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特許7011672変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20220119BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20220119BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20220119BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G01V1/00 E
G06Q50/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019567985
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2019094716
(87)【国際公開番号】W WO2019238140
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】201910014370.3
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517453966
【氏名又は名称】中国南方電网有限責任公司超高圧輸電公司検修試験中心
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 旭
(72)【発明者】
【氏名】▲ぱん▼ 准
(72)【発明者】
【氏名】王 奇
(72)【発明者】
【氏名】孫 勇
(72)【発明者】
【氏名】張 長虹
(72)【発明者】
【氏名】楚 金偉
(72)【発明者】
【氏名】周 海濱
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235541(JP,A)
【文献】特開2002-330542(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109919409(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109061722(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0015268(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104392060(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G01V 1/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータは、
変電所又は交直変換所の場所の地震ハザード発生確率を計算するステップと、
変電所又は交直変換所の設備の結合作用下の故障モデルを構築し、地震時の設備の結合作用下の故障確率を取得するステップと、
設備の地震時の災害損失モデルを構築し、地震時の設備故障による経済的損失を取得するステップと、
以下の式(1)で示される地震リスクを取得するステップと、
を含み、
地震リスク=場所の地震ハザード発生確率×設備の結合作用下の故障確率×経済的損失 (1)
前記経済的損失は、設備損傷交換費用、人件費、停電損失を含み、
前記設備の結合作用下の故障モデルは、以下のようなイベントから構成され、
(設備本体故障∩接続導線正常)∪(設備本体損傷なし∩接続導線故障)∪(設備本体故障確率∩接続導線故障)、
ただし、
設備本体故障=構造故障∪電気故障、
構造故障=構造故障1+構造故障2、構造故障1では、設備の根元又は破壊しやすい断面における応力値が、設備又は材料の破壊応力値を設備安全係数で割った値よりも大きく、構造故障2では、設備の根元又は破壊しやすい断面におけるモーメントの値が設備又は材料の曲げモーメントの値を設備安全係数で割った値よりも大きく、
電気故障とは、地震作用で設備の変位又は残留変形による絶縁マージンの不足に起因する故障であり、
所定の地震作用で、設備本体故障確率は以下の式(4)で示され、
曲げモーメント接続導線故障確率とは、接続導線と設備の接続端部が地震力の作用下の損傷又は破断確率であり、地震作用下の導線端部の張力Tが導線の最大許容張力Tvよりも大きいか否かを検査すると、その故障確率は以下の式(5)で示され、
設備の結合作用下の故障確率P t [S|A=a]は以下の式(6)で示されることを特徴とする変電所又は交直変換所の結合回路の地震リスク評価方法。
【数24】
(ただし、P 1 [S|A=a]は、震度A=aの地震振動が発生する場合の設備本体故障確率を示し、P[S 1 ≧σ V |A=a]は構造故障確率1を示し、P[S 2 ≧M V |A=a]は構造故障確率2を示し、P[S 3 ≧E V |A=a]は電気故障確率を示し、aは地震振動の有効最大加速度を示し、σvは破壊応力であり、Mvは曲げモーメントであり、Evは許容電界強度である)
【数25】
【数26】
【請求項2】
地震時の設備故障による経済的損失は以下の式(12)で計算されることを特徴とする請求項1に記載の変電所又は交直変換所の結合回路の地震リスク評価方法。
【数27】
(ただし、Ktotは個別の設備の合計経済的損失(万元)を示し、K、K、Kは、それぞれ設備の交換価額(元)、1時間・1人当たりの取付・調整人件費(元/h)、及び1キロワットごとの電気利益(元/kWh)を示し、N及びNは、それぞれ交換が必要な設備の数、及び取付・調整スタッフの合計人数を示し、h及びh'は、それぞれ取付・調整の作業時間(単位:時間)を示し、pは電力損失を示す。)
【請求項3】
前記場所の地震ハザード発生確率は以下のように計算され、
サイト地震のハザードを促進する地震帯をNとし、n個目的地震帯のサイト地震振動に対する年間超過確率がPn(A≧a)であり、サイト合計地震振動の年間超過確率は、以下の式(2)で示され、
【数28】
T年以内のサイト地震振動Aが所定値aを超える確率は、以下の式(3)で示され、
【数29】
研究エリアの地震統計領域と潜在的な震源領域、地震活動性パラメータおよび地震振動減衰関係を決定した後、T年以内のエンジニアリングサイトでの岩盤地震振動加速度ピークの超過確率曲線を作成し、確率曲線からP(A=a)を求めることを特徴とする請求項1に記載の変電所又は交直変換所の結合回路の地震リスク評価方法。
【請求項4】
以下のように結合作用下の地震リスク指標を計算することをさらに含み、
以下の式(1)および式(6)に従い、あるピーク加速度がaである地震作用下の結合回路のリスク値は、以下の式(13)で計算され、
【数30】
ただし、
R(A=a)はピーク加速度がaである地震作用下の結合回路故障のリスク値であり、
nは結合回路での直列設備の数であり、n個の設備を含む結合回路では、接続導線の数はn-1本であり、
toti、K totiおよびK totiはそれぞれ結合回路でのi台目の設備本体故障、接続導体故障および両者が同時に故障時の経済的損失であり、
ただし、
【数31】
は結合回路での設備iの故障リスク値であり、
結合回路では、故障リスク値が最も大きい設備の耐震性が最も弱く、同時に、異なる地震作用下で同一の結合回路設備の全体故障に対する寄与度Cは設備故障リスク値と結合回路の故障リスクの比、すなわち、以下の式(14)で示されることを特徴とする請求項に記載の変電所又は交直変換所の結合回路の地震リスク評価方法。
【数32】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震リスク評価に関し、具体的には、変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震リスク分析は、地震のハザード(ハザードファクター)およびハザードファクターの脆弱性を十分に分析する上で、評価領域の地震作用と、ある程度の災害および社会的結果の可能性を評価することである。現在、変電所・変換所に対する地震リスク評価は、所内の単一設備の地震脆弱性に対する分析が主流であり、結合システムの地震リスク評価方法に関する報告はほとんどない。同時に、振動台のサイズの制限と設備の動特性パラメータの不足などにより、耐震設計時に長年にわたって運用されてきた既存の変換所は、一般に単一設備の耐震性能のみを考慮する。しかしながら、実際に変電所・変換所の地震リスクを考慮する場合、単一設備の損傷リスクのみならず、更に重要なことは設備間がバスによって接続されて形成された結合ループの損傷リスクを考慮することである。一旦強い地震が発生すると、高強度地震領域にある変換所では設備間の結合作用でより多くの設備が故障又は損傷してしまい、巨大の経済的損失を招くことになる。
【0003】
変電所・変換所での各種電気設備の動特性が異なり、変電所・変換所で接続された設備が相対的に運動し、それらの間のバスが引張又は圧縮され、かつバスを介して動力が伝達される。結合ループで各設備は異なる作用を有し、その設備自身、例えば設備の質量、高さ、構造、材質、設置方式などにも大きな違いがあるため、結合ループでの各設備の結合寄与度が異なり、それに従いバスが引張又は圧縮されるとともに、設備自身もバスからの反力を受け、設備の底部が自身の地震荷重を受けるだけでなく、バスによる荷重も負担するようになり、両者のベクトルの加算合計荷重がそれらのいずれよりも大きくなる可能性があり、これにより設備が損傷するリスクが高くなる。2010年、胡▲ユゥ▼▲ジン▼等は、配管バスによって接続された変電所の電気設備の地震脆弱性を分析し、配管バスによって接続された電気設備の結合システムの有限要素モデルを構築し、単一設備と配管バスによって接続された設備との動特性および地震応答を分析し、異なる伸縮継手の結合システムに対する影響を検討した。検討の結果、結合システムでは、伸縮継手が低周波数設備に接続された時の結合システムの動的応答は、伸縮継手が高周波数設備に接続された時のシステムの動的応答よりも小さいことがわかる。2016年、張雪松は、UHV設備結合システム及び分割導線モデルを構築して、分割導線位置関数の精度を検証した。また、有限要素ソフトウエアを使用して、設備の地震応答が導線剛性の増加とともに増加することを証明した。ソフトバスの剛性が高い周波数の設備に対する地震応答影響は、低い周波数の設備に対する地震応答影響よりも大きい。同様に、以前の地震で変電所の破壊状況を見ると、設備の破壊の大部分は、その接続バスの張力と引っ張りによって引き起こされている。
【0004】
次に、地震応答と電気性能を合わせた評価方法の研究が現在少なく、ほとんどの研究は、電気性能に対する地震の影響を無視して、電気設備の構造の地震応答のみを考慮することに焦点を当てている。実際に、地震時ほとんどの電気設備は動作状態にあり、地震の作用で電気設備の電気性能、例えば絶縁マージンが要求を満たすかどうかが分からず、設備の構造が損傷しないものの絶縁性能が限界に達した可能性があり、構造応答のみに注意を払い、電力設備の機能を無視するという問題が存在している。
【0005】
「電気設備の相互作用による大規模変電所の地震脆弱性の分析研究」という文献では、変電所の本体構造-電気設備の相互作用の脆弱性分析を考慮した。主な考慮事項は、変電所の建物構造の脆弱性であり、電気設備間の結合ループが考慮されず、本明細書と強調点が異なり、かつ電気設備の電気性能の影響も考慮されなかった。「電気設備の地震災害脆弱性分析」という文献でも、単一設備の分析であり、変圧器、バスおよびレバータワーの脆弱性分析が言及された。「摺動金具の結合高圧電気設備に対する耐震性能の影響分析」という文献では、異なる接続方式で直流ループシステムの通常耐震設計での応力を分析し、接続方式の高圧ループシステムの動特性および耐震性能に対する影響を研究したが、リスク確率の分析が考慮されなかった。「性能設計に基づく橋の地震リスク確率分析方法」という発明では、橋の構造を対象とし、その機械的性能や故障モードは電気設備のものとは完全に異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上記欠点を解決し、地震作用下の変電所の損傷状況をより確実に評価することができる変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の技術的解決策は次の通りである。
変電所又は変換所の場所の確率論的地震ハザードを計算するステップと、
変電所又は変換所の設備の結合作用下の故障モデルを構築し、地震時の設備の結合作用下の故障確率を取得するステップと、
設備の地震時の災害損失モデルを構築し、地震時の設備故障による経済的損失を取得するステップと、
以下の式(1)で示される地震リスクを取得するステップと、
を含むことを特徴とする変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法。
地震リスク=場所の確率論的地震ハザード×設備の結合作用下の故障確率×経済的損失 (1)
【0008】
具体的には、前記設備の結合作用下の故障モデルは、以下のようなイベントから構成され、
(設備本体故障∩接続導体正常)∪(設備本体損傷なし∩接続導体故障)∪(設備本体故障確率∩接続導体故障)、
ただし、
設備本体故障=構造故障∪電気故障、
構造故障=構造故障1+構造故障2、構造故障1では、設備の根元又は破壊しやすい断面における応力値が、設備又は材料の破壊応力値を設備安全係数で割った値よりも大きく、構造故障2では、設備の根元又は破壊しやすい断面におけるモーメントの値が設備又は材料の曲げモーメントの値を設備安全係数で割った値よりも大きく、
電気故障指とは、地震作用で設備の変位又は残留変形による絶縁マージンの不足に起因する故障であり、
所定の地震作用で、設備本体故障確率は以下の式(4)で示され、
曲げモーメント接続導体故障確率とは、接続導体と設備の接続端部が地震力の作用下の損傷又は破断確率であり、地震作用下の導線端部の張力Tが導線の最大許容張力Tvよりも大きいか否かを検査すると、その故障確率は以下の式(5)で示され、
設備の結合作用下の故障確率Pt[S|A=a]は以下の式(6)で示されることを特徴とする請求項1に記載の変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法。
【数1】
(ただし、P1[S|A=a]は、震度A=aの地震振動が発生する場合の設備本体故障確率を示し、P[S1≧σV|A=a]は構造故障確率1を示し、P[S2≧MV|A=a]は構造故障確率2を示し、P[S3≧EV|A=a]は電気故障確率を示し、aは地震振動の有効最大加速度を示し、σvは破壊応力であり、Mvは曲げモーメントであり、Evは許容電界強度である)
【数2】
【数3】
【0009】
具体的には、地震時の設備故障による経済的損失は以下の式(12)で計算される。
【数4】
(ただし、Ktotは個別の設備の合計経済的損失(万元)を示し、K、K、Kは、それぞれ設備の交換価額(元)、1時間・1人当たりの取付・調整人件費(元/h)、及び1キロワットごとの電気利益(元/kWh)を示し、N及びNは、それぞれ交換が必要な設備の数、及び取付・調整スタッフの合計人数を示し、h及びh'は、それぞれ取付・調整の作業時間(単位:時間)を示し、pは電力損失を示す。)
【0010】
具体的には、前記場所の確率論的地震ハザードは以下のように計算され、
サイト地震のハザードを促進する地震帯をNとし、n個目的地震帯のサイト地震振動に対する年間超過確率がPn(A≧a)であり、サイト合計地震振動の年間超過確率は、以下の式(2)で示され、
【数5】
T年以内のサイト地震振動Aが所定値aを超える確率は、以下の式(3)で示され、
【数6】
研究エリアの地震統計領域と潜在的な震源領域、地震活動性パラメータおよび地震振動減衰関係を決定した後、T年以内のエンジニアリングサイトでの岩盤地震振動加速度ピークの超過確率曲線を作成し、確率曲線からP(A=a)を求める。
【0011】
前記変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法は、結合作用下の地震リスク指標を計算することをさらに含み、
式(1)および式(6)に従い、あるピーク加速度がaである地震作用下の結合ループのリスク値は、以下の式(13)で計算され、
【数7】
ただし、
R(A=a)はピーク加速度がaである地震作用下の結合ループ故障のリスク値であり、
nは結合ループでの直列設備の数であり、n個の設備を含む結合ループでは、接続導線の数はn-1本であり、
toti、K totiおよびK totiはそれぞれ結合ループでのi台目の設備本体故障、接続導体故障および両者が同時に故障時の経済的損失であり、
ただし、
【数8】
は結合ループでの設備iの故障リスク値であり、
結合ループでは、故障リスク値が最も大きい設備の耐震性が最も弱く、同時に、異なる地震作用下同一結合ループ設備の全体故障に対する寄与度Cは、設備故障リスク値と結合ループの故障リスクの比、すなわち、以下の式(14)で示される。
【数9】
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明は、単一設備の故障確率のみならず、接続バスによって形成された結合ループの故障模式および故障確率も考慮し、同時に地震作用で大きい変位が発生した時の設備の電気性能に対する影響をリスクの1つの影響要素とし、これに基づき結合ループ故障モデルを作成し、動的時間履歴分析法を合わせた有限要素モデリングを使用して、結合システム故障基本データを作成し、最終的に結合ループの地震リスク指標を作成して、設備のリスク評価を合わせて変電所・変換所の設備地震応答の実際の状況を評価する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例による変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法の具体的な応用時のフローチャートである。
図2】本発明による設備iの故障確率を求めるフローチャートである。
図3】地震作用下のケーシングの変位の変形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面および具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
リスク評価方法では、システムリスクおよびそれに関連する影響を総合的に評価し、通常望ましくない結果の確率および破壊程度を確率と結果の積として表す。
【実施例
【0016】
本実施例によって提供される変電所又は変換所の結合ループの地震リスク評価方法は、
変電所又は変換所の場所の確率論的地震ハザードを計算するステップと、
変電所又は変換所の設備の結合作用下の故障モデルを構築し、地震時の設備の結合作用下の故障確率を取得するステップと、
設備の地震時の災害損失モデルを構築し、地震時の設備故障による経済的損失を取得するステップと、
以下の式1で示される地震リスクを取得するステップと、を含む。
地震リスク=場所の確率論的地震ハザード×設備の結合作用下の故障確率×災害による経済的損失 (1)
【0017】
具体的には、地震ハザードとは、所定のサイトである期間内の異なる強度の地震発生確率を指し、サイトの地質条件、潜在的な震源領域の活動状況および地震振動と震央距離の減衰関係等に依存する。既存のステーションについて、サイトの地質条件が決まっている。被災体の構造的脆弱性とは、所定の強度の地震作用下で特定の破壊状態に達したか、それを超えた場合の条件故障確率を指す。災害損失には、直接的な経済的損失、間接的な経済的損失および死傷者が含まれる。
【0018】
一般的なエンジニアリングサイトの耐震安全性評価レポートには、所定のサイトの特定の期間における異なる強度の地震の発生確率を有する地震ハザード分析の関連内容が含まれる。確率論的地震ハザードの計算原理は次のとおりである。
【0019】
サイト地震のハザードに寄与する地震帯をNとし、n個目的地震帯のサイトに対する地震振動の年間超過確率がPn(A≧a)であり、サイト合計地震振動の年間超過確率は、以下の式(2)で示され、
【数10】
T年以内のサイト地震振動Aが所定値aを超える確率は、以下の式(3)で示され、
【数11】
研究エリアの地震統計領域と潜在的な震源領域、地震活動性パラメータおよび地震振動減衰関係を決定した後、T年以内のエンジニアリングサイトでの岩盤地震振動加速度ピークの超過確率曲線を作成し、確率曲線からPd(A=a)を求める。
【0020】
地震イベントについては、電気設備の脆弱性とは、発生する可能性がある様々な強度の地震作用下で、電気設備がある程度の破壊を受ける条件確率を指す。この特許は、水平方向の地震力の作用下でコンポーネントの最大応力を計算し、コンポーネントの材料の最大応力と比較し、コンポーネントの故障確率を取得する。
【0021】
変換所又は変電所内の各相の電気設備は、通常ソフトバス又はハードパイプによって相互接続されて直列ループを形成し、地震時の単一設備の機能損傷故障と比較すると、結合後の電気設備は導線の接続によって隣接設備間で引っ張られるため、この時ループ全体での単一設備の機能故障は、地震時の接続された導体の損傷状況に依存するため、設備の結合作用下の故障モデルは次のイベントから構成される。
(設備本体故障∩接続導体正常)∪(設備本体損傷なし∩接続導体故障)∪(設備本体故障∩接続導体故障)
【0022】
設備本体故障モデルは具体的には次のとおりである。
本発明における設備本体故障は、地震作用下の構造故障および電気性能故障を含む。故障は以下のように定義される。
1)構造故障1:設備の根元又は破壊しやすい断面における応力値が設備又は材料の破壊応力値を1.67(設備安全係数)で除算した値よりも大きいことを指す。
2)構造故障2:設備の根元又は破壊しやすい断面におけるモーメントの値が設備又は材料の曲げモーメントの値を1.67で除算した値よりも大きいことを指す。
3)電気性能故障:地震作用下の設備が変位又は残留変形による絶縁マージンの不足で引き起こす故障を指す。
要件を満たさない応力、モーメントおよび電気性能のいずれかが設備故障イベントにつながるため、上記の故障イベントには、次の関係がある。即ち、設備本体故障モデルは、
設備本体故障=構造故障∪電気故障=構造故障1∪構造故障2∪電気故障
であり、所定の地震作用下で設備本体故障の条件確率は、以下の式(4)で示され、
【数12】
ただし、P1[S|A=a]は震度A=aの地震が発生した時、設備構造がある限界状態S(破壊応力σv、曲げモーメントMvおよび許容電界強度Ev)に達したまたはそれを超えた条件の確率である。aは地震振動の有効最大加速度を示す。
【0023】
接続導体故障確率は次のように計算される。
本発明における接続導体故障とは、接続導体と設備の接続端部が地震力の作用下で損傷又は破断されることを意味する。このとき、地震時の導線端部の張力Tが地震作用下で導線の最大許容張力Tvよりも大きいかどうかを調べる。その故障確率は式5でも表現され得る。
【数13】
したがって、設備の結合作用下の故障モデルによれば、設備の結合作用下の故障確率P1[S|A=a]は式6で表現され得る。
【数14】
【0024】
具体的には、上記の故障確率は以下のように求められる。
【0025】
本発明は、計算分析法を使用して上記の結合ループにおける故障確率を取得し、信頼性理論に従って水平方向の地震力の作用下でコンポーネントの最大応力を計算し、コンポーネント材料の限界応力と比較して、コンポーネントの故障確率を取得する。具体的な手順は次のとおりである。
【0026】
(1)結合ループの有限要素分析モデルの構築
有限要素法は、静的条件をシミュレートできるだけでなく、構造安定性解析および過渡動的解析にも使用でき、地震作用下で結合ループの電気設備及びその接続導線の応力及び変形分布規律を正確かつ包括的に理解するために重要である。ANASYS又はABAQUSを使用して有限要素モデルを構築することができる。次の点に注意したい。
1)CADソフトウエアを介して結合ループの幾何モデルを導入し、設備結合ループには多数のレバーや接続ジョイントが含まれ、一般に、ビーム要素モデルを使用して耐震分析を行い、特別なニーズを持つ詳細についてソリッド要素有限要素モデルを再構築する。接続導線と電気設備間は通常金具によって接続され、金具を固定接続又はヒンジ接続などに簡素化できる。
2)弾性率、ポアソン比、許容応力などの設備材料の属性の定義
3)設備の異なる部材間の接触形式(コンタクトペア)の設定
4)構造に準ずる実際の力と変形状況に応じるグリッド分割
5)強制荷重と境界条件の設定
6)「UHV磁器絶縁電気設備の耐震設計及び耐震装置の設置および保守に関する技術規則」のセクション4.4.4の要件に従い、電気設備の地震作用と他の荷重の組み合わせ
【数15】
Z:地震作用と他の荷重の組み合わせ、N、
Ge:設備本体、付属部品の重量、又は他の追加同等重量を含む設備自重の標準値、N、
:地震作用の標準値、N、
Wk:設備の場所での風速に応じた風荷重の標準値、N、
Pk:設備の内部圧力標準値、導線の実際張力などの他の荷重、N。
【0027】
(2)動的時間履歴分析を使用して変位と応力を求める
時間履歴解析法は、工学地震計算の基本的な運動方程式であり、エンジニアリングサイトに対応する多数の地震加速度記録または人工加速度の時間履歴曲線を入力し、構造物の運動の微分方程式を直接積分解する動力分析方法の一つであり、時間とともに各質点の変位、速度、加速度の動的応答が得られ、デバイスの内部力の時間履歴関係が得られる。時間履歴分析では、地震の振幅、スペクトルおよび継続時間の3つの要素を考慮し、構造物の非線形分析を実行でき、結合ループの地震応答分析に適する。
【0028】
動的時間履歴分析法により次のステップによって求められる。
1)結合ループの有限要素モデリング
2)設備の破壊応力値又は曲げモーメントの値を決定し、例えば磁器材料の破壊強度を50MPaとし、複合材料を80MPaとする。
3)地震波の選択:結合ループの故障確率を取得するには、地震のランダム性を考慮する必要があり、Nの地震振動を時間履歴分析法の入力(N≧30)として選択し、ランダムサンプリングのサンプル数として、変電所・変換所のエンジニアリングサイトの地震安全性評価レポートから合成波と典型的な強震波形記録を選択し、同時にPEER強震データベースでの地震波を入力として選択する。結合ループのシミュレーション計算には時間がかかるため、実際の状況に応じて適切な数の地震振動をサンプルとして選択し、計算時間の制限によって、サンプルの数が大きすぎることを回避する。同時にX・Y・Zの3方向の地震作用を考慮すると、3方向の入力の加速度ピークの比は1:0.85:0.65である。選択されたj(j=1、2、....N)番目の地震振動について、0.1g~1gのピーク加速度を調整し、M(M≧1)個の異なる加速度値(例えば、0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、…、1g)の地震波の波形を取り、即ち1つの加速度値がN組の異なる地震振動に対応し、ある地震波の異なる加速度値時の地震応答、設備の根元又は破壊しやすい断面における応力値σおよびモーメントの値M並びに接続導線端部の張力Tを取得する。
【0029】
4)構造故障確率の計算
所定の地震作用下で、ピーク加速度がaである時ある設備本体故障および接続導線故障の条件確率は次の式で求められる。
【数16】
【数17】
【数18】
ただし、
K(a)はピーク加速度がaであるN個の地震波数量であり、
σ(a)はN個のピーク加速度がaである地震波作用下で、設備の根元又は破壊しやすい断面における応力値σ≧σv/1.67時の回数(≦N)であり、
(a)はN個のピーク加速度がaである地震波作用下で、設備の根元又は破壊しやすい断面におけるモーメントの値M≧Mv/1.67時の回数(≦N)であり、
(a)はN個のピーク加速度がaである地震波作用下で、導線張力値T≧Tv/1.67時の回数(≦N)であり、
電気故障確率は次のように求められる。
【0030】
電気故障確率とは、地震作用下の設備が大きな変位又は残留変形による絶縁マージンの不足で引き起こす故障確率を指す。該故障確率は設備の地震応答に基づいて求められ、X、Y、Zの3つの方向中の設備端部の最大変位時の設備形態を電界シミュレーションのモデル入力として使用され、図3に示すように、地震作用下でケーシングの変位変形である。設備が地震作用下で変位すると、設備内部の電界分布が変化し、電界強度の分布が不均一になり、設備の許容電界強度値よりも大きく絶縁マージンの不足が発生する虞がある。
【0031】
電界シミュレーションはANASYSソフトウエアで実行され、その手順は次のとおりである。
1)最大変位が導入された時の設備形態を電界シミュレーションのモデルとして使用され、電界分布の計算に影響を与えない部品やモデル部分のボルト穴や面取りなどを単純化する。
2)材料特性パラメータおよび境界条件を適用し、電圧が定格電圧の場合の電界分布を計算する。
3)計算基準を選択し、設備の異なる位置の電界強度許容値を決定する。
4)定格電圧で設備の変位変形後の電界分布を求め、最大の電界強度値を抽出する。
【0032】
各最大電界強度値は、地震加速度の地震波のセットに対応するため、ピーク加速度がaである地震作用下の電気故障確率は式(11)で計算される。
【数19】
ただし、k(a)は、Nのピーク加速度がaである地震波作用下で、設備の最大電界強度値が許容電界強度E≧Eよりも大きい場合の回数(≦N)であり、
具体的には、地震時設備故障による経済的損失は、主に設備損傷交換費用、人件費、停電損失を含む。
【数20】
ただし、Ktotは個別の設備の合計経済的損失(万元)を示し、K、K、Kは、それぞれ設備の交換価額(元)、1時間・1人当たりの取付・調整人件費(元/h)、及び1キロワットごとの電気利益(元/kWh)を示し、N及びNは、それぞれ交換が必要な設備の数、及び取付・調整スタッフの合計人数を示し、h及びh'は、それぞれ取付・調整の作業時間(単位:時間)を示し、pは電力損失を示す。
【0033】
好ましい実施例として、この方法は、さらに結合作用下で地震リスク指標を解いてもよく、具体的に以下のとおりである。
【0034】
式(1)および式(6)に従い、あるピーク加速度がaである地震作用下の結合ループのリスク値は、以下の式(13)で計算され、
【数21】
R(A=a)はピーク加速度がaである地震作用下の結合ループ故障のリスク値であり、
nは結合ループでの直列設備の数であり、n個の設備を含む結合ループでは、接続導線の数はn-1本であり、
toti、K totiおよびK totiはそれぞれ結合ループでのi台目の設備本体故障、接続導体故障および両者が同時に故障時の経済的損失であり、
ただし、
【数22】
は結合ループでの設備iの故障リスク値である。
【0035】
上記の定義から分かるように、結合ループでは、故障リスク値が最も大きい設備の耐震性が最も弱い。同時に、異なる地震作用下で同一の結合ループの設備の全体故障に対する寄与度Cは、設備故障リスク値と結合ループの故障リスクの比で示されてもよい。
【数23】
【0036】
図1および図2に示すように、この方法は、具体的に応用されると次のようなステップを含む。
ステップ1:変電所・変換所中の結合ループを地震リスク評価対象として選択し、ループ中の設備の数をnとし、接続導線の数をn-1とする。
ステップ2:n台の設備がn-1本の導線によって接続された結合ループの有限要素シミュレーションモデルを、結合作用下で設備故障確率の計算モデルとして構築し、設備と導線の限界状態S(ここでは設備の破壊応力σv、曲げモーメントMvおよび許容電界強度Ev)を決定する。
ステップ3:有限要素シミュレーションモデルの入力データ([N×M]本の地震波)、サイトの場所に基づいて決定された地震振動パラメータおよび世界中の強震データベースを選択し、地震振動の本数をN、ピーク加速度の数をMとし、N×Mの行列をランダムサンプリングのサンプル数とし、行列中の各要素ajkはピーク加速度がajkである地震波を示し、ただしj=1:N、k=1:M、且つa(1:N、k)=a即ち行列の各行の地震振動の振幅が異なり、各列中要素中のピーク加速度が同じであるがスペクトルおよび継続時間が異なる。
ステップ4:エンジニアリングサイトの地震安全性評価中のサイト合計地震振動の年間超過確率に基づいてサイトの確率論的地震ハザードPdk(A=ak)を求める。
【0037】
ステップ5:結合ループの有限要素分析モデルにピーク加速度がaであるN本の地震振動を入力し、動的時間履歴分析法を使用して各本の地震振動下の地震応答(設備の応力、モーメント、導線の張力および設備の変位)を計算し、式(8)~(10)によってピーク加速度がaである時の故障の条件確率を計算し、式(4)中の第1項および第2項のP[S1≧σV|A=a]、P[S2≧MV|A=a]、および式(5)中のP2[S|A=a]=P[S4≧TV|A=a]を取得する。
ステップ6:ステップ5で得られた設備の最大変位に従って、設備が最大変位での電界シミュレーションの分析結果から、式(11)で設備の地震作用下のP[S≧EV|A=a]を計算し、式(4)中の第3項の電気性能故障確率P[S3≧EV|A=a]を取得する。
ステップ7:式(6)で設備の結合作用下の故障確率を計算する。
ステップ8:結合ループ中の設備故障による経済的損失を決定し、式(12)に従って結合ループ中のi番目の設備本体故障、接続導体故障および両者が同時に故障時の経済的損失を計算する。
ステップ9:式(13)および式(14)で結合ループの地震故障リスク指標R(A=a)および結合ループ設備の全体故障に対する寄与度Cを計算し、これまで結合ループでの地震リスク評価が完了する。
【0038】
上記の実施例は、本発明の技術的概念および特徴を具現化することのみを意図しており、当業者が本発明の内容を理解し実施できるために例示されて、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の精神に従ってなされた等価の変更または修正は、本発明の保護範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
図3