(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】カラーフィルタ用色材分散液、分散剤、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220119BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220119BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20220119BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220119BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220119BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20220119BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220119BHJP
C08F 297/02 20060101ALI20220119BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20220119BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20220119BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20220119BHJP
C08F 8/14 20060101ALI20220119BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 504
G03F7/004 505
G03F7/031
G03F7/027 502
C09B67/20 F
C09B67/20 L
B01F17/52
G02F1/1335 505
C08F297/02
C08F8/30
C08F8/12
C08F220/30
C08F8/14
C08F290/12
(21)【出願番号】P 2019502937
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2018006529
(87)【国際公開番号】W WO2018159458
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2017036666
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕史
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-083923(JP,A)
【文献】特開2016-191909(JP,A)
【文献】特開2017-032789(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046332(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/031
G03F 7/027
C09B 67/20
B01F 17/52
G02F 1/1335
C08F 297/02
C08F 8/30
C08F 8/12
C08F 220/30
C08F 8/14
C08F 290/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、下記一般式(B1)で表される構成単位及び下記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックと、を含有するブロック共重合体である、カラーフィルタ用色材分散液。
【化1】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【化2】
(一般式(B1)中、A
1は2価の連結基、R
11は酸素原子を含んでいても良い2、3若しくは4価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子、R
10及びR
12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。nは1、2又は3である。)
【化3】
(一般式(B2)中、A
2は2価の連結基、A
3及びA
4はそれぞれ独立に、2、3又は4価の連結基、R
13は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種を含んでいても良い2価の炭化水素基、R
14、R
16、R
18及びR
19はそれぞれ独立に、酸素原子を含んでいても良い2価の脂肪族炭化水素基、R
10、R
15及びR
17はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は0、1、2又は3、n
2は0又は1、n
3は0、1又は2を表し、n
1+n
2は1、2又は3であり、n
1+n
2+n
3は1、2又は3である。m
1は1、2又は3、m
2は0、1又は2を表し、m
1+m
2は1、2又は3である。)
【請求項2】
前記分散剤の酸価が、1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下である、請求項1に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項3】
前記分散剤が、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型ブロック共重合体を含有する、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項4】
前記分散剤の水酸基価が、120mgKOH/g以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項5】
前記色材が、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料、クマリン染料、シアニン染料、及びこれらの染料の造塩化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項6】
下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、下記一般式(B1)で表される構成単位及び下記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックと、を含有するブロック共重合体である、分散剤。
【化4】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【化5】
(一般式(B1)中、A
1は2価の連結基、R
11は酸素原子を含んでいても良い2、3若しくは4価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子、R
10及びR
12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。nは1、2又は3である。)
【化6】
(一般式(B2)中、A
2は2価の連結基、A
3及びA
4はそれぞれ独立に、2、3又は4価の連結基、R
13は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種を含んでいても良い2価の炭化水素基、R
14、R
16、R
18及びR
19はそれぞれ独立に、酸素原子を含んでいても良い2価の脂肪族炭化水素基、R
10、R
15及びR
17はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は0、1、2又は3、n
2は0又は1、n
3は0、1又は2を表し、n
1+n
2は1、2又は3であり、n
1+n
2+n
3は1、2又は3である。m
1は1、2又は3、m
2は0、1又は2を表し、m
1+m
2は1、2又は3である。)
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有する、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
前記光開始剤が、オキシムエステルを含む、請求項7に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項9】
前記光開始剤が、少なくとも2種のオキシムエステルを含み、更に酸化防止剤を含む、請求項7又は8に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項10】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記請求項7乃至9のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項11】
前記請求項10に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用色材分散液、分散剤、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
【0003】
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。その際の光源としては、従来の冷陰極管のほか、白色発光の有機発光素子や白色発光の無機発光素子が利用される場合がある。また、有機発光表示装置では、色調整などのためにカラーフィルタを用いる。
このような状況下、カラーフィルタにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。
【0004】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
【0005】
カラーフィルタにおける画素の形成方法としては、中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
顔料分散法を用いて形成された画素を有するカラーフィルタにおいては、高輝度化や高コントラスト化を実現するため、顔料の微細化が検討されている。顔料を微細化することにより、顔料粒子によるカラーフィルタを透過する光の散乱が低減されて、高輝度化や高コントラスト化が達成されるものと考えられている。
しかしながら、微細化された顔料粒子は凝集しやすいため、分散性や分散安定性が低下するという問題があった。
【0006】
微細化された顔料の分散性を向上する手法として、分散剤を用いることが有効であることが知られている。例えば特許文献1には、微粒子化された顔料の分散剤の初期の分散性及び経時の分散安定性を満たし、さらに、液晶表示素子の高コントラスト化、高輝度性、高現像性等の要求も満たすことを目的として、顔料分散剤として、アミノ基又はアンモニウム塩基を有する特定の繰り返し単位を含むAブロックと、カルボン酸エステルのアルコール由来部分に含酸素飽和ヘテロ環基又はアルケニル基を含む特定の繰り返し単位を含むBブロックとを有するブロック共重合体を用いた、カラーフィルタ用着色組成物が開示されている。
また、特許文献2には、色度特性及び耐熱性に優れる着色層を形成することができ、分散性及び保存安定性の良好なカラーフィルタ用着色組成物を提供することを目的として、顔料分散剤として、アミノ基を有する特定の繰り返し単位と、架橋性官能基を有する繰り返し単位とを含み、アミン価が80~250mgKOH/gである共重合体を用いた、カラーフィルタ用着色組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献3及び特許文献4には、色材分散安定性に優れ、現像残渣の発生が抑制されながら、現像密着性及び溶剤再溶解性に優れた感光性着色樹脂組成物を得ることを目的として、特定の分散剤を用いることが記載されている。特定の分散剤として、特許文献3には、アミド基を有し、且つ、アミノ基に相当する末端の窒素部位又は当該窒素部位が特定の化合物と塩を形成した構造を有する特定の構成単位を含み、更に、特定のアミン価と特定のガラス転移温度を有するブロック共重合体が記載され、特許文献4には、アミノ基に相当する末端の窒素部位又は当該窒素部位が特定の化合物と塩を形成した構造を有する特定の構成単位を含むAブロックと、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有し、更に、特定の酸価と特定のガラス転移温度を有するブロック共重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2012/063435号
【文献】特開2013-88695号公報
【文献】特開2016-122073号公報
【文献】特開2016-122169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年のカラーフィルタにおいては、更なる高輝度化及び各種耐性の向上が求められている。また、カラーフィルタは、一般的に、着色層上に透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)膜が形成される。しかし、従来のカラーフィルタにおいては、着色層上に隣接して形成されたITO膜にクラックが発生しやすく、ITO膜に生じたクラックにより、電流が流れずに表示不良が発生するといった問題もあった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能な色材分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能な当該色材分散液に用いられる分散剤を提供することを目的とする。また、本発明は、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能なカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタを提供することを目的とする。また、本発明は、当該カラーフィルタを用いることにより表示特性に優れた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカラーフィルタ用色材分散液は、色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、下記一般式(B1)で表される構成単位及び下記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックと、を含有するブロック共重合体である。
【0011】
【化1】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0012】
【化2】
(一般式(B1)中、A
1は2価の連結基、R
11は酸素原子を含んでいても良い2、3若しくは4価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子、R
10及びR
12はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。nは1、2又は3である。)
【0013】
【化3】
(一般式(B2)中、A
2は2価の連結基、A
3及びA
4はそれぞれ独立に、2、3又は4価の連結基、R
13は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種を含んでいても良い2価の炭化水素基、R
14、R
16、R
18及びR
19はそれぞれ独立に、酸素原子を含んでいても良い2価の脂肪族炭化水素基、R
10、R
15及びR
17はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は0、1、2又は3、n
2は0又は1、n
3は0、1又は2を表し、n
1+n
2は1、2又は3であり、n
1+n
2+n
3は1、2又は3である。m
1は1、2又は3、m
2は0、1又は2を表し、m
1+m
2は1、2又は3である。)
【0014】
本発明に係る分散剤は、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックと、を含有するブロック共重合体である。
【0015】
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有する。
【0016】
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0017】
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能な色材分散液を提供することができる。また、本発明によれば、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能な当該色材分散液に用いられる分散剤を提供することができる。また、本発明によれば、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能なカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタを提供することができる。また、本発明によれば、当該カラーフィルタを用いることにより表示特性に優れた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るカラーフィルタ用色材分散液、分散剤、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本明細書において、特に断りのない限り、色度座標x、yは、C光源を使用して測色したJIS Z8701:1999のXYZ表色系におけるものである。
【0021】
I.カラーフィルタ用色材分散液
本発明に係るカラーフィルタ用色材分散液は、色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、下記一般式(B1)で表される構成単位及び下記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックと、を含有するブロック共重合体である。
【0022】
【化4】
(一般式(I)中、R
1は水素原子又はメチル基、Aは2価の連結基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0023】
【化5】
(一般式(B1)中、A
1は2価の連結基、R
11は酸素原子を含んでいても良い2、3若しくは4価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子、R
10及びR
12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。nは1、2又は3である。)
【0024】
【化6】
(一般式(B2)中、A
2は2価の連結基、A
3及びA
4はそれぞれ独立に、2、3又は4価の連結基、R
13は酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種を含んでいても良い2価の炭化水素基、R
14、R
16、R
18及びR
19はそれぞれ独立に、酸素原子を含んでいても良い2価の脂肪族炭化水素基、R
10、R
15及びR
17はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は0、1、2又は3、n
2は0又は1、n
3は0、1又は2を表し、n
1+n
2は1、2又は3であり、n
1+n
2+n
3は1、2又は3である。m
1は1、2又は3、m
2は0、1又は2を表し、m
1+m
2は1、2又は3である。)
【0025】
本発明に係る色材分散液は、分散剤として、前記特定のAブロックと前記特定のBブロックとを含有するブロック共重合体を用いるため、当該色材分散液を用いて調製されるカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、高輝度な着色層を形成することができ、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制することができる。このような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
前記特定のブロック共重合体は、Aブロックが色材に吸着しやすいことにより、色材の分散性及び分散安定性を向上し、Bブロックが有する前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種において、(メタ)アクリロイル基が着色層を形成する際に他の架橋性基と架橋しやすいと考えられる。従来の分散剤では、色材付近の架橋密度が不足し、溶剤による膨潤が起こりやすい。そのため、着色層上に隣接してITO膜を成膜後、次工程でITO膜上に塗布する塗布液に含まれるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)等の溶剤により、ITO膜の下に位置する着色層が膨張することで、無機物であるITO膜にクラックが生じやすいと考えられる。それに対し、本発明に用いる分散剤は、Bブロックが有する前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種が有する(メタ)アクリロイル基が他の架橋性基と架橋し、特に、色材に吸着している分散剤の分子間で架橋しやすいことにより、着色層中の色材付近の架橋密度が高くなり、架橋密度が疎になる部分を少なくできることで、膜強度が向上すると考えられる。そのため、本発明においては、着色層が、色材付近においても架橋密度を確保でき、架橋密度が疎になる部分を少なくできることで、溶剤による膨潤が抑制されるため、着色層の耐溶剤性に優れ、着色層上に隣接して形成するITO膜に割れ(クラック)を生じさせずにカラーフィルタを形成しやすくなると推定される。また、着色層中の色材は、架橋密度の高い硬化膜で被覆された状態になっていることで、色材分子のベイク中の熱運動が低下し、色材の劣化が抑制されることから、着色層の輝度の低下が抑制されるため、高輝度な着色層を形成できると推定される。
また、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種が側鎖に有する(メタ)アクリロイル基は、オキセタニル基等の他の架橋性基に比べ、ラジカル重合開始剤と組み合わせた場合での光重合性に優れるため、着色層を形成する際に、露光によって十分に反応して架橋密度を向上させることができ、ポストベーク時には、架橋密度が高いことによって、輝度低下を抑制する効果が得られ、形成される着色層の輝度がより向上すると考えられる。また、オキセタニル基等の他の架橋性基に比べ、(メタ)アクリロイル基は、酸又は塩基性下での保存安定性に優れるため、樹脂の酸性基や分散剤の塩基性基と共存下での安定性に優れることから、粘度安定性もより向上すると考えられる。
また、カラーフィルタの製造工程において、色材が昇華したり、析出して着色層に付着し、異物欠陥の原因となる場合がある。カラーフィルタの着色層から色材が昇華すると、当該着色層の色調が変化するばかりか、他の着色層等に付着して他の着色層の色調をも変化させ輝度が低下したり、加熱装置内の汚染が発生するという問題がある。それに対し、本発明は、分散剤として前記特定のブロック共重合体を用いることにより、着色中の色材が架橋密度の高い硬化膜で被覆された状態になっていることで、色材の昇華及び析出を抑制することができる。
【0026】
本発明に係る色材分散液は、少なくとも色材と、分散剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明に係る色材分散液の各成分について、本発明の分散剤から順に詳細に説明する。
【0027】
<分散剤>
本発明においては、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックと、を含有するブロック共重合体が用いられる。
当該ブロック共重合体は、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成(以下、塩型ブロック共重合体、ということがある)していてもよい。
まず、ブロック共重合体から説明する。
【0028】
{Aブロック}
(一般式(I)で表される構成単位)
Aブロックに含まれる前記一般式(I)で表される構成単位は、塩基性を有し、色材に対する吸着部位として機能する。
一般式(I)において、Aは、2価の連結基である。2価の連結基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、炭素原子数1~10のエーテル基(-R’-OR”-:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるAは、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0029】
R2及びR3における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数は、1~18が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素原子数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、上記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0030】
R2とR3が互いに結合して環構造を形成しているとは、R2とR3が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。R2及びR3が形成する環構造にヘテロ原子が含まれていても良い。環構造は特に限定されないが、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、中でも、R2とR3が各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、又は、R2とR3が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましい。
【0032】
上記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
【0033】
一般式(I)で表される構成単位を含むAブロック中、一般式(I)で表される構成単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性、及び分散安定性を向上する点から、3~100個含むことが好ましく、3~50個含むことがより好ましく、更に3~30個含むことがより好ましい。
【0034】
Aブロックは本発明の目的を達成する範囲で、一般式(I)で表される構成単位以外の構成単位を有するものであってもよく、一般式(I)で表される構成単位と共重合可能な構成単位であれば含有することができる。例えば、Aブロックが含有してもよい一般式(I)で表される構成単位以外の構成単位としては、後述するBブロックにおいて挙げられた“その他の構成単位”を用いることができ、具体的には例えば、後述する一般式(II)で表される構成単位等が挙げられる。
塩形成前のブロック共重合体におけるAブロック中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、Aブロックの全構成単位の合計質量に対して、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。一般式(I)で表される構成単位の割合が高いほど、色材への吸着力が向上し、ブロック共重合体の分散性、及び分散安定性が良好となるからである。なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するAブロックを合成する際の仕込み質量から算出される。
【0035】
また、塩形成前のブロック共重合体中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、分散性、及び分散安定性が良好となる点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。なお、上記ブロック共重合体における各構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
なお、一般式(I)で表される構成単位は、色材との親和性を有すればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0036】
{Bブロック}
Bブロックは、前記一般式(I)で表される構成単位を含まず、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むブロックであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の構成単位を含んでいてもよいブロックである。Bブロックとしては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な、不飽和二重結合を有するモノマーの中から、親溶剤性を有するように溶剤に応じて適宜選択して構成されたブロックを用いることが、分散性及び分散安定性の点から好ましい。目安として、組み合わせて用いられる溶剤に対して、共重合体の23℃における溶解度が20(g/100g溶剤)以上となるように、Bブロックを導入することが好ましい。
【0037】
(一般式(B1)で表される構成単位及び一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種)
Bブロックは、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含む。
前記一般式(B1)のA1、並びに前記一般式(B2)のA2、A3及びA4における2価の連結基、A3及びA4における3価又は4価の連結基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族基、-CONH-基、-COO-基、及びこれらの組み合わせを表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)が含まれていてもよく、置換基を有していてもよいものである。前記4価の連結基としては、炭素原子であっても良い。
A1、A2、A3及びA4における脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和のいずれであってもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、N等のヘテロ原子が含まれていてもよい。例えば、炭素鎖中に、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよい。また、前記置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
A1、A2、A3及びA4における芳香族基は、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基が挙げられ、中でも、ベンゼン環を含む基が好ましい。置換基としては前記と同様のものが挙げられる。
A1、A2、A3及びA4における脂肪族炭化水素基と芳香族基の組み合わせとしては、前記脂肪族炭化水素基と前記芳香族基とが直接結合した構造や、前記脂肪族炭化水素基と前記芳香族基とが前記エーテル基等のヘテロ原子を含む連結基で連結した構造が挙げられる。
前記一般式(B1)のA1、及び前記一般式(B2)のA2における2価の連結基としては、中でも、-COO-基と炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基が好ましく、-COO-基と炭素原子数1~10のアルキレン基との組み合わせである2価の連結基がより好ましい。前記一般式(B2)のA3及びA4における2価の連結基としては、中でも、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましい。前記一般式(B1)のA1、並びに前記一般式(B2)のA2、A3及びA4におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。また、当該アルキレン基は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、N等のヘテロ原子が含まれていてもよい。
前記一般式(B2)のA3及びA4における3価の連結基としては、中でも、炭素原子数1~10の脂肪族飽和炭化水素から水素原子3個を除いた残りの原子団が好ましく、炭素原子数1~5の脂肪族飽和炭化水素から水素原子3個を除いた残りの原子団がより好ましい。これらの脂肪族飽和炭化水素基は置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、N等のヘテロ原子が含まれていてもよい。
前記一般式(B2)のA3及びA4における4価の連結基としては、中でも、炭素原子数1~10の脂肪族飽和炭化水素から水素原子4個を除いた残りの原子団又は炭素原子が好ましく、炭素原子数1~5の脂肪族飽和炭化水素から水素原子4個を除いた残りの原子団又は炭素原子がより好ましい。これらの脂肪族飽和炭化水素基は置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、N等のヘテロ原子が含まれていてもよい。
【0038】
前記一般式(B2)のR13における酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、例えば、酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも一種を含んでいても良い直鎖、分岐又は環状のアルキレン基及びアルケニレン基、アリーレン基、並びにこれらの組み合わせが挙げられ、炭素鎖中に、-CONH-基、-COO-基、エーテル基等が含まれていても良い。
【0039】
前記一般式(B1)のR11、並びに前記一般式(B2)のR14、R16、R18及びR19における酸素原子を含んでいても良い2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられ、炭素鎖中に、エーテル基等が含まれていてもよい。中でも、酸素原子を含んでいても良い炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましい。
なお、前記一般式(B2)中にR14、R16、R18又はR19が複数ある場合においては、複数のR14、複数のR16、複数のR18及び複数のR19は、各々同一でも異なっていてもよい。
また、前記一般式(B1)のR11における酸素原子を含んでいても良い3価又は4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状の脂肪族飽和炭化水素又は脂肪族不飽和炭化水素から水素原子3個又は4個を除いた残りの脂肪族炭化水素基又は炭素原子が挙げられ、炭素鎖中に、エーテル基等が含まれていてもよい。中でも、酸素原子を含んでいても良い炭素原子数1~10の直鎖、分岐又は環状の脂肪族飽和炭化水素から水素原子3個又は4個を除いた残りの脂肪族飽和炭化水素基又は炭素原子が好ましい。
【0040】
前記一般式(B1)のR10及びR12、並びに前記一般式(B2)のR10、R15及びR17としては、中でも、反応性が高く、膜強度が向上し、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性を向上する点から、水素原子が好ましい。
なお、前記一般式(B1)中にR12が複数ある場合、及び前記一般式(B2)中にR15又はR17が複数ある場合においては、複数のR12、複数のR15及び複数のR17は、各々同一でも異なっていてもよい。
【0041】
前記一般式(B2)においては、分散剤の水酸基価が適切になりやすい点、溶剤再溶解性及び現像密着性の点、並びに輝度及びITO膜のクラック耐性の点から、n1+n2>n3であることが好ましく、また、m1>m2であることが好ましい。
【0042】
前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種が側鎖に有する(メタ)アクリロイル基の個数は、特に限定はされないが、ITO膜のクラック耐性を向上する点から、2個以上であることが好ましく、一方で、分散安定性の点から、6個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましいが、1個又は2個であってもよい。
【0043】
前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種は、例えば、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と、水酸基とを有するモノマー(以下、「水酸基含有モノマー」という)を用いて、水酸基を有する構成単位を導入し、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(以下、「イソシアネート基含有(メタ)アクリレート」という)のイソシアネート基を、前記構成単位中の水酸基に反応させることにより導入することができる。
また、前記一般式(B2)で表される構成単位は、例えば、水酸基含有モノマーを用いて水酸基を有する構成単位を導入し、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基を、前記構成単位中の水酸基に反応させ、ジイソシアネート化合物のもう一方のイソシアネート基と、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物の水酸基とを反応させることにより導入することもできる。
なお、ここでの水酸基は、脂肪族炭化水素に結合したアルコール性水酸基をいう。
水酸基とイソシアネート基は反応性が高く、反応温度を70~90℃程度と低くすることができ、アミン系触媒を用いる必要がないため、上記の方法で前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を導入することにより、反応時の加熱や触媒による黄変を抑制することができるため、着色層の黄変も抑制され、着色層の輝度を向上することができる。また、上記の導入方法では、水酸基価を容易に調整することができるため、水酸基価を適切な値とすることにより、溶剤再溶解性等を向上することができる。
【0044】
前記水酸基含有モノマーとしては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と、少なくとも1つの水酸基とを有するモノマーであれば特に限定はされず、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エチル-α-ヒドロキシメチルアクリレートなどのアルキル-α-ヒドロキシアルキルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物等の水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体;N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN-(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-(又は3-)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-(又は3-又は4-)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル等の水酸基を有するビニルエーテル系単量体;2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、2-(又は3-)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2-(又は3-又は4-)ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテル等の水酸基を有するアリルエーテル系単量体;等を挙げることができ、中でも、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体が好ましく、現像性が向上する点から、1級水酸基を有することが2級水酸基を有するよりも好ましい。なお、1級水酸基とは、水酸基が結合する炭素原子が第1級炭素原子である水酸基をいい、2級水酸基とは、水酸基が結合する炭素原子が第2級炭素原子である水酸基をいう。また、現像密着性が向上する点から、中でも、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が、0℃以上となる水酸基含有モノマーを用いることが好ましく、更に10℃以上となる水酸基含有モノマーを用いることが好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアリールアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより更に好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが特に好ましい。
【0045】
前記一般式(B1)で表される構成単位を導入する際に用いられる前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1,1-ジメチルエチル(メタ)アクリレート、4-イソシアナートシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(2-イソシアネートエトキシ)エチル、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。前記誘導体としては、例えば、ブロック剤でマスキングしたイソシアネート基と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物が挙げられ、例えば、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、メタクリル酸2-(0-[1'-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。
これらの市販品としては例えば、カレンズAOI(登録商標)、カレンズMOI(登録商標)、AOI-VM(登録商標)、カレンズMOI-EG(登録商標)、カレンズBEI(登録商標)、カレンズMOI-BP(登録商標)、カレンズMOI-BM(登録商標)(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0046】
前記一般式(B2)で表される構成単位を導入する際に用いられる前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートと、ジイソシアネート化合物のモル比約1:1の反応生成物が挙げられる。
前記反応生成物における水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記水酸基含有モノマーとして使用可能な前記水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、及び、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。水酸基含有多官能(メタ)アクリレートは、少なくとも1つの水酸基と、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、特に限定はされないが、水酸基を1~4個有し、(メタ)アクリロイル基を2~5個有するものが好ましい。水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,5,5-トリメチル-3-イソシアナトメチルシクロヘキシルイソシアネート、m-又はp-キシリレンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、ピリジンジイルイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
また、前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートは、前記水酸基含有モノマーの水酸基1当量に対して、イソシアネート基が好ましくは0.1当量以上0.9当量以下、より好ましくは0.15当量以上0.8当量以下となるように用いることが、水酸基価を適切な値としやすく、現像密着性と溶剤再溶解性の点及び着色樹脂組成物の密着性の点から好ましい。
【0048】
また、前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートは、前記水酸基含有モノマーの水酸基1当量に対して、(メタ)アクリロイル基が好ましくは0.1当量以上3.0当量以下、より好ましくは0.15当量以上2.5当量以下となるように用いることが、輝度及びITO膜のクラック耐性の点から好ましい。
【0049】
また、前記一般式(B2)で表される構成単位が、前記水酸基含有モノマー由来の構成単位の水酸基に、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基を反応させ、ジイソシアネート化合物のもう一方のイソシアネート基に、更に水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて導入させた構成単位である場合、ここでの水酸基含有(メタ)アクリレートは、前記水酸基含有(メタ)アクリレートと、ジイソシアネート化合物のモル比約1:1の反応生成物で説明したものと同様のものを用いることができる。この場合、前記水酸基含有モノマー由来の構成単位の水酸基1当量に対して、ジイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基が好ましくは0.1当量以上0.9当量以下、より好ましくは0.15当量以上0.8当量以下となるようにジイソシアネート化合物を用いることが、水酸基価を適切な値としやすく、現像密着性と溶剤再溶解性との点、及び着色樹脂組成物の密着性の点から好ましい。
また、ジイソシアネート化合物のもう一方のイソシアネート基1当量に対して、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が好ましくは0.1当量以上0.9当量以下、より好ましくは0.15当量以上0.8当量以下となるように、水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0050】
前記ブロック共重合体中、一般式(B1)で表される構成単位及び一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の含有割合は、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましく、一方、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であってもよい。
一般式(B1)で表される構成単位及び一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の含有割合が、前記下限値以上であることより、着色層の輝度、及び着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制する効果(以下、単にITO膜のクラック耐性という)が向上し、前記上限値以下であることより、製版特性を向上することができる。
なお、一般式(B1)で表される構成単位及び一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種は、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0051】
また、塩形成前のブロック共重合体中、側鎖に含む(メタ)アクリロイル基当量が、100~6000の範囲であることが好ましく、特に、250~4500の範囲であることが好ましい。該(メタ)アクリロイル基当量が上記下限値以上であれば、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性をより向上し、上記上限値以下であれば、アルカリ現像性、色材分散性、製版特性が向上する。
ここで、(メタ)アクリロイル基当量とは、上記塩形成前のブロック共重合体における(メタ)アクリロイル基1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(1)で表される。
【0052】
数式(1) (メタ)アクリロイル基当量(g/mol)=W’(g)/M’(mol)
(数式(1)中、W’は、塩形成前のブロック共重合体の質量(g)を表し、M’は塩形成前のブロック共重合体W’(g)中に含まれる(メタ)アクリロイル基のモル数(mol)を表す。)
【0053】
上記(メタ)アクリロイル基当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、塩形成前のブロック共重合体1gあたりに含まれる(メタ)アクリロイル基の数を測定することにより算出してもよい。
【0054】
また、本発明に用いられるブロック共重合体の合成において、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、ブロック共重合体が有する構成単位を所望の含有割合とし、所望の性能を有する共重合体とすることができる。中でも、前記水酸基含有モノマーと、前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートとを用いて、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を導入する場合は、ブロック共重合体の合成において、水酸基含有モノマーの仕込み量が、モノマー全量に対して5質量%以上であることが、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性を向上する点から好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤再溶解性の点から、水酸基含有モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートの仕込み量は、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性を向上する点及び密着性の点から、前記水酸基含有モノマーの仕込み量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが好ましく、溶剤再溶解性、現像密着性、輝度、及びITO膜のクラック耐性の点から、120質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがより更に好ましい。
【0055】
(その他の構成単位)
Bブロックには、更に親溶剤性を向上するその他の構成単位が含まれていてもよい。
Bブロックを構成する前記その他の構成単位としては、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体を挙げることができ、中でも下記一般式(II)で表される構成単位が好ましい。
【0056】
【化7】
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R
4は、水素原子又はメチル基、R
5は、炭化水素基、-[CH(R
6)-CH(R
7)-O]
x-R
8又は-[(CH
2)
y-O]
z-R
8で示される1価の基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
8は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH
2CHO、又は-CH
2COOR
9で示される1価の基であり、R
9は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【0057】
一般式(II)において、A’は、直接結合又は2価の連結基である。直接結合とは、A’が原子を有しないこと、即ち、一般式(II)におけるC(炭素原子)と、R5とが、他の原子を介さずに結合していることを意味する。2価の連結基としては、一般式(I)におけるAと同様のものが挙げられる。一般式(II)のA’としては、中でも、有機溶剤への溶解性の点から、直接結合、又は、-CONH-基若しくは-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0058】
一般式(II)において、R5は、炭化水素基、-[CH(R6)-CH(R7)-O]x-R8又は-[(CH2)y-O]z-R8を示す。
R5における炭化水素基としては、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
上記炭素原子数1~18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、2-エトキシエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素原子数2~18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
アルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0059】
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素原子数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素原子数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
【0060】
上記R5において、xは1~18の整数、好ましくは1~4の整数、より好ましくは1~2の整数であり、yは1~5の整数、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1~18の整数、好ましくは1~4の整数、より好ましくは1~2の整数である。
【0061】
上記R8における炭化水素基は、上記R5で示したものと同様のものとすることができる。
R9は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。
また、上記一般式(II)で表される構成単位中のR5は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0062】
上記R5としては、中でも、後述する溶剤との相溶性に優れたものとなるように選定することが好ましく、具体的には、例えば上記溶剤が、カラーフィルタ用着色樹脂組成物の溶剤として一般的に使用されているグリコールエーテルアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
【0063】
さらに、上記R5は、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、酸性基、エポキシ基、イソシアネート基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、上記ブロック共重合体の合成後に、上記置換基を有する化合物と反応させて、上記置換基を付加させてもよい。
【0064】
(酸性基含有モノマー由来の構成単位)
Bブロックは、更に酸性基含有モノマー由来の構成単位を含むことが、Bブロックの親溶剤性を向上し、色材分散液の分散性及び分散安定性を向上する点から好ましい。
前記酸性基含有モノマーとしては、例えば、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と、酸性基とを含有するモノマーが挙げられる。
前記酸性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、ホウ酸基等が挙げられ、中でも、現像性の点からカルボキシ基が好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0065】
酸性基含有モノマー由来の構成単位を含有する場合、塩形成前のブロック共重合体中、酸性基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05~4.5質量%であることが好ましく、0.07~3.7質量%であることがより好ましい。
酸性基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果に優れ、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる。
なお、酸性基含有モノマー由来の構成単位は、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0066】
Bブロックを構成する構成単位の数は特に限定されないが、親溶剤性部位と親色材部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、10~300個であることが好ましく、10~100個であることがより好ましく、更に10~70個であることがより好ましい。
【0067】
ブロック共重合体におけるBブロック中、上記一般式(II)で表される構成単位の含有割合は、親溶剤性や色材分散性を向上する点から、Bブロックの全構成単位の合計質量に対して、30~95質量%であることが好ましく、40~90質量%であることがより好ましい。なお、上記構成単位の含有割合は、Bブロックを合成する際の仕込み質量から算出される。
【0068】
また、塩形成前のブロック共重合体中、上記一般式(II)で表される構成単位の含有割合は、色材分散性を向上する点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、40~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。なお、上記構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
【0069】
Bブロックは、親溶剤性部位として機能するように構成単位を適宜選択することが好ましく、上記一般式(II)で表される構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。Bブロックに含まれる2種以上の構成単位は、当該ブロック内ではランダムに配列していてもよい。
【0070】
本発明においては、塩形成前のブロック共重合体のBブロック中に、前記水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれることが、現像密着性を向上する点から好ましい。前記水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合には、通常基板として用いられるガラスや金属等と相互作用し易いため、現像密着性が向上すると考えられる。Bブロック中に、前記水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合には、更に現像速度も向上する。
【0071】
水酸基含有モノマー由来の構成単位を含有する場合、塩形成前のブロック共重合体中、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより更に好ましく、4質量%以上であることが特に好ましい。上記下限値以上であると現像密着性が好ましいものとすることができる。同様に、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。上記上限値以下であると他の有用なモノマーの導入比率を上げられる点から好ましいものとすることができる。なお、上記構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
【0072】
また、本発明においては、Bブロック中に、芳香族基含有モノマー由来の構成単位が含まれることが、溶剤再溶解性が向上する点から好ましい。芳香族基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合には、溶剤や他の成分との相溶性が向上し易いため、溶剤再溶解性が向上すると考えられる。
芳香族基含有モノマー由来の構成単位としては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と芳香族基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリレート類、スチレン等のスチレン類、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。
現像密着性が向上する点から、中でも、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が、0℃以上となる芳香族基含有モノマーを用いることが好ましく、更に10℃以上となる芳香族基含有モノマーを用いることが好ましい。
再溶解性が向上し易い点から、中でも、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましく、更に、ベンジル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0073】
芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含有する場合、塩形成前のブロック共重合体中、芳香族基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、溶剤再溶解性を向上する点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより更に好ましく、4質量%以上であることが特に好ましい。上記下限値以上であると溶剤再溶解性が好ましいものとすることができる。同様に、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。上記上限値以下であると他の有用なモノマーの導入比率を上げられる点から好ましいものとすることができる。
【0074】
また、中でもBブロックが、(i)水酸基含有モノマー由来の構成単位及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位、並びに、(ii)水酸基及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位の少なくとも1種を含むことが、現像密着性及び溶剤再溶解性を向上する点から好ましい。
【0075】
(i)水酸基含有モノマー由来の構成単位及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位をそれぞれ含む場合には、芳香族基含有モノマー由来の構成単位1質量部に対して、水酸基含有モノマー由来の構成単位を0.15質量部以上で含有することが好ましく、0.5質量部以上で含有することがさらに好ましい。上記下限値以上であると現像密着性に優れたものとすることができるからである。また、同様に芳香族基含有モノマーの構成単位1質量部に対して、水酸基含有モノマー由来の構成単位を15質量部以下で含有することが好ましく、7質量部以下で含有することがさらに好ましい。上記上限値以下であると溶剤再溶解性に優れたものとすることができるからである。中でも、単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上となる芳香族基含有モノマー由来の構成単位1質量部に対して、単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上となる水酸基含有モノマー由来の構成単位を上記範囲で含有することが特に好ましい。上記下限値以上で含有することで現像密着性をさらに優れたものとすることができ、上記上限値以下で含有することで溶剤再溶解性をさらに優れたものとすることができるからである。
【0076】
また、(ii)水酸基及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位における、水酸基及び芳香族基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸等が挙げられる。2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートは、単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であって、且つ、水酸基含有モノマー由来の構成単位から得られる効果と芳香族基含有モノマー由来の構成単位から得られる効果のいずれも得られる点から好ましく用いられる。すなわち、現像密着性、現像速度、溶剤再溶解性が向上する点で好ましいからである。
(ii)水酸基及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含む場合には、1つの構成単位により現像密着性、現像速度、溶剤再溶解性を向上することができるため、他の機能性モノマーの導入比率を上げることができるというメリットもある。
【0077】
また、現像密着性が向上する点から、モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であるモノマーを、合計でBブロック中に75質量%以上とすることが好ましく、更に85質量%以上とすることが好ましい。
【0078】
前記ブロック共重合体において、前記Aブロックの構成単位のユニット数mと、前記Bブロックの構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.05~1.5の範囲内であることが好ましく、0.1~1.0の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0079】
また、塩形成前のブロック共重合体のアミン価は、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性の点から、下限としては、40mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましく、60mgKOH/g以上であることがさらにより好ましい。また、上限としては、140mgKOH/g以下であることが好ましく、130mgKOH/g以下であることがより好ましく、120mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。上記下限値以上であれば、分散安定性がより優れている。また、上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
なお、本発明において塩形成前のブロック共重合体のアミン価とは、塩形成前のブロック共重合体の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される値である。
【0080】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000~20000であることが好ましく、2000~15000であることがより好ましく、更に3000~12000であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は(Mw)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
なお、本発明においてブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求める。測定は、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。なお、ブロック共重合体の原料となるマクロモノマーや塩型ブロック共重合体、グラフト共重合体についても、上記条件で行う。
【0081】
本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
【0082】
上記ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。連鎖移動や失活が起こりにくく、分子量の揃った共重合体を製造することができ、分散性等を向上できるからである。リビング重合法としては、リビングラジカル重合法、グループトランスファー重合法等のリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法等を挙げることができる。これらの方法によりモノマーを順次重合することによって共重合体を製造することができる。例えば、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックを構成する構成単位を重合することにより、ブロック共重合体を製造することができる。また上記の製造方法においてAブロックとBブロックの重合の順番を逆にすることもできる。また、AブロックとBブロックを別々に製造し、その後、AブロックとBブロックをカップリングすることもできる。
【0083】
{有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種}
本発明において、前記ブロック共重合体としては、前記一般式(I)で表される構成単位が、末端の窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型ブロック共重合体が、色材分散性を向上する点から好ましい。
前記有機酸化合物としては、中でも、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(3)で表される化合物が好ましく、前記ハロゲン化炭化水素としては、中でも、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。すなわち、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種としては、下記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物を好ましく用いることができる。
【0084】
【化8】
(一般式(1)において、R
aは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
eを表し、R
eは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R
b、R
b’、及びR
b”はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
fを表し、R
fは、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R
c及びR
dはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
eを表し、R
eは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R
c及びR
dの少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【0085】
(前記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物)
前記一般式(1)~(3)において、Ra、Rb、Rb’、Rb”、Rc、Rd、Re、及びRfにおける炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、また、環状構造を含んでいても良く、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1~15の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1~8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。
また、Ra、Rc、Rd、及びReにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、炭素原子数が1~5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0086】
Rb、Rb’、Rb”、及びRfにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、酸性基又はそのエステル基、炭素原子数が1~5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
また、Rb、Rb’、Rb”、及びRfにおいて、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、或いはビニル基の置換基としては、酸性基又はそのエステル基、フェニル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
Rb、Rb’、Rb”、及びRfにおいて酸性基とは、水中でプロトンを放出し酸性を示す基のことをいう。酸性基の具体例としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ホスホノ基(-P(=O)(OH)2)、ホスフィニコ基(>P(=O)(OH))、ボロン酸基(-B(OH)2)、ボリン酸基(>BOH)等が挙げられ、カルボキシラト基(-COO-)等のように水素原子が解離したアニオンであってもよく、更に、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンと塩形成した酸性塩であってもよい。
また、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(-COOR)、スルホン酸エステル(-SO3R)、リン酸エステル(-P(=O)(OR)2)、(>P(=O)(OR))、ボロン酸エステル(-B(OR)2)、ボリン酸エステル(>BOR)等が挙げられる。中でも、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(-COOR)であることが分散性及び分散安定性の点から好ましい。なお、Rは炭化水素基であり、特に限定されないが、分散性及び分散安定性の点から、中でも炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0087】
前記一般式(2)の化合物は、分散性、分散安定性、アルカリ現像性、及び現像残渣抑制の点から、カルボキシ基、ボロン酸基、ボリン酸基、これらのアニオン、並びにこれらのアルカリ金属塩、及びこれらのエステルより選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、中でも、カルボキシ基、カルボキシラト基、カルボン酸塩基、及びカルボン酸エステルより選択される官能基を有することがより好ましい。
前記一般式(2)の化合物が酸性基及びそのエステル基(以下、酸性基等という)を有する場合、当該化合物が有する酸性基等側、及び、ハロゲン原子側炭化水素のいずれもが末端の窒素部位と塩形成し得るが、末端の窒素部位と酸性基等とが塩形成した場合に比べて、末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素とが安定して塩形成するものと推定される。そして、安定して存在する塩形成部位に色材が吸着することにより分散性及び分散安定性が向上するものと推定される。
【0088】
前記一般式(2)の化合物が前記酸性基等を有する場合、前記酸性基等を2個以上有していてもよい。前記酸性基等を2個以上有する場合、複数ある前記酸性基等は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記一般式(2)の化合物が有する前記酸性基等の数は1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0089】
前記一般式(1)においてRa、前記一般式(2)においてRb、Rb’、及びRb”の少なくとも1つ、並びに、前記一般式(3)においてRc及びRdの少なくとも1つが芳香族環を有する場合には、後述する色材の骨格との間の親和性が向上し、色材の分散性及び分散安定性が優れたものとなり、コントラストに優れた着色組成物を得ることができる点から好ましい。
【0090】
前記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の分子量は、色材分散性向上の点から、1000以下であることが好ましく、中でも50~800であることが好ましく、更に50~400であることが好ましく、より更に80~350であることが好ましく、100~330であることが最も好ましい。
【0091】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、モノメチル硫酸、モノエチル硫酸、モノn-プロピル硫酸等が挙げられる。なお、p-トルエンスルホン酸一水和物のような水和物を用いても良い。前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、n-ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ドデシルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、フェネチルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ベンジルヨーダイド、クロロベンゼン、α-クロロフェニル酢酸、α-ブロモフェニル酢酸、α-ヨードフェニル酢酸、4-クロロメチル安息香酸、4-ブロモメチル安息香酸、4-ヨードフェニル安息香酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、α-ブロモフェニル酢酸メチル、3-(ブロモメチル)フェニルボロン酸、等が挙げられる。前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。
分散安定性が特に優れる点から、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジブチルリン酸、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ビニルスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上が好ましく、中でも、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、及びp-トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
また、前記特定のブロック共重合体との組み合わせにより現像残渣の抑制効果が向上する点から、酸性基及びそのエステル基を有する一般式(2)で表される化合物も好適に用いられ、中でも、α-クロロフェニル酢酸、α-ブロモフェニル酢酸、α-ヨードフェニル酢酸、4-クロロメチル安息香酸、4-ブロモメチル安息香酸、及び4-ヨードフェニル安息香酸よりなる群から選択される1種以上も好適に用いられる。
【0092】
塩型ブロック共重合体において、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成しているものであることから、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対して、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計を0.01モル以上とすることが好ましく、0.1モル以上とすることがより好ましく、0.2モル以上とすることがさらに好ましく、0.3モル以上とすることが特に好ましい。上記下限値以上であると、塩形成による色材分散性向上の効果が得られやすい。同様に、1モル以下とすることが好ましく、0.8モル以下とすることがより好ましく、0.7モル以下とすることがさらに好ましく、0.6モル以下とすることが特に好ましい。上記上限値以下であると現像密着性や溶剤再溶解性に優れたものとすることができる。
なお、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、その合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0093】
塩型ブロック共重合体の調製方法としては、塩形成前のブロック共重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、ブロック共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0094】
得られた塩型ブロック共重合体のアミン価は、塩形成前のブロック共重合体に比べて塩を形成した分だけ値が小さくなる。しかし、塩形成部位は、アミノ基に相当する末端の窒素部位と同様、又はむしろ強化された色材吸着部位となるため、塩形成によって色材分散性や色材分散安定性が向上する傾向がある。また、塩形成部位は、アミノ基と同様に、多すぎると溶剤再溶解性に悪影響を与える。そのため、本発明においては、塩形成前のブロック共重合体のアミン価を、色材分散安定性、及び溶剤再溶解性を良好にするための指標とすることができる。得られた塩型ブロック共重合体のアミン価としては、0~130mgKOH/gであることが好ましく、0~120mgKOH/gであることが更に好ましい。
上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
【0095】
なお、塩型ブロック共重合体のうち、前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体のアミン価は、JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される値とすることができる。前記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該測定方法によっても塩形成の状態に変化をきたさず、アミン価を測定可能だからである。
一方で、塩型ブロック共重合体のうち、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体のアミン価は、前述した塩形成前のブロック共重合体のアミン価から、下記のように算出することにより求められる。前記一般式(1)又は(3)で表される化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と酸性基が塩を形成するため、このような塩型ブロック共重合体のアミン価を前記JIS K 7237:1995に記載の方法により測定すると、塩形成の状態に変化をきたし、正確な値を測定することができないからである。
まず、前述の方法により、塩形成前のブロック共重合体のアミン価を求める。次に、塩型ブロック共重合体の13C-NMRスペクトルを核磁気共鳴装置を用いて測定し、得られたスペクトルデータのうち、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、塩型ブロック共重合体の、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対する、前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の反応率(塩形成されている末端の窒素部位比率)を測定する。前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物が塩形成した一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位は、アミン価が0になったとして、(JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体のアミン価)×(13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100)により算出される、塩形成により消費したアミン価を、塩形成前のブロック共重合体のアミン価から差し引くことにより求められる。
塩型ブロック共重合体のアミン価={JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体のアミン価}-{JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体のアミン価}×{13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100}
【0096】
本発明に用いられる分散剤の酸価は、特に限定はされないが、中でも、現像密着性及び溶剤再溶解性が良好になる点から、18mgKOH/g以下であることが好ましく、12mgKOH/g以下であることがより好ましい。一方で、本発明に用いられる分散剤の酸価は、溶剤再溶解性及び現像密着性をより向上する点、基板密着性及び分散安定性の点からは、0mgKOH/gであることが好ましい。酸価が少ないほど塩基性現像液の侵食を受けにくいために、現像密着性が良くなるものと考えられる。一方で、現像残渣の抑制効果の点からは、1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましい。
本発明に用いられる分散剤においては、塩形成前のブロック共重合体の酸価が、現像密着性及び溶剤再溶解性が良好になる点から、18mgKOH/g以下であることが好ましく、12mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、塩形成前のブロック共重合体の酸価は、溶剤再溶解性及び現像密着性をより向上する点、基板密着性及び分散安定性の点からは、0mgKOH/gであることが好ましい。一方で、現像残渣の抑制効果の点からは、1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0097】
前述のように塩形成前のブロック共重合体の酸価は、ブロック共重合体の固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070:1992に記載の方法により測定される値である。
また、塩型ブロック共重合体が、前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価も、JIS K 0070:1992に記載の方法により測定される値である。前記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該測定方法によっても塩形成の状態に変化をきたさず、測定可能だからである。
一方で、塩型ブロック共重合体が、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の場合、塩形成に用いられている酸性基は除いて酸価を算出することとする。塩形成に用いられている酸性基は、分散剤の酸価を増加させる酸性基としての機能を果たさないからである。そのため、本願では前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価は、下記式により得られる値で算出する。前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価を、前記JIS K 0070:1992に記載の方法により測定すると、塩形成の状態に変化をきたし、正確な値を測定することができないからである。
【0098】
塩型ブロック共重合体の酸価={塩形成に用いられた前記一般式(1)又は(3)で表される化合物の全酸価-塩形成により消費する酸価}+塩形成前ブロック共重合体の酸価
ここで、前記塩形成に用いられた前記一般式(1)又は(3)で表される化合物の全酸価は、前記JIS K 0070:1992に記載の方法により測定することができる。一方、塩形成により消費する酸価については、NMRによって得られる塩形成比率より算出する。
塩形成により消費する酸価は、具体的には例えば、塩型ブロック共重合体の13C-NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置を用いて測定し、得られたスペクトルデータのうち、末端の窒素部位において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、末端の窒素部位総数に対する塩形成されている末端の窒素部位数の比率を算出する。{JIS K 7237:1995に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体のアミン価}×{13C-NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100}により、消費したアミン価を算出し、この値が塩形成により消費した酸価と同値となる。
但し、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対して、前記一般式(1)で表される化合物を1モル以下で塩形成する場合、酸性基を1つ有する前記一般式(3)で表される化合物を1モル以下で塩形成する場合、又は、酸性基を2つ有する前記一般式(3)で表される化合物を0.5モル以下で塩形成する場合に、酸性基の全量が一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成していれば、塩形成後の塩型ブロック共重合体において、当該酸性基は酸価に影響を与えないことから、塩形成前のブロック共重合体と同じ酸価を有するものとすることができる。
一方、酸性基を2つ有する前記一般式(3)で表される化合物を上記よりも超えるモル数で添加する場合には、塩形成後にも分散剤中に塩形成していない酸性基が存在するため、前記式のように、塩形成していない酸性基の分の酸価を、塩形成前のブロック共重合体の酸価に加算して、分散剤の酸価を算出する。
【0099】
また、本発明において、分散剤の水酸基価は、120mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましく、60mgKOH/g以下であることがより更に好ましい。分散剤の水酸基価が高すぎると、溶剤再溶解性が低下する場合がある。一方、分散剤の水酸基価は、分散性及び分散安定性の点から、2mgKOH/g以上であることが好ましく、5mgKOH/g以上であることがより好ましい。
なお、本発明において水酸基価は固形分1gから得られるアセチル化物に結合している酢酸を中和するのに必要なKOHの質量(mg)を表し、JIS K 0070:1992に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。
【0100】
本発明に係る色材分散液において、分散剤としては、前記ブロック共重合体及び塩型ブロック共重合体の少なくとも1種を用い、その含有量は、用いる色材の種類、更に後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定される。
分散剤の含有量は、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3~45質量部、より好ましくは5~35質量部の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3~25質量部、より好ましくは5~20質量部の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0101】
<色材>
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料、染料の造塩化合物等を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0102】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、185、及びC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265、272;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0103】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0104】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明に係る色材分散液を後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物として遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0105】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与したり、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料が挙げられる。
染料の造塩化合物としては、染料がカウンターイオンと塩を形成した化合物をいい、例えば、塩基性染料と酸との造塩化合物、酸性染料と塩基との造塩化合物が挙げられ、溶剤に可溶性の染料を公知のレーキ化(造塩化)手法を用いて、溶剤に不溶化したレーキ顔料も包含する。
本発明においては、染料及び染料の造塩化合物から選ばれる少なくとも一種を含む色材と、前記本発明の分散剤とを組み合わせて用いることにより当該色材の分散性や分散安定性を向上することができる。
【0106】
前記染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0107】
中でも、色材が、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料、クマリン染料、シアニン染料、及びこれらの染料の造塩化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、前記分散剤を用いることによる色材の昇華乃至析出を抑制する効果が高く、高輝度な着色層を形成可能である点から好ましい。また、前記色材としては、中でも、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0108】
ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、255、264、272、及び下記一般式(i)で表されるジケトピロロピロール顔料が挙げられ、中でもC.I.ピグメントレッド254、272、及び下記一般式(i)においてR21及びR22がそれぞれ4-ブロモフェニル基であるジケトピロロピロール顔料から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0109】
【化9】
(一般式(i)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、4-クロロフェニル基、又は4-ブロモフェニル基である。)
【0110】
キノフタロン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
銅フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられ、中でも、C.I.ピグメントブルー15:6が好ましい。
亜鉛フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン58、59等が挙げられる。
キノフタロン染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー54、64、67、134、149、160、C.I.ソルベントイエロー114、157等が挙げられ、中でも、C.I.ディスパースイエロー54が好ましい。
【0111】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明に係る色材分散液を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0112】
また、色材分散液中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmの範囲内であることがより好ましい。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶剤で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0113】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0114】
本発明に係る色材分散液において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、5~80質量部、より好ましくは8~70質量部の割合で配合することが好ましい。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、30~80質量部、より好ましくは40~75質量部の割合で配合することが好ましい。
【0115】
<溶剤>
本発明に用いられる溶剤としては、色材分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0116】
本発明に係る色材分散液は、以上のような溶剤を、当該溶剤を含む色材分散液全量に対して、通常、55~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも65~90質量%の範囲内であることが好ましく、70~88質量%の範囲内であることがより好ましい。溶剤が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶剤が多すぎると、色材濃度が低下し、目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0117】
<その他の成分>
本発明に係る色材分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、更に必要に応じて、分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
分散補助樹脂としては、例えば後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0118】
本発明に係る色材分散液は、後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いられる。すなわち、色材分散液とは、後述のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を調製する前段階において予備調製される、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比の高い色材分散液である。具体的には、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比は通常1.0以上である。色材分散液と、後述する各成分とを混合することにより、分散性に優れたれカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を調製することができる。
【0119】
<色材分散液の製造方法>
本発明において、色材分散液の製造方法は、前記色材が、前記ブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体の分散剤により、溶剤中に分散された色材分散液が得られる方法であれば特に限定されない。中でも、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から、以下の2つの製造方法のうちのいずれかとすることが好ましい。
【0120】
即ち、本発明に係る色材分散液の第一の製造方法は、前記ブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体の分散剤を準備する工程と、溶剤中、前記分散剤の存在下で、色材を分散する工程とを有するものである
【0121】
また、塩型ブロック共重合体である分散剤を用いる場合の本発明に係る色材分散液の第二の製造方法は、溶剤と、前記ブロック共重合体と、有機酸化合物等と、色材とを混合して、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物等とを塩形成しながら、色材を分散する工程とを有するものである。
【0122】
塩型ブロック共重合体を用いる場合において、上記第一の製造方法によれば、塩型ブロック共重合体を調製した後に、当該塩型ブロック共重合体を分散剤として用いて色材を分散するため、塩形成前のブロック共重合体と有機酸化合物等の反応終点や反応率を正確に確認することができる点から好ましい。
また、上記第二の製造方法によれば、塩型ブロック共重合体の分散剤を調製しながら、色材を分散するため、塩型ブロック共重合体が自己凝集することがなく、色材分散液を効率よく調製することができ、また、分散性を向上することができる。
【0123】
上記第一の製造方法及び上記第二の製造方法において色材は、従来公知の分散機を用いて分散することができる。
分散機の具体例としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03~3.0mmが好ましく、より好ましくは0.05~2.0mmである。
【0124】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2.0mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5~2μmのフィルターで濾過することが好ましい。
【0125】
II.カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有することを特徴とする。
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液を用いることにより、高輝度な着色層を形成可能であり、着色層上に隣接して形成されるITO膜のクラックを抑制可能である。
【0126】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、溶剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを少なくとも含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。以下、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に含まれる各成分について説明するが、分散剤、色材、及び溶剤については、上記本発明に係る色材分散液において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0127】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0128】
カルボキシ基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0129】
アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に、嵩高い基である炭化水素環を有することにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい環状の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がカルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等の置換基を有していてもよい。中でも、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する。
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、下記化学式(ii)に示されるカルド構造等が挙げられる。
【0130】
【0131】
また、アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(iii)で表されるマレイミド構造を有するのも好ましい。
【0132】
【化11】
(一般式(iii)において、R
Mは、置換されていてもよい炭化水素環である。)
【0133】
アルカリ可溶性樹脂が、前記一般式(iii)で表されるマレイミド構造を有する場合、炭化水素環に窒素原子を有するため、本発明の分散剤との相溶性が非常によく、現像残渣の抑制効果が向上する。
前記一般式(iii)のRMにおける、置換されていてもよい炭化水素環の具体例としては、前記炭化水素環の具体例と同様のものが挙げられる。
【0134】
炭化水素環として、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記化学式(ii)に示されるカルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0135】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシ基を有する構成単位とは別に、上記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、上記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位と、上記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
前記炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
また、現像残渣の抑制効果の点からは、前記炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、前記マレイミド構造を有するモノマーと、スチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0136】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂はまた、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂と、上述した本発明の分散剤とが架橋結合を形成することができ、また、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と光重合性化合物等が架橋結合を形成し得る。そのため、側鎖にエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、本発明の分散剤とを組み合わせて用いると、相乗効果により硬化膜の膜強度がより向上するため、着色層の輝度及びITO膜のクラック耐性をより向上することができ、さらに、現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシ基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0137】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0138】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0139】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0140】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記下限値以上であると得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が十分であり、また、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記上限値以下であると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れが起こり難い傾向がある。
【0141】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、15質量%~90質量%であることがより好ましい。
【0142】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~50,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000~20,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
なお、カルボキシ基含有共重合体の上記重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により測定することができる。
【0143】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0144】
アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が70mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、70mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価はJIS K 0070:1992に従って測定することができる。
【0145】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100~2000の範囲であることが好ましく、特に、140~1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、100以上であれば現像耐性や密着性に優れている。また、2000以下であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
また、前記分散剤と組み合わせたときの相乗効果に優れ、着色層の輝度及びITOクラック耐性がより向上する点から、前記分散剤における、塩形成前のブロック共重合体中の側鎖に含む(メタ)アクリロイル基当量が前述した好ましい範囲であり、且つ、アルカリ可溶性樹脂の該エチレン性不飽和結合当量が前記好ましい範囲であることが好ましい。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(2)で表される。
【0146】
数式(2) エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(2)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0147】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0148】
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアカリ現像性が得られ、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制できる。
【0149】
<多官能モノマー>
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる多官能モノマーは、後述する光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0150】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して多官能モノマーは好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~40質量%の範囲内である。多官能モノマーの含有量が上記下限値より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が現像時に溶出する場合があり、また、多官能モノマーの含有量が上記上限値より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0151】
<光開始剤>
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光開始剤としては、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ハロメチルオキサジアゾール化合物、α-アミノケトン、ビイミダゾール類、N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、ハロメチル-S-トリアジン系化合物、チオキサントン等を挙げることができる。光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体等のビイミダゾール類、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2-(4-ブトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパノン、1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-n-ブトキシエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-メチルジフェニルサルファイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパノンなどが挙げられる。
中でも、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントンが好ましく用いられる。更に2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンのようなα-アミノアセトフェノン系開始剤とジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。
α-アミノアセトフェノン系開始剤とチオキサントン系開始剤を用いる場合のこれらの合計含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5質量%~15質量%が好ましい。開始剤量が15質量%以下だと製造プロセス中の昇華物が低減するため好ましい。開始剤量が5質量%以上であると水染み等、現像耐性が向上する。
【0152】
本発明において、光開始剤は、中でも、感度を向上させることができる点から、オキシムエステル系光開始剤を含むことが好ましい。また、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、細線パターンを形成する際に、面内の線幅のばらつきが抑制され易い。更に、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、残膜率が向上し、水染み発生抑制効果が高くなる傾向がある。なお、水染みとは、アルカリ現像性を高くする成分を用いると、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生することをいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
当該オキシムエステル系光開始剤としては、分解物によるカラーフィルタ用着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステル系光開始剤としては、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)-、2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特表2010-527339、特表2010-527338、特開2013-041153等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、イルガキュアOXE-01、ジフェニルスルフィド骨格を有するアデカアークルズNCI-930、TR-PBG-345、カルバゾール骨格を有するTR-PBG-304、フルオレン骨格を有するTR-PBG-365、ジフェニルスルフィド骨格を有するTR-PBG-3057(以上、常州強力電子新材料社製)などを用いても良い。特にジフェニルスルフィド骨格又はフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることが輝度の点から好ましい。またカルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることが感度の高い点から好ましい。
またオキシムエステル系光開始剤を2種類以上併用することは、輝度、残膜率が向上しやすく、水染み発生抑制効果が高い点で好ましい。特にジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤2種類の併用又は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは輝度が高く、耐熱性が高い点から好ましい。また、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤と、フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤又はジフェニルスルフィドを有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは感度、輝度に優れる点で好ましい。
【0153】
また、オキシムエステル系光開始剤に、3級アミン構造を有する光開始剤を組み合わせて用いることが、水染みを抑制し、また、感度向上の点から、好ましい。3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。上記3級アミン構造を有する光開始剤の市販品としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)などが挙げられる。
また、オキシムエステル系光開始剤に、チオキサントン系開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましく、オキシムエステル系光開始剤を2種類以上と、チオキサントン系開始剤を組み合わせることが輝度、残膜率が向上し、感度調整をしやすく、水染み発生抑制効果が高く、現像耐性が向上する点で好ましい。
【0154】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の含有量は、上記多官能モノマー100質量部に対して、通常0.01質量部~100質量部程度、好ましくは5質量部~60質量部である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると得られる着色層の黄変性が弱くなって輝度が低下することを抑制できる。
また、本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる光開始剤として、オキシムエステル系光開始剤2種以上の合計含有量は、カラーフィルタ用着色樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1質量%~12.0質量%、さらに好ましくは1.0質量%~8.0質量%の範囲内であることが、これらの光開始剤の併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0155】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられるバインダー成分は、これらの合計含有量が、カラーフィルタ用着色樹脂組成物の固形分全量に対して35質量%~97質量%が好ましく、40質量%~96質量%の割合で配合するのがより好ましい。上記下限値以上であれば、硬度や、基板との密着性に優れた着色層を得ることができる。また上記上限値以下であれば、現像性に優れ、熱収縮による微小なシワの発生も抑制される。
【0156】
<酸化防止剤>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含有することが、耐熱性が向上し、色材の退色が抑制され、輝度が向上する点から好ましい。酸化防止剤は従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。国際公開第2014/021023号に記載されているような潜在性酸化防止剤であっても良い。
【0157】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0158】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記オキシムエステル系光開始剤と、酸化防止剤とを組み合わせて含有すると、相乗効果で輝度が向上する点、残膜率が向上する点、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点から好ましい。
【0159】
酸化防止剤の配合量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、酸化防止剤が0.1質量部~10.0質量部であることが好ましく、0.5質量部~5.0質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性及び耐光性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0160】
酸化防止剤を前記オキシムエステル系光開始剤と組み合わせて用いる場合、酸化防止剤の配合量としては、前記オキシムエステル系光開始剤の合計量100質量部に対して、酸化防止剤が1質量部~250質量部であることが好ましく、3質量部~80質量部であることがより好ましく、5質量部~45質量部であることがより更に好ましい。上記範囲内であれば、上記組み合わせの効果に優れている。
【0161】
<任意添加成分>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて、前記酸化防止剤の他、各種添加剤を含むものであってもよい。
添加剤としては、例えば、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0162】
またシランカップリング剤としては、例えばKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-903、KBE-903、KBM573、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-303、KBM-802、KBM-803、KBE-9007、X-12-967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。中でもSiN基板の密着性の点からメタクリル基、アクリル基を有するKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103が好ましい
【0163】
シランカップリング剤の含有量としては、感光性着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、シランカップリング剤が0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上、上記上限値以下であれば、基板密着性に優れている。
【0164】
<カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
色材の合計の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3~65質量%、より好ましくは4~60質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0~5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15~65質量%、より好ましくは25~60質量%の割合で配合することが好ましい。
また、分散剤の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して1~40質量%の割合で用いることができる。更に、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して2~30質量%の割合で配合するのが好ましく、特に3~25質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2~25質量%、より好ましくは3~20質量%の割合で配合することが好ましい。なお、分散剤の質量は、塩型ブロック共重合体の場合、塩形成前の前記ブロック共重合体と有機酸化合物等との合計の質量である。
また、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含むカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65~88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0165】
<カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、前記本発明に係る色材分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤と、必要に応じてその他の成分を添加し、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。
【0166】
III.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0167】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0168】
<着色層>
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物である着色層である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1~5μmの範囲であることが好ましい。
【0169】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0170】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0171】
<遮光部>
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0172】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2~0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5~2μm程度で設定される。
【0173】
<基板>
基板としては、後述する透明基板、シリコン基板、及び、透明基板又はシリコン基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm~1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0174】
IV.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0175】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置が挙げられる。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0176】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0177】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0178】
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有する有機発光表示装置が挙げられる。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0179】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0180】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
塩形成前のブロック共重合体の酸価、及び前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価は、JIS K 0070:1992に記載の方法に準ずる方法により求めた。
塩形成前のブロック共重合体のアミン価、及び前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体のアミン価は、JIS K 7237:1995に記載の方法に準ずる方法により求めた。
塩形成前及び塩形成後のブロック共重合体の水酸基価は、JIS K 0070:1992に記載の方法に準ずる方法により求めた。
塩形成前のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、前述の本発明の測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0181】
(実施例1:塩型ブロック共重合体A-1の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1-エトキシエチル(EEMA)2.2質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)12.1質量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)12.9質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)16.6質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)17.7質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)25.3質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体A-1”PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行った。精製したブロック共重合体A-1”を再びPGMEA400質量部に溶かし、イソシアネートA(2-イソシアナトエチルメタクリレート、商品名:カレンズMOI、昭和電工製)5.3質量部、ジブチル錫(商品名:ネオスタンU-100、日東化成(株)製)0.008質量部を加えて80℃に昇温した後、2時間反応させて、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、一般式(B1)で表される構成単位とカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位とを含むBブロックとを有するブロック共重合体A-1’溶液(固形分20質量%)を得た。
【0182】
100mL丸底フラスコに得られたブロック共重合体A-1’溶液50質量部を入れ、前記一般式(3)で表される化合物であるフェニルホスホン酸(PPA、東京化成製)1.27質量部(PPAがブロック共重合体A-1’のDMMAユニット1モルに対し、0.5モル加え、反応温度30℃で20時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体A-1溶液を得た。塩形成後の塩型ブロック共重合体A-1の酸価は塩形成前のブロック共重合体A-1’と同じであるが、塩形成後のアミン価は具体的には、以下のように算出した。
NMR試料管に塩型ブロック共重合体A-1(再沈殿後の固形物)を9質量部、クロロホルム-D1NMR用を91質量部で混合した溶液を1g入れ、13C-NMRスペクトルを核磁気共鳴装置(日本電子製、FT NMR、JNM-AL400)を用い、室温、積算回数10000回の条件にて測定した。得られたスペクトルデータのうち、末端の窒素部位(アミノ基)において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、アミノ基総数に対する塩形成されているアミノ基数の比率を算出し、理論的な塩形成比率と相違ない(全フェニルホスホン酸がブロック共重合体A-1’のDMMAの末端の窒素部位と塩形成している)ことを確認した。
【0183】
(実施例2~14:塩型ブロック共重合体A-2~A-14の合成)
実施例1において、Aブロックの材料を表1に示す含有量に変更し、Bブロックの材料を表1に示す種類及び含有量に変更した以外は、実施例1の塩型ブロック共重合体A-1と同様にして、塩型ブロック共重合体A-2~A-14溶液を得た。なお、メタクリル酸1-エトキシエチル(EEMA)は、表1のMAAと等モル量用いた。
また、表1において、塩形成化合物として用いられる有機酸化合物又はハロゲン化炭化水素の量は、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位(DMMA)1モルに対する、前記化合物のモル数で表されている。
また、実施例2においては、精製したブロック共重合体A-1”を再びPGMEA400質量部に溶かし、イソシアネートB(メタクリル酸2-(0-[1'-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、カレンズMOI-BM、昭和電工製)12.0質量部、ジブチル錫ジラウレートを0.01質量部加え、130℃で2時間加熱することにより、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、一般式(B1)で表される構成単位とカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位とを含むBブロックとを有するブロック共重合体A-2’溶液(固形分20質量%)を得た。
【0184】
(比較例1~2:比較塩型ブロック共重合体AC-1~AC-2の合成)
実施例1において、Aブロックの材料を表1に示す含有量に変更し、Bブロックの材料を表1に示す種類及び含有量に変更した以外は、実施例1の塩型ブロック共重合体A-1溶液と同様にして、比較塩型ブロック共重合体AC-1~AC-2溶液を得た。なお、比較例1では、精製した比較ブロック共重合体AC-1”をイソシアネート化合物と反応させることなく、比較塩型ブロック共重合体AC-1溶液を得た。比較例2では、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレートを、EEMA等のBブロック用モノマーと共に添加して、比較ブロック共重合体AC-2”を得て、精製した比較ブロック共重合体AC-2”をイソシアネート化合物と反応させることなく、比較塩型ブロック共重合体AC-2溶液を得た。
【0185】
実施例1~14で得られた塩型ブロック共重合体A-1~A-14及び比較例1~2で得られた比較塩型ブロック共重合体AC-1~AC-2における塩形成前及び塩形成後の酸価、アミン価、水酸基価、並びに塩形成前の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。なお、塩型ブロック共重合体の塩形成後のアミン価は、塩形成前のアミン価から、DMMAユニットのアミン価を差し引いて算出した。
【0186】
(実施例15:ブロック共重合体A-15の合成)
実施例1において、塩形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、ブロック共重合体A-15溶液を得た。
【0187】
(実施例16:ブロック共重合体A-16の合成)
実施例3において、塩形成しなかった以外は、実施例3と同様にして、ブロック共重合体A-16溶液を得た。
【0188】
(実施例17:ブロック共重合体A-17の合成)
実施例5において、塩形成しなかった以外は、実施例5と同様にして、ブロック共重合体A-17溶液を得た。
【0189】
(実施例18:塩型ブロック共重合体A-18の合成)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換した。Arフローしながら、脱水THF100質量部、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール2.0質量部、テトラブチルアンモニウム-3-クロロベンゾエート(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2質量部を加えた。そこに滴下ロートを用いて、メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)12.1質量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)12.9質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)17.7質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)17.7質量部を45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMMA)25.3質量部を15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5質量部を加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ブロック共重合体A-18”を得た。ブロック共重合体A-18”をPGMEA400質量部に溶かし、イソシアネートA(2-イソシアナトエチルメタクリレート、商品名:カレンズMOI、昭和電工製)5.3質量部、ジブチル錫(商品名:ネオスタンU-100、日東化成(株)製)0.008質量部を加えて80℃に昇温した後、2時間反応させて、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、一般式(B1)で表される構成単位とカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位とを含むBブロックとを有するブロック共重合体A-18’溶液(固形分20質量%)を得た。
実施例1において、ブロック共重合体A-1’溶液に代えて、ブロック共重合体A-18’溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体A-18溶液を得た。
【0190】
実施例15~18で得られたブロック共重合体A-15~A-17及び塩型ブロック共重合体A-18における酸価、アミン価、水酸基価、及び重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0191】
【0192】
ここで、表中各略号は以下の通りである。
DMMA:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
MAA:メタクリル酸
EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
MMA:メタクリル酸メチル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
HPhPA:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(商品名;M-600A、共栄社化学株式会社製)
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
イソシアネートA:2-イソシアナトエチルメタクリレート(商品名;カレンズMOI、昭和電工製)
イソシアネートB:メタクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(商品名;カレンズMOI-BM、昭和電工製)
イソシアネートC:1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(商品名;カレンズBEI、昭和電工製)
イソシアネートD:2-メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(商品名;カレンズMOI-EG、昭和電工製)
イソシアネートE:2-イソシアナトエチルアクリラート(商品名;カレンズAOI-VM、昭和電工製)
【0193】
(合成例1:アルカリ可溶性樹脂A溶液の合成)
重合槽に、PGMEAを300質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸2-フェノキシエチル(PhEMA)90質量部、MMA54質量部、メタクリル酸(MAA)36質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p-メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)20質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A溶液(重量平均分子量(Mw)8500、酸価75mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070:1992に基づいて測定した。
【0194】
(実施例21)
(1)色材分散液G1の製造
分散剤として実施例1の塩型ブロック共重合体A-1溶液(固形分20質量%)を14.8質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を10.4質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)を2.6質量部、合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を14.6質量部、PGMEAを57.6質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G1を得た。
【0195】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G1の製造
上記(1)で得られた色材分散液G1を43.8質量部、合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を6.3質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-403、東亞合成(株)社製)を5.9質量部、光開始剤としてオキシムエステル系開始剤(ADEKA社製、「アデカアークルズNCI-930」)を0.92質量部、オキシムエステル系開始剤(常州強力電子新材料社製、「TR-PBG-3057」)を0.69質量部、ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、「DETX-S」)を0.12質量部、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤(IRGANOX1010、BASF社製)を0.11質量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業(株)製)を0.4質量部、メガファックF-559(DIC製)を0.04質量部、及び溶媒としてPGMEAを41.4質量部添加した後、均一になるまで混合し、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G1を得た。
【0196】
(3)着色層の形成
上記(2)で得られた着色樹脂組成物G1を、厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射し、更に230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることにより、硬化後の膜厚が2.5μmとなるように膜厚を調整して着色層G1を形成した。
【0197】
(実施例22~38、比較例11~12)
(1)色材分散液G2~G18、比較色材分散液GC1~GC2の製造
実施例21の(1)において、塩型ブロック共重合体A-1溶液の代わりに、それぞれ表2に示すように、実施例2~14の塩型ブロック共重合体A-2~A-14溶液、実施例15~18のブロック共重合体A-15~A-17、塩型ブロック共重合体A-18、比較例1~2の比較塩型ブロック共重合体AC-1~AC-2溶液を、固形分が塩型ブロック共重合体A-1と同じ質量部となるようにそれぞれ用い、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、実施例21の(1)と同様にして、色材分散液G2~G18及び比較色材分散液GC1~GC2を得た。
【0198】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G2~G18、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物GC1~GC2の製造
実施例21の(2)において、色材分散液G1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G2~G18及び上記比較色材分散液GC1~GC2を用いた以外は、実施例21の(2)と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G2~G18、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物GC1~GC2を得た。
(3)着色層の形成
実施例21の(3)において、着色樹脂組成物G1の代わりに、それぞれ上記着色樹脂組成物G2~G18、GC1~GC2を用いた以外は、実施例21の(3)と同様にして、着色層G2~G18、GC1~GC2を得た。
【0199】
(実施例41)
(1)色材分散液R1の製造
実施例21の(1)において、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)10.4質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)2.6質量部の代わりに、下記化学式(R1)で表されるジケトピロロピロール顔料(Irgaphor RED S 3621CF、BASF社製)13質量部を用いた以外は、実施例21の(1)と同様にして、色材分散液R1を得た。
【0200】
【0201】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物R1の製造
実施例21の(2)において、色材分散液G1に代えて、前記で得られた色材分散液R1を用いた以外は、実施例21の(2)と同様にして、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物R1を得た。
(3)着色層の形成
実施例21の(3)において、着色樹脂組成物G1の代わりに、上記着色樹脂組成物R1を用いた以外は、実施例21の(3)と同様にして、着色層R1を得た。
【0202】
(実施例42)
(1)色材分散液B1の製造
実施例21の(1)において、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)10.4質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)2.6質量部の代わりに、C.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)13質量部を用いた以外は、実施例21の(1)と同様にして、色材分散液B1を得た。
【0203】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物B1の製造
実施例21の(2)において、色材分散液G1に代えて、前記で得られた色材分散液B1を用いた以外は、実施例21の(2)と同様にして、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物B1を得た。
(3)着色層の形成
実施例21の(3)において、着色樹脂組成物G1の代わりに、上記着色樹脂組成物B1を用いた以外は、実施例21の(3)と同様にして、着色層B1を得た。
【0204】
(実施例43)
(1)色材分散液Y1の製造
実施例21の(1)において、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)10.4質量部、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)2.6質量部の代わりに、C.I.ディスパースイエロー54(商品名:KP Plast Yellow HR、紀和化学製)13質量部を用いた以外は、実施例21の(1)と同様にして、色材分散液Y1を得た。
【0205】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物Y1の製造
実施例21の(2)において、色材分散液G1に代えて、前記で得られた色材分散液Y1を用いた以外は、実施例21の(2)と同様にして、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物Y1を得た。
(3)着色層の形成
実施例21の(3)において、着色樹脂組成物G1の代わりに、上記着色樹脂組成物Y1を用いた以外は、実施例21の(3)と同様にして、着色層Y1を得た。
【0206】
[評価方法]
<色材分散液の粘度安定性評価>
実施例及び比較例で得られた色材分散液についてそれぞれ、調製直後と、25℃で30日間保存後の粘度を測定し、保存前後の粘度から粘度変化率を算出し、粘度安定性を評価した。粘度測定には振動式粘度計を用いて、25.0±0.5℃における粘度を測定した。結果を表2、3に示す。
(粘度安定性評価基準)
AA:保存前後の粘度の変化率が10%未満
A:保存前後の粘度の変化率が10%以上15%未満
B:保存前後の粘度の変化率が15%以上25%未満
C:保存前後の粘度の変化率が25%以上40%未満
D:保存前後の粘度の変化率が40%以上
ただし、色材分散液の溶剤を含めた合計質量に対して、色材を13質量%としたときの値である。
評価結果がCでも色材分散液は実用上使用できるが、評価結果がBであれば色材分散液はより良好であり、評価結果がAであれば色材分散液は、分散安定性に優れている。
【0207】
<ITOクラック耐性評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後の膜厚が2.5μm程度になるように塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm2の紫外線を照射し、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることによって硬化膜(着色膜)を得た。
得られた硬化膜の上に、厚さ120nmのITOをスパッタリング装置(ULVAC製:CS-200)で製膜した。この膜を25℃のN-メチルピロリドンに120分浸漬した後、ITO膜にクラックが生じているかを目視にて基板を観察した。
(ITOクラック耐性評価基準)
AA:クラックの発生がない
A:クラックの発生が5個以下
B:クラックが全面に発生
C:クラックが全面に発生し、ITOが部分的に剥がれた状態
上記評価基準がAA又はAであれば、実用上使用できるが、評価結果がAAであればより効果が優れている。
【0208】
<現像密着性評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、厚さ2.5μmの着色層を形成した。この着色層に2~80μmのマスク開口幅をもつフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像した。現像後の基板を光学顕微鏡により観察し、マスク開口線幅に対する着色層の有無を観察した。結果を表2、3に示す。
(現像密着性評価基準)
AA:マスク開口線幅10μm未満の部分で着色層が観察された
A:マスク開口線幅10μm以上、20μm未満の部分で着色層が観察された
B:マスク開口線幅20μm以上、50μm未満の部分で着色層が観察された
C:マスク開口線幅50μm以上、80μm未満の部分で着色層が観察された
D:マスク開口線幅80μm以下の部分で着色層が観察されなかった
評価結果がBでもカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は実用上使用できるが、評価結果がAであればカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物はより高精細化に適しており、評価結果がAAであればカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物はさらに高精細化に適している。
【0209】
<現像残渣評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて60℃で3分間乾燥することにより、厚さ2.5μmの着色層を形成した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて120秒間シャワー現像した。上記着色層の形成後のガラス基板の未露光部(50mm×50mm)を、目視により観察した後、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ社製、商品名トレシーMKクリーンクロス)で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。結果を表2、3に示す。
(現像残渣評価基準)
A:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
B:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
C:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
D:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
E:目視により現像残渣が確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
現像残渣評価基準がA、B又はCであれば、現像残渣の発生が十分に抑制されていると評価され、実用上問題なく使用できる。
【0210】
<溶剤再溶解性評価>
幅0.5cm長さ10cmのガラス基板の先端を、実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に浸漬させ、ガラス基板の長さ1cm部分に塗布した。引き上げたガラス基板を、ガラス面が水平になるように恒温恒湿機に入れ、温度23℃、湿度80%RHで30分間の条件で乾燥させた。次に、乾燥させた塗膜が付着したガラス基板をPGMEA中に15秒間浸漬させた。このとき乾燥塗膜の再溶解状態を目視で判別し、評価した。結果を表2、3に示す。
(溶剤再溶解性評価基準)
AA:乾燥塗膜が完全に溶解した
A:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、その薄片がやがて溶解した
B:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、溶液が着色した
C:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、溶液が着色しなかった
D:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じず、溶液が着色しなかった
現像残渣評価基準がAA、A又はBであれば、溶剤再溶解性良好と評価され、実用上問題なく使用できる。
【0211】
<色材昇華性評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥することにより、厚さ2.5μmの着色層を形成した。この着色層に80μmのライン&スペースのストライプパターンが画かれたフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像したのち、さらに60秒間超純水で洗浄した。
得られた着色パターンが形成されたガラス基板の0.7mm上面にガラス基板を配置し、230℃のホットプレート上で30分間加熱した。上面のガラス基板への昇華物の有無を目視で確認することで、色材の昇華性の評価とした。
(色材昇華性評価基準)
A:上面のガラス基板への、昇華物による着色及び析出物はなし
B:上面のガラス基板への、昇華物による着色はあるが、析出物はない
C:上面のガラス基板への、昇華物による着色があり、析出物も確認された
【0212】
<基板密着性評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークして、膜厚が2.5μmの着色膜を得た。
得られた着色膜にカッターナイフで碁盤目状の切れ目を入れた後、その上にメンディングテープを貼り、垂直方向にすばやく剥がした。着色膜の状態を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2、3に示す。
(基板密着性評価基準)
AA:全く剥離が確認できない
A:基盤目状の切れ目に沿ってわずかに剥離が確認できる
B:切れ目で囲まれた部分の内部にも剥がれが確認される
評価結果がAA又はAであれば基板への密着性に優れており実用範囲と評価される。
【0213】
<光学性能評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2の紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板の色度(x、y)、輝度(Y)をオリンパス製顕微分光測定装置OSP-SP200を用いて測定した。結果を表2、3に併せて示す。なお、光源はC光源を用いた。
【0214】
【0215】
【0216】
[結果のまとめ]
表2、3の結果から、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含むBブロックとを含有するブロック共重合体を用いた実施例21~38及び実施例41~43のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いて形成した着色層は、輝度が高く、ITO膜のクラック耐性に優れており、更に、現像密着性及び溶剤再溶解性に優れ、着色層中の色材の昇華及び析出が抑制され、基板密着性にも優れていた。
一方、Bブロックが前記一般式(B1)で表される構成単位及び前記一般式(B2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を含まない塩型ブロック共重合体を分散剤として用いた比較例11及び12は、輝度が低く、ITO膜のクラック耐性に劣っており、更に、現像密着性及び溶剤再溶解性も劣っており、着色層中の色材の昇華乃至析出が確認された。
【符号の説明】
【0217】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置