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特許7011713液化燃料発電及び物流システム、並びにそのシステムを利用した荷役方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】液化燃料発電及び物流システム、並びにそのシステムを利用した荷役方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/44 20060101AFI20220119BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20220119BHJP
   B63B 27/14 20060101ALI20220119BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20220119BHJP
   F17C 9/02 20060101ALI20220119BHJP
   B63J 2/12 20060101ALI20220119BHJP
   B63B 25/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B63B35/44 C
B63B35/00 T
B63B27/14 101A
F25D3/10 F
F17C9/02
B63B35/44 B
B63J2/12 B
B63B25/00 101H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020527038
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2018008271
(87)【国際公開番号】W WO2019098490
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】10-2017-0154000
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0064113
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】デウ シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ユン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヒョン シク
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-010985(JP,A)
【文献】特開2004-330831(JP,A)
【文献】特開2015-016861(JP,A)
【文献】特表2016-508916(JP,A)
【文献】特開2009-299911(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099309(WO,A1)
【文献】特開2013-124668(JP,A)
【文献】特開2015-025415(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0052741(KR,A)
【文献】特開2006-213229(JP,A)
【文献】特開昭53-032588(JP,A)
【文献】特開2002-068078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/44
B63B 35/00
B63B 27/14
F25D 3/10
F17C 9/02
B63J 2/12
B63B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵する貯蔵タンク;
浮遊構造物;
前記浮遊構造物の上部に搭載され、LNGを燃料として使用し、電気を生成する発電システム;及び
LNGを再気化させて前記発電システムに供給する燃料供給部;を含み、
海上を浮遊した状態で液化ガスを貯蔵する機能と、貯蔵された液化ガスを燃料として使用して発電する機能を有する浮遊式発電プラントの液化燃料発電及び物流システムにおいて、
前記浮遊構造物の上部に搭載される冷凍コンテナ
前記燃料供給部でLNGを再気化させる際に発生する気化熱を熱源で利用して前記冷凍コンテナの内部を冷却し、前記冷凍コンテナを冷却する過程で発生する温熱を熱源で利用してLNGを再気化させる熱交換を行う熱交換ユニット
前記冷凍コンテナの荷役が行われる荷役空間部;
前記浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプ;
前記荷役空間部に面して前記冷凍コンテナの周囲に設けられ、前記冷凍コンテナの荷役のために貨物車両が前記連結ランプと前記荷役空間部との間を移動できる空間であるメインデッキ;
前記メインデッキの周囲に貨物を荷役する時の安全を考慮して設置されるハンドレール;及び
前記浮遊構造物の貨物船が係留される側のメインデッキに設置される海上クレーンを備えることを特徴とする、液化燃料発電及び物流システム。
【請求項2】
前記冷凍コンテナの荷役において、前記連結ランプを介して貨物車両を前記冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、
前記浮遊構造物の舷に係留する貨物船を利用するかの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項3】
前記冷凍コンテナは軽量の鉄材で作製され、断熱施工されて前記浮遊構造物の上部に搭載されることを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項4】
前記冷凍コンテナは、1階に前記荷役空間部が形成され、
前記荷役空間部は、貨物車両の動線と、前記浮遊構造物の舷に係留する貨物船を考慮して、前記浮遊構造物の前記メインデッキの右舷側に開放されることを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項5】
前記燃料供給部は、再気化高圧ポンプと高圧気化器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項6】
前記熱交換ユニットは、
冷熱の冷媒が流れる第1冷媒循環ライン;
温熱の冷媒が流れる第2冷媒循環ライン;
冷媒を強制循環させる冷媒ポンプ;及び
前記冷凍コンテナに設置されて熱交換する熱交換器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム
【請求項7】
前記冷媒は、R-404A又はR-717のいずれか一方であることを特徴とする、請求項に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項8】
前記発電システムは、
供給されるガスを燃料として使用し、発電するガスタービン;
前記ガスタービンから出た高温の燃焼ガスの廃熱を回収して蒸気を発生させる蒸気発生器;
前記蒸気発生器から出た蒸気を利用して発電する蒸気タービン;
前記蒸気タービンから出た蒸気を凝縮させる凝縮器;及び
前記凝縮器から出た流体をポンピングするポンプを備えることを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項9】
前記発電システムは、DF(Dual Fuel)エンジンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の液化燃料発電及び物流システム。
【請求項10】
海上を浮遊した状態で液化ガスを貯蔵する機能と、貯蔵された液化ガスを燃料として使用して発電する機能を有する浮遊式発電プラントの浮遊構造物の上部に搭載された発電システムでLNGを燃料として使用し、電気を生成する運転中、LNGを再気化させる際に発生する気化熱を利用して、前記浮遊構造物の上部に搭載された冷凍コンテナの内部を冷却し、前記冷凍コンテナの内部を冷却する過程で発生する温熱を利用してLNGを再気化させる熱交換を行い、
前記浮遊構造物に、前記冷凍コンテナの荷役が行われる荷役空間部と、前記浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプと、前記荷役空間部に面して前記冷凍コンテナの周囲に設けられ、前記冷凍コンテナの荷役のために貨物車両が前記連結ランプと前記荷役空間部との間を移動できる空間であるメインデッキと、前記メインデッキの周囲に貨物を荷役する時の安全を考慮して設置されるハンドレールと、前記浮遊構造物の貨物船が係留される側のメインデッキに設置される海上クレーンとが備えられ、
前記冷凍コンテナの荷役において、前記連結ランプと前記メインデッキを介して貨物車両を前記冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、
前記浮遊構造物の側面に係留する貨物船を利用するかの少なくとも一方を行うことを特徴とする、液化燃料発電及び物流システムを利用した荷役方法。
【請求項11】
前記貨物車両の動線と前記貨物船による荷役の干渉を防止するように、前記冷凍コンテナの1階で前記浮遊構造物の前記メインデッキの右舷側に開放された前記荷役空間部が形成されることを特徴とする、請求項10に記載の液化燃料発電及び物流システムを利用した荷役方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料発電及び物流システム、並びにそのシステムを利用した荷役方法に関する。さらに詳しくは、浮遊構造物の上部に搭載された発電システム(Power generation system)でLNGを燃料として使用し、電気(Electricity)を生成する運転中、LNGを再気化させる時に発生する気化熱(Evaporation heat)を利用して、浮遊構造物の上部に搭載された冷凍コンテナの内部を冷却し、前記冷凍コンテナの内部を冷却する過程で発生する温熱をLNG再気化の熱源に再利用できるように構成する。また、冷凍コンテナの荷役において、浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプを介して貨物車両を冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、浮遊構造物の側面に係留する貨物船を利用する。このように、本発明は、発電システムの運転中で廃棄されるエネルギーを再利用してエネルギーを低減すると共に、冷凍コンテナの物流使用率を高める液化燃料発電及び物流システム、並びにそのシステムを利用した荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境に優しい発電(Electricity production)が要求されるため、天然ガスを利用した発電への関心が高まっている。
【0003】
特に、廃熱を回収して蒸気タービンを駆動する複合火力発電技術が登場し、ガス発電の効率向上とガス価格の下落安定に伴うガス発電の需要がますます高まっている状況である。
【0004】
電力供給が円滑でない新興開発国などでガス発電への関心が高まっているが、ガス発電の特性上、陸地でガス貯蔵施設などのガスインフラがなければ発電することができないため、その開発には多くの制限がある。
【0005】
このような問題点を解決するために、FSRU(Floating Storage Re-gasification Unit)と呼ばれる浮遊式の海上ガス貯蔵再気化設備を備えた船舶が登場することになり、このような浮遊式の海上ガス貯蔵再気化設備を備えた船舶を利用して陸地の発電所にガスを供給する。
【0006】
しかし、前記FSRUなどを利用した陸地での発電(Electricity production)は、海上でFSRUを設置することと、陸地で発電所を建設することとの二重負担の問題がある。つまり、FSRUだけでなく、陸上発電所を建設するために、場所と建設費を確保しなければならないという欠点がある。特に、陸上発電所の建設に多くの時間がかかるため、短時間で電力を供給することは困難である。
【0007】
そこで、前述した方法に加えて、海上でガスを貯蔵しながら廃熱を利用して電力を生産する新しい進歩タイプの浮遊式ガス複合発電プラント(Floating and Storage Power Plant,FSPP)に関する研究が活発に行われている。
【0008】
ところで、船舶には、農産物、水産物、肉などを冷蔵及び冷凍保管する冷凍コンテナが備えられる。
【0009】
冷凍コンテナ(Refrigerated containers)は、輸送中に一定温度を維持する必要がある冷凍貨物や冷蔵貨物などをコンテナ船で輸送するために使用されるものであって、冷凍コンテナは断熱構造を有し、内部温度を-30℃~30℃に維持する冷凍システムを備え、輸送中の冷却を維持するため、別の電力が継続的に供給される。
【0010】
冷凍システムは、圧縮機(Compressor)で圧縮された冷媒が各部分を通じてコンテナボックスまで冷気を供給すると共に、船舶の居住区の冷房のために、別の空調システム(Air-conditioning system)を各居住区に設置して冷気を供給する。なお、冷凍コンテナは、冷媒を所定のプロセス、すなわち、圧縮、凝縮、膨張、蒸発を順次に行う過程で、冷気を発生させる冷凍サイクルを利用する。
【0011】
このような冷凍サイクルは、その構成を簡単に説明すると、冷媒を圧縮して高温高圧の液体状態で吐出する圧縮機、圧縮された冷媒を外気と熱交換(熱放出)して常温高圧の状態に変化させる凝縮ユニット、凝縮された冷媒を断熱膨張させて低温低圧の気体状態に相変化させる膨張バルブ、及び低温低圧の気体状態の冷媒を外気と熱交換して常温低圧の状態で再び圧縮機に送出する蒸発ユニットで構成される。
【0012】
しかし、従来のコンテナ船の冷凍システムは、冷凍コンテナ自体に設けられた冷凍機まで多くの電力を供給する必要があるため、別の発電機の追加設置が必要であり、発電機の追加設置による費用負担と燃料価格の負担が発生するという問題がある。
【0013】
また、従来の冷凍システムは重油(HFO)で運行する発電機を使用するため、SO,NO,CO,及び微細粉塵などの汚染物質が排出されて環境汚染をもたらすという問題がある。
【0014】
また、従来のコンテナ船は、コンテナ自体に冷凍機などの複雑な機械設備が設置されるため、コンテナの荷役中に冷凍コンテナが損傷する危険性が高く、維持と保守の費用が過大になるという問題がある。
【0015】
また、従来のLNG燃料推進コンテナ船の場合、燃料タンクから自然発生する蒸発ガス(BOG,ボイルオフガス)の超低温エネルギーを別の工程なしでエンジンやボイラーの燃料としてすぐに消費するため、エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0016】
また、従来の冷凍システムは、冷媒を冷凍機に通過させて、強制圧縮した後、膨張させる過程で冷媒が漏洩する虞があり、漏洩した冷媒は、地球のオゾン層を破壊する物質であるため、地球温暖化の原因になるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、一般的に、LNG再気化装置で液化天然ガス(LNG)を燃料ガスとして再気化させる方法には、海水を利用する方法や、グリコール水溶液などの熱媒介流体を使用する方法などがある。
【0018】
しかし、グリコール水溶液などの熱媒介流体を用いる場合、LNGの冷熱によって冷却されたグリコール水溶液が海水と熱交換して加熱され、熱交換によって加熱された海水は海に排出されるため、環境汚染を招くという問題がある。
【0019】
また、LNG再気化装置は気化器を作動させるために大量の水(グリコール水溶液)が必要であり、そのために大量の水を供給するポンプが必要となるため、多くの電力消費が発生するという問題がある。
【0020】
本発明は、前述した問題点を解決するためになされたものであり、LNGが気化する際に捨てられる気化熱(Evaporation heat)を利用し、浮遊構造物の上部に搭載された冷凍コンテナの内部を冷却することで、廃棄されるエネルギーを再利用してエネルギーと燃料費用を低減し、海に廃棄される加熱海水による環境汚染を効果的に防止することができる、環境に優しい技術を提供することをその目的としている。
【0021】
また、本発明は、冷凍コンテナの荷役において、浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプを介して貨物車両を冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、浮遊構造物の側面に係留する貨物船を利用して荷役することによって、貨物荷役が容易になると共に、貨物車両の動線と貨物船による荷役動線が重ならず、貨物荷役における干渉を効果的に防止して冷凍コンテナの物流利用率を高めることができる技術を提供することをその目的としてもいる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述した目的を達成するため本発明は、液化燃料発電及び物流システム、並びにそのシステムを利用した荷役方法を提供する。
【0023】
本発明の液化燃料発電及び物流システムは、浮遊構造物;前記浮遊構造物の上部に搭載され、LNGを燃料として使用し、電気を生成する発電システム;LNGを再気化させて前記発電システムに供給する燃料供給部;前記浮遊構造物の上部に搭載される冷凍コンテナ;及び前記燃料供給部でLNGを再気化させる際に発生する気化熱を熱源として利用して前記冷凍コンテナの内部を冷却し、前記冷凍コンテナを冷却する過程で発生する温熱を熱源として利用してLNGを再気化させる熱交換を行う熱交換ユニットを備える。
【0024】
本発明の液化燃料発電及び物流システムでは、前記冷凍コンテナの荷役において、前記浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプ(connection ramp)を介して貨物車両を前記冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、前記浮遊構造物の舷に係留する貨物船を利用するかの少なくとも一方である。
【0025】
前記冷凍コンテナは軽量の鉄材で作製され、断熱施工されて前記浮遊構造物の上部に搭載される構成である。
【0026】
前記冷凍コンテナは、1階に荷役空間部が形成され、前記荷役空間部は、貨物車両の動線と、前記浮遊構造物の舷に係留する貨物船を考慮して、前記浮遊構造物のメインデッキの右舷側に開放された構成であり得る。
【0027】
前記浮遊構造物のメインデッキの周囲には、貨物を荷役する時の安全を考慮して、ハンドレールが設置されることが好ましい。
【0028】
前記燃料供給部は、再気化高圧ポンプと高圧気化器を備える。
【0029】
前記熱交換ユニットは、冷熱の冷媒が流れる第1冷媒循環ライン;温熱の冷媒が流れる第2冷媒循環ライン;冷媒を強制循環させる冷媒ポンプ;及び前記冷凍コンテナに設置されて熱交換する熱交換器を備える。
【0030】
前記冷媒は、R-404A又はR-717(アンモニア)のいずれか一方である。
【0031】
前記発電システムは、供給されるガスを燃料として使用し、発電するガスタービン;前記ガスタービンから出た高温の燃焼ガスの廃熱を回収して蒸気を発生させる蒸気発生器;前記蒸気発生器から出た蒸気を利用して発電する蒸気タービン;前記蒸気タービンから出た蒸気を凝縮させる凝縮器;及び前記凝縮器から出た流体をポンピングするポンプを備える。
【0032】
前記発電システムは、DF(Dual Fuel)エンジンを備える。
【0033】
本発明に係る液化燃料発電及び物流システムを利用した荷役方法は、浮遊構造物の上部に搭載された発電システムでLNGを燃料として使用し、電気を生成する運転中、LNGを再気化させる際に発生する気化熱を利用して、前記浮遊構造物の上部に搭載された冷凍コンテナの内部を冷却し、前記冷凍コンテナの内部を冷却する過程で発生する温熱を利用してLNGを再気化させる熱交換を行い、前記冷凍コンテナの荷役において、前記浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプを介して貨物車両を前記冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、前記浮遊構造物の側面に係留する貨物船を利用するかの少なくとも一方を行う。
【0034】
前記冷凍コンテナの1階には、前記浮遊構造物のメインデッキの右舷側に開放された荷役空間部が形成され、前記貨物車両の動線と前記貨物船による荷役干渉を防止する。
【発明の効果】
【0035】
以上で説明したように、従来のLNG気化器(Vaporizer)で発生するLNG冷熱を海水との熱交換で海に廃棄する代わりに、本発明では、浮遊式発電プラントで発電運転する時、燃料として使用する液化ガスを再気化させる際に発生する気化熱、すなわち、冷熱を冷凍コンテナの冷却熱源として使用することによって、エネルギー効率を向上させると共に、燃料費用を低減することができる。また、海に廃棄される加熱海水による環境汚染を効果的に防止することができる。さらに、冷熱を活用して凍結する時、急速凍結の時間が減少して、凍結製品の品質をより向上させることができる。
【0036】
さらにまた、本発明では、冷凍コンテナの内部を冷却する過程で発生する温熱をLNG再気化の熱源として再利用することができるため、エネルギーの低減はもちろん、冷凍コンテナの活用度を高めることができる。
【0037】
そして、本発明では、従来とは異なり、冷凍コンテナの圧縮機を使用する時に発生する騒音、振動を除去することができる。
【0038】
すなわち、従来の冷凍コンテナの冷凍サイクルには圧縮機が必要であり、圧縮機が動作する時に騒音が発生し、相当量の電力が消費されるという問題があるが、本発明では、気化熱を冷凍コンテナの冷却熱源として使用することによって、圧縮機が不要になる。このため、騒音は全く発生せず、エネルギーの低減はもちろん、冷凍コンテナに冷凍サイクル関連装置が不要になり、製作費用を低減させるという効果もある。
【0039】
加えて、本発明では、鉄構造物の冷凍コンテナを浮遊式発電設備の上部に搭載して一体型にするため、空間の使用率が高められ、クレーン、貨物トラックを利用して陸上、海上での物流の移動が容易になる。
【0040】
また、本発明では、冷凍コンテナの荷役において、浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプを介して貨物車両を冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、浮遊構造物の側面に係留する貨物船を利用して荷役することによって、エネルギーの低減と冷凍コンテナの物流使用率をより高めることができる。
【0041】
さらに、本発明では、自家発電設備を備えた浮遊式冷凍コンテナへの船舶と陸上からの冷凍貨物の物流移動の便宜が極大化し、島嶼地域と立ち遅れた地域における設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る液化燃料発電及び物流システムの熱交換運転を説明する構成図。
図2】本発明に係る液化燃料発電及び物流システムを示す斜視図。
図3】本発明に係る液化燃料発電及び物流システムを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
周知のように、LNGの液化温度は常圧で-163℃の極低温であるため、LNGには、温度が常圧で-163℃より少しだけ高くても蒸発する特性がある。
【0044】
船舶運航中、LNGタンクに外部熱が伝達されるため、LNGタンク内ではLNGが気化して蒸発ガス(BOG,ボイルオフガス)が継続的に発生する。
【0045】
LNGタンクの上部には燃料供給ラインが連結され、LNGタンク内で発生する蒸発ガスは、圧縮機で圧縮された後、発電システムに供給される。
【0046】
通常、LNGタンクで発生する蒸発ガスだけでは発電システムで必要な燃料ガス量を充足させることができないため、不足分の燃料ガスを補充するのに、LNGタンクからLNGを排出させて気化器で気化させ、圧縮機で圧縮した後、発電システムに供給することになる。
【0047】
気化器は、燃料供給部に配置され、液化ガスを気化させる役割をする。気化器には、液化ガスを気化させるための熱源が必要になる。
【0048】
従来では、液化ガスの気化熱源として海水を使用するが、液化ガスとの熱交換によって冷やされた海水が海にそのまま排出される場合、周囲の海水との温度差によって海洋生態系を破壊する原因となり、深刻な環境問題が発生する。
【0049】
また、海水がそのまま海に排出される場合、液化ガスとの熱交換過程で吸収された冷熱エネルギーが必要な場所で使用されず、海に捨てられる結果となる。さらに、気化器内の氷結を防止するために、熱源としてグリコール水溶液(glycol water)を使用する場合にも、液化ガスとの熱交換によって冷却されたグリコール水溶液の温度を上昇させるために、一般的に海水が使用され、この場合にも前記のような結果をもたらす。
【0050】
そこで、本発明では、浮遊構造物の上部に搭載された発電システムにおいて、LNGを燃料として使用して電気を生成する運転中、LNGを再気化させる際に発生する気化熱を利用して、浮遊構造物の上部に搭載された冷凍コンテナの内部を冷却し、さらに冷凍コンテナを冷却する過程で発生する温熱を利用して、LNGを再気化する熱交換を行い、燃料費用を低減すると共に、海に廃棄される加熱海水による環境汚染を効果的に防止する。
【0051】
例えば、従来の冷凍コンテナでは、内部温度を約-30℃~30℃に維持するが、本発明は気化熱(冷熱)を利用するため、冷凍コンテナの内部温度を約-60℃~10℃に維持することができ、冷却性能が向上する。
【0052】
以下、添付図面を参照し、本発明に係る液化燃料発電及び物流システム、並びにそのシステムを利用した荷役方法について説明する。
【0053】
本実施形態の液化燃料発電及び物流システムは、冷凍コンテナが搭載された浮遊式の発電システムであり、浮遊構造物(110);浮遊構造物(110)の上部に搭載され、LNGを燃料として使用し、電気を生成する発電システム(120);LNGを再気化させて発電システム(120)に供給する燃料供給部(130);浮遊構造物(110)の上部に搭載される冷凍コンテナ(140);及び燃料供給部(130)でLNGを再気化させる際に発生する気化熱を熱源として利用して冷凍コンテナ(140)の内部を冷却し、冷凍コンテナ(140)を冷却する過程で発生する温熱を熱源として利用してLNGを再気化する熱交換を行う熱交換ユニット(150)を備える。
【0054】
本実施形態で使用される発電システム(120)は、ガスタービンやDF(Dual Fuel)エンジンを備える。
【0055】
発電システム(120)は、図示してないが、供給されるガスを燃料として使用し、発電(Electricity production)するガスタービン;ガスタービンから出た高温の燃焼ガスの廃熱を回収して蒸気を発生させる蒸気発生器;蒸気発生器から出た蒸気を利用して発電する蒸気タービン;蒸気タービンから出た蒸気を凝縮させる凝縮器;及び凝縮器から出た流体をポンピングするポンプを含むことができる。
【0056】
燃料供給部(130)は、再気化高圧ポンプ(131)と高圧気化器(132)を備えることができる。
【0057】
熱交換ユニット(150)は、冷熱の冷媒が流れる第1冷媒循環ライン(151);温熱の冷媒が流れる第2冷媒循環ライン(152);冷媒を強制循環させる冷媒ポンプ(153);及び冷凍コンテナ(140)に設置されて熱交換する熱交換器(154)を備える。
【0058】
また、熱交換ユニット(150)は、冷媒の流れを制御するバルブなどを備えることができるが、これに関しての具体的な説明は省略する。本実施形態で使用される冷媒は、R-404A又はR-717(アンモニア)のいずれか一方であるが、これらに限定されない。
【0059】
また、冷凍コンテナ(140)は、軽量の鉄材で作製され、断熱施工されて浮遊構造物(110)の上部に搭載される。冷凍コンテナ(140)のループには冷却水タンク(140a)などが設置される。
【0060】
本実施形態では、冷凍コンテナ(140)として4階建てのものを例示しているが、これに限定されず、浮遊構造物(110)の規模、サイズ又は必要な冷凍能力に応じて様々に変更することができる。
【0061】
冷凍コンテナ(140)の1階には荷役空間部(141)が形成され、2階には遮光幕(又は遮断幕)(142)が設置され、遮光幕(142)は、油圧シリンダ(143)によって折畳みと展開を行うことができるように構成することができる。
【0062】
遮光幕(142)は、太陽光を遮断する機能だけでなく、雨雪も防ぐため、円滑な荷役が可能になる。
【0063】
荷役空間部(141)は、貨物車両(10)の動線と、浮遊構造物(110)の舷に係留又は接岸する貨物船(20)とを考慮して、浮遊構造物(110)のメインデッキ(111)の右舷側に開放された構成とすることができる。
【0064】
浮遊構造物(110)のメインデッキ(111)には、海上クレーン(115)を設置することができる。
【0065】
浮遊構造物(110)のメインデッキ(111)の周囲には、貨物を荷役する時の安全を考慮して、ハンドレール(112)を設置することが好ましい。
【0066】
浮遊構造物(110)の左舷側及び右舷側の両方には、衝撃を吸収するため、フェンダー(F)を設置することが好ましい。
【0067】
また、本実施形態において、冷凍コンテナ(140)の荷役は、第一にシップトゥショア(ship to shore)、第二にシップトゥシップ(ship to ship)、第三にシップトゥショアとシップトゥシップを同時に行う方法を全て含む。
【0068】
言い換えると、第一の荷役方式は、浮遊構造物(110)と陸上を連結する連結ランプ(114)を介して貨物車両(10)を冷凍コンテナ(140)の荷役場まで進入させる方式であり、第二の荷役方式は、浮遊構造物(110)の側面に係留する貨物船(20)を利用する方式であり、第三の荷役方式は前記二つの荷役方式を同時に行う方式である。
【0069】
一方、本実施形態の液化燃料発電及び物流システムを利用した荷役方法は、浮遊構造物(110)の上部に搭載された発電システム(120)において、LNGを燃料として使用し、電気を生成する運転中、LNGを再気化させる時に発生する気化熱を利用して、浮遊構造物(110)の上部に搭載された冷凍コンテナ(140)の内部を冷却し、冷凍コンテナ(140)を冷却する過程で発生する温熱を利用してLNGを再気化する熱交換を行う。そして、冷凍コンテナ(140)の荷役には、浮遊構造物(110)と陸上を連結する連結ランプ(114)を介して貨物車両(10)を冷凍コンテナ(140)の荷役場まで進入させるか、浮遊構造物(110)の側面に係留する貨物船(20)を利用するかの少なくともいずれか一方を用いる。
【0070】
冷凍コンテナ(140)の1階には浮遊構造物(110)のメインデッキ(111)の右舷側に開放された荷役空間部(141)が形成され、荷役空間部(141)を利用することで貨物荷役が容易になり、貨物車両(10)の動線と貨物船(20)による荷役動線が重ならず、貨物の入荷時に発生する虞のある動線の干渉を効果的に防止することができる。
【0071】
一方、本実施形態で使用される液化ガスは、LNGだけでなく、LPG,DMEなどの液化として貯蔵できる燃料ガスの全てを含む。
【0072】
本実施形態で使用される液化ガスは、LNGやLPG、エチレン、アンモニアなどのように、一般的に液体状態で保管される全てのガス燃料を包括し、加熱や加圧による液体状態ではないものも便宜上、液化ガスに含める。このことは、蒸発ガスにも同様に適用する。
【0073】
また、LNGは、便宜上、液体状態であるNG(Natural Gas)だけでなく、超臨界状態のNGなどの全てを包括し、蒸発ガスは、気体状態の蒸発ガスだけでなく、液化された蒸発ガスをも含む。
【0074】
液化天然ガス(Liquefied Natural Gas, LNG)は、ガス田から採取した天然ガスを液化させたものであり、その主成分はメタンである。LNGは、冷却又は加圧によって液化させると、体積が約1/600まで減少し、空間効率面で有利であるが、沸点が約-162℃と低く、輸送及び貯蔵時に、特殊に断熱構成されたタンクや容器に充填して温度を沸点以下に維持しなければならない。
【0075】
液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas, LPG)は、油田から原油を採取する時、若しくは原油を精製する時に出る炭化水素(炭素原子が2個以上)の成分、又は天然ガスの採取時に同時に採取される重炭化水素成分を比較的低い圧力(6~7kg/cm2)を加えて、冷却して液化させたものである。液化すると、体積が約1/250に減って貯蔵と輸送に便利である。主成分はプロパンとブタンであり、少量のエタン、プロピレン、ブチレンなどを含む。
【0076】
ジメチルエーテル(Dimethyl Ether, DME)は、エーテルの一種であり、LPGより引火性が低く非毒性であって、酸素含有率が高いため、燃焼時に煤煙の発生が少なく、環境負荷が少ないという特徴がある。
【0077】
以上で説明したように、従来のLNG気化器(Vaporizer)で発生するLNG冷熱を海水との熱交換で海に廃棄する代わりに、本実施形態では、浮遊式発電プラントで発電運転する時、燃料として使用する液化ガスを再気化させる際に発生する気化熱、すなわち、冷熱を冷凍コンテナの冷却熱源として使用することによって、エネルギー効率を向上させると共に、燃料費用を低減することができる。また、海に廃棄される加熱海水による環境汚染を効果的に防止することができる。さらに、冷熱を活用して凍結する時、急速凍結の時間が減少して、凍結製品の品質をより向上させることができる。
【0078】
さらにまた、本実施形態では、冷凍コンテナの内部を冷却する過程で発生する温熱をLNG再気化の熱源として再利用することができるため、エネルギーの低減はもちろん、冷凍コンテナの活用度を高めることができる。
【0079】
そして、本実施形態では、従来とは異なり、冷凍コンテナの圧縮機を使用する時に発生する騒音、振動を除去することができる。
【0080】
すなわち、従来の冷凍コンテナの冷凍サイクルには圧縮機が必要であり、圧縮機が動作する時に騒音が発生し、相当量の電力が消費されるという問題があるが、本実施形態では、気化熱を冷凍コンテナの冷却熱源として使用することによって、圧縮機が不要になる。このため、騒音は全く発生せず、エネルギーの低減はもちろん、冷凍コンテナに冷凍サイクル関連装置が不要になり、製作費用を低減させるという効果もある。
【0081】
加えて、本実施形態では、鉄構造物の冷凍コンテナを浮遊式発電設備の上部に搭載して一体型にするため、空間の使用率が高められ、クレーン、貨物トラックを利用して陸上、海上での物流の移動が容易になる。
【0082】
また、本実施形態では、冷凍コンテナの荷役において、浮遊構造物と陸上を連結する連結ランプを介して貨物車両を冷凍コンテナの荷役場まで進入させるか、浮遊構造物の側面に係留する貨物船を利用して荷役することによって、エネルギーの低減と冷凍コンテナの物流使用率をより高めることができる。
【0083】
さらに、本実施形態では、自家発電設備を備えた浮遊式冷凍コンテナへの船舶と陸上からの冷凍貨物の物流移動の便宜が極大化し、島嶼地域と立ち遅れた地域における設置が容易になる。
図1
図2
図3