(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】電気導体上にマイカ紙を巻きつける方法および同方法に適したマイカ紙テープ
(51)【国際特許分類】
H01B 17/56 20060101AFI20220119BHJP
H01B 3/52 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220119BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220119BHJP
H02K 3/30 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01B17/56 A
H01B3/52 F
B32B27/12
B32B27/10
B32B27/18 Z
B32B7/022
H02K3/30
(21)【出願番号】P 2020179049
(22)【出願日】2020-10-26
(62)【分割の表示】P 2017564604の分割
【原出願日】2016-05-04
【審査請求日】2020-10-26
(32)【優先日】2015-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】カン ビョンサム
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529842(JP,A)
【文献】特開昭48-100450(JP,A)
【文献】特表2014-525846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/56
H01B 3/52
B32B 27/12
B32B 27/10
B32B 27/18
B32B 7/022
H02K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイカ紙の連続した表面を含む第1の面と支持体層を含む第2の面とを有するテープであって、
前記マイカ紙が70~99質量パーセントのマイカと1~30質量パーセントのバインダーとを含み、
前記支持体層がフィルム、紙、不織布、または織布を含み、
前記支持体層の初期伸びが前記マイカ紙の初期伸び以下であり、且つ
10N/10mm以下の離層力が前記支持体層にかけられる時にそれが前記マイカ紙から分離され得るように前記支持体層が前記マイカ紙に取り外し可能に付着される、テープ。
【請求項2】
前記マイカ紙がアラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、またはそれらの混合物をさらに含有する、請求項1に記載のテープ。
【請求項3】
前記マイカ紙がガラス繊維、ロックウール、多結晶繊維状アルミナ、単結晶繊維状チタン酸カリウム、またはそれらの混合物をさらに含有する、請求項1に記載のテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気導体に対する絶縁体としてマイカ紙を適用する方法およびかかる方法において有用なマイカ紙テープに関する。
【背景技術】
【0002】
高マイカ含有量紙は、モーター、ジェネレーターおよびインバーターにおいて絶縁体として有用である。より高いマイカ含有量を有するマイカ紙は典型的に、高マイカ含有量に伴うマイカ紙の機械的な弱さを補償するためのガラス布またはポリエステルフィルムなどの機械的支持層を有する。しかしながら、多くの絶縁破損はその機械的支持層ならびにその低めの耐コロナ性、異なった熱膨脹、および異なった導電率に起因するため、機械的支持層は、電気機器において使用するのに望ましくない。
【0003】
テープを導体の周りに急速に巻きつける間にテープ上の張力を維持するために特別設計された装置を使用して、テープの形態で導体の周りに電気絶縁体をスパイラル状にまたは螺旋状に巻きつけるのが一般的である。これらの装置は一般的に、機械的支持層を有するマイカ紙テープの使用を必要とし、したがってその望ましい電気的性能を下回る機械的支持層が絶縁体の一部になる。
【0004】
したがって、そこで電気絶縁体に機械的支持層を備えることが必要とされない、マイカ紙を電気導体の周りに良好に巻きつける方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、マイカ紙を電気導体の周りに適用する方法に関し、プロセスが、
i)マイカ紙の連続した表面を含む面とマイカ紙に取り外し可能に付着されている支持体層を含む面とを有するテープと、
ii)長さとその長さに垂直な円周とを有する表面を有する電気導体とを有してなり、
方法が、
a. マイカ紙の連続した表面を含むテープの面を導体の表面上の付着点において導体に付着させる工程と、
b. 導体の表面上の付着点から導体円周の少なくとも25パーセントである巻回点までテープが巻回されるまで、マイカ紙が導体表面と接触して、テープを導体の周りに巻回する工程と、次に、
c. マイカ紙が導体の表面と接触したままで、付着点から出発して、テープからの支持体層の連続的な取り外しを開始する工程と、
d. 導体表面の所望の量がマイカ紙の少なくとも1つの層で完全に覆われるまで支持体層を取り外し点において同時に取り外しながら、マイカ紙が導体表面と少なくとも部分的に接触し且つ巻回点において表面と連続的に接触して、テープを導体の周りに巻回し続ける工程であって、
但し、導体表面の所望の量が完全に覆われるまで取り外し点が導体円周の少なくとも25パーセント巻回点の後ろに維持される工程をこの順番で含む。
【0006】
また、本発明はマイカ紙の連続した表面を含む第1の面と支持体層を含む第2の面とを有するテープに関し、そこでマイカ紙が70~99質量パーセントのマイカと1~30質量パーセントのバインダーとを含み、支持体層がフィルム、紙、不織布、または織布を含み、支持体層の初期伸びがマイカ紙の初期伸び以下であり、且つ10N/10mm以下の離層力が支持体層にかけられる時にそれがマイカ紙から分離され得るように支持体層がマイカ紙に取り外し可能に付着される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】矩形横断面を有する導体に絶縁テープを適用する方法の特定の態様を示す。
【
図2】矩形横断面を有する導体に絶縁テープを適用する方法の特定の態様を示す。
【
図3】矩形横断面を有する導体に絶縁テープを適用する方法の特定の態様を示す。
【
図4】矩形横断面を有する導体に絶縁テープを適用する方法の特定の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、可剥性支持体層と組合せてマイカ紙を使用して絶縁体を電気導体に適用する方法に関する。このような可剥性支持体層は、電気導体の長さに沿って巻回プロセスの間に張力下でマイカ紙を支持するために一時的に使用され、次に、可剥性支持体層は、電気導体に沿うテーピングが進むにつれて取り外される。この方法は、他の付加的な層が一切存在せず導体上に巻きつけられるマイカ紙だけを使用してもたらすことができる。
【0009】
マイカ紙は、多くの種類の電気部品において、より詳しくは低電圧(1000V未満の公称電圧)などの回転装置において有用である。電気部品の例には、モーター、ジェネレーターおよびインバーターが含まれる。好ましい電気導体は、マイカ紙が適用されるコイルである。このマイカ適用方法は、許容範囲の機械的強度を保持しながら熱安定性および耐コロナ放電性の性質を有する電気絶縁体のために有用である。
【0010】
本明細書中で用いられるときマイカ紙は、無機材料マイカを含有する紙を意味する。実例としてマイカ含有量は少なくとも45質量%であり得る。しかしながら、マイカ紙が少なくとも70%のマイカを有するとき、そして好ましくはマイカ紙が少なくとも85または90質量パーセントのマイカを有するとき、最も有用な電気的性質がある。本明細書中で用いられるとき用語「マイカ」は、ケイ酸塩鉱物の形態に向けられているその慣例的な意味において使用される。通常、白雲母または金雲母またはそれらのブレンドなどの様々なタイプのフレークの形態のマイカ粒子を使用することができる。しかしながら、白雲母タイプのマイカが好ましい。電気絶縁のためにマイカの好ましいタイプは白雲母であり、金雲母が存在していてもよい。
【0011】
紙のマイカ含有量が増加するとき紙の機械的強度および凝集性は一般的に減少する。バインダーなどの添加剤は典型的に紙に機械的強度を付加するが、このような添加剤は、マイカ含有量が増加するときに減少する。
【0012】
可剥性層を有するマイカ紙を電気導体に適用する好ましい方法は、材料を表面の周りに巻きつけるための高速装置の使用による。このような高速装置は公知である。しかしながらここに開示される方法は、手作業で行なうことができるが、それは人がマイカ紙を電気導体の周りにおよびそれに沿って適用し巻きつけることを意味するということは理解されたい。
【0013】
ここで使用されるとき、可剥性支持体層という用語は、このような支持体層が手作業でまたは装置によってマイカ紙から取り外され得る、すなわち分離され得ることを意味する。可剥性支持体層と接触するマイカ紙のロールを持つ人は、マイカ紙を損なわずに可剥性支持体層を取り外すことができる。それ故、支持体層は、マイカ紙に取り外し可能に付着されると言われる。取り外し可能に付着されるとは、10N/10mm以下の離層力が支持体層にかけられる時にそれがマイカ紙から分離され得るように支持体層がマイカ紙から剥離可能であることを意味する。
【0014】
さらに、支持体層の初期伸びはマイカ紙の初期伸び以下である。驚くべきことに支持体層がマイカ紙よりも伸びまたは伸張を有する場合、マイカ紙を裂かずにマイカ紙から支持体層を取り外すことは難しいということを本発明者は見出した。
【0015】
可剥性層の適した例には、フィルム、紙、不織布、または織布が含まれる。具体的な例には、セルロース紙、ポリマーフィルム、織物、不織構造物、アラミド紙および金属箔が含まれる。
【0016】
本発明は、マイカ紙を電気導体の周りに適用する方法に関し、プロセスが、
i)マイカ紙の連続した表面を含む面とマイカ紙に取り外し可能に付着されている支持体層を含む面とを有するテープと、
ii)長さとその長さに垂直な円周とを有する表面を有する電気導体とを有してなり、
方法が、
a. マイカ紙の連続した表面を含むテープの面を導体の表面上の付着点において導体に付着させる工程と、
b. 導体の表面上の付着点から導体円周の少なくとも25パーセントである巻回点までテープが巻回されるまで、マイカ紙が導体表面と接触して、テープを導体の周りに巻回する工程と、次に、
c. マイカ紙が導体の表面と接触したままで、付着点から出発して、テープからの支持体層の連続的な取り外しを開始する工程と、
d. 導体表面の所望の量がマイカ紙の少なくとも1つの層で完全に覆われるまで支持体層を取り外し点において同時に取り外しながら、マイカ紙が導体表面と少なくとも部分的に接触し且つ巻回点において表面と連続的に接触して、テープを導体の周りに巻回し続ける工程であって、
但し、導体表面の所望の量が完全に覆われるまで取り外し点が導体円周の少なくとも25パーセント巻回点の後ろに維持される工程をこの順番で含む。
【0017】
マイカの連続した表面を含むテープの面は、導体の表面の付着点において導体に付着される。これはテープの前端縁または端部を電気導体に適用することによって達成され得るが、そこでマイカ紙の連続した表面の前端縁または端部は、(i)電気導体上または(ii)マイカ紙の表面の前端縁または端部上のどちらかで接着剤を使用することによって導体に付着する。全ての場合において接着剤が端縁上、導体の前端縁上にある必要はないが、電気導体と接触するマイカ紙の端部上にあるということは理解されたい。巻回張力がテープに適用される時にマイカ紙は電気導体と接触したままである必要がある。
【0018】
次に、導体の表面上の付着点から導体円周の少なくとも25パーセントである巻回点までテープが巻回されるまで、マイカ紙が導体表面と接触して、テープが導体の周りに巻回され、次に、マイカ紙が導体の表面と接触したままで、付着点から出発して、テープからの支持体層の連続的な取り外しを開始する。巻きつけられている導体はマイカ紙の十分な支持体を導体上に提供するので、支持体層の連続的な取り外しは、初期付着点と巻回点との間にこの距離がある時に開始され得る。初期付着点(または取り外し点)と導体円周の少なくとも25パーセントの巻回点との間の距離は最小実用距離であり、導体が概して丸いかまたは楕円の横断面形状を有する時に有用である。一実施形態において、初期付着点(または取り外し点)と巻回点との間の距離は、導体円周の少なくとも50パーセントである。これは、導体が略四角形または矩形の横断面形状を有する時に特に好ましい。これは、テープを導体の矩形の隅の周りに巻きつけることを可能にし、支持体層の取り外しの前に付加的な支持体を提供する。
【0019】
矩形横断面の導体上の巻きつけ技術が
図1~4に示される。
図1を参照して、支持体層3とマイカ紙4とを有する電気絶縁テープ2が導体1に付着されて示される。絶縁テープの端部が導体の表面に付着点5を形成する。
図2において、テープが導体の周りに巻回され、そしてそれが巻回されるとき、テープと導体との間の接点の前縁が巻回点6である。示した通り、導体上の点7は、付着点5から導体円周の50%の点であり、その点において支持体層は、付着点5においてマイカ紙から取り外され始めることができる。
図3において、巻回が進んでおり、巻回点が今度は8に示され、取り外し点9は、導体円周の50%巻回点の後ろにある。支持体層10は、今度は、初期付着点から取り外し点9までマイカ紙から剥離されている。
図4は巻きつけをさらに図解し、巻回点8および取り外し点9が導体の表面の周りに進んでいる。このようにして導体の周りに巻きつけが続く。
【0020】
付着点(または取り外し点)と巻回点との間の最大距離は必ず導体の円周の100パーセント未満であり、そうでなければ支持体層が導体上に巻回されるであろう。実質的な意味合いから、付着点(または取り外し点)と巻回点との間の実用最大距離は導体の円周の90%パーセントであると考えられる。
【0021】
方法は引き続き、導体表面の所望の量がマイカ紙の少なくとも1つの層で完全に覆われるまで支持体層を取り外し点において同時に取り外しながら、マイカ紙が導体表面と少なくとも部分的に接触し且つ巻回点において表面と連続的に接触して、テープを導体の周りに巻回し続けるが、但し、導体表面の所望の量が完全に覆われるまで支持体層がマイカ紙から取り外される取り外し点が、導体円周の少なくとも25パーセント巻回点の後ろに維持される。
【0022】
好ましくはテープが導体の周りに螺旋状にまたはスパイラル状に巻回される。さらに、好ましくはテープの少なくとも一部は、マイカ紙の1つの層が先に巻きつけられたマイカ紙層に少なくとも部分的に重なるように巻回される。典型的には巻きつけられたテープの重なりが好ましく、テープの幅の約50%の重なりが最も好ましい。
【0023】
ここでの目的のために、「導体の表面」という語は、絶縁体の巻きつけが望ましい、電気導体の外面を含めることを意図する。「導体の表面は、導体の無被覆金属表面だけに限られず、また、金属表面または金属表面に適用された他の材料上のコーティング、または導体に適用されたさらに別の形態の絶縁体を有していたかもしれない導体の外面をも含めると理解されたい。
【0024】
導体上で巻回するための1つの好ましいテープは、可剥性支持体層と組合せて連続したマイカ紙の層を有するテープである。それは、マイカ紙の連続した表面を含む第1の面と支持体層を含む第2の面とを有するテープであり、そこでマイカ紙が70~99質量パーセントのマイカと1~30質量パーセントのバインダーとを含み、支持体層がフィルム、紙、不織布、または織布を含み、支持体層の初期伸びがマイカ紙の初期伸び以下であり、且つ10N/10mm以下の離層力が支持体層にかけられる時にそれがマイカ紙から分離され得るように支持体層がマイカ紙に取り外し可能に付着される。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、マイカ紙の層は90~99質量パーセントのマイカを有し、そしていくつかの特化された実施形態においてマイカ紙は95~99質量パーセントのマイカを有した。マイカ紙は1つまたは複数の添加剤を含有することができる。典型的にこのような添加剤は、マイカ紙に凝集強さを付加するためのバインダーの他、繊維またはフロックなどのその他の材料を含有する。
【0026】
いくつかの実施形態においてマイカ紙は、セルロース、酢酸塩、アクリル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ロックウール、多結晶繊維状アルミナ、単結晶状チタン酸カリウム、またはそれらの混合物をさらに含有する。いくつかの好ましい実施形態においてマイカ紙中のバインダーはアラミドフィブリドを含有する。いくつかの好ましい実施形態においてマイカ紙はアラミドフロックを含有する。1つの特に好ましい実施形態は、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から製造されるアラミドフィブリドおよびフロックの使用である。
【0027】
本明細書で使用されるとき用語フロックは、短い長さを有し、ウェットレイドシートおよび/または紙の調製において通例使用されている繊維を意味する。典型的には、フロックは約3~約20ミリメートルの長さを有する。好ましい長さは約3~約7ミリメートルである。フロックは通常、当該技術分野で公知の方法を使用して必要とされる長さに連続繊維を切断することによって製造される。
【0028】
本明細書で使用されるとき用語アラミドは、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85%が直接2つの芳香族環に結合している芳香族ポリアミドを意味する。場合により、添加剤がアラミドと共に使用されてもよく、ポリマー構造全体にわたり分散されていてもよい。最高約10質量パーセントもの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできることが発見された。また、アラミドのジアミンを置換する約10パーセントもの他のジアミン、またはアラミドの二酸塩化物を置換する約10パーセントもの他の二酸塩化物を有するコポリマーを使用できるということも発見されている。
【0029】
好ましいアラミドはメタ-アラミドである。アラミドポリマーは、2個の環またはラジカルが分子鎖に沿って互いに対してメタ位に方向付けられる時にメタ-アラミドであると考えられる。好ましいメタ-アラミドは、ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)である。米国特許第3,063,966号明細書、米国特許第3,227,793号明細書、米国特許第3,287,324号明細書、米国特許第3,414,645号明細書、および米国特許第5,667,743号明細書は、アラミドフロックを製造するために使用され得るアラミド繊維を製造するための有用な方法を説明している。
【0030】
あるいは、アラミドフロックはパラ-アラミドまたはアラミドコポリマーであり得る。アラミドポリマーは、2個の環またはラジカルが分子鎖に沿って互いに対してパラ位に方向付けられる時にパラ-アラミドであると考えられる。パラ-アラミド繊維を製造するための方法は一般的に、例えば、米国特許第3,869,430号明細書、米国特許第3,869,429号明細書、および米国特許第3,767,756号明細書に開示されている。1つの好ましいパラ-アラミドはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)であり、1つの好ましいパラ-アラミドコポリマーはコポリ(p-フェニレン/3,4’ジフェニルエステルテレフタルアミド)である。好ましいアラミドフロックはメタ-アラミドフロックであり、特に好ましいのは、メタ-アラミドポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)から製造されるフロックである。
【0031】
本明細書で使用されるとき用語フィブリドは、それらの3つの寸法のうちの少なくとも1つが最大の寸法に比べて規模が小さい非常に小さい非粒状、繊維質またはフィルム状の粒子を意味する。これらの粒子は、例えば米国特許第2,988,782号明細書および米国特許第2,999,788号明細書に開示されるように、高い剪断下で非溶媒を用いてポリマー材料の溶液を沈殿させることによって調製される。アラミドフィブリドは、320℃を超える融点または分解点を有する芳香族ポリアミドの非粒状フィルム状粒子である。好ましいアラミドフィブリドはメタ-アラミドフィブリドであり、特に好ましいのは、メタ-アラミドポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)から製造されるフィブリドである。
【0032】
フィブリドは一般的に、約5:1~約10:1の長さ対幅のアスペクト比で、約0.1mm~約1mmの範囲内の最大寸法長さを有する。厚み寸法は、数分の一ミクロン、例えば約0.1ミクロン~約1.0ミクロンのオーダーである。必須ではないが、アラミドフィブリドが未乾燥状態である間にフィブリドを層中に混入することが好ましい。
【0033】
フロックとフィブリドとの組合せがアラミドのために使用される場合、フロックの、フィブリドに対する好ましい質量比は0.5~4.0およびより好ましくは0.8~2.0の範囲である。
【0034】
マイカ紙は、一緒に付着される複数の薄い平面ウェブから製造され得る。本明細書中で用いられるとき、用語「面」は、層または紙の2つの主面のどちらか(すなわち、層または紙の一方の側または他方の側)を指す。
【0035】
マイカ紙が非常に厚い場合、それは巻回プロセスを妨げるであろう。好ましくは、マイカ紙は750マイクロメートルを超えず、より一般的には500マイクロメートルを超えない。いくつかの他の実施形態においてマイカ紙は、250マイクロメートル以下の厚さを有する。好ましい一実施形態においてマイカ紙は、130マイクロメートル以下の厚さを有する。さらに他の好ましい実施形態は、100ミリメートル以下の厚さを有する。
【0036】
マイカ紙を製紙装置で製造するため、所望の量および比率のマイカおよび/またはアラミド固形分をヘッドボックスに提供し、そして次に、ウェブとして製紙ワイヤー上にウエットレイする。次に、湿潤ウェブを乾燥機のドラム上で乾燥させて紙を形成することができる。好ましくは次に紙を加圧および加熱下ホットロールカレンダーのニップでカレンダー処理して、または他の手段によって処理して、さらに紙を所望の厚さを有する層に固めて高密度化する。必要ならば、同じ組成の2つ以上のより軽い基本質量またはより薄い湿潤ウェブを別々に製造し、そして次に一緒にカレンダー処理して単一層に固めることができる。
【0037】
10N/10mm以下の離層力が支持体層にかけられる時にそれがマイカ紙から分離され得るように支持体層はマイカ紙に取り外し可能に付着される。支持体層は、幅10ミリメートル当たり10ニュートンの離層力が室温で接着剤上にかけられる時に凝集破壊または接着層破壊を有する適切な接着剤によってマイカ紙に取り外し可能に付着され得る。この剥離力または離層力は、Instron(登録商標)などの適した測定装置内で室温(20℃)においてマイカ紙から支持体層を引っ張る力を測定することによって決定され得る。離層力を測定するために、初めに支持体層はマイカ紙から分離され、そして個々の支持体層とマイカ紙とがInstron(登録商標)の対向したジョー内に置かれ(すなわち、剥離角180°)、2つの層を分離するために必要とされる力が100mm/分の速度で測定される。
【0038】
支持体層をマイカ紙に付着すると共に次にまた、幅10ミリメートル当たり10ニュートンの離層力が接着剤上にかけられる時に支持体層をマイカ紙から剥離させることができる任意の接着剤を使用することができる。Scotch(登録商標)銘柄Spray Mount接着剤の薄い適用が適した接着剤であることを本発明者は見出したが、他のタイプの接着剤および量の接着剤を使用することができるであろう。
【0039】
マイカ紙層に取り外し可能に付着された支持体層を有するテープを作るために、適した接着剤を支持体層の面に適用し、そして次にマイカ紙の面を接着剤に適用するか、または代わりに、適した接着剤をマイカ紙の面に適用し、そして次に支持体層の面を接着剤に適用するのが便利である。1つの適した可剥性支持体層は、0.0254mmの呼称厚さを有するポリエチレンがコートされたポリエステルフィルム(DuPontによってMylar(登録商標)商標として販売される)であることを本発明者は見出した。支持体層として適している他の材料には、紙、不織布、または織布が含まれる。
【0040】
接着剤を適用する1つの方法は、約6~8インチの距離から支持体層の1つの面に接着剤の薄い均一なコートの吹付けを適用することである。必要ならば、次に接着剤を短時間(最大で1~5分)乾燥させてから、次にマイカ紙が接着剤に適用された。支持体層上の接着剤の厚さは好ましくは0.05~0.030mmである。
【0041】
さらに接着剤を間に有する2つの層を例えばカレンダーニップを使用して、適した圧力(好ましくは約5.5MPaまで)で一緒に加圧して、マイカ紙に取り外し可能に付着された支持体層を有する最終テープを製造することができる。
【0042】
さらに支持体層は幅10ミリメートル当たり少なくとも60ニュートンの引張力に耐えることができて、導体の巻きつけの間にマイカ紙および支持体層の十分な伸張を確実にするのが好ましい。いくつかの場合においてそれらは幅10ミリメートル当たり少なくとも50ニュートンの引張力に耐えるのが十分である。巻回する間に望ましくない折り目またはしわを避けるのを助けるためにテープおよび2つの層の十分な伸張が好ましい。さらに、多層積層体構造物のテープを使用する導体の有用な巻きつけのために、積層体構造物は好ましくは、高速装置テープ巻きつけプロセスにおいて使用するために約100N/m未満、好ましくは約50N/m未満の可撓性または剛性を有するのがよい。
【0043】
試験方法
基本質量をASTM D 645およびASTM D 645-M-96に従って測定し、g/m2単位で記録する。
【0044】
厚さをASTM D 646-96に従って測定し、mm単位で記録する。
【0045】
引張強さおよび初期伸びを幅2.54cmの試験片および18cmのゲージ長を使用してASTM D 828-93に従って測定し、MPa単位で記録する。
【0046】
耐電圧をASTM D 149-97Aに従って測定し、kV/mm単位で記録する。
【0047】
離層力(または剥離接着力)をASTM D 3330方法Fに従って測定し、N/10mm単位で記録する。
【0048】
剛性(可撓性)または剛軟度は、IEC 60371-2に従って試験体を曲げるための最大曲げ荷重を試験体(幅15mm×長さ200mm)の長さで割った値であり、N/mで記録する。
【実施例】
【0049】
実施例1
可剥性支持体層を有するマイカ紙のテープは、1つのマイカ紙層に1つの機械的支持層を積層することによって作製された。マイカ紙層は、SWECO inc.(Korea)製の95質量%のマイカ(SRF-105T)および5質量%のメタ-アラミドフィブリドから製造された。機械的支持(可剥性)層は、厚さ0.0254mmを有するポリエステルフィルム(Mylar(登録商標)DuPont)であった。ポリエステルフィルム上に即製の再位置調整可能な粘着表面を作るために、Scotch(登録商標)SprayMountTM接着剤をポリエステルフィルムの一方の面上に適用した。接着剤の薄い均一なコートをフィルムの表面から6~8インチの距離から5~10秒間吹付けて、1分間乾燥させた。ポリエステルフィルム上のこの接着剤層の厚さは約0.020mmである。マイカ紙層をポリエステルフィルムのこの吹付けられた接着剤表面上に置き、5.5MPaのカレンダーニップ圧力下で層を結合して積層体構造物を形成した。次いで積層体構造物を幅15mmのテープに切断した。
【0050】
比較例A
商用銘柄仮焼マイカ紙(SRF-105T)は、SWECO Inc.(Korea)から用意された。このマイカ紙は、商用ガラスバックシートおよびポリエステルフィルム支持マイカ紙の前駆体として95%の仮焼マイカおよび5%のメタ-アラミドフィブリドから構成された。このマイカ紙を幅15mmのテープに切断した。得られたこのテープの性質を表に記載する。低い機械的強度のために、テープは、どんな巻出/再巻回張力が設定されても破断し続けた。
【0051】
実施例2
導体に実施例1のテープを以下の方法でスパイラル状に巻きつけた。試験される矩形導体の横断面サイズは150mm×75mmであった。このテープの巻回の出発点において、マイカ紙表面をアルミニウム導体表面上にポリイミドフィルムテープ(Nitto Denko P-224 AMB)で固定した。矩形アルミニウム導体の円周の50%が覆われるまでテープが導体の2つの側面上に巻きつけられ、次にマイカ紙からの支持体層の剥離が開始された。導体のスパイラル状の巻きつけが進み、導体の周りに巻回される次の渦巻きが先の巻きつけの50%を覆う(50%の重なりまたは半分の巻きつけ)。幅10mm当たり40Nまで必要に応じてテープに張力を加えて、可視的なしわおよび折り目を取り除いた。マイカ紙の層は導体上に良好に巻きつけられた。支持体層が取り外されている間のマイカ紙と支持体層との間の角度は約90度であった。得られたテープの性質を表に記載する。
【0052】
実施例3
可剥性支持体層上のマイカ紙のテープを実施例1におけるように作製し、実施例2におけるように矩形導体上に再び巻回したが、しかしながら導体は、13.3mm×3.3mmの横断面寸法を有するより小さな矩形銅導体であった。幅10mm当たり50Nまで必要に応じてわずかにより高い張力を加えて、可視的なしわおよび折り目を取り除いた。マイカ紙の層は導体上に良好に巻きつけられた。支持体層が取り外されている間のマイカ紙と支持体層との間の角度は約90度であった。得られたテープの性質を表に記載する。
【0053】
実施例4
可剥性支持体層上のマイカ紙のテープを実施例1におけるように作製し、実施例2におけるように導体上に再び巻回したが、導体は、160mmの直径を有する丸い横断面のアルミニウムワイヤーであった。この場合、テープは、マイカ紙からの支持体層の剥離が開始される前に丸い横断面の導体の円周の25%までテープが導体上に巻きつけられるだけでよいことが見出された。
【0054】
必要に応じてテープに張力を加えて幅10mm当たり40Nまで可視的なしわおよび折り目を取り除いた。マイカ紙の層は導体上に良好に巻きつけられた。支持体層が取り外されている間のマイカ紙と支持体層との間の角度は約90度であった。得られたテープの性質を表に記載する。
【0055】
【表1】
*印テープを巻回することができなかった。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕マイカ紙を電気導体の周りに適用する方法であって、プロセスが、
i)マイカ紙の連続した表面を含む面と前記マイカ紙に取り外し可能に付着されている支持体層を含む面とを有するテープと、
ii)長さとその長さに垂直な円周とを有する表面を有する電気導体とを有してなり、
方法が、
a. マイカ紙の前記連続した表面を含む前記テープの前記面を前記導体の前記表面上の付着点において前記導体に付着させる工程と、
b. 前記導体の前記表面上の前記付着点から前記導体円周の少なくとも25パーセントである巻回点まで前記テープが巻回されるまで、前記マイカ紙が前記導体表面と接触して、前記テープを前記導体の周りに巻回する工程と、次に、
c. 前記マイカ紙が前記導体の前記表面と接触したままで、前記付着点から出発して、前記テープからの前記支持体層の連続的な取り外しを開始する工程と、
d. 導体表面の所望の量が前記マイカ紙の少なくとも1つの層で完全に覆われるまで前記支持体層を取り外し点において同時に取り外しながら、前記マイカ紙が前記導体表面と少なくとも部分的に接触し且つ巻回点において前記表面と連続的に接触して、前記テープを前記導体の周りに巻回し続ける工程であって、
但し、導体表面の前記所望の量が完全に覆われるまで前記取り外し点が前記導体円周の少なくとも25パーセント前記巻回点の後ろに維持される工程をこの順番で含む方法。
〔2〕工程b.)において前記巻回点が前記導体の前記表面上の前記付着点から前記導体円周の少なくとも50パーセントになるまで前記テープが巻回され、
工程d.)において前記テープが前記導体の周りに巻回され、但し、導体表面の前記所望の量が完全に覆われるまで前記取り外し点が前記導体円周の少なくとも50パーセント前記巻回点の後ろに維持される、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記テープが前記導体の周りに螺旋状にまたはスパイラル状に巻回される、前記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕マイカ紙の1つの層が先に巻きつけられたマイカ紙層に少なくとも部分的に重なるように前記テープの少なくとも一部が巻回される、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕前記マイカ紙が少なくとも70質量%のマイカを含有する、前記〔3〕に記載の方法。
〔6〕マイカ紙の連続した表面を含む第1の面と支持体層を含む第2の面とを有するテープであって、
前記マイカ紙が70~99質量パーセントのマイカと1~30質量パーセントのバインダーとを含み、
前記支持体層がフィルム、紙、不織布、または織布を含み、
前記支持体層の初期伸びが前記マイカ紙の初期伸び以下であり、且つ
10N/10mm以下の離層力が前記支持体層にかけられる時にそれが前記マイカ紙から分離され得るように前記支持体層が前記マイカ紙に取り外し可能に付着される、テープ。
〔7〕前記マイカ紙がアラミド、セルロース、酢酸塩、アクリル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、またはそれらの混合物をさらに含有する、前記〔6〕に記載のテープ。
〔8〕前記マイカ紙がガラス繊維、ロックウール、多結晶繊維状アルミナ、単結晶繊維状チタン酸カリウム、またはそれらの混合物をさらに含有する、前記〔6〕に記載のテープ。
〔9〕前記マイカ紙中の前記バインダーがアラミドフィブリドを含有する、前記〔6〕に記載のテープ。
〔10〕前記マイカ紙がアラミドフロックをさらに含有する、前記〔9〕に記載のテープ。
〔11〕前記アラミドフィブリドおよびフロックがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から製造される、前記〔10〕に記載のテープ。