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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
F16J15/12 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020537033
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2020002668
(87)【国際公開番号】W WO2020195093
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2019056913
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】花田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 大介
【審査官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-042295(JP,A)
【文献】特開2011-047508(JP,A)
【文献】特開2017-120098(JP,A)
【文献】特開平11-347641(JP,A)
【文献】特開2007-187294(JP,A)
【文献】特開平07-167302(JP,A)
【文献】実開平05-030630(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
F02F 5/00
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の板である金属板と、該金属板の両面に被覆されているゴム材を含む層であるゴム層とを有するガスケット部材を備え、
前記ガスケット部材は、前記ガスケット部材の両面の他方側から前記ガスケット部材の両面の一方側に向かって凸の部分であるシールビード部と、締結部材が挿通される少なくとも1つの挿通孔と、前記ガスケット部材の両面の他方側から前記ガスケット部材の両面の一方側に向かって凸の部分である少なくとも1つの捨てビード部とを有しており、
前記捨てビード部は、前記挿通孔の周りに延びており、
前記捨てビード部の延び方向の長さにより、前記ガスケット部材の共振周波数が調整されており、
前記ガスケット部材の共振周波数は、前記ガスケット部材の適用対象からの入力振動の周波数と異なる周波数に調整されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記ガスケット部材の共振周波数は、前記適用対象からの入力振動の周波数に対して低周波数側の値となるように調整されていることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記ガスケット部材の共振周波数は、前記適用対象からの入力振動に防振作用を有するように調整されていることを特徴とする請求項1又は2記載のガスケット。
【請求項4】
前記捨てビード部は、所定の角度で交わる直線の間に延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のガスケット。
【請求項5】
前記捨てビード部は円弧状に延びていることを特徴とする請求項4記載のガスケット。
【請求項6】
前記捨てビード部は、無端の環状に延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のガスケット。
【請求項7】
前記ガスケット部材を複数有しており、
複数の前記ガスケット部材は重ね合わされており、互いに重ね合わされている前記ガスケット部材において、前記捨てビード部は互いに重ね合わされていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両や汎用機械、例えば自動車において、エンジンや、電子部品を内部に収容する装置等には、筐体を密封するためにガスケットが従来から用いられている。ガスケットは、例えば、組み合わされて筐体を形成する一対の部材の間に圧縮された状態で挟まれることによってシールビードが変形し、この一対の部材間の接合部の密封を図っており、筐体の密閉を図っている。このようなガスケットとして、密封能力の向上を図るために、金属板の両面にゴム材を被覆したラバーコーテッドメタルを使用した、所謂ラバーコーテッドメタルガスケットがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5454010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば自動車部品において筐体の製造に主に使用される材料は、Al合金やMg合金、鉄系の金属材であり、振動を伝達しやすい。また、自動車部品において伝達される振動は低周波から高周波の幅広い周波数帯の振動である。このようにガスケットが使用される部品や機器においては、振動が伝達されやすく、また、幅広い周波数帯の振動が伝達される。ラバーコーテッドメタルガスケットは、表層のゴム層の減衰作用により、振動伝達率を低減することができるが、弾性変形するシールビードの共振周波数と入力振動の周波数とが一致することにより、ガスケットの振動伝達率が高くなることがある。このため、従来のガスケットに対しては、ガスケットの振動伝達率を低減させるために、ガスケットのシールビードの共振周波数と入力振動の周波数とが一致することを回避することができる構造が求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動伝達率を低減することができるガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るガスケットは、金属製の板である金属板と、該金属板の両面に被覆されているゴム材を含む層であるゴム層とを有するガスケット部材を備え、前記ガスケット部材は、前記ガスケット部材の両面の他方側から前記ガスケット部材の両面の一方側に向かって凸の部分であるシールビード部と、締結部材が挿通される少なくとも1つの挿通孔と、前記ガスケット部材の両面の他方側から前記ガスケット部材の両面の一方側に向かって凸の部分である少なくとも1つの捨てビード部とを有しており、前記捨てビード部は、前記挿通孔の周りに延びており、前記捨てビード部の延び方向の長さにより、前記ガスケット部材の共振周波数が調整されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記捨てビード部は、所定の角度で交わる直線の間に延びている。
【0008】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記捨てビード部は円弧状に延びている。
【0009】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記捨てビード部は、無端の環状に延びている。
【0010】
本発明の一態様に係るガスケットは、前記ガスケット部材を複数有しており、複数の前記ガスケット部材は重ね合わされており、互いに重ね合わされている前記ガスケット部材において、前記捨てビード部は互いに重ね合わされている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガスケットによれば、振動伝達率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るガスケットの概略構成を示すための正面図である。
図2図1に示すガスケットのA-A線に沿う断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るガスケットにおける捨てビード部の拡大正面図である。
図4】使用状態における本発明の実施の形態に係るガスケットの図1のA-A線に沿う断面の様子を示す図である。
図5】シミュレーションよる本発明の実施の形態に係るガスケットの振動伝達率曲線を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係るガスケットにおける捨てビード部の変形例を示す図である。
図7】使用状態における本発明の実施の形態に係るガスケットの変形例の図1のA-A線に沿う断面の様子を示す図である。
図8】使用状態における本発明の実施の形態に係るガスケットの他の変形例の図1のA-A線に沿う断面の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るガスケット1の概略構成を示すための正面図であり、図2は、ガスケット1の図1のA-A線に沿う断面図である。また、図3は、ガスケット1の捨てビード部30の拡大正面図である。ガスケット1は、例えば、密封対象である内燃機関のシリンダブロック及びシリンダヘッドの接合部、シリンダヘッド及びシリンダヘッドカバーの接合部、或いは排気マニホールド及び排気管の接合部、電装ユニット(モーター、インバータ、コンバータ、PCUなど)等、種々の2部材間の接合部の隙間を密封する役割を担っている。なお、ガスケット1が適用される対象は、上記に限られない。
【0015】
本発明の実施の形態に係るガスケット1は、金属製の板である金属板11と、金属板11の両面11a,11bに被覆されているゴム材を含む層であるゴム層12,13とを有するガスケット部材10を備えている。ガスケット部材10は、シールビード部20と、少なくとも1つの挿通孔16と、少なくとも1つの捨てビード部30とを有している。シールビード部20は、ガスケット部材10の両面10a,10bの他方側からガスケット部材10の両面10a,10bの一方側に向かって凸の部分である。挿通孔16は、後述する使用状態において使用される締結部材が挿通される貫通孔である。捨てビード部30は、ガスケット部材10の両面10a,10bの他方側からガスケット部材10の両面10a,10bの一方側に向かって凸の部分である。捨てビード部30は、貫通孔16の周りに延びている。捨てビード部30の延び方向の長さにより、ガスケット部材10の共振周波数が調整されている。以下、ガスケット1の構成について具体的に説明する。
【0016】
以下の説明において、説明の便宜上、ガスケット部材10の両面10a,10bの一方側を上側とし(図2の矢印a方向側)、ガスケット部材10の両面10a,10bの他方側を下側とする(図2の矢印b方向側)。このため、ガスケット部材10の両面10a,10bの一方側は上面10aであり、他方側は下面10bである。また、金属板11の両面11a,11bの一方側は上面11aであり、他方側は下面11bである。また、ガスケット1によって閉じられた空間側を内側とし(図2の矢印c方向側)、閉じられていない空間側を外側とする(図2の矢印d方向側)。
【0017】
図1に示すように、ガスケット1において、ガスケット部材10は、環状に延びており、内側に開口部14が形成されている。ガスケット部材10は、適用対象に応じた延び形状を有しており、密封したい対象が開口部14内の範囲に収まるような形状となっている。図示の例では、ガスケット部材10は、略矩形の延び形状を有している。ガスケット部材10には、外側に向かって突出するボルト受部15が複数設けられている。ボルト受部15には、図1に示すように、挿通孔16が形成されている。挿通孔16には、後述する使用状態における締結に用いられる締結部材としてのボルト60(図4)が挿通される。
【0018】
ガスケット部材10は、ラバーコーテッドメタルガスケットである。つまり、ガスケット部材10は、図2に示すように、金属板11と、金属板11の上面11aに被覆されている上側ゴム層12と、金属板11の下面11bに被覆されている下側ゴム層13とを有している。金属板11は、例えば、SPCC鋼板、ステンレス鋼板、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム鋼板等である。上側ゴム層12及び下側ゴム層13は、例えば、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、及びシリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴム等である。上側ゴム層12及び下側ゴム層13のゴムの形態は、ソリッドゴムであってもよく、発泡ゴムであってもよい。
【0019】
ガスケット部材10は、シールビード部20の延び方向に交差する幅方向の両側において、シールビード部20に沿って夫々延びる外側裾部21と内側裾部22とを有している。外側裾部21は、図1~3に示すように、シールビード部20の外側の端部に接続している平坦な板状の部分であり、内側裾部22は、図1~3に示すように、シールビード部20の内側の端部に接続している平坦な板状の部分である。
【0020】
シールビード部20は、上述のように、下側から上側に向かって(矢印a方向)突出している部分であり、後述する使用状態において密封対象の接合部の上側の部材である一方筐体50(図4)と接触するように形成されている。シールビード部20は、例えば図2に示すように、その断面形状が上側に凸の円弧状になるように、突出している。シールビード部20の断面形状は円弧状に限られない。また、シールビード部20は図示のようなフルビードタイプではなく、ハーフビードタイプであってもよい。
【0021】
捨てビード部30は、シールビード部20のように2部材間の接合部の隙間を密封する役割を担うビード部ではなく、締結部材の締結力によって発生するシールビード部20の反力を低減させるために作用するビード部である。捨てビード部30は、図1~3に示すように、各挿通孔16の周りに夫々設けられており、挿通孔16の外側に設けられている。捨てビード部30は、上述のように、下側から上側に向かって(矢印a方向)突出しており、後述する使用状態において密封対象の接合部の上側の部材である一方筐体50又は密封対象の接合部の下側の部材である他方筐体51(図4)と接触するように形成されている。捨てビード部30は、例えば図2に示すように、その断面形状が上側に凸の円弧状になるように、突出している。捨てビード部30の断面形状は円弧状に限られず、例えば、台形や略台形であってもよく、下側から上側に向かって又は上側から下側に向かって突出する他の形状であってもよい。捨てビード部30は、突出しており、ばね弾性が与えられており、上下方向に弾性的に変形可能になっている。
【0022】
図3に示すように、捨てビード部30は、所定の角度(延び角度α)で交わる直線の間に延びており、ガスケット部10の外側の端部(外側端10c)と挿通孔16との間に延びている。捨てビード部30は、例えば、円弧状に延びている。つまり、中心角が延び角度αとなる円弧に沿って延びている。また、捨てビード部30は、例えば、挿通孔16の同心円上に延びている。捨てビード部30は、挿通孔16の同心円上に延びていなくてもよい。捨てビード部30の延び方向の長さ(長さL)は延び角度αによって決まる値となっている。
【0023】
上述したように、捨てビード部30の延び方向の長さLにより、ガスケット部材10の共振周波数は調整されている。具体的には、捨てビード部30の延び方向の長さLにより、捨てビード部30のばね定数が調整されている。図示の例のように捨てビード部30が円弧状に延びている場合、捨てビード部30の長さLは延び角度αに比例する。捨てビード部30のばね定数については、捨てビード部30の長さLが小さいと、つまり捨てビード部30の延び角度αが小さいとばね定数は小さくなり、一方、捨てビード部30の長さLが大きいと、つまり捨てビード部30の延び角度αが大きいとばね定数は大きくなる。ガスケット部材10は、捨てビード部30の延び角度αを調整することにより、捨てビード部30のばね定数が調整されている。
【0024】
ガスケット1のガスケット部材10においては、捨てビード30の延び角度αの値が調整されて、ガスケット部材10の捨てビード部30のばね定数が小さくなっており、捨てビード部30の共振周波数、つまりガスケット部材10の共振周波数は、使用状態における適用対象からの入力振動の周波数に対して低周波数側の値となっている。このため、使用状態において、適用対象からの入力振動の周波数とガスケット1の共振周波数を異なる周波数にすることができ、ガスケット1の振動伝達率を低くすることができる。
【0025】
このように、本発明の実施の形態に係るガスケット1によれば、ガスケット部材10の捨てビード部30の形状(延び角度α又は延び方向の長さL)を変更することにより、ガスケット部材10の共振周波数を調整することができる。このため、ガスケット部材10の共振周波数を、使用状態における適用対象からの入力振動の周波数とは異なるものにすることができ、ガスケット1の振動伝達率を低くすることができる。
【0026】
なお、ガスケット1のガスケット部材10の共振周波数は、捨てビード30の延び角度α又は延び長さLの調整により、使用状態における適用対象からの入力振動の周波数に対して低周波数側の値となっているものに限られず、使用状態における適用対象からの入力振動の周波数に対して高周波数側の値となっているものであってもよい。
【0027】
また、捨てビード部30の延び角度α又は延び方向の長さLの調整により、ガスケット部材10が使用状態における適用対象からの入力振動に防振作用を有するように、ガスケット部材10の共振周波数を調整してもよい。例えば、使用状態における適用対象からの入力振動の中で強い周波数帯に防振作用を有するようにガスケット部材10の共振周波数を調整してもよい。これにより、使用状態における適用対象からの入力振動に対するガスケット1の振動伝達率を更に低くすることができる。
【0028】
次いで、上述の構成を有するガスケット1の作用について説明する。図4は、使用状態におけるガスケット1の図1のA-A線に沿う断面における様子を示す図である。ガスケット1の使用状態において、ガスケット1は、適用対象の2部材の間の接合部に挟まれ、2部材間で圧縮されて接合部の密封を図っている。図示の例においては、適用対象の2部材として、内燃機関のシリンダヘッド等の一方筐体50と、内燃機関のシリンダブロック等の他方筐体51とが示されている。使用状態において、ガスケット1は、一方筐体50と他方筐体51との間に挟まれ、締結部材としてのボルト60の雄ネジ部61がボルト貫通孔52を通って一方筐体50を貫通し、ガスケット部材10のボルト受部15の挿通孔16を通って他方筐体51に形成された雌ネジ部53に螺合し、一方筐体50が他方筐体51に締結されている。これにより、ガスケット1は、一方筐体50と他方筐体51との間で上下方向において圧縮される。
【0029】
図4に示すように、ガスケット1の使用状態において、外側裾部21及び内側裾部22における下側ゴム層13の下面13aは、他方筐体51の接合面である上面51aに接触している。また、シールビード部20は上側の上側端部20aにおいて一方筐体50の接合面である下面50bに押圧されている。ボルト60による締結により、ガスケット1は上下方向において圧縮されているため、シールビード部20が上下方向においてばね弾性的に圧縮されて変形している。これにより、一方筐体50と他方筐体51との間の接合部が密封されている。
【0030】
また同様に、捨てビード部30は、上側に面する端部である上側端部31において、一方筐体50の接合面である下面50bに押圧されている。ボルト60による締結により、ガスケット1は上下方向において圧縮されているため、捨てビード部30が上下方向においてばね弾性的に圧縮されて変形している。上述のように、本発明の実施の形態に係るガスケット1は、捨てビード部30の延び角度α又は延び方向長さLの調整により、捨てビード部30のばね定数が調整されてガスケット部材10の共振周波数が調整されている。このため、ガスケット1の共振周波数が、一方筐体50及び他方筐体51のいずれか一方又は両方から入力される振動の周波数と一致しないようになっている。これにより、一報筐体50と他方筐体51との間のガスケット1の振動伝達率が低くなっており、一方筐体50と他方筐体51との間のガスケット1を介した振動伝達が低くなっている。
【0031】
図5は、シミュレーションによるガスケット1の振動伝達率曲線を示す図である。横軸は入力振動数とガスケット部材1の共振周波数の比である振動数比であり、縦軸は各振動数比の振動伝達率である。図5において、線A1は、ガスケット1の一実施例(実施例1)に対するシミュレーション結果であり、線A2は、ガスケット1の他の実施例(実施例2)に対するシミュレーション結果である。実施例2においては、ガスケット1(実施例2)の共振周波数を実施例1の共振周波数よりも下げるように、捨てビード部30の延び角度α又は延び方向の長さLを調整した。つまり、実施例2における捨てビード30のばね定数は、実施例1における捨てビード30のばね定数よりも小さくなっており、実施例2の捨てビード30の延び角度α又は延び方向の長さLは、実施例1の捨てビード30の延び角度α又は延び方向の長さLよりも小さくなっている。
【0032】
図5に示すシミュレーション結果のように、実施例1に対して実施例2はガスケット1の共振周波数を低くすることができることが分かる。このように、図5に示すシミュレーション結果より、捨てビード部30の延び角度α又は延び方向の長さLを調整することにより、ガスケット1の共振周波数を調整することができることが分かる。このため、本発明の実施の形態に係るガスケット1では、ガスケット1の共振周波数を車両等において発生する振動の入力周波数からずらすことにより、ガスケット1の共振を回避することができ、また、ガスケット1の共振領域及び防振領域を調整することができる。特に、捨てビード30のばね定数を小さくしてガスケット1の共振周波数を低周波数とすることにより、ガスケット1の共振領域を減少させて、防振領域を増加させることができ、防振能力を向上させることができる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0034】
例えば、図6に示すように、捨てビード部30は無端の環状に延びていてもよい。具体的には、捨てビード部30は、挿通孔16の同心円上に円環状に延びていてもよい。この場合、捨てビード部30の延び角度αは360°となる。
【0035】
また、例えば、本発明の実施の形態に係るガスケット1は、1つのガスケット部材10を有するとしたが、本発明に係るガスケットは、複数のガスケット部材10を有していてもよい。この場合、例えば複数のガスケット部材10は重ね合わされており、互いに重ね合わされているガスケット部材10において、シールビード部20は互いに重ね合わされており、また、捨てビード部30は互いに重ね合わされている。具体的には、ガスケット1の変形例として、図7に示すように、ガスケット1は、ガスケット部材10を2つ有しており、互いに重ね合わされているシールビード部20は、同じ側を向いている。つまり、上側のシールビード部20の凹部内に下側のシールビード部20が収容されて互いに重ね合わされて接触するように、2つのガスケット部材10が重ね合わされている。同様に、互いに重ね合わされている捨てビード部30は、同じ側を向いている。つまり、上側の捨てビード部30の凹部内に下側の捨てビード部30が収容されて互いに重ね合わされて接触するように、2つのガスケット部材10が重ね合わされている。
【0036】
また、ガスケット1の他の変形例では、図8に示すように、ガスケット1は、ガスケット部材10を2つ有しており、互いに重ね合わされているシールビード部20は背向しており、互いに重ね合わされている捨てビード部30は背向している。つまり、2つのガスケット部材10のうちの下側のガスケット部材10は、シールビード部20の上側端部20aが下側に向くように配設され、上側のガスケット部材10は、シールビード部20の上側端部20aが上側に向くように配設され、シールビード部20は互いに上下方向で背向するようになっている。この場合、上側のガスケット部材10のシールビード部20と下側のガスケット部材10のシールビード部20とが夫々上下方向に向かって接合部に接触することにより接合部の密封がなされる。また同様に、2つのガスケット部材10のうちの下側のガスケット部材10は、捨てビード部30の上側端部31が下側に向くように配設され、上側のガスケット部材10は、捨てビード部30の上側端部31が上側に向くように配設され、捨てビード部30は互いに上下方向で背向するようになっている。この場合、上側のガスケット部材10の捨てビード部30と下側のガスケット部材10の捨てビード部30とが夫々上下方向に向かって接合部に接触する。
【0037】
このように、ガスケット部材10を複数重ね合わせることで、捨てビード部30が直列のばね要素となり、ガスケット1の共振周波数の調整幅を大きくすることができるようになる。これにより、ガスケット1の共振周波数を更に低周波側に調整することができる。また、ガスケット1におけるガスケット部材10の間の接触により、ガスケット部材10間に摩擦が生じる。この摩擦による摩擦減衰によりヒステリシスを大きくすることができ、ガスケット1の振動伝達率を更に下げることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…ガスケット、10…ガスケット部材、10a…上面、10b…下面、10c…外側端、11…金属板、11a…上面、11b…下面、12…上側ゴム層、13…下側ゴム、13a…下面、14…開口部、15…ボルト受部、16…挿通孔、20…シールビード部、20a…上側端部、21…外側裾部、22…内側裾部、30…捨てビード部、31…上側端部、50…一方筐体、50b…下面、51…他方筐体、51a…上面、52…ボルト挿通孔、53…雌ネジ部、60…ボルト、61…雄ネジ部、α…延び角度、L…長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8