(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】鉄道車両のトイレバックアップシステム
(51)【国際特許分類】
B61D 35/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
B61D35/00 A
(21)【出願番号】P 2020157377
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2020-09-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 順子
(72)【発明者】
【氏名】田中 修司
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 良雄
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木村 晋也
(72)【発明者】
【氏名】塩田 嶺明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 修
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6338969(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力及び圧縮空気によって作動
し、通常時にトイレ電源から電力供給を受けるトイレユニットと、
停電時に電力を供給するためのサブバッテリと、
通常時に通常電源から電力が供給され、圧縮空気を生成する通常空気圧縮機と、
前記通常空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための通常エア通路と、
通常時には電力供給されず、停電時に前記サブバッテリから電力が供給され、圧縮空気を生成するトイレ用空気圧縮機と、
前記トイレ用空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための補助エア通路と、
前記トイレユニットに供給するための圧縮空気のエア通路を、前記通常エア通路または前記補助エア通路のいずれかに切り替える切替装置と、
停電時に操作される切替操作スイッチと、
前記トイレユニットに供給するための電力供給源を、
前記トイレ電源と前記サブバッテリとの間で切り替え可能であるとともに、停電時に前記切替操作スイッチが操作されると、前記サブバッテリと前記トイレ用空気圧縮機との間の電気回路を接続する電源切替回路と、
停電時に前記トイレユニット及び前記トイレ用空気圧縮機とは異なる機器に電力を供給するメインバッテリと、を備え
、
前記電源切替回路は、前記通常時及び前記停電時の何れの状態でも、前記トイレ用空気圧縮機に対して前記メインバッテリを電気的に分離している、鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項2】
前記メインバッテリからの電力によって駆動してパンタグラフを動作させる圧縮空気を生成する補助空気圧縮機を更に備え、
前記補助空気圧縮機は、前記切替操作スイッチの操作に拘らず、前記トイレユニットに対して流体的に分離されている、請求項
1に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項3】
電力及び圧縮空気によって作動するトイレユニットと、
停電時に電力を供給するためのサブバッテリと、
通常時に通常電源から電力が供給され、圧縮空気を生成する通常空気圧縮機と、
前記通常空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための通常エア通路と、
通常時には電力供給されず、停電時に前記サブバッテリから電力が供給され、圧縮空気を生成するトイレ用空気圧縮機と、
前記トイレ用空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための補助エア通路と、
前記トイレユニットに供給するための圧縮空気のエア通路を、前記通常エア通路または前記補助エア通路のいずれかに切り替える切替装置と、
停電時に操作される切替操作スイッチと、
前記トイレユニットに供給するための電力供給源を、トイレ電源と前記サブバッテリとの間で切り替え可能であるとともに、停電時に前記切替操作スイッチが操作されると、前記サブバッテリと前記トイレ用空気圧縮機との間の電気回路を接続する電源切替回路と、を備え、
前記切替装置は、電磁弁であり、
停電時に前記切替操作スイッチが操作されると、前記電源切替回路が、前記トイレユニットに供給するための電力供給源を、前記トイレ電源と前記サブバッテリとの間で切り替えて、前記サブバッテリと前記トイレ用空気圧縮機との間の電気回路を接続し、かつ前記電磁弁を動作させて、前記トイレユニットに圧縮空気を供給するエア通路を前記通常エア通路から前記補助エア通路に切り替える
、鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項4】
電力及び圧縮空気によって作動するトイレユニットと、
停電時に電力を供給するためのサブバッテリと、
通常時に通常電源から電力が供給され、圧縮空気を生成する通常空気圧縮機と、
前記通常空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための通常エア通路と、
通常時には電力供給されず、停電時に前記サブバッテリから電力が供給され、圧縮空気を生成するトイレ用空気圧縮機と、
前記トイレ用空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための補助エア通路と、
前記トイレユニットに供給するための圧縮空気のエア通路を、前記通常エア通路または前記補助エア通路のいずれかに切り替える切替装置と、
停電時に操作される切替操作スイッチと、
前記トイレユニットに供給するための電力供給源を、トイレ電源と前記サブバッテリとの間で切り替え可能であるとともに、停電時に前記切替操作スイッチが操作されると、前記サブバッテリと前記トイレ用空気圧縮機との間の電気回路を接続する電源切替回路と、
前記補助エア通路に配置され、前記補助エア通路の圧縮空気の圧力が閾値未満であるか否かを検知する圧力検知器
と、を備えた鉄道車両であって、
前記電源切替回路は、前記圧力検知器によって前記圧縮空気の圧力が前記閾値未満であることが検知されると、前記サブバッテリと前記トイレ用空気圧縮機との間の電気回路を接続する起動回路を有し、
前記鉄道車両は、複数の車両が互いに連結されてなり、
前記圧力検知器及び前記起動回路は、前記トイレ用空気圧縮機が搭載された車両と同一の車両に搭載され
る、鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項5】
電力及び圧縮空気によって作動するトイレユニットと、
停電時に電力を供給するためのサブバッテリと、
通常時に通常電源から電力が供給され、圧縮空気を生成する通常空気圧縮機と、
前記通常空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための通常エア通路と、
通常時には電力供給されず、停電時に前記サブバッテリから電力が供給され、圧縮空気を生成するトイレ用空気圧縮機と、
前記トイレ用空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための補助エア通路と、
前記トイレユニットに供給するための圧縮空気のエア通路を、前記通常エア通路または前記補助エア通路のいずれかに切り替える切替装置と、
停電時に操作される切替操作スイッチと、
前記トイレユニットに供給するための電力供給源を、トイレ電源と前記サブバッテリとの間で切り替え可能であるとともに、停電時に前記切替操作スイッチが操作されると、前記サブバッテリと前記トイレ用空気圧縮機との間の電気回路を接続する電源切替回路と、を備えた鉄道車両であって、
前記補助エア通路は、前記通常エア通路に合流接続され、
前記切替装置は、前記通常エア通路において前記補助エア通路が合流する合流点よりも上流側に配置され、
前記通常エア通路は、幹線エア通路と、前記幹線エア通路を前記トイレユニットに接続する支線エア通路と、を含み、
前記切替装置は、前記幹線エア通路に配置され、
前記合流点は、前記鉄道車両の車体の床上空間において前記支線エア通路に配置される
、鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項6】
前記トイレユニットは、同一車両に搭載された第1トイレユニット及び第2トイレユニットを含み、
前記支線エア通路は、前記幹線エア通路を前記第1トイレユニットに接続する第1支線エア通路と、前記幹線エア通路を前記第2トイレユニットに接続する第2支線エア通路と、を含み、
前記合流点は、前記鉄道車両の車体の床上空間において前記第1支線エア通路に配置される、請求項
5に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項7】
前記切替操作スイッチは、停電時から通常時への復旧時に操作されることによって、前記トイレユニットへの電力の供給源を、前記サブバッテリから前記トイレ電源に切り替える、請求項1
乃至6のいずれか1項に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項8】
前記鉄道車両は、複数の車両が互いに連結されてなり、
前記トイレ用空気圧縮機及び前記補助エア通路は、前記トイレユニットが搭載された車両と同一の車両に搭載される、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項9】
停電時に前記トイレユニット及び前記トイレ用空気圧縮機とは異なる機器に電力を供給するメインバッテリと、
前記メインバッテリからの電力によって駆動してパンタグラフを動作させる圧縮空気を生成する補助空気圧縮機
と、を更に備え、
前記電源切替回路は、前記通常時及び前記停電時の何れの状態でも、前記トイレ用空気圧縮機に対して前記メインバッテリを電気的に分離しており、
前記補助空気圧縮機は、前記切替操作スイッチの操作に拘らず、前記トイレユニットに対して流体的に分離されている、請求項
3乃至8のいずれか1項に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項10】
前記電源切替回路は、通常時に前記メインバッテリと前記サブバッテリとを互いに電気的に接続する一方で、停電時に前記切替操作スイッチが操作されると、前記メインバッテリと前記サブバッテリとを互いに電気的に分離するように構成されている、請求項
1、2又は9に記載のトイレバックアップシステム。
【請求項11】
前記トイレ用空気圧縮機は、前記鉄道車両の車体内に配置される、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項12】
前記トイレ用空気圧縮機は、前記車体の側構体と前記トイレユニットの間の隙間に配置される、請求項
11に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項13】
電力によって作動して水を前記トイレユニットに供給する水揚装置を更に備える、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【請求項14】
前記トイレユニットは、
便器と、
前記水揚装置から供給された水を前記便器に供給するために貯留する給水加圧タンクと、
前記通常エア通路及び前記補助エア通路から供給される圧縮空気の圧力を調節し、当該圧縮空気を前記給水加圧タンクに供給するレギュレータと、
空気圧によって作動して前記便器から汚物タンクに向けた流路を開閉するフラッパ弁と、を有する、請求項13に記載の鉄道車両のトイレバックアップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のトイレバックアップシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、電気及び圧縮空気によって作動するトイレユニットを備えたものがある。特許文献1には、停電時でもトイレユニット(汚物処理装置)を作動可能にするバックアップシステムが開示されている。このシステムでは、通常時は、通常エア通路から圧縮空気をトイレユニットに供給し、停電時には補助電動空気圧縮機から補助エア通路を介してトイレユニットに圧縮空気を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助電動空気圧縮機は、車両の電源投入時等にパンタグラフを上昇させたり、真空遮断器を動作させたりするための圧縮空気を生成する。特許文献1のバックアップシステムでは、本来、パンタグラフの上昇に使うための補助電動空気圧縮機からの圧縮空気を、停電時にはトイレユニットにも供給する。しかし、補助電動空気圧縮機は、通常パンタグラフが搭載された車両に搭載され、他方、トイレユニットは、パンタグラフが搭載されていない車両に搭載される場合がある。その場合、補助電動空気圧縮機からトイレユニットまでの空気配管は車両間を亘って設けられることになり、経路も長くなることから、圧縮空気をトイレユニットに確実に供給できるように、空気漏れが生じないような配管構成が求められる。
【0005】
さらに、特許文献1のバックアップシステムは、トイレユニットへの圧縮空気の供給路を通常エア通路から補助エア通路に切り替えるために、トイレユニットが搭載された車両に三方弁が設けられ、補助電動空気圧縮機が搭載された車両にも別の三方弁が設けられる。乗務員は、停電時にはこの2つの三方弁を手動で操作せねばならず、停電復旧時にもこの2つの三方弁を手動で元に戻さねばならない。
【0006】
そこで本発明は、空気回路及び電源回路を複雑にすることなく、乗務員の作業負担を軽減した鉄道車両のトイレバックアップシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る鉄道車両のトイレバックアップシステムは、電力及び圧縮空気によって作動するトイレユニットと、停電時に電力を供給するためのサブバッテリと、通常時に通常電源から電力が供給され、圧縮空気を生成する通常空気圧縮機と、前記通常空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための通常エア通路と、前記サブバッテリから電力が供給され、圧縮空気を生成するトイレ用空気圧縮機と、前記トイレ用空気圧縮機からの圧縮空気を前記トイレユニットに供給するための補助エア通路と、前記トイレユニットに供給するための圧縮空気のエア通路を、前記通常エア通路または前記補助エア通路のいずれかに切り替える切替装置と、前記トイレユニット及び前記トイレ用空気圧縮機に供給するための電力供給源を、トイレ電源と前記サブバッテリとの間で切り替える電源切替回路と、停電時に操作されることによって、前記電源切替回路を動作させ、前記トイレユニット及び前記トイレ用空気圧縮機への電力の供給源を前記トイレ電源から前記サブバッテリに切り替える切替操作スイッチと、を備える。
【0008】
前記構成によれば、停電時に切替操作スイッチを操作すれば、トイレユニット及びトイレ用空気圧縮機への電力供給源がサブバッテリに切り替えられる。よって、空気回路及び電源回路を複雑にすることなく、乗務員の作業負担を軽減した鉄道車両のトイレバックアップシステムを提供できる。
【0009】
本発明の他態様に係る鉄道車両のトイレバックアップシステムは、複数の車両が互いに連結された編成車両におけるトイレバックアップシステムであって、電力及び圧縮空気によって作動するトイレユニットと、通常エア通路を介して前記トイレユニットに供給するための圧縮空気を生成する通常空気圧縮機と、補助エア通路を介して前記トイレユニットに供給するための圧縮空気を生成するトイレ用空気圧縮機と、を備え、前記トイレ用空気圧縮機及び前記補助エア通路は、前記トイレユニットが搭載された車両と同一の車両に搭載される。
【0010】
前記構成によれば、トイレ用空気圧縮機、補助エア通路及びトイレユニットが同一車両内で完結するため、隣接車両間に跨る配管を不要にできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気回路及び電源回路を複雑にすることなく、乗務員の作業負担を軽減した鉄道車両のトイレバックアップシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るトイレバックアップシステムを備えた鉄道車両の車両長手方向から見た断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すトイレユニット等のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すトイレバックアップシステムのエア切替回路における通常時状態の回路図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すトイレバックアップシステムの電源切替回路における通常時状態の回路図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す電源切替回路における停電直後の状態の回路図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す電源切替回路における停電時に切替操作スイッチが操作された非常時状態の回路図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す電源切替回路における圧力検知器の検知状態の回路図である。
【
図8】
図8は、
図3に示すエア切替回路における非常時状態の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0014】
[鉄道車両]
図1は、実施形態に係るトイレバックアップシステム10を備えた鉄道車両1の車両長手方向から見た断面図である。なお、鉄道車両1が走行する方向を車両長手方向(前後方向)と定義し、それに直交する横方向を車幅方向(左右方向)と定義する。鉄道車両1は、複数の車両5が互いに連結されてなる編成車両である。
図1に示すように、複数の車両5の各々は、車体2と、二次サスペンション4(例えば、空気バネ)を介して車体2を下方から支持する台車3とを有する。
【0015】
車体2は、台枠2aと、台枠2aの車幅方向両端から上方に突出した一対の側構体2bと、一対の側構体2bの上端に接続された屋根構体2cとを備える。台車3は、台車枠3aと、輪軸3bと、輪軸3bを回転自在に支持する軸箱3cと、台車枠3aと軸箱3cとの間に介設された一次サスペンション3d(例えば、コイルバネ)とを備える。
【0016】
車体2内には、電力及び圧縮空気によって作動する第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7が配置されている。即ち、第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7は、同一車両5に搭載されている。例えば、第1トイレユニット6は車体2の車幅方向一方側に配置され、第2トイレユニット7は車体2の車幅方向他方側に配置される。第1トイレユニット6と第2トイレユニット7との間には乗員空間S(通路)が設けられている。第1トイレユニット6と側構体2bとの間には隙間Gが設けられている。なお、第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7は、車体2における車幅方向の同じ側において車両長手方向に並んで配置されてもよい。また、同一車両5内にトイレユニットを1つのみ設ける構成としてもよい。
【0017】
[トイレバックアップシステム概要]
鉄道車両1には、停電時に第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7を作動させるためのトイレバックアップシステム10が搭載されている。トイレバックアップシステム10は、後述するようにエア切替回路11(
図3参照)及び電源切替回路12(
図4参照)を備える。トイレバックアップシステム10は、後述するトイレ用空気圧縮機23及びトイレ用エアタンク27を有する。トイレ用空気圧縮機23及びトイレ用エアタンク27は、車体2内に配置されている。
【0018】
具体的には、トイレ用空気圧縮機23及びトイレ用エアタンク27は、第1トイレユニット6と側構体2bとの間の隙間Gに配置されている。トイレ用空気圧縮機23及びトイレ用エアタンク27は、例えば、互いに上下方向に並べて配置されている。なお、
図1では、トイレ用空気圧縮機23がトイレ用エアタンク27の上側に配置されているが、トイレ用空気圧縮機23がトイレ用エアタンク27の下側に配置されるように互いの上下配置関係を逆転させてもよい。或いは、トイレ用空気圧縮機23及びトイレ用エアタンク27は、互いに車両長手方向に並べて配置されてもよい。また、トイレ用空気圧縮機23及びトイレ用エアタンク27は、他の場所(例えば、ゴミ箱の裏や荷物置き場等)に配置されてもよい。
【0019】
[トイレユニット]
図2は、
図1に示すトイレユニット6,7等のブロック図である。なお、第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7の基本的な構造は互いに略同一であるため、第1トイレユニット6について代表して説明する。
図2に示すように、トイレユニット6は、清水空圧式であり、真空吸引式とは異なり必要な圧縮空気を少なくすることができ、機器構成も簡素化できる。具体的には、トイレユニット6は、便器6a、フラッパ弁6b、給水加圧タンク6c、レギュレータ6d及び手洗い装置6eを備える。フラッパ弁6bは、電磁弁によって制御される空気圧によって作動し、便器6aから汚物タンク8に向けた流路を開閉する。
【0020】
給水加圧タンク6cは、洗浄時に便器6aに水及び圧縮空気を供給するために水揚装置9から供給された水を貯留する。水揚装置9は、電力によって作動するポンプを有する。レギュレータ6dは、後述する通常エア通路22及び補助エア通路24から供給される圧縮空気の圧力を調節し、便器6aの洗浄時に給水加圧タンク6cに圧縮空気を供給する。即ち、トイレユニット6の作動には、フラッパ弁6b用の電磁弁及び水揚装置9に対する電力の供給と、フラッパ弁6b及びレギュレータ6dに対する圧縮空気の供給とを必要とする。なお、トイレユニット6,7は、清水空圧式とする代わりに、真空吸引式としてもよい。
【0021】
[エア切替回路(通常時状態)]
図3は、
図1に示すトイレバックアップシステム10のエア切替回路11における通常時状態の回路図である。
図3に示すように、エア切替回路11は、通常エア通路22、トイレ用空気圧縮機23、トイレ用エアタンク27、補助エア通路24、電磁弁25(切替装置)、逆止弁28及び圧力検知器26を備える。トイレ用空気圧縮機23、トイレ用エアタンク27、補助エア通路24、電磁弁25、逆止弁28及び圧力検知器26は、第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7が搭載された車両5と同一の車両5に搭載されている。トイレ用空気圧縮機23、トイレ用エアタンク27、補助エア通路24、逆止弁28及び圧力検知器26は、車体2の床上空間(即ち、車内空間)に配置され、電磁弁25は、車体2の床下空間(即ち、車外空間)に配置されている。
【0022】
通常エア通路22は、通常空気圧縮機21(
図4参照)からの圧縮空気を第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7に供給するように構成されている。具体的には、通常エア通路22は、幹線エア通路22a、第1支線エア通路22b及び第2支線エア通路22cを有する。幹線エア通路22aは、通常空気圧縮機21(
図4参照)に接続されている。第1支線エア通路22bは、幹線エア通路22aから分岐し、幹線エア通路22aを第1トイレユニット6(のレギュレータ6d)に接続する。第2支線エア通路22cは、第1支線エア通路22bに対して並列的に幹線エア通路22aから分岐し、幹線エア通路22aを第2トイレユニット7に接続する。幹線エア通路22aに対する第1支線エア通路22b及び第2支線エア通路22cの分岐点P1は、車体2の床下空間に配置されている。
【0023】
トイレ用空気圧縮機23は、停電時にトイレユニット6,7を作動させるための圧縮空気を生成し、生成された圧縮空気はトイレ用エアタンク27に蓄えられる。補助エア通路24は、トイレ用エアタンク27から第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7に圧縮空気を供給するように構成されている。
【0024】
補助エア通路24は、通常エア通路22に合流している。具体的には、補助エア通路24は、トイレ用エアタンク27を通常エア通路22の第1支線エア通路22bに接続している。通常エア通路22に対する補助エア通路24の合流点P2は、車体2の床上空間において第1支線エア通路22bの途中に配置されている。なお、合流点P2は、車体2の床下空間に配置されてもよい。
【0025】
電磁弁25は、通常エア通路22から第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7へのエア供給を遮断可能なノーマルオープン型の電磁弁である。なお、電磁弁25は、ノーマルオープン型でなくてもよい。具体的には、電磁弁25は、通常エア通路22における補助エア通路24が合流する合流点P2よりも上流側(通常空気圧縮機21側)にある幹線エア通路22aに配置される。なお、切替装置として電磁弁25を用いる代わりに、切替装置として手動切替弁を用いてもよい。逆止弁28は、補助エア通路24に配置されている。逆止弁28は、通常エア通路22から補助エア通路24に向けた流れを遮断し、且つ、補助エア通路24から通常エア通路22(の第1支線エア通路22b)に向けた流れを許容する。なお、逆止弁28は、無くしてもよい。また、電磁弁25の代わりに、電磁的に駆動可能な三方弁を合流点Pに配置してもよい。
【0026】
電磁弁25は、通常時状態と非常時状態との間で動作するように構成されている。通常時状態の電磁弁25は、通常エア通路22から第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7に向けた流れを許容する。非常時状態の電磁弁25は、通常エア通路22から第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7に向けた流れを遮断して且つ補助エア通路24から第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7に向けた流れを許容する。具体的には、電磁弁25は、通常時状態では開状態となり、非常時状態では閉状態となる。
【0027】
圧力検知器26は、補助エア通路24に配置されている。圧力検知器26は、補助エア通路24の圧縮空気の圧力が所定の閾値未満であるか否かを検知する。圧力検知器26は、例えば、圧力スイッチであり、補助エア通路24の圧縮空気の圧力が閾値以上であるとオフ状態になり、補助エア通路24の圧縮空気の圧力が閾値未満であるとオン状態になる。圧力検知器26がオン状態になるとトイレ用空気圧縮機23が起動する。
【0028】
[電源切替回路(通常時状態)]
図4は、
図1に示すトイレバックアップシステム10の電源切替回路12における通常時状態の回路図である。なお、
図4では簡略化のため、第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7のうち一方のトイレユニット6のみを図示しているが、他方のトイレユニット7も一方のトイレユニット6と同条件である。
図4に示すように、電源切替回路12には、通常空気圧縮機21、通常電源31、水揚装置9、補助空気圧縮機32、メインバッテリ33、トイレ電源35、サブバッテリ34、トイレユニット6、トイレ用空気圧縮機23等が接続されている。電源切替回路12は、導線40~49、接点50~54、コイル60,61、切替操作スイッチ70、インバータ71、電磁弁25、圧力検知器26及び起動回路72を備える。
【0029】
通常電源31は、交流電源である。通常電源31は、導線40を介して通常空気圧縮機21に接続されていると共に、導線41を介して水揚装置9に接続されている。導線41には、接点50が配置されている。通常空気圧縮機21及び水揚装置9は、交流で駆動されるように構成されている。
【0030】
メインバッテリ33は、停電時にトイレユニット6及びトイレ用空気圧縮機23とは異なる機器(例えば、照明機器、無線機器、放送機器等)に電力を供給する。すなわち、トイレ用空気圧縮機23は、メインバッテリ33から電力供給を受けていない。トイレ電源35及びメインバッテリ33は、互いに並列的に導線42を介して補助空気圧縮機32に接続されている。補助空気圧縮機32は、停電時にメインバッテリ33から電力の供給を受けて圧縮空気を生成し、パンタグラフを動作させる。補助空気圧縮機32は、後述する切替操作スイッチ70がオフ位置及びオン位置のいずれのときも、トイレユニット6(レギュレータ6d)に対して流体的に接続されることはない。
【0031】
トイレ電源35は、直流電源である。トイレ電源35及びメインバッテリ33は、導線43を介してトイレユニット6に接続されている。導線43には、接点51が配置されている。導線43における接点51に対してトイレ電源35側の部分には、導線44が接続されている。導線44には、接点52及びコイル60が直列的に配置されている。導線43における接点51とトイレユニット6との間の部分には、導線45を介してサブバッテリ34が接続されている。サブバッテリ34は、停電時にトイレユニット6に電力を供給可能に構成されている。
【0032】
導線43における接点51に対してトイレユニット6側の部分には、導線46が接続されている。導線46には、切替操作スイッチ70及びコイル61が直列的に配置されている。切替操作スイッチ70は、鉄道車両1の乗務員によって手動で操作されるように構成されている。切替操作スイッチ70は、オフ位置とオン位置との間で操作可能に構成されている。
【0033】
導線43における接点51に対してトイレユニット6側の部分には、導線47を介して電磁弁25が接続されている。導線47には、接点53が配置されている。導線47における接点53と電磁弁25との間の部分には、導線48を介して水揚装置9が接続されている。導線48には、インバータ71及び接点54が直列的に配置されている。導線47における接点53に対して導線43とは反対側の部分には、導線49を介してトイレ用空気圧縮機23が接続されている。導線49には、起動回路72が配置されている。起動回路72には、圧力検知器26が設けられている。圧力検知器26及び起動回路72は、トイレ用空気圧縮機23が搭載された車両5と同一の車両5に搭載されている。
【0034】
起動回路72は、導線80,81、コイル91及び接点92を有する。導線80及び導線81は、互いに並列に配置された状態で導線49に接続されている。導線80には、圧力検知器26及びコイル91が直列的に配置されている。導線81には、接点92が配置され、トイレ用空気圧縮機23が接続されている。
【0035】
接点50,52はノーマルクローズ型であり、接点51,53,54,92は、ノーマルオープン型である。コイル60が励磁されると、接点51が閉じられる。コイル61が励磁されると、接点50,52が開かれると共に接点53,54が閉じられる。コイル91が励磁されると、接点92が閉じられる。
【0036】
電源切替回路12が通常時状態の際は、接点50~52が閉状態であり且つ接点53,54が開状態である。通常空気圧縮機21及び水揚装置9は、通常電源31の電力によって作動する。補助空気圧縮機32は、メインバッテリ33の電力によって作動する。メインバッテリ33及びサブバッテリ34は、トイレ電源35の電力によって充電される。
【0037】
コイル60が励磁されて接点51が閉状態であるため、トイレ電源35とトイレユニット6との間の電気回路が通電状態になる。よって、トイレユニット6(のフラッパ弁6b用の電磁弁)は、トイレ電源35の電力によって作動する。他方、コイル61が励磁されず接点53,54が開状態であるため、トイレ電源35の電力は、トイレ用空気圧縮機23、電磁弁25及び水揚装置9には供給されない。即ち、電源切替回路12が通常時状態の際は、電磁弁25が開状態(
図3参照)になってエア切替回路11が通常時状態となる。
【0038】
[電源切替回路(停電直後)]
図5は、
図4に示す電源切替回路12における停電直後の状態の回路図である。
図5に示すように、停電が発生して通常電源31及びトイレ電源35が給電不能になると、水揚装置9が作動不能になるが、メインバッテリ33の電力によってコイル60が励磁されることで、接点51の閉状態が維持される。
【0039】
[電源切替回路(非常時状態)]
図6は、
図5に示す電源切替回路12における停電時に切替操作スイッチ70が操作された非常時状態の回路図である。
図6に示すように、乗務員が停電発生後に切替操作スイッチ70をオフ位置からオン位置に操作すると、コイル61が励磁され、接点50~52が開状態となり、接点53,54が閉状態になる。これにより、メインバッテリ33は補助空気圧縮機32にのみ給電してトイレユニット6及びトイレ用空気圧縮機23には給電不能となると共に、サブバッテリ34の電力がトイレユニット6及び水揚装置9に供給される。即ち、トイレ電源35及びメインバッテリ33の両方とトイレユニット6との間の電気回路が遮断されると共に、サブバッテリ34とトイレユニット6との間の電気回路が接続される。つまり、切替操作スイッチ70がオン位置に操作されることにより、サブバッテリ34からトイレ用空気圧縮機23への電力供給回路が確立される。これと同時に、サブバッテリ34の電力によって電磁弁25が作動し、電磁弁25が閉じられることで、電磁弁25が非常時状態に切り替えられる(
図8参照)。
【0040】
[電源切替回路(非常時状態:圧力検知器オン)]
図7は、
図6に示す電源切替回路12における圧力検知器26の検知状態の回路図である。
図7に示すように、圧力検知器26が補助エア通路24(
図3参照)の圧縮空気の圧力が閾値未満であることを検知すると、圧力検知器26がオン状態になって起動回路72の導線80にサブバッテリ34の電力が流れ、コイル91の励磁によって接点92が閉じられる。即ち、起動回路72は、圧力検知器26が補助エア通路24(
図3参照)の圧縮空気の圧力が閾値未満であることを検知すると、サブバッテリ34とトイレ用空気圧縮機23との間の電気回路を接続し、サブバッテリ34の電力がトイレ用空気圧縮機23に供給される。
【0041】
[エア切替回路(非常時状態)]
図8は、
図3に示すエア切替回路11における非常時状態の回路図である。
図8に示すように、切替操作スイッチ70(
図6参照)のオン操作によって電磁弁25が閉じられることで、電磁弁25が非常時状態に切り替えられる。この状態では、幹線エア通路22aから第1支線エア通路22b及び第2支線エア通路22cに向けた圧縮空気の流れが生じない。そのため、トイレ用エアタンク27の圧縮空気は、補助エア通路24を流れ、逆止弁28を通じて第1支線エア通路22b及び第2支線エア通路22cに導かれ、第1トイレユニット6及び第2トイレユニット7に供給することが可能になる。
【0042】
前述したように、切替操作スイッチ70をオン操作するだけで、エア切替回路11(電磁弁25)及び電源切替回路12を通常時状態から非常時状態を切り替えることができる一方、その後に切替操作スイッチ70をオフ操作すれば、エア切替回路11(電磁弁25)及び電源切替回路12を非常時状態から通常時状態に復帰させることができる。
【0043】
以上に説明した構成によれば、切替操作スイッチ70をオフ位置からオン位置に操作すれば、トイレユニット6,7への圧縮空気の供給路が通常エア通路22から補助エア通路24に切り替えられ、かつ、電源切替回路12が非常時状態に切り替えられる。よって、空気回路及び電源回路を複雑にすることなく、乗務員の作業負担を軽減した鉄道車両のトイレバックアップシステム10を提供できる。更に、仮に通常電源31が有効であるときにも、切替操作スイッチ70を操作して動作確認を行えるため、メンテナンス性も向上する。
【0044】
また、停電復旧時には切替操作スイッチ70をオン位置からオフ位置に操作すれば、トイレユニット6,7への圧縮空気の供給路が補助エア通路24から通常エア通路22に戻り、かつ、電源切替回路12も通常時状態に戻る。よって、停電復旧時における乗務員の作業負担も軽減できる。
【0045】
また、電源切替回路12は、通常時状態及び非常時状態の何れの状態でも、トイレ用空気圧縮機23に対してメインバッテリ33を電気的に分離しているので、トイレ用空気圧縮機23はメインバッテリ33の電力を消費せず、停電時にメインバッテリ33の残量を十分に確保できる。よって、停電時には、メインバッテリ33によってトイレユニット6,7及びトイレ用空気圧縮機23とは異なる機器(例えば、照明機器、無線機器、放送機器等)を安定して動作させることができる。
【0046】
また、トイレ用空気圧縮機23、補助エア通路24及びトイレユニット6,7が同一車両5内に配置されるため、隣接車両間に跨る配管を不要にできる。また、圧力検知器26、起動回路72及びトイレ用空気圧縮機23が同一車両内に配置されるため、隣接車両間に跨って配線するワタリ線を不要にできる。
【0047】
また、トイレ用空気圧縮機23は、鉄道車両1の車体2内に配置されるので、車体2内のトイレユニット6,7に対してトイレ用空気圧縮機23を近づけて配置しやすく、トイレ用空気圧縮機23とトイレユニット6,7との間の配管を短くできる。また、トイレ用空気圧縮機23が車体2内に配置されることで、車体床下空間を他の機器のために空けることができる。また、トイレ用空気圧縮機23が車外に晒されないため、空気圧縮機に対する車外環境に配置させるための処置(例えば、防塵、防水等)を不要とすることができる。
【0048】
また、トイレ用空気圧縮機23は、車体2の側構体2bと第1トイレユニット6の間の隙間Gに配置されるので、トイレ用空気圧縮機23と第1トイレユニット6との間の配管を短くできると共に、トイレ用空気圧縮機23を乗員空間Sから離すことができ、乗客に対するトイレ用空気圧縮機23の騒音対策を簡素化又は不要にできる。
【0049】
また、電磁弁25は、通常エア通路22からトイレユニット6,7へのエア供給を遮断可能なノーマルオープン型であり、通常エア通路22において補助エア通路24が合流する合流点P2よりも上流側に配置されているので、三方弁を用いずに済み、電磁弁25を簡素化できる。また、分岐点P1が車体2の床下空間に配置され、合流点P2が車体2の床上空間において第1支線エア通路22bに配置されているので、補助エア通路24を床上空間から床下空間に引き出さずに済み、施工性を良好にすることができる。
【0050】
また、電磁弁25は、通常エア通路22の幹線エア通路22aに配置され、通常エア通路22に対する補助エア通路24の合流点P2は、通常エア通路22の第1支線エア通路22bに配置されているので、同一車両5内の2つのトイレユニット6,7への圧縮空気供給源の切り替えを1つの電磁弁25で行うことができる。
【0051】
また、パンタグラフを動作させる圧縮空気を生成可能な補助空気圧縮機32は、切替操作スイッチ70がオフ位置及びオン位置のいずれのときも、トイレユニット6,7に対して流体的に分離されているので、トイレユニット6,7は補助空気圧縮機32の圧縮空気を消費せず、停電時に補助空気圧縮機32の圧縮空気を十分に確保できる。よって、停電時には、トイレユニット6,7の使用にかかわらず、補助空気圧縮機32の圧縮空気によってパンタグラフを安定して動作させることができる。また、トイレ用空気圧縮機23が補助空気圧縮機32とは別に独立して設けられているため、補助空気圧縮機32の圧縮空気の消費にかかわらずトイレユニット6,7の動作を継続でき、乗客サービスに制限が生じることを防止できる。
【0052】
また、トイレユニット6,7が清水空圧式であり、便器6aの汚物が汚物タンク8に排出される際に給水加圧タンク6cに貯留された水が圧縮空気と共に用いられ、真空吸引式のような汚物の吸引・搬送のための圧縮空気は不要となる。よって、トイレユニット6,7を清水空圧式とすることで、トイレ用空気圧縮機23の容量を小さくできる。また、それによりトイレ用空気圧縮機23に必要な電力も小さくなるため、トイレ用空気圧縮機23に給電するサブバッテリ34の容量も小さくできる。
【符号の説明】
【0053】
1 鉄道車両
2 車体
2b 側構体
5 車両
6 第1トイレユニット
6a 便器
6b フラッパ弁
6c 給水加圧タンク
6d レギュレータ
7 第2トイレユニット
9 水揚装置
10 トイレバックアップシステム
11 エア切替回路
12 電源切替回路
21 通常空気圧縮機
22 通常エア通路
23 トイレ用空気圧縮機
24 補助エア通路
25 電磁弁(切替装置)
26 圧力検知器
31 通常電源
32 補助空気圧縮機
33 メインバッテリ
34 サブバッテリ
35 トイレ電源
70 切替操作スイッチ
72 起動回路
G 隙間
P1 分岐点
P2 合流点
S 乗員空間
【要約】
【課題】空気回路及び電源回路を複雑にすることなく、乗務員の作業負担を軽減した鉄道車両のトイレバックアップシステムを提供する。
【解決手段】鉄道車両のトイレバックアップシステムは、トイレユニットに供給するための圧縮空気のエア通路を、通常エア通路または補助エア通路のいずれかに切り替える切替装置と、前記トイレユニットに供給するための電力をトイレ電源とサブバッテリの間で切り替える電源切替回路と、停電時に操作されることによって、前記電源切替回路を動作させ、前記トイレユニット及び前記トイレ用空気圧縮機への電力供給源を前記トイレ電源から前記サブバッテリに切り替える切替操作スイッチを備える。
【選択図】
図3