WO2011/107447には、RP-HPLCによる種々のペプチドの精製について開示されており、移動相のpHは、ペプチドの等電点の1単位以内に保たれ、溶出は、好ましくは、酸性範囲のpH勾配によって実行される。
【0018】
EP-B 1 664 109には、RP-HPLCによるペプチドの精製について開示されており、移動相は、アルコールと、pHをpH4~10の範囲から選択される設定値にしっかりと制御する緩衝液を含む。
【0019】
WO 2016/005960には、リラグルチドに対する2工程の精製スキームが開示されており、変則的なC18シリカ媒体-10ミクロンの粒径と、pH8.0の10mMのTrisを含む移動相を使用する第1の精製工程について記載されている。第2の工程では、5ミクロンの粒径のC18 RP-HPLC媒体と、0.1%のTFAを含む移動相が使用される。溶出は、アセトニトリルのステップグラジエントによって実行される。プールされた画分の平均純度は97%と示され、したがって、所望されるほど高くない。さらに、2つの異なる固定相の使用は経済的ではない。
【0020】
多くの先行技術にもかかわらず、高純度のグルカゴン様ペプチド1類似体および誘導体の工業的生産を可能にする改良法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
驚くべきことに、高純度のリラグルチドの製造のための簡単な方法が見出された。第1に、7.0から7.8の間のpH(7.0≦pH<7.8)を有する第1のリン酸緩衝液含有移動相を使用し、続いて、酸性pHの第2のTFA含有移動相を使用する2つの連続したクロマトグラフィーの工程を用いることが有利であることが見出された。カラムの目詰まりを十分に回避することができ、同じ固定相を両方の工程で使用することができることが見出された。実施された実験では、再現性のよい高い収率および98.8%より高い(99%より高い場合さえある)プールされた画分の高純度を達成することができた。
【0022】
概して、いくつかの略語および定義が、本発明全体を通して使用される:
ACN アセトニトリル
AcOH 酢酸
Boc tertブチルオキシカルボニル
DTE 1,4-ジチオエリトリオール
DTT 1,4-ジチオトレイトール
EDT 1,2-エタンジチオール
Fmoc 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
GLP-1 グルカゴン様ペプチド1
GLP グルカゴン様ペプチド
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
本明細書で使用する用語HPLCは、UHPLCを含む。
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
LPPS 液相ペプチド合成
NHOAc 酢酸アンモニウム
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SPPS 固相ペプチド合成
tBu tertブチル
TEAP トリエチルアンモニウムホスフェート
TFA トリフルオロ酢酸
TIPS トリイソプロピルシラン
UHPLC 超高速液体クロマトグラフィー
【0023】
他に示されていなければ、pH値は、それぞれの水溶液が使用される温度について示される。
【0024】
アミノ酸は、その正式名称(例示:アラニン)、WIPO標準ST.25による3文字コード(例えば、Ala)、または1文字コード(例えば、A)によって互換的に言及される。エナンチオマー型が明示的に特定されていなければ、一般的にL-アミノ酸に言及している。しかし、本発明は、同様に、D-アミノ酸および他の立体異性体を使用して実践されうる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は互換的に理解される。他に示されていなければ、ペプチド配列は、本明細書において、N末端(左)から始まってC末端(右)で終わるように示される。表1は、同等であり、この明細書全体で互換的に使用される異なる表記を例示する。
【0026】
【表1】
【0027】
アミノ酸誘導体について、以下の表記を使用する:アルファアミノ基における置換(Nα)は、アミノ酸記号の左に示され、ハイフンによって分離されており、アルファカルボキシ基における置換は、アミノ酸記号の右に示され、ハイフンによって分離されており、側鎖における置換は、アミノ酸記号の直ぐ右の括弧内に示されている。修飾されていないアルファアミノ酸では、アルファアミノ基(Nα)における置換はプロトン(H-)であり、アルファカルボキシ基における置換はヒドロキシ(-OH)である。
【0028】
分枝状ジペプチドでは、この表記は、入れ子形式でつながっている。例えば、Fmoc-Lys(Boc-Glu-OtBu)-OHは、Fmocで保護されたアルファアミノ基と遊離のアルファカルボキシル基を有するLys誘導体であって、その側鎖がBocで保護されたアルファアミノ基とOtBuで保護されたカルボキシル基を有するグルタミル部分で置換されているLys誘導体を指す。グルタミル部分は、そのガンマカルボキシル基を介してLys側鎖にアミド結合を形成する。
【0029】
ペプチドの一部である置換されたアミノ酸に対して、類似の表記が使用される。例えば、Aaa1-Aaa2-Lys(Boc-Glu-OtBu)-Aaa4-Aaa5は、分枝状のペンタペプチドを指し、ここで、3位のLys側鎖は、Boc保護されたアルファアミノ基とOtBu保護されたカルボキシル基を有する、アミド結合したグルタミル部分で置換されている。よって、前記アミド結合は、Lysのイプシロンアミノ基とGluのガンマカルボキシル基の間にある。
【0030】
用語「グルカゴン様ペプチド」またはGLPは、本明細書で使用する場合、前述の任意の誘導体だけでなく、GCG遺伝子(HGNC:4191)、エクセンディンおよびその類似体から導出される同族のペプチドを指す。図1は、プロトタイプのグルカゴン様ペプチドの配列アラインメントを示す。
【0031】
用語「グルカゴン様ペプチド1類似体」および「GLP-1類似体」は、本明細書で使用する場合、互換的に使用される。本明細書で使用する場合、これらは、GLP-1受容体に結合することができるペプチドに関する。GLP-1(7-37)の誘導体および類似体ならびにエクセンディン4(1-39)の誘導体および類似体、例えば、エクセナチド、リキシセナチド、およびリラグルチドは、好ましいGLP-1類似体である。例示的に、GLP-1類似体は、配列番号4に対して少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド鎖、より好ましくは、配列番号4に対して少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド鎖、特に、配列番号4に対して少なくとも95%の相同性を有するポリペプチド鎖を含み、場合により、配列番号4のLys20に対する相同体であるリシン部分における修飾も含む。相同性は、本明細書で使用する場合、好ましくは、配列番号4の配列全体にわたって決定される配列相同性である。本明細書で使用する場合、配列相同性は、当技術分野で公知の配列相同性の任意の定義を指す。特に、配列相同性は、本出願の出願日のバージョンの国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)によって決定された配列相同性として理解される。
【0032】
用語「類似体(複数可)」は、本明細書で使用する場合、その配列が、第1のペプチド配列の50%までのアミノ酸部分の置き換えによって、および/もしくは10%までのアミノ酸部分の欠失によって、ならびに/または10アミノ酸部分までの付加によって、前記第1のペプチド配列から導出されるペプチドに使用される。好ましい類似体は、第1のペプチド配列の20%までのアミノ酸部分の置き換えによって、および/もしくは10%までのアミノ酸部分の欠失によって、ならびに/または10アミノ酸までの付加によって、前記第1のペプチド配列から導出される。
【0033】
用語「誘導体(複数可)」は、本明細書で使用する場合、化学反応によって、第1の化合物から得ることのできる化合物を指す。結果として、誘導体は、置換基の存在または非存在によって、第1の化合物と異なる。例えば、SPPSにおいて使用するためのアミノ酸誘導体は、普通、少なくともアミノ酸保護基の存在によって、導出されるアミノ酸と異なる。
【0034】
本発明は、リラグルチドのようなGLP-1類似体を有効に精製するための方法を対象とする。
【0035】
本明細書で使用されるGLP-1類似体は、当技術分野で公知の任意の対イオン、例えば、陰イオンまたは陽イオン、例えば、塩化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、切断溶液の任意のイオン(例えば、TFAイオン、臭素イオン、過塩素酸イオン、アンモニウムイオン)および/または保護基の残基の陽イオンもしくは陰イオンなどを、場合により保有することが、当業者によって理解されるであろう。さらに、ペプチドは、場合により、共有結合または非共有結合により、微量の1種またはそれ以上の捕捉剤、例えば、トリイソプロピルシラン(TIPS)、ジチオトレイトール(DTT)、アニソール、チオアニソールまたは1,2-エタンジチオールに会合している。
【0036】
以下の教示はリラグルチドに関することが多いが、同様に、それらを任意の他のGLP-1類似体に適用することができることが理解されるべきである。
【0037】
特に、本発明の一態様は、リラグルチドの精製のための方法であって、以下の工程a)からc):
a)リラグルチドと少なくとも1種の不要な構成成分を含む液体組成物Cを準備する工程と;
b)組成物Cを、7.0から7.8の間のpHで、第1の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、リン酸緩衝水溶液AB1およびアセトニトリルを含む移動相を使用し、溶出を、リラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を徐々に上昇させることによって実行する工程と;
c)工程b)で得られたプールされたリラグルチドを含有する画分を、3.0未満のpHで、第2の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、トリフルオロ酢酸およびアセトニトリルを含む移動相を使用し、溶出を、精製したリラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を徐々に上昇させることによって実行する工程
とを含む方法に関する。
【0038】
一実施形態では、本発明の方法は、さらに、
d)工程c)で得られたリラグルチドを、7.0から7.8の間のpHで、第3の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、緩衝水溶液AB2のアセトニトリルとの混合物を移動相として使用し、溶出を、精製したリラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を徐々に上昇させることによって実行する工程
を含む。
【0039】
用語「リラグルチドと少なくとも1種の不要な構成成分を含む液体組成物Cを準備する」は、リラグルチドと少なくとも1種の不要な構成成分を含有する任意の液体組成物を得る工程として、最も広い意味で理解される。リラグルチドは、当技術分野で公知の任意の手段によって準備される。例示的に、リラグルチドは、固相ペプチド合成(SPPS)もしくは液相ペプチド合成(LPPS)またはその組合せから得ることができる。あるいは、簡単なポリペプチド鎖は、バイオテクノロジーによる方法から得ることもでき、得られたポリペプチド鎖は、次に、化学/合成手段によって修飾される。
【0040】
用語「不要な構成成分」は、本明細書において、不純物とみなされる任意の化合物に対して、最も広い意味で使用される。特に好ましい種類の不純物は、リラグルチドの合成および保存の間に形成され、アミノ酸、ペプチドおよびその誘導体からなる群から選択される。特に、ペプチド合成の間の早期連鎖停止、ペプチド合成の間の少なくとも1つのアミノ酸の脱落または意図しない付加、保護基の不完全な除去、アミノ酸のカップリングまたはFmoc脱保護工程の間に起こる副反応、分子間または分子内縮合反応、固体支持体からのペプチドの切断の間の副反応、ラセミ化、任意の他の種類の異性体形成、脱アミド、(部分的)加水分解、および凝集体形成などのプロセスから生じる、アミノ酸、ペプチド、およびその誘導体からなる群から選択される不純物が包含される。グルカゴンおよびグルカゴン様ペプチドが凝集体を形成する傾向にあること、および低pH値によってこのプロセスが促進されることが多い、すなわち、低pH値は不安定化条件を表すことが当技術分野で周知である(例えば、Wangら、Mol. Pharm 12:411~419頁を参照のこと)。上記で概説したように、このようなプロセスから得られたペプチドの夾雑物は、「関連する物質」と称されることもある。
【0041】
特に好ましい実施形態では、不要な構成成分はペプチドの不純物である。本明細書で使用する場合、発現「ペプチドの不純物」は、不要なペプチドの化合物を指し、特に、HMW不純物、精製されるペプチドの誘導体、精製されるペプチドのトランケートされた変異体、精製されるペプチドの欠失体、およびこのようなトランケートされた変異体および欠失体の誘導体を含む。ペプチドの不純物は、RP-UHPLCを含む適切な分析クロマトグラフィーによって日常的に決定される。
【0042】
一実施形態では、不要な構成成分は、精製されるペプチドの共有結合または非共有結合による凝集体を含む。このような不要な構成成分は、生理学的に不活性であるか、または未知の生理作用を有するものであり、5000Daより大きい分子量を有する。不要な構成成分は、本明細書において、「高分子量(HMW)不純物」と称される。別の実施形態では、不要な構成成分は、精製されるペプチドの誘導体、例えば、アミノ酸側鎖の酸化もしくは加水分解の結果物および/またはペプチド合成の間に形成された副生成物である。別の実施形態では、不要な構成成分は、精製されるペプチドのトランケートされた変異体またはこのようなトランケートされた変異体の誘導体である。本明細書で使用する場合、表現「トランケートされた変異体」は、ペプチド配列のN末端および/またはC末端で1つまたはそれ以上のアミノ酸を欠く、所与のペプチドの連続する断片、すなわち、ギャップのない部分配列を指す。別の好ましい実施形態では、不要な構成成分は、精製されるペプチドの欠失体またはこのような欠失体の誘導体を含む。本明細書で使用する場合、表現「欠失体」は、精製されるペプチドの変異体を指し、それらの一次配列が単一または多数のアミノ酸を欠くという点で異なる。「脱落した」アミノ酸は、もとのペプチド配列内の任意の位置にある。したがって、トランケーション変異体は、特異的な種類の欠失体とみなすことができる。
【0043】
特に好ましい実施形態では、精製されるペプチドはリラグルチドである。最も好ましい実施形態では、本発明による方法により、ペプチドの不純物を除去し、本質的に純粋なリラグルチドの調製物を得ることが可能となる。本発明の方法により、分析クロマトグラフィーによって、205から230nmの間の波長でのUV検出を好ましくは用いて、実測された相対的ピーク面積について評価すると、任意の個々のペプチドの不純物を0.5%以下しか含有しない本質的に純粋なリラグルチドが得られることが示された。
【0044】
リラグルチド欠失体は、好ましくは、リラグルチドのペプチド骨格の一次配列(配列番号4)から4個までのアミノ酸を欠いているという点でリラグルチドの分子構造と異なり、場合により、2~5個のアミノ酸側鎖において、または配列番号4のLys20に対応するLys部分の(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))置換基においてさらなる変更を有する、27~30個の連続するアミノ酸からなるペプチドである。
【0045】
言い換えれば、リラグルチドの欠失体は、長さが27から30個のアミノ酸部分のペプチドと定義され、配列番号4の全長に対して計算して、配列番号4との少なくとも80%の相同性を共有し、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に、修飾、例えば、(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))置換基を含む。
【0046】
一部の実施形態では、不要な構成成分は、少なくとも1種のTrp(O)25-リラグルチド、ならびに/または少なくとも1種のTrp(2O)25-リラグルチドおよび/もしくはKyn25-リラグルチドならびに/またはGly31を欠くリラグルチド欠失体を含む。
【0047】
本出願の文脈では、表現「Trp(O)25-リラグルチド」は、25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が単一の酸素原子の導入によって酸化されるリラグルチド誘導体を示すために使用される。表現「Trp(2O)25-リラグルチド」は、25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が2個の酸素原子の導入によって酸化されるリラグルチド誘導体を示すために使用される。最後に、「Kyn25-リラグルチド」という表現は、キルレニンが25位のTrp位を置換しているリラグルチド誘導体を示すために使用される。
【0048】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、合成後に得られた粗製の調製物からリラグルチドを単離するために使用するのが有利である。本発明は、リラグルチド合成の具体的方法に決して制限されないが、好ましい実施形態は、化学的に合成されたリラグルチドペプチドの精製に関する。リラグルチドペプチドは、例えば、適切に保護されたアミノ酸とジペプチド誘導体を使用するFmoc固相ペプチド合成によって合成することができる。
【0049】
好ましくは、組成物Cは、以下の工程(i)~(iii):
(i)式I:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OH)またはLys(H-Glu-OH)である)
のペプチドを含む溶液Sを準備する工程と;
(ii)溶液Sをジイソプロピルエーテルとアセトニトリルを含む逆溶媒と混合することによって、工程(i)のペプチドを沈殿させる工程であり、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(10:1)の範囲内にある、工程と;
(iii)工程(ii)から得られた沈殿物を、好ましくは濾過および/または遠心分離によって、単離する工程
とを含む方法によって製造されたリラグルチドまたはその塩を含む。
【0050】
より好ましくは、組成物Cに含まれる粗製のリラグルチドの全量が、上記の方法によって得られたものである。
【0051】
特に好ましい態様では、組成物Cは、以下の工程(i)~(iii):
(i)式I:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OH)またはLys(H-Glu-OH)である)
のペプチドを含む溶液Sを準備する工程であり、
前記溶液Sの準備は、
(i-a)固相:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly-[樹脂]
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OtBu)またはLys(Boc-Glu-OtBu)であり、Rはカルボン酸保護基であり、少なくともGlu、AspおよびLysの側鎖が保護基を保有する)
にコンジュゲートされた前駆体ペプチドを準備する工程と;
(i-b)前駆体ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)を含む切断組成物を用いて、樹脂から切断する工程を含み、
工程(i)から得られた前記溶液Sは、トリフルオロ酢酸(TFA)、水ならびにチオール捕捉剤および/またはシラン捕捉剤から選択される1種またはそれ以上の捕捉剤を含む、工程と;
(ii)溶液Sをジイソプロピルエーテルとアセトニトリルからなる逆溶媒と混合することによって、工程(i)のペプチドを沈殿させる工程であり、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(5:1)の範囲内にある、工程と;
(iii)工程(ii)から得られた沈殿物を、好ましくは濾過および/または遠心分離によって、単離する工程
とを含む方法によって製造された粗製のリラグルチドまたはその塩を含む。
【0052】
当業者であれば、式Iのペプチドが、1文字コード:
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVRGRG (配列番号4)(式中、アミノ酸配列の20位のリシル部分(Lys20、K20)が修飾されている)で書かれた、簡単なリラグルチドのポリペプチド鎖の誘導体を指すことに直ぐに気付く。より詳細には、Lys20のイプシロンアミノ基が、アミド結合を介して、グルタミル部分のガンマカルボキシル基(γ-Glu、γ-E)のガンマカルボキシル基にコンジュゲートしている。グルタミル部分は、そのアミノ基を介して、パルミチン酸=ヘキサデカン酸部分にコンジュゲートしているか、または遊離NH2(アルファアミノ基、Nα)を保有する。
【0053】
好ましくは、式Iのペプチドは、いずれの保護基も(本質的に)有さず、Lys20の部分を除いて、アミノ酸側鎖で他の修飾を有さない。したがって、式Iのペプチドは、好ましくは、十分に保護されていないペプチドであり、好ましくはさらに修飾されない。
【0054】
用語「保護基」は、本明細書で使用する場合、官能基の化学的修飾によって分子に導入され、次のプロセス工程において、前記基を反応からブロックする、例えば、アミノ酸側鎖の副反応を妨害する基として、最も広い意味で理解される。アミノ保護基の例は、BocおよびFmoc基であり、カルボン酸保護基の例は、メチルエステル、ベンジルエステル、またはtertブチルエステルのような未反応性エステルである。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「樹脂」および「[樹脂]」は、SPPSのために使用可能な支持体構造として最も広い意味で理解される。好ましくは、樹脂はビーズ様構造を有する。用語「樹脂」、「固相」および「支持体」は、本明細書において、交換可能に使用される。
【0056】
本出願の文脈では、用語「捕捉剤」は、SPPS後のペプチドの樹脂からの切断の間、および/または保護基の除去の間に、副反応を抑制するために反応混合物に添加される化合物を指すために使用される。切断組成物において使用される典型的な捕捉剤は、「チオール捕捉剤」(例えば、EDT、DTE、DTT、およびベータ-メルカプトエタノール)および「シラン捕捉剤」(例えば、TESおよびTIPS)である。
【0057】
さらに、通常使用される捕捉剤は、エチルメチルスルフィド、チオアニソール、アニソール、m-クレゾールもしくはp-クレゾール、2-Me-インドール、Ac-Trp-OMe、またはトリプタミンを含む。当業者であれば、使用可能な非常に様々な捕捉剤を十分に認識している。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、精製方法の工程a)は、乾燥された粗製のリラグルチド沈殿物を得ること、および7.0から7.8、好ましくは7.0から7.5の範囲から選択されるpHで、前記乾燥された沈殿物を適切な緩衝液に溶解して、リラグルチドと少なくとも1種の不要な構成成分を含む液体組成物Cを得ることに関する。好ましい実施形態では、工程a)は、6.6~7.9、好ましくは7.0から7.8、最も好ましくは7.0から7.5の範囲から選択されるpHで、乾燥された粗製のリラグルチドペプチドをリン酸緩衝水溶液AB0に溶解することを含む。特に好ましいリン酸緩衝液は、7.0から7.5の範囲から選択されるpHのリン酸水素ナトリウムまたはリン酸水素アンモニウムである。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、粗製のリラグルチドペプチドは、固相ペプチド合成、続いて、トリフルオロ酢酸に媒介される切断および切断組成物からのペプチドの沈殿によって得られる。
【0060】
本出願の目的として、用語「精製していない」および「粗製の」は、本質的に、合成および単離プロセスの直接的な生成物であり、特定の精製工程に未だ付されていない、リラグルチドのようなペプチドの調製物を示すために互換的に使用される。化学合成によって、通常、およそ50から70%の純度を有する粗製のリラグルチド調製物が得られる。しかし、液体組成物Cは、100%未満の任意の純度の程度(例えば、30、40、50、60、70、80、または90%を超える純度)によって特徴付けられ、本発明は、部分的に精製したリラグルチド組成物にも有利に適用されることが理解されるべきである。
【0061】
本発明の文脈では、用語「精製した」は、特定の精製工程、例えば、分取クロマトグラフィーに供されたペプチド組成物を示すために使用される。このような組成物は、高度にまたは部分的に精製される。
【0062】
他に記載されていなければ、ペプチドの純度は、本明細書において、「HPLC純度」として、すなわち205から230nmの間の波長での、すなわちペプチド結合の吸収極大でのUV検出を用いる分析逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で実測される相対ピーク面積として示される。言い換えれば、値は、205から230nmの間の波長でのUV検出を用いる分析RP-HPLCによって得られるクロマトグラムにおいて、すべての実測されたピークの面積の合計で割った、所与のピーク面積の面積%として決定される。この尺度は、この分野での常識であり、当業者は、生成物に特異的なRP-HPLCプロトコルを日常的に考案し、米国薬局方で示される確立されたガイドラインに従った定量を実施する。ペプチドの夾雑物の検出に対するRP-HPLCプロトコルの適性は、日常的に、LC-MSによってピーク純度を決定することによって評価される。それらの類似構造に起因して、すべてのペプチドの構成成分が同じ吸収を有するという仮定のもと、質量百分率[%(w/w)]として表現された純度に対するプロキシとして、RP-HPLC純度を使用することができる。
【0063】
当業者は、クロマトグラフィー精製のための試料を調製する方法を十分に認識している。例えば、乾燥された粗製のリラグルチド調製物を、温度およびpHを適宜調整しながら水性相において穏やかに撹拌することによって溶解させる。本発明者らは、特に、粗製のリラグルチド調製物を溶解するのに適する、6.6~7.9、好ましくは7.0~7.8のpH、特に、7.0~7.5のpHの緩衝水溶液を見出した。さらなる例として、試料は、不活性ガスの下で保持されるかもしくは超音波処理に供され、脱炭酸反応に供され、特定の加水分解に供され、かつ/または濾過もしくは遠心分離によって非液体組成物から分離される。試料の濃度は、とりわけ、乾燥、凍結乾燥、溶媒の部分的蒸発、もしくは限外濾過によって、かつ/または、場合によって、試料ローディング緩衝液中にペプチド調製物を溶解もしくは希釈することによって、調整することができる。
【0064】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)は、周知であり、ペプチド精製およびペプチド試料分析のために、すなわち調製および分析の用途で、広く使用されている。この技術は、試料の種々の構成成分と疎水性固定相の間の疎水性会合に基づき、この会合は、移動相に含まれる溶媒によって破壊される。試料の構成成分の分画溶出(differential elution)は、一般的に、移動相内の溶媒の濃度を徐々に上昇させることによって達成される。
【0065】
実用的観点から、この勾配は、通常、移動相を構成する第1の溶離液と第2の溶離液の比率を変化させることによって得られる:慣例によって緩衝液Aと称される第1の緩衝液は、適切な緩衝水溶液中に少量の溶媒を含み、一方、慣例により緩衝液Bと称される第2の緩衝液は、前記緩衝水溶液中に多量の溶媒を含む。したがって、移動相における緩衝液Bの比率を上昇させることによって、より疎水性の構成成分を固定相から溶出することができる。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語HPLCは、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC、UPLCとも表示される)も含む。好ましい一実施形態では、HPLCはUHPLCである。より好ましくは、UHPLCは逆相UHPLCであり、したがって、RP-UHPLCとも表示される。したがって、特に好ましい実施形態では、HPLCはRP-UHPLCである。
【0067】
本出願の文脈では、表現「炭化水素に結合したシリカ」は、その表面に化学的に結合した炭化水素部分を有する多孔性シリカ粒子またはシリカゲルから作製されたクロマトグラフィーの固定相を指す。化学結合の種類および結合した炭化水素部分の化学的性質は様々であることが理解される。例えば、本出願に関して使用するための固定相は、4から18、好ましくは8から18個の炭素原子の化学結合した炭化水素部分を有する多孔性シリカ粒子から作製される。このような炭化水素部分は、好ましくは、直鎖状アルキル鎖である。炭化水素に結合したシリカの好ましい種類は、4個(C4)、6個(C6)、8個(C8)、10個(C10)、12個(C12)、14個(C14)、16個(C16)または18個(C18)の炭素原子を有する炭化水素部分を有する。炭化水素に結合したシリカの特に好ましい種類は、4個(C4)、8個(C8)、12個(C12)または18個(C18)の炭素原子の分岐していないアルキル鎖、すなわち、ブチル、オクチル、ドデシル、またはオクタデシル部分を有する。C8に結合したシリカ、特にn-オクチルに結合したシリカ、および/またはC18に結合したシリカ、特にn-オクタデシルに結合したシリカは、本発明による方法の工程b)、c)、および場合によりd)において使用するための、さらにより好ましい固定相である。工程b)およびc)および場合によりd)において使用される固定相は、工程のそれぞれにおいて同一であるかまたは異なっている。好ましくは、固定相は同一である。特に好ましくは、単一の固定相(すなわち、単一のカラム)が、工程b)およびc)ならびに場合によりd)において使用される。
【0068】
本出願の文脈では、表現「C8に結合したシリカ」は、その表面に化学的に結合したC8炭化水素部分、好ましくは直鎖状オクチル、すなわちn-オクチル部分を有する多孔性シリカ粒子またはシリカゲルから作製されたクロマトグラフィーの固定相を示すために使用される。さらに、表現「C12に結合したシリカ」は、その表面に化学的に結合したC12炭化水素部分、好ましくは直鎖状ドデシル、すなわちn-ドデシル部分を有する多孔性シリカ粒子またはシリカゲルから作製されたクロマトグラフィーの固定相を示すために使用される。同様に、用語「C18に結合したシリカ」または「ODS」は、その表面に化学的に結合したC18炭化水素部分、好ましくは直鎖状オクタデシル、すなわちn-オクタデシル部分を有する多孔性シリカ粒子またはシリカゲルから作製されたクロマトグラフィーの固定相を指すために、本明細書において、互換的に使用される。
【0069】
広範囲の炭化水素に結合したシリカ材料が市販されている。本発明において使用することができる固定相の例として、それぞれ、Daiso、YMC、Phenomenex、およびAkzoNobelによって製造されたDaisogel(商標) C18 ODS、Daiso ODS-Bio、Daiso-ODS-A-HG C18、Daisogel(商標) C8-Bio、YMC ODS-A、YMC Triart C8-L、Luna C8、Luna C18、Kromasil(商標) C18、およびKromasil(商標) C8がある。
【0070】
シリカ粒子は、直径2から200マイクロメーター、好ましくは2.5から20マイクロメーター、好ましくは5~15マイクロメーター、および最も好ましくは10マイクロメーターのものであり、50から1000Å、好ましくは80から400Å、好ましくは100から300Å、最も好ましくは(約)100Åの孔径を有する。
【0071】
本発明のRP-HPLC工程で使用される移動相は、一般的に、水性構成成分と溶媒としてのアセトニトリルを含む。有機修飾剤のようなさらなる構成成分が存在する場合がある。溶出は、溶媒としてのアセトニトリルの濃度を徐々に上昇させることによって実行される。いずれの理論にも拘泥されることを望むものではないが、溶媒は、組成物Cの構成成分の固定相への会合と競合すると考えられる。線速度を維持するために、専門家は、カラムの直径に応じ、用いられる機器および固定相の仕様書を考慮に入れて、移動相の流量を調整する。
【0072】
本発明による方法の工程b)、すなわちRP-HPLC精製スキームの第1の次元は、7.0から7.8の間のpH値で、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、または7.8のpH値で、好ましくは7.5から7.8のpH値で行われる。pH値は、移動相の水性構成成分において、その工程がリン酸緩衝液の使用によって行われる温度で調整される。好ましくは、リン酸緩衝液は、5から50mMの濃度で使用される。任意の種類のリン酸緩衝液、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、またはリン酸アンモニウムが使用される。好ましい一実施形態では、工程b)のリン酸緩衝水溶液AB1は、好ましくは5から50mMの濃度のリン酸アンモニウムである。任意の種類のアセトニトリル勾配を、固定相からのリラグルチドの溶出に使用することができ、勾配プロファイルがこの工程で達成可能な精製に影響を与えることが理解される。好ましい実施形態では、工程b)の勾配は、アセトニトリル19から67%(v/v)である。アセトニトリル19から67%(v/v)の直線勾配が特に好ましい。
【0073】
本発明による方法の工程c)、すなわちRP-HPLC精製スキームの第2の次元は、3未満のpH値で行われる。pH値は、移動相の水性構成成分における0.05~0.5%(v/v)のTFAの存在によって決定される。好ましい実施形態では、工程c)で使用される移動相内のTFA濃度は、0.05~0.2%(v/v)、好ましくは0.05~0.1%(v/v)の範囲から選択される。任意の種類のアセトニトリル勾配を、固定相からのリラグルチドの溶出に使用することができ、勾配プロファイルがこの工程で達成可能な精製に影響を与えることが理解される。好ましい実施形態では、工程c)の勾配は、アセトニトリル31から100%(v/v)である。アセトニトリル31から100%(v/v)の直線勾配が特に好ましい。
【0074】
場合により、工程d)、すなわちRP-HPLC精製の第3の次元は、リラグルチド調製物の純度をさらに改善するために行われる。前記工程は、7.0から7.8の間のpH値で、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、または7.8のpH値で、好ましくは7.5から7.8のpH値で行われる。pH値は、移動相の水性構成成分において、その工程が緩衝液AB2の使用によって行われる温度で調整される。好ましくは、緩衝液は、5から100mMの濃度で使用される。任意の種類の緩衝液、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムが使用される。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、前記緩衝水溶液AB2は、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの混合物、リン酸二水素カリウムとリン酸水素二カリウムの混合物、酢酸カリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0076】
特に好ましい実施形態では、酢酸ナトリウム緩衝液が使用される。任意の種類のアセトニトリル勾配を、固定相からのリラグルチドの溶出に使用することができ、勾配プロファイルがこの工程で達成可能な精製に影響を与えることが理解される。好ましい実施形態では、工程c)の勾配は、アセトニトリル19から67%(v/v)である。アセトニトリル19から67%(v/v)の直線勾配が特に好ましい。
【0077】
本発明の一実施形態では、精製方法は、サイズ排除クロマトグラフィーの工程e)をさらに含む。
【0078】
この工程e)は、場合により、工程a)~d)のいずれかの後に行われる。好ましくは、工程e)は、工程c)の後に、または存在する場合は工程d)の後に行われる。
【0079】
サイズ排除液体クロマトグラフィーは、ペプチド化学の分析および調製の用途で周知である。この方法は、試料の一部の構成成分だけが孔の一部に侵入することができるように孔径が選択された多孔質材料の固定相の使用に依拠する。結果として、種々の構成成分によって直面する利用できる体積が、各構成成分の見かけの分子サイズに応じて変化する。したがって、試料の構成成分は、それらの見かけのサイズの順にカラムから溶出され、大きな分子が最初に溶出する。理想的には、試料の構成成分は固定相の表面と相互作用せず、その結果、溶出時間の差は、各構成成分が侵入することができる溶質体積の差に排他的に起因する。結果として、移動相の組成は、クロマトグラフィー分離に直接影響を及ぼさず、試料の特性または下流の処理工程の必要性の観点で調整することができる。
【0080】
高分子量の夾雑物の分離、または塩の除去のいずれかのために、RP-HPLC工程の後に、サイズ排除クロマトグラフィーを用いることが予想される。目的に応じて、当業者は、適切な粒子および孔径分布を有する固定相を選択する。本発明で使用するために好ましい固定相は、100~300Å(例えば、100、125、145、200もしくは300Å)の孔径、または0.7~10kDa(例えば、0.7kDa未満、1.5kDa未満、0.1~7kDa、1~5kDaもしくは10kDa未満)もしくは1.5~30kDaの分子量の範囲、および2~5マイクロメーターまたは20~300マイクロメーターの粒径を有する。適切な市販品には、例えば、Sephadex(登録商標) G50(GE Healthcare Life Sciences)、Waters Acquity(商標) BEH 200、Phenomenex Yarra(商標) SEC-2000、Tosoh Biosciences TSKgel(登録商標) SuperSW2000、Sephadex(登録商標) G-25(GE Healthcare Life Sciences)、Toyopearl(登録商標) HW-40(Tosoh Biosciences)、Superdex(登録商標)ペプチド(GE Healthcare Life Sciences)およびSuperdex(登録商標)30(GE Healthcare Life Sciences)が含まれる。好ましい移動相は、超純水、pH7.5の10mMのリン酸水素ナトリウム水溶液、または試料と相溶性の任意の緩衝液/溶媒系を含む。
【0081】
好ましい実施形態では、方法は、ペプチドを脱塩する工程f)をさらに含み、好ましくは、脱塩は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、または限外濾過によって実施される。
【0082】
この工程f)は、場合により、任意の工程a)~e)のいずれかの後に行われる。好ましくは、工程f)は、工程c)の後に、または存在する場合は工程d)もしくはe)の後に行われる。本発明の一実施形態では、工程e)およびf)は、場合により同一であり、すなわち、脱塩する工程は、適切な固定相を使用するサイズ排除クロマトグラフィーを用いて実施される。例えば、脱塩する工程は、固定相としてのGE Healthcare Life SciencesのSephadex(登録商標) G-25、Sephadex(登録商標) G-50、またはSephadex(登録商標)ペプチド、ならびに、均一溶媒による溶出のための移動相としての、アルコールまたはアセトニトリルのような有機溶媒と場合により混合した超純水を使用することを含む。
【0083】
本明細書で使用する場合、表現「脱塩(する)」および「塩の除去」は、試料の塩含有量を低減する任意の方法の工程に対して互換的に使用される。例えば、塩含有量は、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、または99%超まで減少される。好ましい実施形態では、緩衝液の陰イオンの量は、検出レベル未満のレベルに低減される。脱塩は、任意の適切な方法によって実施される。上述のサイズ排除クロマトグラフィーの他に、通常使用される周知の選択肢は、透析、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過である。限外濾過は、圧力に推進される分離プロセスであり、少量の緩衝液と溶媒分子を通過させるが目的のペプチドを保持する半透膜の使用に依拠する。
【0084】
本発明の目的として、3kDa以下、例えば、3kDa、2kDa、1kDaまたはそれ未満の分画分子量を有する膜を使用することが好ましい。膜を通過する液体は、「透過液」または「濾液」と称され、一方、膜に保持される試料は「被保持物」と称される。膜の細孔の目詰まりを回避するために、タンジェンシャルフロー濾過形式(クロスフロー濾過としても知られる)を用いることが有利である。本発明の目的として、アセトニトリルのような有機溶媒と適合する膜を使用することが好ましい。特に好ましい実施形態では、1kDaの分画分子量を有するポリエーテルスルホン膜が使用される。しかし、適切な分画分子量を提供する限り、フィルターは、濾過の文脈で公知の任意の材料、例えば、プラスチック(例えば、ナイロン、ポリスチレン)、金属、合金、ガラス、セラミック、セロファン、セルロース、または複合材料などのものであることが理解されるべきである。フィルターは、疎水性または親水性である。フィルターの表面は、中性であるか、または正に帯電しているか、または負に帯電している。
【0085】
当業者は、本発明の方法を適切な読み取り技術と日常的に組み合わせるであろう。例えば、クロマトグラフィーの工程は、205~230nmまたは280nmの波長で溶出液のUV吸光度をフォローし、かつ/または溶出液の導電性をフォローすることによってモニタリングされる。さらに、クロマトグラフィーは、質量分析、サイズ排除UHPLC、イオン交換UHPLCおよび/もしくは逆相UHPLC、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ならびに/または細胞ベースの機能アッセイによる、オンラインまたはオフラインの分析と組み合わされる。
【0086】
ペプチドの質の劣化を回避するために、当業者は、試料の保存を含む精製工程の条件を、注意深くかつ日常的に最適化する。精製工程の終わりまで、画分は、とりわけ、プールされ、沈殿され、スプレー乾燥され、凍結乾燥され、凍結され、冷蔵され、希釈され、濃縮され、かつ/または安定化するための緩衝液、塩基、酸もしくは他の物質と混合される。影響を受けやすい材料を安定化条件の下で取り扱うことは、優れた実務である。例えば、別の不安定な条件を補填するためには、低温、例えば、4℃から15℃の範囲で作業することが有利である。さらなる例として、6.6~7.9、好ましくは7.0から7.8、最も好ましくは7.0から7.5の範囲から好ましくは選択されるpHで、リラグルチド調製物を凍結乾燥させることが有利である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、クロマトグラフィー精製工程b)および/もしくはc)ならびに/または存在する場合は工程d)の、すべてまたは一部は、4~25℃、好ましくは4~20℃、最も好ましくは4~10℃の範囲から選択される温度で行われる。同様に、任意の場合によるさらなる精製工程、すなわちサイズ排除クロマトグラフィー工程(工程e))および/または脱塩工程(工程f))のすべてまたは一部は、4~25℃、好ましくは4~20℃、最も好ましくは4~10℃の範囲から選択される温度で行われる。
【0088】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は:
a)場合により7.0から7.5の範囲から選択されるpHのリン酸緩衝水溶液に溶解された、リラグルチドおよび少なくとも1種の不要な構成成分を含む液体組成物Cを準備する工程と;
b)組成物Cを、7.0から7.8の間のpHで、第1の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、アセトニトリルおよび5から50mMの濃度のリン酸アンモニウム緩衝水溶液を含む混合物を移動相として使用し、溶出を、リラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を、アセトニトリル19から67%(v/v)に徐々に上昇させることによって実行する工程と;
c)工程b)で得られたプールされたリラグルチドを含有する画分を、3.0未満のpHで、第2の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、0.05~0.5%(v/v)のトリフルオロ酢酸溶液およびアセトニトリルを含む混合物を移動相として使用し、溶出を、精製したリラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を、31から100%(v/v)に徐々に上昇させることによって実行する工程と;
d)場合により、工程c)で得られたリラグルチドを、7.0から7.8の間のpHで、第3の逆相HPLC精製に供する工程であり、炭化水素に結合したシリカを固定相として使用し、緩衝水溶液AB2のアセトニトリルとの混合物を移動相として使用し、溶出を、精製したリラグルチドを含有する画分を回収しながら移動相内のアセトニトリル濃度を、19から67%(v/v)に徐々に上昇させることによって実行する工程と;
e)場合により、工程c)またはd)のいずれかにおいて得られたリラグルチドをサイズ排除クロマトグラフィーに供する工程と;
f)場合により、工程c)、d)またはe)のいずれかにおいて得られたリラグルチドをペプチドの脱塩に供する工程であり、脱塩が、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは限外濾過によって実施される工程
とを含み、
工程b)および工程c)ならびに存在する場合は工程d)、e)および/またはf)は、4~25℃の範囲から選択される温度で行われ、
好ましくは、工程b)およびc)ならびに存在する場合は工程d)で使用される固定相は、C8に結合したシリカまたはC18に結合したシリカである。
【0089】
以下の例に示されるように、本発明の方法により、非常に純粋なリラグルチドの調製が可能となり、99.0%を超える純度を常に達成することができる。それでも、微量のいくつかの欠失生成物(deletion product)が検出され得た。これらは、特に、リラグルチドペプチド主鎖の一次配列(配列番号4)から4個までのアミノ酸を欠いているという点でリラグルチドの分子構造と異なり、場合により、2~5個のアミノ酸側鎖において、または配列番号4のLys20に対応するLys部分の(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))置換基においてさらなる変更を有する、27~30個の連続するアミノ酸からなる、微量のペプチドである。言い換えれば、リラグルチドの欠失体は、長さが27から30個のアミノ酸部分のペプチドと定義され、配列番号4の全長に対して、計算して、配列番号4との少なくとも80%の相同性を共有し、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に、修飾を含む。
【0090】
当業者は、このようなリラグルチドの欠失体は、場合によってであり必然的にではないが、Nおよび/またはC末端のアミノ酸部分でトランケートされていることを直ちに理解するであろう。これに追加してまたは代替して、末端ではないアミノ酸も欠損している。上述のように、配列相同性は、本出願の出願日のバージョンの国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBLAST(ベーシックローカルアラインメント検索ツール)によって決定される配列相同性として理解される。これは、各アミノ酸部分が比較される配列のカウンターパートに整列させられ、中間に欠損しているアミノ酸部分を残しておき、配列番号4の全長に対する相同性の百分率が算出されることを意味する。
【0091】
行われた実験では、RP-UHPLCによって220nmで測定した相対的ピーク面積として決定したペプチドの夾雑物が、0.3%(w/w)を超える相対的存在量で検出されなかった(図2の例示を参照のこと)。これは、本発明の態様および好ましい実施形態も反映する。相対的ピーク面積は、UV検出を用いる分析RP-HPLCによって220nmで得られるクロマトグラムで実測されたすべてのピークの面積の合計で割った、所与のピーク面積の面積%として決定される。これは、ペプチドの夾雑物の検出に適する任意の生成物特異的RP-HPLCプロトコルを使用して行うことができる。分析方法の適性は、日常的に、LC-MSによって決定した主要なピーク純度について評価される。当業者は、それらの類似構造に起因して、すべてのペプチド構成成分が同一または少なくとも同等の応答因子を有し、その結果、RP-HPLCによって220nmで測定した相対的ピーク面積が、すべてのペプチド構成成分の合計質量に対する、重量パーセントで表された所与のペプチドの、%(w/w)で示される相対的存在量に十分に相関することを直ちに理解するであろう。
【0092】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、任意の単一のリラグルチド誘導体、リラグルチドのトランケーション変異体、リラグルチドのトランケーション変異体の誘導体、リラグルチドの欠失体、またはリラグルチドの欠失体の誘導体を、0.5%を超えて含有しない組成物LCに関する。
【0093】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、任意の単一のリラグルチドの欠失体を0.3%を超えて含有せず、リラグルチドの欠失体が、27から30個のアミノ酸長のペプチドであり、配列番号4の全長に対して、配列番号4と少なくとも80%の相同性を共有し、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む組成物LCに関する。
【0094】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、任意の単一のリラグルチドの欠失体を検出可能なレベルで含有するが0.3%を超えて含有せず、リラグルチドの欠失体が、27から30個のアミノ酸長のペプチドであり、配列番号4の全長に対して、配列番号4と少なくとも80%の相同性を共有し、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む組成物LCに関する。
【0095】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準にして、98.8%(w/w)より高い純度で含有し、配列番号4の全配列に対して配列番号4と少なくとも80%の相同性を有する27から30個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列長の1つまたはそれ以上のポリペプチドを含有せず、場合により、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準にして、0.3%(w/w)を超える濃度で配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む組成物LCを指す。
【0096】
組成物LCは、好ましくは、微量の(例えば、0.001ppm(w/w)もしくはそれより多い、0.01ppm(w/w)もしくはそれより多い、または0.1ppm(w/w)もしくはそれより多い、または1ppm(w/w)もしくはそれより多い)、配列番号4の全長に対して、配列番号4と少なくとも80%の相同性を有する27から30個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列長のこのようなポリペプチドを含み、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む。
【0097】
非常に好ましくは、組成物LCは、0.001ppmから0.3%(w/w)の間の、より一層好ましくは0.01ppmから0.2%(w/w)の間の、より一層好ましくは0.1ppmから0.1%(w/w)の間の、より一層好ましくは1ppmから0.05%(w/w)の間の、特に1ppmから0.01%(w/w)の間の、配列番号4の全長に対して、配列番号4と少なくとも80%の配列相同性、特に少なくとも90%の配列相同性を有する27から30個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列長のこのようなポリペプチドを含み、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む。
【0098】
好ましくは、組成物LCは、リラグルチドを、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準にして、99.1%(w/w)より高い、99.2%(w/w)より高い、99.3%(w/w)より高い、99.4%(w/w)より高い、99.5%(w/w)より高い、99.6%(w/w)より高い、99.7%(w/w)より高い、99.8%(w/w)または99.9%(w/w)より高い純度で含有する。
【0099】
好ましい実施形態では、組成物LCは、配列番号4の全長に対して、配列番号4と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%の配列相同性を有する27から30個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列長の1つまたはそれ以上のポリペプチドを含有せず、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む。
【0100】
より好ましい実施形態では、組成物LCは、配列番号4の全長に対して、配列番号4に対応するそれぞれのアミノ酸配列または配列画分を有する27から30個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列長のポリペプチドを含有せず、場合により、配列番号4のLys20と相同なリシン部分に修飾を含む。
【0101】
好ましい実施形態によれば、組成物LCは、上述のリラグルチドの欠失体を、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準にして、0.25%(w/w)、0.20%(w/w)、0.15%(w/w)、0.1%(w/w)、0.05%(w/w)、または0.01%(w/w)を超える総濃度で含有しない。
【0102】
より好ましくは、組成物LCは、リラグルチドの欠失体の特定の不純物を、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準にして、それぞれ0.1%(w/w)、0.05%(w/w)、または0.01%(w/w)を超える濃度で含有しない。
【0103】
特に好ましくは、組成物LCは、1種またはそれ以上のリラグルチドの欠失体を、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準にして、0.001ppmから0.3%(w/w)、より好ましくは0.01ppmから0.1%(w/w)の間、特に0.01ppmから0.01%(w/w)の間の総濃度で含有する。
【0104】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、i)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が単一の酸素原子の取り込みにより酸化されている任意のリラグルチド誘導体、および/またはii)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が2個の酸素原子の取り込みによって酸化されている任意のリラグルチド誘導体、および/またはiii)25位のTrpの代わりにキヌレニンを含む任意のリラグルチド誘導体、および/またはiv)Gly31を欠くリラグルチドの欠失体のそれぞれを、0.5%、好ましくは0.3%、より好ましくは0.2%、最も好ましくは0.1%を超えて含有しない組成物LCに関する。
【0105】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、i)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が単一の酸素原子の取り込みにより酸化されている任意のリラグルチド誘導体、および/またはii)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が2個の酸素原子の取り込みによって酸化されている任意のリラグルチド誘導体、および/またはiii)25位のTrpの代わりにキヌレニンを含むリラグルチド誘導体、および/またはiv)Gly31を欠くリラグルチドの欠失体のそれぞれを検出可能なレベルで含有するが、0.5%を超えて、好ましくは0.3%を超えて、より好ましくは0.2%を超えて、最も好ましくは0.1%を超えて含有しない組成物LCに関する。
【0106】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、i)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が単一の酸素原子の取り込みにより酸化されている任意のリラグルチド誘導体、およびii)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が2個の酸素原子の取り込みによって酸化されている任意のリラグルチド誘導体、およびiii)25位のTrpの代わりにキヌレニンを含むリラグルチド誘導体、およびiv)Gly31を欠くリラグルチドの欠失体のそれぞれを、0.5%、好ましくは0.3%、より好ましくは0.2%、最も好ましくは0.1%を超えて含有しない組成物LCに関する。
【0107】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、リラグルチドを、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、i)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が単一の酸素原子の取り込みにより酸化されている任意のリラグルチド誘導体、およびii)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が2個の酸素原子の取り込みによって酸化されている任意のリラグルチド誘導体、およびiii)25位のTrpの代わりにキヌレニンを含むリラグルチド誘導体のそれぞれを検出可能なレベルで含有するが、0.5%を超えて、好ましくは0.3%を超えて、より好ましくは0.2%を超えて、最も好ましくは0.1%を超えて含有しない組成物LCに関する。
【0108】
好ましくは、上記百分率は、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定される。あるいは、上記百分率は、すべてのペプチド構成成分の合計質量を基準とする。
【0109】
好ましい実施形態によれば、組成物LCは、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含み、リラグルチドを、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、98.8%より高い、好ましくは99%より高い純度で含有し、UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、i)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が単一の酸素原子の取り込みにより酸化されている任意のリラグルチド誘導体、および/またはii)25位のTrpの側鎖におけるインドール部分が2個の酸素原子の取り込みによって酸化されている任意のリラグルチド誘導体、および/またはiii)25位のTrpの代わりにキヌレニンを含むリラグルチド誘導体、および/またはiv)Gly31を欠くリラグルチドの欠失体のそれぞれを検出可能なレベルで含有するが、0.5%を超えて、好ましくは0.3%を超えて、より好ましくは0.2%を超えて、最も好ましくは0.1%を超えて含有しない。
【0110】
本発明のさらなる態様は、本発明の任意の実施形態による方法から得ることができるリラグルチドを含む組成物LCであって、a)UV検出を用いる分析RP-HPLCにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として、かつb)UV検出を用いる分析サイズ排除クロマトグラフィーにおいて220nmで実測した相対的ピーク面積として決定して、99%より高い、好ましくは99.5%より高い純度でリラグルチドを含有する組成物LCに関する。
【0111】
好ましくは、組成物LCにおいて、リラグルチドは本発明による方法から得られる。
【0112】
行われた実験および達成された結果を含む以下の図および実施例は、例示の目的のみのために提供され、特許請求の範囲の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】選択されたグルカゴン様ペプチドの配列アラインメントを示す図である。GLP-1の配列と同一性を共有する部分を太字で記載している。
図2】実施例2の二次元のリラグルチド精製を示すグラフである。出発材料として使用される粗製のリラグルチド調製物(粗製、1と表示される)の、ならびに第1の次元の精製(1D、プール(NHPO、pH7.5、2と表示される)および第2の次元の精製(2D、プールTFA、3と表示される)後に得られたプールされた画分の分析RP-HPLCのトレースのオーバーレイが示されている。矢印は、第1の次元では除去されなかったが、第2の次元では除去された不要な構成成分を強調している。
図3】限外濾過の間の時間に対する被保持物の導電性のプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0114】
実施例1:精製条件の決定
適切な精製条件を特定するために、小規模の実験を行った。表2の2列目に示した7種の移動相の緩衝剤を、表2の1行目の3~6列に示した4種の異なる固定相について、それぞれ試験した。各移動相の緩衝剤を使用して、前記緩衝剤の水溶液中3%(v/v)のアセトニトリルからなる緩衝液A、および前記緩衝剤の水溶液中67または80%(v/v)のアセトニトリルからなる緩衝液Bを調製した。水溶液中の緩衝剤の濃度は、移動相の緩衝剤の性質に応じて、20から400mMの間であった。
【0115】
表2のそれぞれの行は、4つの異なる1次元のRP-HPLCの実行、すなわち、試験した4つの固定相のそれぞれに対する1回の実行を表す。前記実行のそれぞれに対して、2列目のそれぞれの行で示した移動相の緩衝剤を用いて調製した緩衝液AおよびBを使用した。以下の一般的プロトコルを適用した:Fmoc SPPSによって生成した粗製のリラグルチドペプチド(60%以上の純度)を緩衝液Aに溶解し、18mgを、C8またはC18に結合したシリカからなる4つの異なる固定相に、並行実験でそれぞれ適用した(カラム寸法:250×4.6mm)。一般的に、プロトコルは、緩衝液A中で15分間カラムを平衡化させ、試料をローディングし、緩衝液Aのみで1分間、その後、20~100%の緩衝液Bの勾配で溶出することを含んだ。流量は0.63ml/分であった。0.37mlの画分を回収し、逆相UHPLCで分析した。以下の表2は、相対的ピーク面積に関して、各実験の最も純度の高い画分で決定した純度を示す。前記相対的ピーク面積は、リラグルチドのピーク面積を分析UHPLCで実測されたすべてのピーク面積の合計で割ることによって算出し、すなわち、リラグルチドのピークの面積を総ピーク面積のパーセントで表現した。
【0116】
【表2】
【0117】
結論:
1.種々のC8およびC18固定相は同様の結果を示す。固定相のそれぞれについて、以下の観察結果があてはまった:
2.中性からやや塩基性(7.0≦pH<8.0)の条件下で、リン酸アンモニウム緩衝液は、試験した他の緩衝液より驚くほど優れている(1~4行の3~6列を参照のこと)。
3.酸性条件下(pH<3)で、TFA緩衝液は、試験した他の緩衝液より驚くほど優れている(5~7行の3~6列を参照のこと)。
【0118】
実施例2:2つの次元のRP-HPLC精製
精製は、第1の次元のpH7.5でのクロマトグラフィー精製と、その後の、第2の次元の酸性条件下でのクロマトグラフィー精製を含んだ。
【0119】
C8-結合したシリカを充填した5cmのMODcolカラム(Grace)(樹脂層高およそ32cm)を、220nmで検出する(Knauer smartline UV detector 2500)分取HPLCシステム(Knauer HPLC pump 1800)および自動画分コレクター(Buchi C-660)に使用した。精製プロトコルの両方の次元で、同じ固定相を使用した。Fmoc SPPSで生成した粗製のリラグルチド(60%より高い純度)を出発材料として使用した。試料を、90ml/分の流量でカラムにローディングした。各工程に対する詳細な溶出プロトコルを以下の表3および4に示す。第1の次元で使用した移動相の水性部分における緩衝剤の濃度は20mMであった。
【0120】
【表3】
【0121】
第1のRP-HPLC工程から得たプールした画分を、表4に示すようにさらに精製した。
【0122】
【表4】
【0123】
第2の次元の精製後にプールした画分の純度は、分析RP-UHPLCで評価して98.8%であり、両工程後の全体の収率は35%であった。粗製の出発材料と第1および第2のHPLCを通過した後にプールした画分の分析RP-UHPLCトレースの比較により、両次元の精製の驚くべき相補性が実証された。各次元の精製は異なる不要な構成成分を除去し、その結果、両工程の組合せにより優れた生成物の純度が得られた(図2を参照のこと)。
【0124】
実施例3:2つの次元のRP-HPLC精製
精製は、第1の次元のpH7.7でのクロマトグラフィー精製と、その後の、第2の次元の酸性条件下でのクロマトグラフィー精製を含んだ。
【0125】
C8-結合したシリカを充填した5cmのMODcolカラム(Grace)(樹脂層高およそ32cm)を、220nmで検出する(Knauer smartline UV detector 2500)分取HPLCシステム(Knauer HPLC pump 1800)および自動画分コレクター(Buchi C-660)に使用した。精製プロトコルの両方の次元で、同じ固定相を使用した。Fmoc SPPSで生成した粗製のリラグルチドを出発材料として使用した。試料を、43ml/分(第1の次元)または64ml/分(第2の次元)の流量でカラムにローディングした。各工程に対する詳細な溶出プロトコルを以下の表5および6に示す。
【0126】
【表5】
【0127】
第1のRP-HPLC工程から得たプールした主な画分を、表6に示すようにさらに精製した。
【0128】
【表6】
【0129】
プールした主な画分の純度は99.38%であり、分析RP-UHPLCで評価して、最も大きな非生成物のピークは0.18%であった。言い換えれば、調製物は、分析RP-UHPLCで評価して、0.3%を超える濃度の不要な構成成分を何も含有しなかった。
【0130】
驚くべきことに、精製工程の順序を交換する試み、すなわち、最初にTFA含有移動相を用いる実行を実施する試みは、カラムの目詰まりによって失敗した。
【0131】
実施例4:RP-HPLC精製、場合による第3の次元
C8-結合したシリカを充填した5cmのMODcolカラム(Grace)(樹脂層高およそ32cm)を、220nmで検出する(Knauer smartline UV detector 2500)分取HPLCシステム(Knauer HPLC pump 1800)および自動画分コレクター(Buchi C-660)に使用した。上記に示す2つの次元の手法によって精製したリラグルチドを出発材料として使用した(純度:99.2%)。カラムを緩衝液A中で平衡化し、試料を43ml/分の流量でカラムにローディングした。詳細な溶出プロトコルを以下の表7に示す。
【0132】
プールした主な画分の純度は、220nmのUV検出を用いる分析RP-UHPLCで評価して、99.35%であった。調製物は、0.3%を超える濃度のペプチドの不純物を何も含有しなかった。
【0133】
【表7】
【0134】
実施例5:RP-HPLC精製、場合による第3の次元
C8-結合したシリカを充填した5cmのMODcolカラム(Grace)(樹脂層高およそ32cm)を、220nmで検出する(Knauer smartline UV detector 2500)分取HPLCシステム(Knauer HPLC pump 1800)および自動画分コレクター(Buchi C-660)に使用した。上記に示す2つの次元の手法によって精製したリラグルチドを出発材料として使用した。カラムを緩衝液A中で平衡化し、試料を43ml/分の流量でカラムにローディングした。詳細な溶出プロトコルを以下の表8に示す。
【0135】
【表8】
【0136】
プールした主な画分の純度は、分析RP-UHPLCで評価して、99.36%であった。調製物は、0.3%を超える濃度のペプチドの不純物を何も含有しなかった。
【0137】
実施例6:限外濾過による脱塩
UHPLCで精製したリラグルチド(1.7l、およそ35g/lに濃縮)を、1kDaの分画分子量を有するポリエーテルスルホン(PES)膜を備えた標準機器を使用するタンジェンシャルフロー濾過に供した。2.2バールの膜間圧および1l/分の流量を適用し、33ml/分の透過液量を実測した。被保持物中の体積損失は、超純水を一定量添加することによって補った。
【0138】
図3に示すように、被保持物の導電性に反映される塩含有量は、経時的に減少した。濾液の体積が被保持物の体積の10倍に達した際に、被保持物は微量の残留塩しか含有しなかった。UHPLC分析によって検出したペプチドの純度は99.3であり、全体としての正味のペプチド収率は91%であった。
【0139】
実施例7:精製の間の不要な構成成分の除去
Fmoc-SPPSから得たリラグルチドを本発明の3つの次元の精製に供した。C8-結合したシリカを固定相として用い、移動相の水性構成成分は、第1の次元でリン酸緩衝液、第2の次元でTFAおよび第3の次元で酢酸緩衝液を含有した。各工程の後に得られたプールした分画をLC-MSで分析して、精製プロトコルの効率を評価した。特定の優勢な不要な構成成分に関する結果を以下の表9にまとめる。濃度は、リラグルチドの主なピークの面積パーセントで示す。
【0140】
Gly31を欠くリラグルチドトランケーション変異体および一酸素化Trp25を有するリラグルチドは、第1の次元の精製によって有効に低減し、第2の次元の精製により、二酸素化Trp25を有するリラグルチドのさらなる除去を達成し、第3の次元の精製により、Kyn25リラグルチドの制御を達成する。第3の次元の精製後に、プールした分画における分析クロマトグラフィーによって、0.5%を超えるレベルの他のペプチド
の不純物は検出できなかった。
【0141】
【表9】
図1
図2
図3
【配列表】
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