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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20220119BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20220119BHJP
   F16J 15/3244 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
F16J15/18 C
F16J15/3232 201
F16J15/3244
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020530126
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2019026214
(87)【国際公開番号】W WO2020013020
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018130299
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】杉原 弘恵
(72)【発明者】
【氏名】米内 寿斗
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寿喜
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
(72)【発明者】
【氏名】山口 優
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051920(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/093468(WO,A1)
【文献】特開2016-156418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16-15/32
F16J 15/3204-15/3236
F16J 15/324-15/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔と該貫通孔に挿通される軸との間の密封を図るための密封装置であって、
軸線周りに環状の補強環と、
前記補強環に取り付けられている前記軸線周りに環状の弾性体から形成された弾性体部とを備え、
前記弾性体部は、前記軸に該軸が摺動可能に当接する環状のシールリップと、前記シールリップよりも外側に設けられており前記外側に向かって延びる環状のサイドリップとを有しており、
前記サイドリップの内周側の面には、前記軸線周りに環状の溝である周方向溝が少なくとも1つ設けられており、また、前記軸線の方向に亘って延びる溝である軸方向溝が少なくとも1つ設けられており、
前記周方向溝と前記軸方向溝とは接続しており、
前記軸方向溝の外側の端部における幅は、前記軸方向溝の内側の端部における幅よりも小さく、
複数の前記周方向溝が設けられており、
前記軸方向溝は、互いに隣接する前記周方向溝の間に設けられていることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
貫通孔と該貫通孔に挿通される軸との間の密封を図るための密封装置であって、
軸線周りに環状の補強環と、
前記補強環に取り付けられている前記軸線周りに環状の弾性体から形成された弾性体部とを備え、
前記弾性体部は、前記軸に該軸が摺動可能に当接する環状のシールリップと、前記シールリップよりも外側に設けられており前記外側に向かって延びる環状のサイドリップとを有しており、
前記サイドリップの内周側の面には、前記軸線周りに環状の溝である周方向溝が少なくとも1つ設けられており、また、前記軸線の方向に亘って延びる溝である軸方向溝が少なくとも1つ設けられており、
前記周方向溝と前記軸方向溝とは接続しており、
前記サイドリップは、前記軸に取り付けられる環状の部材に接触するようになっており、
前記周方向溝と前記軸方向溝との少なくともいずれかの一部は、前記サイドリップが前記環状の部材に接触する部分に延びていることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
前記軸方向溝は、前記軸線に平行に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記軸方向溝は、前記軸線に対して斜めに延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項5】
前記軸方向溝の外側の端部における幅は、前記軸方向溝の内側の端部における幅よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の密封装置。
【請求項6】
複数の前記周方向溝が設けられており、
前記軸方向溝は、互いに隣接する前記周方向溝の間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関し、特に、回転する軸に用いられる密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転する軸と、この軸が挿入される貫通孔との間の隙間を密封するために密封装置が使用されている。このような密封装置の中には、車両のディファレンシャル機構のように、泥水や雨水、ダスト等の異物に晒される機構に用いられるものがある。このような密封装置には、異物の侵入を防止するために、外気側に延びるように形成されたサイドリップを有するものがある。サイドリップは、デフレクタ等の軸から径方向に延びる部材に接触して、外気側から内部に異物が侵入することを防ぐ。
【0003】
図10は、例えばトランスアクスルが備えるディファレンシャル機構に取り付けられた状態における従来の密封装置の断面図である。図10に示すように、従来の密封装置100は、環状の補強環101と、補強環101に一体的に形成されている弾性体から成る環状の弾性体部102とを備え、弾性体部102は、シールリップ103と、ダストリップ104と、サイドリップ105とを備えている。使用状態において、シールリップ103は、ディファレンシャル機構110の車軸111に当接しており、ディファレンシャル機構110が収容されているハウジング112内の潤滑油の漏洩を防止する。ダストリップ104は、シールリップ103よりも外側(外気側)に形成されており、車軸111に当接又は近接して、ハウジング112内に外部から異物が侵入することを防止する。サイドリップ105は、ダストリップ104よりも外周側において外側に向かって延びており、外側に向かうに連れて拡径する円錐筒状の形状を有している。サイドリップ105は、使用状態において、図10に示すように、先端縁において、車軸111に固定された環状のデフレクタ113の摺動面113aに当接し、外部からの異物の侵入を防止する。サイドリップ105は、デフレクタ113に当接する状態において弾性変形して湾曲しており、車軸111の回転時に、サイドリップ105とデフレクタ113の摺動面113aとの間に摺動抵抗が発生する。この摺動抵抗を低減するために、サイドリップ105の内周面には潤滑剤としてのグリースが塗布されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-103142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の密封装置100においては、上述のようにサイドリップ105とデフレクタ113との間のグリースにより、サイドリップ105とデフレクタ113との間に摺動抵抗の低減が図られている。しかしながら、デフレクタ113の回転による遠心力より、サイドリップ105とデフレクタ113との間のグリースが飛ばされてしまい、サイドリップ105とデフレクタ113との間のグリースの量が低減してしまう場合があった。サイドリップ105とデフレクタ113との間のグリースの量が低減してしまうと、サイドリップ105によるデフレクタ113に対する摺動抵抗が増し、サイドリップ105の摩耗促進、発熱によるへたりが発生し、サイドリップ105のシール性能が低下してしまうことがある。
【0006】
このように、従来のディファレンシャル機構に用いられる密封装置に対しては、サイドリップとデフレクタとの間のグリースの量の低減を抑制することができる構成が求められていた。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイドリップとデフレクタとの間の潤滑剤の量の低減を抑制することができる密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、貫通孔と該貫通孔に挿通される軸との間の密封を図るための密封装置であって、軸線周りに環状の補強環と、前記補強環に取り付けられている前記軸線周りに環状の弾性体から形成された弾性体部とを備え、前記弾性体部は、前記軸に該軸が摺動可能に当接する環状のシールリップと、前記シールリップよりも外側に設けられており前記外側に向かって延びる環状のサイドリップとを有しており、前記サイドリップの内周側の面には、前記軸線周りに環状の溝である周方向溝が少なくとも1つ設けられており、また、前記軸線の方向に亘って延びる溝である軸方向溝が少なくとも1つ設けられており、前記周方向溝と前記軸方向溝とは接続していることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記軸方向溝は、前記軸線に平行に延びている。
【0010】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記軸方向溝は、前記軸線に対して斜めに延びている。
【0011】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記軸方向溝の外側の端部における幅は、前記軸方向溝の内側の端部における幅よりも小さい。
【0012】
本発明の一態様に係る密封装置において、複数の前記周方向溝が設けられており、前記軸方向溝は、互いに隣接する前記周方向溝の間に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る密封装置によれば、サイドリップとデフレクタとの間の潤滑剤の量の低減を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における断面図である。
図2図1に示す密封装置における周方向溝及び軸方向溝が形成された部分のサイドリップの内周面を拡大して示す図であり、内周面を径方向に向かって見た図である。
図3】適用対象の一例であるトランスアクスルに取り付けられた状態における密封装置を示すための図であり、トランスアクスルの密封装置近傍を拡大して示す軸線に沿う部分拡大断面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における断面図である。
図5図4に示す密封装置における周方向溝及び軸方向溝が形成された部分のサイドリップの内周面を拡大して示す図であり、内周面を径方向に向かって見た図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る密封装置における軸方向溝の変形例を示すための図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における断面図である。
図8図7に示す密封装置における周方向溝及び軸方向溝が形成された部分のサイドリップの内周面を拡大して示す図であり、内周面を径方向に向かって見た図である。
図9図7に示す密封装置における軸方向溝を拡大して示す図である。
図10】トランスアクスルが備えるディファレンシャル機構に取り付けられた状態における従来の密封装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1の概略構成を示すための、軸線x沿う断面における断面図である。本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1は、互いに相対回転する、貫通孔とこの貫通孔に相通された軸との間の隙間を密封するために用いられる。密封装置1は、例えば、車両や汎用機械等において旋回時における左右の駆動輪の回転速度の差を吸収するためのディファレンシャル機構を備える装置に用いられる。ディファレンシャル機構を備える装置としては、例えば、トランスアクスルやディファレンシャル装置がある。本実施の形態においては、密封装置1はトランスアクスルに用いられるものとする。具体的には、密封装置1は、後述するように、トランスアクスルにおいて、ハウジングに形成された貫通孔と、この貫通孔に回動自在に挿通されたディファレンシャル機構の出力軸としての車軸との間の密封を図るために用いられる。密封装置1の適用対象はこの具体例に限られず、種々の機械において回転する部材の密封装置として適用することができる。
【0017】
以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向を外側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向を内側とする。外側とは適用対象の外部に面する側であり、内側とは適用対象の内部に面する側である。より具体的には、外側とは、ディファレンシャル機構を備えるトランスアクスルにおいてハウジングの外部に面する側であり、大気側であり、内側とは、トランスアクスルにおいてハウジングの内部に面する側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)を内周側とする。
【0018】
密封装置1は、軸線x周りに環状の補強環10と、補強環10に取り付けられている軸線x周りに環状の弾性体から形成された弾性体部20とを備えている。弾性体部20は、後述する適用対象の軸にこの軸が摺動可能に当接する環状のシールリップ21と、シールリップ21よりも外側(矢印a方向側)に設けられており外側に向かって延びる環状のサイドリップ22とを有している。サイドリップ22の内周側の面である内周面22aには、軸線x周りに環状の溝である周方向溝31が少なくとも1つ設けられており、また、軸線xの方向に亘って延びる溝である軸方向溝41が少なくとも1つ設けられている。周方向溝31と軸方向溝41とは接続している。以下、密封装置1の構造を具体的に説明する。
【0019】
補強環10は、図1に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の部材であり、軸線xに沿う断面(以下、単に「断面」ともいう。)の形状がL字状又は略L字状の形状を呈している。補強環10は、例えば、軸線x方向に延びる円筒状又は略円筒状の部分である円筒部11と、円筒部11の外側の端部から内周側に向かって延びる中空円盤状の部分である円盤部12とを有している。円筒部11は、後述するように、トランスアクスルのハウジングに形成された貫通孔の内周面に密封装置1が嵌合可能となるように形成されており、直接貫通孔の内周面に接触して嵌合可能となっていてもよく、また、弾性体部20の部分を介して貫通孔の内周面に接触して嵌合可能となっていてもよい。
【0020】
弾性体部20は、図1に示すように、補強環10に取り付けられており、本実施の形態においては補強環10全体を覆うように補強環10と一体的に形成されている。弾性体部20は、上述のように、シールリップ21と、サイドリップ22とを有しており、また、シールリップ21よりも外側(矢印a方向側)に設けられており軸線xに向かって延びる環状のダストリップ23を有している。また、弾性体部20は、環状のリップ腰部24を有している。シールリップ21は、後述するように、ディファレンシャル機構の車軸にこの車軸が摺動可能に当接するように形成されており、サイドリップ22は、後述するように、車軸に固定された環状のデフレクタにこのデフレクタが摺動可能に当接するように形成されており、ダストリップ23よりも外周側において外側に向かって延びている。ダストリップ23は、シールリップ21よりも外側に設けられており車軸に該車軸が摺動可能に当接するように形成されている。リップ腰部24は、弾性体部20において、補強環10の円盤部12の内周側の端部近傍に位置する部分である。
【0021】
シールリップ21は、具体的には、図1に示すように、リップ腰部24から内側に向かって延びる部分であり、軸線xを中心又は略中心とする環状の部分であり、補強環10の円筒部11に対向して形成されている。シールリップ21は、内側の端部に、断面形状が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部25を有している。また、シールリップ21の外周側には、リップ先端部25に背向する位置に、ガータスプリング26が嵌着されている。ガータスプリング26は、リップ先端部25を軸線xに向かう方向に押して、リップ先端部25が車軸の変位に対して追随するようにリップ先端部25に車軸に対する所定の大きさの緊迫力を与える。リップ先端部25は、後述するように車軸の外周面に当接して、密封装置1と車軸との間の密封を図る。また、図1に示すように、リップ先端部25の外側の円錐面状のテーパ面25aには、リップ先端部25の先端に対して斜めに延びる内周側に突き出した突起であるネジ突起25bが複数、周方向に等角度間隔で形成されている。ネジ突起25bは、車軸が摺動する際に、外側から内側に向かう気流を発生させ、内側からの潤滑油の漏洩の防止を図る。弾性体部20には、ネジ突起25bが設けられていなくてもよい。
【0022】
ダストリップ23は、リップ腰部24から外側に軸線xに向かって延びており、具体的には、図1に示すように、リップ腰部24から外側且つ内周側の方向に延出している。ダストリップ23により、外側からリップ先端部25方向への、泥水や砂、ダスト等の異物の侵入の防止が図られている。また、ダストリップ23には、使用状態において、ダストリップ23とシールリップ21と間の空間に負圧が発生しないように、ダストリップ23と車軸との当接を部分的に解除して隙間を形成し、負圧の発生の抑制又は負圧を解消するための内周方向に突き出た突起23aが複数周方向に等角度間隔で形成されている。ダストリップ23は、車軸に当接せずに近接するようになっていてもよく、また、突起23aを有していなくてもよい。
【0023】
また、弾性体部20は、ガスケット部27と、後方カバー部28と、ライニング部29とを有している。ガスケット部27は、弾性体部20において、補強環10の円筒部11を外周側から覆っている部分であり、後述するように、トランスアクスルにおいて車軸が挿通される貫通孔に密封装置1が圧入された際に、この貫通孔と補強環10の円筒部11との間において径方向に圧縮されて、径方向に向かう力である嵌合力が所定の大きさ発生するように、径方向の厚さが設定されている。後方カバー部28は、補強環10の円盤部12を外側から覆っている部分であり、ライニング部29は、補強環10を内側及び内周側から覆っている部分である。
【0024】
サイドリップ22は、図1に示すように、リップ腰部24から外側に向かって延びており、外側の端部が内側の端部よりも広がっている。サイドリップ22は、例えば、軸線x方向において内側から外側に向かうに連れて拡径しており、円錐筒状、略円錐筒状、又はトランペット状等の形状を呈している。また、サイドリップ22の内周面22aには、上述のように、軸線x周りに環状である周方向溝31が少なくとも1つ形成されており、また、軸線xに亘って延びる軸方向溝41が少なくとも1つ形成されている。具体的には、図1に示すように、サイドリップ22の内周面22aには、内周面22aから凹んでいる複数の周方向溝31が形成されており、また、サイドリップ22の内周面22aには、内周面22aから凹んでいる複数の軸方向溝41が形成されている。周方向溝31及び軸方向溝41の数は、図示の数に限定されるものではない。図示のこれらの数は一例である。
【0025】
図2は、周方向溝31及び軸方向溝41が形成されている部分のサイドリップ22の内周面22aを拡大して示す図であり、内周面22aを径方向に向かって見た図である。図1,2に示すように、周方向溝31は、具体的には、軸線xを中心又は略中心とする円状又は略円状に延びており、周方向溝31は互いに同心円又は略同心円になっている。また、周方向溝31は、内周面22aにおいて軸線x方向に等間隔又は略等間隔に並んでいる。
【0026】
軸方向溝41は、具体的には、図1,2に示すように、軸線xに平行又は略平行に延びており、内周面22aにおいて周方向に等間隔又は略等間隔に並んでいる。また、軸方向溝41は、周方向溝31に接続又は交差しており、例えば、図1,2に示すように、最も内側に位置する周方向溝31と最も外側に位置する周方向溝31との間に亘って延びている。図示の例では、軸方向溝41は、最も外側に位置する周方向溝31に達して終わっているが、軸方向溝41は、最も外側に位置する周方向溝31を突き抜けていてもよい。同様に、図示の例では、軸方向溝41は、最も内側に位置する周方向溝31に達して終わっているが、軸方向溝41は、最も内側に位置する周方向溝31を突き抜けていてもよい。また、各軸方向溝41は、最も内側に位置する周方向溝31と最も外側に位置する周方向溝31との間に亘って延びていなくてもよく、少なくとも隣接する2つの周方向溝31の間に亘って延びていればよい。但し、この場合、一部の又は全ての軸方向溝41を介して、最も内側に位置する周方向溝31と最も外側に位置する周方向溝31とが連通されるように、軸方向溝41が夫々延びている。
【0027】
後述するように、密封装置1の使用状態において、サイドリップ22の内周面22aは、軸線x方向に亘る所定の幅(シール幅δ)において、デフレクタに接触する。内周面22aにおいて、周方向溝31及び軸方向溝41は、少なくとも部分的に、このシール幅δの範囲内に夫々又はいずれかが形成されるようになっている。また、周方向溝31及び軸方向溝41は、シール幅δよりも内側の部分にも形成されている。周方向溝31及び軸方向溝41は、シール幅δよりも内側に、サイドリップ22の付け根(リップ腰部24との接続部分)まで形成されていてもよく、サイドリップ22の途中まで形成されていてもよい。また、周方向溝31及び軸方向溝41は、サイドリップ22の先端の縁である(先端縁22b)に達していない。
【0028】
なお、弾性体部20は弾性材から一体に形成されており、シールリップ21、サイドリップ22、ダストリップ23、リップ腰部24、ガスケット部27、後方カバー部28、及びライニング部29は、弾性材から一体に形成された弾性体部20の各部分である。
【0029】
補強環10の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。また、弾性体部20の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。補強環10は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部20は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環10は成形型の中に配置されており、弾性体部20が架橋接着により補強環10に接着され、弾性体部20が補強環10と一体的に成形される。
【0030】
次いで、上述の構成を有する密封装置1の作用について説明する。図3は、適用対象の一例であるトランスアクスル50に取り付けられた状態における密封装置1を示すための図であり、トランスアクスル50の密封装置1近傍を拡大して示す軸線xに沿う部分拡大断面図である。なお、図3においては、トランスアクスル50の所望の位置に密封装置1が取り付けられた状態(以下、「初期状態」という。)が示されている。つまり、トランスアクスル50の図示しないディファレンシャル機構の出力軸としての車軸51に固定された環状のデフレクタ52の摺動面53に所望のシール幅δを持ってサイドリップ22の先端縁22b側の部分が当接するように、密封装置1がトランスアクスル50に取り付けられている。トランスアクスル50は公知のトランスアクスル(図10参照)であり、その構成の詳細な説明は省略する。なお、デフレクタ52は、車軸51とは別体の部材によって形成されていてもよく、車軸51の一部が外周側に向かって環状に突出して形成されていてもよい。
【0031】
密封装置1は、図3に示すように、トランスアクスル50のハウジング54に形成された貫通孔55に嵌着されている。貫通孔55には車軸51が回動自在に挿通されている。なお、トランスアクスル50には、左右の車輪に対応して、2つの貫通孔及び車軸が設けられているが、各車輪に対応する貫通孔及び車軸は互いに同様の構成を有しており、貫通孔55及び車軸51は、左右の車輪に対応する。
【0032】
ハウジング54の貫通孔55において、車軸51の外周面51aと貫通孔55の内周面55aとの間は、密封装置1によって密封が図られている。具体的には、密封装置1は貫通孔55に嵌合されて、補強環10の円筒部11と貫通孔55の内周面55aとの間で弾性体部20のガスケット部27が圧縮されてガスケット部27が貫通孔55の内周面55aに密着し、外周側において密封装置1と貫通孔55との間の密封が図られている。また、弾性体部20のシールリップ21のリップ先端部25が、車軸51の外周面51aに車軸51が摺動可能に当接し、内周側において密封装置1と車軸51との間の密封が図られている。これにより、ハウジング54の内部に貯留された潤滑油が外部に漏れ出ることの防止が図られている。
【0033】
また、ダストリップ23は、その先端縁が車軸51の外周面51aに車軸51が摺動可能に当接しており、ハウジング54の外部から異物が内部に侵入することを抑制している。ダストリップ23は、車軸51に当接していなくてもよい。サイドリップ22は、内周面22aにおける先端縁22b側のシール幅δの範囲が、デフレクタ52の摺動面53に当接しており、ハウジング54の外部から異物が内部に侵入することを抑制している。具体的には、サイドリップ22は、初期状態において、先端縁22b側の部分が部分的に湾曲して又は弾性変形して、内周面22aが、先端縁22bからシール幅δの範囲においてデフレクタ52の摺動面53に当接している。
【0034】
上述したように、周方向溝31及び軸方向溝41は、シール幅δの範囲に形成されており、使用状態において、デフレクタ52の摺動面53と接触するサイドリップ22の内周面22aの部分には、周方向溝31及び軸方向溝41が延びている。つまり、複数の周方向溝31及び軸方向溝41の一部は、デフレクタ52の摺動面53と接触(対向)しており、デフレクタ52の摺動面53と接触するサイドリップ22の内周面22aとの間に空間(溝)を形成している。
【0035】
サイドリップ22の内周面22aには、サイドリップ22とデフレクタ52との間の摺動抵抗を低減するための潤滑剤としてのグリースが塗布されており、グリースは、サイドリップ22の内周面22aにおいて、シール幅δの部分及びシール幅δの部分よりも内側の部分に塗布されている。より具体的には、グリースは、シール幅δの部分に加えて、シール幅δの部分よりも内側の部分において少なくとも周方向溝31及び軸方向溝41が形成されている部分に塗布されている。つまり、グリースは、周方向溝31及び軸方向溝41内に存在している。
【0036】
車軸51が回転すると、デフレクタ52も回転し、デフレクタ52の摺動面53がサイドリップ22の内周面22a上を摺動する。このデフレクタ52の摺動面53によって、シール幅δの部分に塗布されているグリースは、外側に吸い出されていく。本実施の形態係る密封装置1においては、サイドリップ22の内周面22aに上述のように、周方向溝31及び軸方向溝41が形成されており、周方向溝31の少なくとも1つは少なくとも部分的にシール幅δの領域に形成されており、また、軸方向溝41の少なくとも一部はシール幅の領域に達している。このため、デフレクタ52の回転により、サイドリップ22の内周面22aのシール幅δの領域におけるグリースが吸い出されたとしても、軸方向溝41を介して、図3の破線矢印線Pで示すように、軸方向溝41内のグリース、各周方向溝31内のグリース、及びサイドリップ22の内周面22aに塗布されているグリースが、シール幅δの領域に供給される。これにより、デフレクタ52の回転により、サイドリップ22の内周面22aのシール幅δの領域におけるグリースが吸い出されたとしても、周方向溝31及び軸方向溝41を介して、内周面22aに塗布されているグリースをサイドリップ22の内周面22aのシール幅δの領域に供給することができる。これにより、サイドリップ22の内周面22aのシール幅δの領域におけるグリースの量の低減を抑制することができる。
【0037】
トランスアクスル50においては、その各構成の寸法公差や組付け誤差により、車軸51が軸線x方向において内側に変位してデフレクタ52の摺動面53が軸線x方向に変位する場合や、車軸51が軸線xに対して傾斜してデフレクタ52の摺動面53が傾斜する場合がある。また、トランスアクスル50の作動時に、各構成間の隙間に基づいて、車軸51が軸線x方向に又は軸線xに対して斜めに変位する場合がある。このような変位(ガタ)が発生すると、サイドリップ22が振動する。このサイドリップ22の振動により、周方向溝31及び軸方向溝41を介したシール幅δの領域へのグリースの移動が促進される。このように、ディファレンシャル機構のようにガタの大きい取付対象においては、サイドリップ22の周方向溝31及び軸方向溝41は、より効果的に作用する。
【0038】
このように、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1によれば、サイドリップ22とデフレクタ52との間の潤滑剤の量の低減を抑制することができる。
【0039】
密封装置1においては、上述のように、サイドリップ22の内周面22aのシール幅δの部分におけるグリースの量の低減を抑制することができ、シール幅δにおけるサイドリップ22とデフレクタ52との間の潤滑状態を、使用開始時の状態に維持、又は使用開始時の状態に近い状態に維持することができる。このため、サイドリップ22の摩耗や発熱によるへたりを抑制することができ、サイドリップ22の異物に対するシール性能の低減を抑制することができる。
【0040】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係る密封装置2について説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係る密封装置2の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における断面図である。本発明の第2の実施の形態に係る密封装置2は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1に対して、軸方向溝の構造が異なる。以下、本発明の第2の実施の形態に係る密封装置2について、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1と同一又は同様の機能を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0041】
密封装置2は、サイドリップ22の内周面22aに上述の密封装置1の軸方向溝41とは異なる軸方向溝42を少なくとも1つ有している。本実施の形態においては、密封装置2は、複数の軸方向溝42を有している。図5は、周方向溝31及び軸方向溝42が形成された部分のサイドリップ22の内周面22aを拡大して示す図であり、内周面22aを径方向に向かって見た図である。軸方向溝42は、図4,5に示すように、内周面22aから凹んでいる溝であり、内周面22a軸線xに対して斜めに延びている。具体的には、軸方向溝42は、車軸51の回転方向r側に軸線xに対して斜めになっている。つまり、内側から外側に向かって回転方向側に向かうように軸方向溝42は斜めに延びている。車軸51が正転方向及び反転方向の両方向に回転する場合は、回転方向rは正転方向であり、軸方向溝42は、車軸51の正転方向側に軸線xに対して斜めに延びている。軸方向溝42は、車軸51の反転方向側に軸線xに対して斜めに延びていてもよい。
【0042】
軸方向溝42は、軸方向溝41と同様に、内周面22aにおいて周方向に等間隔又は略等間隔に並んでいる。また、軸方向溝42は、周方向溝31に接続又は交差しており、例えば、図4,5に示すように、最も内側に位置する周方向溝31と最も外側に位置する周方向溝31との間に亘って延びている。図示の例では、軸方向溝42は、最も外側に位置する周方向溝31に達して終わっているが、軸方向溝42は、最も外側に位置する周方向溝31を突き抜けていてもよい。同様に、図示の例では、軸方向溝42は、最も内側に位置する周方向溝31に達して終わっているが、軸方向溝42は、最も内側に位置する周方向溝31を突き抜けていてもよい。また、各軸方向溝42は、最も内側に位置する周方向溝31と最も外側に位置する周方向溝31との間に亘って延びていなくてもよく、少なくとも隣接する2つの周方向溝31の間に亘って延びていればよい。但し、この場合、一部の又は全ての軸方向溝42を介して、最も内側に位置する周方向溝31と最も外側に位置する周方向溝31とが連通されるように、軸方向溝42が夫々延びている。また、上述の軸方向溝41と同様に、内周面22aにおいて、周方向溝31及び軸方向溝42は、少なくとも部分的に、シール幅δの範囲内に夫々又はいずれかが形成されており、また、シール幅δよりも内側の部分にも形成されている。軸方向溝42は、シール幅δよりも内側に、サイドリップ22の付け根まで形成されていてもよく、サイドリップ22の途中まで形成されていてもよい。また、軸方向溝42は、サイドリップ22の先端縁22bに達していない。
【0043】
使用状態の密封装置2において、周方向溝31及び軸方向溝42は、密封装置1の周方向溝31及び軸方向溝41と同様に作用し、同様の効果を奏する。特に、軸方向溝42は、軸線xに対して斜めに延びているので、車軸51の回転によって、グリースがサイドリップ22の先端縁22方向に軸方向溝42を介して供給されやすくなっている。つまり、軸方向溝42は、車軸51の回転の際にグリースに対してネジ溝として作用する。
【0044】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る密封装置2によれば、サイドリップ22とデフレクタ52との間の潤滑剤の量の低減を抑制することができる。
【0045】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係る密封装置2における軸方向溝の変形例について説明する。図6に示すように、密封装置2は、サイドリップ22の内周面22aに、軸方向溝42ではなく、正転用の軸方向溝44と、反転用の軸方向溝45とを有する軸方向溝群43を有していてもよい。正転用の軸方向溝44は、上述の軸方向溝42と同様に、車軸51の正転方向側に軸線xに対して斜めに延びている、サイドリップ22の内周面22aから凹んでいる溝である。反転用の軸方向溝45は、軸方向溝44とは反対側に斜めに延びており、車軸51の反転方向側に軸線xに対して斜めに延びている、サイドリップ22の内周面22aから凹んでいる溝である。
【0046】
軸方向溝群43において、正転用の軸方向溝44と反転用の軸方向溝45とは線対称に又は略線対称に配置されている。軸方向溝群43は、複数の正転用の軸方向溝44を有しており、また、正転用の軸方向溝44と同数の反転用の軸方向溝45を有している。軸方向溝群43において、軸方向溝44及び軸方向溝45は、サイドリップ22の内周面22aに等間隔又は略等間隔に夫々設けられている。軸方向溝群43において、軸方向溝44及び軸方向溝45は、サイドリップ22の内周面22aに等間隔に夫々設けられていなくてもよい。また、軸方向溝群43において、正転用の軸方向溝44及び反転用の軸方向溝45は、夫々1つのみ設けられていてもよい。
【0047】
また、軸方向溝群43は、1つのみ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。軸方向溝群43が複数設けられている場合は、軸方向溝群43は、サイドリップ22の内周面22aに等間隔又は略等間隔に設けられている。軸方向溝群43は、サイドリップ22の内周面22aに等間隔に設けられていなくてもよい。また、図示の例においては、軸方向溝群43において、正転用の軸方向溝44が反転用の軸方向溝45に対して正転方向側に設けられているが、逆の配置、つまり、正転用の軸方向溝44が反転用の軸方向溝45に対して反転方向側に設けられていてもよい。
【0048】
本変形例においては、使用状態において、上述の密封装置2における軸方向溝42と同様に作用する。特に、車軸51の正転時には、車軸51の回転によって、グリースがサイドリップ22の先端縁22方向に正転用の軸方向溝44を介して供給されやすくなっている。一方、車軸51の反転時には、車軸51の回転によって、グリースがサイドリップ22の先端縁22方向に反転用の軸方向溝45を介して供給されやすくなっている。
【0049】
次いで、本発明の第3の実施の形態に係る密封装置3について説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態に係る密封装置3の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における断面図である。本発明の第3の実施の形態に係る密封装置3は、上述の本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1に対して、軸方向溝の構造が異なる。以下、本発明の第3の実施の形態に係る密封装置3について、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1と同一又は同様の機能を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0050】
密封装置3は、サイドリップ22の内周面22aに上述の密封装置1の軸方向溝41とは異なる軸方向溝46を少なくとも1つ有している。本実施の形態においては、密封装置3は、複数の軸方向溝46を有している。図8は、周方向溝31及び軸方向溝46が形成された部分のサイドリップ22の内周面22aを拡大して示す図であり、内周面22aを径方向に向かって見た図である。また。図9は、軸方向溝46を拡大して示す図である。軸方向溝46は、図8,9に示すように、内周面22aから凹んでいる溝であり、軸方向溝46の外側の端部(外側端部46a)における周方向の幅は、軸方向溝46の内側の端部(内側端部46b)における周方向の幅よりも小さくなっている。外側端部46aは、軸方向溝46が周方向溝31に外側において接続する部分であり、内側端部46bは、軸方向溝46が周方向溝31に内側において接続する部分である。
【0051】
軸方向溝46は、互いに隣接する周方向溝31の間に設けられており、互いに隣接する周方向溝31の間の各々に、1つ又は複数設けられている。互いに隣接する周方向溝31の間の各々に軸方向溝46が複数設けられている場合は、軸方向溝46は、内周面22aにおいて周方向に等間隔又は略等間隔に並んでいる。軸方向溝46は、内周面22aにおいて周方向に等間隔に並んでいなくてもよい。また、周方向溝31及び少なくとも1つの軸方向溝46が、少なくとも部分的に、シール幅δの範囲内に夫々又はいずれかが位置するように、内周面22aに形成されている。軸方向溝46は、サイドリップ22の先端縁22bに達していない。
【0052】
使用状態の密封装置3において、周方向溝31及び軸方向溝46は、密封装置1の周方向溝31及び軸方向溝41と同様に作用し、同様の効果を奏する。特に、軸方向溝46は、内側から外側に向かって先細り形状となっているので、グリースは内側から外側に、つまりサイドリップ22の先端縁22方向に軸方向溝42を介して供給されやすくなっている。一方、泥水や雨水、ダスト等の異物は、外側から内側に軸方向溝46を介して外部から内部に侵入し難くなっている。
【0053】
このように、本発明の第3の実施の形態に係る密封装置3によれば、サイドリップ22とデフレクタ52との間の潤滑剤の量の低減を抑制することができる。また、異物が軸方向溝46を介して外部から内部に侵入し難くすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係る密封装置1~3に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0055】
例えば、周方向溝31や軸方向溝41,42,44,45,46は、内周面22aにおいて等間隔に並んでいなくてもよく、例えば、一定のピッチパターンで並んでいてもよい。また、周方向溝31や軸方向溝41,42,44,45,46は、直線状又は略直線状に延びておらず、曲がって延びていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,2,3,100…密封装置、10,101…補強環、11…円筒部、12…円盤部、20,102…弾性体部、21,103…シールリップ、22,105…サイドリップ、22a…内周面、22b…先端縁、23,104…ダストリップ、23a…突起、24…リップ腰部、25…リップ先端部、25a…テーパ面、25b…ネジ突起、26…ガータスプリング、27…ガスケット部、28…後方カバー部、29…ライニング部、31…周方向溝、41,42,44,45,46…軸方向溝、43…軸方向溝群、50…トランスアクスル、51,111…車軸、51a…外周面、52,113…デフレクタ、53,113a…摺動面、54,112…ハウジング、55…貫通孔、55a…内周面、110…ディファレンシャル機構、δ…シール幅
図1
図2
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図10