(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】建物の天井部及びこれに使用する吊り具、天井部用空調設備
(51)【国際特許分類】
E04B 9/24 20060101AFI20220120BHJP
E04B 9/28 20060101ALI20220120BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20220120BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E04B9/24 A
E04B9/24 C
E04B9/28 A
E04B9/00 F
F24F5/00 101B
(21)【出願番号】P 2017164483
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
(72)【発明者】
【氏名】前羽 誠
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-117315(JP,A)
【文献】特開2008-025955(JP,A)
【文献】特開2005-282005(JP,A)
【文献】実開昭60-087926(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 1/76
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形の天井材と、前記天井材の一側縁に沿って長く延びる吊り具とを有しており、
前記天井材は、前記吊り具の長手方向と直交した水平方向から見て下面が凹凸形状になっており、このため、前記天井材の下面には
、前記吊り具の長手方向と直交した方向に長い多数の
下向き溝条と下向き突条とが交互に並んでいる一方、
前記吊り具は、前記天井材の一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有している構成であって、
前記吊り具のフランジは平坦に形成されていて、このフランジに、前記
天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起が設けられているか、
又は、前記吊り具のフランジが、前記
天井材の下面
における凹凸
の端部と嵌まり合う凹凸形状に形成されている、
建物の天井部。
【請求項2】
平面視矩形で下面は直線状の
下向き突条と下向き溝条との群が
交互に並設された凹凸面になっている天井材を、前記各
下向き突条及び下向き溝条の端部が位置する一側縁の箇所において吊支する吊り具であって、
前記
天井材の一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、
前記吊り具のフランジは平坦に形成されていて、このフランジに、前記
天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起が設けられているか、
又は、前記吊り具のフランジが、前記
天井材の下面
における凹凸
の端部と嵌まり合う凹凸形状に形成されている、
天井材用の吊り具。
【請求項3】
前記吊り具のフランジは平坦に形成されており、前記フランジの先端縁に、
前記天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起
が一体に設け
られている、
請求項1に記載した建物の天井部
。
【請求項4】
前記フランジは平坦に形成されており、前記フランジの先端縁に、前記天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起が一体に設けられている、
請求項2に記載した天井材用の吊り具。
【請求項5】
前記吊り具を構成するフランジと垂直部とは別体の構造であり、前記フランジは前記天井材の下面と嵌まり合う凹凸形状に形成されており、このため、前記フランジには上向き溝条が交互に形成されており、
前記上向き溝条の内面の上部の相対向した部位に、当該上向き溝条の全長に亙って延びる係合溝を形成している一方、
前記垂直部の下端部に、前記フランジの係合溝に嵌まる係合爪を形成している、
請求項
1に記載した建物の天井部。
【請求項6】
前記フランジと垂直部とは別体の構造であり、前記フランジは前記天井材の下面と嵌まり合う凹凸形状に形成されており、このため、前記フランジには上向き溝条が交互に形成されており、
前記上向き溝条の内面の上部の相対向した部位に、当該上向き溝条の全長に亙って延びる係合溝を形成している一方、
前記垂直部の下端部に、前記フランジの係合溝に嵌まる係合爪を形成している、
請求項2に記載した天井材用の吊り具。
【請求項7】
前記天井材は、放射プレートに流体通路を設けた空調用の放射パネルであり、前記放射プレートは上向き溝条と下向き溝条とが交互に並んだ凹凸形状であり、前記上向き溝条に流体通路を設けている、
請求項1,3,5のうちのいずれかに記載した建物の天井部。
【請求項8】
天井材を構成する平面視矩形の放射パネルと、前記放射パネルの一側縁に沿って長く延びる吊り具とを備えており、
前記放射パネルは、下面に下向き突条と下向き溝条とが交互に存在する凹凸形状の放射プレートと、前記放射プレートに設けた流体通路とを有していて、前記下向き突条及び溝条の端部が前記一側縁に露出している一方、
前記吊り具は、前記放射パネルの一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有している構成であって、
前記吊り具のフランジは平坦に形成されていて、このフランジに、前記放射パネルにおける下向き溝条の端部を塞ぐ突起が設けられているか、
又は、前記吊り具のフランジが、前記放射パネルの下面における凹凸の端部と嵌まり合う凹凸形状に形成されている、
天井部用空調設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、天井材を吊り具で吊支した構造の天井部及びこれに使用する吊り具、並びに、放射パネルを吊り具で吊支した構造の天井部用空調設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱媒体として水のような液体(流体)を使用して、液体で冷却又は加温された放射パネルによって冷房や暖房を行う放射空調設備(放射空調システム)があり、この空調設備は、騒音がなくて快適性に優れる等の利点があって広く普及している。
【0003】
放射パネルには様々の形態があるが、例えば特許文献1に開示されているように、放射プレートを、下向き突条と下向き溝条とが交互に並んだ凹凸形状に形成したものがあり、このタイプの放射パネルは、平坦な構造に比べて伝熱面積が大きいため、空調効率を向上できる利点がある。
【0004】
また、この種の放射パネルは平面視矩形に形成されていて、多数枚が縦横に整列して敷設されているが、敷設するに当たって、例えば放射パネルが長方形であると、多数枚の放射パネルを、長辺同士は互いに当接して、短辺間には隙間が空くようにして配置し、短辺部をTバーと呼ばれる吊り具で支持している。天井部の施工において、Tバーを使用した支持構造は軽天構造の天上部などで広く行われており、放射パネルの支持構造は、一般的な天井部の構造を踏襲したものである。
【0005】
Tバーを使用して天井部を構成した場合、一つの問題として、人が天井面を見上げたときに、天井材とTバーとの素材の違いによって違和感を受けることがある。この点について特許文献2には、天井材とTバーとにスパッター塗装を施して両者の見え方を共通化することが開示されている。また、特許文献3には、できるだけ細幅化して目立たないようにしたTバーの製法として、金属板のロール加工によって2枚重ね構造に形成すると共に、ロール加工時の加工性を向上させるために、素材板にストライプ状の塗装を施すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-275227号公報
【文献】特開平10-68191号公報
【文献】特開2005-337004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図11は、特許文献1のように下面が凹凸に形成された放射パネル1′をTバー12′で支持した構造を示している。この構造において、放射パネル1′は、下向き突条4′の下端がTバー12′のフランジ13′で支持されるため、溝条21′がTバー12′の垂直部14′に向けて入り込んでいるが、室内の照明は放射パネルにおける各溝の端部には届かないため、(B)にドットで示すように、各溝の端部が影Sとして現れており、このため、人が天井部を見上げたときに、影SがTバー12′の長手方向に沿って点々と現れ、人が違和感をもつことが懸念される。
【0008】
本願発明は、このような現状を契機にして成されたものであり、人が見上げても違和感のない天井部の構造を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は建物の天井部に適用したものであり、
「平面視矩形の天井材と、前記天井材の一側縁に沿って長く延びる吊り具とを有しており、
前記天井材は、前記吊り具の長手方向と直交した水平方向から見て下面が凹凸形状になっており、このため、前記天井材の下面には、前記吊り具の長手方向と直交した方向に長い多数の下向き溝条と下向き突条とが交互に並んでいる一方、
前記吊り具は、前記天井材の一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有している」
という基本構成である。
【0010】
そして、上記基本構成において、
「前記吊り具のフランジは平坦に形成されていて、このフランジに、前記天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起が設けられているか、
又は、前記吊り具のフランジが、前記天井材の下面における凹凸の端部と嵌まり合う凹凸形状に形成されている」
という特徴を備えている。
【0011】
請求項2の発明は、天井材用の吊り具に適用したものである。すなわち、
「平面視矩形で下面は直線状の下向き突条と下向き溝条との群が交互に並設された凹凸面になっている天井材を、前記各下向き突条及び下向き溝条の端部が位置する一側縁の箇所において吊支する」
という吊り具に関するものであり、この吊り具は、
「前記天井材の一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、
前記吊り具のフランジは平坦に形成されていて、このフランジに、前記天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起が設けられているか、
又は、前記吊り具のフランジが、前記天井材の下面における凹凸の端部と嵌まり合う凹凸形状に形成されている」
という特徴を備えている。
【0012】
請求項3,4の発明は共通した特徴であり、請求項1又は2において、前記吊り具のフランジは平坦に形成されており、前記フランジの先端縁に、前記天井材における下向き溝条の端部を塞ぐ突起が一体に設けられている。
【0013】
請求項5,6の発明は共通した特徴を有しており、請求項1又は2において、
「前記吊り具を構成するフランジと垂直部とは別体の構造であり、前記フランジは前記天井材の下面と嵌まり合う凹凸形状に形成されており、このため、前記フランジには上向き溝条が交互に形成されており、
前記上向き溝条の内面の上部の相対向した部位に、当該上向き溝条の全長に亙って延びる係合溝を形成している一方、
前記垂直部の下端部に、前記フランジの係合溝に嵌まる係合爪を形成している」、
という特徴を備えている。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1,3,5のうちのいずれかにおいて、
「前記天井材は、放射プレートに流体通路を設けた空調用の放射パネルであり、前記放射プレートは上向き溝条と下向き溝条とが交互に並んだ凹凸形状であり、前記上向き溝条に流体通路を設けている」
という特徴を備えている。
【0015】
請求項8の発明は天井部用空調設備に係るもので、この天井部用空調設備は、
「天井部を構成する平面視矩形の放射パネルと、前記放射パネルの一側縁に沿って長く延びる吊り具とを備えており、
前記放射パネルは、下面に下向き突条と下向き溝条とが交互に存在する凹凸形状の放射プレートと、前記放射プレートに設けた流体通路とを有していて、前記下向き突条及び溝条の端部が前記一側縁に露出している一方、
前記吊り具は、前記放射パネルの一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有している」
という基本構成である。
【0016】
そして、請求項1,2と同様に、
「前記吊り具のフランジは平坦に形成されていて、このフランジに、前記放射パネルにおける下向き溝条の端部を塞ぐ突起が設けられているか、又は、前記吊り具のフランジが、前記放射パネルの下面における凹凸の端部と嵌まり合う凹凸形状に形成されている」
という特徴を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、吊り具の平坦なフランジに突起を設けた場合でも、吊り具のフランジを凹凸形状に形成した場合でも、いずれにおいても、放射パネル等の天井材の下面に存在している下向き溝条の端部がフランジの上に入り込むことはないため、室内の照明によって下向き溝条の端部に影が生じることを防止できる。従って、人が天井を見上げたときに違和感をもつことを防止できる。
【0018】
吊り具のフランジに突起を設ける場合、突起を別部材に形成してこれを後付けすることも可能であるが、請求項3,4のようにフランジに一体に形成すると、部材管理の手間を省くことができる利点である。
【0019】
吊り具のフランジを凹凸形状に形成した場合、吊り具の全体を板金加工等で一体に形成することも可能であるが、加工工程が増える等の問題がある。これに対して請求項5,6の構成を採用すると、フランジと垂直部とを別部材として、垂直部の係合爪をフランジの係合溝に嵌め込むことで両者を連結し一体化できるため、加工が容易になる。特に、フランジを、押し出し加工品を切断して使用すると、コスト低減に貢献できる。
【0020】
本願発明において、天井材は単なる天井板であってもよいが、請求項7,8のように空調用の放射パネルに適用すると、空調効率を高めつつ美観を向上できて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】(A)は放射パネルの平面図、(B)は(A)のB-B視図である。
【
図3】第1実施形態の天井部の部分的な平面図である。
【
図4】(A)は
図3のA-A視断面図、(B)は
図3のB-B視断面図、(C)は(B)と同じ方向から見た吊り具の部分正面図である。
【
図7】(A)は第2実施形態の分離正面図、(B)は第3実施形態の側面図、(C)は(B)のC-C視図、(D)は第3実施形態の側面図である。
【
図9】(A)は第5実施形態の分離正面図、(B)は(A)のB-B視図、(C)は別例図を(B)と同じ方向から見た図である。
【
図10】(A)は第6実施形態の斜視図、(B)は第
7実施形態の斜視図である。
【
図11】従来構造を示す図で、(A)は吊り具を仮想線で示した斜視図、(B)は吊り具を実線で示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1).第1実施形態
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、放射パネルを有する天井部用空調設備に適用している。すなわち、天井材として放射パネルが使用されている。まず、
図1~
図6に示す第1実施形態を説明する。
【0023】
図1,2で建物と空調設備との概略を表示しているが、これらの図のとおり、室の天井部は、前後左右(縦横)に整列して配置された多数枚の放射パネル1を備えている。放射パネルは従来と同様の構造であるが、念のため、説明しておく。
【0024】
放射パネル1は、
図2に明示するように
平面視で長方形の形態であり、長辺を互いに当接させた状態で前後に並べて配置することによって放射パネル列を形成し、左右に隣り合った放射パネル列の間には、ある程度の間隔(隙間、空間)が空いている。なお、
図2では、隣り合った放射パネル1の長辺間に若干の隙間を描いているが、実際には、隣り合った放射パネル1の長辺同士は当接している。
【0025】
本実施形態では、上記のとおり、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、放射パネル1の短辺に沿った方向を前後方向、放射パネル1の長辺に沿って方向を左右方向として定義している(これらの方向は、説明のための便宜的なものである。)。正面視は前後方向から見た状態であり、側面視は左右方向から見た状態である。念のため、
図1,
2に方向を明記している。
【0026】
図2,
図3に示すように、放射パネル1は、前後方向に並列配置された6枚の放射プレート2と、その上面に装着されたパイプ3とで構成されている。従って、本実施形態では、パイプ3によって流体通路が形成されている。
【0027】
放射プレート2は左右長手の細長い形態であり、放射パネル1としても左右長手の長方形に形成されている。各放射プレート2には、半円状の下向き突条4が左右に並んで3列形成されている。従って、各放射プレート2の下面は、下向き突条4と下向き溝条21とが交互に並んだ側面視で凹凸形状になっていると共に、放射パネル1としても側面視で凹凸形状になっている。
【0028】
図4(B)のとおり、各放射プレート2において、前後の長手側縁のうち一方の長手側縁は段上がり部2aになって、他方の長手側
縁は段落ち部2bになっており、前後に隣り合った段上がり部2aと段落ち部2bとを重ね合わせることにより、放射パネル1は全体として1枚板のような外観を呈している。
【0029】
他方、パイプ3は平面視でジグザグに曲げられており、パイプ3の直線部が、各放射プレート2における中央部の下向き突条4に嵌まっている。各放射プレート2における中央部の下向き突条4には、パイプ3を抱持する上向きリブ5を形成している。従って、パイプ3は、上向きリブ5を弾性変形させて下向き突条4に嵌め込まれる(強制嵌合される。)。
【0030】
パイプ3のうち
平面視でU形に曲がった部分は、下向き突条4の上に露出している。また、パイプ3の一端部3aと他端部3bとは、
図2のとおり、放射プレート2の一短辺部と平行に延びるように曲げられており、一端部3aと他端部3bとは反対方向に向いている。そして、前後に隣り合った一方の放射パネル1におけるパイプ3の一端部3aと、他方の放射パネル1におけるパイプ3の他端部3bとが、
図2に点線で表示したジョイントパイプ6で接続されている。
【0031】
パイプ3には、前後長手の押さえフレーム7が上から重なっている。押さえフレーム7は下向きに開口したコ字形の形態であり(
図2参照)、その前後側板に切り開き係合溝8を飛び飛びで複数形成している一方、放射プレート2の前後長手側縁には、切り開き係合溝8に嵌合する係合リブ9を一体に形成しており、係合リブ9の先端縁に形成した爪を切り開き係合溝8の段部に係合させることにより、押さえフレーム7によってパイプ3を放射プレート2に押さえ保持すると共に、6枚の放射プレート2を1枚板状に連結している。
【0032】
押さえフレーム7のうちパイプ3に当たる部分は、下向き開口の台形状に切欠いている。押さえフレーム7は、放射パネル1の左右両端寄り部位と左右中間部とに3本配置しており、中間部に位置した押さえフレーム7における天板の前後両端寄り部位の下面に、ナット10を溶接によって固定している。なお、押さえフレーム7の配置本数は任意に設定できる。そして、図示は省略するが、天井スラブ(図示せず)から直接に又は中間部材を介して垂下した吊りボルト(図示せず)をナット10に螺合することにより、押さえフレーム7が吊支されている。
【0033】
放射プレート2は、アルミ等の金属や樹脂を材料にした押し出し加工品を採用しているが、樹脂を材料にした射出成形品や、金属ダイキャスト品、金属焼結加工品、或いは板金加工品など、様々な素材・態様のものを採用できる。放射パネル1を1枚の放射プレート2で構成することも可能である。
【0034】
(2).吊り具
前後に並んだ多数の放射パネル1によって放射パネル列が構成されており、複数列の放射パネル列が左右に並んでいるが、
図5や
図6(A)(B)に示すように、左右に隣り合った放射パネル列の間には間隔(空間)が空いており、この箇所に吊り具(Tバー)12を配置している。また、吊り具12は、左右
の端に位置した放射パネル1の外側にも配置されている。
【0035】
図4に明示するように、吊り具12は、水平状の左右フランジ13と、その長手中心線の箇所から一体に立ち上がった垂直部14とを有しており、フランジ13によって放射パネル1の一側縁(短手端部)が下方から支持されている。従って、フランジ13は放射パネル1を吊支する機能と、隣り合った放射パネル1の短手端部間の隙間を塞ぐ目地の機能とを有している。吊り具12は、アルミ等の金属又は合成樹脂を材料にした押し出し加工品を採用しているが、板金加工品なども採用できる。
【0036】
吊り具12における垂直部14の上端には厚肉部15が形成されており、前後長手の中間吊り板16の下端に形成した抱持部17で厚肉部15を抱持し、中間吊り板16を、吊りボルト18及びナット19によって吊支している。
【0037】
放射パネル1の一側縁(短手側縁)と吊り具12の垂直部14との間には、ある程度の間隔(例えば、数mm~十数mm)の隙間20が空いている。また、放射プレート2の下面は側面視で凹凸になっているため、吊り具12のフランジ13に載るのは下向き突条4の下端のみであり、従って、放射プレート2の短辺部と吊り具12のフランジ13との間には、前後に並んだ下向き突条4で挟まれた多数の下向き溝条21が形成されている。下向き溝条21は、上面を平坦面として前後両側を湾曲傾斜面と成しており、台形に近い形態になっている。
【0038】
そこで、
図4(B)(C)~
図6に示すように、吊り具12におけるフランジ13の先端縁(長手先端縁)に、放射パネル1
における溝条21の端部
を塞ぐ上向きの突起22が形成されている。突起22は放射プレート2の
下向き溝条21と同じ形状・大きさであるが、加工誤差があっても放射プレート2の下向き突条4が吊り具12のフランジ13に必ず載るように、突起22を
下向き溝条21よりも僅かに小さく形成しておくのが好ましい。
【0039】
本実施形態の吊り具12はアルミ等の金属を材料にした押し出し加工で形成されているが、突起22は、押し出し加工によって形成された上向き壁を、プレスによって間欠的に切除して形成されている。
【0040】
図6に明示するように、放射パネル1の
下向き溝条21が突起22で塞がれているため、室内の照明によって
下向き溝条21の
端部の箇所に影が生じることはない。従って、人が天井を仰ぎ見ても違和感を持つことはない。吊り具12は放射パネル1の長さよりも遥かに長い長尺であり、これに一定ピッチで突起22が形成されているため、本実施形態では、多数枚の放射パネル1の前後位置を吊り具12によって正確に規定することができる。
【0041】
(3).第2~4実施形態
図7では、フランジ13に突起22を設けた他の実施形態を示している。このうち
図7(A)に示す第2実施形態では、放射パネル1の下面に左右長手の多数のリブ25を形成した場合を示している。この場合は、
下向き溝条21は矩形(四角形)になるので、吊り具12の突起22も四角形になっている。
【0042】
図7(B)(C)に示す第3実施形態では、吊り具12のフランジ13に、当該フランジ13を下方から抱持する樹脂製等のカバー部材26を装着し、カバー部材26に突起22を上向き突設している。カバー部材26は押し出し加工品であり、突起22は、上向き片を間欠的に切除して形成されている。
【0043】
カバー部材26は、フランジ13の上面に重なる上リップ26aを有するが、放射パネル1の下向き突条4が載る箇所では、上リップ26aは切除されている。この実施形態は、既存の吊り具12にもそのまま適用できる利点がある。分図(B)に一点鎖線で示すように、突起22を、上に向けて垂直部14から離れるように傾斜させることも可能であり、この場合、下向き溝条21の端部の影の発生を的確に防止できる。このように突起22を傾斜させることは、他の実施形態にも適用できる。
【0044】
図7(D)に示す第4実施形態では、吊り具12のフランジ13のうち先端縁に蟻溝27を形成し、この蟻溝27にはめ込み装着した補助部材28に突起22を間欠的に形成している。補助部材28は、フランジ13の上面に載る上片28aを有するが、上片28aは間欠的に切除されて飛び飛びに形成されており、この上片28aに突起22を形成している。突起22を吊り具12とは別体に構成した場合、フランジ13の上面に接着剤で接着することも可能である。
【0045】
第3,4実施形態のようにカバー部材26や補助部材28に突起22を形成した場合、カバー部材26や補助部材28を放射パネル1の幅に対応した長さにしておくことも可能である。この場合は、隣り合った放射パネル1の左右間隔か微妙にずれても、各放射パネル1の下向き溝条21を突起22で確実に塞ぐことができるため、施工による誤差を吸収できる利点がある。
【0046】
(4).第5,6実施形態
次に、
図8~10(A)に示す第5,6実施形態を説明する。これらの実施形態では、フランジ13を放射パネル1の下面と嵌まり合うように正面視凹凸形に形成している。従って、この場合も、放射パネル1の端部に影ができることを確実に防止できる。
【0047】
このようにフランジ13を凹凸形状に形成した場合、全体を一体に形成することも可能であるが、本実施形態では、フランジ13と垂直部14とを別部材に製造して、後付けで両者を連結(接合)している。その例として、
図9に示すように、フランジ13における上向き溝29の内面の前後上部に、上向き溝29に向けて開口した係合溝30を左右全長に亙って形成している一方、垂直部14には、係合溝30に嵌まる係合爪31を形成している。
【0048】
係合爪31を係合溝30に嵌め込む方法としては、垂直部14をフランジ13に対して上から強敵的に押さえ込んで、変形を利用して嵌め込んでもよいし、垂直部14とフランジ13とを、フランジ13の幅方向(左右方向)に相対動させて、係合爪31と係合溝30とをその一端から嵌め合わせてもよい。
【0049】
図9(B)に示すように、垂直部14が1枚構造の場合、係合爪31を表側と裏側とに交互に曲げておくと、係合溝30に対して係合爪31の群を安定よく係合させることができる利点がある。
図9(C)に示すように、垂直部14を2枚構造にして、一対ずつの係合爪31を形成しておくと、安定性は更に向上する。
【0050】
図10(A)に示す第6実施形態では、フランジ13と垂直部14とを別部材に構成した場合において、フランジ13を、下部32と上部33との2枚重ね構造とし、上部33の左右の長手側縁33aをフランジ13の長手中心の箇所に位置させて、左右長手側縁33aのうち平坦部の箇所に上向き片34を形成し、左右の上向き片34の群で垂直部14を挟んでいる。上向き片34と垂直部14とはスポット溶接で一体化したらよい。
【0051】
この実施形態の製造手順としては、まず、展開した状態の中間品を製造する→上向き片34を曲げ形成する→左右の上部33を下部32に対して折り返して、平坦な二重構造部を形成する→平坦な二重構造部をプレス加工によって凹凸形状に形成する、という工程を採用したらよい。プレス加工時に上向き片34には曲げ力は作用しないため、容易に加工できる。
【0052】
なお、1枚の金属体を凹凸形状に曲げて、これに垂直部14を溶接等で固定することも可能である。この場合、垂直部14には、必ずしもフランジ13の上向き溝に嵌まる部分を形成する必要はないのであり、垂直部14は単なる帯板として、フランジ13の上面に接合するだけであってもよい。
【0053】
(5).第7実施形態
図10(B)に示す第7実施形態は、第1実施形態のように突起22を設けた場合の実施形態である。すなわち、この実施形態では、吊り具12を2枚重ね構造にして、フランジ13の長手側縁に突起22の群を形成している。
【0054】
突起22の群を形成する方法としては、フランジ13の長手側縁に上向き部を形成してから、これを飛び飛びに切除することにより突起22を形成してもよいし、素材板に、突起22の間の切欠き部に対応して穴を打ち抜き、次いで、曲げ加工を順次施していってもよい。
【0055】
以上、本願発明の実施形態を幾つか説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、天井材として放射パネルに適用する場合、放射パネルは、放射プレートに流体通路を内蔵したタイプとすることも可能である。また、本願発明は放射パネルの支持のみでなく、単なる天井板の吊支構造にも適用できる。対象になる天井材は、少なくとも下面が凹凸になっておればよく、上面はフラットであってもよい。吊り具は垂直部の両側にフランジを設けた逆T形が普通であるが、建物の縁部に使用する場合は、垂直部の片側だけにフランジを形成したL形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、天井部用空調設備等に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 放射パネル(天井材)
2 放射プレート
3 流体通路を構成するパイプ
4 下向き突条
12 吊り具(Tバー)
13 水平フランジ
14 垂直部
21 放射パネルの下向き溝条
22 吊り具の突起
29 フランジの上向き溝
30 係合溝
31 係合爪