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  • 特許-リチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20220119BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220119BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20220119BHJP
   H01M 50/136 20210101ALI20220119BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/1391
H01M4/1393
H01M10/052
H01M10/0525
H01M10/0566
H01M50/105
H01M50/136
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020510478
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007648
(87)【国際公開番号】W WO2019187934
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018060046
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】大塚 春男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄樹
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134865(JP,A)
【文献】特開2016-207267(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016166(WO,A1)
【文献】米国特許第06493209(US,B1)
【文献】国際公開第2017/104363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 4/131
H01M 4/133
H01M 4/1391
H01M 4/1393
H01M 10/052
H01M 10/0525
H01M 10/0566
H01M 50/105
H01M 50/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型のリチウム二次電池であって、
正極と、
所定の積層方向において前記正極に積層されるセパレータと、
前記積層方向において前記セパレータの前記正極とは反対側に積層される負極と、
前記正極、前記負極および前記セパレータに含浸される電解液と、
前記積層方向の両側から前記正極および前記負極を被覆し、前記正極、前記セパレータ、前記負極および前記電解液を内部に収容するシート状の外装体と、
を備え、
前記正極は、
導電性を有するシート状の正極集電体と、
リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体であり、前記正極集電体に接合されて前記セパレータと対向する正極活物質板と、
を備え、
前記負極は、
導電性を有するシート状の負極集電体と、
炭素質材料またはリチウム吸蔵物質を含み、前記負極集電体に塗工されて前記セパレータと対向する負極活物質層と、
を備え、
前記外装体は、前記正極集電体に正極接合層を介して接合され、前記負極集電体に負極接合層を介して接合され、
前記正極活物質板の剛性は前記負極活物質層の剛性よりも高く、
前記負極集電体と前記外装体との接合強度である負極接合強度は、前記正極集電体と前記外装体との接合強度である正極接合強度よりも小さく、
前記正極接合強度および前記負極接合強度は共に1N/15mm以上であり、
前記正極接合強度と前記負極接合強度との差は0.8N/15mm以上であることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウム二次電池であって、
前記正極接合層の厚さは、0.5μm以上かつ10μm以下であり、
前記負極接合層の厚さは、0.5μm以上かつ10μm以下であることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウム二次電池であって、
シート状デバイス、または、可撓性を有するデバイスにおける電力供給源として利用されることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項4】
請求項に記載のリチウム二次電池であって、
前記可撓性を有するデバイスであるスマートカードにおける電力供給源として利用されることを特徴とするリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型のリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池とも呼ぶ。)における正極活物質層として、リチウム複合酸化物(すなわち、リチウム遷移金属酸化物)の粉末、バインダおよび導電剤等の混練物を成形して形成した粉末分散型の正極活物質層が知られている(特開2017-79192号公報(文献1))。一方、特許第5587052号公報(文献2)では、正極集電体に接合される正極活物質層としてリチウム複合酸化物焼結板を用いることにより、正極の高容量化を図る技術が提案されている。
【0003】
特開2013-97931号公報(文献3)のリチウム一次電池では、二酸化マンガン、バインダおよび導電剤等の混練物を成形して形成した正極活物質層が、正極集電体により支持されている。また、負極活物質層であるリチウム箔は、負極集電体に圧着されている。当該リチウム一次電池では、曲げ荷重が付与された際に外装体に皺または破断が生じることを抑制するために、正極集電体および負極集電体を熱可塑性樹脂を介して外装体に接合する技術が開示されている。
【0004】
ところで、スマートカード等に搭載される薄型のリチウム二次電池において、正極活物質層として焼結板を使用すると、スマートカードのねじり試験等の際に外装体に皺が生じる場合がある。当該皺の発生は、比較的変形しやすい外装体と、比較的変形しにくい焼結板(すなわち、正極活物質層)との間で生じる応力等によるものと考えられる。当該皺の発生は、文献3に記載されている正極集電体および負極集電体と外装体との接合を適用しても十分には防止できない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、薄型のリチウム二次電池に向けられており、外装体の皺の発生を抑制することを目的としている。
【0006】
本発明の好ましい一の形態に係る薄型のリチウム二次電池は、正極と、所定の積層方向において前記正極に積層されるセパレータと、前記積層方向において前記セパレータの前記正極とは反対側に積層される負極と、前記正極、前記負極および前記セパレータに含浸される電解液と、前記積層方向の両側から前記正極および前記負極を被覆し、前記正極、前記セパレータ、前記負極および前記電解液を内部に収容するシート状の外装体と、を備える。前記正極は、導電性を有するシート状の正極集電体と、リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体であり、前記正極集電体に接合されて前記セパレータと対向する正極活物質板と、を備える。前記負極は、導電性を有するシート状の負極集電体と、炭素質材料またはリチウム吸蔵物質を含み、前記負極集電体に塗工されて前記セパレータと対向する負極活物質層と、を備える。前記外装体は、前記正極集電体に正極接合層を介して接合され、前記負極集電体に負極接合層を介して接合される。前記正極活物質板の剛性は前記負極活物質層の剛性よりも高い。前記負極集電体と前記外装体との接合強度である負極接合強度は、前記正極集電体と前記外装体との接合強度である正極接合強度よりも小さい。前記正極接合強度および前記負極接合強度は共に1N/15mm以上であり、前記正極接合強度と前記負極接合強度との差は0.8N/15mm以上である。本発明によれば、外装体の皺の発生を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、前記正極接合層の厚さは、0.5μm以上かつ10μm以下であり、前記負極接合層の厚さは、0.5μm以上かつ10μm以下である。
【0009】
好ましくは、前記リチウム二次電池は、シート状デバイス、または、可撓性を有するデバイスにおける電力供給源として利用される。より好ましくは、前記リチウム二次電池は、前記可撓性を有するデバイスであるスマートカードにおける電力供給源として利用される。
【0010】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一の実施の形態に係るリチウム二次電池の断面図である。
図2】正極の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るリチウム二次電池1の構成を示す断面図である。図1では、図の理解を容易にするために、リチウム二次電池1およびその構成を、実際よりも厚く描いている。また、図1では、断面よりも手前側および奥側の一部の構造を併せて図示する。
【0013】
リチウム二次電池1は、例えば、シート状デバイス、または、可撓性を有するデバイスにおける電力供給源として利用される。シート状デバイスとは、比較的小さい力によって容易に変形する薄いデバイスであり、フィルム状デバイスとも呼ばれる。本実施の形態では、リチウム二次電池1は、例えば、演算処理機能を有するスマートカードにおける電力供給源として利用される。スマートカードは、カード型の可撓性を有するデバイスである。
【0014】
リチウム二次電池1は、小型かつ薄型の電池である。リチウム二次電池1の平面視における形状は、例えば略矩形状である。例えば、リチウム二次電池1の平面視における縦方向の長さは27mm~46mmであり、横方向の長さは38mm~46mmである。リチウム二次電池1の厚さ(すなわち、図1中の上下方向の厚さ)は、例えば、0.30mm~0.45mmである。リチウム二次電池1は、シート状または可撓性を有する薄板状の部材である。シート状の部材とは、比較的小さい力によって容易に変形する薄い部材であり、フィルム状の部材とも呼ばれる。以下の説明においても同様である。
【0015】
リチウム二次電池1は、正極2と、負極3と、セパレータ4と、電解質5と、外装体6と、2つの端子7とを備える。図1に示す例では、正極2、セパレータ4および負極3は、図中の上下方向に積層されている。以下の説明では、図1中の上側および下側を、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。また、図1中の上下方向を、単に「上下方向」と呼び、「積層方向」とも呼ぶ。図1中の上下方向は、リチウム二次電池1がスマートカード等のデバイスに搭載される際の実際の上下方向と一致する必要はない。
【0016】
図1に示す例では、セパレータ4は、積層方向において正極2の上面上に積層される。負極3は、当該積層方向においてセパレータ4の上面上に積層される。換言すれば、負極3は、積層方向においてセパレータ4の正極2とは反対側に積層される。例えば、正極2、セパレータ4および負極3はそれぞれ、平面視において略矩形状である。正極2、セパレータ4および負極3は、平面視において略同形状(すなわち、略同じ形かつ略同じ大きさ)である。
【0017】
外装体6は、シート状の部材である。外装体6は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属により形成された金属箔61と、絶縁性の樹脂層62とが積層されたラミネートフィルムにより形成される。外装体6は、樹脂層62が金属箔61の内側に位置する袋状の部材である。
【0018】
外装体6は、積層方向の両側から正極2および負極3を被覆する。外装体6は、正極2、セパレータ4、負極3および電解質5を内部に収容する。電解質5は、正極2、セパレータ4および負極3の周囲に連続して存在する。換言すれば、電解質5は、正極2および負極3の間に介在する。電解質5は、液状の電解液であり、正極2、セパレータ4および負極3に含浸している。図1では、電解質5への平行斜線の付与を省略している。2つの端子7は、外装体6の内部から外部へと突出している。外装体6の内部において、一方の端子7は正極2に電気的に接続されており、他方の端子7は負極3に電気的に接続されている。
【0019】
正極2は、正極集電体21と、正極活物質板22と、導電性接合層23とを備える。正極集電体21は、導電性を有するシート状の部材である。正極集電体21の下面は、正極接合層63を介して外装体6の樹脂層62に接合されている。正極活物質板22は、リチウム複合酸化物を含む比較的薄い板状セラミック焼結体である。正極活物質板22は、導電性接合層23を介して正極集電体21の上面上に接合される。正極活物質板22は、上下方向においてセパレータ4と対向する。
【0020】
正極集電体21は、例えば、アルミニウム等の金属により形成される金属箔と、当該金属箔の上面上に積層された導電性カーボン層とを備える。換言すれば、正極集電体21の正極活物質板22に対向する主面は、導電性カーボン層により被覆されている。上述の金属箔は、アルミニウム以外の様々な金属(例えば、ステンレス鋼等)により形成されてもよい。また、正極集電体21から上記導電性カーボン層は省略されてもよい。
【0021】
正極接合層63は、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂との混合樹脂により形成される。正極接合層63は、他の様々な材料により形成されてもよい。正極接合層63の厚さは、例えば0.5μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~5μmであり、より好ましくは0.5μm~3μmである。正極接合層63による正極集電体21と外装体6との接合強度(以下、「正極接合強度」と呼ぶ。)は、例えば1N/15mm以上であり、好ましくは1.5N/15mm以上であり、より好ましくは2.0N/15mm以上である。正極接合強度の上限は特には限定されないが、典型的には、正極接合強度は12N/15mm以下である。
【0022】
正極活物質板22は、複数の(すなわち、多数の)一次粒子が結合した構造を有している。当該一次粒子は、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される。リチウム複合酸化物は、典型的には、一般式:LiMO(式中、0.05<p<1.10)で表される酸化物である。Mは少なくとも1種類の遷移金属であり、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)から選択される1種以上を含む。層状岩塩構造とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造である。すなわち、層状岩塩構造は、酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的には、α-NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)である。
【0023】
導電性接合層23は、導電性粉末と、バインダとを含む。導電性粉末は、例えば、アセチレンブラックまたはケッチェンブラック等の粉末である。導電性接合層23は、上述の導電性粉末およびバインダ、並びに、溶媒を含む液状またはペースト状の接着剤が、正極集電体21または正極活物質板22に塗布されて、正極集電体21と正極活物質板22との間にて溶媒が蒸発して固化することにより形成される。
【0024】
図2は、正極2を示す平面図である。正極活物質板22は、複数の活物質板要素24を備える。複数の活物質板要素24はそれぞれ、導電性接合層23を介して正極集電体21に接合されている。複数の活物質板要素24は、正極集電体21上においてマトリクス状(すなわち、格子状)に配列される。平面視における各活物質板要素24の形状は、例えば略矩形である。複数の活物質板要素24は、平面視において略同形状(すなわち、略同じ形かつ略同じ大きさ)である。複数の活物質板要素24は、平面視において互いに離間している。
【0025】
図2に示す例では、平面視において略正方形の6個の活物質板要素24が、縦2個×横3個のマトリクス状に配列される。各活物質板要素24の平面視における一辺の長さは、例えば、9.5mm~10.5mmである。なお、複数の活物質板要素24の数および配置は、様々に変更されてよい。また、各活物質板要素24の形状も様々に変更されてよい。
【0026】
リチウム二次電池1では、各活物質板要素24と積層方向に重なる領域における正極集電体21と外装体6との接合強度は、複数の活物質板要素24間の間隙と積層方向に重なる領域における正極集電体21と外装体6との接合強度よりも大きい。
【0027】
正極集電体21の厚さは、例えば9μm~50μmであり、好ましくは9μm~20μmであり、より好ましくは9μm~15μmである。正極活物質板22の厚さ(すなわち、各活物質板要素24の厚さ)は、例えば15μm~200μmであり、好ましくは30μm~150μmであり、より好ましくは50μm~100μmである。導電性接合層23の厚さ(すなわち、各接合層要素の厚さ)は、例えば、3μm~28μmであり、好ましくは3μm~15μmであり、より好ましくは3μm~10μmである。
【0028】
負極3は、負極集電体31と、負極活物質層32とを備える。負極集電体31は、導電性を有するシート状の部材である。負極集電体31の上面は、負極接合層64を介して外装体6の樹脂層62に接合されている。負極活物質層32は、炭素質材料またはリチウム吸蔵物質を含む。負極活物質層32は、負極集電体31の下面上に塗工される。負極活物質層32は、上下方向においてセパレータ4と対向する。
【0029】
負極集電体31は、例えば、銅(Cu)等の金属により形成される金属箔である。当該金属箔は、銅以外の様々な金属(例えば、ニッケル等)により形成されてもよい。負極集電体31の積層方向への曲げに対する剛性は、例えば、正極集電体21の積層方向への曲げに対する剛性よりも高い。負極活物質層32では、炭素質材料は、例えば黒鉛であり、リチウム吸蔵物質は、例えばシリコンである。
【0030】
負極接合層64は、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂との混合樹脂により形成される。負極接合層64は、他の様々な材料により形成されてもよい。負極接合層64は、例えば、正極接合層63と実質的に同じ材料(すなわち、成分が略同じであり、かつ、各成分の含有率等が略同じ材料)により形成される。負極接合層64の厚さは、例えば0.5μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~5μmであり、より好ましくは0.5μm~3μmである。負極接合層64による負極集電体31と外装体6との接合強度(以下、「負極接合強度」と呼ぶ。)は、例えば0.8N/15mm以上であり、好ましくは1.2N/15mm以上であり、より好ましくは2.0N/15mm以上である。負極接合強度の上限は特には限定されないが、典型的には、負極接合強度は12N/15mm以下である。
【0031】
負極接合強度は、正極接合強度よりも小さい。正極接合強度と負極接合強度との差は、例えば0.8N/15mm以上であり、好ましくは1N/15mm以上であり、より好ましくは2N/15mm以上である。正極接合強度と負極接合強度との差の上限は特には限定されないが、典型的には、当該差は6N/15mm以下であり、より典型的には5N/15mm以下である。
【0032】
負極集電体31の厚さは、例えば8μm~25μmであり、好ましくは8μm~20μmであり、より好ましくは8μm~15μmである。負極活物質層32の厚さは、例えば50μm~200μmであり、好ましくは70μm~180μmであり、より好ましくは80μm~150μmである。
【0033】
以上に説明したように、リチウム二次電池1は、正極2と、セパレータ4と、負極3と、電解質5と、外装体6とを備える。セパレータ4は、所定の積層方向において正極2に積層される。負極3は、当該積層方向においてセパレータ4の正極2とは反対側に積層される。電解質5は、正極2、負極3およびセパレータ4に含浸される電解液である。外装体6は、積層方向の両側から正極2および負極3を被覆するシート状の部材である。外装体6は、正極2、セパレータ4、負極3および電解質5を内部に収容する。
【0034】
正極2は、導電性を有するシート状の正極集電体21と、リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体である正極活物質板22とを備える。正極活物質板22は、正極集電体21に接合されてセパレータ4と対向する。負極3は、導電性を有するシート状の負極集電体31と、炭素質材料またはリチウム吸蔵物質を含む負極活物質層32とを備える。負極活物質層32は、負極集電体31に塗工されてセパレータ4と対向する。外装体6は、正極集電体21に正極接合層63を介して接合され、負極集電体31に負極接合層64を介して接合される。負極集電体31と外装体6との接合強度である負極接合強度は、正極集電体21と外装体6との接合強度である正極接合強度よりも小さい。
【0035】
このように、リチウム二次電池1では、比較的剛性が高い正極活物質板22が設けられた正極2と外装体6との接合強度(すなわち、正極接合強度)が大きくされ、比較的剛性が低い負極活物質層32が設けられた負極3と外装体6との接合強度(すなわち、負極接合強度)が小さくされる。換言すれば、比較的変形しにくい正極2は外装体6と強めに接合され、比較的変形しやすい負極3は外装体6と弱めに接合される。これにより、リチウム二次電池1がねじられた場合(例えば、リチウム二次電池1の左右両端部が反対向きにねじられた場合)に、正極2と外装体6との間で生じる応力と、負極3と外装体6との間で生じる応力との差を小さくすることができる。その結果、正極2および負極3の曲げ剛性の差等に起因する外装体6の皺の発生を抑制することができる。
【0036】
上述のように、リチウム二次電池1では、リチウム二次電池1の変形時における外装体6の皺の発生を抑制することができる。したがって、リチウム二次電池1は、比較的変形しやすく曲げ荷重が加わりやすいデバイス、すなわち、シート状デバイスまたは可撓性を有するデバイスにおける電力供給源に特に適している。リチウム二次電池1が、当該可撓性を有するデバイスの1つであるスマートカードにおける電力供給源として利用される場合、スマートカードの薄型化と、スマートカードの変形時における外装体6の皺に起因するカード表面の隆起抑制とを好適に両立することができる。
【0037】
表1および表2では、リチウム二次電池1を搭載したスマートカードにおいて、リチウム二次電池1の正極接合強度および負極接合強度と、スマートカードの変形時におけるカード表面の隆起との関係を示す。実施例1~5では、正極接合強度は負極接合強度よりも大きく、比較例1,2では、正極接合強度は負極接合強度よりも小さい。実施例1~5では、正極接合強度は、負極接合強度の1.1倍よりも大きく、かつ、2.5倍以下である。正極接合強度は、正極集電体21と外装体6との接着温度および接着時に加えられる圧力を変更することにより変更した。負極接合強度についても同様である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表2における正極接合強度および負極接合強度は、剥離試験により求めた。当該剥離試験は、ピール試験機を用いて、以下の手順にて行った。ピール試験機としては、株式会社イマダ製のフォースゲージ「ZTA-20N」、縦型電動計測スタンド「MX2-500N」およびフィルムチャック「FC-21」を使用した。
【0041】
当該剥離試験では、まず、リチウム二次電池1を解体し、正極2と外装体6とが正極接合層63を介して接合されている構造体(以下、「正極-外装接着体」と呼ぶ。)と、負極3と外装体6とが負極接合層64を介して接合されている構造体(以下、「負極-外装接着体」と呼ぶ。)とを得た。
【0042】
正極接合強度を求める際には、正極-外装接着体から正極活物質板22を取り外し、正極集電体21と外装体6とが接合されている部分から、幅15mm×長さ25mmの短冊状の試験片を切り出した。続いて、当該試験片の長さ方向の一方の端部において、正極集電体21と外装体6とを長さ5mmだけ剥離させた。次に、試験片の剥離させた部分(すなわち、正極集電体21の端部および外装体6の端部)をピール試験機のフィルムチャックにて挟持した。そして、引張速度300mm/minでT字ピール試験を行い、正極集電体21が外装体6から剥離する際の引張強度の最大値を「正極接合強度」として取得した。
【0043】
負極接合強度を求める際には、負極-外装接着体において負極集電体31と外装体6とが接合されている部分から、幅15mm×長さ25mmの短冊状の試験片を切り出した。続いて、当該試験片の長さ方向の一方の端部において、負極集電体31と外装体6とを長さ5mmだけ剥離させた。次に、試験片の剥離させた部分(すなわち、負極集電体31の端部および外装体6の端部)をピール試験機のフィルムチャックにて挟持した。そして、引張速度300mm/minでT字ピール試験を行い、負極集電体31が外装体6から剥離する際の引張強度の最大値を「負極接合強度」として取得した。
【0044】
表2におけるカード表面の最大隆起は、「JIS X 6305-1(ISO/IEC10373-1)」に準拠したスマートカードのねじり試験後におけるカード表面の隆起の最大高さを示す。実施例1~5では、カード表面の最大隆起が45μm以下に抑制されており、ねじり試験結果は良好である。一方、比較例1,2では、カード表面の最大隆起は45μmよりも大きくなる。
【0045】
上述のように、正極接合強度および負極接合強度は、共に1N/15mm以上であることが好ましい。また、正極接合強度と負極接合強度との差は、0.8N/15mm以上であることが好ましい。これにより、実施例1~4に示すように、カード表面の最大隆起が40μm未満に抑制される。すなわち、リチウム二次電池1の変形時における外装体6の皺の発生をより好適に抑制することができる。
【0046】
上述のように、正極接合層63の厚さは、0.5μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。負極接合層64の厚さも、0.5μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。これにより、リチウム二次電池1の薄型化を実現しつつ、正極2および負極3と外装体6との好適な接合を実現することができる。
【0047】
リチウム二次電池1では、正極接合層63および負極接合層64は、同じ材料により形成される。これにより、リチウム二次電池1の製造を簡素化することができる。
【0048】
上述のリチウム二次電池1では、様々な変更が可能である。
【0049】
例えば、正極活物質板22は、必ずしも複数の活物質板要素24に分割されている必要はなく、1個の板状セラミック焼結体であってもよい。
【0050】
正極接合層63と負極接合層64とは、異なる材料(例えば、異なる種類の樹脂)により形成されてもよい。
【0051】
正極接合層63の厚さは、0.5μm未満であってもよく、10μmよりも大きくてもよい。負極接合層64の厚さも同様に、0.5μm未満であってもよく、10μmよりも大きくてもよい。
【0052】
本願の関連技術では、正極接合強度は1N/15mm未満であってもよい。負極接合強度も同様に、1N/15mm未満であってもよい。また、正極接合強度と負極接合強度との差は、0.8N/15mm未満であってもよい。
【0053】
負極集電体31の積層方向への曲げに対する剛性は、正極集電体21の積層方向への曲げに対する剛性よりも低くてもよく、略同じであってもよい。
【0054】
リチウム二次電池1は、スマートカード以外の可撓性を有するデバイス(例えば、カード型デバイス)、または、シート状デバイス(例えば、衣服等に設けられたウェアラブルデバイス、もしくは、身体貼付型デバイス)における電力供給源として利用されてもよい。また、リチウム二次電池1は、上述のデバイス以外の様々な対象物(例えば、IoTモジュール)の電力供給源として利用されてもよい。
【0055】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0056】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のリチウム二次電池は、例えば、演算処理機能を有するスマートカードにおける電力供給源等として、リチウム二次電池が利用される様々な分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 リチウム二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電解質
6 外装体
21 正極集電体
22 正極活物質板
31 負極集電体
32 負極活物質層
63 正極接合層
64 負極接合層
図1
図2