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特許7011682Massive MIMOの利用効率を向上させる制御装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特許-Massive  MIMOの利用効率を向上させる制御装置、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-Massive  MIMOの利用効率を向上させる制御装置、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-Massive  MIMOの利用効率を向上させる制御装置、制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-Massive  MIMOの利用効率を向上させる制御装置、制御方法、及びプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】Massive MIMOの利用効率を向上させる制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20220119BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220119BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20220119BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20220119BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H04W16/28 130
H04W72/04 130
H04W72/08
H04W72/04 150
H04B7/0413 300
H04B7/06 956
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020099590
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193775
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2020-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】高相 一輝
(72)【発明者】
【氏名】寺部 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】櫨 紗也子
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0296813(US,A1)
【文献】米国特許第10623070(US,B1)
【文献】National Instruments,Considerations on the Random-Access Procedure in Massive MIMO NR [online],3GPP TSG RAN WG2 adhoc_2017_01_NR R2-1700103,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_AHs/2017_01_NR/Docs/R2-1700103.zip>,2017年01月06日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04B 7/0413
H04B 7/06
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置のそれぞれにおける状況に関する情報を取得する取得手段と、
前記状況に関する情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれを、Massive MIMO(Multi Input Multi Output)を用いる第1の基地局装置に接続するか、Massive MIMOを用いない第2の基地局装置に接続するかを決定する決定手段と、
記複数の端末装置のうち前記第1の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第1の基地局装置に接続し、前記複数の端末装置のうち前記第2の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第2の基地局装置に接続するための制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれについての上りリンクの電界強度と下りリンクの電界強度との少なくともいずれかを示す情報を含み、
前記決定手段は、前記状況に関する情報によって示される電界強度が高い端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれについての下りリンクの送信対象データの量を示す情報を含み、
前記決定手段は、前記状況に関する情報によって示される送信対象データの量が多い端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれについての上りリンクの送信対象データの量を示す情報を含み、
前記決定手段は、前記状況に関する情報によって示される送信対象データの量が少ない端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれについて下りリンクで実行されている通信に関する情報を含み、
前記決定手段は、下りリンクで継続的に多くのデータ量の通信を実行していることが前記状況に関する情報によって示されている端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれについて上りリンクで実行されている通信に関する情報を含み、
前記決定手段は、上りリンクで継続的に少ないデータ量の通信を実行していることが前記状況に関する情報によって示されている端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれについて他の端末装置との間でのチャネルの相関を示す情報を含み、
前記決定手段は、前記チャネルの相関が所定値を超える2つの端末装置のうちの1つの端末装置を、前記第1の基地局装置に接続させ、当該2つの端末装置のうちの別の1つの端末装置を、前記第2の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれの位置の情報を含み、
前記決定手段は、前記複数の端末装置のそれぞれの位置に基づいて、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記複数の端末装置のそれぞれのMassive MIMOにおけるアンテナからの方向に基づいて、優先して前記第1の基地局装置に接続させる端末装置を決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記取得手段は、さらに、事前に定義された相互に相関が低い複数の地理的領域の情報を取得し、
前記決定手段は、前記複数の端末装置のそれぞれの位置が前記複数の地理的領域のうちのいずれに属するかに基づいて、優先して前記第1の基地局装置に接続させる端末装置を決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記取得手段は、さらに、前記複数の地理的領域のそれぞれについて、多くのデータが送受信される地理的領域を特定する情報を取得し、
前記決定手段は、多くのデータが送受信される地理的領域に属する端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれが移動しているか否かを示す情報を含み、
前記決定手段は、移動していない端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記取得手段は、前記複数の端末装置のそれぞれの位置の変化または前記複数の端末装置のそれぞれにおけるセンサにおける検出結果に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれが移動しているか否かを示す情報を取得する、ことを特徴とする請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記取得手段は、前記複数の端末装置のそれぞれにおける無線品質の変動に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれが移動しているか否かを示す情報を取得する、ことを特徴とする請求項12に記載の制御装置。
【請求項15】
前記状況に関する情報は、前記複数の端末装置のそれぞれが利用している通信サービスを特定する情報を含み、
前記決定手段は、所定の通信サービスを利用している端末装置を優先して前記第1の基地局装置に接続させるように、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記決定手段は、前記状況に関する情報に複数の要素が含まれる場合、当該複数の要素に対応する値に重み係数を乗じて加算した結果に基づいて、前記決定を行う、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項17】
前記第1の基地局装置に接続している端末装置が、前記第2の基地局装置に接続すると前記決定手段によって決定された場合に、前記制御手段は、当該端末装置をハンドオーバさせる、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項18】
制御装置によって実行される制御方法であって、
複数の端末装置のそれぞれにおける状況に関する情報を取得することと、
前記状況に関する情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれを、Massive MIMO(Multi Input Multi Output)を用いる第1の基地局装置に接続するか、Massive MIMOを用いない第2の基地局装置に接続するかを決定することと、
記複数の端末装置のうち前記第1の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第1の基地局装置に接続し、前記複数の端末装置のうち前記第2の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第2の基地局装置に接続するための制御を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
制御装置に備えられたコンピュータに、
複数の端末装置のそれぞれにおける状況に関する情報を取得させ、
前記状況に関する情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれを、Massive MIMO(Multi Input Multi Output)を用いる第1の基地局装置に接続するか、Massive MIMOを用いない第2の基地局装置に接続するかを決定させ、
記複数の端末装置のうち前記第1の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第1の基地局装置に接続し、前記複数の端末装置のうち前記第2の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第2の基地局装置に接続するための制御を行わせる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置に対するMassive MIMOの適用制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムにおいて、多数のアンテナを用いて空間リソースを積極的に使用することにより周波数利用効率を改善するMassive MIMO(Multi Input Multi Output)の適用が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、セルラ通信システムにおけるMassive MIMOの有効活用技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様による制御装置は、複数の端末装置のそれぞれにおける状況に関する情報を取得する取得手段と、前記状況に関する情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれを、Massive MIMO(Multi Input Multi Output)を用いる第1の基地局装置に接続するか、Massive MIMOを用いない第2の基地局装置に接続するかを決定する決定手段と、記複数の端末装置のうち前記第1の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第1の基地局装置に接続し、前記複数の端末装置のうち前記第2の基地局装置に接続すると決定された端末装置を前記第2の基地局装置に接続するための制御を行う制御手段と、を有する。

【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、セルラ通信システムにおいてMassive MIMOを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】制御装置の機能構成例を示す図である。
図4】制御装置によって実行される処理の流れの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組合せの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0008】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、Massive MIMOを適用可能な無線通信システムであり、Massive MIMOの実現のために、多数のアンテナ素子を含んだMassive MIMO用の基地局装置101が配置される。基地局装置101に含まれる多数のアンテナ素子によって指向性の高いビームが形成されることによって、1つ以上の端末装置103のそれぞれに対して高速大容量/無線品質が高品質な無線通信が提供可能となる。基地局装置101は、通信相手の端末装置103のそれぞれに向けてビームを形成して信号を送受信するように基地局装置101が有する多数のアンテナを制御する。
【0009】
なお、無線通信システムには、従来のセルラ通信システムにおける通常のアンテナを用いて通信を行う基地局装置102も含まれうる。基地局装置101は、例えば基地局装置102によって展開されるマクロセルの範囲内に配置され、マクロセルより小さい(ビームの形状によって範囲が可変な)セルを構成可能に構成される。なお、基地局装置101が構成するセルと基地局装置102が構成するセルとが共通の地理的範囲において無線通信サービスを提供可能な限りにおいて、例えば、基地局装置101が構成するセルの方が基地局装置102によって構成されるセルより広いエリアをカバーしてもよいし、基地局装置101が構成するセルと基地局装置102が構成するセルとが互いに部分的に重なるように構成されてもよい。すなわち、非Massive MIMOの通信システムとMassive MIMOの通信システムとが共通のエリアで共存して、端末装置に無線通信サービスを提供することができるように、各セルが構成される。なお、基地局装置101は、一般的な基地局装置が有するように、無線周波数(RF)における増幅やフィルタリングなどの処理や、ベースバンド処理などを実行可能な装置でありうるが、アンテナ機能のみを有するアンテナ装置であってもよく、例えば基地局装置102の内部装置などの外部に存在する装置によって、RFやベースバンドの処理などの信号処理が実行されてもよい。基地局装置101は、一例において、マクロセルよりカバーエリアが狭いセルを構成する基地局装置として取り扱われうる。端末装置は、このような基地局装置101と基地局装置102とのいずれかを介して所定のネットワークに接続することができる。換言すれば、端末装置は、Massive MIMOと非Massive MIMOのいずれかの形式で所定のネットワークと接続することができる。図1の例では、端末装置104が、基地局装置102に接続している状態を示している。
【0010】
ここで、基地局装置101および基地局装置102が端末装置からの情報を収集し、その情報を相互に通信して、端末装置をMassive MIMOと非Massive MIMOとのいずれの形式で所定のネットワークに接続させるかの制御を行ってもよい。また、制御装置が基地局装置101や基地局装置102に含まれる場合に、制御装置は、自装置が含まれる基地局装置101又は基地局装置102と通信する端末装置の情報のみを用いて制御を行ってもよい。また、基地局装置101および基地局装置102と別個に存在する制御装置が、基地局装置101および基地局装置102に接続させる端末装置を決定するなどの制御を行ってもよい。すなわち、基地局装置101および基地局装置102の上位装置として制御装置が存在してもよい。
【0011】
なお、図1の例では、非Massive MIMOの基地局装置が1つのみ、また、Massive MIMOのための基地局装置101が2つのみ示されているが、これは説明を簡単にするためのものであり、このような装置が一般に多数存在しうる。また、端末装置が5つのみ示されているが、当然に、これより多数の端末装置が存在しうる。
【0012】
Massive MIMOは、多数のアンテナを用いて複数の特定方向においてアンテナ利得を高めることによって、複数の相異なる位置に存在する端末装置と、同じ周波数リソースを共用して通信を行うことによって通信容量を高める技術である。一方で、Massive MIMOは、各端末装置と各アンテナとの間の無線チャネルの推定精度が不十分な場合には、十分な通信容量が得られなくなりうる。このため、例えばチャネル推定精度の高い端末装置を選択してMassive MIMOで通信サービスを提供することにより、Massive MIMOをより有効活用することができる。すなわち、多数存在する端末装置のうち、どの端末装置に対してMassive MIMOで通信を行い、どの端末装置に対して非Massive MIMOで通信を行うかを適切に設定することにより、システム全体としての周波数利用効率を向上させることが可能となる。このため、本実施形態では、複数の端末装置のそれぞれを、例えばチャネル推定精度に基づいて、Massive MIMOを用いて所定のネットワークに接続するか、Massive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続するかを決定する制御装置(図1において不図示)を用意する。制御装置は、上述のようなMassive MIMOの制御を行う装置であってもよいし、Massive MIMOと非Massive MIMOとの両方を制御する装置であってもよい。また、制御装置は、基地局装置102内に含まれてもよい。なお、チャネル推定精度は一例であり、制御装置は、端末装置の様々な状況に関する情報を取得して、その取得した情報に基づいて、各端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続するか否かを決定し、その決定に基づいて端末装置のそれぞれを所定のネットワークに接続させるための制御を実行しうる。なお、制御装置は、Massive MIMOでの通信をサポートしていない端末装置が存在する場合には、その端末装置についてはMassive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続させるように決定する。すなわち、制御装置は、Massive MIMOでの通信をサポートしている端末装置についてのみ、その状況を考慮して、その端末装置と所定のネットワークとの間の通信にMassive MIMOを用いるか否かを決定する。
【0013】
ここで、端末装置の状況に関する情報は、例えば、端末装置のそれぞれについての上りリンクの電界強度と下りリンクの電界強度とのいずれか、または上りリンク及び下りリンクの両方における電界強度を示す情報を含みうる。なお、上りリンクの電界強度は、各端末装置から送出された電波が、Massive MIMOのためのアンテナにおいて受信された際の受信強度に対応する。また、下りリンクの電界強度は、Massive MIMOのためのアンテナのそれぞれから送出された電波が、各端末装置において受信された際の受信強度に対応する。この場合、制御装置は、評価対象のリンク(上りリンクと下りリンクとの少なくともいずれか)についての電界強度が高い端末装置を優先的にMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定する。電界強度が高い場合にはチャネル推定値を高精度化することが可能である確率が高く、このため、電界強度の高い端末装置を優先的にMassive MIMOで所定のネットワークに接続すると決定することにより、Massive MIMOの利用効率を向上させることが可能となる。
【0014】
また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれについての下りリンクの送信対象データの量を示す情報を含みうる。そして、制御装置は、その情報によって示される送信対象データの量が多い端末装置を、優先してMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定しうる。また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれについての上りリンクの送信対象データの量を示す情報を含みうる。そして、制御装置は、その情報によって示される送信対象データの量が少ない端末装置を、優先してMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定しうる。また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれについて下りリンクで実行されている通信に関する情報を含みうる。この場合、制御装置は、下りリンクで継続的に多くのデータ量の通信を実行している端末装置を優先してMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定しうる。また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれについて上りリンクで実行されている通信に関する情報を含みうる。この場合、制御装置は、上りリンクで継続的に少ないデータ量の通信を実行している端末装置を優先してMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定する。
【0015】
Massive MIMOは、一例において、時分割複信(TDD)システムにおいて、上りリンクの無線チャネルと下りリンクの無線チャネルとの双対性に基づいて、ネットワーク側が、上りリンクの信号を受信することによって、下りリンクの無線チャネルを推定するように構成されうる。このとき、TDDでは、上りリンクで伝送されるデータ量と下りリンクで伝送されるデータ量との比に応じて、上りリンク通信用のタイムスロットと下りリンク通信用のタイムスロットとの比率を適応可能に構成される。このとき、一般的には、下りリンク通信用のタイムスロットの量が、上りリンク通信用のタイムスロットの量より多い傾向がある。このため、上りリンクの通信量が多いか、下りリンクの通信量が少ないかの少なくともいずれかの端末装置がMassive MIMOで通信を行うようにすると、無線リソース量を十分に有効活用することができないことが想定されうる。このため、本実施形態の制御装置は、下りリンクの通信量が多いか、上りリンクの通信量が少ないかの少なくともいずれかであることが想定される端末装置がMassive MIMOで通信を行うように決定しうる。なお、制御装置は、例えば、それぞれの端末装置との間で送受信されるべきデータの量(例えば下りリンク/上りリンクのデータバッファ量)や、それぞれの端末装置が利用しているサービスに基づいて、実行されるべき上りリンク/下りリンクの通信の量を特定することが可能なように構成されうる。そして、制御装置は、この特定した情報に基づいて、上述のようにして、各端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続するか否かを決定することができる。
【0016】
また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれについて他の端末装置との間でのチャネルの相関を示す情報を含みうる。チャネルの相関の情報は、例えば、各端末装置が基地局装置に送信する、各端末装置と基地局装置との間のチャネル情報に基づいて計算される。この場合、制御装置は、チャネルの相関が所定値を超える2つの端末装置のうちの1つの端末装置を、Massive MIMOを用いて所定のネットワークに接続させ、その2つの端末装置のうちの別の1つの端末装置を、Massive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続させると決定しうる。チャネルの相関が高い2つ以上の端末装置の両方に対してMassive MIMOを適用すると、それらの端末装置の信号を空間的に分離することが容易でなくなり、双方の通信品質が劣化してしまいうるからである。なお、制御装置は、これらの2つの端末装置の両方を、Massive MIMOを適用しないと決定してもよい。
【0017】
また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれの位置の情報を含みうる。この場合、制御装置は、端末装置のそれぞれの位置に基づいて、その端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるか否かを決定しうる。例えば、制御装置は、相互に近い位置に存在する2つの端末装置のうちの1つの端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続させ、その2つの端末装置のうちの別の1つの端末装置を、Massive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続させると決定しうる。なお、制御装置は、これらの2つの端末装置の両方に対してMassive MIMOを適用しないと決定してもよい。端末装置の位置が近い場合、アンテナによってそれらの端末装置のための信号を空間的に分離することが困難となることが想定されるからである。なお、位置の情報の一態様として、上述のチャネルの相関を示す情報が用いられてもよい。また、位置情報は、例えば各端末装置のGPS(Global Positioning System)装置による測位結果によって特定されてもよいし、Massive MIMOで用いられている各アンテナからの各端末装置の方向によって特定されてもよい。制御装置は、例えば、各端末装置において測定された位置情報を取得し、その位置情報から各アンテナから見た各端末装置の方向を特定しうる。そして、制御装置は、アンテナから見た方向が一致する又は所定の狭い範囲に含まれる2つの端末装置について、その一方のみがMassive MIMOで所定のネットワークに接続するように制御を行う。なお、アンテナから見た方向が一致する又は所定の狭い範囲に含まれる2つの端末装置の両方についてMassive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続すると決定されてもよい。
【0018】
また、制御装置は、相互に相関が低い複数の地理的領域を事前に定義しておいてもよい。例えば、2つの端末装置のチャネル相関が所定レベルより低くなる地理的関係を事前に特定し、その特定結果に応じて、複数の地理的領域が事前に設定されうる。この場合、制御装置は、それぞれ相異なる地理的領域に属する2つの端末装置についてチャネル相関が低いとみなすことができる。そして、制御装置は、1つの地理的領域に複数の端末装置が存在する場合は、その複数の端末装置のうちの最大で1つの端末装置を、Massive MIMOで所定のネットワークに接続するように決定しうる。制御装置は、さらに、複数の地理的領域のそれぞれについて、多くのデータが送受信される地理的領域を特定する情報を取得してもよい。そして、制御装置は、多くのデータが送受信される地理的領域に属する端末装置を優先してMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定してもよい。
【0019】
なお、端末装置の地理的な位置に基づいて、Massive MIMOで所定のネットワークに接続するか否かを決定する場合、制御装置は、Massive MIMOで所定のネットワークに接続している、又は所定のネットワークに接続しようとしている端末装置の中から2つの端末装置の組合せを抽出し、その全ての組合せについて、チャネル相関や位置関係を特定して上述の決定を実行しうる。
【0020】
また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれが移動しているか否かを示す情報を含みうる。例えば、制御装置は、端末装置の位置情報の変化を監視して、端末装置のそれぞれが移動しているか否かを特定しうる。また、制御装置は、端末装置のそれぞれにおけるセンサ(例えばジャイロセンサや加速度センサなど)における検出結果を取得することにより、端末装置が移動しているか否かを特定してもよい。また、制御装置は、端末装置のそれぞれにおける無線品質の変動に基づいて、その端末装置が移動しているか否かを特定してもよい。そして、制御装置は、移動していない端末装置や単位時間当たりの移動量が少ない端末装置を優先してMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるように決定しうる。
【0021】
また、端末装置の状況に関する情報は、端末装置のそれぞれが利用している通信サービスを特定する情報を含んでもよい。この場合、制御装置は、所定の通信サービスを利用している端末装置を優先してMassive MIMOを用いて所定のネットワークに接続させるように決定しうる。これにより、優先的にMassive MIMOが適用されるべきサービスを実行中の端末装置を、Massive MIMOで所定のネットワークに接続させることが可能となる。
【0022】
なお、上述の様々な情報は、組み合されて用いられうる。例えば、上述の各指標を要素として、複数の要素を含んだ情報が端末装置の状況に関する情報として用いられうる。この場合、これらの複数の要素のそれぞれに対応する値に重み係数を乗じて加算した結果の値に応じて、各端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるか否かが決定されうる。例えば、Massive MIMOで所定のネットワークに接続させる優先度が高いほど高くなる値が各要素に対応する値として用いられ、かつ、正の重み係数が適用される場合、その加重加算の結果の値が大きい端末装置ほど、優先的にMassive MIMOで所定のネットワークに接続すべきと判定されうる。なお、重み係数は、環境に応じて設定されてもよい。例えば、鉄道の線路がMassive MIMOのサービスエリア内に含まれる場合、移動性の要素に対応する値が結果に強く影響するように、重み係数が調整されうる。また、例えば、イベント会場等のユーザが密集することが想定されるエリアがMassive MIMOのサービスエリア内に含まれる場合、チャネル相関等の位置関係の要素に対応する値が結果に強く影響するように、重み係数が調整されうる。
【0023】
なお、所定のネットワークに接続して通信中の端末装置のそれぞれについて、上述の決定を繰り返し実行しうる。これにより、制御装置は、例えば、Massive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続している端末装置を、Massive MIMOで所定のネットワークに接続するようにハンドオーバを実行させることができる。同様に、制御装置は、例えば、Massive MIMOで所定のネットワークに接続している端末装置を、Massive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続するようにハンドオーバを実行させることができる。
【0024】
(装置の構成)
続いて、上述のような処理を実行する制御装置のハードウェア構成例について図2を用いて説明する。制御装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、制御装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、制御装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、有線通信又は無線通信用の回路によって構成される。通信回路205は、例えば、Massive MIMOのアンテナを介した端末装置との通信のためのベースバンド回路及びRF回路等を含んで構成される。また、通信回路205は、例えば、他の制御装置やMassive MIMOを用いない基地局装置などのネットワークノードとの(有線または無線)通信を行うための回路を含んでもよい。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、制御装置は、複数の通信回路を有しうる。
【0025】
図3に、制御装置の機能構成例を示す。制御装置は、例えば、情報取得部301、Massive MIMO接続端末決定部302、及び、接続制御部303を含んで構成される。なお、これらの機能部は、例えばプロセッサ201が、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することによって実現されうる。ただし、これは一例であり、これらの機能部を実現する専用のハードウェアが用意されてもよい。
【0026】
情報取得部301は、例えば通信事業者のネットワークなどの所定のネットワークに接続させるべき1つ以上の端末装置のそれぞれにおける状況に関する情報を取得する。なお、情報取得部301は、Massive MIMOでの通信をサポートしている端末装置についてのみ、状況に関する情報を取得してもよい。すなわち、Massive MIMOでの通信をサポートしていない端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続させることはないため、情報取得部301は、そのような端末装置についての状況に関する情報を取得しなくてもよい。状況に関する情報は、上述の各例のような1つ以上の要素を含みうる。なお、各要素については上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。なお、情報取得部301は、各端末装置の位置の情報(例えば端末装置による測位結果の情報)に基づいて各端末装置が移動しているか否かの情報を生成して取得しうる。また、各端末装置が実行中の通信サービスに基づいて、上りリンクや下りリンクにおいて継続的な通信が行われるか否か、及び、その際のデータ量を特定しうる。このように、情報取得部301は、外部から情報を取得するのみならず、保有している情報に基づいて、別の情報要素を内部的に取得してもよい。
【0027】
Massive MIMO接続端末決定部302は、情報取得部301が取得した端末装置のそれぞれについての状況に関する情報に基づいて、その端末装置のそれぞれを、Massive MIMOで所定のネットワークに接続させるか、Massive MIMOを用いずにその所定のネットワークに接続させるかを決定する。どのような端末装置を優先的にMassive MIMOでネットワークに接続させるかについては上述の通りであるため、ここでの説明については省略する。なお、Massive MIMO接続端末決定部302は、端末装置の状況に関する情報が複数の要素を含むときは、上述のように、各要素に対応する値を加重加算した結果の値に基づいて、各端末装置をMassive MIMOで所定のネットワークに接続させるか否かを決定しうる。このとき、Massive MIMO接続端末決定部302は、例えばユーザが密集するようなイベントが存在するか、鉄道の線路や交通量の多い道路がMassive MIMOのサービスエリア内に含まれているかなどに基づいて、加重加算に用いる重み係数を調整することができる。なお、イベントが存在するか否かの情報や線路や道路の情報は、例えば情報取得部301によって取得されうる。
【0028】
接続制御部303は、Massive MIMO接続端末決定部302による決定に基づいて、端末装置のそれぞれを所定のネットワークに接続させる。すなわち、接続制御部303は、Massive MIMOで所定のネットワークに接続させると決定した端末装置に対して、Massive MIMOに接続するためのメッセージの送信等の処理を行いうる。同様に、接続制御部303は、Massive MIMOを用いずに所定のネットワークに接続させると決定した端末装置に対して、Massive MIMOを用いない基地局装置に接続するためのメッセージの送信等の処理を行いうる。
【0029】
なお、情報取得部301は、各端末装置が通信中にも定期的に情報を取得し、Massive MIMO接続端末決定部302は、その情報に基づいて、各端末装置にMassive MIMOを適用するか否かを継続的に決定しうる。そして、接続制御部303は、その決定に基づいて、例えばMassive MIMOで所定のネットワークに接続させている端末装置を、Massive MIMOを用いない基地局装置にハンドオーバさせ、また、Massive MIMOを用いない基地局装置に接続されている端末装置をMassive MIMO側にハンドオーバさせるための制御を実行しうる。すなわち、端末装置は、状況に応じて、接続制御部303の制御に基づいて、Massive MIMOを用いる状態と、Massive MIMOを用いない状態との間での状態遷移を実行しうる。
【0030】
(処理の流れ)
続いて、図4を用いて、制御装置によって実行される処理の流れの例について概説する。なお、各処理ステップにおける詳細な処理については、上述の通りであるため、ここでの説明については省略する。まず、制御装置は、通信事業者のネットワーク等の所定のネットワークに接続させるべき(及び接続中の)端末装置のそれぞれについて、その端末装置の状況に関する情報を取得する(S401)。そして、制御装置は、取得した情報に基づいて、各端末装置を、Massive MIMOでネットワークに接続させるか否かを決定し(S402)、その決定に基づいて、各端末装置の接続制御を実行する(S403)。
【0031】
このようにして、各端末装置の状況に応じて、Massive MIMOでネットワークに接続させるか否かを決定し、Massive MIMOに接続する端末装置を選択する。そして、例えばMassive MIMOを適用することによってMassive MIMOの通信効率を劣化させるような端末装置については、Massive MIMOを用いない基地局装置等に接続させる。これにより、セルラ通信システムにおいてMassive MIMOを有効活用し、無線通信システム全体の効率を向上させることができる。
【0032】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
図1
図2
図3
図4