(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フラックス及びはんだ材料
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220203BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20220203BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2018093385
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-086292(JP,A)
【文献】特開2003-225796(JP,A)
【文献】特開2002-045993(JP,A)
【文献】特開2001-138089(JP,A)
【文献】特開2015-142936(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216291(WO,A1)
【文献】特許第5590260(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/26
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~20の鎖状炭化水素構造を有し、該鎖状炭化水素構造の少なくとも一の末端の炭素にヨウ素が結合されており、且つ、カルボキシ基を含まないヨウ素含有化合物を含
み、
前記ヨウ素含有化合物を0.1質量%以上5.0質量%以下含むはんだ材料用のフラックス。
【請求項2】
前記鎖状炭化水素構造は不飽和結合の炭素鎖を含まない請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記鎖状炭化水素構造は少なくとも一の末端側に不飽和結合を含み、前記ヨウ素は不飽和結合炭素に結合されている請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記ヨウ素含有化合物は、ハロゲン原子としてヨウ素のみを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項5】
ヨウ素濃度は、0.002質量%以上0.15質量%以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項6】
前記ヨウ素含有化合物の他に活性剤を0.5質量%以上20質量%以下含む請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のフラックスとはんだ合金とを含むはんだ材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、及びフラックスを含むはんだ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の接合等に用いられるはんだは、はんだ合金とフラックスとを含むはんだ材料等からなる。フラックスは、はんだ付け性を向上させるために配合されるものであり、樹脂成分、活性剤成分、溶剤成分、酸化防止成分、チキソトロピック成分等の各種成分を含んでいる。はんだ付け性の中でも、はんだ濡れ性、はんだ溶融性を向上させるための成分として、従来からハロゲン系化合物が用いられている。
例えば、特許文献1には、臭素、塩素などのハロゲン原子が共有結合によって有機化合物中に導入されているハロゲン化合物を活性剤として含むフラックスが記載されている。
特許文献2には、ヨウ素系カルボキシル化合物を活性剤として含むフラックスが記載されている。
特許文献3には、脂肪族化合物の特定の位置の直鎖にヨウ素、臭素等のハロゲン原子が結合しているハロゲン化合物活性剤を含むフラックスが記載されている。
【0003】
一方、前記各成分には加熱時にガスを発生させる化合物も含まれており、かかるガスによるボイドが発生することがある。かかるボイドは電気的接続部の放熱性の低下の原因となるが、前記のような従来のフラックスではボイドの発生を十分に抑制できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-120089号
【文献】特開2014-188578号
【文献】特開2016-140915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ボイドの発生を十分に抑制しうるフラックス及びはんだ材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフラックスは、炭素数1~20の鎖状炭化水素構造を有し、該鎖状炭化水素構造の少なくとも一の末端の炭素にヨウ素が結合されており、且つ、カルボキシ基を含まないヨウ素含有化合物を含む。
【0007】
前記鎖状炭化水素構造は不飽和結合の炭素鎖を含まないものであってもよい。
【0008】
前記鎖状炭化水素構造は少なくとも一の末端側に不飽和結合を含み、前記ヨウ素は不飽和結合炭素に結合されていてもよい。
【0009】
前記ヨウ素含有化合物には、ハロゲン原子としてヨウ素のみを含んでいてもよい。
【0010】
ヨウ素濃度は0.002質量%以上0.15質量%以下であってもよい。
【0011】
前記ヨウ素含有化合物を、0.1質量%以上5.0質量%以下含む。
【0012】
活性剤を0.5質量%以上20質量%以下含んでいてもよい。
【0013】
はんだ材料にかかる本発明は、前記フラックスとはんだ合金とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボイドの発生を十分に抑制しうるフラックス及びはんだ材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例で使用するヨウ素含有化合物の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るフラックス、及び、フラックスを含むはんだ材料について説明する。
本実施形態のフラックスは、炭素数1~20の鎖状炭化水素構造を有し、該鎖状炭化水素構造の少なくとも一の末端の炭素にヨウ素が結合されており、且つ、カルボキシ基を含まないヨウ素含有化合物を含む。
【0017】
本実施形態において、鎖状炭化水素構造とは、炭素数1~20の鎖状(非環状)の炭化水素であって、該炭化水素の少なくとも一方の末端の炭素にヨウ素が結合されているものを基本構造とする。本実施形態でいう鎖状炭化水素構造には、これらの基本構造にヨウ素以外のハロゲン原子やその他の置換基が結合されているものも含まれる。
【0018】
本実施形態の鎖状炭化水素構造は炭素数1~20、好ましくは、炭素数1~18、さらに好ましくは炭素数2~10あるいは炭素数2~8の炭化水素鎖であることが挙げられる。
【0019】
本実施形態において、前記鎖状炭化水素構造が炭素数2以上の場合、炭素鎖を構成する炭素同士の結合は、飽和結合又は不飽和結合いずれを含んでいてもよい。
すなわち、前記鎖状炭化水素構造は不飽和結合の炭素鎖を含まないものでもよく、二重結合、三重結合等の不飽和結合を含むものであってもよい。
【0020】
前記鎖状炭化水素構造が不飽和結合を含む場合には。前記鎖状炭化水素構造は少なくとも一の末端側に不飽和結合を含み、前記ヨウ素は不飽和結合炭素に結合されていることが好ましい。すなわち、ヨウ素が結合されている炭素原子は鎖状炭化水素構造のいずれかの末端に位置し、且つ、鎖状炭化水素構造を構成する隣接する炭素原子と不飽和結合している炭素原子である。
【0021】
鎖状炭化水素構造が炭素数1である場合、すなわち、メタン骨格である場合には、メタン骨格を構成する炭素が末端の炭素に該当する。
【0022】
本実施形態のヨウ素含有化合物は、一分子中に前記鎖状炭化水素構造を複数有していてもよい。
例えば、主鎖として前記鎖状炭化水素構造を一つ有している直鎖状の鎖状炭化水素であってもよく、主鎖及び側鎖に前記鎖状炭化水素構造を複数有している分岐鎖状の鎖状炭化水素であってもよく、あるいは、同数の炭素数の鎖状炭化水素構造を複数有していてもよい。
【0023】
ヨウ素含有化合物が、分岐鎖状の鎖状炭化水素構造を有している場合には、ヨウ素は少なくとも主鎖となる鎖状炭化水素構造の少なくも一方の末端に結合されていることが好ましい。あるいは、主鎖及び分岐鎖の末端にヨウ素が結合されていてもよい。
すなわち、ヨウ素は1つ又は2以上が主鎖の末端、あるいは、主鎖及び分岐鎖の末端に結合されていてもよい。
また、ヨウ素以外のハロゲン、例えば、臭素、塩素等が鎖状炭化水素構造にヨウ素と共に結合されていてもよく、あるいは、ヨウ素のみが結合されていてもよい。
【0024】
本実施形態のヨウ素含有化合物は、ハロゲン原子としてヨウ素のみを含むことが好ましい。
【0025】
さらに、鎖状炭化水素構造には、ヨウ素以外の置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
ヨウ素以外の置換基としては、例えば、臭素、塩素等のヨウ素以外のハロゲン原子、水素原子、酸素原子、水酸基、フェニル基、ホルミル基、アセチル基等のアシル基、アミノ基、アミド基、エステル、アセトアミド基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アリール基、スルホン基、ベンジル基、アルカン基、アルケン基、アルキン基等のアルキル基、及びこれらが置換基を有しているもの等が挙げられる。
中でも、本実施形態のヨウ素含有化合物の置換基としては、水素原子、酸素原子、水酸基(-OH)、フェニル基、アミノ基、アルキル基、-C(=O)-H、-C(=O)-R1(R1はアルキル基又はエステル)、-NH-O-R2(R2はアルキル基)、で表される基等が好ましい。
【0026】
ヨウ素含有化合物としては、具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
鎖状炭化水素構造を構成する炭素数が1であるヨウ素含有化合物としては、例えば、1,4-ビス(ヨードメチル)ベンゼン(鎖状炭化水素構造を2つ含む)等が挙げられる。
鎖状炭化水素構造を構成する炭素数が2であるヨウ素含有化合物としては、例えば、N-Boc-3-ヨード-L-アラニンメチル、α-ヨードフェニル酢酸エチル、2-フェネチルヨージド等が挙げられる。
鎖状炭化水素構造を構成する炭素数が3であるヨウ素含有化合物としては、例えば、ペンタエリトリチルテトラヨージド(鎖状炭化水素構造を2つ含む)等が挙げられる。
鎖状飽和化水素構造を構成する炭素数が10以上であるヨウ素含有化合物としては、例えば、1,10-ジヨードデカン(C10)、1-ヨードオクタデカン(C18)等が挙げられる。
鎖状炭化水素構造が不飽和結合を含むヨウ素含有化合物としては、例えば、cis-3-ヨードアクリル酸エチル、N-ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル等が挙げられる。
【0027】
前記ヨウ素含有化合物のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、0.1質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上2.6質量%以下であること等が挙げられる。
ヨウ素含有化合物のフラックスにおける含有量が前記範囲である場合には、ボイドの発生を効果的に抑制できるフラックスが得られる。
【0028】
本実施形態のフラックス中のヨウ素濃度は、例えば、0.002質量%以上0.15質量%以下、好ましくは、0.01質量%以上0.03質量%以下であることが挙げられる。
【0029】
尚、本実施形態におけるヨウ素含有化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(Gas Chromatography-Mass spectrometry、GC/MS)及び燃焼-イオンクロマトグラフィー(Combustion-Ion Chromatography)を用いた公知の測定方法で測定することが可能である。
【0030】
本実施形態のフラックスは、ヨウ素含有化合物の他に、公知のフラックスの成分、例えば、活性剤成分、樹脂成分、溶剤成分、酸化防止成分、チキソトロピック成分等を含んでいてもよい。
尚、これらの各成分は必要に応じてフラックスに配合されることができ、いずれの成分が含まれていても含まれていなくてもよい。
【0031】
本実施形態のフラックスは、ヨウ素含有化合物以外の活性剤成分としてさらに有機酸を含んでいてもよい。
有機酸は、フラックスの活性剤成分等として用いられる公知の成分であれば特に限定されるものではない。例えば、グルタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ステアリン酸、安息香酸、ドデカン二酸、マレイン酸、シアヌル酸等が挙げられる。
前記有機酸は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0032】
前記有機酸などの活性剤のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、固形物換算で0.5質量%以上20質量%以下、好ましくは3.0質量%以上10質量%以下等が挙げられる。
【0033】
有機酸以外の活性剤成分、例えば、アミンハロゲン塩、ハロゲン化合物等を用いることができる。
この場合、ヨウ素含有化合物中のハロゲンを含めて、フラックス中のハロゲン全体の濃度が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であることが好ましい。
【0034】
活性剤成分は有機酸等のように加熱時にガスを発生させる成分を多く含むため、ボイドを抑制するためには活性剤成分を低減することが考えられるが、活性剤成分を低減した場合にははんだ付け性が低下するという問題もある。
本実施形態のフラックスはヨウ素含有化合物を含むため、活性剤成分を低減することなくボイドの発生を抑制できる。従って、はんだ付け性を維持しつつボイドの発生も抑制しうる。
【0035】
本実施形態のフラックスは、樹脂成分をロジン成分として含んでいてもよい。
樹脂成分としては、合成樹脂、天然樹脂など、フラックスの樹脂成分として用いられる公知の樹脂成分であれば特に限定されるものではない。例えば、重合ロジン、水添ロジン、天然ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン等が挙げられる。
前記樹脂は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
この場合、前記樹脂成分のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、固形物換算で50質量%以上90質量%以下、好ましくは70質量%以上80質量%以下等が挙げられる。
【0036】
溶剤成分としては、フラックスの溶剤成分として用いられる公知の成分であれば特に限定されるものではない。例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、などのグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、オクタンジオールなどのアルコール類等が挙げられる。
溶剤成分として揮発性の高い成分を採用することでボイドを抑制することができるものの、その場合、はんだ材料のタック性を維持できる時間が短くなるという問題がある。
本実施形態のフラックスは前記ヨウ素含有化合物を含むため溶剤の種類を選択することなくボイドの発生を抑制しうる。
前記溶剤は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0037】
前記溶剤成分のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、20質量%以上70質量%以下、好ましくは30質量%以上60質量%以下等が挙げられる。
【0038】
チキソトロピック成分としては、フラックスのチキソトロピック成分として用いられる公知の成分であれば特に限定されるものではない。例えば、水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、オキシ脂肪酸類、ワックス等が挙げられる。
前記チキソトロピック成分のフラックスにおける含有量は特に限定されるものではないが、例えば、3.0質量%以上20質量%以下、好ましくは5.0質量%以上10質量%以下等が挙げられる。
【0039】
本実施形態のフラックスには、さらに、他の添加剤を含んでいてもよい。
【0040】
本実施形態のフラックスは、ポストフラックス等の液状フラックスとして用いることができるが、その他、ソルダーペースト、やに入りはんだのようなはんだ材料用のフラックスとしても用いられる。
【0041】
本実施形態のはんだ材料は、前記各フラックスとはんだ合金とを含む。
前記はんだ合金は、鉛フリー合金であってもよい。
前記はんだ合金としては、特に限定されるものではなく、鉛フリー(無鉛)のはんだ合金、有鉛のはんだ合金のいずれでもよいが、環境への影響の観点から鉛フリーのはんだ合金が好ましい。
具体的には、鉛フリーのはんだ合金としては、スズ、銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金等が挙げられ、より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。特に、Sn/Ag/Cuが好ましい。
【0042】
前記はんだ合金のはんだ材料における含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、80質量%以上95質量%以下、好ましくは85質量%以上90質量%以下等が挙げられる。
【0043】
本実施形態のはんだ材料がはんだ合金と上記本実施形態のフラックスとを混合することで得られるソルダーペーストである場合には、例えば、前記はんだ合金80質量%以上95質量%以下、前記フラックス5質量%以上20質量%以下で混合されていることが好ましい。
【0044】
本実施形態のはんだ材料を使用する場合の条件は、はんだ接合する対象物等に応じて適宜設定可能であり、特に制限されるものではないが、例えば、プリヒート時の昇温速度:1.0~3.0℃/秒、プリヒート温度:150~190℃/60~100秒、はんだ溶融時の昇温速度:1.0~2.0℃/秒、溶融温度:219℃以上30秒以上、リフローピーク温度:230~250℃等の条件が挙げられる。
【0045】
本実施形態のフラックスは、はんだ材料に配合した場合に、活性成分の使用を抑制することなく、ボイドの発生を抑制することができる。よって、濡れ性を低下することなくボイドの発生も抑制することができる。
【0046】
本実施形態のはんだ材料は、前記フラックスを用いているため、はんだ付け性が良好であると同時にボイドの発生を抑制できる。
本実施形態のはんだ材料は、通常のはんだ合金であれば制限なくはんだ合金を含むことができるが、特に、鉛フリーはんだ合金が適している。
鉛フリーはんだ合金を含む鉛フリーはんだ材料は、はんだ溶融時にフラックスの揮発成分等によるガスが残留しやすく、その結果ボイドが発生しやすいという問題がある。本実施形態のフラックスはかかる鉛フリーはんだ材料に用いた場合にもボイドを抑制することができる。
【0047】
本実施形態のはんだ材料は、電子部品、特に、はんだ接合面積が比較的広く、且つ、加熱時にガスが逃げるスペースが小さい、クワッドフラットノーリード(QFN)、パワートランジスタ等のような電子部品を基板に実装する際のはんだ材料として適している。これらの部品の実装ではガスの発生によるボイドが生じやすいが、本実施形態のはんだ材料を用いることでボイドの発生をより効果的に抑制しうる。
【0048】
本実施形態にかかるフラックス及びはんだ材料は、以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。尚、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0050】
(フラックスの作製)
以下に示すような材料及び表1及び表2(構造式は
図1及び
図2を参照のこと)に示すヨウ素含有化合物を表1に記載の配合で各実施例、比較例に用いるフラックスを作製した。
作製方法は各材料を適当な容器に投入して、室温にて全材料が均一に溶解するまで混合することで各のフラックスを得た。
【0051】
<材用と配合>
ロジン成分
・酸変性超淡色ロジン:KE-604、荒川化学工業社製
溶剤成分
・ヘキシルジグリコール(HeDG):日本乳化剤社製
チキソ剤
・ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド:スリパックスZHH、三菱ケミカル社製
有機酸系活性剤成分
・アジピン酸:住友化学社製
【0052】
<ソルダーペースト>
はんだ合金粉末(Sn-3.0%Ag-0.5%Cu、粒径20~38μm)と前記フラックス各とを88±1質量%と12±1質量%となる比率で混合し、ペースト状の各はんだ材料(ソルダーペースト)を作製した。
【0053】
(試験基板)
前記実施例及び比較例のはんだ材料を用いて、試験基板を以下のように作製した。
基板として100mm×100mm、厚み1.6mmの評価用基板を用意し、下記温度条件で2回熱処理を行った。
<温度条件>
・プリヒート時
昇温速度:1.0~3.0℃/秒
プリヒート温度:150~190℃/60~100秒
・はんだ溶融時
昇温速度:1.0~2.0℃/秒
溶融温度:219℃以上30秒以上
ピーク温度:230~250℃
大気雰囲気
【0054】
前記熱処理基板にはんだ材料をそれぞれ厚み120μm、サイズ6.0mm×6.0mm角になるように塗布した。塗布厚みは120μmであった。その後、塗布箇所に部品(IC TXRX ETHERET 72QFP メーカー:Microchip Tecnology)を搭載し、下記の条件で加熱した。
<温度条件>
・プリヒート時
昇温速度:1.0~3.0℃/秒
プリヒート温度:150~190℃/60~100秒
・はんだ溶融時
昇温速度:1.0~2.0℃/秒
溶融温度:219℃以上30秒以上
ピーク温度:230~250℃
大気雰囲気
【0055】
(ボイド評価)
前記実施例及び比較例を用いて作製した各試験基板中、上記部品搭載箇所におけるX線透過写真を撮影した。撮影した写真を二値化処理し、接合部及びボイド部分の面積を測定し、接合部に占めるボイド部分の面積の率を算出した。
尚、撮影装置はマース東研社製 TUX-3100、撮影条件は、管電圧75.0V、管電流65.0μA、フィラメント電流3.130A、倍率10.9倍である。
結果を表1に示す。
また、各実施例及び比較例の試験基板の写真を
図3及び4に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
表1、2及び、
図3、4、に示すように、実施例の試験基板では比較例に比べてボイドの発生は極めて少なかった。